四季映姫・ヤマザナドゥは悩んでいた。
部下の死神が仕事をサボり、霊が取りついた花が咲き乱れた今年の春。
その際、幾人かの人間や妖怪が、花に誘われるように自分のもとを訪れた事があった。
いずれもその生活態度に「問題あり」な者達だったため、映姫は閻魔の名の下に説教を行なった。
しかし、その後各人が己の罪過を悔い改め、更生したという話は聞かない。
説教によりその生活に小さな変化が現れた程度――しかも、必ずしもよい方向に向かうものではない。
「ちょっと前まで『お前の本を死ぬまで借りる』と言っていた彼女が『お前のものはわたしのもの』と開き直りやがりました!」
「無邪気でかわいかったわたしのチルノちゃんが『死とは再生、英語でribirth…辛味噌!』とか言うようになっちゃったよ~」
「洋服ダンスの中から♪『ガンバレ』って言っている♪聞こえて欲しい♪お・じょ・お・さ・ま『ガンバレ!!』」
「うぇwwwwwwwww事件もねーのに新聞書くのマンドクセwwwwwつか異変ウザスwwwwwww動きたくねぇ」
「終わりが無いのが終わり!それが『ミスティア・ローレライ・レクイエム』!それじゃ569876曲目♪」
「わ~ん!妖夢がお外に出してくれない!」
この有様である。
よくない方向に変化したというより、皆映姫の言わんとした所を勘違いしている節がある。
自分の説教はそんなに難しいのだろうか?
というか彼女達は本当に心を入れ替えたのか?
単に自分が言ったことをそのまま都合よく解釈しているだけではないのか?
考えるだけで頭が痛くなってくる。
それに、あの時説教した者達の他にも、幻想郷には「罪人」は数多くいる。
(しかし、冗談抜きで彼女達には説教など効果が無いのかもしれませんね…)
自由奔放な幻想郷の住人達の性根を叩きなおすには、もっと根本的な手段が必要であるように感じた。
常識や道徳といった理念を一から叩き込み、進んで善行を積ませるようにしなければならない。
(なんというか、小学校からやり直せという輩ばかりなのです。あの連中は…)
オバケにゃ学校も試験も無い。
しかし天国と地獄はあるのだ。
ならばできる限り、安泰な死後を送って欲しい。それが映姫の願いである。
そのためには生前に善行を積んでおくことが必要なのだ。
(…それでも嫌いではありません、同じ幻想郷の住人として…皆、笑って極楽へ逝って欲しい…)
閻魔と言う仕事を始めて長い映姫だが、地獄行きの宣告だけはいつまでたっても慣れない。
死者の落胆と絶望はいつも、映姫の胸に後味の悪い感情を残させる。
彼等が生きている間にそれを回避できるなら、閻魔としてこれ以上に嬉しいことは無かった。
(だから!)
尻を叩いてでも、幻想郷の住人達に善行を積ませる。
そのために必要なのは、一時的にしか効果の無い説教ではない。
彼女達の価値観や人生観を根底から修正する教育的指導こそが、求められているのだ。
「しかし…どうしたものでしょうね」
その具体的な方法はと言うと、そう簡単に思いつくものではない。
「いっそ全員どこかの学校にでもブチ込むくらいがいいのでしょうが…」
人間に妖怪に妖精に亡霊に…と、そんな多くの種を受け入れる学校など存在しない。
そもそも幻想郷の学校といえば、人里に一つ二つある程度。
仮に人間以外の生徒を受け入れることを承諾しても、その規模は大変小さい。
「困りましたね」
机に突っ伏し、溜息を吐く。
そのままの姿勢で数秒が過ぎ、それは起こった。
「ぇぇぇぇえええ映姫すぅわまあああぁぁぁぁ!!」
映姫の仕事部屋の扉をブチ破り、何かが飛び込んできた。
それは少女。
背が高く、髪が赤く、胸がでかい。
しかし紅美鈴(オンドゥル語で『オンベイディン』と読みます)ではない。
高瀬○希でも、向○環でもない。
「こ、小町?」
そう、彼女の名は小野塚小町。
映姫直属の部下であり、花が咲き乱れる異変を起こした張本人たるサボリ死神。
小町はドアを突き破り、エイに乗ってやってきた。
「なんでエイ?」
おそらくは三途の川に生息する絶滅種であろうその巨大なエイの上に立ち、小町は映姫に突進してきた。
「どぉおおいてくだすわぁぁぁあい!!」
「ひっ…いやあああぶつかるうう!?」
突然現れた小町のエイ当たり(エイの上での体当たりの略)をまともに喰らい、映姫の身体が壁にめり込む。
小町はというと、こちらはちゃっかりノーダメージで着陸している。
それは彼女の胸に装備された弾力と愛に富んだ2連装型・対衝撃ユニットのおかげである。
激突の瞬間、小町はその弾力によって後方に跳び、安全に地面に降り立った。
対して、前方に飛ばされた映姫は背中から壁に突っ込んだのである。
その光景を偶然見ていた伊吹萃香(?歳・幼女)はこう語る。
「あ…あれはまさしく伝説の秘技『覇威怒鞭乃雲(はいどべのん)!!』」
知っているのか萃香!?
「恐ろしい…この平成の世にあの技を使う者が生き残っていたとは…」
覇威怒鞭乃雲(はいどべのん)…
それはエイの背中に乗っかって体当たりする技である。
(中略)
節子!それはわたしのおいなりさんだ!
武輪流魔法書院刊 「てゐはぱんつはいてないよ」より
それはともかく、小町は壁にめり込んだ映姫に駆け寄った。
「ええええええええ映姫さまーっ!!大丈夫ですかー!?」
「大丈夫なわけ無いでしょう!」
壁から手足を抜きつつ、映姫が答えた。
さすが閻魔だ、壁にはまってもなんともないぜ。
「すいませんすいませんゴメンナサイ!わざとじゃないんです!だからお仕置きだけは…」
「わざとじゃない状況でなぜエイにのって全速力で飛び込んで来やがりますか!」
「だってそれは、エビちゃん(エイのあだ名。本名は『海老・ル・台場』(享年39億歳・インチキ占い師))が暴走して…」
「言い訳無用!お仕置きです!」
「ひぃぃぃぃ!」
その後に行なわれたお仕置きは、あまりに凄まじい内容のため割愛させていただく。
しかしそれは愛の鞭なのだ。
映姫は小町に間違いを改め、正しい死神ロードを歩んで欲しいと思っている。
それ故の、厳しいお仕置きだ。
「さあ小町、己の罪を悔い改めなさい!」
「うわ~んすいません。あたいが悪かったですよう~」
「そう、そうやって素直になればいいのです。素直な小町はかわいい。なでなでしてあげます」
なでなで。
「えへー」
「もう、そんな隙だらけの表情をしてはだめですよ」
「隙だらけじゃないですー。好きだらけですよマイハニー映姫たまー」
「きゃー恥ずかしい。映姫、ポッてなっちゃいます」
ポッ。
「まあ、そんなことはどうでもいいとして」
「どうでもいいんですか映姫さま。あたいはわりと本気…」
「幻想郷の罪人たちを更生させる手段を考えないと…」
映姫は再び考え込む。
小町の体当たりのせいで半分ひしゃげた机に向かい、思考を再会させる。
「う~ん」
「ああ、考え込む映姫さまのお顔も素敵です。素敵すぎて小町、ステーキが食べたくなっちゃう」
「う~ん」
「って聞いてますか映姫さま?マイラヴァー?」
「う~ん」
必死のアプローチにも映姫は耳を貸さない。
この少女(えーきんは少女だよ!)、一度考え込むと周りのあらゆる音が耳に入らなくなる。
そのせいで、小町の勇気ある愛の告白を421371回も聞き逃している。
『でもいいんだ…あたいは映姫さまの下で働けるだけで幸せさ!』
といいつつ、小町はあんまし働かない。
だって春のポカポカ陽気は気持ちいいんだもん!小町、タンポポのように風に揺れていたいファイヤー!
「ってこの勢いじゃいつまでたっても話が進まないでしょう!いいかげんにしなさい!」
「すいませェん」
「もう、一体どうすればいいのでしょう…」
その時ぴかっと閃いた!
「そうだ映姫さま!いっそのこと自分でやってみてはどうです?」
「自分で?」
「ええそうです!映姫さまご自身で、幻想郷の罪人を更生させるための学校をお作りになればいいんです!」
「何ですって!?つーか、あなたは何故学校のことを…」
「はぁ、実はこの部屋の扉に耳を当てて、映姫様の独り言を聞いていたのです」
ごしゃ。
映姫は小町の脳天に、どこからか取り出したエレキギターを叩きつけた。
「盗聴は犯罪ですよ小町!」
「いやそいつはスmあんカッタというか映姫さまあたiの頭蓋コツがなんか扁平になててあばばばばくぁwせdrftgyふじこ」
「しかし、自分で学校を作る、ですか…これは意外と…」
映姫は再び考え込む。
しかし、今度は先ほどのような、アイディアに詰まった顔はしていない。
何かの計画を練るような、どこか楽しげでさえある表情。
「あ、あのー、映姫様?」
カウント2で復活した小町が、映姫の顔を覗きこむ。
その際、映姫からは身をかがめた小町の襟元から覗く大迫力の双丘がモロ見えなわけだが…しかし!
