Coolier - 新生・東方創想話

四十七作目の刺客

2006/11/02 03:13:53
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あらすじ

 さよなら、いもうと。









 ちらほらと粉雪の舞う、師走も暮れの頃であった。


 騒がしい幻想郷の季節も一巡りし、ようやく一年が終わろうかと言う時分。
 例によって宴会好きの普通の魔法使いが、忘年会をしようと言い出した。
 理由をつけては酒を飲むのが好きな連中である。忘年会は滞りなく行われた。
 場所はこれもまた、いつもと変わらずに幻想郷のはずれにある博麗神社が選ばれた。


「もっと広い場所があるのに、どうしてそっちでやらないのよ」


 などと唇を尖らせる者も居たが、いつものことゆえ、誰も気には留めなかった。
 どうせ盃にたっぷりと酒を注いでやれば、ころっと機嫌よく酔って騒ぐのだから。
 細やかなことは水でなく酒に流す、からりとした気質が皆を惹きつける所以であった。


 さても忘年会である。

 
 華やかさの中に妖しさ、不敵さを秘めた面々も、このときばかりは朗らかに騒ぐ。
 もっとも、その最たる代表である八雲の何某は式も含め欠席していた。時節は冬。
 冬篭りをせねばならず、出るに出られぬ主を置くのは忍びない、とのことである。
 白玉楼の幽嬢がたいそう残念がったが、こればかりは仕方のないことであった。
 
 図書館の賢人も交えた紅魔館の一同、冥界は白玉楼の主従、永遠亭の一家全員。
 そのほかの人妖も参加した忘年会が大いに盛り上がった、宴も半ばの頃である。
 酔いが回ってくると口が軽くなるのは老若男女、人妖貴賎を問わずのこと。
 程よく皆に酔いが回った酒宴での歓談の最中に、誰かがぽろりとその言葉を口にした。


「おっぱい」

 ジョルジュ長岡である。


 実年齢はさておき、心は皆、乙女である。胸の話となると捨ては置けない。
 酒精の助けもあって気の大きくなっていた乙女たちは、こぞって乳話にふけった。

 やれ自分がパッドかどうかは門番がよく知っているとメイド長が言えば、皆の視線は門番に向かう。
 その耳が酔いよりも赤く染まれば居並ぶ乙女は黄色い歓声をあげて二人を囃し立てた。

 やれそろそろブラジャーが必要になるかもと氷精が漏らせば、皆は一斉に凍り、その最強を痛感した。
 乙女たちの氷点下の視線にさらされるブン屋は黒幕にどこかへ連れて行かれ、一晩戻らなかった。

 やれブラジャーよりさらしがいいと巫女が主張すると、死神は大いに賛同して意外な友好を結んだ。
 死神の袖を可愛らしく引き、さらしの巻き方を尋ねる閻魔の姿は乙女たちの胸を甘く甘くときめかせた。

 やれ大きくなる見込みのある人はいいわねと月の姫と蓬莱人が零すと、歴史家と薬師が二人を優しく慰めた。
 豊かなふくらみに顔をうずめて甘える二人の姿を皆が羨んだのは、言うまでもない話である。

 兎にも角にもおっぱいであった。その乳度たるや、宴が年忘れではなく乳塗れになるほど。
 あまりの乳臭さにジョルジュの腕振りは音の壁を超え、体内に眠る小宇宙の働きにより岩を砕き空を裂いた。
 そんな中、白玉楼の幽嬢から紅魔館の幼主へと何気ない一言と動作が放たれた。



「私も、これくらいの大きさになってみたいわぁ♪」


      むに



 瞬間、西行寺のお嬢様は暢気な笑顔のまま空高々と舞っていた。
 粉雪が水色の衣に包まれる肢体を彩り、誰もがつかの間、その姿に見惚れた。


「あら?」
「ちっちゃいからって、バカにしてっ!」


 涙目になった幼主が叫ぶと同時、華胥の亡霊はきりもみ回転をしながら地面にめり込んだ。
 幸い亡霊嬢はよく食べよく眠りよく遊ぶ健康的な死人であり、象が踏んでも壊れぬほどに頑丈に出来ていたので大事には至らなかった。
 地面に垂直に刺さるという状況にも関わらず、手足をじたばたと動かし、「暗いわぁ」と嘯いたほどである。
 その場に居た全員が、彼女の受けた反撃は宴でのじゃれ合いの範疇を確実に超えているものだと理解した。

