Coolier - 新生・東方創想話

明日のご飯の為に。

2006/11/04 08:17:47
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※お馴染み系永遠亭の話なのですが今回は容量の関係でこっちに投下。

 いつものようにネットが繋がってたり、多少過去作品と絡んでたりしますが、
 根本的には問題ありませんので気にせずおめしあがりください。


 秋も深くなり、働くには丁度良い季節とされる11月。

 研究所の片隅で書物を読んでいた永琳は今年もいよいよ収穫の時期が来たな……と感じた。

 実は11月~1月にかけては永遠亭にとっても尤も忙しいシーズン。

 なにしろ、近隣の村で作ったもち米を大量に入手して、永遠亭に住んでいるウサギ達を使って大量の餅を製作。

 そのお金で日々の生活を送っているからだ。

 ちなみに、幻想郷内にある殆どの餅は永遠亭で作った物だったりするのはここだけの秘密。

 もち米を取ってくるウサギ達には細心の注意を払って持ってくるように色々と注意をして、リーダーとしててゐが付いて行く事になっている。

 てゐに頼むと毎年毎年きちんと持ってきてくれるのだが、時々何故かウソツキだの強欲ウサギだの守銭奴ウサギだのといった声が上がるのはてゐの性格による物ではないと思う。

 それはともかく、てゐが回収をした餅をつく係というのがちゃんと別に居て、指導の方は優曇華が担当している。

 永遠亭に住んでいるウサギ達は全員が不老長寿という訳ではなく、むしろ餅つきの作業をするのが初めてという物も多い。

 そういったウサギたちには先輩のウサギがついて教えてやるのが慣わしなのだが、完全に自主性に任せていると良くわからないまま餅つきを始めてしまうこともあるため、監視と物を教える役目として優曇華が指導についているのだ。

 私はウサギたちがついた餅を試食したり検査したりするのがメインの仕事。

 優曇華が指導についていたりてゐが回収していたりするのでそれほど変な物が入っていることはないのだが、一応の為と後はもう一つ。

 餅を作る際に幾つか隠しとして薬品を入れているのだが、今年作られたお餅の確認と新しい薬品の製造の為だ。

 もち米が取れる時期は主に10月中旬から後半。

 それを主に食べたりする時期は12月~1月にかけて。

 当然、餅を作った後は多少保存する為の道具と言うかそういったものが必要になってくるので、製造した後に多少の薬品を混ぜることになる。

 この保存剤が毎年作られてくるお餅によって多少配分を変えておかないと、美味しいお餅にならなかったり、お餅自体が長持ちしなかったりと言うことになる為、薬品に関しては毎年製作しているのだ。

 さて、回収作業に行ったてゐはどうしているかな??











 イナゴやら鈴虫やらと言った虫達が多量にでてきて、夜でも賑やかな秋。

 その比較的過ごしやすい時期の田んぼはまた、虫達が多くて遊ぶのには困らない。

 秋の綺麗な風景を見つつ、虫の声が聞こえてくるような時間。

 永遠亭から行くこと一時間ほど。

 山を一つ超えると、平面一体を多い尽くす綺麗な稲穂。

 それに、大きな蔵と点在する集落が見えてくる。

 私が集落の姿を確認できる頃。

 他のウサギ達も集落を確認できたのか、全員の脚が軽くなったように少し速いテンポで前に進んでいく。

 そうして歩きだした私達が、もち米を作っている集落に着いたのは、つい先ほどのことだった。

「どうも~、永遠亭より着ました~」

「これはこれは、てゐ様。いつもありがとうございます。今年のもち米はこのような出来になっています」

 村長(ちなみにウサギ)が今年できたもち米の入った蔵に案内する。

 その間にこちらの姿を見つけたのだろう。

 歩いている場所からちょっと離れたくらいの距離に幾人かの子供達を発見した。

 私はそちらの方を一旦ほうっておいて、蔵に入り今年のもち米の出来を確認する。

 今年は雨と天気の量がうまくかみ合って、例年に無い豊作。

 質としてもなかなかの出来栄えだった。

 これなら十分良い価格で売れそうで一安心。

 折角なので、そのまま積み込みの準備等をさせておき、私は村長さんと積み込みについての打ち合わせとか、来年についてのこととか、売れた後のこととか、その他色々決めておかなくてはいえないことを相談し始める。