やはりこの少女(いや、幼女説も完全否定ではないのよ?)、考え込むと周りが見えない。
数秒後、映姫は口元に「ニヤリ」という感じの笑みを浮かべた。
「…やってみる価値は、ありますね」
さらに数秒後、そんな映姫の唇に、小町が己のそれを重ねるのであった。
そのまた数秒後に「唇泥棒は犯罪ですよ小町!」と言いながら、再びエレキギターを振り回す映姫がいた。
『東方苺恐慌』
蓮子!それは数珠じゃないのよ!
―――マエリベリー・ハーン語録第4545集
東の空にお日様がのぼり、朝がやってくる。
博麗霊夢はちゃぶ台の前に座り、朝食をとっていた。
今朝のメニューは白米に焼き鮭、しば漬けと味噌汁。
「う~ん、これぞ日本の朝ね」
朝日の差し込む和室で、静かに迎える朝。
とびきり美味な朝食がついていれば、なお良い。
しかしそんな素晴らしい朝を、ぶち壊しにする輩がいた。
「霊夢ー!!」
叫び声とともに、障子をブチ破るけたたましい音が響く。
障子を突き抜けた「それ」は、飛び込んできた勢いそのままにちゃぶ台へと突っ込む。
「…」
2つに割れたちゃぶ台と、その上でめちゃくちゃになっている朝食「だったもの」。
霊夢の瞳に映るそれらが放つのは――死の臭い。
終焉、すでに終わってしまったもの。
「おい霊夢、郵便受け見たか!?なんか変な手紙が幻想郷中に…霊夢?」
飛び込んできた物体、それはもちろん、お馴染み普通の魔法使い――霧雨魔理沙。
その手に何かが書かれた紙切れを持ち、興奮気味で霊夢に話しかける。
「あ…ああ…」
しかし魔理沙の言葉に答えることなく、霊夢はその目に涙を浮かべる。
濁りの無い、透き通った雫が、次々に彼女の頬を伝った。
「れ、霊夢?どうした、何処か痛いのか!?」
「ああ…あ、ああ、あ…ああああああああああああああああああっ!!」
霊夢は頭を抱え、床にうずくまった。
そのまま、長い慟哭の叫びをあげ続ける。
「霊夢!どうしたんだ霊夢!しっかりしろ!」
「あああああああ…うあああああああっ!」
ひとしきり喚いた後も、霊夢は肩を震わせて泣き続けていた。
「…」
さすがの魔理沙も事態の重さを理解し、黙りこむ。
そのまま霊夢の傍らにしゃがみこみ、その肩に優しく手を伸ばした。
「っ!?」
そして、霊夢の手がその腕をつかむ。
物凄い力で。
「いっ…ちょ、霊夢!痛い、マジ痛いってそれ!!」
腕を握りつぶされるかと思うほどの激痛に、魔理沙が悲鳴を上げる。
苦痛に歪む魔理沙の顔を、霊夢はゆっくりと見上げた。
「まりさぁ…」
「霊夢…ひっ!?」
魔理沙は霊夢と目が合った途端、恐怖に顔を強張らせた。
霊夢の顔には涙の痕がくっきりと「紅く」残っていた。
それは血涙――霊夢の心を襲った苦痛の凄まじさを物語る、凄惨な紅(くれない)。
そして霊夢の目は、その涙と同じくらいに紅く染まって。
狂気の月の兎も裸足どころかぱんつはいてない状態で逃げ出す、真紅の魔眼であった。
「あんたさぁ…ブレイジングスターで神社に突っ込んでくるの…やめろっていつも…言ってるだろぉ…」
「ひゃあっ!?ご、ご、ごめんごめんごめん!悪かったってぇ!!」
「障子を破り…ちゃぶ台を叩き割り…あまつさえ久々に力入れて作った朝餉を台無しにした…」
魔理沙の腕を掴む力が増す。
ぐぎ、と歪な悲鳴をあげ、魔理沙の顔がさらに歪んだ。
「いひゃいいひゃいいひゃいいい!!ごめんなさいごめんなさいゆるして~!!」
「許すだぁ…?…ああ、許してやるともさ」
「ほ…ホント?」
「もちろんよ魔理沙ぁ…あんたがさぁ…逝っちまったシャケ君たちの代わりに…」
霊夢の口元が吊りあがり、不気味な笑みを形作った。
しかしその目は一寸も笑わず、相変わらず怒りと狂気をみなぎらせている。
「わたしの朝食になってくれるんならね」
その日、2人の少女が幻想郷から消えた。
魔理沙の登場の仕方が、冒頭の小町とかぶっているとか言わないように。
******
「で、今日は何の用?」
衣服の乱れを直しながら、霊夢が尋ねた。
「すんすん…もうお嫁にいけない…」
床に横たわり、手のひらで顔を覆ってすすり泣く魔理沙に。
そう、10分ちょい前までここにいた2人の少女は、もういない。
今ここにいるのは、「少女」という殻を破って大人の階段を登り始めた2人の…えーと…
「乙女?」
そうそう、それそれ。
しかし今後の展開でイチイチ区別して表記するのは面倒なので、とりあえず「少女」としておく。
「こうなったら霊夢、わたしをお嫁にもらひでぶ!?」
「な・ん・の・よ・う・?」
魔理沙の鳩尾に拳を叩き込み、霊夢が再び尋ねる。
「か…は…」
「ああいけない、まともにボディを打ち抜いちゃったみたいね…ん?これは…」
霊夢はそこで、魔理沙が持っていた紙切れに気づく。
そういえば、先ほどの魔理沙は郵便がどうとか言っていたような…そんなことを思いながら、床に落ちた紙を手に取った。
「…!?」
同時刻。
紅い悪魔の住む館に、驚愕の声が響いていた。
妖精の戯れる湖に、衝撃が広がっていた。
二百由旬の庭を、ビッグニュースが駆け巡った。
魔法の森に、ざわめきがこだました。
竹林の屋敷に、電撃が走った。
マヨヒガの住人達は言葉を失った。
人里の防人の両目が大きく見開かれた。
新聞記者は、思わず筆を走らせる手をとめた。
朝から呑んでいた鬼が、むせた。
そんな鬼に酒を振舞っていた屋台の主も、思わず音程を外した。
ある一点を中心に、半径45m以内の花が一斉に蠢き始めた。
一瞬だけ、幻想郷全域が真っ暗になった。
そこらじゅうの虫が一斉に脱皮(キャスト・オフ)した。
長女がハイテンションになり、次女が部屋の隅で膝を抱え、三女がバカ正直になった。
悪霊が、ショックで博麗神社への恨みを一時的に思い出してしまった。
不死鳥娘は驚いた拍子に壁に頭をぶつけ、死んだ。そして生き返った。
思わず帰ってきちゃった冬の妖怪の身体が、春の陽気で溶け始めた。
鈴蘭畑に咲く全ての花が、一体の人形の動きに合わせて首を傾げた。
「春ですかー?」なぜか疑問形になった。
この日、幻想郷中に以下のような文面の手紙が配られた。
『あなたの凄惨な罪を清算するチャンス!間違った人生観を根底から修正する、光り輝く生活空間(禁英訳)!
美しい自然と気の合う親友(マブダチ)、そして優しく厳しい熱血教師に囲まれて…。
青春の1ページ、わたしに預けてみる気はないかい?
心も脳も洗われる究極の更生施設で、後世に名を残す善人になろう!
四季映姫・ヤマザナドゥの幻想郷乙女塾!