 紅魔館の幼主がとっさに放ったのは、次の萃夢にて披露する筈の、“天地大河の構え”である。
 “天地大河の構え”は「れみ」「りあ」「うー」の三つを同時に、一挙動で叩き込む返しの技。
 言わば“三種の返し球(トリプルカウンター)”とも言うべき秘技であり、いまだかつて破った者の居ない魔技でもある。
 

 不幸な事故であった、と言えよう。


 亡霊嬢の巧みな指遣いにさらされた折、紅魔館の幼主の精神状態は平静ではなかった。
 乙女たちがおっぱいで盛り上がる中、彼女だけはいつもの饒舌に比べて歯切れが悪かった。

 「永遠に紅い幼き月」の異名を持つ彼女は、その名の通り無垢な乙女心を有する少女中の少女である。
 思わず実の妹でさえ甘くときめくほどの純真な性根であったが、近頃はそれに一層の磨きがかかっていた。
 従者のメイド長と門番の濃厚な恋は館内外に轟く勢いであったから、当然、彼女の耳にもその噂は届く。
 のみならず、ごくたまに励んでいる二人のあられもない声も耳に届いた。それは熱く潤んだ声である。
 彼女の未熟な性は激しい衝撃を受け、初々しい恥じらいとほのかな興味の花をほころばせ始める。
 今の彼女は大人の階段を上り始めた無垢な乙女そのもの。乳塗れの話は酒に酔っていても少々酷な話題であった。

 そんな少女の胸に訪れる青天の霹靂。繊細かつ大胆な、熟練のバストタッチ。
 恥じらいと驚きは少しばかり追い詰められていた乙女回路を爆発させ、反射行動を行わせた。
 結果、訓練中の技を発動させてしまったとして、誰がそのことを攻められようか。
 乙女が乙女であるがゆえに起こった悲劇。不幸な事故と言わざるを得ない。


「ゆ、幽々子さまご無事ですか!?」
「あ、あんまりぃ~」


 真っ先に正気を取り戻し、怒るよりも何よりも先に主人の身を案じ、駆け寄る剣士。
 楚々とした挙措で着物の裾を押さえ大地に突き刺さる主人を、大慌てでご無礼とばかりに引っこ抜く。
 その間に、顔を赤くしながらうーうーと周りを威嚇する幼主を紅魔館勢が押さえにかかる。
 胸中より「殿中でござる!」との叫びがこみ上げてきたが、よくよく考えれば殿中ではないので、控えた。


「お嬢様!」

 「れみ」

「大人しく!」

 「りあ」

「してください!」

  
 「うー!」


 ほとばしる怒声と幼女臭と共に、門番、メイド長、図書館司書が空に舞った。
 錯乱する友人を鎮める為、精霊魔法の詠唱に入っていた図書館の賢人は確かに見た。
 「れみ」で時間を止めにかかるメイド長を弾き、返しの「りあ」で挟撃に入る司書と門番を食い止める。
 そしてとどめの「うー!」が復帰したメイド長すら交えて、三人を天高く舞い上がらせる瞬間を。


「なんてSDスピリット指数なの……!」

 Gキラーも真っ青である。


「そーなのかー!!」

 そして訳もわからず反射的にルーミアが吼えた。


「「「ぐはっ!!」」」


 示し合わせたかのように打ち上げられた三人が地面へと激突、凄絶な音を立てる。
 賑やかな宴会場は一瞬にして阿鼻叫喚の戦場と化し、その中心部に耳まで赤い悪魔が君臨した。


「いたた、咲夜さん、大丈夫ですか……?」
「なんとか。あなたは?」
「私も平気です。うう、でも羽があるのに受身も取れないなんて…」


 頭を振り、落下の衝撃から立ち直る紅魔館勢はすっかり酔いが醒めていた。
 酔い醒ましには少々キツすぎる攻撃を受けたこともあるが、それ以上に白玉楼の件が彼女たちの頭を冷やしていた。
 酒の席でのこの仕打ちである。亡霊嬢がいくら大らかな性格とは言え、激怒してもおかしくない。
 主の不始末を被るのが従者の務め。彼女たちは使命感に奮い立ち、主人を食い止める為、決死の覚悟を胸に秘めた。


「あの、んと、大丈夫? お姉様がうーしちゃってごめんね?」
「ううん、平気。ごちそうさまでした♪」
「?」
「もう少し大人になったらわかるかしらねぇ♪」


 「うー!!」


 話にならないほど大らかだったので、亡霊嬢の為に戦うのは止めておいた。
 亡霊嬢が大らかでも流石に従者は激怒しているだろう。元来生真面目な少女である。
 今すぐに二刀を抜き放ち、暴れる幼主に斬り掛かっても不思議ではない。
 二人が激突すれば無傷では済まない。最悪の事態を避ける為、三人は萎えた闘志を燃やす。