 ところで、幻想郷には豊作で貧乏になるということは少ない。

 一般的に農家では、あまりに作物が取れすぎると、豊作貧乏といって歓迎しないこともあるのだが、ここ幻想郷では違う。

 値段は確かに安く買われてしまうが、出来た量の分は何故か腐る事無く処理してくれる謎の組織があって、その組織が腐る前に一通り買い取ってしまうからだ。

 一説によると買い取っていくのはおかっぱ髪で両手に剣を持った少女で、手に抱えられる限界量ギリギリまで安くなった商品を買って行くそうである。

 この話は幻想郷での七不思議のひとつに入れても良いのではとの噂があったが、てゐには心当たりが合ったので七不思議に入れるのは反対しておいた。

 まぁ、おかっぱ髪の従者をもつ冥界の幽霊の胃袋なら七不思議に入れても良いかなとは思うけどね。

 さて、そんなこんなで今年のもち米の出来を確認したし、収穫された物を持っていくことにしよう。

 色々と細かい注意を加えて、もち米を部下のウサギたちに運ばせる。

 私はウサギたちが動くのを大体確認すると、その足で村の広場へ行った。

 歩いていくと、村の中央にあるでっかい木と広い原っぱが見えてくる。

 私が今日はどんなお話をしようかと考えながら歩いていると、

「ウサギのお姉さんだ~」

 村に住んでいる子供達がいっせいに駆け寄ってきた。

 村にもち米を買いに行った帰り、幻想郷で起きたいろいろな出来事を話にして聞かせてやっているせいだろう。

 こちらとしても、いつも一緒にいるウサギ達以外の話の聞き手は貴重で、こういった反応を見ながら霊夢や魔理沙達を騙す為の嘘を考えたりするのが日課となっていた。

「今日はどんなお話が聞きたい?」

 いつものようにどんな話が聞きたいかアンケートを取り始めると、

「霊夢の大冒険の話が聞きたい~~」

「私は、魔理沙とアリスの恋愛話が良いな」

「小悪魔のドタバタ日記の続きはどーなったの?」

「姫様の優雅な生活日記とか……」

 途端に会場内が騒がしくなった。

 う~ん……今日はどんな話にしようかなっと……。

 こないだは魔理沙とアリス、それに神綺様のドタバタ恋愛話をしたし、その一つ前は姫様と妹紅の格闘対決の話をしたっけ?

 よし、だったら今日は……。

「わかったわかった。それじゃあ今日は霊夢の冒険の話をするわ」

「わーい、楽しみ楽しみ~」

「わは~、そ~なのか~」

 私が告げた声が聞こえたのか、自分の聞きたい話が聞けるので喜んでいる子供達と、

 少し残念そうな子供達の顔が見える。

 後、ついでと言うか何と言うか夜の妖怪までこんな所に居るのはつくのが夜だったからかも??

「魔利沙の恋愛話とかはまた機会があったら話してあげるから、それまで我慢してて♪」

 私がそう言うと、少し残念そうにしていた方の子供も納得してくれたのだろうか、耳を傾け始めた。

「ここはお馴染み幻想郷の秘密結社。そこでは悪の天才科学者、Dr・エーリンが世界制服の為に沢山の配下を使って材料を集めさせていたのです」

 永琳様とかが今回は悪者なので、話してる事を永琳様その他に聞かれると非常に気まずそうな気はするが、どうせ誰もしゃべったりはしないだろうから問題はないかな。

 さて、そんな訳で子供たちに正義の味方博麗霊夢とその手下十六夜咲夜、更に永琳と優曇華の悪の天才コンビが作る巨大ロボと大活劇の話を聞かせていよいよ話も終盤。

「行け~霊夢~、Dr.エーリンをやっつけちゃえーーー」 

 終盤に近づくに従って子供たちの歓声も大きくなっていき、

「こうして、悪の秘密結社とDr.エーリンの世界征服の野望は費えましたとさ……」

 咲夜可哀想とか、霊夢かっこいい~とか、エーリンがんばれーとか色々な声が聞こえる中、私の語る冒険活劇は終了。

 一通り満足できる反応を見た後、永遠亭へと戻りました。















 さて……その頃の優曇華は?

 研究所の片隅、永琳様からいただいた自分用の研究書庫の中でなにやらうんうん考え込んでいた。

 考え込む内容は主に餅つきに対する人員の割り振り。

 今年補充された人員と去年以前から居たウサギ達をどうやって分けて、どこに誰を置くかと言う人員の配置は優曇華の仕事。

 一番最初につく餅の量に合わせるようにウサギ達を配置する訳だが、12月~1月の繁忙期に残すもち米の量とか、その時期に合わせたウサギの位置とか配置等は優曇華にまかされている為、何気に作業としては大変だ。

 ノートの上にああでもあいこうでもないと色々と字や絵を書き加えていると、どこから来たのか誰かがそっとお茶を持ってきてくれた。

「え~と、お茶ね。そこ置いといて」

 なんとなく隣にお茶が置かれたのだけは見えたので適当に返事をすると、

「あら。折角、優曇華の苦労を労ってお茶を持ってきてあげたのにそっけない態度を取られるなんて心外だわ」

 永琳様の声が聞こえた。

 慌てて、お茶の置かれたほうを見ると、永琳様が隣の席に座って、こちらの様子をじっと眺めている。

「はうえう……永琳様、隣にいらっしゃったのなら言ってもらえれば良かったのに」

「だって、優曇華の頑張って働く姿がいじらしくて可愛かったんですもの。ついつい見とれちゃったのよ」

「永琳様は意地悪です」

「まぁまぁ、折角だからお茶でも飲みながら今年の状況を教えて欲しいんだけど」

「え~とですね。今年は35名ほど新しく人員が増えまして、その代わりに48名ほど減っています」

「あら、今年は人員減になっちゃのね」

「今年の正月ごろとか2月ごろに大分人員が減りましたから、その関係が大きいかな……と」

「巨大ロボットを作ったのは私たちだけれど、永遠亭に妹紅が襲撃をかけて来るのはいつもの事じゃない」

「妹紅様の事ではなく、レミリア様とフランドール様の事です」

「確かに正月に酒に酔って殴りこみに来たわねぇ」

「あの事件の際に母屋の一角は完全破壊、幾人かのウサギたちもその時に巻き沿いを食らってますから」

「それに、母屋の一角が壊されたことにより、ウサギ達のセ……セ……」

「生殖行動にも影響が出たわけね」

「:あ@さ*@¥「:」」

 言葉がうまく繋がらなくなった私の話の続きを永琳様がつないでくれた。

 勿論人員の補充は生殖行動によって行われているのだが。(ウサギの成長はかなり早いので、一年近くあれば一人前の行動が出来るようになる)

