Coolier - 新生・東方創想話

全ての敵で全ての味方、人それを中立と言う 2

2006/12/13 09:11:36
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レミリア=スカーレットが腑抜けになった。
そのニュースはあまり広くない幻想郷中に伝わるのは一瞬だった。
原因などどうでも良い、ただレミリアがその力を失ったという事実は妖怪達にとっては吉報である。
何故ならレミリアを抑える事ができれば事実上紅魔館が支配できるからだ。
だから妖怪達はこぞって紅魔館を襲撃しようと大挙をなして押し寄せた。
「彩符『極彩颱風』!!!!」
だが一人として紅魔館に侵入出来た者は・・・。
いや、門の中に入ることが出来た者は一人としていなかった。
「紅魔館が門番!紅美鈴!我主を害する者は排除する!」
「「「「メイド隊第9部隊!通称門番隊もお相手いたします!!!」」」」
紅魔館の門の前には沢山のメイドとそれを指揮し、自ら先頭に立って戦う美鈴の姿があった。
「うるせえ!」「やっちまえ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
「「「「隊長仕込みの武術!ご披露いたします!」」」」
徒手空拳で戦う美鈴とメイド達。
所々服は破れ、巻かれた包帯が赤く染まり、倒れ動かなくなる者が居ようと彼女達は敬愛する主の為に戦い続ける。
例え今腑抜けであろうと、いつかきっと元の主に戻ってくれるはずだ。
その淡い期待を胸に彼女達は戦い続ける。
「くっ!」
「隊長!」
しかし疲労と怪我、さらには人数の差から徐々に美鈴達は押され始めた。
「耐えるのよ!私達は紅魔館の門番隊!逃げる事は許されないのよ!」
「「「「はい!!!」」」」
「よく言ったわ美鈴!それでこそ真の門番ね!」
その声と共に大量のナイフが飛来する。
ナイフは次々と妖怪達に突き刺さっていく。
「がぁぁぁ!」「いてぇよぉ!」
慌てて逃げ出す妖怪達。
「咲夜さん・・・」
「「「「メイド長・・・」」」」
振り向いた美鈴達の目にはナイフを構える咲夜と同じようにナイフを構えたメイド達だった。
「「「「紅魔館メイド隊第1部隊!通称護衛部隊!これより門番隊の援護を開始いたします!!!」」」」
外の門番隊、内の護衛隊。
これが紅魔館の戦闘部隊である。
肉体派の門番隊と技巧派の護衛隊が組めば大量に押し寄せる烏合の衆の妖怪など敵ではない。
「ごめんなさい美鈴。思ったより時間が掛かってしまって・・・」
「必ず来てくれるって・・・信じてましたから・・・」
咲夜たちが遅れてきたのには理由がある。
パチュリーが紅魔館全体を覆う結界を作るのを手伝っていたのだ。
大掛かりな魔術ほど手間と時間が掛かるものである。
「これでとりあえず雑魚妖怪達は近寄れないわ」
「そう・・・ですね・・・」
美鈴が倒れそうになるのを咲夜が支える。
「大丈夫?」
「はい・・・怪我は大した事ありませんから・・・」
事実美鈴の怪我はあまり酷くない。
門番隊の面々も大きな怪我を負った者はいるものの死んだ者や命に係わる怪我を負った者はいなかった。
「全く・・・頑丈なメイド達ね・・・」
「鍛えてますから・・・」
苦笑する咲夜に笑みで答える美鈴だった。

