Coolier - 新生・東方創想話

極寒の香霖堂

2006/12/27 10:15:45
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 幻想郷の降雪は毎年すさまじいの一言に尽きる。
 冬の気温は零下10度以下に達するのが普通で、雪は毎日降り続き幻想郷を純白に染め上げる。
 しかし今年はその勢いが更にひどく、ルナティックと表現しても良いくらいの豪雪だった。
 店は降り積もった雪に埋もれて、あちこちの柱がギシギシと悲鳴を上げている。

 深夜、僕はストーブをつけて文々。新聞を読んでいた。
「博霊の巫女、雪を食って凍死」「三途の川凍結―徒歩で渡る死者続出」「ニートは炬燵で丸くなる」
 なるほど、今年の冬は特にひどいようだ。冬の黒幕はさぞかし高笑いしていることだろう。
 現実問題、僕も他人事として笑って見ているわけにはいかない。
 店にはストーブがあるからまだ暖かいが、これが無ければ香霖堂はとっくに冷凍庫と化していることだろう。
 今でもかなり寒くて歯がカチカチ鳴っているのだが、ストーブは相変わらず温かみのある光を放ち凍える僕の体を癒し続けていた。
 唐突に気づいた―まさにこのストーブは命綱なのだ。
 まさかこんな形で僕の命を守ってくれるとは思いもしていなかった。
 早く点けよこのポンコツと蹴飛ばしたこともあった。
 魔理沙のマスタースパークの盾にしたこともあった。
 しかし道具は何も言わず、ただ黙って本来の役割を果たし続ける。
 そこは人間が持つような軟弱な悩みなど一切存在しない世界。
 硬派な親父と同じ雰囲気を漂わせながら場を暖め続けるストーブに、僕は感謝の言葉を延べずにはいられなかった。

「ありがとう…ストーブ」
 プスン。壊れた。

 ハハハ。こやつめ、ツンデレおった。
 混乱する頭を抑えて、ストーブを修理しようと色々頑張った。石油交換。分解。
 気づけば辺りには組み立て方のわからないストーブの部品が転がっていた。

「このポンコツがああああ!!」

 裏切られた純粋な思いは激しい暴力への欲求と変貌し、僕は部品の一つを思いっきり蹴飛ばした。
 飛んでいった部品は窓ガラスを貫いてお星様となった。
 もちろん、貫かれた窓ガラスから急激に冷気が噴出してきたことは言うまでも無い。

「窓が、窓があああああ!!」

 すぐさま新聞を重ねて窓に張り、テープで止める。しかしとんでもない冷気だ。
 あっという間に室内が冷え切ってしまった。
 新聞を触ってみると、パリパリと音を立てた。凍ってしまったらしい。

 どうやら僕は今の状況を甘く見ていたようだ。
 認識を改める必要があった。もはや厳冬っていうレベルじゃないようだ。
 これほどの冷気に晒されることは死を意味する。店内には絶対に外の空気を入れるわけには行かない。
 時計を見ると、現在の時間は午前3時。あと3、4時間すれば日が昇るだろう。
 さっきの冷気で部屋が冷えてしまったが、布団に包まれば持ちこたえる事ができるはずだ。

 僕はそれからできるだけの策をとった。
 店中のランプ、蝋燭、PS3、熱を発散するあらゆる道具をかき集め、一番保温性の高い寝室へと運び込んだ。
 さらに毛布を何重にも重ね、完全に中に入る。
 よしこれで大丈夫。後は夜明けを待つだけだ。
 するとその時店のドアを叩く音がした。
 馬鹿な。こんな寒い夜に一体誰が訪れるというのだ。
 常識を考えろ。今日は休業だ、帰れ帰れ。

「こーりーん、開けてよー」

 嘘だろ?なあ、そうだろみんなッ!!
 あの声は…聞いてるだけで⑨になっていくあの声は…!!

