博麗の巫女は、困窮していた。
季節は秋である。
秋と言えば、色んな秋があるが、その中の一つに『食欲の秋』なるフレーズがある。季節は冬を迎えるに当たって、栄養を蓄えた、色とりどりの『幸』たち。煮てよし焼いてよし生でよし。何をしても美味しいもの達。
しかしながら、彼女にはその縁がない。
「……きのこは食べ飽きた」
ぼそりとつぶやき、ずず~、とすするのは、実は松茸のお吸い物だったりするのだが。
「飽きた飽きた飽きた~! 何なのよ、裏の山でサバイバル生活ばっかりっ! 私にはお肉はないの!? お魚はないの!? 色とりどりのご飯はないの~!?」
日々を自給自足に頼っている、というわけではないのだが。
しかしながら、金銭収入乏しいこの神社において、日々を生き抜くためにはサバイバーな日々を送らなければならない。幸い、秋は山の幸が豊富である。裏の山に分け入れば、先のきのこやたけのこや、様々な山菜が手に入る。
だが、人間、植物だけでは生きていけないのだ。青虫ではないのだ。それ以外のものを口にしないといけないのだ。
悲しいかな、それらには、全く縁のない巫女である。
「釣り糸垂らしても魚は釣れないし、試しにイノシシとか狙ってみたら、あいつらグレイズついてて弾幕きかないし! 何なのよ、もう!」
ばんっ、と手にしていた箸を腹立ち紛れにテーブルに叩きつける。
――だから、必然的に、食事は抵抗しないもの達が中心になる。数多い友人(?)によって仕込まれた、野山の智恵。それを生かして、日々、あっちこっちから食料を背中一杯のかごに詰め込み、友人の魔法使い製作の氷室の中に放り込んで保存しているわけなのだが。
「私はもっと他のものが食べたい!」
ある意味では、贅沢な悩みでもあったりするのだが。
しかし、今月の金銭収入が百五十円ではう○い棒十五本買ったら終わりだ。いや、今の世の中、『しょうひぜー』なるものが導入されたから十四本か。とにかく、何にも買えないのが現状。それでなくとも、冬を迎えるに当たって、暖房用具なども買い込まないといけないというのに。
「食事は大切よ。だけど、日々の生活も大切よ。私はどうしたらいいの? 考えるんだ、考えるのよ、霊夢。そう、考えればいい考えも浮かぶわ。何せ、私は巫女なのだから。ああ、神様。この迷える子羊に、どうかお慈悲を」
『諦めろ。ばい神様』な天啓が降りてきて、天井めがけて針を投げつけた後、たまたまそれが屋根裏を荒らし回るねずみを直撃していたのだが、とりあえず、現状、それは関係ない。
「あ~ん! 何かもっと彩り鮮やかなご飯が食べたい~! ご飯~、ご飯~!」
床の上にひっくり返って手足をばたばた。どこぞの吸血鬼しかやらないようなだだっ子ぶりを発揮して、その、あまりのむなしさにため息をつく。
ひとしきり暴れた後、むくっと起きあがって、「でも冷めたらもったいないよね」ときのこづくしのご飯に手を伸ばす。好き嫌いはいけません。
「はぁ……」
きっかりきれいに食事を終えて、ごちそうさま、と行儀よく手を合わせて。
それを流しに下げてお茶を用意し、戻ってきたところで、
「おー。邪魔してるぜ」
「帰れ」
「……いきなりかよ」
「何しにきたの? 何にもおごらないわよ。お茶も、最近は高くなってきてるんだから」
「みかん」
「さあ魔理沙、外は寒かったでしょ? 今、お茶を用意してくるからね」
「……私、お前のそう言うところ、好きだぜ」
部屋の中に堂々と居座っていた黒白が取り出した、箱入り一杯のみかんを前にすっかりと気をよくして、戸棚の中に後生大事にしまっていたたっかぁ~いお茶を用意して戻ってくる霊夢。そして、卓について、早速みかんを一つ。皮をむいて丸ごとぽい。ちょっとお行儀が悪い。
「ん~、甘酸っぱくておいし~」
「……いや、ほんと、お前のこと好きだわ」
つくづく、色んな意味で。
魔理沙は、ずず~、とお茶をすすった後、こほん、と一つ咳払い。よけいなことを考えていた頭の中身を切り替えて、ずいっと身を乗り出す。
「なぁ、霊夢。実はな、宴会したいんだけどさ」
「え~? また~?」
「そう、また、だ。だがな、いつも通りの『また』じゃないぜ?」
「すま……」
「ストップそれ以上言うなっていうかお前巫女だろ!」
とんでもないことを口に仕掛けた霊夢の口ふさぎ、顔を真っ赤にして、魔理沙。おや、果たしてこやつは意外と純情なのか? そんなことを考えながら眺める巫女の前で、「全く……恥じらいってものがないのか」とぶつくさつぶやく彼女。なるほど、実は意外と、な一面もあるらしい。
「ま、まぁ、とにかくだ! 宴会だよ、宴会!」
「ん~……まぁ、いいけどさ。ちゃんと片づけして帰ってくれるなら」
「それについては心配ない。
だがな、今回の宴会は、ちょっと毛色が違うんだ。それで、私はお前に力を借りたい」
「ふーん。何すんの?」
「ふっふっふ。見て驚け!」
ごそごそと、かぶっていた帽子の中から取り出される一冊の本。つくづく、あの中はどうなっているのか疑問で仕方ないが、聞いても仕方ないだろう。きっと、『これぞ魔法の力だぜ』とわけのわからない、答えになっていそうで全くなってない答えを聞かされることになるのだろうから。
「ん~……なになに?」
取り出されたのは、『地方の祭りガイドブック』なるものだった。色鮮やかなカラー写真が特徴的なそれを、ぺらぺらとめくっていく。
「パチュリーから借りてきたんだ」
「強奪してきたんでしょ」
「いや、『そんなの読まないから、どうぞお好きに』って言ってたぜ?」
「にしちゃ、手あかまみれね」
「大方、読み飽きたんだろ」
これは意外。あの引きこもり魔女が、実はお祭り好きだったとは。果たして、その予想が正しいかどうかはわからないが、その本にはあちこちに栞のようなものも挟まっていた。こんな祭りをしてみたい、という願望の表れなのだろうか。
「それでだな。これ、これ」
開かれた一ページには、こんな文字が書かれていた。
「……いもにかい?」
「そうだ」
「ふーん……」
大勢の人間が、でっかい鍋を囲んでいる。鍋の中には肉に野菜に里芋に、それらがみそをベースにした出汁でぐつぐつと煮込まれている写真は、実に食欲をそそる。
「……面白そうね」
「だろ~?」
「で? これをやりたいから、場所を提供しろ、と?」
「いや、実は場所の目星はついてるんだ」
「案内してくれんの?」
「もちろんだぜ」
さあ、善は急げだ、と立ち上がる。
外に出るのは、寒くなる時期、億劫なものなのだが、その先に待っているものには興味が引かれた。仕方ないわね、と彼女も腰を上げて、魔理沙と一緒に空に向かって飛び立つ。
秋の空はきんきんに冷えた冷気が漂う空間である。冬は、ここに身を切るような凍てつく息吹が混ざるのだが、まだこの時期はそこまでではない。魔理沙と一緒に空を漂うこと、およそ一時間。
見えてきたのは、大きな河原だ。
「……うお」
その河原に、河原のでかさに負けない、でっけぇ鍋が置かれていた。
「こ、これは……」
「ふっふっふ。こーりんにもらってきたんだ」
霊夢達の身長よりも高さがある。幅は、やっぱり彼女たち一人分くらいだろうか。見上げるほど巨大な鍋が、でんと河原に鎮座しているというのは、ある意味、絵になるものではあった。
「あんた、これ、どうやって運んできたのよ……」
「いいもんだろ?」
疑問への返答はなかった。
まぁ、いい。この際だ。気にしないことにしよう。気にしちゃ負けだ。色々と。うん。そうだ。そうに違いない。私が決めた。今決めた。
「……で?」
「ここを会場にするつもりだ」
ぐるりと辺りを見回して、魔理沙。
そこは、まぁ、先にも述べた通りに河原である。大小様々な砂利や石ころの敷き詰められた空間。彼女たちの背後には、見事な色に染まった秋の森がある。あれを見ながら、ここでわいわい騒いで鍋でぐつぐつ芋煮会。うむ、なかなか風流だ。
「さらにだな、もう一つ、趣向を凝らしたい」
「趣向?」
うむ、とうなずく魔理沙が示すのは、その森の反対側。河原の対岸だ。
そこは、断崖絶壁になっていた。高さは、およそ十メートルはあるだろうか。そこを示し、「あれだ」と一言。
「……崖で何するってのよ」
滑り台でも作ろうというのだろうか。直角の滑り台を? 落ちたらお尻が痛いなんてもんじゃないだろう。口には出さないまでも、『何考えてんのよ』な視線を送る霊夢に、なぜか、魔理沙は不敵な笑みを返す。
「残念ながら、この魔理沙さん、常に用意は万端だぜ」
「……は?」
「この辺りをダウジングで調べてみたんだが、どうにも、温泉脈があるみたいなんだ」
「へぇ……」
「そいつを、今から掘り出す」
彼女は崖の方へと歩いていく。それに続き、霊夢も足を進め、「そこに穴を掘ってくれ」との指示を受けて、河原の砂利を片づけ、ざっくざっくと穴を掘る。もちろん、途中からめんどくさくなって夢想封印で吹き飛ばしたのは言うまでもない。
