Coolier - 新生・東方創想話

Alice~聖夜燈影物語~

2006/12/25 12:50:10
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はぁ~、今年も誘えなかったなぁ。
私はアリス・マーガトロイドは後悔していた。
それは《魔理沙と二人きりのクリスマスについて》だ……


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


季節は冬で、今日はクリスマスね。
秋と冬の曖昧な境界線上にさしかかる頃から、
ずっと計画して彼女を誘うチャンスを窺っていたっていうのに……
叶うこと無かった彼女と過ごす聖なる夜。

私にほんのちょっとの勇気が足りなくて、
彼女に真正面から向かい合う自信が心細い物だったから、
誘う機会はいくらでもあったっていうのに、
その一歩を踏み出すことができなかった。

寒さに溶ける白い息みたいに、
私の魔理沙への気持ちも周りと同化してしまえばいいのに。
何度そう思い、何度その考えを振り払ったことだろうか。
日常に特別を溶かすことなど不可能なのにね。
馬鹿なことを考えてたわ。
そんな辛さや苦しさを感じる度に、思い出される白と黒の色彩。
彼女の笑顔が、彼女の優しさが、私の中に暖かき色を燈す。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『もし私と彼女が一緒に今夜を過ごしてたらどうなるのかしら?』


「ツリーが綺麗に飾り付けられてるじゃないか」
「そうでしょ。頑張って準備したんだから」
「上海達が頑張ったんだな。上海、偉いぞ」
「しゃんはい、いぱ~い、いぱ~い、がんばったの♪」
「……私も頑張ったのに」
――のっけから私をからかう意地悪な魔理沙。
準備を張り切ってたであろう私を華麗にスルーする。
彼女は素直に私に賛辞なんてくれずに人形達を褒めている。
これは正直寂しいわね、なんてことを考えてると、
それがきっと表情に出るのよね、私って。
彼女は気に掛けてくれるのか、
「この人形の飾りとか可愛くていいな」
と分かりやすい私への優しさを見せてくれる。
人形を作るのなんて私しかいないじゃない。
ホント不器用で真っ正直なんだから。
もっと気の利いた科白を私にくれないのかしら。
それでも、そんな言葉でも、
包み隠さない好意的な一言が、私の想いを輝かせる。

「おぉ~、御馳走達が私を大歓迎してるぜ」
「歓迎してるのは私。御馳走を作ったのも私。OKかしら?」
「いやいや、この私を誘惑する香りは私の心を掴んで放さないようだ」
「まりさ、ゆうわくされてるの? どきどき、わくわく♪」
「……で、その心は何なの?」
「早くこいつらの歓迎を口より受けたいっ!」
――その瞳で私も見てもらいたいものだわ。
歓迎は心より受けなさいよ、と思いながら、
御馳走を見る目より私を見る目の輝きが劣ってることに、
気付かなかったことにした。
さぁ、食べましょうと促すと、
彼女は私が存分に腕を振るった食べ物にお酒にと飛び付いた。
じっくりと味わってくれないと承知しないんだからねっ!
少なからず期待を込めたその気持ちを知ってるみたいに、
「アリス、うまいぜ。嫁さんに欲しいくらいだぜ」
と、食べ物に関してはすんなりと私に心地良い響きをくれる。
偽りも意地悪もない言葉。
でも深い意味もない言葉。
それ以上の何かがない、そのままのもの。
欲しいんじゃなくて、欲しいくらいなのよね……
そう、今の彼女そのままの一言。
それは彼女から私に対してみたいなね。

「き~よし こ~のよる
 ほ~しは ひ~かり――」
上海人形合唱団。
上海と蓬莱が歌を担当し、他の人形たちが音を奏で、
聖なる夜に安らぎが響き渡らせる。
その歌声がその夜を特別なものへと変えていく。

私は魔理沙にプレゼントを渡した。
何の不純も混じらない一途な愛情を紡いで、
その想いを丹精に魔力に込めて作った人形を贈った。
お守りみたいなものね。
「サンキュだぜ、アリス」
はい、私にもちょうだい、と言うように手を差し出す。
が、彼女は……「?」……という表情を差し出してくる。
……忘れてたみたいね。
プレゼント交換するって言ってたのに。
「!」って今更遅いわよ。
「私っていうプレゼントはどうだ?」
と冗談めかして誤魔化そうとする彼女。
……まぁ、私はそれでもいいんだけどね――

