名器には魂が宿ると言われいる
その魂はこれを使う者を選び
合えばさらなる力を与え
合わなければ
狂気を。
「あら・・・?何かしらこの刀・・・。」
西行の使い魂魄妖夢はいつものように終わらない庭掃除をしていた。
庭はとても広く、あっちを掃けばこちらが積もり、こちらを掃けばあっちが積もり。この繰り返しである。
でも、今日は違う。
とても奇妙な落とし物である。雪の上に見たこともない刀。
いくらおっちょこちょいの妖夢だって自分の刀を落とすようなヘマはしない。
「んー、おかしいなぁ。」
妖夢は刀を手に取りその刀を鞘から抜いてみる。
その刀身は透き通るほど美しく、寒空の青をしっかりと刀身に映していた。
妖夢はその刀に魅せられた。
何度も何度も見る角度を変え、全身を見つめた。そして妖夢はその刀に恐怖を覚えた。
こんなに美しい刀身は、刀の斯界で生きてる内に見たことがなかったからである。
恐怖に身を狩られた妖夢は刀から手を離そうとする。
が、思ったように右手の力が抜けない。
それどころか力は増すばかりで体が離そうとしない。
その時、妖夢の頭の中に声が響く。
「・・・春を・・・」
激しい頭痛で視界が歪んでいく。
歪んでいく景色の中で刀身に大きな瞳が浮かび上がったのを見た後、妖夢は倒れた。
気を失ってからどの位の時間が経ったのだろう。
辺りを見ると雪が深々と降っている。
「あ・・・」
気を失った後も変わらず右手には刀と同化したかのようにしっかりと握られていた。
妖夢は背後に気配を感じてハッと我に返り振り返る。
「妖夢ー、そんなとこで寝てたら風邪引くよー?」
西行寺幽々子、妖夢の主。
「あ、はい・・・。」
異様な心臓の高鳴り。
「桜・・・さ・く・ら・・・」
刀から声がする。やはり何かがおかしい。「止まれ!」
そう念ずることも無駄だった。
我に返ると妖夢は雪の上に直立していた。刀は右手に張り付いたままだった。
下を見ると、赤い液体が散っていた。
「何だろう。」
不審に思った妖夢は辺りを見回した。
そして釘付けになる。
赤い液体の中に転がる水色の和服を着た、主の姿。
青白い肌がもっともっと青白くなり、まぶたを閉ざしたまま動かない。
妖夢は駆け寄る。
「幽々子様!?どうされ・・・」
言葉を失う。
右手に握られた刀にはどろりとした赤い液体がこびり付いていた。
妖夢はそれを見ていると不思議なことに刀身に血が吸い込まれ、刀の中に赤い桜、いや血の桜だ。血桜が咲いていた。
「う・・・うわあああああああああああっ!!!!」
妖夢はその場から走り去る。
走っている内に頭の中での葛藤が始まる。
ドウシテニゲルノ? コワイカラダヨ。 ナンデコワイノ? コワイ。 コワイ?
ソウ、コワイノ。 ドウシテ? コワイコワイコワイコワイ。 コワレチャエバ?
イヤダ。 ナンデ? ジブンガナクナルカラダヨ。 ジブンソレダレ? ワタシハ・・・ワタシ?