深さは、およそ五十センチほど。左右の幅は三メートル。もう少し広くできないか、という問いに「時間をかければやってあげるわよ」と一言。それを受けて、魔理沙も満足したのか、取りいだしたりますは、
「マスタースパーク!」
「って、こらぁ!」
放たれる虹色怪光線は、そのまま断崖絶壁の中程に突き刺さり、轟音を上げて爆裂した。頭の上から降ってくる石のかけらなどをグレイズしてよけながら「何すんのよ!」と抗議の声。だが、それも長くは続かない。
吹き飛んだ崖の一部に亀裂が走り、そこから外に向かって滝のように水がほとばしり出てきたのだ。しかも、それには硫黄の臭いと湯気もセットで。
「どうだ。ビンゴだぜ」
「……」
開いた口がふさがらない、とはまさにこのことか。
魔理沙に指示された箇所に掘った穴へと、滔々と水が流れ込んでいき、あっという間に即席の露天風呂が完成してしまった。さらにお湯は止まらず、どんどんと溢れていく。それがもったいないということで、霊夢に結界を展開させ、一度、お湯の流出を止める。
「へっへっへ。私の頭は伊達じゃない!」
「……まぁ、色々と規格外な奴だとは思っていたけど」
そっと、お湯の中に手を浸す。
……熱い。入れたもんじゃない。
「そこで、川の水をだな……」
ざくざくと、河原を掘って、小さな支流を即席温泉の中へと注いでいく。
「ま、こうやっておけば、一時間もすれば入れるようになるだろ」
「……ふーん」
「さあ、次はメンツ集めと材料集めだ! 決行は今夜だからな。これから忙しくなるぜ」
「まぁ、そうでしょうねぇ」
「秋の夜長に、のんびり温泉と美味しい芋煮会! 客が集まらないはずはない!」
「……あんたってさぁ」
ん? と振り返る魔理沙。
「ほんと、自分が楽しいと思うことには全力よね」
「まあ、な」
それが私の自慢だ、と親指立てて笑顔を返してくれる。
……まぁ、それならそれでいいか。
事態を素直に受け入れて、霊夢は肩をすくめる。それじゃ、急ぎましょうか、と。彼女は早速、宴会の幹事二号としての役割を果たすべく、空へと飛び上がったのだった。
――さて。
芋煮会の開催は夜と相成った。空に満点の星々が輝く頃、ちらほらとメンツが集まりはじめ、今ではずいぶんと、深閑とした空間もにぎやかになってしまっている。
河原に集まったのは、いつもの如く、いつもの面々である。
「うーん……ちょっと味が……。慧音さん、おみそ、追加してもらえますか?」
「ああ、わかった。しかし、美鈴殿のこだわりはいつ見てもすごいものだな」
「料理界の龍として知られる女には、むしろそれが当然ね」
「そうですねぇ。っていうか、幽香さんもお手伝い願いたいんですけど」
「べっ、別に、私は、たまたま通りがかっただけよ!」
「まあ、そう言わずに。
美鈴さん、頼まれていたおいも、持ってきましたよ」
「ありがとうございます、妖夢さん」
鍋担当は、美鈴を筆頭に、監視が慧音、補助が幽香と妖夢である。
巨大な鍋を火にかけて、はしごを使ってその上に上っての、豪快な煮込み作業だ。抱えるほど巨大なお玉としゃもじで、力一杯、鍋の中をかき混ぜれば、夜の河原にみその香りと出汁の香りが漂う。
「やっぱりぃ、夜はぁ、みぃんなでぇ、お酒よねぇ」
「ええ、全く」
「あらあら、ご相伴にあずかり、どうもすいません」
「……小町。何で私はジュースなのですか?」
「四季さまにお酒を飲ませたらえらいことになるからです」
白玉楼の主にマヨヒガの主、そして永遠亭の表の主に閻魔様。そろって、早速酒を酌み交わしている。
河原にはあちこちにシートが敷かれ、その上に、料理や酒がずらりと陳列されているのだ。それをせっせと運ぶのはというと、
「あの、咲夜さん。こっちのワインはどこですか?」
「それはあっちね。ああ、ウドンゲ。その酒樽は、向こうの方に固めておいて」
「あ、はい。わかりました」
「相変わらず、鈴仙さまって人にあごで使われるよね」
「何か言った? てゐ」
「うーん、なーんでもー」
「やれやれ……。しかし、すごい量だな。つまみを作るのが追いつかないよ」
咲夜に鈴仙、そして何だかんだでしっかりとそのお手伝いをしているてゐに、割烹着姿がこの上もなく似合うおさんどん、藍。いずれも、お手伝いのメイドやうさぎ達を引き連れての作業は、とにかく『大変』の一言である。
そうやって、忙しく働く面々がいる一方では、
「う~……あっつ~……」
「チルノちゃん、無理しちゃダメだよ?」
「チルノちゃんは氷の妖精だからねー。あっついお湯は苦手だよねー」
「何だとルーミアー! あたいだってこんくらい~……!」
「1,2,3……う~……熱いのもお湯も嫌い~……」
チルノにルーミア、橙のちびっこ三人組が温泉に浸かっている。彼女たちの世話をしているのは、「せっかくですから」と妖精族秘伝のお酒なるものを持ってやってきた大妖精である。すでに二名ほど、熱さでうだっているのだが、チルノはルーミアとの我慢大会、そして橙は、藍に言いつけられた通り、肩まで浸かって十数えてから、を実行中。
「祭りの場には、屋台がよく似合う~♪ っと」
「ミスティア、勝手に屋台出してていいの?」
「いーんじゃない? ほれ、みすちー、酒の追加だぞー」
「あー、どうもすいませんねぇ、萃香さん」
そして、その祭り会場の片隅で赤提灯を出しているミスティア。彼女の手伝いをするのは、いつも通りにリグルと、最近入り浸っている萃香である。ちゃんとパーティー会場としてしつらえられた空間であるのに、なぜか妙に違和感がなかった。事実として、メイドやうさぎ達が「ちょっと一服」と腰を下ろしている。
「ねぇ、おねーさまー。フランもお風呂入りたいー」
「そうねぇ……」
そして、ちびっ子達が温泉を楽しんで(?)いるのを横で眺めているのはスカーレット姉妹。温泉には、お湯が、今も滔々と流れている。その水量を調節して、溢れる量を微調整。さらには湯船も拡充したため、何人もが一度に入れて、なおかつ風情も楽しめる作りになっている。しかし、吸血鬼は流れ水が苦手。そのために、そこに入ることが出来ず、ぽつねんと立っているのである。
「レミィ、フラン。こっちに来なさい」
「ようやく出来たわよー」
その彼女たちを呼ぶのは、パチュリーとアリスの魔法使いコンビ。そばには小悪魔も控えていて、「カメラの用意は出来ています」とよけいなことを言ってパチュリー&アリスのクロスキックに蹴り倒される。
「なになに?」
「……あら」
その、大きな湯船の隣に、支流を作っての小さな湯船が一つ。深さは、彼女たちのサイズにあわせて浅くされており、崖から落ちてくるお湯の奔流が流れ込まない、独立した『彼女たち専用』のお風呂だ。
「アリスお姉さん、私も入っていい?」
「いい? 二人とも」
「わたしは構わなくてよ」
「おっふろーおっふろー♪」
アリス達の作業を横で眺めていたメディスンが、早速、とお湯の中に飛び込んだ。それに続いて、スカーレット姉妹もお湯の中へと体を沈める。
「けれど、風流なものね。秋の景色を眺めつつ、夜空の満天の星空に囲まれてのお風呂とは。これもまた、一興というもの。たまには魔理沙もいいことを考えつくわ」
「そう言う堅苦しい考え方しないで。パチュリーも入ったら?」
「私はいいわ。風邪を引いてしまいそう」
「うわぁ、温泉、気持ちいー」
「こら、フラン。はしゃがないの。お湯を揺らすのはエチケット違反よ」
「はーい」
「温泉、あったかいね~」
「……くっ。こんなシーンを撮影できないなんて……小悪魔魂が廃りますっ……! がくっ」
懲りずにカメラ構えようとした小悪魔がパチュリーに踏まれて息絶える(注:死んでません)。
そんな、にぎやかな一角の中。
「はぁ~……素敵なバイオリンねぇ……」
「ええ、心の中に音が染み渡るよう……」
会場全体に音を響かせている三人組の前に、彼女たちのファンがずらりと並んでいる。もちろん、咲夜たちから『サボるな!』と怒られるのだが、すっかりとそれに絡め取られて、彼女たちも動こうとはしなかった。
「ベートーベン作曲、『月光』。バイオリンアレンジをお届けしました」
演奏が終わり、ぺこりと頭を下げるルナサに、一斉に黄色い声がかけられる。
「続けて、リリカ達のステージの開始だよー」
「今度は『情熱』の管弦楽アレンジバージョンで~」
「……やれやれ」
お祭りごとの時には、必ずやってくる三人娘。彼女たちのおかげか、それとも彼女たちのせいと言い換えるべきか。ともあれ、静かな森は瞬く間ににぎやかな音に満ちる。そこに、ルナサが途中から静かなバイオリンの音を混ぜると、熱狂的に声を上げていた観客がしんと静まりかえるから不思議なものである。
「……ったく。慧音に呼び出されたから何事かと思えば」
「たまにはいいものね」
「……お前、この酒に毒とか入れてないだろうな?」
「疑り深いわね。そんな無粋なことはしないわ」
「どれ」