――「そんなことより雪でも見ようぜ!」
不意に私の手を掴み、外へ連れ出す魔理沙。
えっ、えっ、何よ、急に。雪って、だって今日は……
見渡す限りに雲一つない静かな夜じゃないの。
「氷精も冬の妖怪も気が利かないようだな」
他人任せじゃないの。
ムードもへったくれもないわ。
はぁ~、魔理沙にそんなこと望むのも酷ね。
そこがらしいっていえば、らしくて良いんだけど。
「雪は見えないが、おあつらえ向きの空だぜ」
そんなに雪に期待してなかったみたいに、
一つ嘆息し空を見上げる。
何がおあつらえ向きなのよ?
「ちょっと待ってな。よっと!」
私を置き去りにして、
箒をいつの間にか手にした彼女は
その静寂を閉ざしに行くように飛翔する。
魔力で飛んだ軌跡を描くように、
光りを撒き散らしながら空を翔る彼女。
雲無き空を飾るように、縦横無尽に飛び回る。
魔力の残滓が彩る視界。
そうして遥か上空にいる彼女を幻視で見やると、
止まってこっちに合図していた。
その後、聞こえないけれど伝わる声が。
声はこう言っていた。
《魔符――スターダストレヴァリエ》と。
広がる星々。煌く夜空。
今なお残る魔力の残滓が、
その星々に影響されたように、
色濃く鮮やかな輝きを燈す。
何もない空を飾りつけた彼女。
空というキャンバスに、彼女は彼女の輝きを燈らせた。
その行為は私にも同じ結果を与えてくれた。
少し暗くなっていた私の心に、再び暖かさが生まれていく。

私を少し邪険に扱う意地悪な彼女。
私の心を揺さぶる癖に、大事な所には触れない彼女。
でも、しっかりと外さない所は外さない彼女。
どんな所も全部まとめて、
私、アリス・マーガトロイドは霧雨魔理沙が好き。
彼女からの《聖なる夜に満天の星》のプレゼント。
この輝きはいつか消えてしまうだろうけど、
私に燈った彼女という光はこれからも消えないだろうと――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……アリス! アリス!」
――そう、星空のクリスマス。
これくらいの気の利かせ方はしてくれるわ、きっと。
それでプレゼントを渡し終えた魔理沙は、
また私の側に来て、今度は私の名前を優しく囁いて……
「おい、大丈夫か。妄想中悪いが、何か始まるようだぜ」
「えっ、あっ、魔理沙じゃない。何よ!?」
「外でチルノとレティが気を利かすってよ」
気を利かす?
現実に引き戻された私。
ぼぉーっとしてたみたいね。
手を引く彼女はココにはいないみたいね。
魔理沙はそそくさと何かを始めるっていう
《外》へと行ってしまった。
ここは、《いつもの所》なのよね。
私も魔理沙に続く。
外には魔理沙だけでなく、人妖様々なるものが集っていた。
「もう、催し事に神社に集まるのやめて欲しいんだけど……」
片付ける身にもなってよ、とぼやく巫女。
ワイワイガヤガヤと、周りがそれをつっつくように、
「いいじゃないの。ここが一番集まりやすいんだし」
「食べ物とかお酒とか集まって逆にいいんじゃない?」
「宴会は皆でした方が酒もおいしいよ~」
等と囃し立てるのに、溜息を吐かずには入られない霊夢。
私もそれを真似る。吐く理由は似たり寄ったりね。

博麗神社にて行われてるクリスマス会。
霊夢と魔理沙の人望というか縁というか、
何故か季節の催しや宴会は大抵ここで行われる。
そういったものをささやかなモノで過ごそうという者はいなく、
こうして集まるのが最早当たり前になってしまっているのよね。
幸か不幸か、この聖夜のイベントも一ヶ月前には決まっていた。
幸は、一応は魔理沙と過ごせること。
不幸は、魔理沙と二人では過ごせないこと。
……これ以上望んじゃダメなのかしらね。

雲一つ無い空。
何もかも受け止めてくれそうな空。
飾りを付けるにはもってこいの空。
氷精と冬の妖怪はそれを雪により白く包む。
「………」
ホワイトクリスマスだけど、
私にはそんなに感慨が湧かなかった。
だって、ねぇ、私には……
ちょっとくらいなら、
こんな綺麗な夜だから、願いが叶うかしら?
「ねぇ、魔理沙」
「ん? 何だ、どうした?」
「お願いがあるんだけど――」
夢とか想像とかじゃなくて、
願わくば、この空に星々を。
こんな特別な日だからか、ちょっとの勇気がここに生まれる。
来年はこの勇気を出して二人で……
投稿初です。よろしければ感想おねがいしますです。
独りが似合うアリスさんですが、まぁ、こんなのもアリかなと。
でもケーキにロウソク一本で独りクリスマスのアリスさんがやはり……。
絵板にあった素敵なアリスに触発され、今日を捨てたアリススキーでした……
新刻慧
[email protected]
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コメント



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11.80CACAO100%削除
>絵板にあった素敵なアリスに触発され
俺の細胞ウン億個が泣いた