「レティがね、クリスマスにはサンタクロースっていうお菓子やプレゼントを配るおじいさんが出るって
言うのよ。でもそんなの見たことないし、正体を見てやろうと思ったの。
そこで推理しちゃったわけよ。お菓子売ってるのはこーりんだけだし、道具をいっぱい持ってるのも
こーりんだよね! サンタクロースの正体はこーりんで決定ー! やっぱりあたいったら最強ね!
あたいにクリスマスプレゼント渡すのを忘れてるわよー! ほら開けて開けてー!」

 喧しく叫びながらドアを叩く圧縮冷気。
 ドアを叩くたびにその小さな手から冷気が店内に忍び込んでいく様子が容易に想像できた。
 やめろ、やめてくれ。何だそのサンタ苦労すって。苦労はしてるよ。でもサンタじゃない。
 そんな事を心の中で叫びながら自然に帰ってくれるのを待つが、チルノは一向に帰る気配が無い。
 気がつくと、寝室の店側に面している壁が凍っていた。
 これではダメだ。もっと積極的に追い返さないと、店ごと氷漬けにされてしまう。

「その通りー僕がサンタクロースさー今行くよー」
「わーい!お菓子たくさんちょうだーい!」

 半ば投げやりに答えながら冷たくなったPS3を袋に詰め、布団をかぶってのそのそと店に出て行く。
 店は…凍っていた。予想異常というかなんと言うか、空気自体が凍っていた。
 よく場の空気が凍るという表現をするが、僕にいわせればそんな表現を軽々しく使うような奴は素人だ。
 通はやっぱり香霖堂。これだね。
 チルノはドアを叩き続けている。

「こーりん、まだー?」

 ドアは叩かれるたびに白い冷気を室内にばら撒いていた。
 ドアを貫いて冷気が吹き出るとはどんな現象だ。
 見れば室内にはダイアモンドダストが舞っていた。何コレ?
 菓子をとろうとしたが、凍り付いてなかなか瓶から出ないので、瓶ごと袋に放り込んだ。
 やけくそになって置いてある菓子を全部袋に放り込み、扉を開けようとした。
 当然のように凍ってて開かない。
 やぶれかぶれになって椅子で扉をぶち割ると、扉の裂け目からひょっこりと氷の悪魔が顔を出した。

「レティが言ってた通りだ!」

 言われて自分を見てみると確かにサンタだ。
 赤い布団をかぶり大きな袋を持ち、さっきから流し続けていた涙は顎で結晶化し氷柱となっている。

「メリークリスマス」
「わーいお菓子だー!」

 ずいと袋を差し出す。
 チルノはそれを受け取ると、真っ先に棒つきキャンディーを取り出してぺろぺろとなめ始めた。

「おいしー」

 そのまま飛び去っていく。
 悪魔は去った。これからが本当の戦いだ。そう言いたい所だが、もう戦う気力は残っていなかった。
 戸口から店内を見回す。
 ばっくりと割れて冷気が吹き込むドア、菓子を取るために叩き壊された棚、四散したストーブや椅子、そのどれもが凍り付いて白い。そして自分を見た。
 サンタは最早白かった。レアなのかもしれない。
 シューティングゲームで撃ち落せば高得点だろう、きっと。
 時計を見た。まだ15分しか経っていないのか。
 やはり自然の脅威にちっぽけな一個人が立ち向かうなど無謀なことだったのか…

 いや、まだ終わっていない。
 僕は店主だ。香霖堂の店主だ。
 普段は暗い店内で読書なんかしてのんびり暮らしてるように見えるが、いつもいつもそんな穏やかな生活を送れるわけじゃない。
 今まで何度も下級妖怪が店を襲撃してきた事もあった。
 でもその度にマジックアイテムと口先で、その場を切り抜けてきたじゃないか!
 そうさ、僕にはまだまだやれる事がある。

 ドアの前には適当に箱を置いて塞いでおくが、隙間風が入ってくる。
 その上さっきの襲撃で、店内の室温はどん底だ。
 このまま布団の中で待っていたら朝どころか死を迎えることになるだろう。
 店内の魔法道具関係の棚を漁る。一つ一つ用途を確かめ、少しでもエネルギーを発散するものを探す。
 その内に、一つの道具が目に止まった。