説明会は○月×日の正午より紅魔湖の岸にて、来なかったら即地獄、拒否権なし。
なお、この手紙は読後12時間後に自動的に消滅、莫大なエネルギーが放出されて半径数十kmが焼け野原…』
******
そして、来る○月×日、正午。
紅魔湖である。
その岸にはいつの間に建ったのか、巨大な建造物がその影を落としていた。
まさか、これがあの手紙に記された「塾」とやらなのだろうか。
驚くべきことに、手紙を受け取った者は一人残らず紅魔湖に集結していた。
色々と文句を言いつつも、拒否権無しで即地獄落ちという脅しに皆恐れをなしたのである。
最初は「何これ?こんなふざけた手紙でホントに地獄に落ちるわけないじゃない!」とか言う者もいたが、
『莫大なエネルギーが放出されて半径数十kmが焼け野原…』
という手紙の言葉が真実だったことを知るに至り、手紙の送り主の「本気」に気づいたのである。
皮肉にも、最初の手紙の消滅により、博麗神社が敷地ごと跡形も無く消し飛んだことで…。
寸でのところで結界を張り、大エネルギーの爆発から逃れた霊夢は、残る全ての手紙を回収した。
そして、八雲紫のスキマを通じ、手紙は一枚残らず魔界に捨てた。
幻想郷はオーバーキルの危機から救われたのである。
ただ一人、アリスだけが「実家からの仕送りが今月はいつまでたっても送られてこない」と首を傾げていたが。
「全く、迷惑な話ったらないわ!」
家なき巫女レイムと化した幻想郷の救世主は、群集の先頭に立ち、苛立たしげに言葉を吐いた。
「職権濫用もいいとこじゃない。閻魔ってのは何やってもいいわけ!?」
「まあまあ霊夢、そうカリカリすんなって。神社が壊れるのはいつものことじゃないか」
「いつもあんたやレミリアが遊び半分でラストワード連発とかするからでしょ!?大体ねぇ…」
傍に立つ魔理沙に膝蹴りを入れながら喚いているところに、大きな声が響いた。
『皆さん』
上空から響いたその声に、集った一同は一斉に空を見上げた。
そこにいたのは、巨大なメガホンを手に空中に浮かぶ四季映姫・ヤマザナドゥ。
いつものミニスカ閻魔ルックではなく、高級そうなスーツに身を包んでいる。
「七五三」
「七五三だ」
「千歳飴食べるー?」
上から、輝夜、美鈴、フランドール。
ノーモーションで放たれた卒塔婆がその頭部に突き立つ。
輝夜は1秒でリザレクションした。
美鈴は帽子の☆マーク(チタン製)のお陰で頭蓋骨貫通を免れた。
フランドールは脳なんて単純で科学的な思考中枢は持ってない吸血鬼だったので、貫通しても痛いだけだった。
でも「いた~い」と言いながら涙目になったので、彼女の姉はいつか絶対映姫をムッコロスことをこの時決意した。
とにかく。
『今日はよくぞお集まりいただきました、わたしが幻想郷乙女塾塾長、四季映姫・ヤマザナドゥです』
七五三の声は、巨大メガホンによって辺りに必要以上に響き渡る。
その顔には満足げな笑みが浮かんでいる。欠席者が一人もいないことを喜んでいるのだろう。
『みなさんに来ていただいた目的は他でもない、我が乙女塾への入塾案内をさせていただくためです』
入塾案内。
やはりあの手紙を送りつけられた者は、その得体の知れない塾とやらに入れられる対象なのだ。
手紙の文面から発せられる慄然たる恐怖を思い出し、名状しがたき不安に震える霊夢たち。
『それではまず、わたしが乙女塾設立を決意した理由から始めましょう…』
そして、これより日が暮れるまで続く、映姫の長い長い入塾案内(の名を借りたいつもの説教)が始まった。
一人また一人と貧血で倒れていく仲間達を見ながら、霊夢は思った。
ああ、この人(人じゃないけどね)は存在そのものが地獄系なんだなぁ…と。
なお、この時の映姫のありがたいお話の全文は容量過多のため省略させていただく。
最後まで倒れることなく話を聞けたのは、以下の8名。
・博麗霊夢(神社を吹き飛ばされた恨みにより、意地で立っていた)
・蓬莱山輝夜(リザレクション5回)
・藤原妹紅(4回)
・八意永琳(7回)
・西行寺幽々子(最初の2分以外は立ったまま寝ていた)
・八雲紫(同上)
・上白沢慧音(映姫の話はあながち間違ったことは言っていないので、割と感心しながら聞いていた)
・霧雨魔理沙(霊夢に負けたくなかった)
そして映姫の話は、要点をまとめるとこうだ。(句読点省略)
「あなたたちは罪深い者達ですこのままでは地獄に落ちかねないしかし生半可な説教じゃ悔い改めない
だからわたしが一からあなたたちを教育しなおしますそれが幻想郷乙女塾設立の最大の目的ですしかし
ただ毎日あなたたちをスパルタ教育に漬け込むのは精神衛生上よろしくないので楽しいスクールライフを
通じて皆さんが素晴らしい人間や妖怪やその他諸々になってくれることをわたしは望みます早速明日から
ここ紅魔湖の畔に建つ乙女塾へ通いなさいちなみに全寮制です寮は紅魔館の余っているお部屋を使って
共同生活をしてもらいますああそれとこれより制服の採寸がありますからまだ帰っちゃ駄目ですよちなみに
入塾しない者はこの場で死刑ですあの手紙爆弾の威力を見たでしょうあれがわたしの本気だと思ったら大
間違いですさあみなさん今から生徒手帳を配りますよなくしちゃだめですよ」
紅魔館を寮として使うという案に、十六夜咲夜は大反対した。
当然である。メイド達の負担倍増、紅魔館の財政も圧迫されることは間違いない。
しかし、
「わーいみんなでお泊りー」
「ま、まあ、そういうのも面白いんじゃないかしら?」
という主たちの言葉の前では抗議の意思も失せるというものであった。
予算については何も心配いらない、塾の学費も無料だという。
一体どこからそんな資金を手に入れてきたのか、という問いに映姫は笑って答えた。
「あなたは冥王星という星を知っていますか?」
質問に質問で答える、テストでは0点になりかねないマヌケな回答だったが、誰も反論できなかった。
真相は遠い宇宙の彼方、暗黒に沈むプルートゥだけが知っている。
何事に関しても慣れというのは偉大なもので、乙女塾に入塾した霊夢たちは急速にそこでの生活になじんでいった。
では、塾生達の華麗なスクールライフの一部を紹介するとしよう。
ちなみにここまでのお話ではなんか霊夢が主人公のような流れだが、ここから始まる物語の中核ではそうでもない。
では誰が主人公かと言うと、それは…きっと、その答えはある意味では無数にあり、ある意味では存在しない。
なぜなら…
『だってここでは、誰もがヒロイン。それが…幻想郷乙女塾!』
はいここ、塾生全員で声をそろえて。
ふざけて「男塾!」とか言ってるもこたんはあとで職員室ね。
【春】
AM8:27
「わ~っ、遅刻遅刻~!!」
焦った様子で走る、セーラー服姿の少女。
鈴仙・優曇華院・イナバ(2年生)は、乙女塾へと続く道を疾走していた。
塾生寮である紅魔館から、湖の畔にある塾舎までの距離はそう長くは無い。
しかしそれは直線距離でのこと、湖を迂回して続く通学路は、歩けば割と時間がかかる。
『空とべばいいじゃん』という意見がどこかから聞こえてくるが、甘い。激甘である。
乙女塾塾生の誓い・第47条には、
『登下校時の空中飛行による移動禁止、地に足をつけて歩いてくること』
とある。
よって、全ての塾生が飛行能力を持つにもかかわらず、毎朝この道をぞろぞろ歩いて登校するのである。
しかし朝のホームルームの時間が近づいてくる今、道を歩く塾生の姿は見えない。
この遅刻ギリギリ月兎、鈴仙を除いて。
「ううっ…頼むから門閉めないでっ!」
乙女塾の門は、午前8:30をもって閉じられる。
それ以降に登校したものは遅刻とみなされ、きっつ~いお仕置きが待っているのだ。
それまで遅刻などしたことのない、成績の面でも割と優等生な鈴仙は、まだお仕置きを受けたことは無かった。
必死で走った甲斐もあってか、門が眼前に見えてきた。
(まだ閉まってない…っ!)
ラストスパート、鈴仙はスピードを上げる。
「「いけるっ!!」」
勝利を確信したその声が、誰かのものと重なった。
「ふえ?」
そのことに気づいた瞬間、鈴仙の視界に飛び込んできたもの。
それは横の茂みから飛び出してきた人影だった。
人影はちょうど鈴仙の進路上に飛び出してきており、このまま直進すれば…
「ぶ、ぶつかる~っ!!」
飛び出すな、わたしは急に止まれない。
鈴仙は思った。
そして同じことを思ったであろう、今まさに鈴仙と激突せんとする人影――魂魄妖夢(2年生)も。
衝撃。
2人は派手に尻餅をつき、地面に鞄を投げ出した。
「いったぁ…」
「うう、お尻が…」
少し強めに臀部を打ったのか、2人してその部分をさする。
そして、非難のこもった眼差しで、互いをにらみつけた。
「危ないじゃない!急に飛び出してこないでよ!」
「す、すいませ…って、飛び出してきたのはそっちでしょ!」
生来の腰の低さから反射的に謝ろうとした妖夢だが、すぐに鈴仙の言葉に反論する。
飛び出してきたのはほぼ同時、どちらにも非があり、またないとも言えるのだが…。
「何よ!あなたが飛び出してきた道って、どう見ても通学路とは違うでしょうに!」
「近道よ近道!遅刻するよりマシだってもん…ああっ!」
妖夢が指差す先、そこでは、乙女塾のいかめしい門が、轟音とともに閉じられるところだった。
2人はその光景を、愕然とした光景で見つめる。
「「ああ…」」
遅刻確定。
いつも門に立っているエリー先生(英語担当)が、大鎌を構えて門の向こうに仁王立ちになっていた。
エリー先生は生徒のスカートの長さが校則の規定範囲から出ていないか、瞬時に見分けることができる。
毎朝門に立ち、登校する塾生のスカートの長さをチェックしているのだ。
長いものはその手に持った大鎌で規定の長さになるようカットされる。
短いものは「あんたの足を切って、無理矢理に膝下の丈を切りつめてやろうかぁ!」と言うと、塾生は大抵それに従う。
しかし3年生のある生徒には、どんな服装で来ても何も文句を言えないという噂もある。
それについてエリー先生は、
「しかたないじゃない(泣)しかたないじゃない(泣)だって向日葵にされちゃうんだもん…」
とか言ったとかなんとか。
厳しい中に漂うヘタレ臭が萌えを誘い、生徒達の中では密かに人気があったりする。
とにかく、そのエリー先生は遅刻者を見逃さないことでも有名。
しかし以前霊夢と魔理沙(どっちも2年生)が遅刻した時、2人続けて力づくで門を突破されたという噂もある。
それについてエリー先生は、
