Coolier - 新生・東方創想話

恨めしや Full Moon

2006/12/19 21:03:27
最終更新
サイズ
1.61KB
ページ数
1
閲覧数
561
評価数
4/21
POINT
730
Rate
6.86

 ある満月の夜、大きな館の門前にその主と従者、二人を迎える門番がいた。

「いつ見ても立派よね」と主。
「そうですね。幻想郷では比肩できるものはありませんわ」と従者。

 何を今更、と門番は思ったが無粋というものだろう。口には出さなかった。

「たまに根こそぎ取っ払いたくなるのだけれど。特に今夜」
「そうですね。このナイフでよければ閃かせましょうか?」
「いくら大きいとはいえ、これはこれで必要な大きさなのですからよしましょうよ……」

 寝床と仕事場を同時に失くす訳にはいかないので、脅えながらも口を挟む。
 ナイフで破壊というのも、この従者であれば可能だと思えてしまうのがまた恐ろしい。

「そうは言っても、こう毎日毎日眺めていると、ねぇ?」
「そうですね。近い将来精神的に参ってしまうかもしれませんわ」

 冗談と思えればいいのだろうが、先ほどから二人の目は段々と鋭くなっている。
 主はともかく、この広大な館を取り仕切る従者の苦労を知っている身としては、精神的に参るというのも頷ける。
 だが、生活のためには止めなくてはならない。きっと二人とも満月の狂気に中てられているだけなのだ。

「えっとーですね。私としては一時の衝動でこれほどのものを失うのは、ちょっと勿体無いかなーなんて思うわけですが」
「と、言うことだけれど、それほどのものに対する一時の衝動はどれほどの結果を生むのかしら?」
「そうですね。不幸な面もあるでしょうが、私たちが得る幸福はそれ以上に大きいかと」
「なるほど。それなら思い立った時にやるべきよね。で、あなたにはまだ異論があるのかしら?」

 こちらに向けられた視線には、異論を許さぬ脅迫の色が宿っていた。
 その視線に完全に畏縮してしまった私の取るべき行動は追従、延いては服従である。
 私の返答を受けた主は、狂気と狂喜を孕んだ瞳をこちらに向け、

「そう。じゃあ咲夜、目の前の満月をお願いね」
「よろこんで」
初めまして、青ざめた緑茶です。これからよろしくお願いします。
ショートショートの超短編ですが、楽しんで貰えたのなら幸いです。
青ざめた緑茶
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.480簡易評価
11.70名前が無い程度の能力削除
読後感はグロいんだが、情景だけ考えるとコメディに思えるから困るw
あとショートショートは名前の通りこんな長さが普通なのか?うまいと思えど物足りん
13.無評価青ざめた緑茶削除
コメントありがとうございます。これはショートショートの中でも短い部類ですね。
今回、超短編を目指していた為推敲時に削ぎに削いだので、物足りないという感想を素直に受け止め、今後肉の上手い残し方を考えていきたいと思います。
14.30削除
結局お嬢様と咲夜さんは何を壊そうとしてるんでしょうか?
言葉どおりの満月だと美鈴の寝床と仕事場を同時に失くすとお嬢様の毎日毎日眺めるの意味が通らないし、
美鈴の胸のような気もするのですが、やっぱり寝床と仕事場が関係ない。
ちょっと難解です。
15.無評価青ざめた緑茶削除
コメントありがとうございます。投稿から数日が経過しているので箇条書きしますと、
・すれ違い会話
・地の文はすれ違いの為のイメージ修正
となります。
最終的な答えは合っているので、上記二つを考慮しながら経緯を楽しんでもらえれば幸いです。
16.70削除
あ~なるほど。
美鈴が門の事と勘違いしているんですね。
返答ありがとうございます。楽しめました。
22.80名前が無い程度の能力削除
コメントを見て「あー」と納得しました。
読み返すと笑えますねw