そして、会場で、少し一同から外れたところで酒を酌み交わす蓬莱人二人。
徳利から注がれた酒を、その片割れ――妹紅が一口し、
「ぶーっ!?」
「あら、汚い」
「げ、げほっ! げほっ! な、何だこりゃ!? 何で炭酸!?」
「うふふふふ」
「て、てんめぇぇぇぇぇぇ! 輝夜、やりやがったなぁっ!」
「あら、私は、あちらのお嬢様から『美味しいワインですけど、いかが?』と渡されたからもこたんにもお裾分けしてあげただけよ?」
「徳利に入れんなよっ!? 不意打ちだろこれは!?」
「あ~ら、そうかしらぁ?」
「こ、こんのぉ~……!」
ぎりぎりと柳眉を逆立てる妹紅。そんな彼女を、ふふん、と鼻でせせら笑いながら、輝夜は徳利の中からワイン(スパークリング)をおちょこに注いで一口。ちなみに、スパークリングワインというのは、ものによっては凄まじい炭酸の破壊力を誇るため、何にも知らずに口に入れたら、確かに驚くかもしれない。
妹紅は、輝夜に速攻で飛びかかってやりたいのをこらえながら、辺りを見回す。そうして、何かを見つけたのか、にんまりと笑う。
「なぁ、輝夜」
「何?」
「ほれ。今度は私が注いでやるよ」
「あら、嬉しいわね。中身を入れ替えたのかしら?」
「まさか。そんなことはしないって」
「それじゃあ」
とくとくと、徳利からおちょこへと酒が注がれていく。
輝夜は、受け取った琥珀色に輝くそれを、何のためらいもなく口に含んで、
「げほぉーっ!?」
「あーっはっはっは! ざまぁみろ!」
「な、何これ!? アルコール度数何%!?」
「あー、それ、わたしのー。私も、『これはちょっとアルコールきついかなー』って思ってるやつー」
「も、もこたん、やったわねぇぇぇぇぇぇ!?」
「おう、やったさ!」
萃香の一言は、かなり強烈である。酒に強いはずの鬼ですら『ちょっときつい』と言うほど。果たして、永遠の命以外は普通……とは言い難いが、ともあれ、ちゃんとした人間である輝夜では、その酒の破壊力には耐えられるわけもないだろう。
「こ、こんのぉ~! 勝負よ、もこたん!」
「やらいでかぁっ!」
「あらあら」
「永琳殿。ちょっと黙らせてやってくれ」
「あらあら」
『ごめんなさい、永琳さん。私たち、仲良くします』
騒ぎを聞きつけてやってきた慧音の一言で、永琳が懐から黄色い物体の入った瓶を取り出したのを見て、速攻で二人はその場に平伏する。
――さて。
「しかし、にぎやかですねー」
「手当たり次第に声をかけたからなー。魅魔さまの行方がわからなかったのはちょっと残念だが」
「そういえば、神綺も来るんじゃなかったの?」
「途中でメイドに連れ戻されてた。『宴会に行かせて夢子ちゃ~ん!』『神綺さま。明日のご飯抜きと鉄拳制裁とどっちがいいですか?』って」
「選択肢が何気にないわね」
そして、祭りの主催者として、特別席のあてがわれている霊夢と魔理沙のそばには文の姿。今回の芋煮会について、何か記事になるようなことを聞き出そうとしているのだろう。あるいは、もう聞き出したのか。ともあれ、手にしているペンをくるくると回しながら、
「しかし、魔理沙さんの行う宴会は、大抵、常識外れと聞いていましたけど。案外、まともなこともするんですね」
「私もびっくりね」
「お前ら、そいつはないぜ。私はいつだって真っ当な常識人だぜ?」
「真っ当な常識人は、他人様の家に押しかけて本を強奪したりしないものよ?」
「それは知的探求心の暴走だ」
「あっさりと理性を暴走させるのも、常識人とは言いませんねぇ」
「お前らが言うか人のこと」
全くその通りである。
「……ま、いいや。
さて、と。それじゃ、そろそろ鍋も出来ただろ」
「ん~、いい匂い。お肉の匂い!」
「……あの、霊夢さん? そこでどうして、私の美しい足を凝視しますか?」
「……考えてみれば鶏肉よね?」
「くっ、食われるっ!?」
烏は食べても美味しくないのよね、とばい巫女。
何やら未開地域の原住民的な雰囲気の漂い始める主催者席を外れ、魔理沙が会場へと立った。と言ってもお立ち台も何も用意されてないため、たくさんのシートが敷かれた場所の中心を自分の場所と決めてのことだ。
「えー、こほん。
本日開催、幻想郷芋煮会主催者の霧雨魔理沙だ!」
『わー、ぱちぱちぱち』
「本日は、季節の風流を味わってもらうために、お前達を招待した! 思う存分楽しんでくれ!
っていうわけで、固いことはなしで、れっつお鍋たーいむ!」
これを果たして挨拶というのかどうかはわからないが、ともあれ、一同そろっての芋煮会の開始である。
早速、渡された小鉢やら丼やらを持って、鍋の前に人妖が並んでいく。
「はいはーい。押さないでくださいねー、たくさんありますからー」
一同に食事を提供していく役目は、なぜか美鈴担当だった。他に鍋を作っていた人物はと言うと、
「ほらほら妖夢ぅ、お鍋にはぁ、お酒よぉ」
「ち、ちょっと! やめてください幽々子さま、私はお酒は……きゅぅ」
あっさり酔い潰されるものが出て、その主犯者が隙間妖怪に説教されたり。
「ほらほら、熱いから気をつけるんだぞ」
「ふー、ふー」
「はふはふ……」
「けーねって、ほんと、子供好き……」
「ああ、子供はかわいいなぁ。うん」
うさぎの子供達相手に何やら母性本能発揮しまくっていたり。
「あらあら。幽香さん、どこへ?」
「あ、そ、その、も、もう、私の仕事は終わったから。帰って、花たちの冬越の用意を……」
「あらあら。そんなこと仰らずに。せっかくお鍋を用意したんですから、どうぞ」
「……でも、私、こんな所にいてもみんなの空気を乱すだけで……」
「お前は、なぁーに下らないこと言ってんだよ。魔理沙さん主催の宴会だぜ? 途中退席は認めん!」
「……ぐすっ。ありがとう……」
「ん?」
「べっ、別に何でもないわよ!」
と、ツンデレの寂しがりだったりと忙しいのである。
「美鈴おねーちゃん、おかわりー」
「あー、あたいもおかわり! ねーちゃん、ちょうだーい」
「はいはい。そんなに焦らないでね。
はい、ルーミアちゃん。はい、チルノちゃん」
「わーい」
「これ美味しいよ。うん。たまにはあっついお鍋もいいねー」
「チルノちゃん、冷気吹きかけて、ほとんど凍らせた状態で食べててそのセリフはどうかなぁ?」
「ちょっと美鈴。あなた、全然食べてないじゃない」
次から次へと、食べてはおかわり、食べてはおかわり、を繰り返す一同のせいでお玉片手の作業が忙しい彼女へと、メイド長が歩み寄った。片手に自分の分、そしてもう片方の手には、
「ほら」
「あ、でも、お鍋の責任者ですから。私も。
だから、最後まで……」
「そういう責任感の強いところは、あなたの利点であり欠点よ」
「その通りですね。よろしいですか、美鈴さん。鍋物に限らず、事、宴会に関しては、その場に集っている他の誰もが欠けても成り立たないのです。一人の人間が一人の役目を背負うことはありません。みんなで分担するべきなのです。つまりは、あなたもまた、こうして宴会の場にいるのですから、それを楽しむ権利が……」
「あー、はいはい。その先はあたいが聞きますからね」
「何ですか小町ちょっと私のお説教はまだ終わってませんよああこら脇に抱えないでくださいこらー!」
「……まぁ、うん。こほん」
流れるびみょ~な、ちょっと空気読めてない展開を許容して、咲夜が言葉を続ける。
「そこから先は、他の子に任せるから。いらっしゃい」
「でも……」
「あなたは、私に一人でお酒を飲めと言うの?」
ほっぺた真っ赤。さりげないその一言に、きょとんとなった美鈴は、そのまま『やれやれ』と言わんばかりに笑うと、メイド達に「お願いね」と仕事を託して咲夜と一緒に肩を並べて歩いていく。
「メイド長って、ほんと、いじらしいわよね~」
「あの、素直に自分の気持ちを口に出せないのが、また何とも……妙な味わいよねぇ~」
「美鈴さまも大変よ、ほんと。でも、それがむしろいいというか?」
「ほんとほんと」
「あなた達。桃色談義に花を咲かせるのはお仕事が終わってからですよ」
『はーい』
と言うわけで、二人の幸せ空間を邪魔する輩は抹殺する、の気配を漂わせるメイドさん達が鍋を預かる運びとなった。
そんなにぎやかな会場の一方ではと言うと、
「……師匠……」
「どうしたの? 鈴仙さま」
「イナバ、何か目が怖いわよ? 普段よりも赤さが倍増、速度は三倍、船を蹴って加速するのは無理じゃないかしら」
「敵……あの女は敵……」
何かと幽香に気をかける永琳を見て、嫉妬心を燃やしまくるうさぎがいたりする傍ら、
「うちでも鍋物出したら受けますかね?」
「さあ? まぁ、私は鍋物は好きだけどさぁ」
「というか、霊夢は何でも好きではなくて? 事、口に入るものならば」
「あ、わかる?」
「霊夢さんのアドバイスは、たまに的確なんだか的はずれなんだかわからなくなりますわ」
「……そういうもんだろうねぇ、ほんと」