一方その頃・・・。
「たらったらったらったウサギのダンス♪」
竹林を陽気に歌いながら飛び回っているのはてゐである。
健康第一な彼女の日課はこうして毎日竹林の散歩をすることだ。
「今日も良い天気だね~。相変わらず竹ばっかりだけど~」
この竹林には永遠亭の妖怪ウサギ達以外の妖怪は住んでいない。
その為に永遠亭の面々は今幻想郷に起きている異変にまったく気がついていなかった。
「っと、もう竹林の外まで来ちゃったか。帰りは別の場所をあるいて帰るかな~」
そういっててゐが帰ろうとした時だった。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
「え!何!?」
何者かの悲鳴が聞こえてきた。
てゐはその悲鳴が聞こえてきた方へ走り出した。
普段から詐欺をしたり人をからかったりしている彼女だが基本的にはお人好しなのだ。
そしててゐが見たものとは・・・。
「妖怪・・・殺す・・・」
妖怪の血で赤黒く染まった巫女装束を着た霊夢の姿だった。
「っ!」
喉が引き攣り悲鳴すらでない。
恐い。
何が?
恐い。
誰が?
恐いこわいコワイ。
メノマエノニンゲンガ!
「妖怪・・・見つけた・・・」
「あ・・・あ・・・あ・・あ・・あ・あ・・・あああ・・・あ」
てゐは必死に逃げようともがく。
しかし恐怖で腰は抜け、手足に力は入らず、赤子のが早く移動できるであろうぐらいの速さしか出せない。
「・・・死ね」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
霊夢の手に溜まる霊力がてゐの生存本能を突き動かし最後の悲鳴を上げさせた。
「てゐ!」
キィィィィィィィィィン!!!!
甲高い音が響く。
その音と共に霊夢がよろめく。
ウドンゲの狂気の魔眼が霊夢の三半規管を狂わせたのだ。
ウドンゲはてゐを抱えると全力で永遠亭を目指し飛んでいく。
「てゐ!しっかりして!」
「あ・・・あ・・・あ・・・ああ・・・あああ・・あ・・・ああ・・・」
恐怖で未だに硬直したままのてゐに声をかけるが全く反応が無い。
彼女は完全に恐慌状態に陥っている。
(永遠亭までまだ距離がある・・・いくら私の目で狂わせても霊夢じゃ直ぐに追いついて来るわ・・・)
ウドンゲは永琳の使いで近くの人間の村まで薬を届けに行っていたのだ。
その時ウドンゲは最近巫女様が頻繁に無害な妖怪まで退治をしているからあんたも注意したほうがいい、と言われたのだ。
嫌な予感のしたウドンゲは急いで永遠亭に帰ろうとしたところてゐの悲鳴を聞きつけたのだ。
(凄い殺気・・・まるであの時みたい・・・)
ウドンゲは嘗て自分が居た月の戦場を思い出した。
輝夜が月を追われた後、月は後継者を巡って真っ二つに別れ、血みどろの戦場と化した。
昨日までの友人が今日には仇になる。
ついさっきまで笑いあっていたはずの友人が屍となっている。
そんな戦場をウドンゲは潜り抜け、そして逃げ出してきた。
(殺気に晒される事に慣れてる私ならいざ知らず・・・てゐにこの殺気は毒に等しいわ・・・)
ウドンゲとてこの凄まじい殺気には耐え切れる自信がない。
今も冷や汗が噴出し、恐怖で震えそうになる体を無理矢理押さえつけているのだ。
ましてやここでの生活は平和すぎた。
それがウドンゲの戦士としての実力と勘を大いに低下させていた。
(もう直ぐ永遠亭につくはず・・・!)
そう思った時だった。
「うあ!!!」
ウドンゲは左足から焼けるような痛みを感じ集中を欠いて墜落した。
「く・・・てゐ・・・」
必死にてゐを庇った為にてゐには怪我がない。
しかしウドンゲの左足は膝から下が完全に消え去っていた。
「妖怪・・・殺す・・・」
ゆっくりと降り立つ霊夢の右手にはニードルが握られている。
辺りを良く見渡せば竹の何本かが何かに貫かれたように折れていた。
「万事・・・休すか・・・」
激しい痛みで狂気の瞳が使えるほどに集中できない。
飛ぶ事すらままならない。
後はただ死を待つのみ・・・。
「師匠・・・」
「呼んだかしら?」
ウドンゲの声に永琳の声が答えた。
「・・・妖怪とも人間とも判断出来ない生物に遭遇・・・」
「あら、酷い言われようね」
永琳は霊夢の前に立ちながら言った。
「そんなに殺気を出さないの。家のイナバ達が怯えて仕方がないわ」
「・・・邪魔者は排除する・・・」
霊夢は手に霊力を溜め始める。
「ウドンゲ!早く逃げなさい!」
「師匠!」
「私でもひきつけて置くのが精一杯よ!早くしなさい!」
「くっ!」
ウドンゲは足の痛みを堪えながら飛んでいく。
「妖怪・・・逃がさない・・・」
「悪いけど私はしつこいわよ。死んでも喰らい付くわ」
永琳と霊夢の戦いが始まった。

「くっ・・・!」
「「「レーセン様!てゐ様!」」」
永遠亭の玄関に倒れこむようにしてたどり着いたウドンゲをイナバ達が取り囲む。
「てゐをお願い・・・私は自分でなんとかするから・・・」
「てゐ様を自室に!後医療道具を早く!」
数人のイナバがてゐを担架に乗せて運んでいく。
そして別のイナバが慌てて運んできた道具で血止めを行う。
「・・・姫様、お願いします」
「・・・分かったわ」
輝夜はイナバに促されるとゆっくりと結界を展開していく。
「姫様!まだ師匠が外に!」
「知っているわ・・・これは永琳の頼みよ・・・私の事は無視して結界を張ってほしいって頼まれたのよ・・・」
輝夜の五つの道具がそれぞれ結界の要となり、強固な結界が施される。
「師匠・・・そんな・・・」
「レーセン様!」
ウドンゲはフラリと倒れた。
「永琳・・・一時のお別れよ・・・」
輝夜は外を眺めながらボソッっと誰にも聞こえないように呟いた。

続く
2話目を公開します。誤字脱字の指摘。感想等お待ちしております。
儚夢龍也
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コメント



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2.70CACAO100%削除
元凶のアミュレットを破壊するのは誰か!否な予感がしますね結構
もしかして・・・数人フラグ踏んでる?
9.無評価名前が無い程度の能力削除
中立ってのは誰の味方でもないってことなんだが……