 ダイナマイト・炎を出す程度の能力

 素晴らしい。まさに今の状況にうってつけの道具じゃないか。
 寒くて頭がぼーっとしてきたので能力の鑑定がアバウトになったが、炎を出すということは形状から見ても燃料の一種なのだろう。
 どうやらこの細い線に火をつけて使うようだ。
 寝室からライターを持ってきて火をつけた。小さな火花が弾けながら、線をたどってダイナマイトへと向かっていく。
 一応、大きな火が出ると危ないので、用心して1メートルほど離れておく。

 そういえばこの道具は外では武器としても使われているという話を聞いた。
 走る火花を見て、外の世界で戦争をしている人間達のことを考えた。
 そこでは拳銃、刀剣、戦車、爆弾、ありとあらゆる武器が使われお互いを殺しあっている。
 実に馬鹿馬鹿しいことだ。
 道具とはこうして正しい方法で使えば人を救うものになる。
 誤った使い方をして自分自身を傷つけるなんて愚か者のやることだ―――


 どかーん。


 愚かなのは僕でしたか。
 もうね、びっくりなんてもんじゃない。目の前でいきなり爆発ですよ?
 想像できますか本物のダイナマイトの爆発。普通に生きてる人はできないと思う。
 しかも1メートルの距離だからね。こんなもんリアルに想像できる人はとっくに死んでますね。
 最初何事かわからなかった。
 裏切りは二回目だからお前もか、ブルータスとか上手いこと考える前に、まず商品が全部吹き飛んじゃったのがイタイね。
 マスタースパークでもこうはいかない。直線的だからね。
 でもこのダイナマイトの効果範囲は同心円状。これが大きい。店ごと吹っ飛んじゃった。

 どうやらまたしても思考がおかしくなっていたらしい。だんだん狂気に陥る時間が長くなっている。
 正気に戻るとがっくりとその場に膝をつき、爆発でちりちりになったアフロヘアを抱えた。
 状況を確認する。柱一本残っていなかった。状況確認終わり。

 吹きさらしの雪原の中で、もう駄目だとその場に倒れこむ。
 すると、何だか目の前が明るくなった。
 天国の光だろうか。いや、違う。これは人工的な蛍光灯の光だ。
 目を開け、見上げるとスキマから紫が顔を出していた。
 背後には炬燵、テレビ、みかん。まさに極楽浄土。
 ああ、僕もそっちに入れてくれ。
 暗いので、紫はまだ倒れている僕に気づいていないようだ。
 香霖堂だった残骸を眺めて、どうしたものかと思案に暮れている。

 今起きれば、紫に助けてもらえるかもしれない。
 だが凍りついた体は動かない。無理に動かそうとすると体中が痛む。

「紫さまー。寒いから早く閉めてください」
「もうちょっと待ってよ。なんか香霖堂が大変なことになってるのよ」

 まずい、早く見つけてもらわないと…
 最後の気力を振り絞る。動け動け動け。
 痛みを我慢しながら、手をつき、立ち上がる。
 凍った口を無理やりひきはがし、大きく息を吸い込んで、叫んだ。

「助けてくれ!」

 紫はこっちを向いた。爆笑した。後ろの狐と猫も爆笑していた。
 そのままぴしゃりとスキマが閉じて、暖かい楽園は消え去った。
 頭を触った。アフロだった。

 僕は発狂した。
 喚いて、叫んで、ひとしきりわけのわからない文句をブツブツ言った。
 夜空を見上げると満月が出ていた。いつかの月の兎との戦いを思い出す。
 座薬型の弾幕を食らえと言うから、本当に喰らってやったら涙を流して喜んでいたっけな。
 普段の僕はあの時のことを思い出すたびに後悔していたようだが、今の僕にとっては大したことではなかった。
 むしろ、あのときの事を考えるだけで、意識が変性していく。力強い自分が目を覚ますのを感じる。
 体のどこかから、無限の力が湧き出ていた。
 そうか、ふんどし。力を貸してくれるのか。
 体が熱い。いつの間にか体を覆っていた雪は溶けていた。
 その場に服を脱ぎ捨て、ふんどし一丁の姿となる。
 これからやる事は決まっていた。黒幕を倒す。そうすればこの雪の異変も収まることだろう。
 気力は充実している。だが武力が足りない。
 瓦礫の中から、草薙の剣を探した。暗闇の中で光るそれを引っこ抜く。よく見るとそれは大根だった。
 大根か。それもいいだろう。古来よりふんどしと大根ほど組み合わせの良いものも無い。
 これで黒幕を倒す準備は整った。
 僕は走り出す。生きるために。