「しかたないじゃない(泣)しかたないじゃない(泣)だって東方幻想郷の仕様だもん…」
厳しい中に漂うヘタレ臭が萌えを以下略。
とにかく、鈴仙と妖夢は入塾してはじめて、遅刻をしてしまった。
「「ああ…」」
絶望の声が重なる。
ここはあの四季映姫・ヤマザナドゥの鉄の掟が支配する空間。
遅刻のペナルティとは、いったいどんなものか…。
よく見ると、鈴仙は寝グセが直っておらず、あちこちで長い髪がはねている。
妖夢は道に飛び出してきたときからずっと、トーストを口に咥えていた(じゃあなぜ会話ができたのとか言わない)。
2人とも、かなり慌てて家を出てきたことがわかる。
「「うう…」」
「姫様が」
「幽々子様が」
「「毎朝ちゃんと起きてくれたなら…」」
そこまでつぶやいて、2人は顔を見合わせた。
放った言葉のほとんどが重なっていたことに気づき、互いに言葉を失った後…
「ぷっ」
「くすっ」
さらに相手が自分とほぼ同じ原因で遅刻寸前に追い込まれたことに気づき、それが無性におかしくなった。
類は友を呼ぶ。
2人は一瞬だけ笑いをこらえ…そしてすぐに、声をあげて笑いあった。
地面に座り込んで笑い続ける2人の頭に、ふわりと落ちる物。
それは桜の花びらだった。
******
「ふぅ…ギリギリだったわね」
「あら、おはよう輝夜~」
「おはよう幽々子。あなたもわりと危なかったんじゃない?」
チャイムが鳴る寸前、間一髪で教室に飛び込んだ蓬莱山輝夜(3年生)は、後ろの席の生徒に声をかけた。
そこには、輝夜より少しだけ早く教室に入ったのだろう、未だ机の上に鞄を置いている西行寺幽々子(3年生)がいた。
「まあ、妖夢がちゃんと起こしてくれるからね。朝ごはんもバッチリ食べてきたわよ」
「ホント、持つべきものは優秀なペット…もとい、後輩よね」
この2人、毎朝ギリギリまでベッドの中で粘る典型的なダメ生徒。
しかも、相部屋の2年生に朝食を作らせ、食器の後片付けも全部任せて先に寮を出るという、血も涙も無い輩である。
ちなみに乙女塾の寮では部屋にキッチンが備え付けられており、生徒の完全自炊制である。
「そういえば、昨日の宿題やった?」
「え~と~、あ、今うつし終わったところよ~」
「そ。じゃあ次わたしに貸してね…へえ、さすがは咲夜ねぇ」
校則ガチガチの乙女塾にあって、だらけた生活スタイルを頑なに守る月のお姫様と冥界のお嬢さま。
ある意味、たくましいと言えよう。
AM11:58
(う~、お腹すいたよ~)
午前中最後の授業、4時限目の数学の時間。
ルーミア(1年生)は、空腹と必死に格闘しつつ、なんとか授業に耳を傾けていた。
少々本筋から脱線するが、ここで、先ほどから何度か出てきた学年の話をしておこう。
乙女塾の塾生は1~3年生の3つの学年に分かれる。
入塾した時期は皆同じなのだが、「縦のつながりという関係を学ぶのも大切です」という方針の下、
映姫は外見や精神の年齢を考慮し、生徒を3つの学年に分けたのである。
ちなみにこれは映姫の独断と偏見によって分けられており、不満を持つ者も当然いた。
曰く、
『なんで美鈴が2年でわたしが3年なのよ!』
『年齢だけならわたしは○○館チームで最年少でしょ?なのに何故!?』
『あーっ霊夢と魔理沙も2年だー!わたしだけ年増扱い?いじめ、かっこわるい!』
誰のコメントかは、本人の名誉のためにあえて伏せておく。
ちなみに、この学年分けは繰り返すが映姫の独断と偏見である。
だから僕(作者)は関係ないのだ。
仮に賢明なる読者諸兄の考える「年の順」と違ったとしても、それは映姫様が悪いのである。
僕は関係ないと言ってるだろう!
な、何だ!?
あの手は何だ!窓に!窓に!!
(はやくみすちーのお弁当食べたいなぁ)
ルーミアは毎日、相部屋のミスティア・ローレライ(1年生)に昼食の弁当を作ってもらっていた。
ミスティアは屋台経営者(乙女塾はバイトとか禁止のため休業中だが)だけあって、料理がうまい。
俗に言う「食いしん坊さん」のルーミアは、毎日昼休みを楽しみにしていた。
ミスティアにとっても、心からおいしそうに弁当を食べてくれるルーミアの顔を見るのが、毎日の楽しみであった。
(うう…)
そろそろ、数学の担当教師である八雲藍の声も耳に入らなくなってきている。
代わりに彼女の聴覚がとらえるのは、自身の腹が立てる、悲鳴にも似た音であった。
秒刻みで大きくなる飢餓感、襲い来る「口寂しさ」…いつしか彼女は無意識に、
がじがじ
右手に持った鉛筆を噛んでいた。
がじがじ
まだそれほど使っておらず、汚れも少ない新品の鉛筆。
その清らかなるボディを穿つ、飢えた妖怪の牙。
黒鉛の芯ごと噛み砕いてしまいそうな咬合力に、脆い木製部分が軋み始める。
がじがじ
ノートを取っていたミスティアは、隣席から聞こえてくる怪音に気づいた。
ゆっくりと、しかし確実に神経を刺激する不快な音。
(…?)
怪訝に思い隣を見ると、そこには虚ろな目で鉛筆をかじる闇からの使者の姿が。
(なっ…)
それは恐るべき光景だった。
というか、痛々しい光景である。
濁った目で一心不乱に鉛筆をがじがじ――これは、年頃の女の子として非常にまずい行動である。
乙女塾塾生の誓い・第96条には、
『お腹が減ったからといって、授業中に鉛筆をがじがじしてはいけない』
とある。
随分とピンポイントな規則だが、とにかくルーミアが今やっているのはそれに違反する行為だ。
規則に反する行動は、見つかればペナルテイを免れない。
乙女塾のお仕置きは厳しいのである。
今日も、2年生が2人ほど、スッポンの血で満たされたブリキのバケツを持って廊下に立たされていた。
おそらく遅刻でもしたのだろう、両手と頭上の合計3つのバケツを必死で支える姿は哀れだった。
もしもバケツの中身をぶちまけてしまえばどうなるか。
全身にスッポンの血を浴びた2人はギンギンになるだろう。それはもう色々と。
(恐ろしい…)
そう思った。
その割に、お仕置きを受けている2人の表情は妙に晴れやかで、楽しげですらあったが。
仲のいい友達同士なのかもしれない、ミスティアはそう解釈した。
がじがじ
依然、ルーミアの鉛筆がじがじは続いている。
まずい。
今はまだ見つかっていないようだが、藍先生が気づくのは時間の問題である。
藍先生は乙女塾の先生の中では比較的優しくて話しやすいが、ちょっと「お母さん」ぽいところがある。
だらしない態度や、みっともない格好に厳しいのである。
だらしなくてみっともない、その最たるものと言っていいことを、今自分の友人がやっている。
(ルーミア!)
先生に聞こえないよう、小声でルーミアに話しかけた。
がじがじ
どうやらルーミアにも聞こえなかったらしい。
空腹で意識が「薄く」なっているルーミアに、普通の音量で言っても聞こえないかもしれないが。
(うう~…そうだ!)
ミスティアは手元の消しゴムの端をちぎると、ルーミアの顔に投げつける。
がじが「ポテッ」じ
「ん?」
左頬に違和感を覚え、ルーミアはその方向を振り向く。
そこでは少々焦った顔の友人が、必死に何かをジェスチャーしていた。
手に持った鉛筆を噛むような真似をした後、両手の人差し指で「×」を作っている。
「…あっ」
そのジェスチャーの意味を理解し、ルーミアの頬が赤く染まる。
どうやらまた、いつもの癖が出てしまったらしい。
ルーミアは授業中にお腹が減るといつも、無意識に鉛筆を噛んでしまう癖があった。
空腹のピークは、大抵は昼休みの開始時に来るのだが、たまにそれが授業が終わらないうちにやって来ることがある。
今日がまさにその時であったのだ。
(あー…みすちー、ありがと)
(そろそろ直したほうがいいわよ、それ)
2人は小声で言葉を交わす。
食事だけでなく、普段の生活のいろいろな面で、ルーミアはミスティアの世話になることが多かった。
最初は「勉強なんてめんどくさいー」と思っていた。
しかし、こんな友人関係が築けるなら、学校生活も悪くないなぁ…最近ではそう思っている。
「こら」
「「え?」」
2人は同時に後ろから頭を小突かれた。
振り向くと、ちょうど2人の席の間、その少し後方に藍が立っていた。
「授業中の私語は禁止だぞ」
少し困ったような笑みを浮かべて、藍は言った。
2人の態度を咎める言葉だが、その口調には嫌味やとげがない。
「あ…ごめんなさい」
「スミマセン…」
「わかればいいさ」
藍は2人の頭を小突いた両手を引っ込めると、教卓の前に戻っていった。
周囲の生徒がくすくすと笑う声が聞こえる。
ルーミアとミスティアは、苦笑しながら頭を掻く。
(ゴメンみすちー…)
(や、こっちこそ)
その時、チャイムが鳴った。
4時限目の授業が終わり、昼休みが始まる合図。
PM0:21
「危なかったー…あのまま先生に見つかってたらどうなってたか」
「ほんとよ。『鉛筆かじる』なんて属性、ネタにもならないわよ」
2人は教室を出て、塾舎の中庭に出る渡り廊下を歩いていた。
乙女塾では、昼休みは教室でなく、どこか外に出て弁当を食べるのが流行っていた。
「あ、ちょっとわたし忘れ物」
「え?」
「先行ってて、すぐ追いつくから」
何かを思い出したように、ミスティアは急に踵を返した。
そのまま、来た方向を駆け戻っていく。
「忘れ物なのかー…お昼食べるのに何忘れたんだろ?」
ルーミアは立ち止り、首を傾げる。
ミスティアはいつものように、2人分の弁当箱が入った袋を持っていたはず。
では何を忘れたというのか。
「あ!」
ルーミアの頭上で、豆電球に灯がともる。
「おはしかー」
みすちーおっちょこちょいさんだなぁ、などと言いながら、再び歩き出す。
行く先はいつもの場所、中庭で一番大きな木の下。
そこが、2人の特等席だった。
******
一方、1年生の教室。
「900!」
「950!」
「1000!」
そこには昼休みだというのに、授業中と変わらず席に着いている塾生達の姿があった。
空いている席は僅かに3つ。
「さあ、ついにゼロが3つついた!これより上はいないの!?」
既に教師のいない教壇には因幡てゐ(1年生)が立ち、声を張り上げていた。
「1030!」
「1050!」
てゐの煽りに反応し、教室のあちこちから声が上がる。
賢明な読者諸君は既にお分かりだろう。
今まさに、この教室ではオークションが行なわれている。
「1060!」
『えー』
数字の変化が緩やかになると、ブーイングじみた声が上がった。
熱気に満ちた競売の会場――では、商品は何か?