「もう、幽々子さま。こうなったのは幽々子さまのせいですよ」
「ううん、ごめんなさあい」
「心が篭ってません。大体ですね」
「うん?」
「……おっぱいなら、私のがあるじゃないですか…」
「あらあら、まぁ」


 庭師はガンガンに酔って有害な台詞を口にしていた。
 どうやらかなり回っているらしく、いつもは言わない胸の裡をこれでもかと言わんばかりに吐露する。


「私のおっぱいだけじゃ、不満ですか?」
「……妖夢」
「私の前で、ほかの女の子のおっぱいさわっちゃイヤです……」
「……妖夢」
「私のおっぱいだけ見ててください、幽々子…」

「わぁ、ぱ、パチェ、見て」
「す、すごいわね。今日は情熱的だわ…」


 その光景を手に汗握り見つめる賢人と妹君。
 詠唱途中の精霊魔法もそっちのけである。
 最後には泣き出した庭師を、亡霊嬢が優しく抱き止めることで事態は集約した。
 無論、その途中に濃厚な口づけがあったことは言うまでもない。


「……咲夜さん」
「……なに?」
「……私たちが戦う意味ってあるんでしょうか」
「……ないわね」
「ふ、二人ともしっかりしてー!?」


 目の前のメロドラマに、メイド長と司書の闘志は粉々に打ち砕かれた。
 元々耐久力はさほどでもない二人が崩れ落ちる頃、宴はさらに盛り上がっていた。
 被害者当人が暢気に構えていたこともあるが、参加しているのは幻想郷の弾幕少女。
 この程度のアクシデントで取り乱すことなどなく、煽る声すらあがる始末である。。
 酔っ払った普通の魔法使いは滅多に見られない技に突っ込み、攻略しようとして宙を待った。
 ただ酒にへべれけになった巫女は幸せそうな顔で眠り、騒動を止めるどころではない。
 面白がって突っ込む夜雀や蛍なども空を飛び、永遠亭の面々はそれを肴に優雅に飲む。
 騒ぎを真っ先に止めそうな閻魔は、死神の袖を引いた時点で家に連れ帰られていた。


 この後、付き合いの長い門番が何とか幼主を宥め、騒動は事なきを得た。
 被害は甚大であったが誰も彼もが騒動を歓迎する節すらあったので、遺恨は残らなかった。
 騒動の真っ只中でもぐうぐうと寝ていた巫女は、起き出して事情を説明されるとひとつ頷いて言った。


「まあ、酒飲んで忘れましょ。忘年会なんだし」


 まことに巫女らしい一言と共に、宴はつつがなく朝まで続いたと言う。
 今度は大した騒動もなく、騒動を忘れるほどに皆が飲んだと、歴史家の日誌には記されていた。


 ちらほらと粉雪の舞う、師走も暮れの頃であった。
おジャマしまーす
じょにーず
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コメント



0.8550簡易評価
8.90秘密の名無し削除
序盤……(野郎ニヤニヤ中)
中盤……ブッ(野郎鼻血噴出)
終盤……ザラザラザラザラ(野郎口からサッカリン吐き出し中)
10.80名前が無い程度の能力削除
ついに来ましたね!
11.50翔菜削除
邪魔するんなら帰ってー  というネタは全国で通じるのだろうか。それとも大阪近辺だけで通じるのだろうか。
どうでもいいですか、そうですか。ともあれこんにちは。

作品に関しては……ああもう、おっぱいおっぱい(・∀・)
12.80削除
初めて見たぜ、乙女れみりゃ…で、ジョルジュ長岡誰w
13.70名前が無い程度の能力削除
ちょwwwwジョルジュwwww
宴会の席にジョルジュがいるのに全然違和感がないのが不思議w

そしてえーきさまかわいいよ!!!11!
15.60CODEX削除
さて射命丸嬢……具体的にどのような行為に及んだのかそこんとこ詳しく話してもr(マイナスK
16.80削除
SDスピリット指数のあまりの懐かしさに噴出しました。
( ・ω・)・;;'...
22.60名前が無い程度の能力削除
れみりゃ様のSDスピリット指数は1000以上か
やりおる
23.無評価名前が無い程度の能力削除
れみ!りあ!うー!
天地魔闘の構え噴いた
24.80名前が無い程度の能力削除
点数つけわすれたぜ
れみ!りあ!!うー!!!
26.80名前が無い程度の能力削除
天地大河の構えであれ?と思いましたがまさかスピリット指数まで来るとは。しかも1000以上てw
てかSDはスカーレットデビルの略ですか?w
29.80跳ね狐削除
これぞ正しく宴会ですね。
こう、言葉に出来ない混沌具合がもう、ジャストですね。