「霊夢、飲めー! わたしの酒を飲めー!」
「全く、無粋な小鬼ね。どうして季節の情緒を味わえないのかしら? 霊夢、あんな無粋な酒なんて口にすることなくてよ。わたしの、この血のように赤くて甘いワインはいかが?」
「いや、そういうものの進め方もどうなのよ?」
「何だとこの吸血鬼! やるかー!?」
「あら、面白いわね。いつぞやの意趣返しかしら」
「何だか物騒なことになってきたね」
「うちらはおいとましましょうかね」
霊夢を挟んでの吸血鬼と鬼の激闘。もちろん、その数秒後に「器がこぼれるからやめんかぁ!」と夢想封印食らって、二人とも仲良く幻想郷の空を飛ぶ。そして、その場に巻き込まれるのを、ある意味では虫の知らせでさっさと退散することで避けたミスティアとリグルの二人は、おかわりを求めて鍋の前へと。
「うーん……いまいち、味が足りないわね。小悪魔、ちょっとそこの一味唐辛子を取ってちょうだい」
「はいはい、ただいま」
「ねぇねぇ、パチュリー。いちみとうがらし、ってなぁに?」
「あ、私も興味あるー」
「やめときなさい、あなた達。あれは大人の食べ物よ」
小悪魔から受け取った一味唐辛子の瓶を片手に持って、さっさとそれを振る。そうして、パチュリー様、それを一口。だが、その顔がまたもや渋いものに変わる。
「おとなのあじー?」
「どんな味なんだろう。気になるね、スーさん」
子供二人は、そんなパチュリーの様子を、じっと興味津々に見つめている。
「けれど、意外ね。パチュリーって、意外と辛いもの好きだったの」
「というわけでもないけれど」
そう言って、パチュリー様、暴挙に出ました。
「んなっ……!?」
瓶のふたを開けると、そのまま、その中身をどさっと半分ほど器の中に。
ぐつぐつことことと煮込まれたみそのだし汁の水面全てに真っ赤な唐辛子が浮き上がり、どう見たってやばいだろそれ、なものをパチュリーは平然と口にする。
「うん……これくらいが絶妙ね。
どうかした? アリス」
「いや……その……」
「……そーっと、だよ?」
「うん」
顔を引きつらせるアリスの横で、ちびっ子二人が何やら怪しい動作をしている。それに小悪魔が気づいて「あっ……」と声を上げた時にはもう遅く。
「辛い~!」
「むぐ~!」
パチュリー特製、唐辛子汁を口にしてしまって七転八倒する。慌てて、アリスと小悪魔が二人に水を飲ませるのだが、その壮絶な味にすっかりと打ちのめされてしまったのか、フランドールは「うわ~ん、お姉さま~」と走り出してしまうわ、メディスンは、「うぅ~……いじめられたよぅ……スーさぁん……」と泣き出してしまうわと。ある意味、この宴会の場において最も混沌とした様相を呈している中、パチュリーは、何にも気にせず、その唐辛子汁を口にする。
「何かおかしかったかしら?」
「おかしい……っていうか……。パチュリー……ほんと……辛党なのね……」
友人の意外すぎる一面に、一人、顔を引きつらせるアリスであった。
「橙、美味しいかい?」
「うん!」
「そうか、よかったね」
妖夢や咲夜といった面々が、ある意味、ダウンしてしまった中、一人、甲斐甲斐しくつまみなどを作成して給仕を続けている藍が、橙のにこやかな笑顔に思わず笑みをこぼす。そんな橙は、ルーミアやチルノと言った子供達と輪になって「これ、あたいの!」「あー、それ、私が狙ってたのにー!」「ルーミアちゃん、橙のこれあげるー」などと微笑ましくやっている。
「やはり、子供の成長を見るのはいいものですね。紫さま」
「そうかしら?」
幽々子への説教にも飽きたのか、場の空間から一人外れて杯を傾ける紫へと、そう一言。
「そうですよ。やはり、手塩にかけて育てた我が子が、段々、私の手を離れるようになっていくと。嬉しくもあり、寂しくもあり、で」
「子供はいつだってそう。いつかは成長して、大人の所から巣立っていくのよ」
視線を幽々子達の方へと。「えっとぉ……とりあえずぅ、永琳さぁん、酔い覚めの薬ぃ、ありませんかぁ?」「あらあら、それではこちらを」「あー、えっと……永琳殿? それ、どう見ても薬じゃなくてジャ……あ。」「みょぉぉぉぉぉぉんっ!?」「まあまあ、すごいわぁ。妖夢が一発で目を覚ましたわぁ」「よ、妖夢、しっかりしろ! おい、輝夜! 蓬莱の薬だ! 蓬莱の薬持ってこい!」「こんな状況で使えるわけないでしょ!? イナバ、薬!」「は、はいっ! てゐ、至急、エリキシル持ってきて、エリキシル!」「レベル50にしてはたき覚えさせてもダメなの!?」「あらあら」と混沌を遙かに超えた暗黒渦巻く世界に顔を引きつらせ、そっぽを向く。
「えっと……まぁ……うん。子供は、いつだって子供のままがいいかもね……」
「いや、あれは……どうなんでしょう……」
何というか、『妖夢はきっと強い子に育つだろうな』と、紫と藍、二人の目から見てもそれは明らかだったという。色んな意味で。
「ん~……そろそろ冷えてきたわね」
「お酒が覚めてきたのではありませんか? どうぞ、霊夢さん。天狗一族秘伝のお酒、『風神一献』を……」
「……お。雪だわ」
にぎやかな宴会は、未だ、続いていた。宵の口を回り、すっかりと夜のとばりが落ちても、辺りには、なお、真昼のような明るさが点り、周囲を照らし出している。その中で酒をちびりちびりとやっていた霊夢は、魔理沙の言葉に空を見上げる。
ちらほら、ちらほらと。
漂う雪片が、ひとかけ、ふたかけ、みかけ。
「初雪ねぇ」
「初雪ですねぇ」
「よし。そんじゃ、続きは温泉での二次会と行くか」
チルノが「雪だー!」とはしゃぎだしたのを横目に、ぽかぽかの湯気を立てている温泉を指さす魔理沙。
「そうねぇ。今夜はオールナイトと行きましょうか。鍋も、まだまだ余ってるんだしね」
「そういうことだな」
さすがに健啖家を大勢集めても、見上げるような高さのでっかい鍋からは中身も簡単には減っていかない。と言うか、減れば減っただけ、追加で具を放り込むから問題なのかもしれない。最初は肉といもにこんにゃくなどがメインだったのだが、今は近くを流れている小川から釣った魚などがメインディッシュとなっているのだから。
「今回の宴会は大成功ですね?」
「私の考える宴会は、いつだって大成功だぜ」
「後始末、よろしくね?」
「それは、この場の全員がやることだ」
はいはい、と笑いながら。
なおも更けていく夜の中、寒さに耐えきれなくなったもの達が場所を温泉に移して酒盛りを始める。
「ねぇ、姉さん」
「ん?」
「冬を代表する一曲と言えば?」
「夜と月、そして星。何よりも、家々の灯火を表現するような曲がいいだろうね」
「んじゃ、ルナサ姉さん、是非ともそんなのを一曲」
「即興で構わないのならやってみるよ」
立ち上がった彼女の奏でるバイオリンのメロディが、夜の河原に澄み渡る。
――今宵の宴会は、誰もが気持ちよく時間を過ごせそうだった。深夜まで騒ぐもの、眠気に耐えきれず、即席で作られたテントの中でころんと横になるもの、静かに酒を酌み交わすもの。その種類は様々あれど、誰もがその時間を楽しんだと言うことに変わりはない。
「メイド長達が、このままもう一歩大人の段階に進むに百」
「私は、『ああ、ダメよ、美鈴。こんなところで』『さあ、咲夜さん、気を楽にして』まで行くに三百」
「それじゃ私は……」
「あ・な・た・た・ち?」
『ひぃぃぃっ!? ごめんなさいお姉さまぁぁぁぁぁっ!』
会場の一角で幸せ満喫している一部のもの達を対象に賭をしていた輩は、その後の掃除で、徹底的にこき使われましたとさ。
「ねぇ、魔理沙」
宴会終わって片づけも終わって。
即席で作った温泉は、以後、誰もが使える貸し切り湯となったのだが。
「これってさ……ほんと、どうやって持ってきたの?」
宴会の主役として活躍した、でっけぇ鍋を取りに来た霊夢が、隣の魔理沙に訊ねる。彼女は、「んー?」と振り返り、一言。
「ああ、これな。飛ぶんだ」
「……は?」
「飛ぶんだよ、これ」
ぺしぺし、と鍋の底を指で叩いて、彼女。
「えーっと……………………飛ぶ?」
「飛ぶ」
「鍋が?」
「うむ」
「まったまたぁ。冗談きついわよ、魔理沙」
「本当だって。こーりんも、『こいつがきっと、外の世界でUFOと呼ばれていた物体なのだろうな』って感慨深げにしてたからな。
霊夢、外の世界には有名な言葉があるんだぜ? 『信じれば飛べるはずさ』ってな」
「いや、だからって無理が……」
「よーし、飛べー」
「うお、飛んだ!?」
お後がよろしいようで。
季節は秋である。
秋と言えば、色んな秋があるが、その中の一つに『食欲の秋』なるフレーズがある。季節は冬を迎えるに当たって、栄養を蓄えた、色とりどりの『幸』たち。煮てよし焼いてよし生でよし。何をしても美味しいもの達。
しかしながら、彼女にはその縁がない。
「……きのこは食べ飽きた」
ぼそりとつぶやき、ずず~、とすするのは、実は松茸のお吸い物だったりするのだが。