 体が軽い。自分にこんな速度を出せる力があるとは思っていなかった。
 黒幕はどこにいるかわからない。だが彼女がこの異変の原因ならば、寒いほうへと行けば自然と出会えるだろう。
 走る途中、雪が積もっている民家を見てふとある考えが浮かんだ。
 この寒さに困っているのは僕だけではないはず。普通の民家も見て回って、
 住人の無事を確認しておいたほうが良いかもしれない。
 そこで、走るついでに見かけた家は内部を確認することにした。

 小屋を発見した。
 かなり老朽化した小屋だ。住人がいるとすれば凍死しているかもしれない。助けないと。
 窓に全力で飛び込む。ガラスを割りながらの登場はさぞシビれるに違いない。
 住人が嬉しそうに悲鳴を上げた。髪の青い少女とけーねだった。
 僕はガラスを払って立ち上がると、大根を差し出しこう言った。
「もう大丈夫だよ。子猫ちゃん」
 僕の体は炎に包まれ、けーねにCaved!された。
 助けに来たと言うのに何てひどい仕打ち。僕は命からがら小屋から走り去った。

 しばらく走って行くと永遠亭が見えた。
 近づいていくと多数の兎が襲い掛かってくる。
 だが心配はいらない。
 クイック!クイック!と叫びながら腰を振れば、自然と兎の群れは消えていた。
 中に入り、長い廊下を抜けると、女医が机に向かって何か薬びんをいじっていた。
 こちらには気づいていないようだ。
 元気でよかった。そう思って腰を振ると、女医が気づいて振り向き、びっくりして薬びんを落とした。
 貴重な薬だったのか、相当怒って注射を7本打たれた。
 今のは僕が悪かったのかもしれないが、何もレインボーカラーの薬品を全部試すことは無いと思った。

 いよいよ寒さは極限に近づいてきた。しかし雪が積もってわからなかったが、ここは無縁塚じゃないか。
 この辺にはあまり人はいないな、先を急ごう。
 速度を上げようとしたとき、人影が見えた。死神と少女だ。
 どうやら、死神が雪の中で寝ているのを少女が発見して、家に運ぼうとしているようだ。
 小さな体には荷が重いようで、何度も引きずっては休んでいた。
 こんなときこそ僕の出番だ。この寒さの中では早急に運ばなければ手遅れになりかねない。
 僕はそこへ急ぎ、彼女を抱えるとすぐに遠くに見える小屋へ連れて行った。
 小屋に入るとすぐにドアを閉め、彼女をベッドに寝かせる。
 ん?しまった、これは死神じゃなくて少女だった。普段抑えられている欲望がむき出しになっているため、
 自然と小さい女の子のほうを運んでしまったのだろう。
 少女はこっちを見上げ、ベッドの上で小さくなってぶるぶると震えていた。
 やばい、そんな目で変態だなんて言われると…
 その時背後のドアが勢いよく開いた。そこに立っていたのは文字通り鎌を携えた死神。
 いや、違うんだよ。
 僕はずたずたに切り裂かれた後、元気になった閻魔少女に裁かれ、よたよたとその場を後にした。

 寒さの中心へと向かって歩いていく。
 全てが凍りついた世界。
 その銀世界の中心に、今まで何度と無く僕を苦しめてきた原因がへろへろと踊っていた。

「何をしているんだい?」
「雪ごいの踊りよ」

 大根で頭を殴る。黒幕はばたりと倒れ、雪が止んだ。
 勝った。
 ところでこの黒幕は一体何がしたかったのだろう。
 疑問は置いといて、早速家へ帰ろうとした僕は全身が動かなくなっていることに気づいた。
 どうやらもうこれ以上歩けそうに無い。
 僕はその場で固まったまま、さっきまで熱かった自分のふんどしが、急速に冷えていくのを感じた。
 さっきの注射が効いてきたみたいだな…
 いよいよ最後が近づいているのを感じる。ぼんやりとあたりの風景がにじんできた。
 ふと、新聞で見た霊夢のことを思い出した。
「博霊の巫女、雪を食って凍死」
 最後は幻覚が見えていたのだろう。
 きっと、僕と同じようにこうして孤独に力尽きていったに違いない――