その答えは、教卓の上にあった。
「はい!はい!静粛に!1060円!さあ、まだこんなもんじゃないでしょ!?」
てゐは商品を手に取ると、クラスメート達に突きつける。
「この『ルーミアたん直噛み鉛筆』!今を逃したら絶対手に入らないわよ!」
『うおおおおおおおおっ!!』
歓声が上がる。
「1100!」
「1200!」
「1400!」
再び、値段が急速に肥大し始める。
その様子を、てゐは得意げに眺めていた。
このオークションには、各人が様々な思惑で参加していた。
実は乙女塾では密かに人気が高い(本人はもちろん知らない)ルーミアに密かに思いを寄せる者。
転売でさらなる利益を得ようと企む者。
オークションが何かはよく知らないが、なんか負けたくない者。
「2500!」
一気に2倍近くに値段が上がり、教室がざわめく。
鉛筆一本に2500円も出そうとするあ(らゆ)る意味で⑨な者――当然、皆の視線はそこに集中する。
「どうよ!あたいったら最強ね!」
ああ、やっぱり⑨。
上記の「オークションが何かはよく知らないが、なんか負けたくない者」の典型である。
ちなみに彼女は現時点で2500円もお金を持っていない。
彼女のお小遣いは相部屋の大妖精が全て管理しているのである。
「2500!いませんか…いないか!じゃあ落さt」
『1万!!』
勢いよく教室の戸を開ける音と共に、チルノが提示した値段の4倍の数字を叫ぶ声。
それは教室中どころか、乙女塾全域に響き渡るほど大きく、澄んだ声。
「…え?」
「はぁ…なんとか、間に、合った」
肩で息をしながら安堵の表情を見せるのは、ついさっき教室を出たはずのミスティアであった。
「お待たせー」
「あっ、遅いよみすちー」
「ゴメンゴメン」
芝生が敷き詰められた中庭に、一際目立つ大きな栗の木がある。
そこに、ルーミアはいた。
2人分の弁当を抱えたミスティアは、ルーミアの姿を見つけてすぐに走ってきた。
ルーミアは空腹の限界、という表情で彼女を迎える。
「早く早くー」
「はいはい。焦らなくてもお弁当は逃げないわよ」
2人は栗の木の根元に、寄り添って座る。
ミスティアは焦るルーミアをなだめ、弁当箱の蓋を開けた。
「あー。なんか寄っちゃってるねー」
「ちょっと走ったからね、全力で」
「?」
「なんでもない」
何かに振り回されたのか、2人の弁当の中身は箱の片側に寄ってしまっていた。
「ふ~ん…じゃ、いただきまーす!」
もちろんルーミアはそんなことほとんど気にせずに、嬉しそうに箸を手に取る。
「ん~おいし~!!ホントこのために生きてるよ~」
「大げさねー」
幸せそうに卵焼きを頬張るルーミアを見て、ミスティアはくすりと笑った。
そして自分は弁当に箸を付けず、静かに目を閉じた。
暖かい風を感じる。春の息吹だ。
左肩に触れる温もりが心地よい。
そんな満たされた感覚の中で、ミスティアは静かに歌い始めた。
忘れないで お金よりも 大切なものがある
忘れないで あなたよりも 大切なものはない
「ほえ?」
食事に夢中になっていたルーミアが、その歌声に気づいて箸を止める。
ミスティアの歌声――優しく、透明な旋律が、木漏れ日の間をすり抜けていく。
「…」
ルーミアは自分も目を閉じると、ミスティアの歌声に耳を傾けた。
彼女の料理と同じくらい、彼女の歌が好きだったから。
(ごめんルーミア…明日からどうやって生活しよう…)
お金より大切なものがあるからといって、お金が大切でないとは限らない。
しかしミスティアは決めていた。
何があっても、ルーミアの弁当のおかずだけは減らさないと。
PM1:54
3年生の教室。
一日で最も眠いと言われる5時限目の授業を終え、教室内が喧騒に包まれていた。
その教室の中で、小さな人だかりができている。
ある席の周辺に、数人の生徒が集っているのであった。
『…』
集った生徒達は一様に押し黙り、机の上を見つめている。
その机の上では、数枚の小銭が回っていた。
直立した小銭は数回、踊るようにくるくると回ると、やがて力を失い倒れる。
『…』
全ての銭が動きを止めた。
「…ど、どうなの?」
集まった生徒の一人、ルナサ・プリズムリバーが緊張した面持ちで尋ねる。
その質問に答えるのは、一人椅子に座り、小銭を眺める生徒。
「――そうだなぁ」
自分の席の周囲に集まった少女達を見回し、小野塚小町はつぶやいた。
机上の小銭は、3枚が裏、2枚が表を見せている。
「ま、間違いないんじゃないか?あんたの妹さんは、十中八九クロだね」
「ガーン!」
小町の言葉に、ルナサは頭を抱えて飛び上がる。
そのまま床に倒れ、身体を痙攣させ始めた。
「まさか…リリカが本当にそんな非道なこと…うそだ…ウソダドンドコドーン!!」
そう叫ぶと、泡を吹きながら意識を失った。
「さて、次は誰だい?」
小町は再び、周囲の友人達を見回す。
3年生の間で最近密かなブームを呼んでいるのが、この、
『小野塚小町の銭投げ占い』
である。
その名の通り、小町が弾幕戦などに用いる小銭を使って占いをする、というものだが、これが不思議とよく当たる。
というか、今のところ外れたためしがない。
本人曰く「あたいは心に裏が無いからね。だから占い(うら・ない)に向いてるのさ」とのこと。
はっきり言って寒い。
とにかく、最近では休み時間のたびに、小町に占ってもらおうとする輩が殺到するという状態。
小町もその依頼に快く応じ、占いを行なっていた。
「じゃあ、次はわたしね」
小町の正面に進み出たのは、ダメ生徒代表・輝夜。
先ほどの授業では、慧音先生(歴史担当)のありがたいお話を一言一句として聞かず爆睡。
怒った慧音が正拳突きで輝夜の脳天を叩き割っても、脳漿をブチ撒けながら寝ていた。
否、死んでいた。
そのまま死体として授業時間を過ごし、チャイムと同時にリザレクションした。
『あ~、やっぱり午後の授業は眠いわね』
あくびとともに起き上がり、さわやかに休み時間を迎えたという。
ちなみに、午前中にある2年生に全く同じことをやられた慧音は、教師としての自信が大きく揺らいだそうだ。
「あいよ、何を占う?」
「そうねぇ…」
輝夜は顎に手をあて、しばし考え込むんだ後、静かに言った。
「こんなのはどう?『次の授業で、最初に当てられるのは誰か』」
ざわ…
次の授業、という言葉が出た途端、集まった少女達の間にざわめきが広がる。
輝夜の質問は、本来なら他愛の無いそれの類である。
しかし、次の6時限目に待つ授業を知る3年生にとって、その質問は――死活問題であった。
「次って、お、岡崎の…」
岡崎夢美。
物理学の教師として映姫が別世界から呼び出した、比較物理学者の権威…らしい。
若くして教授の地位にまで上り詰めた才女だという話もある。
しかしこの夢美教授の授業は、乙女塾の生徒にとって恐怖の的であった。
夢美は授業の度に、生徒達に予習をしてくるよう言い渡す。
そして授業開始時にランダムに1人生徒を選び出し、その内容を尋ねる質問をするのである。
『では○○さん、これから話す××について、あなたが知っていることを…』
授業中の夢美は物腰が柔らかく、生徒に対し高圧的な態度に出ることも無い。
毎回恒例のこの質問も、きちんと予習した上で答えれば、夢美は何も文句をつけない。
しかし。
もしもその質問に答えられない…つまり、予習をしていないという事実が露呈した場合。
やさしい夢美先生は、恐怖の夢時空ラスボスへと変貌する。
その逆鱗に触れた者は、放課後に理科実験室へと呼び出され…いや、今は多くを語るまい。
「そう。これって意外に使えるんじゃない?予め当てられる者がわかってるっていうのは」
「た…確かに…」
輝夜の言葉は的を射ていた。
毎回、授業開始の5分間は生徒達にとって恐怖の時間である。
もしかしたら、今日の生け贄は自分ではないか――そんな不安に、皆の神経が張り詰めるのだ。