「飽きた飽きた飽きた~! 何なのよ、裏の山でサバイバル生活ばっかりっ! 私にはお肉はないの!? お魚はないの!? 色とりどりのご飯はないの~!?」
日々を自給自足に頼っている、というわけではないのだが。
しかしながら、金銭収入乏しいこの神社において、日々を生き抜くためにはサバイバーな日々を送らなければならない。幸い、秋は山の幸が豊富である。裏の山に分け入れば、先のきのこやたけのこや、様々な山菜が手に入る。
だが、人間、植物だけでは生きていけないのだ。青虫ではないのだ。それ以外のものを口にしないといけないのだ。
悲しいかな、それらには、全く縁のない巫女である。
「釣り糸垂らしても魚は釣れないし、試しにイノシシとか狙ってみたら、あいつらグレイズついてて弾幕きかないし! 何なのよ、もう!」
ばんっ、と手にしていた箸を腹立ち紛れにテーブルに叩きつける。
――だから、必然的に、食事は抵抗しないもの達が中心になる。数多い友人(?)によって仕込まれた、野山の智恵。それを生かして、日々、あっちこっちから食料を背中一杯のかごに詰め込み、友人の魔法使い製作の氷室の中に放り込んで保存しているわけなのだが。
「私はもっと他のものが食べたい!」
ある意味では、贅沢な悩みでもあったりするのだが。
しかし、今月の金銭収入が百五十円ではう○い棒十五本買ったら終わりだ。いや、今の世の中、『しょうひぜー』なるものが導入されたから十四本か。とにかく、何にも買えないのが現状。それでなくとも、冬を迎えるに当たって、暖房用具なども買い込まないといけないというのに。
「食事は大切よ。だけど、日々の生活も大切よ。私はどうしたらいいの? 考えるんだ、考えるのよ、霊夢。そう、考えればいい考えも浮かぶわ。何せ、私は巫女なのだから。ああ、神様。この迷える子羊に、どうかお慈悲を」
『諦めろ。ばい神様』な天啓が降りてきて、天井めがけて針を投げつけた後、たまたまそれが屋根裏を荒らし回るねずみを直撃していたのだが、とりあえず、現状、それは関係ない。
「あ~ん! 何かもっと彩り鮮やかなご飯が食べたい~! ご飯~、ご飯~!」
床の上にひっくり返って手足をばたばた。どこぞの吸血鬼しかやらないようなだだっ子ぶりを発揮して、その、あまりのむなしさにため息をつく。
ひとしきり暴れた後、むくっと起きあがって、「でも冷めたらもったいないよね」ときのこづくしのご飯に手を伸ばす。好き嫌いはいけません。
「はぁ……」
きっかりきれいに食事を終えて、ごちそうさま、と行儀よく手を合わせて。
それを流しに下げてお茶を用意し、戻ってきたところで、
「おー。邪魔してるぜ」
「帰れ」
「……いきなりかよ」
「何しにきたの? 何にもおごらないわよ。お茶も、最近は高くなってきてるんだから」
「みかん」
「さあ魔理沙、外は寒かったでしょ? 今、お茶を用意してくるからね」
「……私、お前のそう言うところ、好きだぜ」
部屋の中に堂々と居座っていた黒白が取り出した、箱入り一杯のみかんを前にすっかりと気をよくして、戸棚の中に後生大事にしまっていたたっかぁ~いお茶を用意して戻ってくる霊夢。そして、卓について、早速みかんを一つ。皮をむいて丸ごとぽい。ちょっとお行儀が悪い。
「ん~、甘酸っぱくておいし~」
「……いや、ほんと、お前のこと好きだわ」
つくづく、色んな意味で。
魔理沙は、ずず~、とお茶をすすった後、こほん、と一つ咳払い。よけいなことを考えていた頭の中身を切り替えて、ずいっと身を乗り出す。
「なぁ、霊夢。実はな、宴会したいんだけどさ」
「え~? また~?」
「そう、また、だ。だがな、いつも通りの『また』じゃないぜ?」
「すま……」
「ストップそれ以上言うなっていうかお前巫女だろ!」
とんでもないことを口に仕掛けた霊夢の口ふさぎ、顔を真っ赤にして、魔理沙。おや、果たしてこやつは意外と純情なのか? そんなことを考えながら眺める巫女の前で、「全く……恥じらいってものがないのか」とぶつくさつぶやく彼女。なるほど、実は意外と、な一面もあるらしい。
「ま、まぁ、とにかくだ! 宴会だよ、宴会!」
「ん~……まぁ、いいけどさ。ちゃんと片づけして帰ってくれるなら」
「それについては心配ない。
だがな、今回の宴会は、ちょっと毛色が違うんだ。それで、私はお前に力を借りたい」
「ふーん。何すんの?」
「ふっふっふ。見て驚け!」
ごそごそと、かぶっていた帽子の中から取り出される一冊の本。つくづく、あの中はどうなっているのか疑問で仕方ないが、聞いても仕方ないだろう。きっと、『これぞ魔法の力だぜ』とわけのわからない、答えになっていそうで全くなってない答えを聞かされることになるのだろうから。
「ん~……なになに?」
取り出されたのは、『地方の祭りガイドブック』なるものだった。色鮮やかなカラー写真が特徴的なそれを、ぺらぺらとめくっていく。
「パチュリーから借りてきたんだ」
「強奪してきたんでしょ」
「いや、『そんなの読まないから、どうぞお好きに』って言ってたぜ?」
「にしちゃ、手あかまみれね」
「大方、読み飽きたんだろ」
これは意外。あの引きこもり魔女が、実はお祭り好きだったとは。果たして、その予想が正しいかどうかはわからないが、その本にはあちこちに栞のようなものも挟まっていた。こんな祭りをしてみたい、という願望の表れなのだろうか。
「それでだな。これ、これ」
開かれた一ページには、こんな文字が書かれていた。
「……いもにかい?」
「そうだ」
「ふーん……」
大勢の人間が、でっかい鍋を囲んでいる。鍋の中には肉に野菜に里芋に、それらがみそをベースにした出汁でぐつぐつと煮込まれている写真は、実に食欲をそそる。
「……面白そうね」
「だろ~?」
「で? これをやりたいから、場所を提供しろ、と?」
「いや、実は場所の目星はついてるんだ」
「案内してくれんの?」
「もちろんだぜ」
さあ、善は急げだ、と立ち上がる。
外に出るのは、寒くなる時期、億劫なものなのだが、その先に待っているものには興味が引かれた。仕方ないわね、と彼女も腰を上げて、魔理沙と一緒に空に向かって飛び立つ。
秋の空はきんきんに冷えた冷気が漂う空間である。冬は、ここに身を切るような凍てつく息吹が混ざるのだが、まだこの時期はそこまでではない。魔理沙と一緒に空を漂うこと、およそ一時間。
見えてきたのは、大きな河原だ。
「……うお」
その河原に、河原のでかさに負けない、でっけぇ鍋が置かれていた。
「こ、これは……」
「ふっふっふ。こーりんにもらってきたんだ」
霊夢達の身長よりも高さがある。幅は、やっぱり彼女たち一人分くらいだろうか。見上げるほど巨大な鍋が、でんと河原に鎮座しているというのは、ある意味、絵になるものではあった。
「あんた、これ、どうやって運んできたのよ……」
「いいもんだろ?」
疑問への返答はなかった。
まぁ、いい。この際だ。気にしないことにしよう。気にしちゃ負けだ。色々と。うん。そうだ。そうに違いない。私が決めた。今決めた。
「……で?」
「ここを会場にするつもりだ」
ぐるりと辺りを見回して、魔理沙。
そこは、まぁ、先にも述べた通りに河原である。大小様々な砂利や石ころの敷き詰められた空間。彼女たちの背後には、見事な色に染まった秋の森がある。あれを見ながら、ここでわいわい騒いで鍋でぐつぐつ芋煮会。うむ、なかなか風流だ。
「さらにだな、もう一つ、趣向を凝らしたい」
「趣向?」
うむ、とうなずく魔理沙が示すのは、その森の反対側。河原の対岸だ。
そこは、断崖絶壁になっていた。高さは、およそ十メートルはあるだろうか。そこを示し、「あれだ」と一言。
「……崖で何するってのよ」
滑り台でも作ろうというのだろうか。直角の滑り台を? 落ちたらお尻が痛いなんてもんじゃないだろう。口には出さないまでも、『何考えてんのよ』な視線を送る霊夢に、なぜか、魔理沙は不敵な笑みを返す。
「残念ながら、この魔理沙さん、常に用意は万端だぜ」
「……は?」
「この辺りをダウジングで調べてみたんだが、どうにも、温泉脈があるみたいなんだ」
「へぇ……」
「そいつを、今から掘り出す」
彼女は崖の方へと歩いていく。それに続き、霊夢も足を進め、「そこに穴を掘ってくれ」との指示を受けて、河原の砂利を片づけ、ざっくざっくと穴を掘る。もちろん、途中からめんどくさくなって夢想封印で吹き飛ばしたのは言うまでもない。
深さは、およそ五十センチほど。左右の幅は三メートル。もう少し広くできないか、という問いに「時間をかければやってあげるわよ」と一言。それを受けて、魔理沙も満足したのか、取りいだしたりますは、
「マスタースパーク!」
「って、こらぁ!」
放たれる虹色怪光線は、そのまま断崖絶壁の中程に突き刺さり、轟音を上げて爆裂した。頭の上から降ってくる石のかけらなどをグレイズしてよけながら「何すんのよ!」と抗議の声。だが、それも長くは続かない。