「具体的には、パニックを起こしたウサギたちが産む筈だった子供を吸収してしまった可能性が高い……と」

「今度からはその辺も考えてあげないといけないわね」

「抑えてある発情期を普通に戻せば良いだけなんですけれど」

 色々考えたら、急に胸がドキドキし始めた。

「何を考えたのか大体想像はつくけれど、ここは言わないでおいてあげるわ。発情期を元に戻すのが一番の手ではあるけれど、そうすると今度は増え過ぎて困るのよ」

「そうなんですか」

 胸のドキドキが急にでっかくなったのが自分でもわかる。

 そのドキドキをおさえつつ、ここは自然に対処していったんだけど、

「ええ、だから優曇華が考えているような状態にはならないから安心しなさい」

 ……永琳様には私の考えていることがバレバレだったり。

 うぅ……私はどうにもその手の話に弱いみたい。

 ウサギと言うのは基本的には年中発情期で、子供が生まれたその日のうちに次の発情期になると言われる動物。

 また、もう一つの特徴としてウサギは子供を産む際自分の体の調子が悪い時はそのまま生まずに子供を吸収してしまうと言う特徴を持っている。

 勿論、人間化する際にそこら辺の特徴は多少抑えられたりするのだけれど、根本的には生殖能力の高い動物なのだ。

 私も当然ウサギの仲間なので、そこら辺の感覚は発達している筈なのだけれど……。

「そういえば、優曇華の子供は私に見せてくれないのかしら?」

「イキナリ何を言い出すんですか、永琳様!!」

「地上に来た最後の月のウサギになるかもしれないのに、その子供が見れないのは悲しいじゃない」

「全然そんなこと考えられません!!」

「あら?そうなの?? あなたもウサギの仲間だからそういった能力は結構高い筈だけれど……」

「それに月のウサギは月に行けばいっぱい居ますからっつ」

「残念、私の将来の夢は月のウサギ三匹引き連れて合体攻撃を覚えこませることなのに」

「まだ全く決まっていない将来の話なんてイキナリされても困っちゃいます」

「そう?ちなみに、一番最初の月のウサギがダッシュで攻撃を仕掛けた後、さっと横に飛んで避けて紅い狂気の目を見せる。その間に最後の一匹が魔力を溜めておいて、相手が混乱している隙にマスタースパークのように撃ち込む技にしようとか思っているんだけど」

「いや、あの……まだ一匹も生まれていないのにどうして三匹の連携とかいう話が出てくるんです? それに、白い三連星とか怪しげなネーミングがつきそうな三人組ってのは色々とまずいような気がするんですが……」

「良いのよ。それとも、全員に天馬を用意して一斉攻撃を仕掛ける方が良い?」

「そんな使い古されてそうな技を使う子供なんて生む気もありませんよぅ」

「そうねぇ……だったら……」

 これ以上永琳にからかわれ続けるのはあんまり精神的にも立場的にも良くない気がする。

 それに、このままだと話が進んでいかないので、

「永琳様、配置の方が書きおわったので見てくれませんか?」

 無理矢理話を切るように、今まで書いていたノートを永琳に見せる。

「配置の方はよくわからないから優曇華にお任せしておくわ」

 見せたノートを軽く確認した後、適当にうけ流す永琳様。

 そうして、見せたノートを一旦テーブルにおいて、改めてこちらに向き直り……。

「それより、さっきの続きだけれど……」

 どうやら逃がしてはくれないようだ……。

 私は覚悟をして永琳の話に付き合う事にした。










さて、その頃の輝夜様は……。

「むにゃむにゃ……えへへ~、イベントアイテムはゲットしたし今度は何をやろうかしら~~」

 眠っていた……。

 夢の中までネットゲームをやっているのは輝夜らしいのかもしれない。







 さて、そんなこんなで刻一刻と時間は過ぎて行き、てゐが村から帰ってきた。

 私こと永琳は研究所内で帰ってきたのを確認する。

 夜も大分過ぎて、一番寒くなってくる時間帯。

「今年も結構沢山取れたわ~」

 と元気そうな声が永遠亭内部に響く。

 てゐの行動時間から考えて、とうに他の連中は終身時間だったりするが、そこら辺はおかまい無しだ。

 一旦戻って研究を再開していた私はてゐの姿を見つけると、

「帰ってきたのを元気よく報告するのは良いけど、時間を考えなさい」
 
 と軽く注意しておく。

「時間って言っても、この時間帯がメインで動いてるのも居るわけだし、問題ないじゃない」

「まぁ、それはそうなんだけれど……」

 今回はてゐの方に一枚利があるようだ……。

 まぁ、それはともかく持ってきた物資とやらが気になる。

「で、その物資とやらはどんな感じなのかしら?」

 私はてゐの後について、回収してきた物資とやらの確認に向かう。

 向かっていく最中に、今もっている研究用具をある調べておくことも忘れない。

 もち米の品質を確認して、それにあわせた試薬品を作っていくのが私の役目。

 てゐの回収した物を確認するのは結構重要な作業だ。

 てゐについてちょっと歩いていくと、大きな台車に沢山詰まれた稲穂がみえてきた。

 到着。

 とりあえず、詰まれた稲穂に虫とかついてないか簡単に台車の周りをチェック。

 うん、見た感じ特に妙なことも無く良い米が取れたみたい。

 私は適当に稲穂の束を掴み、数房取り出すと、軽く調べてみることにした。

 稲穂をハンディー精米機に入れて精米し、試薬を使って検査をする。

 入れた後、ハンドルをぐるぐると回すと精米したお米が出てきた。

 このハンディー精米機も勿論人力。

 ホント、人力はめんどくさいけど、いいわよね~。

 なんていうか、オートメーション化されて全て出てくる物よりも機械と人間の一体感があるって言うのかしら?

