籠女 籠女
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蓬莱山 輝夜
月の都に、その名を知らぬものはいない。
月の象徴
月の民のとっては神にも等しく、厳重な加護の中にある、永遠の小鳥。
月の存在の証とも言える、永遠の存在。
しかし、その姿を知るものもまた、いない。
なぜなら、かの者は一度足りとも宮殿から出たことが無いから。
籠の中の鳥は、いつも外を見ていた。
いつの日か、外の世界に出ることができる日が来るように、と願って。
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永い時が過ぎた。
自分が永遠に外に出られないことを悟った小鳥は、月の薬師に蓬莱の薬を作らせた。
禁忌である薬に手を出した罪は、決して許されるものではなかった。
そして小鳥は、ついに外に出た。罪をその身に背負い。
世が開け、永遠の籠が終わる。
蓬莱の薬に、自らの永遠を込め。
千年も。
万年も。
永遠の時に飲まれた。
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小鳥は逃げた。
振り返ることなく、背後の月からから目をそらし…