吹き飛んだ崖の一部に亀裂が走り、そこから外に向かって滝のように水がほとばしり出てきたのだ。しかも、それには硫黄の臭いと湯気もセットで。
「どうだ。ビンゴだぜ」
「……」
開いた口がふさがらない、とはまさにこのことか。
魔理沙に指示された箇所に掘った穴へと、滔々と水が流れ込んでいき、あっという間に即席の露天風呂が完成してしまった。さらにお湯は止まらず、どんどんと溢れていく。それがもったいないということで、霊夢に結界を展開させ、一度、お湯の流出を止める。
「へっへっへ。私の頭は伊達じゃない!」
「……まぁ、色々と規格外な奴だとは思っていたけど」
そっと、お湯の中に手を浸す。
……熱い。入れたもんじゃない。
「そこで、川の水をだな……」
ざくざくと、河原を掘って、小さな支流を即席温泉の中へと注いでいく。
「ま、こうやっておけば、一時間もすれば入れるようになるだろ」
「……ふーん」
「さあ、次はメンツ集めと材料集めだ! 決行は今夜だからな。これから忙しくなるぜ」
「まぁ、そうでしょうねぇ」
「秋の夜長に、のんびり温泉と美味しい芋煮会! 客が集まらないはずはない!」
「……あんたってさぁ」
ん? と振り返る魔理沙。
「ほんと、自分が楽しいと思うことには全力よね」
「まあ、な」
それが私の自慢だ、と親指立てて笑顔を返してくれる。
……まぁ、それならそれでいいか。
事態を素直に受け入れて、霊夢は肩をすくめる。それじゃ、急ぎましょうか、と。彼女は早速、宴会の幹事二号としての役割を果たすべく、空へと飛び上がったのだった。
――さて。
芋煮会の開催は夜と相成った。空に満点の星々が輝く頃、ちらほらとメンツが集まりはじめ、今ではずいぶんと、深閑とした空間もにぎやかになってしまっている。
河原に集まったのは、いつもの如く、いつもの面々である。
「うーん……ちょっと味が……。慧音さん、おみそ、追加してもらえますか?」
「ああ、わかった。しかし、美鈴殿のこだわりはいつ見てもすごいものだな」
「料理界の龍として知られる女には、むしろそれが当然ね」
「そうですねぇ。っていうか、幽香さんもお手伝い願いたいんですけど」
「べっ、別に、私は、たまたま通りがかっただけよ!」
「まあ、そう言わずに。
美鈴さん、頼まれていたおいも、持ってきましたよ」
「ありがとうございます、妖夢さん」
鍋担当は、美鈴を筆頭に、監視が慧音、補助が幽香と妖夢である。
巨大な鍋を火にかけて、はしごを使ってその上に上っての、豪快な煮込み作業だ。抱えるほど巨大なお玉としゃもじで、力一杯、鍋の中をかき混ぜれば、夜の河原にみその香りと出汁の香りが漂う。
「やっぱりぃ、夜はぁ、みぃんなでぇ、お酒よねぇ」
「ええ、全く」
「あらあら、ご相伴にあずかり、どうもすいません」
「……小町。何で私はジュースなのですか?」
「四季さまにお酒を飲ませたらえらいことになるからです」
白玉楼の主にマヨヒガの主、そして永遠亭の表の主に閻魔様。そろって、早速酒を酌み交わしている。
河原にはあちこちにシートが敷かれ、その上に、料理や酒がずらりと陳列されているのだ。それをせっせと運ぶのはというと、
「あの、咲夜さん。こっちのワインはどこですか?」
「それはあっちね。ああ、ウドンゲ。その酒樽は、向こうの方に固めておいて」
「あ、はい。わかりました」
「相変わらず、鈴仙さまって人にあごで使われるよね」
「何か言った? てゐ」
「うーん、なーんでもー」
「やれやれ……。しかし、すごい量だな。つまみを作るのが追いつかないよ」
咲夜に鈴仙、そして何だかんだでしっかりとそのお手伝いをしているてゐに、割烹着姿がこの上もなく似合うおさんどん、藍。いずれも、お手伝いのメイドやうさぎ達を引き連れての作業は、とにかく『大変』の一言である。
そうやって、忙しく働く面々がいる一方では、
「う~……あっつ~……」
「チルノちゃん、無理しちゃダメだよ?」
「チルノちゃんは氷の妖精だからねー。あっついお湯は苦手だよねー」
「何だとルーミアー! あたいだってこんくらい~……!」
「1,2,3……う~……熱いのもお湯も嫌い~……」
チルノにルーミア、橙のちびっこ三人組が温泉に浸かっている。彼女たちの世話をしているのは、「せっかくですから」と妖精族秘伝のお酒なるものを持ってやってきた大妖精である。すでに二名ほど、熱さでうだっているのだが、チルノはルーミアとの我慢大会、そして橙は、藍に言いつけられた通り、肩まで浸かって十数えてから、を実行中。
「祭りの場には、屋台がよく似合う~♪ っと」
「ミスティア、勝手に屋台出してていいの?」
「いーんじゃない? ほれ、みすちー、酒の追加だぞー」
「あー、どうもすいませんねぇ、萃香さん」
そして、その祭り会場の片隅で赤提灯を出しているミスティア。彼女の手伝いをするのは、いつも通りにリグルと、最近入り浸っている萃香である。ちゃんとパーティー会場としてしつらえられた空間であるのに、なぜか妙に違和感がなかった。事実として、メイドやうさぎ達が「ちょっと一服」と腰を下ろしている。
「ねぇ、おねーさまー。フランもお風呂入りたいー」
「そうねぇ……」
そして、ちびっ子達が温泉を楽しんで(?)いるのを横で眺めているのはスカーレット姉妹。温泉には、お湯が、今も滔々と流れている。その水量を調節して、溢れる量を微調整。さらには湯船も拡充したため、何人もが一度に入れて、なおかつ風情も楽しめる作りになっている。しかし、吸血鬼は流れ水が苦手。そのために、そこに入ることが出来ず、ぽつねんと立っているのである。
「レミィ、フラン。こっちに来なさい」
「ようやく出来たわよー」
その彼女たちを呼ぶのは、パチュリーとアリスの魔法使いコンビ。そばには小悪魔も控えていて、「カメラの用意は出来ています」とよけいなことを言ってパチュリー&アリスのクロスキックに蹴り倒される。
「なになに?」
「……あら」
その、大きな湯船の隣に、支流を作っての小さな湯船が一つ。深さは、彼女たちのサイズにあわせて浅くされており、崖から落ちてくるお湯の奔流が流れ込まない、独立した『彼女たち専用』のお風呂だ。
「アリスお姉さん、私も入っていい?」
「いい? 二人とも」
「わたしは構わなくてよ」
「おっふろーおっふろー♪」
アリス達の作業を横で眺めていたメディスンが、早速、とお湯の中に飛び込んだ。それに続いて、スカーレット姉妹もお湯の中へと体を沈める。
「けれど、風流なものね。秋の景色を眺めつつ、夜空の満天の星空に囲まれてのお風呂とは。これもまた、一興というもの。たまには魔理沙もいいことを考えつくわ」
「そう言う堅苦しい考え方しないで。パチュリーも入ったら?」
「私はいいわ。風邪を引いてしまいそう」
「うわぁ、温泉、気持ちいー」
「こら、フラン。はしゃがないの。お湯を揺らすのはエチケット違反よ」
「はーい」
「温泉、あったかいね~」
「……くっ。こんなシーンを撮影できないなんて……小悪魔魂が廃りますっ……! がくっ」
懲りずにカメラ構えようとした小悪魔がパチュリーに踏まれて息絶える(注:死んでません)。
そんな、にぎやかな一角の中。
「はぁ~……素敵なバイオリンねぇ……」
「ええ、心の中に音が染み渡るよう……」
会場全体に音を響かせている三人組の前に、彼女たちのファンがずらりと並んでいる。もちろん、咲夜たちから『サボるな!』と怒られるのだが、すっかりとそれに絡め取られて、彼女たちも動こうとはしなかった。
「ベートーベン作曲、『月光』。バイオリンアレンジをお届けしました」
演奏が終わり、ぺこりと頭を下げるルナサに、一斉に黄色い声がかけられる。
「続けて、リリカ達のステージの開始だよー」
「今度は『情熱』の管弦楽アレンジバージョンで~」
「……やれやれ」
お祭りごとの時には、必ずやってくる三人娘。彼女たちのおかげか、それとも彼女たちのせいと言い換えるべきか。ともあれ、静かな森は瞬く間ににぎやかな音に満ちる。そこに、ルナサが途中から静かなバイオリンの音を混ぜると、熱狂的に声を上げていた観客がしんと静まりかえるから不思議なものである。
「……ったく。慧音に呼び出されたから何事かと思えば」
「たまにはいいものね」
「……お前、この酒に毒とか入れてないだろうな?」
「疑り深いわね。そんな無粋なことはしないわ」
「どれ」
そして、会場で、少し一同から外れたところで酒を酌み交わす蓬莱人二人。
徳利から注がれた酒を、その片割れ――妹紅が一口し、
「ぶーっ!?」
「あら、汚い」
「げ、げほっ! げほっ! な、何だこりゃ!? 何で炭酸!?」
「うふふふふ」
「て、てんめぇぇぇぇぇぇ! 輝夜、やりやがったなぁっ!」
「あら、私は、あちらのお嬢様から『美味しいワインですけど、いかが?』と渡されたからもこたんにもお裾分けしてあげただけよ?」