 私が使っているんだ~感と言いますか、オートメーションには無い味わいがあるといいますか。

 うん、やっぱり人力は最高だわ。

 ……っと、危うく話が脱線する所だった。

 とっとと試薬に漬けて品質を調べないと。

 ん~、アミロース1%、アミロペクチン98%……基準値はまぁ大体達しているし、今年はそんなに特殊な配合の必要は無いみたい。

 ちょっと粘り気が足りなくなるかもしれないから餅を作る際には多少注意が必要だけれど、そこら辺は優曇華に伝えておけば問題ないだろう。

 概ね問題ない感じなのでひとまず安心かな。

 作業メモを取りつつ、これからのことを考える。

 優曇華はまだ寝ているからこれからの指示は書いて優曇華の寝所に投函しておけば良いかな。

 優曇華なら成分表を見ても多少の事はわかりそうだし、成分表も一緒に入れておきましょう。

 私はもってきた紙に成分表とこれからの指示みたいなのを書いて封筒に入れ、荷車から離れると一旦優曇華の寝所に寄ります。

 ん……、起きてたらそのまま手渡ししても良かったんだけど、流石に寝てるみたいね。

 寝所の扉のスキマから封筒をいれて、今日の作業は終了♪ 

 私も自分の部屋に帰って一休みすることにしました。




……そして、次の日。

 鈴仙の部屋と書かれたナンバープレートのある部屋で私は思いっきり伸びをする。

 んん~~。もう昼かぁ。

 昨日はすっかり遅くまで作業をして、眠ったのは大体夜ふけごろ。

 餅つきの現場作業はだいたい夕方から開始なので、その時間帯までは確かに時間はあったけれど、まさかこんなに遅い時間に目が覚めるとは思いもよらなかった。

 今の時間を確認する。

 お日様がちょっと真上からすこしだけ落ち気味になっているところからしても、大体昼過ぎで間違いないだろう。

 私は遅めの朝食を取りに部屋の扉を開けようと布団から大きく伸びをして歩き出す。

 歩き出そうとしたその時、扉の前に落ちていた封筒を拾って、多少の調整を考えたり、ご飯を取ったりしているといよいよ時間がやってきた。

 長い廊下をずっと進み、正面の大扉を開けて外の様子を確認する。

 普通の学校の校庭くらいはある庭で、(まぁ使う主目的の一つは運動用なのですが)まだ若干時間はあるが、中には大分大勢のウサギ達が一塊になって待っていた。

 私は庭を横切り、正面中央に移動する。
 
 正面中央には舞台があって、その中央にはでっかい机。

 例年初米が取れた最初の仕事の時には永遠亭の重鎮(輝夜様、永琳様、私、てゐ)が一通り何か述べるのが定番となっており、その為に用意された物だ。

 一応永遠亭の年中行事となった初生産。

 その時刻が刻々と迫ってくる。

 う~ん……何か紙に描いておけば良いんだけど、それってなんかあんまりって気がするなぁとか、今年も無事に始まるかなぁとかその他いろいろなことを考えているといよいよ開始時刻になった。

 年中行事、しかも割とこの手のスピーチはよくやる方だけれど、緊張するのは緊張する。

 輝夜様、永琳様が終わって、いよいよ私の番。

「今年の生産もはっりきってがんばろ~」

「お~」

 あれ……なんかちょっと間違えたこと言っちゃったけど、まぁいいか。

 なんかウサギ達の士気があがったみたいだし、無問題無問題~。

 ちょっと挨拶としてはどっか違うだろー的なスピーチも終わっていよいよ本番。

 一般的にてゐがもってくる米というのは稲として刈り取るだけ刈り取ってあるままの物をもってきてもらっている。

 これは、その後の処理に関する様々な事をやると手間がかかるのと、どうせ永遠亭には沢山のウサギ達が居るのだから手っ取り早くそこら辺の事だけやってしまおうとか言うすばらしい考え方に基づくのだが、

 普通に考えて、そんな状態の稲って言うのは他のお客には売れない気がするんだけれど、どうなんだろう??