 いや、いくら霊夢でも雪とご飯を間違えるだろうか?
 違う。彼女はわかっていたのだ。
 雪は雪であると。でも試したのだ、生きるために。
 たとえ新聞に載って幻想郷中の妖怪に笑われる可能性があろうと、彼女は生きようとした。
 ふと、その光景が目に浮かんだ。
 冷たくて体が凍えているのに、必死に雪を食べ続ける霊夢。
 魔理沙は笑う。咲夜は軽蔑する。
 彼女達には貧者の気持ちはわからない。彼女達には金が無いということがどういうことかわからない。
 そして霊夢は冷たくなる。雪に埋もれて。
 だがその姿はとても美しいものだっただろう。
 周囲への尊厳よりも、自らの命への責任を最後まで諦めなかったその人生は、健気で、力強く、美しい。
 彼女の敗因は、雪にカロリーがない事を知らなかったことだけだ。

 それを考えると、僕も最後の気力を振り絞ってでも店に帰るべきだろうと思った。
 動かない脚を無理やり動かす。バランスを崩して倒れるが、凍った体に鞭を打って立ち上がろうとする。
 しかし、いよいよ本格的に体が動かない。
 意識が朦朧としてきた。

 くそ…諦めるわけには行かないのに…
 ダメだ…眠い…











「あら、ダメよ。こんなところで寝ては」

 眼前が真っ暗になるまえに、目の前の空間に亀裂が入ったような気がした。





****





 目を覚ますと、そこは香霖堂の寝室だった。
 小鳥のさえずりが聞こえ、爽やかな朝日が窓から差してくる。
 寝ぼけた頭に昨日の出来事が蘇ってきた。
 あれは夢だったのか?
 布団から起き上がり、店の方へ出て行く。
 爆発で吹き飛んだはずの店は完全に修復され、道具もあらかた集めて棚に押し込められていた。
 道具が焦げているところを見ると、現実だった事は確かなようだ。
 紫が直してくれたに違いない。

 外に出る。まだ積もった雪は溶ける様子を見せないが、そのうち無くなっているだろう。
 今回の一件で雪はかなりトラウマになったから、これから溶けてなくなるまでは店に引きこもっておくとしよう。
 あたり一面に降り積もった雪を眺めていると、にゅっとスキマ妖怪が姿を見せた。
 不機嫌そうに口を尖らせている。

「お礼は無いの?」
「一度見捨てたくせに…」

 あのアフロを爆笑され、スキマが閉じた瞬間の屈辱感は、恐らく一生記憶に残るだろう。
 しかしダイナマイトを爆発させたのは自分なんだし、わざわざ店を修復してまでくれたのだ。
 紫には感謝こそすれ、恨む道理は無かった。

「ありがとう、紫」

 紫の顔がにや~っといつもの不気味な笑みへと変化する。

「どういたしまして~」

 その笑みを見たとき、僕の背筋にはぞくりと冷たいものが走った。
 紫が去ってもその時受けた直感的な不安は消えなかったが、どうせわからないのであまり気にしない事にした。
 そういえば昨日、満月を見て倒れてから記憶が無い。
 しかし、何だかとても楽しい夢を見たような気がする。そのせいで今朝は何だか晴れ晴れとした気分なのだ。
 何だかこう…生きるって素晴らしい!という感じがする。
 雪に濡れた森は、いつもとは違った匂いがして、何だか新鮮に思えた。


 しばらくして、バタバタと翼の音がした後、天狗の少女が入ってきた。そういえば新聞の時間だ。

「新聞でーす」

 だが、何かがおかしい。
 いつも窓から投げ入れるのに、今日に限って新聞を手渡ししてきた。
 何なんだろう?
 それを受け取ると、天狗のブン屋はニコニコと笑いながら去り際にこう言った。