「徳利に入れんなよっ!? 不意打ちだろこれは!?」
「あ~ら、そうかしらぁ?」
「こ、こんのぉ~……!」
ぎりぎりと柳眉を逆立てる妹紅。そんな彼女を、ふふん、と鼻でせせら笑いながら、輝夜は徳利の中からワイン(スパークリング)をおちょこに注いで一口。ちなみに、スパークリングワインというのは、ものによっては凄まじい炭酸の破壊力を誇るため、何にも知らずに口に入れたら、確かに驚くかもしれない。
妹紅は、輝夜に速攻で飛びかかってやりたいのをこらえながら、辺りを見回す。そうして、何かを見つけたのか、にんまりと笑う。
「なぁ、輝夜」
「何?」
「ほれ。今度は私が注いでやるよ」
「あら、嬉しいわね。中身を入れ替えたのかしら?」
「まさか。そんなことはしないって」
「それじゃあ」
とくとくと、徳利からおちょこへと酒が注がれていく。
輝夜は、受け取った琥珀色に輝くそれを、何のためらいもなく口に含んで、
「げほぉーっ!?」
「あーっはっはっは! ざまぁみろ!」
「な、何これ!? アルコール度数何%!?」
「あー、それ、わたしのー。私も、『これはちょっとアルコールきついかなー』って思ってるやつー」
「も、もこたん、やったわねぇぇぇぇぇぇ!?」
「おう、やったさ!」
萃香の一言は、かなり強烈である。酒に強いはずの鬼ですら『ちょっときつい』と言うほど。果たして、永遠の命以外は普通……とは言い難いが、ともあれ、ちゃんとした人間である輝夜では、その酒の破壊力には耐えられるわけもないだろう。
「こ、こんのぉ~! 勝負よ、もこたん!」
「やらいでかぁっ!」
「あらあら」
「永琳殿。ちょっと黙らせてやってくれ」
「あらあら」
『ごめんなさい、永琳さん。私たち、仲良くします』
騒ぎを聞きつけてやってきた慧音の一言で、永琳が懐から黄色い物体の入った瓶を取り出したのを見て、速攻で二人はその場に平伏する。
――さて。
「しかし、にぎやかですねー」
「手当たり次第に声をかけたからなー。魅魔さまの行方がわからなかったのはちょっと残念だが」
「そういえば、神綺も来るんじゃなかったの?」
「途中でメイドに連れ戻されてた。『宴会に行かせて夢子ちゃ~ん!』『神綺さま。明日のご飯抜きと鉄拳制裁とどっちがいいですか?』って」
「選択肢が何気にないわね」
そして、祭りの主催者として、特別席のあてがわれている霊夢と魔理沙のそばには文の姿。今回の芋煮会について、何か記事になるようなことを聞き出そうとしているのだろう。あるいは、もう聞き出したのか。ともあれ、手にしているペンをくるくると回しながら、
「しかし、魔理沙さんの行う宴会は、大抵、常識外れと聞いていましたけど。案外、まともなこともするんですね」
「私もびっくりね」
「お前ら、そいつはないぜ。私はいつだって真っ当な常識人だぜ?」
「真っ当な常識人は、他人様の家に押しかけて本を強奪したりしないものよ?」
「それは知的探求心の暴走だ」
「あっさりと理性を暴走させるのも、常識人とは言いませんねぇ」
「お前らが言うか人のこと」
全くその通りである。
「……ま、いいや。
さて、と。それじゃ、そろそろ鍋も出来ただろ」
「ん~、いい匂い。お肉の匂い!」
「……あの、霊夢さん? そこでどうして、私の美しい足を凝視しますか?」
「……考えてみれば鶏肉よね?」
「くっ、食われるっ!?」
烏は食べても美味しくないのよね、とばい巫女。
何やら未開地域の原住民的な雰囲気の漂い始める主催者席を外れ、魔理沙が会場へと立った。と言ってもお立ち台も何も用意されてないため、たくさんのシートが敷かれた場所の中心を自分の場所と決めてのことだ。
「えー、こほん。
本日開催、幻想郷芋煮会主催者の霧雨魔理沙だ!」
『わー、ぱちぱちぱち』
「本日は、季節の風流を味わってもらうために、お前達を招待した! 思う存分楽しんでくれ!
っていうわけで、固いことはなしで、れっつお鍋たーいむ!」
これを果たして挨拶というのかどうかはわからないが、ともあれ、一同そろっての芋煮会の開始である。
早速、渡された小鉢やら丼やらを持って、鍋の前に人妖が並んでいく。
「はいはーい。押さないでくださいねー、たくさんありますからー」
一同に食事を提供していく役目は、なぜか美鈴担当だった。他に鍋を作っていた人物はと言うと、
「ほらほら妖夢ぅ、お鍋にはぁ、お酒よぉ」
「ち、ちょっと! やめてください幽々子さま、私はお酒は……きゅぅ」
あっさり酔い潰されるものが出て、その主犯者が隙間妖怪に説教されたり。
「ほらほら、熱いから気をつけるんだぞ」
「ふー、ふー」
「はふはふ……」
「けーねって、ほんと、子供好き……」
「ああ、子供はかわいいなぁ。うん」
うさぎの子供達相手に何やら母性本能発揮しまくっていたり。
「あらあら。幽香さん、どこへ?」
「あ、そ、その、も、もう、私の仕事は終わったから。帰って、花たちの冬越の用意を……」
「あらあら。そんなこと仰らずに。せっかくお鍋を用意したんですから、どうぞ」
「……でも、私、こんな所にいてもみんなの空気を乱すだけで……」
「お前は、なぁーに下らないこと言ってんだよ。魔理沙さん主催の宴会だぜ? 途中退席は認めん!」
「……ぐすっ。ありがとう……」
「ん?」
「べっ、別に何でもないわよ!」
と、ツンデレの寂しがりだったりと忙しいのである。
「美鈴おねーちゃん、おかわりー」
「あー、あたいもおかわり! ねーちゃん、ちょうだーい」
「はいはい。そんなに焦らないでね。
はい、ルーミアちゃん。はい、チルノちゃん」
「わーい」
「これ美味しいよ。うん。たまにはあっついお鍋もいいねー」
「チルノちゃん、冷気吹きかけて、ほとんど凍らせた状態で食べててそのセリフはどうかなぁ?」
「ちょっと美鈴。あなた、全然食べてないじゃない」
次から次へと、食べてはおかわり、食べてはおかわり、を繰り返す一同のせいでお玉片手の作業が忙しい彼女へと、メイド長が歩み寄った。片手に自分の分、そしてもう片方の手には、
「ほら」
「あ、でも、お鍋の責任者ですから。私も。
だから、最後まで……」
「そういう責任感の強いところは、あなたの利点であり欠点よ」
「その通りですね。よろしいですか、美鈴さん。鍋物に限らず、事、宴会に関しては、その場に集っている他の誰もが欠けても成り立たないのです。一人の人間が一人の役目を背負うことはありません。みんなで分担するべきなのです。つまりは、あなたもまた、こうして宴会の場にいるのですから、それを楽しむ権利が……」
「あー、はいはい。その先はあたいが聞きますからね」
「何ですか小町ちょっと私のお説教はまだ終わってませんよああこら脇に抱えないでくださいこらー!」
「……まぁ、うん。こほん」
流れるびみょ~な、ちょっと空気読めてない展開を許容して、咲夜が言葉を続ける。
「そこから先は、他の子に任せるから。いらっしゃい」
「でも……」
「あなたは、私に一人でお酒を飲めと言うの?」
ほっぺた真っ赤。さりげないその一言に、きょとんとなった美鈴は、そのまま『やれやれ』と言わんばかりに笑うと、メイド達に「お願いね」と仕事を託して咲夜と一緒に肩を並べて歩いていく。
「メイド長って、ほんと、いじらしいわよね~」
「あの、素直に自分の気持ちを口に出せないのが、また何とも……妙な味わいよねぇ~」
「美鈴さまも大変よ、ほんと。でも、それがむしろいいというか?」
「ほんとほんと」
「あなた達。桃色談義に花を咲かせるのはお仕事が終わってからですよ」
『はーい』
と言うわけで、二人の幸せ空間を邪魔する輩は抹殺する、の気配を漂わせるメイドさん達が鍋を預かる運びとなった。
そんなにぎやかな会場の一方ではと言うと、
「……師匠……」
「どうしたの? 鈴仙さま」
「イナバ、何か目が怖いわよ? 普段よりも赤さが倍増、速度は三倍、船を蹴って加速するのは無理じゃないかしら」
「敵……あの女は敵……」
何かと幽香に気をかける永琳を見て、嫉妬心を燃やしまくるうさぎがいたりする傍ら、
「うちでも鍋物出したら受けますかね?」
「さあ? まぁ、私は鍋物は好きだけどさぁ」
「というか、霊夢は何でも好きではなくて? 事、口に入るものならば」
「あ、わかる?」
「霊夢さんのアドバイスは、たまに的確なんだか的はずれなんだかわからなくなりますわ」
「……そういうもんだろうねぇ、ほんと」
「霊夢、飲めー! わたしの酒を飲めー!」
「全く、無粋な小鬼ね。どうして季節の情緒を味わえないのかしら? 霊夢、あんな無粋な酒なんて口にすることなくてよ。わたしの、この血のように赤くて甘いワインはいかが?」
「いや、そういうものの進め方もどうなのよ?」
「何だとこの吸血鬼! やるかー!?」
「あら、面白いわね。いつぞやの意趣返しかしら」
「何だか物騒なことになってきたね」
「うちらはおいとましましょうかね」