予習しとけばいいだけじゃん、という声が聞こえてくるが、甘い。激々甘である。
乙女塾の生徒たちにとって、予習とは、
1、授業開始5分前にするもの
2、別の奴が当てられている間に、こっそりやるもの
3、しない。勉強は試験前(だけ)が基本である。
という3パターンの定義によって語られるものでしかない。
どんなに岡崎夢美が恐ろしくとも、生徒達はそこだけは譲らなかった。
大抵は、1番か2番の手段で切り抜けるが、稀に3番をやっちゃった者が当てられてしまう。
その時に、理科実験室に夢の時空が発生することになるのである。
「どう?占ってもらえる?」
「もちろん。あたいもそいつは知りたいところだね…」
小町は小銭を握ると、それを軽く放り投げた。
机の上に落ちた銭はしばらく動いた後、静かになる。
表が4枚、裏が1枚。
「…!」
それを見た瞬間、小町の顔が強張った。
驚愕に満ちた目が、大きく見開かれる。
「え!?」
「何?何がわかったの!?」
「まさか…わ、わたし!?」
小町の動揺が周囲に伝わり、再び少女達がざわつく。
「いや…」
己の、そして周囲の動揺を振り払うように、小町が首を振った。
「今度当たるのは…あたいだ」
そう言って、自分自身を指差す。
「え…?」
小町に占いを持ちかけた輝夜をはじめ、小町を囲んだ少女達は言葉を失う。
しかしそれも一瞬のこと、すぐに安堵の笑みが広がる。
「な…何だー…よかったー」
「てっきり輝夜が当てられるのかと」
「それならそれでいいけどねー」
それぞれ勝手なことを言いながら笑いあう。
「ほらほら、これでわかったろ?あたいは今から全速力で予習をするから、さあ散った散った」
「はーい」
「小町、次わたし占ってねー」
小町の席から人だかりが消え、皆それぞれ席に戻り始めた。
それから程なくしてチャイムが鳴り、6時限目の授業が始まる。
ちなみに未だ床に倒れたままのルナサは、最後までその存在をスルーされていた。
PM2:00
「起立!」
教室に入ってきた夢美を前に、クラス委員長の咲夜の声が響く。
教師が教卓の前に立つタイミングを完全に読み、さらに寝ている生徒を瞬時に起こす大きな声で号令をかける。
しかしその声は美しく透き通り、大きな声量でも聞く者に不快感を与えない。
「礼!」
さらに生徒が立ち上がってから、お辞儀させるまでの間の取り方も完璧。
咲夜の号令のもと、3年生全員がきっちり同時に頭を下げる。
「着席!」
こうして席に着く時には、とりあえずクラス全員の頭が「勉強モード」に切り替わる。
完全で瀟洒な委員長・十六夜咲夜の名は、学年の枠を越えて乙女塾全体に響き渡っていた。
「はい、じゃあ早速始めるわよ…えーと、昨日は…」
夢美は教科書をぱらぱらとめくりながら、授業内容を確認し始めた。
途端、教室内の空気が張り詰める――が、今日はいつもと様子が違っていた。
少なくとも、小町の占いを聞いていた者達は。
(大丈夫…今日はわたしは当てられない。小町の占いは成功率100%…)
輝夜は、余裕ぶっこいてノートの隅に落書きをしていた。
(パラパラもこたん34ページ目…ふふ、完成が楽しみね)
ちなみに彼女のノートは落書きを除いて真っ白、予習どころか昨日の授業の内容すら書いていない。
「それじゃ、今日は教科書P42、完全弾性衝突から…当然、予習はしてきてるわね?」
『はーい』
生徒達はにこやかな表情で、しかし絶対に夢美の目を見ずに答える。
一瞬でも目が合ったが最後、ご指名が入ってしまうからだ。
「では、今日も予習の内容を発表してもらいましょう…そうですね」
夢美は、絶妙な角度で視線を外す生徒達を見回す。
その視線が、ある生徒の顔を捉えて止まった。
「蓬莱山輝夜さん。完全弾性衝突について、あなたが知るところを…」
「へ?」
自分が当てられることは絶対に無いと踏んでいた輝夜は、間抜けな声をもらした。
そんな輝夜に、夢美は笑顔を浮かべて歩み寄る。
「してきたわよね?よ・しゅ・う」
「あ…えと…」
答えに詰まり、困惑する輝夜。
その様子に、夢美が不審な表情を浮かべたその時だった。
「はーい!はいはいはーい!」
輝夜の席から少し離れた場所から、威勢のいい声が響いた。
何事かと、周囲の視線がそこに集中する。
「先生!あたい!あたいが言うよ!」
自信満々の表情で手を上げるのは――小町。
「お、小野塚さん…?」
「小町…」
夢美と輝夜は呆気にとられた様子で小町を見る。
他の生徒の様子も似たようなものだ。
当然である。よほど自信がない限り、自ら予習の成果を発表するような者などいない。
「ダメかい?」
「あ…い、いいえ。積極的な発表は大歓迎よ。それじゃ小野塚さん、発表して」
「はい!」
小町は勢いよく立ち上がり、ノートを手に取る。
「『かんぜんだんせいしょうとつ』について…ですよね」
「そう」
夢美の視線は完全に輝夜を外れ、小町の方を向いている。
その視線に臆することなく、小町は口を開いた。
「『かんぜんだんせいしょうとつ』とは『完全男性衝突』と書くもので、文字通りの「男の中の男」、
完全な男性の衝突のことである。筋骨隆々な肉体に健康的に焼けた肌、そしてほのかに香る汗の臭い…。
まさに「男」という概念をそのまま形にしたような素晴らしい兄貴達が、全身全霊をかけてぶつかり合う。
一滴の女性ホルモンの介在を許さない、完全と言う表現すら生温い男の中の男…迸る汗と躍動する筋肉、
それらが衝突、いや激突する度に、集まりに集まった雄の臭いが混ざり合い、凝縮し、広がる…。
全身の体液を絞りつくすまでぶつかり合った兄貴達…心地よい疲れと共に地面に横たわる肉、肉、肉…。
心と体がドロドロに溶け合うほどの闘いを経て、男達はいつしか友情を越えた強い絆で結ばれてゆく。
ガッチリと握手を交わす兄貴達。やがて、お互いの六尺褌に手を伸ばし…むぐ」
「す、ストォ~ップ!!」
大慌てで、夢美が小町の口を塞いだ。
当然この理論が正解であるはずはない。「完全弾性衝突」が正しい。
一行目の時点で止めるべきだったのだが、8行目までつい聞き入ってしまったのは内緒だ。
「なんですかなんですか小野塚さんなんですか!?」
「え?あたい何か間違ってました?」
「ま、間違ってたも何も、そんな雄臭い完全弾性衝突があるわけないでしょっ!」
夢美は顔を真っ赤にしたまま喚きたてる。
18歳の若さで教授になった天才少女も、このテの話題には慣れていないようだ。
普段見せない困惑した表情に、思わず萌えてしまった生徒達も何人かいたという。
「そうなんですか…あたいなりに色々調べたんですが」
「一体何を調べたらそんな結論になるのよ!お・の・づ・か・さ~ん!!」
夢美の顔が先ほどより一層赤くなり、頭から湯気が出始める。
小町がちゃんと予習をしてこなかったことに対する怒りと、脳内を埋め尽くす兄貴達への恥じらい。
それらが夢美の胸の中で渦を巻き、混ざり合い、そして…爆発する。
「予習復習をきちんとしない生徒は…消えろぉぉぉっ!!」
夢美の紅い目が輝き、同じく紅い髪がゆらゆらと波打つ。
全身から立ち上る紅蓮のオーラは、科学と、夢と、そして怒りに満ち溢れていた。
「で、出たぁ!」
「怒りの岡崎夢美・炎髪灼眼フォーム!」
生徒達は、久々に見る夢美のブチ切れっぷりに恐れおののく。
その目の前で、夢美は大きな黒いマントを纏う。
「ひぃっ!ゆ、夢美先生が、夢美先生が…」
「戦闘態勢に入ったーッ!」
ただマントを羽織っただけ、とあなどるなかれ。
夢美が漆黒のマントを羽織る時、それは時空の崩壊の始まりとすら噂される。
「小野塚さぁん…あなた…あとで、理科実験室に来なさぁい…」
「えー」
「『えー』じゃねえ『えー』じゃ!このわたしを馬鹿にするとどうなるか、身をもって知るがいいわ!