ワタシ・・・
ワタシハダレダロウ。
妖夢の足が止まる。また激しい頭痛が始まる。
歪む視界に抵抗することなくその場に崩れ落ちる。
「もう・・・嫌だ・・・。」
そう呟いた妖夢は直後、体の中に何かが入ってくるのが分かった。
でも、その「何か」は分かることができなかった。
(妖夢視点)
私は立ち上がった。さっきまでのような弱い私はいない。
そう、何でもできる。春だって、半人前の私でもたくさん集められる。行こう。
私はすぐに春の感じるところへ走る。博麗神社。春の匂いがする。
境内に足を踏み入れた。いた、春。博麗霊夢。
霊夢はすぐさま私に気付いた。殺気を振りまいて右手に刀を持っているというのに、なんて脳天気な巫女だろう。
逃げようともしない。それどころかのんきに掃除をしている。
私は博麗の巫女に飛びかかる。
「無駄だってば、結界の中で頭を冷やしなさい。」
私の回りに淡い光が集まる、四重結界だ。いつもならこの後に封じ込められて終わりだけど、今日は違う。
剣を薙ぎ払う。結界が割れる。巫女が叫ぶ。そして・・・
また、刀の中に二輪目の血桜が咲いた。
「ふふ・・・あははははは、はははははは!!」
私はまたどこかへと飛ぶ。春の匂いのする方へ。
さっきまで体全体に受けていた温もりは今は固くて冷たくなってしまった。
だけど、もう私は怖れない。私は強いから。枝一杯に十輪の桜を集めよう。
血桜が九輪咲いた。
後一輪。桜が欲しい。でももう、周りは誰もいない。
咲かせたい。桜を咲かせたい。
私は赤く染まった服を払い捨てて飛んだ。
でも、誰もいない。そして気が付く。
「あぁ、その手があったか。」
私は今まで気付かなかったのが莫迦に思えた。だからそんな私を笑い飛ばした。
地上に降りて、右手に張り付いて離れない刀を
私の喉に突き立てた。
後一輪、これで花が咲く。早く桜で一杯になるのが見たい。
そんな気持ちが強くて、恐怖なんて感じなかった。
喉から吹き出す鮮やかな赤い液体を体で受けながら、刀を見る。
桜が咲いた。
枝一杯に咲く花はとても綺麗で綺麗でずっと見つめていたかった。
なのに。
視界が遠のいていく。涙で目が霞む。意識がなくなる。
なぜだろう。なぜだろう。
そして気付いた。
「あぁ。私、なんて馬鹿なんだろう。」
不思議と右手の力が抜けて十輪の血桜の咲いた刀が雪の上に落ちた。
せっかく咲いた十輪の血桜が凋んでいく。
遠のいていく意識の中で最期にそれが見えた。
「―あれ?この剣、誰の落とし物だろう。」
そう。
狂気は感染する。
≪完≫
その魂はこれを使う者を選び
合えばさらなる力を与え
合わなければ
狂気を。
「あら・・・?何かしらこの刀・・・。」
西行の使い魂魄妖夢はいつものように終わらない庭掃除をしていた。
庭はとても広く、あっちを掃けばこちらが積もり、こちらを掃けばあっちが積もり。この繰り返しである。
でも、今日は違う。
とても奇妙な落とし物である。雪の上に見たこともない刀。
いくらおっちょこちょいの妖夢だって自分の刀を落とすようなヘマはしない。
「んー、おかしいなぁ。」
妖夢は刀を手に取りその刀を鞘から抜いてみる。
その刀身は透き通るほど美しく、寒空の青をしっかりと刀身に映していた。
妖夢はその刀に魅せられた。
何度も何度も見る角度を変え、全身を見つめた。そして妖夢はその刀に恐怖を覚えた。
こんなに美しい刀身は、刀の斯界で生きてる内に見たことがなかったからである。
恐怖に身を狩られた妖夢は刀から手を離そうとする。
が、思ったように右手の力が抜けない。
それどころか力は増すばかりで体が離そうとしない。
その時、妖夢の頭の中に声が響く。
「・・・春を・・・」
激しい頭痛で視界が歪んでいく。
歪んでいく景色の中で刀身に大きな瞳が浮かび上がったのを見た後、妖夢は倒れた。
気を失ってからどの位の時間が経ったのだろう。
辺りを見ると雪が深々と降っている。
「あ・・・」
気を失った後も変わらず右手には刀と同化したかのようにしっかりと握られていた。
妖夢は背後に気配を感じてハッと我に返り振り返る。
「妖夢ー、そんなとこで寝てたら風邪引くよー?」
西行寺幽々子、妖夢の主。
「あ、はい・・・。」
異様な心臓の高鳴り。
「桜・・・さ・く・ら・・・」
刀から声がする。やはり何かがおかしい。「止まれ!」
そう念ずることも無駄だった。
我に返ると妖夢は雪の上に直立していた。刀は右手に張り付いたままだった。
下を見ると、赤い液体が散っていた。
「何だろう。」
不審に思った妖夢は辺りを見回した。
そして釘付けになる。
赤い液体の中に転がる水色の和服を着た、主の姿。
青白い肌がもっともっと青白くなり、まぶたを閉ざしたまま動かない。
妖夢は駆け寄る。
「幽々子様!?どうされ・・・」
言葉を失う。
右手に握られた刀にはどろりとした赤い液体がこびり付いていた。
妖夢はそれを見ていると不思議なことに刀身に血が吸い込まれ、刀の中に赤い桜、いや血の桜だ。血桜が咲いていた。
「う・・・うわあああああああああああっ!!!!」
妖夢はその場から走り去る。
走っている内に頭の中での葛藤が始まる。
ドウシテニゲルノ? コワイカラダヨ。 ナンデコワイノ? コワイ。 コワイ?