「ちゃんと読んでくださいね!」





「香霖堂主人御乱心―ふんどし一丁で多数の女性に性的嫌がらせ」

 僕は自殺することにした。
どうも。初投稿のカプチーノです。
こーりんはやっぱり、悠然と構えてるより悪戦苦闘してる姿の方が似合ってるよなあ。
そんな事を考えながら、寒い室内で書き上げました。
楽しんで頂けたら幸いです。
カプチーノ
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コメント



0.4900簡易評価
4.80名前が無い程度の能力削除
寒さの描写と暖かさを求めて必死な香霖で笑った、本人にしてみれば悲劇なんだがw
5.100nanashi削除
こんなコーリンもありそうとか思っていた時期が僕にもありました。
FUNDOSIに回帰するまではね!
6.80名前が無い程度の能力削除
なんたる悲劇
11.90CACAO100%削除
紫やりやがったよ紫wwwwフハハハハこやつめwwww
23.60名前が無い程度の能力削除
面白かったけど褌で-40点
27.100名前が無い程度の能力削除
ゆかりんマジ外道www
31.90SETH削除
ダイナマイトのあたりで親が心配して見に来るほど笑ったw
32.100名前が無い程度の能力削除
笑い死ぬかと思ったwwwwww
36.70Admiral削除
チルノ、レティテラヒドスww
それにしても、後半のこーりんの壊れっぷりには、戦慄せざるを得ない。
特にえーきさまがカワイソス。
37.80はむすた削除
ゆかりんが爆笑したところで私も爆笑したw
38.80名前が無い程度の能力削除
>>古来よりふんどしと大根ほど組み合わせの良いものも無い。
ちょwwwwwwwwDQ4コマwwwwwww
44.80名前が無い程度の能力削除
すでにPS3が幻想郷入りしてることについて
51.50てきさすまっく削除
同じく褌で半減。面白かったですけどね。
53.100名前が無い程度の能力削除
クイック!クイック!
57.50名前が無い程度の能力削除
す、すみません。死ぬほど笑えたんですけど、個人的にやっぱり褌で減点…。
61.90名前が無い程度の能力削除
おもしろかったです。キレがあるってこういうのを言うのかな。
何度もお茶を噴き出しそうになりました。
63.80名前が無い程度の能力削除
>>店ごと吹っ飛んじゃった

この下りで食ってたミカンが鼻に逆流。
64.90名前が無い程度の能力削除
これはwwwwww
66.80しず削除
冒頭の落ち着いた状態から瞬間的に正気を失う香霖に爆笑。
ダイナマイトの件の腹筋破壊力が尋常じゃありませんよ・・・!
あと誰も言及してませんが、怯える映姫様はとても可愛いと思うんですよ。
67.無評価人修羅削除
江藤ヒロユキ吹いたwww
寒さのせいでまともな思考が保てずどんどん狂っていく香霖。
話のテンポもギャクのキレもすごく良かったです。
72.90思想の狼削除
この日は満月、香霖の思いが地獄から『あのお方』を呼び覚ましたんだ!
1秒間に10回の『褌』発言をしながら!!w
行動も『彼』そのままだしww
79.80名前が無い程度の能力削除
普段真面目で知的な人ほどぶっ壊れるとこれほどタチの悪いものは無い事が良く判りました(w
ダイナマイト辺りからの崩壊ぶりが面白すぎでした(多謝
81.80名前が無い程度の能力削除
あはははははははは。いや、ごめんこーりん、つい・・・
87.30てるてる削除
途中まで面白かったんだが。
94.60名前が無い程度の能力削除
こーりん・・・(涙

まともなこーりんかと思ったけどやっぱり褌なんですね・・・。
なのでこの点数に。
97.100時空や空間を翔る程度の能力削除
おばかさん。
100.100名前が無い程度の能力削除
チルノばかわええw
103.30あをぢる削除
ゆかりんがGJすぎてわろたwwwww
115.70名前が無い程度の能力削除
nice オチ
132.10名前が無い程度の能力削除
キモいもの読ませやがって