星明りが眩く見えるほど真に暗い新月でした。
私は起床したお嬢様のお着替えを手伝う為に、寝室に向かいましたわ。
えぇ、それは私の仕事ですので。
毎日同じ時刻に、真新しい洋服を持って向かいましたわ。
もちろん、お部屋に入る時には三度ノックして、お返事を待ってから扉を開けましたわ。
「咲夜、詳しく話してとは言ったけど、今必要な情報はレミィの事でしょ?」
あぁ、すみませんパチュリー様。
「慌てて私の元に来たのは誰よ、まったく」
それでは簡潔に言いますわ。
お嬢様のお着替えを終えて、私が退室しようとしたら、突然お嬢様の姿が朧に霞んで、瞬きする内に消えてしまったのです。
「ん……、目の前で消える……、あ、もしかしたら……」
パチュリー様、何かお知りで?
「えぇ、昔似たような事があってね」
そうですか、私はてっきりあの隙間妖怪が何かしたのかと思っていましたわ。
「ふふ、確かに勘違いしそうだけど、私の所に相談に来たのは正解だったわね」
それで、お嬢様は?
「あぁ、レミィは呼ばれたのよ」
呼ばれた? 誰に?
「さぁ、前回は……、まぁ、口止めされてたけど咲夜には教えてあげるわ」
「以前も、私の目の前でレミィが消えた事があったの」
その時はどうなされたんですか?
「私は慌てて書物を探したわ。まぁ、探してる最中にレミィは帰ってきたんだけど」
はぁ……
「帰ってきたレミィはボロボロだったのよ。服の裾は焼け焦げてたり、凍り付いてたりして」
あら、昔からおてんばでしたのね。
「えぇ、人間の、それも少年なんかに呼び出されて、あまつさえそれが召喚事故だって言われてはねぇ」
お嬢様ったら、前科持ちに……
「あぁ、それは大丈夫よ。その少年ったらタロットや笛、マントを装備してたらしいわ」
それでも、お嬢様が手を焼く程でしょうか?
「あぁ、次々と仲間を召喚して、最終的には12人も増援が来て、13対1だったらしく本気になって暴れたみたいね」
あら珍しい、お嬢様が本気で暴れるなんて。
それでその後はどうなったのでしょうか?
「あぁ、事故で呼ばれたからか、突然こっちに帰されちゃったみたいね」
ふふふ、帰ってきたお嬢様は随分ご機嫌ナナメでしたでしょうね
「えぇ、それはもう……、あら?」
あら?
§ § §
ドスン、という音と共にふぎゃ、と猫の尻尾を踏んだような悲鳴が本棚の方から聞えてきた。
「……それでは私はお嬢様の元へ」
「そうね、私も行くわ」
屋敷のメイド長と図書館の主は揃って声の聞えた本棚の方へと向かう。
「いったぁ……」
涙目になって腰を擦るお嬢様に、二人は普段どおり声を掛ける。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「レミィ、お帰り」
「ん、ただいま……」
咲夜が恭しくレミリアの手を取り立ち上がらせる。
服の乱れを咲夜に整えてもらっているレミリアに、パチュリーは簡潔に問う。
「今度は?」
「あぁ、今度は合体事故だってさ」
プリプリと怒りながら、レミリアは二人と共にテーブルへと向かう。
「なに、また人間?」
パチュリーとレミリアは椅子に座ると、いつの間に準備したのか、咲夜が紅茶とケーキを持って現れる。
「どうぞ」
血の様に真っ赤な紅茶と、真っ赤な苺の乗ったケーキが二人の目の前に置かれる。
「無表情なメイドを従えた老人だったわ」
レミリアは握ったフォークでケーキを突き刺すと、大口を開けて頬張る。
「もぐもぐ、なんで誇り高い貴族の私が人間なんかに……、むぅぐ」
「お嬢様、口の周りが汚れていますわ」
汚れた口の周りを咲夜に拭われているその姿を見て、パチュリーはぼそりと呟く。
「……ふぅ、今度は鼻の長い老執事にでも呼ばれそうね」
私は起床したお嬢様のお着替えを手伝う為に、寝室に向かいましたわ。
えぇ、それは私の仕事ですので。
毎日同じ時刻に、真新しい洋服を持って向かいましたわ。
もちろん、お部屋に入る時には三度ノックして、お返事を待ってから扉を開けましたわ。
「咲夜、詳しく話してとは言ったけど、今必要な情報はレミィの事でしょ?」
あぁ、すみませんパチュリー様。
「慌てて私の元に来たのは誰よ、まったく」
それでは簡潔に言いますわ。
お嬢様のお着替えを終えて、私が退室しようとしたら、突然お嬢様の姿が朧に霞んで、瞬きする内に消えてしまったのです。
「ん……、目の前で消える……、あ、もしかしたら……」
パチュリー様、何かお知りで?