うふふふふ一度死神の身体の中がどうなっているか確かめてみたかったのよねえ…喜びなさい。
あなたの肉体はわたしの研究材料として永遠に生き続けるわ…論文の中でねぇ!!うふふふふ
そして死神に関する研究論文で学会をアッー!と言わせ、このわたしを追放しやがった学会の
年寄りどもに干からびてミイラになるほどの感動の涙を流させてやるのよ!うふ、うふ、うふふふふ」
何とかして余裕を保っていた小町も、気がつかないうちに膝を震わせていた。
夢美は冗談で言っているのではない。
この若き比較物理学の教授は、やるといったらやる女だ。目を見ればわかる。
事実、今の小町と同じように予習を忘れた生徒が、何人も夢美の「実験」の餌食となっている。
「は…はは…」
「いいわね小野塚さん!逃げても無駄、彼岸の果てまで追いかけるからね!ゴォ――ボ!!」
その後夢美はなんとか怒りを収め、この日最後の授業時間が過ぎていった。
PM4:16
理科実験室。
固く閉ざされたその扉の前で、数人の生徒がひとかたまりになっていた。
「小町、大丈夫かしら…」
輝夜が不安げにつぶやく。
夢見に呼び出された小町がこの部屋に入ってから、1時間以上過ぎている。
「何の物音もしないのが、逆に不気味ね」
扉に耳を近づけながら言うのは、幽々子。
ここに集まっているのは、昼休みに小町に占ってもらった者達。
つまり、小町が自らを「夢美に当てられる生徒」と占った現場に立ち会った生徒達だった。
(あの時、当てられたのはわたし…小町の占いが外れたのか、それとも…)
小町の小銭占いは的中率100%。
これまで、外れたのを見た者はいない。
しかし、先ほどの授業で――結果として小町が答えたが――夢美に当てられたのは輝夜だ。
いつものように小町の占いが外れていないとすれば、それはつまり…
「あっ!」
その時、実験室の扉が開いた。
「お、なんだなんだこんな大勢で…あ」
現れたのは、夢美の助手で物理学教師の北白河ちゆりだった。
ちゆりは入り口付近に集まった輝夜たちに気づいて怪訝な表情をするが、すぐに納得したように声を上げる。
「まあその、なんだ…お大事に、とでも言うべきか…」
「…こ、こま…小野塚さんは!」
「ああ、今出てくるよ…ほれ」
ちゆりが指差す先には、薄暗い実験室の中から歩み出てくる人影。
頼りない足取りでふらふらと現れたのは、他でもない小野塚小町だった。
「よ、ようみんな、待っててくれたのか…」
『小町!』
皆一斉に小町に駆け寄り、今にも倒れそうな彼女の長身を支える。
「大丈夫!?」
「何か酷いことされなかった!?」
不安げな友の叫びに、小町は力なく笑って答えた。
「はは…何だ大げさだな…べ、別に大したこと…ぐっ…」
そのまま、床に膝を突く。
「小町!」
「よう輝夜…お前さん、命拾いしたな…死な、ない、けど」
感謝しろよ、と悪戯っぽくウインクする。
しかしそれが空元気であることは誰の目にも明らかだった。
「…だ、誰か!永琳を、永琳を呼んできて!」
「任せて」
そう言うが早いか、咲夜の姿が消える。
時間を止め、養護教諭の八意永琳を呼びに行ったのだろう。
「小町…あなた、嘘ついたでしょう!本当は、あの時の占いで出たのは…」
「あー?何のことだかあたいにはさっぱり…」
「とぼけないで!あなたの銭占いが必ず当たるってことくらい、知ってる…当たったのはわたしのはず!」
夢美は輝夜を指名した。
ならば、その数分前に行なわれた小町の占いでも、当然輝夜の名前が出ていたはずなのだ。
「どうして!?あの時、当たるのがわたしだと言っていれば…」
「…お前さん、予習してなかったろ」
「うっ…で、でも、休み時間のうちにすぐ…」
その言葉を聞き、小町がくすりと笑う。
「物理を毎回睡眠学習してるヤツが、5分そこらの勉強で説明できるほど甘くないよ。『完全弾性衝突』は」
「でも、だからってあなたが犠牲に…」
「死神ってのはさ」
小町は優しい声で語り始めた。
「死者の魂を運ぶもんであって、生者に死を運んでくるもんじゃない」
「何が…言いたいの…」
「占いもそうさ。人に悩みや苦しみをもたらしてどうする…苦しみから救うためのもんだろう…」
今や小町は、仰向けに倒れようとする上半身を幽々子に支えられている状態にある。
「あの時あたいが『次に当たるのは輝夜だ』って言ってたらどうなった…?」
「どうって…」
「まともに予習もできなきゃ、呼び出しに対して覚悟決めるにゃ時間が短すぎる。八方塞がりだろ」
このダメ生徒代表め、と言いながら笑う。
「何より、あたいの占いで絶望するヤツなんざ見たくないからね」
「小町…!」
その割には、ルナサは未だに教室の隅で膝を抱え、「違う、リリカは違う、違うの…」とつぶやき続けているが。
とにかく、小町は占いの結果に輝夜が恐怖し、絶望に追いやられることを嫌った。
「ごめん、ごめんね、わたしなんかのために…」
「いいって。あたいが勝手にやったことさ…これでも死神だ。あんたら程じゃないが、丈夫だよ」
涙目になる輝夜に向けて、Vサインを作ってみせる。
「ま、これに懲りたらちょっとは真面目に勉強しなさいってこった…ハハ、あたいが言えた義理じゃないか」
遠くから駆けて来る足音が聞こえる。
咲夜が永琳を連れて戻ってきたのだろう、それを確認すると、小町は身体の力を抜いた。
「あいつの主じゃないけどね…」
「…?」
「あたいは運命を変えたのさ…なんて、かっこつけすぎか?」
輝夜はいつの間にか、小町の手を握っていた。
小町の肩を支える幽々子の手にも、知らないうちに力がこもる。
「映姫様にも見て欲しかったな…ちょっとはポイント、上がると思、うん、だが…」
小町の声が次第に弱々しくなっていくのがわかる。
「「「小町!」」」
輝夜と幽々子、そして戻ってきた咲夜の叫びが重なる。
『これでいいんだ…あたいの占いが…やっと…外れる…』
ぱたり、と小さな音を立てて、小町の手が床に落ちた。
「こ…」
「小町…?」
震える声で、輝夜が話しかける。
返事はない。
「小町!やだ、ちょっと、冗談でしょ!?ほ、ほら、永琳来たよ!?」
「姫、どいて!」
永琳が割り込み、小町の身体を抱え上げる。
「小町…ぐすっ」
幽々子の目に涙が浮かんでいる。
「…っ!」
咲夜は唇を噛み、壁を殴りつけた。
「小町、小町いぃっ!!」
永琳に運ばれる小町を見つめながら、輝夜は願った。
これまで何度となく叫んできた願い。だけど、今度は今までにないくらい強く、強く願った。
運命に喧嘩を売り、自分を助けた少女。
この乙女塾で出会った友の一人だ。
不死者と死神。普通に生きていたなら出会うことすらなかったかもしれない。
でも2人は、この場所で出会い、共に時を過ごした。
間違いなく「友」と呼べる存在に、いつしかなっていた。
だから輝夜は願った。
(お願い…!)
小町を。
友を。
(助けて…!)
その優しさに報いるために。
『助けて、永琳!!』
******
薄暗い理科実験室、その片隅の机を挟んで、向かい合う2人の少女がいた。
「…さすがにあれは、やりすぎだと思うぜ」
「いいじゃない、別に命に関わるような実験でもなし」
夢美は特に悪びれる様子もなく、正面に座る助手の言葉に答える。
「そもそも、ああいうのを実験と言うのかどうか…」
「立派な実験よ?『巨乳の死神を1時間ぶっ続けでスクワットさせた時の乳揺れの平均速度の測定』、
うまくいけば学会に一大ムーブメントを起こせるかもしれない」
「そりゃ、学会のエロジジイどもが競って実験に取り掛かるようなテーマではあるけどよ…」
ちゆりは、ついさっきまでここで行なわれた「実験」を思い出していた。
(あれは『揺れ』なんてもんじゃない…強いて言うなら『跳躍』…)
そして足はガクガク、疲労で頭フラフラの状態で部屋を出て行った哀れな被験体に思いを馳せる。
願わくば、彼女が筋肉痛に苦しむことのないように。
無理だろうけどね。
「巨乳なんてみんな死ねばいいのに」
「ひがみイクナイだぜ」
「何か言った?」
「別に」
PM6:00
「ただいま~」
鈴仙は疲れきった様子で、寮にある自室のドアを開けた。
遅刻のペナルティーとして、今日は午前中ずっと廊下に立たされていた。
何故か、スッポンの生き血が入ったバケツを三つも持たされて。
晒し者もいいところのみじめな姿だったが、一つだけ救いがあった。
それは、一緒に立たされた妖夢の存在だった。
『全く、姫がいつも布団の中でぐずってるから~』
『それ…すごくわかるかも…』
似たような境遇にある者同士、会話が弾んだ。
終わってみれば、お仕置きの時間はあっという間で、しかもその僅かな時間で2人は急激に親しくなった。
これまで、異変の現場で鉢合わせたり、宴会で顔を合わせることはあったが、ここまで正面から向き合ったことはなかった。
(そういう意味でなら、今日の遅刻もラッキーだったのかな…?)