ソウ、コワイノ。 ドウシテ? コワイコワイコワイコワイ。 コワレチャエバ?
イヤダ。 ナンデ? ジブンガナクナルカラダヨ。 ジブンソレダレ? ワタシハ・・・ワタシ?
ワタシ・・・
ワタシハダレダロウ。
妖夢の足が止まる。また激しい頭痛が始まる。
歪む視界に抵抗することなくその場に崩れ落ちる。
「もう・・・嫌だ・・・。」
そう呟いた妖夢は直後、体の中に何かが入ってくるのが分かった。
でも、その「何か」は分かることができなかった。
(妖夢視点)
私は立ち上がった。さっきまでのような弱い私はいない。
そう、何でもできる。春だって、半人前の私でもたくさん集められる。行こう。
私はすぐに春の感じるところへ走る。博麗神社。春の匂いがする。
境内に足を踏み入れた。いた、春。博麗霊夢。
霊夢はすぐさま私に気付いた。殺気を振りまいて右手に刀を持っているというのに、なんて脳天気な巫女だろう。
逃げようともしない。それどころかのんきに掃除をしている。
私は博麗の巫女に飛びかかる。
「無駄だってば、結界の中で頭を冷やしなさい。」
私の回りに淡い光が集まる、四重結界だ。いつもならこの後に封じ込められて終わりだけど、今日は違う。
剣を薙ぎ払う。結界が割れる。巫女が叫ぶ。そして・・・
また、刀の中に二輪目の血桜が咲いた。
「ふふ・・・あははははは、はははははは!!」
私はまたどこかへと飛ぶ。春の匂いのする方へ。
さっきまで体全体に受けていた温もりは今は固くて冷たくなってしまった。
だけど、もう私は怖れない。私は強いから。枝一杯に十輪の桜を集めよう。
血桜が九輪咲いた。
後一輪。桜が欲しい。でももう、周りは誰もいない。
咲かせたい。桜を咲かせたい。
私は赤く染まった服を払い捨てて飛んだ。
でも、誰もいない。そして気が付く。
「あぁ、その手があったか。」
私は今まで気付かなかったのが莫迦に思えた。だからそんな私を笑い飛ばした。
地上に降りて、右手に張り付いて離れない刀を
私の喉に突き立てた。
後一輪、これで花が咲く。早く桜で一杯になるのが見たい。
そんな気持ちが強くて、恐怖なんて感じなかった。
喉から吹き出す鮮やかな赤い液体を体で受けながら、刀を見る。
桜が咲いた。
枝一杯に咲く花はとても綺麗で綺麗でずっと見つめていたかった。
なのに。
視界が遠のいていく。涙で目が霞む。意識がなくなる。
なぜだろう。なぜだろう。
そして気付いた。
「あぁ。私、なんて馬鹿なんだろう。」
不思議と右手の力が抜けて十輪の血桜の咲いた刀が雪の上に落ちた。
せっかく咲いた十輪の血桜が凋んでいく。
遠のいていく意識の中で最期にそれが見えた。
「―あれ?この剣、誰の落とし物だろう。」
そう。
狂気は感染する。
≪完≫
東方の世界・キャラクターを使わなくても成り立つというのは下の方と同意見です。
ダークな感じは私的には好きですからもう東方っぽさが有ればよかったと思う作品でした。
自分は専ら読む専門で書いたことがないのであまり偉そうなことは言えませんが、楽しめたことは確かです。
次回作を期待してますよ・ω・
そう思いながら読み進めたのですが下の方の意見にもなるほどと頷けるものがありました。
狂気の類は違えど何か恐ろしさを孕む感じも東方にはにマッチすると思いますので足りなかったのは東方自体でしょうか
あと気持ちは分かりますが、文中で(妖夢視点)と括弧書きで注釈入れるのはちょっと興醒めします。
その辺はいかに読者に自然に読ませるか、作者の文章術の見せ所とすべきです。
読ませる文章ではない。
>(妖夢視点)
これは他にやりようがあったのでは
まず思いつくミスは「初めまして。」と書き忘れてしまったことですね。
私はまだ東方プレイ暦が浅いもので世界観や人物相関が
しっかりと把握できていないということを改めて実感しました。
これを機に東方の世界を深く知ることと文章の構成の訓練をしようと思います。
何時になるか分かりませんが納得できる文章が書けたらもう一度来たいと思います。
その時もまた何かございましたら厳しく突っ込んで下さい。
それでは本当にありがとうございました。