「えぇ、昔似たような事があってね」
そうですか、私はてっきりあの隙間妖怪が何かしたのかと思っていましたわ。
「ふふ、確かに勘違いしそうだけど、私の所に相談に来たのは正解だったわね」
それで、お嬢様は?
「あぁ、レミィは呼ばれたのよ」
呼ばれた? 誰に?
「さぁ、前回は……、まぁ、口止めされてたけど咲夜には教えてあげるわ」
「以前も、私の目の前でレミィが消えた事があったの」
その時はどうなされたんですか?
「私は慌てて書物を探したわ。まぁ、探してる最中にレミィは帰ってきたんだけど」
はぁ……
「帰ってきたレミィはボロボロだったのよ。服の裾は焼け焦げてたり、凍り付いてたりして」
あら、昔からおてんばでしたのね。
「えぇ、人間の、それも少年なんかに呼び出されて、あまつさえそれが召喚事故だって言われてはねぇ」
お嬢様ったら、前科持ちに……
「あぁ、それは大丈夫よ。その少年ったらタロットや笛、マントを装備してたらしいわ」
それでも、お嬢様が手を焼く程でしょうか?
「あぁ、次々と仲間を召喚して、最終的には12人も増援が来て、13対1だったらしく本気になって暴れたみたいね」
あら珍しい、お嬢様が本気で暴れるなんて。
それでその後はどうなったのでしょうか?
「あぁ、事故で呼ばれたからか、突然こっちに帰されちゃったみたいね」
ふふふ、帰ってきたお嬢様は随分ご機嫌ナナメでしたでしょうね
「えぇ、それはもう……、あら?」
あら?
§ § §
ドスン、という音と共にふぎゃ、と猫の尻尾を踏んだような悲鳴が本棚の方から聞えてきた。
「……それでは私はお嬢様の元へ」
「そうね、私も行くわ」
屋敷のメイド長と図書館の主は揃って声の聞えた本棚の方へと向かう。
「いったぁ……」
涙目になって腰を擦るお嬢様に、二人は普段どおり声を掛ける。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「レミィ、お帰り」
「ん、ただいま……」
咲夜が恭しくレミリアの手を取り立ち上がらせる。
服の乱れを咲夜に整えてもらっているレミリアに、パチュリーは簡潔に問う。
「今度は?」
「あぁ、今度は合体事故だってさ」
プリプリと怒りながら、レミリアは二人と共にテーブルへと向かう。
「なに、また人間?」
パチュリーとレミリアは椅子に座ると、いつの間に準備したのか、咲夜が紅茶とケーキを持って現れる。
「どうぞ」
血の様に真っ赤な紅茶と、真っ赤な苺の乗ったケーキが二人の目の前に置かれる。
「無表情なメイドを従えた老人だったわ」
レミリアは握ったフォークでケーキを突き刺すと、大口を開けて頬張る。
「もぐもぐ、なんで誇り高い貴族の私が人間なんかに……、むぅぐ」
「お嬢様、口の周りが汚れていますわ」
汚れた口の周りを咲夜に拭われているその姿を見て、パチュリーはぼそりと呟く。
「……ふぅ、今度は鼻の長い老執事にでも呼ばれそうね」
…悪魔(というか吸血鬼だけど)も災難ですな、こうやって見ると^^;
作品集19で紫が戦った少年と比べると、ちっとマイナーかもねぇ。