暖かい日差しの午後。
博麗神社の縁側もポカポカと暖かい陽気に包まれている。
お昼ご飯の後片付けも終わり、博麗霊夢は縁側でのんびりとお茶を飲む至福の一時を過していた。
「あぁ……、幸せ……」
ごそごそ、パキリ、もぐもぐ。
お茶請けに用意したお煎餅を食べながら、お茶と日向を楽しむ。
「それにしても暖かいわね……」
こんな陽気の中お昼寝なんてしたらさぞかし心地良いだろう。
心地良いどころじゃないかもしれない。
お茶、日向、睡眠と幸せの三重奏で幸福死してしまうかもしれない。
「ふぁ……、はふ……」
睡魔に襲われた霊夢は縁側でごろりと横になる。
そんな死に方もいいかも……
目を閉じると、霊夢は穏やかな寝息を発て始めた。
§ § §
青空の下、漆黒の闇が球形となってふわふわと空を漂う。
漆黒の球体は時折停止すると、その濃度を薄め進行方向を変えては漂う。
明らかに目的を持った浮遊である。
何度目かの停止と浮遊を繰り返し、漆黒の球体はどうやら目的の場所に到着したようだった。
「やっと鳥居が見えてきた」
鳥居。
つまり、この球体の目的地は博麗神社であった。
濃度を限りなく薄くした闇から姿を現したのは、黒い衣装に身を包んだ、金髪の少女――ルーミア。
勝手知ったる他人の家。
ルーミアは慣れた足取りで境内から庭先に向かう。
この時間なら、縁側でお茶を飲んでいる筈だからだ。
「霊夢~、遊びにきたよー」
しかし、縁側では霊夢が横たわっていた。
「あら、お昼寝中?」
大きな音を発てない様に霊夢に近寄る。
「むぅ……?」
いつもなら近寄っただけで起きてくれるのに、今日は起きない。
そういえばいつぞや同じような事があったっけ?
そーっと、寝顔を覗き込んでみる。
「あは……ッ、可愛い……」
ちなみに、起きてる時にこんな事を言うと何故か怒られてしまう。
それも真っ赤になって。
気持ち良さそうに寝ているけど、このままじゃ遊べない。
かといって、これだけ気持ち良さそうに寝ているのを起されれば誰だって怒るだろう。
「うーん……」
……そーっと起せば怒られないよね?
「れいむー?」
ちょん、ちょん、と頬をつついてみる。
「すぅ……、すぅ……」
「むぅ……、れいむ、おきてー」
「んにゅ……、すぅ……、すぅ……」
軽く揺さぶってみても、霊夢は寝返りを打つだけだった。
「うぅ、一緒に遊んで、一緒にご飯の準備するつもりだったのに……」
このまま起きるまでぼーっと待ってるのは暇で辛そう。
「……あ、そうだ」
ルーミアは縁側に上がると、霊夢と向かい合うようになって寝転ぶ。
「えへへ……」
起きるまで一緒に寝てれば問題無いよね。
霊夢の寝顔も見れるし、目の前で寝てればきっと起してくれる。
起してもらえれば、霊夢と一緒にご飯の準備もできる。
「かわぃ……」
今しか言えない言葉を紡いで、ルーミアは目を閉じた。
§ § §
日が傾き、ほんの少しだけ温度が下がった頃、縁側で眠っていた霊夢の目蓋がゆっくりと開く。
「ん……」
視界に飛び込んできたのは、あどけない少女の寝顔。
「……なんで?」
思わず口に出して疑問に思ってしまったが、目の前の少女がルーミアである事から、この行動は容易に想像できる。
「どうせ暇だったから一緒に寝てたんでしょ」
まぁ、起して晩御飯の準備を手伝ってもらえばいいか。
そう思ったけれど、なんとなく寝顔を眺めてみる。
「ふふ……、涎なんて垂らしちゃって」
袖でそっと口元を拭ってやる。
「んむぅ……、くぅ、くぅ」
「……可愛いなぁ」