 とまぁちょっとだけ疑問に思ったりもしたが、早速作業開始だ。

 てゐが持ってきた稲は脱穀も籾摺りも行われていない為、保存にも向いていない。

 その為、買ってきた直ぐくらいに脱穀と籾摺りを行って玄米にしておく必要がある。

 私はおのおののウサギに行き渡るように永琳様特製の脱穀機を配置する。

 ローラーにでっかいとげとげがついた結構原始的な機械で、永琳様特製だったりする割にはあんまり凄そうな機械には見えない。

 尤も、永琳様曰く

「そこら辺の田んぼで使っている『千歯こき』よりは大分効率が良いはず」

 とのことだが、他所の世界だともっと優秀な機械があるらしいので、そう言ったものを作れば良いと思うのだが、色々もったいないのでコレがベストと判断しているらしい。

 ウサギ達を10人ずつに分けて、稲穂を持ってくる役、脱穀機に入れる役、入れた後に脱穀した物を籾摺り機に持っていく役。

 籾摺り機を回してモミガラと玄米とに分ける役、生成した後に米俵に玄米を詰める役、詰めた玄米を倉庫に運ぶ役……とまぁうまく分けていく。

 さて、分けた所で一通り作業をはじめよう。
 
 まずは脱穀だ。

 全員に一通りの作業を覚えてもらうことになっているので、一旦こちらに注目してもらう。

 脱穀機に先ほど取ってきた稲藁を入れながら、ペダルを足でガシガシと踏んでいく。

 ゆったりと稲藁が脱穀機の中に吸い込まれていくように、カシカシとリズムに乗って踏んでいく作業なのだが、気分が良いときには割とこういう作業も楽しかったりする。

 ちなみに、速く踏めばその分だけ速くローラーも回るのだが基本的に長時間やるため、自分なりにリズムを持ってやるのがこういった作業のコツだったりする。

 さて、脱穀機を使った作業を一旦一通りのウサギ達に教えると、今度は籾摺り機と言われる物に入れる。

 こちらも永琳様特製の品らしく、使用人数が大分減らせてお徳らしい。

 尤も、やっぱり原始的な見た目と原始的な手法を使った機械なので、永琳様特製と言う割には粗末な代物なのだが、そこら辺を永琳様に言うと、

「他の村でやっている土臼と比べるとかなり性能が良い」

 と言われてしまった。

 確かに他の村で行われている農作業の場合はなにやらでっかい臼を使って2~3人くらいで回しているが、こちらの機械は割と楽にハンドル式になっている。

 全自動にしないのは永琳様なりのこだわりがあるのかもしれない。

 まぁいいか。籾摺りをはじめよう。

 さて、この機械。結構大きめの機械でちょっと見た感じでっかい箱のように見える。

 そして、上の方に登っていくとわかるが、漏斗状になっていてそこに大量の籾を入れれる様に作られていた。

 また、箱の横にはハムスターが回すようなでっかくて丸い走る場所があり、それを回すことによって下から玄米となって出てくるという仕組みだ。

 コレを使えば他の村で見た臼のような物に比べると使う人員が少なくて済むらしい。

 また、本来は綺麗に分けられることが少ない為に土臼の場合は別の機械を通す事になるのだが、こちらの機械はそのまま綺麗に取れるよう工夫されているとの事である。

 どっからど~みてもなんかただハンドルがついた箱にしか見えないけれど、永琳様の作品なのできっと内部は複雑な機械なのだろう。

 さて、説明は置いといて作業を始めよう。

 私は先ほど一通りのウサギ達に教えた際に出来た籾(脱穀が終わった稲穂をこう呼ぶ)をバケツに入れて、機械の上の方に移動する。
 
 下のほうにはてゐが待っていて、バケツに籾を入れていた。

 そして、私がバケツから籾を流し終わる頃には第二陣と言う感じでてゐが用意してくれていた。

「ハイ、終わったバケツは床の方に置いといて」

 先ほどまで入れていたバケツを床において、てゐからバケツを受け取る。

 ……っっ。

 危うく流し込む籾と一緒に自分も入る所だった。

……周りの空気が一瞬止まる。

 体勢を立て直した私が周りの様子を伺うと、

 下の方でバケツを受けとったてゐがちょっとびっくりした表情をしていて、  

「そこから落ちたら洒落にならないんだから気をつけてよね」

 と、かなり大きな声で私に注意した。

 確かに、今のはちょっと自分でも怖かった。

 そのまま機械に入ったらそのまま出てこれなくなったりしたら、下から籾と一緒に出てきて哀れ私はウサギ餅の材料。

 ひょっとすると明日の文々。新聞か何かのタイトルで『悲惨な末路!! 最後の月のウサギ、哀れウサギ餅の中に』

 とか書かれちゃうかもしれないし、輝夜様……はどうだかしらないけれど、てゐや永琳様は酷く悲しまれるだろう。

 それに、そちら側に落ちなかったとして、てゐのいる外側に落ちても結構な高さなので無事ではすまない。

 ちょっと妙な方向に脱線したが、気を引き締めなおしてバケツの中の籾をすり鉢に入れていった。

 だいたいこの作業を10回ほど繰り返すと機械の上の方がほぼいっぱいになる。

 さて、ほぼいっぱいになったところで今度はでっかい輪っかの方に回る。

 なんか両手でキッチリ握れるくらいの取っ手が左右についた輪っか。

 輪っかには細かい木で出来たストッパーみたいなのが所々についていて、それを後ろに蹴ることによって動力を発生。
 
 発生した動力によって大きな箱を動かすという仕組みらしい。

 私が力と体重をかけて体全体で回すと、最初のうちはかなり重かった輪っかが大分楽に回るようになってきた。

 最初は重いので体全体を使わなければならず、大変だったが今は簡単に回る感じになっている。

……とは言えずっと回し続けると結構脚が痛くなるんだけどね。

 さて、今回は作業工程を教える為なのでここら辺で良いかな?

 走っていて足が疲れてきたし、籾摺りされた玄米が出てきたのも確認できたので一旦作業を終了させる。

 大体この間に回したのが50回ほど。

 多少は楽になってるらしいけどやっぱり大変だなぁ……なんてしみじみ思ったり。

 ちなみに、この作業。

 何気に大変な作業で、期間的には大体一ヶ月前後はかかりっきりになったりするのだが、そんなことをしていては餅の一番売れる時期に間に合わない。

 だからこういった作業をやるグループ等とその後の作業までやっていくグループとに分けている。

 まぁ、そんな訳で一通りの作業が終わると、米俵に詰めて倉庫に保存していく。

 ちなみに永遠亭内の倉庫は魔力で多少温度や湿度を調整されていて、永琳様特製の香というのだろうか、そういったものを利用して虫等も入らない仕組みになっているらしい。

 昔、てゐが永琳様に頼んでお香とやらをもちだして、リグルに向けて使ったら本当に嫌がられたらしい。

 リグルも逃げ出す強力な香ならきっと他の虫たちも寄っては来ないだろう……と私も思っているが、そこら辺はきっと大丈夫かな?

