普段と変わらぬ幻想郷。
何一つ事件は起きてない平和で退屈な日。
そんな中、一人の巫女だけは普段通りではなかった。
普段の落ち着いた雰囲気はなく、慌てた様子でアリスの家を訪ねてきた。
「どうしたのよ霊夢っ。そんなに慌てて!」
息を切らした霊夢を見て、驚きの声をあげるアリス。
「はぁ・・・はぁ・・・・ま・・・りさが・・・・」
「もう少し落ち着いてから言いなさいよ」
霊夢は呼吸を整える。
そして顔をあげて―――
「魔理沙がいなくなっちゃったのよ!!」
森中に響くほどの声で霊夢は言った。
「えっ・・・・それってどういう事・・・」
アリスも、驚きを隠せない様子であった。
「実は、ここ三日くらい魔理沙の姿を見ないのよ。いつもなら暇さえあれば神社に来てたくせに全然来ないし。魔理沙の家に行っても居ないみたいだし・・・・・」
それを聞いてアリスにも焦りの色が見える。
「そういえば私も・・・・最近アイツの事見てないわ・・・何かあったのかしら」
「アリスも知らないのね・・・・それじゃあ、何か分かったら連絡頂戴!!」
アリスに背を向けて、飛び立とうとする霊夢。
「うん・・・分かったわ」
アリスの返事を聞く前に、霊夢は既に別の場所へと飛んでいった。
「ふぅ・・・・これで良いのよね。魔理沙・・・・」
霊夢が消えていった空を見つめながら、アリスはポツリと呟いた。
「ケホ、ケホ・・・・魔理沙がいなくなった?」
霊夢が次に向かった場所。
それは紅魔館の図書館であった。
今度はパチュリーに、魔理沙の事を訪ねるために。
「えぇ、そうなのよ。貴女なら何か知らないかと思って・・・」
いつも本を借りに魔理沙はここに来ていた筈。
図書館の管理人であるパチュリーなら何か知っているかもしれない。
「そうね・・・魔理沙なら二日前にここに来たわ。何か熱心に調べてたみたいだったわよ」
それから魔理沙を見てはいない、とパチュリーは言った。
「調べてた内容って分からない?何か手掛かりになるかもしれないから」
霊夢の問いに、黙って首を振るパチュリー。
それを見て肩を落とす霊夢。
そしてアリスの時と同じ事を言い残し、図書館を後にした。
「まったく・・・世話が焼けるわね、人間は」
扉を見つめながら、パチュリーは呟いた。
そして、魔理沙がいなくなってから五日が過ぎた。
その間、霊夢はずっと魔理沙の手掛かりを探していた。
しかし、何一つ見つかることはなかった―――。
幻想郷が夕焼けに染まる。
霊夢は神社の縁側で、ぼんやりと空を見上げていた。
いつもの様に魔理沙が箒に乗って、空から降りてくることを望みながら。
しかし、空には雲や烏くらいしか見えなかった。
「―――ホントに・・・どこ行っちゃったのよ、魔理沙・・・・」
霊夢は一人呟く。
そして空から地上へと視線を落とし、俯いた。
いつも当たり前のように側にいたから気がつかなかった・・・・
魔理沙は私にとってこんなにも大切な存在だったなんて・・・
気がつくと自分の眼に何かが溢れてきていることに気付いた。
「ひっ・・く・・・魔理沙ぁ・・・何処行っちゃったのよぉ・・・」
瞳から涙が零れる。
いくら拭っても、治まることはない。
治まるどころか勢いを増して溢れてくる。
止めようと思っても、思うようにはいかない。
「ぅ・・・ひっ・・・く・・・魔理沙ぁっ・・・・魔理沙ぁ!!」
霊夢の声朱く染まった空に響いた。
しかし、その呼び掛けに答える声は無い――――筈であった―――
「呼んだか?」
「え・・・・」
その声に、俯いていた顔をあげる。
肩より少し長い金髪。
愛用の箒。
いつも通りの魔女服。
その姿は疑いようもなく―――
「魔・・・理沙・・・?」
「おぅ。久しぶりだな、霊夢」
瞳に涙を溜めたまま、魔理沙を見つめる霊夢。
「ホントに・・・・魔理沙なの・・・・?」
「他に何に見えるっていうんだ?私は正真正銘の―――って・・・うわぁっ!」
魔理沙の言葉が終わる前に、霊夢は魔理沙の胸飛び込んでいた。
そして魔理沙の服をぎゅっと握り締める。
「今まで何処行ってたのよ!!急にいなくなったりしてっ・・・私がどれだけ心配したと思ってるのよぉっ・・・!」
魔理沙の胸に顔をうずくめ、涙を拭おうともせず叫ぶ霊夢。
魔理沙は泣きじゃくる霊夢に混乱しているようだった。