ルーミアの髪をそっと撫で付ける。
指を梳き入れても絡む事の無い金髪。
この手触りが何ともいえない。
ずっと撫でていくなる。
「サラサラ……」
しかし、これだけ無防備に寝てるとちょっかいを出したくなる。
柔らかそうな頬を指でふにふにと突ついてみる。
「あはは、柔らかい」
ふにふにー、ふにふにー
「むにゃ……、ぅう?」
あ、起きたわね。
ルーミアは目をぐしぐしと擦りながら、緩慢な動作で起き上がる。
とろん、としたどこか惚けたような表情でルーミアが口を開く。
「ぅにゅ……、れいむ……? おはよー……」
ふらふらと微妙に体が揺れているのが可愛らしくも可笑しい。
「ふふ、おはよ」
あぁぁ、かわいいなぁ……
無意識の内に頬が緩んでしまう。
「えへぇ……、ぅん……、ぉゃ、すみ……」
私が微笑んで朝の挨拶を返すと、ルーミアも微笑み返してもう一度こてん、と寝転がってしまう。
「~~~~~~ッ」
これを見た霊夢がフルフルと全身を小刻みに震わせる。
先ほどから上昇しっぱなしだった霊夢のある種の感情が、この寝呆けるという行動がツボだったのか、遂に臨界点を突破してしまう。
我慢できなくなった(?)霊夢は、寝転んで仰向けになったルーミアに覆いかぶさる。
「わ、私が悪いんじゃないんだからねッ、ルル、ルーミアが、その、あれで、もう……ッ」
誰に対して、何の言い訳をしているのか良く判らないが、セリフも途中でやめて、ルーミアの寝息を発てる唇に接近し始める。
が、突然後頭部に衝撃が走る。
「うぐ……」
頭を抱えると、背後から声がする。
「まったく、頭の中も春だからって、ソレはダメでしょ?」
振り返ると、やはりというか隙間妖怪の八雲紫が隙間から上半身だけを出してそこに居た。
どうやら手に持った扇子でピシャリと叩いたらしい。
「う、煩いわね……、それに頭の中も春ってどういう意味よ」
ギロリと紫を睨み付ける。
「あぁ怖い」
紫は隙間に引っ込むと、ルーミアに膝枕する様に再度姿を現す。
頭部が持ち上がった為か、丁度ルーミアも目を覚ます。
「むにゃ……、あ、あれれ、どうして?」
ルーミアは紫に膝枕されている事に驚いていたが、紫は優しく髪を撫で付けて落ち着かせる。
「発情巫女は危険だから私が一緒に居てあげますわ」
「ぇ、はつ?」
「な――ッ、誰がエロ巫女よ!」
「誰もそんな事言って無いわよ?」
紫は扇子で口元を隠してクスクスと笑う。
「え、霊夢……、えっち、なの?」
ルーミアは体を起すと控えめに確認してくる。
「ちッ、がーう!」
とりあえず力いっぱい否定。
「もう、怒鳴る霊夢は置いといて、一緒に晩御飯の準備でもしよっか?」
食材はあるから。と、紫はルーミアを連れて台所へ向かう。
どうして私の家なのに、紫がルーミアと晩御飯を作るのよ!
「もうッ、紫、本当に怒るわよ?」
「あぁ恐いわ」
紫は隙間に身を滑り込ませると、顔だけ出す。
「それじゃあ二人で晩御飯の準備頑張ってね?」
「ぁ……、うん!」
なにやらルーミアに耳打ちすると、紫は隙間ごとどこかへ消えてしまった。
「はぁ……、まったく、何しに来たのよ」
大きく溜息を吐いてルーミアの隣に向かう。
「それじゃあ晩御飯の準備でもしよっか」
「うん」
元気良く返事をしたルーミアの手を引いて、私は台所に向かった。
「今日は何が食べたい?」
「えっとね……」
END
たぶん誤字です。
っていうか
ルーミアかわいいよルーミア
そして春度高いなぁw
一言でまとめるととても和みました
和んだ。(*゚∀゚)=3