Coolier - 新生・東方創想話

猫の手貸します

2006/10/27 04:50:39
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『猫の手貸します。御用の方は博麗神社横にある小屋まで来てください』
こんな事が書かれたチラシがあちらこちらに配られた。
そのチラシを配った主はというと・・・。
「猫の手貸しますよ~」
橙だった。
彼女は普段お世話になっている藍や紫に何か恩返しがしたいと思ったのだ。
しかし彼女は一銭もお金を持っていない。
そこで手伝いをしてお金を貰おうと考えたのだ。
「猫の手、貸していただけるかしら?」
「いらっしゃいませ~」
開店して初めてのお客は咲夜だった。
「紅魔館が忙しいのは貴女もしってるでしょ?報酬は弾むから手伝って頂戴」
「あいあいさ~!」
橙は元気良く返事をした。

「この廊下の掃除をお願いするわね。モップをかけるだけでいいから」
「・・・向こう側が見えないんですけど・・・」
「安心して、二百由旬よりは短いはずよ」
それだけ言うと咲夜は消え去った。
時を止めて別の仕事へ向かったのだろう。
「うにゃー!飛翔韋駄天!」
橙は自棄気味にスペカを発動するとモップと共に高速で飛び始めた。
とにかくやらなければ終らないのだからやるしかないのだった。

「はひ~・・・終った~・・・」
やっと橙が長すぎる廊下のモップかけを終えて咲夜に報告しようと思った時だった。
「邪魔するぜ!マスタースパーク!!」
「え・・・?」
橙の視界は真っ白に染まり、そして暗闇へと転じた。

「う・・・ん・・・」
橙が目を覚ますと打ち抜かれた壁と先ほど掃除した廊下の汚れているのが写った。
「・・・酷い!折角綺麗に掃除したのに!魔理沙許さないもん!」
橙は涙を溜めながら魔理沙を探し始めた。
少しすると魔理沙の声が聞こえた。
『それじゃあ今日も借りていくぜ!』
『もってかないで~・・・』
「む・・・もう直ぐ出てくるみたい」
橙は近くの柱の影に隠れた。
そこから様子を窺っていると図書館のドアをぶち開けて魔理沙が飛び出てくる。
「今日も大漁だぜ~♪」
「うにゃー!さっきのお返しだよ!」
大量の本を風呂敷に抱えてご機嫌の魔理沙に橙が飛び掛った。
「な!しまっ!」
不意打ちされた魔理沙はバランスを崩して落下する。
グシャッ!
大量に抱えていた本が魔理沙の上になった。
「う・・・大丈夫かな・・・?」
流石に洒落にならない音がしたので橙が恐る恐る覗き込むと魔理沙は目を回して気絶しているだけで怪我はなさそうだった。
「凄いわ橙!魔理沙を捕らえるなんてお手柄ね!」
咲夜が珍しく興奮した様子で橙の手を取る。
「でも・・・廊下綺麗に出来なかった・・・」
「全部魔理沙のせいだから貴女のせいじゃないわ。報酬は多目にしておくから」
咲夜は橙に報酬の入った茶封筒を手渡した。
「あの~・・・魔理沙の手当てしなくちゃ・・・」
「それはこっちでしておくから大丈夫よ」
「それじゃお願いします」
橙はペコリと頭を下げると紅魔館を後にした。
「う~・・・まさかあんな所で橙が出てくるなんて思わなかったぜ・・・しかし・・・重い・・・」
本に潰されたまま魔理沙が呻く。
「魔理沙・・・今までの悪行を含めてどうなるか分かるかしら?」
「私はただ本を借りて行っただけだぜ?」
悪びれずに答える魔理沙に咲夜は少し頬を引き攣らせながらそれでも笑みを浮かべ続ける。
「でもその度に門は壊されて美鈴は行方不明になって廊下が汚されて調度品が粉々になっているの」
「へ~中国の事本名で呼んでる奴始めてみたぜ」
この一言は咲夜にとって禁句であった。
咲夜は美鈴を愛している。
二人は恋人同士なのだから。
「そうね・・・妹様が新しい玩具が欲しいって言ってたし丁度いい玩具が手に入ったわね」
「おいおい、私は玩具じゃないぜ?」
急激に変化した咲夜の声色に魔理沙も流石に冷や汗を流す。
「あら?ここにいるのは人間じゃないわ。ただの空を飛ぶ玩具よ」
「さ、咲夜!?」
表情は笑っているが全く目が笑っていない咲夜を見て魔理沙が悲鳴に近い声を上げる。
「大丈夫よ。弾幕ごっこなら得意でしょ?」
「誰か助けてくれ~!!!!」
黒い笑みを浮かべたままの咲夜に引き摺られて魔理沙は何処かへと連れ去られた。
その後紅魔館から魔理沙に似た悲鳴が聞こえるようになったと近隣の妖精達が噂するようになったが暫くしてその声が聞こえなくなったので噂も消え去った。