 最後に、玄米のうちの一部を精米にしておく作業がある。

 さて、一番最初から玄米を精米にして補完しておいた方が楽そうだと思う人はまだ少し勉強不足。

 玄米と精米された米は保存できる期間に違いがあり、玄米はかなり長い間保存できるのに対して精米された米は保存が効かない。

 夏場などは一ヶ月持てば良い方なので、料理等をする方は覚えておこうね♪

 ハイ、そんな訳で精米。

 精米機と言われる機械の上から先ほどと同じように玄米を入れて出てくるのを待つ……。

 ちなみに籾摺り機と比べるとこちらの機械は大きさ的に約半分。

 使う力もそんなにいらず割かし楽だったりする。

 軽くバケツ一杯程度で満タンになる精米機に玄米を流し込む、

 こちらの機械は先ほどのものとは違い手回し式のハンドルがついている。

 なんでもあんまり力を使わないならハンドルの方が楽らしい。

 まぁ、そんな訳でハンドルを回して精米。

 一通りの作業が終わったので、そのまま一旦休憩に入るとてゐが麦茶を持って待っていてくれた。

「おつかれ、どう?今日の感触は」

「結構緊張するし、久しぶりの作業なんで疲れたわ」

「夏の間はそういった作業はあんまりやらないから、少し体がなまってたのかな?」

「籾摺りとかは疲れますから」

「疲れるだけでよかったわよ。だって、危うくウサギ味の餅ができるかもしれなかった訳だし」

「あはは……、心配かけちゃったかな」

「色んな意味で」

「それじゃ、私は休憩終わりだから出てくわ♪」

 私はてゐが出て行ったのを確認。

 そうして、でっかい机にぐでーっと寝そべって休憩すること約10分。

 今度は現場の状況の確認に行く。  

 一通りの作業方法を教え終わり、他のウサギ達の作業を遠くから観察したり、また出来ない所を教えたりしながらある程度の量を残して米俵に詰めていくウサギ達。

 そのウサギ達の様子を見守りながら今年の餅も売れるといなぁ……とか麦茶おいしかったなぁとか色々と考えて過ごす事数時間。

 ひとまず明日やる餅つきの分の精米は確保できたし、今日はここら辺で終わりにしておこう。

今日の作業分を終了させ、お片づけと明日の用意の為臼を置いてある倉庫に移動。

 臼を倉庫から取り出して台車に乗っけると、作業する場所においていく。

 こうして、作業場所まで台車に乗っけて運搬していくこと数分……。

 ……って、なんかすごい勢いで木臼が転がってきた。

 やばいんでとっさに横に飛ぶ。

 日ごろの修行の成果で受身もバッチシ。

 こういう時は修行していることをありがたいと思えるわけで。

 って、話がそれた。

 とにかく、危うく木臼の下敷きになり損ねた私は転がした相手のいる方に向かって自分でも惚れ惚れする素晴らしい眼光をそっちに向ける。

 向いた先にはてゐ。

「……っとに、危ないじゃない。怪我したらどうするのよ」

「なんとなく大きくて転がりそうだったからゴロゴロ転がしてたらそっち側に向かっちゃって止まらなくなっちゃったの」

 とか、にこやかに笑っている。

 あの……、落ちそうになった私に危ないじゃないとか声をかけてくれたり、心配してくれた貴方の行動はとってもありがたいと思っています。

 でも、高い所から落ちて死ななかった変わりにここで臼に轢かれて大怪我ってのは流石に洒落にならないと思うんですが。

 そこら辺てゐはどうお考えなのでしょう?

 とかかなり突っ込みたくなる部分もあったが、

「次からは注意するんで今日のところは勘弁して」

 と、両手を合わせて謝っている姿を見ていると怒る気もうせた。

 大体てゐがそう言う性格なのは今に始まったことじゃないしね。

 さて、そんな感じで臼を所定の場所におき、中に水をためて更に杵の方も水に浸し、先ほど作った精米を研いでたっぷり水につけておく。

 コレで一通りの準備も終了。

 米研ぎとか少し時間がかかったけれど、今日の作業はコレで終了かな?

 私は、一旦集まったウサギ達を解散させて今度は食堂の方に移動する。

 うう~~、ちょっと脚が重い。

 やっぱり研究所に篭ってばっかりいると体がなまっちゃうのは仕方ないかも。

 少しつかれたなぁモードでゆったりと食堂に移動して作業したほぼ全員でちょっとした宴会モードに突入。

 仕事始めと言うこともあってか、まだまだ調子が戻らないなぁとか、久しぶりに体動かしたんで疲れた~とか、
 
 米ってこうやって出来てるんだ~とか、色々な感想を耳にしたり、自分で今日の作業についてとか明日の作業についてとか色々と語りあう。

 そうやって楽しく食事を取り終えた後、自分の部屋に戻って就寝。

 その日はかなり疲れていたせいもあって良く眠れた。






3日目……。

 さらに別働隊のウサギ達のグループがあり、そのグループに対する指導が今日の仕事だ。
 
 昨日用意しておいた道具とか材料とかを思い浮かべつつ、今日の仕事に頭を切り替えていく。

 仕事内容は餅の作り方。
 
 玄米から精米にした米を木の臼に入れて突く。

 月とウサギと言う名前で絵を描かせたら絶対誰か一人くらいは描いて来そうなほど有名なシーンだったりするが、アレはアレで大変。

 腰とか腕とかすっごい痛くなるし、下手すりゃ次の日全身筋肉痛。
 
 つかない側も結構スピードとかテンポとかが要求される、なかなかどうしてコツが居る仕事である。

 そういえば、月のウサギの餅つきショーとか言って一人で餅を作らされたこともあったっけ。

 あの時は本当に大変だった。

 なにしろ月のウサギは私だけなのに餅つきショーという素晴らしい思いつきで、

 腕とか体とかは重くて痛いし、変わってくれる人は居ないしで、お願い輝夜様この無謀な企画を止めてくださいとか

 え~りん、え~りん~たすけてえーりんとか、月のウサギかどうかなんて外見がそれほど変わる訳は無いのだからてゐとか別のウサギにもつかせればいいのにとか、かなり心の中で叫びまくった物である。