こんな霊夢を、今まで見た事がなかったから。
「え・・・えっと・・・取りあえずごめん、心配かけて・・・」
誤りながら、霊夢を軽く抱き締め、霊夢が落ち着くのを待った。
そして数分の間泣き続け、ようやく霊夢は落ち着いたようだった。
まだ瞳には少し涙が残っているが。
魔理沙から離れ、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
「・・・で?結局五日間行方不明だった理由は何だったのよ。」
今更ながら泣き顔を見られないように、顔を背けながら霊夢は尋ねる。
それとは対照的に、まっすぐと霊夢を見ている魔理沙。
「霊夢。今日が何の日か覚えてるか?―――全く覚えてないって顔してるな・・・」
そう言うと、2種類の花を取り出した。
それをきょとんとした眼で見る霊夢。
「今日はな、私とお前が初めて出会った日だよ」
「え・・・・」
魔理沙が取り出した花は、桔梗と勿忘草。
それらの花言葉は、変わらぬ心。真実の友情。
「これ・・・どうしたの・・・?」
どの花もこの辺りでは見ないモノばかりである。
「この五日間はな、コイツらを探しに行ってたんだ。アリスやパチュリーに色々聞いて回ったりしてな。なかなか全部見つからなくて手間取ったが、なんとか間に合ったぜ」
じゃああの二人は全て知ってたのか・・・そんなことを考えていると、魔理沙は花を霊夢へと手渡す。
そして霊夢をじっと見つめ、
「私と出会ってくれて、そして今まで側にいてくれてありがとな。そしてこれからも、私はお前の側にいたい」
霊夢は魔理沙をじっと見つめている。
そんな霊夢の肩を、そっと掴んだ。
ゆっくりと顔を近付けて、囁くように話す。
それとな・・・・桔梗にはもう1つ花言葉があるんだぜ?
「まり・・・・」
「黙ってろよ」
驚く霊夢をおさえつけたまま。
――そっと、唇を重ねた。
一瞬だけ唇が触れ合っただけの、優しいキス。
それでも霊夢は、顔を真っ赤にしながら魔理沙を見つめ、動かなくなっていた。
――桔梗のもう1つの花言葉・・・・・それは変わらぬ愛―――
「これからもよろしくな、霊夢」
何一つ事件は起きてない平和で退屈な日。
そんな中、一人の巫女だけは普段通りではなかった。
普段の落ち着いた雰囲気はなく、慌てた様子でアリスの家を訪ねてきた。
「どうしたのよ霊夢っ。そんなに慌てて!」
息を切らした霊夢を見て、驚きの声をあげるアリス。
「はぁ・・・はぁ・・・・ま・・・りさが・・・・」
「もう少し落ち着いてから言いなさいよ」
霊夢は呼吸を整える。
そして顔をあげて―――
「魔理沙がいなくなっちゃったのよ!!」
森中に響くほどの声で霊夢は言った。
「えっ・・・・それってどういう事・・・」
アリスも、驚きを隠せない様子であった。
「実は、ここ三日くらい魔理沙の姿を見ないのよ。いつもなら暇さえあれば神社に来てたくせに全然来ないし。魔理沙の家に行っても居ないみたいだし・・・・・」
それを聞いてアリスにも焦りの色が見える。
「そういえば私も・・・・最近アイツの事見てないわ・・・何かあったのかしら」
「アリスも知らないのね・・・・それじゃあ、何か分かったら連絡頂戴!!」
アリスに背を向けて、飛び立とうとする霊夢。
「うん・・・分かったわ」
アリスの返事を聞く前に、霊夢は既に別の場所へと飛んでいった。
「ふぅ・・・・これで良いのよね。魔理沙・・・・」
霊夢が消えていった空を見つめながら、アリスはポツリと呟いた。
「ケホ、ケホ・・・・魔理沙がいなくなった?」
霊夢が次に向かった場所。
それは紅魔館の図書館であった。
今度はパチュリーに、魔理沙の事を訪ねるために。
「えぇ、そうなのよ。貴女なら何か知らないかと思って・・・」
いつも本を借りに魔理沙はここに来ていた筈。
図書館の管理人であるパチュリーなら何か知っているかもしれない。
「そうね・・・魔理沙なら二日前にここに来たわ。何か熱心に調べてたみたいだったわよ」
それから魔理沙を見てはいない、とパチュリーは言った。
「調べてた内容って分からない?何か手掛かりになるかもしれないから」
霊夢の問いに、黙って首を振るパチュリー。
それを見て肩を落とす霊夢。
そしてアリスの時と同じ事を言い残し、図書館を後にした。