「猫の手貸してくれないかしら?」
「は~い」
次の客は永琳だった。

「助かったわ~。ウドンゲが風邪ひいちゃって実験が出来なかったのよ~」
「ん~!ん~!」
永琳が注射器に怪しげな液体を入れながら喋る。
「そんなに恐がらなくても大丈夫よ。この薬は理論上毒じゃないから」
「ん~~~~~!!!!!」
永琳は笑いながら注射器の中に残っている空気を外に出した。
こうしないと空気が血管中に入ってしまい最悪命を落としかねない。
「ほらほら暴れないの」
「ん~~~~~~!!!!!」
永琳は笑いながら注射器をてゐの腕に刺した。
「あの~・・・私ってそのてゐちゃんを捕まえる為に呼ばれたんですか?」
「そうよ~。だってこの薬は兎用なんですもの」
「ん~~~~~~~!!!!!!」
どうやら注射がかなり痛かったらしくてゐが口を縛られたまま悲鳴を上げる。
「あら?気絶しちゃったわ。これじゃあ薬の感想が聞けないわ。起きるまで待つしかないわね。あ、橙ちゃん。この薬・・・」
「報酬いただきましたしこれで失礼させていただきます!」
橙は慌てて逃げ出した。
薬の実験台なんてごめんである。
「あら、もう行っちゃったのね。まあいいわ。てゐにがんばってもらうだけだもの」
幸か不幸かこの時風邪をひいていたウドンゲは実験を逃れる事が出来たのであった。
これ以後てゐが先端の尖った物を見るだけで恐慌状態に陥るようになったのは余談である。

「繁盛しているみたいね」
「あ、霊夢」
あれから何人かの依頼を受けて帰ってきた橙に霊夢が声をかける。
「私も猫の手貸してくれるかしら?」
「うん!」
必要な金額は溜まっていたがこの仕事が気に入った橙に断る理由はない。
さらに橙は霊夢の事が好きであった。
「ほら、こっちに来て頂戴」
霊夢は縁側に座ってぽんぽんと膝の上を軽く叩く。
「えっと?」
「今日は残り一日私の妹になってくれないかしら。それが貴女の仕事」
「うん!」
橙は直ぐに霊夢の膝の上に乗った。
「えへへ~、霊夢お姉ちゃん」
「なあに?橙」
楽しそうに笑う二人は本当の姉妹のように見えて微笑ましかった。

「す~・・・」
「すまないな、態々送ってもらってしまって」
「いいのよこれくらい。晩御飯もご馳走になった事だし」
今日一日働き続けて疲れた橙はあの後直ぐに眠ってしまったのだ。
霊夢はそれを起こさずただずっと膝枕をして幸せそうに微笑んでいた。
そして日が暮れたのでマヨヒガまで橙を背負って連れて来たのだ。
藍はせめてものお礼にと霊夢を夕食に招いたのだ。
「それじゃ橙によろしく言っておいてね」
「ああ、近いうちにまた遊びに行くだろうさ」
藍が手を振って霊夢を送り出した。
「しかし今日は何をして遊んできたのだろうな」
藍は部屋で寝ているであろう橙を思いながら微笑んだ。

「紫様、藍様・・・その・・・これ・・・」
翌日、橙は紫と藍にプレゼントを手渡した。
「橙、これは何かしら?」
「その・・・いつもお世話になってるから・・・お礼がしたくて・・・」
「・・・うう~~!!!!なんて主思いなんだお前は~~!!!!」
藍の涙腺が崩壊して滝の様に涙が流れている。
「藍、落ち着きなさい。橙、ありがとう。早速開けてもいいかしら?」
「あ、はい!」
紫がプレゼントのリボンを解いて中を開けるとペンダントが入っていた。
「綺麗ね。橙、高かったでしょ?」
「うん・・・だからその・・・昨日色んな人のお手伝いして・・・お金もらったの・・・」
橙は照れながら言った。
「私はうれしいぞ~!!!!」
「藍、いい加減に橙のプレゼントを見てあげなさい」
「ああ・・・すまない橙」
藍はまだ涙を流しながら橙のプレゼントを開けた。
「こ・・・これは!」
そこには2匹の狐が走る姿の描かれた漆塗りの手鏡だった。
「前に私が藍様の手鏡割っちゃったから・・・その・・・狐だし藍様気に入るかなって・・・」
「うおお~~~~~!!!!!家宝にするぞ橙~~~~~!!!!!!」
「・・・やれやれ」
先ほどよりさらに涙を流す藍に紫は苦笑した。
マヨヒガは今日も平和だった。

end
「ね~咲夜~、魔理沙動かなくなっちゃった~」
「あら、意外と根性ないのね魔理沙。妹様、私が魔理沙を預かりますわ」
「お願いね~」
「・・・・・・・・・・・一週間不眠不休弾幕ごっこは無理だぜ・・・・がくっ」
「・・・意外と余裕あるじゃない。もう1週間いく?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「本当に限界みたいね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ニヤリッ)」
「パチュリー様にきつい薬でもうって貰おうかしら」
「霧雨魔理沙もう1週間いかせていただきます!(シクシク)」


誤字、脱字の指摘。感想お待ちしております。
儚夢龍也
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コメント



0.1860簡易評価
16.90名前が無い程度の能力削除
最終鬼畜冥土咲夜様万歳
27.80Admiral削除
咲夜様∩( ^ω^)∩ ばんじゃーい
最近良い魔理沙弄りの作品が多くて困る。(^^)

>霊夢の事が好きであった
霊夢×橙とは…
なんという新たな境地・・・
タイトルを見ただけでワクワクしてしまった
この作者は間違いなく伸びる
29.60名前が無い程度の能力削除
話の筋とか特に咲夜さんの依頼の内容がプチの作品集11にある葉月 天獅さんの三部作と色々かぶってるような。。。
いやでも「霊夢お姉ちゃん」には死ぬほど萌えましたけどね!
34.80TNK.DS削除
その猫の手を本気で貸してもらいたくなるくらい、橙に萌えました。
霊夢×橙も斬新な発想で面白かったです。