 勿論次の日は全身筋肉痛で違う意味で永琳様のお世話になったことをここに記しておく。

 うぅ……思い出したらちょっと疲れてきた。

 あの事件は私の心の中でそっと黒歴史にして封印指定事項にしておこう。

 ともかく餅つき開始。

 まず、水を切って蒸し器で長時間蒸す。

 蒸している間に杵と臼を大浴場から持ってきたお湯で暖めなおす。

 40分くらい経った頃かな? 硬さが丁度良くなってきたのを確認すると臼を暖めていたお湯を捨てる。

 一通りの作業を終えて、今まで蒸していた米を臼に持っていくと、てゐがでっかい杵をもって楽しそうに待っていた。

 「叩け~よ叩け~よ~でっかい杵で~」

 などと適当な替え歌を歌いながら杵を両手で空中に持ち上げ、ぶんぶん振り回している。

 小さい体なのにパワーは十分。

 三国志かどこかの武将のようなその姿はかなりカッコイイのだが、餅つき時にそれをやると周り危ないってわかってるかなぁ?

 ともかく、私がもち米を臼に入れるとてゐが思いっきり力づよく杵をついた。

 豪快についた反動で、返す杵も高速だ……。

 って、あの……。てゐさん??

 イキナリ入れたもち米が空中飛んでってますよ。

 ちょっと驚く展開になったが、今のは量が少なかったから助かった。

「てゐ、元気有りあまってるのはわかっているけど、次たたく時はもうちょっと手加減して叩いてね」

「了~解~」

 私はさっき飛んで行ったもち米の代わりに新しいもち米を入れると、てゐがタイミング良く杵をつく。

 先ほどは耳元で音がするくらいのパワーのあるつき方だったが、今回は多少手加減してくれているようだ。

 さっき叩いて伸ばされた餅を中央に集めるように畳む。

 畳んだ所にてゐが杵でつき直して、また私が畳む。

 この作業を交互に繰り返して一回杵側を休憩させ、裏表逆にしてまた再開……。

、だんだん粒がなくなって滑らかになっていったのを見計らって粉を振り、冷まして固める。

 見事、伸し餅が完成した。

 完成した伸し餅は保存しやすいようにパックに入れ、空気を抜いて保存する。

 こちらのパックと言うのは永琳様が色々と調べ物をしてあみだした特殊アイテム……とのことである。

 さて、こうやって正月等でも問題なく食べられるように餅を生産していった。

 そうして、大分時間がたち、昨日作り出したもち米がなくなった所で、生産終了。

 今日出来た商品はてゐに第一陣として売って貰うことにして、私達は明日は休憩。

 そうして、ある程度の間はずっと米を玄米にする作業とまた新しい餅をつくリ出すと言った作業が繰り返されるのだ。

 作業が終わった後も元気にぶんぶん杵を回すてゐを見て、てゐはほんとに元気だなぁとかまぁ色々思いつつ、私はその場を離れ、自分の部屋に戻った。



 
そうして数日後。

 ぽっけっとーをたたくとー金貨が2枚~、もひとつ叩くと金貨が4枚~

 適当に歌を歌いつつ、私は多くの人が行きかう幻想郷の中でも比較的大きな市場の一角で、商品を売り払う事にした。

 目指すはいつもご贔屓の商人が居る店。

 大きな蔵と大きな建物が目立つそのお店の裏側に台車を止める。

「あ、てゐさん。いらっしゃい」

「こんにちわ~、主人は居る?」

 あ、はい。ちょっと呼んできます。

 番頭が引っ込んですぐのこと。

 店主がこちらに向かってやってくるのが見えた。

「今年最初のお餅。今年はあんまり取れなくて貴重だよ♪」

 早速店主に商談を持ちかける。

「ん~、このお餅だとこのくらいが妥当かね」

「も~ちょっと値段上がらない??」

 指折り勘定でギリギリのラインを考えながら店主と商売を始める。

 店主とは長い付き合いで比較的相場はわかっているのだが、こういう駆け引きをきちんとやるのが商売のやり方だ。

 こういう駆け引きのやり方を知らない素人は店主の言葉どうりに安い値段で売らされていくし、余りに高い値段を吹っかけると今度は買ってくれなくなる。

 そこら辺をうまく加味しつつ交渉していくのが本道の商談である。

「米の移動とかはウサギ達にやらせるから、その分の人件費分とかまけてよ」

「人件費って言ってもそんなにはかからんからなぁ……ひのふのみ……このくらいかねぇ」

「そこをもうちょっと……」

 さて、最初から売れる価格を提示せず、色々と交渉していく、

「ん~、これ以上はビタ一文払えへんわ」

 と最終的に店主側が苦い顔をして笑っているのを確認すると、

 店主側の最終相場で折れることにした。

「仕方ないわね」 

 こうして店主に商品を売り払う。

 商談が成立した後、自分の部下達に商品を運ばせて、

 ある程度時間が経つと、荷台の中身は空っぽになっていた。

 大体の在庫は店主に売り払ったし、このまま一旦永遠亭に戻ろう。

 私は市場から姿を消すと、永遠亭に向かって凱旋しました。




 大体最初に稲穂を取りに行ってから考えると一週間ほど経過した日。

 てゐが永遠亭に着いたのを確認した永遠亭の人々は収穫祭の用意を始めていた。

 私こと永琳がその様子を研究室でぼんやりと眺めていると、研究室の扉をノックする音が聞こえる。

 扉を開けると、売り上げの報告にやってきたのだろうか?