とりあえず、私も一つ。
れみ! りあ!! うー!!!
31.100名前が無い程度の能力削除
じょにーずさんが進出してきたw
相変わらず、俺を虜にしやがってwwwwwww
36.60alal削除
こいつは、なんて桃色な幻想郷なんだ。
一堂に会されると、もはや手が付けられぬ。
45.70名前が無い程度の名前削除
なんだろう……この宴会をよそに、家で一人膝を抱えている人形遣いが見えたような……あと某三姉妹……
46.100名前が無い程度の能力削除
甘い、激甘ですねー。
50.100とおりすがる削除
甘甘ですねえ、最高ですよもう!!
52.80名前が無い程度の能力削除
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
  ⊂彡  
54.80削除
四十七人の力士…じゃなくて刺客。
とんだ忠義の士ですねこやつら。
57.90TNK.DS削除
なんて忘年会だ!甘すぎて悶絶してしまいましたよ。
頬が緩くなったまま戻らないです。
特にチルノ!いったい文に何をされt(風神少女+フロストコラムス
60.90名前が無い程度の能力削除
プチになかなか現れないと思ったらこちらにいらっしゃいましたか!
あいかわらず切れ味抜群ですねw
62.80削除
従者たちのSDスピリット指数も、なかなかのものですね!
63.90名前が無い程度の能力削除
じょにーず屋!!
67.100あざみや削除
まさかこっちにじょにーずさんが来ると思ってなかった……
相変わらず可愛いですね!これぞ萌え。
71.100名前が無い程度の能力削除
うーーーーーー!!!!!111
74.80deso削除
淡々とした文章に炸裂するじょにーず節がたまりません!
76.90名前が無い程度の能力削除
じょにーず氏キタ――!!
ふくらみかけ氷精ウギギギギギギ!!!!

れみ!りあ!うー!
81.90名前が無い程度の能力削除
おっぱいだ
82.100名前が無い程度の能力削除
なぜジョルジュが参加してんだよw
86.100ぼこちょ削除
じょにーずさんと聞いておっぱいおっぱいしにきました( ゜∀゜)o彡゜
随所のネタでニヤニヤが止まりません(笑
そしてジョルジュ長岡何してんの!!
88.100名前が無い程度の能力削除
GJ
89.100削除
ぶんぶんはチルノのおっぱいを育てた罪で一晩テーブルターニングの刑です。
91.100碧黎削除
甘さぶっちぎりですねww
それでいて、いつもの小気味良いテンポは健在と。素晴らしいw

こんな忘年会に参加したいものですねw
93.100名前が無い程度の能力削除
一ヶ月ぶりの作品……本当にご馳走様です。
97.100IKA削除
こいつのスピリット指数は1000だ。
そしてラブラブな人達多数にかんぱい。
99.100Jのひと削除
さすがはじょにーずさんだ、すばらしいおっぱいだったよ、、、
平均サイズな方々のお話も是非おねg(ry
103.80ぐい井戸・御簾田削除
ああもう妖夢かわいいよ妖夢愛しいよ妖夢
110.90名前が無い程度の能力削除
来ましたおっぱい! 来ました天地大河の構え!
119.100名前が無い程度の能力削除
おっぱい! おっぱい!
120.100思想の狼削除
意外な事に作中に出てきた「おっぱい」がたったの6回という事に驚きましたw
131.90SSを読む程度の能力削除
おっぱいの話をする女の子たちって可愛いな…
133.100NEOVARS削除
すごいな、れみりあうーw
139.100Q-turn削除
あぁ、これだ……
162.100コマ削除
相変わらず、じょにーずさんはSAIKOUだぜ
166.100紙魚ネコ削除
何度見てもいいものだなあ
とかいいながら点数自体は初入れ
170.90真十郎削除
東方乳宴会!
なんてクオリティ!
スキマ一家も出て欲しかったので90点で!
173.100名前が無い程度の能力削除
音速遅い上に誰も突っ込みが無かったのでとりあえず
ジョルジュの聖闘士ネタ吹いたww
180.100Roki削除
これで一万点越え?
185.100時空や空間を翔る程度の能力削除
おっぱい星人がいっぱい・・・
↓意見に同意しますwwwww
190.100名前が無い程度の能力削除
「れみ」「りあ」「うー!」

吹いたwww
226.90名前が無い程度の能力削除
なんという安定感