霊夢を挟んでの吸血鬼と鬼の激闘。もちろん、その数秒後に「器がこぼれるからやめんかぁ!」と夢想封印食らって、二人とも仲良く幻想郷の空を飛ぶ。そして、その場に巻き込まれるのを、ある意味では虫の知らせでさっさと退散することで避けたミスティアとリグルの二人は、おかわりを求めて鍋の前へと。
「うーん……いまいち、味が足りないわね。小悪魔、ちょっとそこの一味唐辛子を取ってちょうだい」
「はいはい、ただいま」
「ねぇねぇ、パチュリー。いちみとうがらし、ってなぁに?」
「あ、私も興味あるー」
「やめときなさい、あなた達。あれは大人の食べ物よ」
小悪魔から受け取った一味唐辛子の瓶を片手に持って、さっさとそれを振る。そうして、パチュリー様、それを一口。だが、その顔がまたもや渋いものに変わる。
「おとなのあじー?」
「どんな味なんだろう。気になるね、スーさん」
子供二人は、そんなパチュリーの様子を、じっと興味津々に見つめている。
「けれど、意外ね。パチュリーって、意外と辛いもの好きだったの」
「というわけでもないけれど」
そう言って、パチュリー様、暴挙に出ました。
「んなっ……!?」
瓶のふたを開けると、そのまま、その中身をどさっと半分ほど器の中に。
ぐつぐつことことと煮込まれたみそのだし汁の水面全てに真っ赤な唐辛子が浮き上がり、どう見たってやばいだろそれ、なものをパチュリーは平然と口にする。
「うん……これくらいが絶妙ね。
どうかした? アリス」
「いや……その……」
「……そーっと、だよ?」
「うん」
顔を引きつらせるアリスの横で、ちびっ子二人が何やら怪しい動作をしている。それに小悪魔が気づいて「あっ……」と声を上げた時にはもう遅く。
「辛い~!」
「むぐ~!」
パチュリー特製、唐辛子汁を口にしてしまって七転八倒する。慌てて、アリスと小悪魔が二人に水を飲ませるのだが、その壮絶な味にすっかりと打ちのめされてしまったのか、フランドールは「うわ~ん、お姉さま~」と走り出してしまうわ、メディスンは、「うぅ~……いじめられたよぅ……スーさぁん……」と泣き出してしまうわと。ある意味、この宴会の場において最も混沌とした様相を呈している中、パチュリーは、何にも気にせず、その唐辛子汁を口にする。
「何かおかしかったかしら?」
「おかしい……っていうか……。パチュリー……ほんと……辛党なのね……」
友人の意外すぎる一面に、一人、顔を引きつらせるアリスであった。
「橙、美味しいかい?」
「うん!」
「そうか、よかったね」
妖夢や咲夜といった面々が、ある意味、ダウンしてしまった中、一人、甲斐甲斐しくつまみなどを作成して給仕を続けている藍が、橙のにこやかな笑顔に思わず笑みをこぼす。そんな橙は、ルーミアやチルノと言った子供達と輪になって「これ、あたいの!」「あー、それ、私が狙ってたのにー!」「ルーミアちゃん、橙のこれあげるー」などと微笑ましくやっている。
「やはり、子供の成長を見るのはいいものですね。紫さま」
「そうかしら?」
幽々子への説教にも飽きたのか、場の空間から一人外れて杯を傾ける紫へと、そう一言。
「そうですよ。やはり、手塩にかけて育てた我が子が、段々、私の手を離れるようになっていくと。嬉しくもあり、寂しくもあり、で」
「子供はいつだってそう。いつかは成長して、大人の所から巣立っていくのよ」
視線を幽々子達の方へと。「えっとぉ……とりあえずぅ、永琳さぁん、酔い覚めの薬ぃ、ありませんかぁ?」「あらあら、それではこちらを」「あー、えっと……永琳殿? それ、どう見ても薬じゃなくてジャ……あ。」「みょぉぉぉぉぉぉんっ!?」「まあまあ、すごいわぁ。妖夢が一発で目を覚ましたわぁ」「よ、妖夢、しっかりしろ! おい、輝夜! 蓬莱の薬だ! 蓬莱の薬持ってこい!」「こんな状況で使えるわけないでしょ!? イナバ、薬!」「は、はいっ! てゐ、至急、エリキシル持ってきて、エリキシル!」「レベル50にしてはたき覚えさせてもダメなの!?」「あらあら」と混沌を遙かに超えた暗黒渦巻く世界に顔を引きつらせ、そっぽを向く。
「えっと……まぁ……うん。子供は、いつだって子供のままがいいかもね……」
「いや、あれは……どうなんでしょう……」
何というか、『妖夢はきっと強い子に育つだろうな』と、紫と藍、二人の目から見てもそれは明らかだったという。色んな意味で。
「ん~……そろそろ冷えてきたわね」
「お酒が覚めてきたのではありませんか? どうぞ、霊夢さん。天狗一族秘伝のお酒、『風神一献』を……」
「……お。雪だわ」
にぎやかな宴会は、未だ、続いていた。宵の口を回り、すっかりと夜のとばりが落ちても、辺りには、なお、真昼のような明るさが点り、周囲を照らし出している。その中で酒をちびりちびりとやっていた霊夢は、魔理沙の言葉に空を見上げる。
ちらほら、ちらほらと。
漂う雪片が、ひとかけ、ふたかけ、みかけ。
「初雪ねぇ」
「初雪ですねぇ」
「よし。そんじゃ、続きは温泉での二次会と行くか」
チルノが「雪だー!」とはしゃぎだしたのを横目に、ぽかぽかの湯気を立てている温泉を指さす魔理沙。
「そうねぇ。今夜はオールナイトと行きましょうか。鍋も、まだまだ余ってるんだしね」
「そういうことだな」
さすがに健啖家を大勢集めても、見上げるような高さのでっかい鍋からは中身も簡単には減っていかない。と言うか、減れば減っただけ、追加で具を放り込むから問題なのかもしれない。最初は肉といもにこんにゃくなどがメインだったのだが、今は近くを流れている小川から釣った魚などがメインディッシュとなっているのだから。
「今回の宴会は大成功ですね?」
「私の考える宴会は、いつだって大成功だぜ」
「後始末、よろしくね?」
「それは、この場の全員がやることだ」
はいはい、と笑いながら。
なおも更けていく夜の中、寒さに耐えきれなくなったもの達が場所を温泉に移して酒盛りを始める。
「ねぇ、姉さん」
「ん?」
「冬を代表する一曲と言えば?」
「夜と月、そして星。何よりも、家々の灯火を表現するような曲がいいだろうね」
「んじゃ、ルナサ姉さん、是非ともそんなのを一曲」
「即興で構わないのならやってみるよ」
立ち上がった彼女の奏でるバイオリンのメロディが、夜の河原に澄み渡る。
――今宵の宴会は、誰もが気持ちよく時間を過ごせそうだった。深夜まで騒ぐもの、眠気に耐えきれず、即席で作られたテントの中でころんと横になるもの、静かに酒を酌み交わすもの。その種類は様々あれど、誰もがその時間を楽しんだと言うことに変わりはない。
「メイド長達が、このままもう一歩大人の段階に進むに百」
「私は、『ああ、ダメよ、美鈴。こんなところで』『さあ、咲夜さん、気を楽にして』まで行くに三百」
「それじゃ私は……」
「あ・な・た・た・ち?」
『ひぃぃぃっ!? ごめんなさいお姉さまぁぁぁぁぁっ!』
会場の一角で幸せ満喫している一部のもの達を対象に賭をしていた輩は、その後の掃除で、徹底的にこき使われましたとさ。
「ねぇ、魔理沙」
宴会終わって片づけも終わって。
即席で作った温泉は、以後、誰もが使える貸し切り湯となったのだが。
「これってさ……ほんと、どうやって持ってきたの?」
宴会の主役として活躍した、でっけぇ鍋を取りに来た霊夢が、隣の魔理沙に訊ねる。彼女は、「んー?」と振り返り、一言。
「ああ、これな。飛ぶんだ」
「……は?」
「飛ぶんだよ、これ」
ぺしぺし、と鍋の底を指で叩いて、彼女。
「えーっと……………………飛ぶ?」
「飛ぶ」
「鍋が?」
「うむ」
「まったまたぁ。冗談きついわよ、魔理沙」
「本当だって。こーりんも、『こいつがきっと、外の世界でUFOと呼ばれていた物体なのだろうな』って感慨深げにしてたからな。
霊夢、外の世界には有名な言葉があるんだぜ? 『信じれば飛べるはずさ』ってな」
「いや、だからって無理が……」
「よーし、飛べー」
「うお、飛んだ!?」
お後がよろしいようで。
ハッ!!??
台無しだ。・・・アレ?
・・・ぁ、言ってるじゃん俺・・・orz
だが一つだけ突っ込みたい。
某県にいる私としては…芋煮はみそじゃなくて牛肉に醤油でございますっ
だって豚肉に味噌じゃ豚汁になr(ムソーフイーン
ステッキーな作品をありがとうございました。
うまい棒のところで思ったのが、きっと霊夢は消費税一円未満端数切捨ての店で一本ずつうまい棒を買うから15本買えるかもってことでした。
どっちにしてもそんなので生活できるわけがありませんがw
でも後談が「ふんどし喫茶」なんて台無しだ!
……それはそれとしてリリーはほんと可愛いねえ
ってなんかかっこよくない?
でも、すべて台無しw
しかし台 無 し。
芋煮が味噌味なんて邪ァ道だァッッッッ!
醤油味だろォォォォオオォォォッッッ!!!!!
台無しだッ!
こんな素敵な宴会の風景はまさしく東方。私が一番好きな東方です。