 てゐが扉の前で待っていた。

「おかえり、どのくらいの値段で売れた?」

「これくらい……。天候不十分であんまり取れないんでとか言ったら多少値段上げてくれたけど、思ったよりは儲からなかったわ」

 てゐが儲けた文の領収書を見せながら、今回の儲けを報告しはじめる。

「これくらい……っと、まぁコレだけ儲かれば問題ないわね」

 大体問題ない(というか多少多め)の額を見せてくれたてゐの商売能力に感謝しつつ、今年の餅の第一販売は終了。

「今年最初の商売の成功と、餅がうまく作れるようにって輝夜様達がお祭りの準備をしているから行って来なさい」

「オッケー。それじゃあ最後の主役として一丁祭りを盛り上げて差しあげますか~~」

 なんて感じでそのまま、走っていくてゐ。

 その様子を見ながら私もてゐの後から祭りの会場に出かけた。

 今年の豊作と商売繁栄の宴。

 賑やかな音楽と賑やかな会場の様子が見て取れる所までやってくると、丁度優曇華とてゐが話をしている最中。

「てゐ~、着物似合う?」

「流石に鈴仙ちゃんはスタイル良いからどんなの着ても似合うわね~」

 と言うてゐもまたどこかで買ってきたのか新しい着物に袖を通していた。

「てゐの新しい着物も似合ってるわよ」

「ありがとっ♪」

「永琳様も着物で来ればよかったのに……」

「私はほら、今日は観客として舞台裏で観戦しているわ」

「輝夜さんとかは、なんか張り切って綿飴とか焼きそばとかこないだ作った餅とかいっぱい抱えて走ってましたよ」

「ふぅ……なんて言うか、姫様は昔会った時より今の方が子供っぽくなっているような」

「昔はなよ竹のかぐや姫としてカリスマがあったらしいですけど、今はその片鱗ありませんよね」

「でもまぁ、元気に色々イベント考えたりしてるのはありがたいわね」

「そうなんですか?」

「ええ。不老不死なんて特殊な定めを受けるとね、本当はなんにもやりたくなくなっちゃう物なの。それが今は色んなイベントの先導者」

「まぁ、不老不死ってことはいつでも楽しめるって事ですからねぇ」

 私がそこで一旦話を切ると、向こうで手を振っているてゐと輝夜の姿が見えた。

「優曇華。向こうでてゐと姫様が手を振って待っているわよ」

「あ、は~い。それじゃあ行って来ますね」

「お土産とかあったらお願いね」

「わかりました♪」

 私は優曇華が走り出した先をこの目で見ながらゆっくりと観客席に向かう。

 不老不死。

 確かに自分達は永遠の時間を過ごす事の出来る存在だ。

 けれど、過ぎて行く時間の中で皆と過ごせる時間は今しかない。

 多分、姫様も……それにおそらくてゐも多少は感じているのだろう。

 私は観客席の傍に置いてあった日本酒を徳利に入れる。

 毎年やっている仕事。

 けれども少しずつ変わって行き、全く同じ瞬間は来ない。

 そんな皆と無事に過ごせた去年一年に感謝しつつ、今年最初の仕事の酒を飲みながら11月の月を見る。

「あなたも本当はかわっていってるのかしらね」

 朧げで綺麗な月。

 その月に問いかけながら飲むお酒は美味しくて、少しだけ切ない味だった。

    ---END---
永遠亭って結構大所帯で暮らしていて、それでもどうにかなっているのは何でだろうとか、餅は一体どこから手に入れているんだろうとか思ったのがきっかけ。

それにしても農家の人って大変なんだなぁ……。
策謀琥珀
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コメント



0.800簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
なんかこう……日常の中で、大勢の人達と一緒に何かの作業をする楽しみ。
段々と出来上がっていくものを見た時の喜び。
そしてそれらは生活の為に欠かせない、遊びではない仕事。
そういったもが強く共感できる素晴らしい作品だと思います。ご馳走様でした。

何でも自作の師匠に職人魂を垣間見た気がする。GJ!
11.-30名前が無い程度の能力削除
これはHIDOI
呼び名が明らかにおかしいのは置いておくとしても、
様つけるのかつけないのか、どちらかに統一して欲しいものです
14.70名前が無い程度の能力削除
収穫された稲の段階から丁寧に解説されてるし、それを永遠亭がこなしていく様がイイ感じで書かれているし、とても良いお餅つきでした。

でも誤字とかが…ちょっと多いです…

・妹紅様の事ではなく、レミリア様とフランドール様(三人ともウドンゲが様付けする理由がない)
・居ますからっつ
・終身時間
・ある調べておく
・変わってくれる人
・てゐが儲けた文の
・輝夜さんとかは(ウドンゲでもてゐでも様付けしない理由がない)
16.無評価名前が無い程度の能力削除
ゲームもやろうぜ!
17.-20名前が無い程度の能力削除
毎回思うのですが、本当に原作プレイしておりますか?
24.-30名前が無い程度の能力削除
いろいろ、設定的にもおかしいものがこう毎回の作品で目立つところを見ると、原作どころか設定などを把握してるとはとても思えません。

指摘するのなら
鈴仙は永琳の事を「永琳様」なんて一度も呼んだ事ありません。
そして、文中で優曇華、優曇華と書いてありますが、漢字でウドンゲと呼ばれたためしは全くありませんし、元々本名はレイセンです。

とりあえず、一度永夜抄のキャラ設定.txtやら、いろいろなサイトでキャラの関係などを一度調べなおすことをオススメします