「まったく・・・世話が焼けるわね、人間は」
扉を見つめながら、パチュリーは呟いた。
そして、魔理沙がいなくなってから五日が過ぎた。
その間、霊夢はずっと魔理沙の手掛かりを探していた。
しかし、何一つ見つかることはなかった―――。
幻想郷が夕焼けに染まる。
霊夢は神社の縁側で、ぼんやりと空を見上げていた。
いつもの様に魔理沙が箒に乗って、空から降りてくることを望みながら。
しかし、空には雲や烏くらいしか見えなかった。
「―――ホントに・・・どこ行っちゃったのよ、魔理沙・・・・」
霊夢は一人呟く。
そして空から地上へと視線を落とし、俯いた。
いつも当たり前のように側にいたから気がつかなかった・・・・
魔理沙は私にとってこんなにも大切な存在だったなんて・・・
気がつくと自分の眼に何かが溢れてきていることに気付いた。
「ひっ・・く・・・魔理沙ぁ・・・何処行っちゃったのよぉ・・・」
瞳から涙が零れる。
いくら拭っても、治まることはない。
治まるどころか勢いを増して溢れてくる。
止めようと思っても、思うようにはいかない。
「ぅ・・・ひっ・・・く・・・魔理沙ぁっ・・・・魔理沙ぁ!!」
霊夢の声朱く染まった空に響いた。
しかし、その呼び掛けに答える声は無い――――筈であった―――
「呼んだか?」
「え・・・・」
その声に、俯いていた顔をあげる。
肩より少し長い金髪。
愛用の箒。
いつも通りの魔女服。
その姿は疑いようもなく―――
「魔・・・理沙・・・?」
「おぅ。久しぶりだな、霊夢」
瞳に涙を溜めたまま、魔理沙を見つめる霊夢。
「ホントに・・・・魔理沙なの・・・・?」
「他に何に見えるっていうんだ?私は正真正銘の―――って・・・うわぁっ!」
魔理沙の言葉が終わる前に、霊夢は魔理沙の胸飛び込んでいた。
そして魔理沙の服をぎゅっと握り締める。
「今まで何処行ってたのよ!!急にいなくなったりしてっ・・・私がどれだけ心配したと思ってるのよぉっ・・・!」
魔理沙の胸に顔をうずくめ、涙を拭おうともせず叫ぶ霊夢。
魔理沙は泣きじゃくる霊夢に混乱しているようだった。
こんな霊夢を、今まで見た事がなかったから。
「え・・・えっと・・・取りあえずごめん、心配かけて・・・」
誤りながら、霊夢を軽く抱き締め、霊夢が落ち着くのを待った。
そして数分の間泣き続け、ようやく霊夢は落ち着いたようだった。
まだ瞳には少し涙が残っているが。
魔理沙から離れ、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
「・・・で?結局五日間行方不明だった理由は何だったのよ。」
今更ながら泣き顔を見られないように、顔を背けながら霊夢は尋ねる。
それとは対照的に、まっすぐと霊夢を見ている魔理沙。
「霊夢。今日が何の日か覚えてるか?―――全く覚えてないって顔してるな・・・」
そう言うと、2種類の花を取り出した。
それをきょとんとした眼で見る霊夢。
「今日はな、私とお前が初めて出会った日だよ」
「え・・・・」
魔理沙が取り出した花は、桔梗と勿忘草。
それらの花言葉は、変わらぬ心。真実の友情。
「これ・・・どうしたの・・・?」
どの花もこの辺りでは見ないモノばかりである。
「この五日間はな、コイツらを探しに行ってたんだ。アリスやパチュリーに色々聞いて回ったりしてな。なかなか全部見つからなくて手間取ったが、なんとか間に合ったぜ」
じゃああの二人は全て知ってたのか・・・そんなことを考えていると、魔理沙は花を霊夢へと手渡す。
そして霊夢をじっと見つめ、
「私と出会ってくれて、そして今まで側にいてくれてありがとな。そしてこれからも、私はお前の側にいたい」
霊夢は魔理沙をじっと見つめている。
そんな霊夢の肩を、そっと掴んだ。
ゆっくりと顔を近付けて、囁くように話す。
それとな・・・・桔梗にはもう1つ花言葉があるんだぜ?
「まり・・・・」
「黙ってろよ」
驚く霊夢をおさえつけたまま。
――そっと、唇を重ねた。
一瞬だけ唇が触れ合っただけの、優しいキス。
それでも霊夢は、顔を真っ赤にしながら魔理沙を見つめ、動かなくなっていた。
――桔梗のもう1つの花言葉・・・・・それは変わらぬ愛―――
「これからもよろしくな、霊夢」
ごちそうさまでした