そんな考えが頭をよぎるが、慌てて振り払う。
(ダメダメ!遅刻を正当化するなんて、姫みたいなダメ人間のすることよ!)
そして、その姫とやら――もう一人の部屋の住人、輝夜はもう帰ってきているはずだ。
きっといつものように「イナバ~、早く御飯~」などと言いながら床に寝そべっているに違いない。
「姫、今帰りましたよ…えっ!?」
部屋の中を覗き込んで、鈴仙は愕然とした。
「あら、お帰りイナバ」
寮の部屋のキッチンは、入り口のすぐ近くに設置されている。
鈴仙が扉を開けてすぐに目にしたものは――そのキッチンに立つ、輝夜の姿。
制服の上に白いフリルのついたエプロンをつけ、まな板の上の野菜を切っていた。
輝夜の制服エプロン。超レア。
「えぇっ!?ひ、ひ、ひ…」
「ゴーヤってこの種の部分を取るのよね…って、何してるの?」
「ひ、姫が料理を!?」
信じられない光景だった。
永遠亭にいた頃から、輝夜は料理をはじめほとんどの家事をすることがなかった。
月の姫として育てられ、地上でも大勢の従者に囲まれて暮らしているから、まあ当然と言えば当然なのだが…。
「何よ、わたしだって料理くらいできるわ」
「い、いえ、そうではなく、一体なぜ?」
ずっと輝夜の怠惰な生活態度を見てきた鈴仙は、未だに目前の光景を現実のものとして認識できない。
そんな鈴仙の困惑した表情を見て、輝夜は静かに微笑んだ。
「別に…それよりイナバ」
「はい?」
「今朝、遅刻したでしょう?」
立たされてたの見たわよ、と輝夜はまな板を見つめながら言った。
「あ…はい、ちょっとその…事故っちゃいまして…」
時間ギリギリで寮を出ているのは毎朝のことだが、今朝は妖夢と激突したために遅刻した。
それ以前に、時間ギリギリで登校している原因は輝夜にあるのだが。
「ごめんね」
「はぁ…え?」
鈴仙は己の耳を疑った。
輝夜が放った言葉が信じられなかった。
「わたしのために、朝御飯作ってくれて…それで、遅刻しちゃったのよね」
「いや、それはその、えーと、その通りではあるのですが一応」
「本当に、ゴメン…」
この後、鈴仙はさらに驚くことになる。
「ひ、姫…?」
気がつけば、鈴仙の身体は輝夜に強く抱きしめられていた。
自分の顔のすぐ横に輝夜の美しい黒髪があり、頬をくすぐる。
「わたしのせいで…わたしのために、あなたも…」
「え?えええ?」
何がなんだかわからない。
今日の輝夜はおかしい。何だか色々と。
「なのに…いつもお礼の一つもしないで、わたしは…」
耳元で響く輝夜の声は、微かに震えていた。
戸惑う鈴仙にも、輝夜の真剣さだけは十分に伝わった。
「姫…」
事情はわからないが、間違っても輝夜は鈴仙をからかっているわけではない。
それだけわかればよかった。
「明日から、ちゃんと早起きするから…」
「はい…お願いしますね」
鈴仙は自分も輝夜の背に手を回し、その身体を優しく抱いた。
******
「姫…」
「イナバ…」
「やっぱり食事はわたしが」
「(∩゚д゚)アーアーきこえなーい」
炭化したゴーヤチャンプルーを囲んで、2人は色々なことを話した。
友達のこと、授業のこと、明日からの生活のこと…。
皿の上の黒い物体が尽きることは無くても、話の種が尽きることは無かった。
「ささ、もっと食べて」
「姫、わたしには命は一つしかないのです」
「ここに蓬莱の薬が」
「いらん」
PM7:56
四季映姫・ヤマザナドゥは上機嫌だった。
乙女塾を開校してから約1ヶ月、その効果は予想外に大きいものだった。
(何だかんだ言いつつも…彼女達は確実に変わっています)
誰もいない廊下を歩きながら、映姫はポケットから何かを取り出す。
それは小さな手鏡――では、ない。
一見すると何の変哲もない手鏡に見えるそれは、実は携帯型の浄玻璃鏡。
すなわち、世における人妖の様々な「行い」を映す鏡。
(生きているうちに見るのは、少々反則な気もしますが)
映姫はいつも、この鏡を通じて生徒達を見守っていた。
24時間いつでも生徒の行動を監視している教師、と言うと聞こえが悪いが、そこは夜摩天の特権ということで一つ。
私生活を覗かれる側にしてみれば「ナズェミデルンディス!」の一つも言いたいところではあるが。
(見せてもらいましたよ、あなたたちの善行…)
その日見たものを思い出すと、自然に笑みがこみ上げてきた。
己の時間を投げ打ち、主のために尽くす従者達。
友の尊厳を守るために、財布の中身を投げ出した妖怪。
傷つくことも顧みず、運命に戦いを挑んだ死神。
そして、己の過ちを恥じ、正しき道を見出したダメ人間。
(ま、色々と問題アリな連中もいましたが…それはまたいずれ)
来月の目標は『予習復習をきちんとする』にしましょうか、それとも『持ち物の管理はしっかりと』…?
そんなことを考えながら、「塾長室」と書かれた部屋の前に立つ。
「さて」
今日は残ってやらなければならない仕事もない。
すぐに帰って…小町の部屋に寄ってみるのもいいかもしれない。
「マッサージでもしてあげようかしら。あの子の部屋番号は…」
そう言いながら塾長室の扉を開けた。
「ゆ~きち~♪ゆ~きち~♪た~っぷり、ゆ~きち~♪」
そこには、バールのようなもので金庫の扉をこじ開けようとしている夜雀の姿があった。
既に扉は5センチほど開き、その中身が見え始めている。
(いけない!あの中には…)
予想だにしなかった展開に一瞬呆然とした映姫だったが、すぐに気を取り直す。
急いで部屋の隅にあるエレキギター(冒頭で小町の脳天をジャストミートしたもの)を取る。
(大金と…そして通販で買った『寝るだけで背が伸びる スーパー背のび~る』が!)
ちなみに「寝るだけで背が伸びる スーパー背のび~る」とは何か?
それはベッドの四隅と両手足をスプリングでつなぎ、寝ている間に身長を伸ばすという夢のアイテムだ。
ぶっちゃけ寝るどころの話じゃないという激痛を味わう代わりに、手足スラリなモデル体型を実現するという。
今ならおまけに「定価700兆円・超快眠羽毛布団80枚セット」がついてお値段なんと20億14円!
ご希望の方は、今すぐこちらの番号までお電話を!
『TEL 110』
ちなみにこの番号にかけて何かあっても、僕(作者)は一切の責任を負いかねます。
「ゆ~きち~♪ゆき~ちたっぷりゆ~きち~がやってくる♪」
「待てこらぁ!!」
「ゆ~き…って、じゅ…塾長!?」
バールのようなものを手にしたまま、映姫が部屋に入ってきていることに気づくミスティア。
つーかもっと早く気づけよ。
「ふ…ふふ…ちょっとでもあなたたちを信じたわたしが馬鹿でした…」
「ち、違うんです!そ、その、奨学金の前借りを…」
「我が乙女塾にはそんな制度ぬぁ~い!!金庫破りは…犯罪ですよミスティア!」
そう言うと、映姫は持っていたエレキギターのボディをミスティアの鳩尾に叩き込む。
「ぐえっ!」
そのまま壁に押し付けられ、腹の奥から悲鳴(?)が絞り出される。
「な…なんで!?途中までの展開、どう見たってわたし和み担当キャラじゃない!?」
「関係ありません!話の終わらせ方に行き詰った作者が強引にオチを…いやなんでもないです!」
「ひいぃぃぃ!?」
理不尽な急展開に、ミスティアが恐怖の叫び声を上げる。
「だってだって、昼休みの出費で生活費が~!!」
「だとしても泥棒は犯罪です!ましてわたしの乙女の悩みに触れ…いやこれもなんでもない!」
映姫はエレキギターの弦を軽く鳴らし、チューニングを確かめる。
一見エレキギターに見えるそれは、実は雷の力を使った化け物退治用の武器である。
弦をかき鳴らすことによって電撃を発生させ、触れる者全てを感電させる恐ろしい代物だ。
名を「音撃弦・閻魔」と言う。
「ふっ…今から清めの音をあなたに叩き込み、その罪を浄化してあげます!」
「うひぃ!?」
「本来なら退学ものの大罪ですが…」
映姫の顔が仕事モードに変わる。
即ち、強大で無慈悲な閻魔の顔――地獄の鬼より鬼らしい、その姿はまさに『裁く鬼』。
「…あなたの昼間の英雄的行為に免じ、この場のお仕置きだけで許してあげます。ああなんて優しいわたし」
「い…いや…優しくして…」
「だ・め・で・す・よ・☆」
怯えた表情で「優しくして」なんて言うみすちーを攻撃できる人間がいるだろうか、いやない(反語)。
しかし四季映姫・ヤマザナドゥは人間ではないので「容赦せん!」なのである。
『音撃斬・閻魔裁き!!』
校則で、じゃなかった高速で動く映姫の手が、ぴんと張った弦をかき鳴らす。
そのストロークに合わせ、ハイゲインな爆音と――轟く雷撃がミスティアの身体に叩き込まれる。
「いっ…いやああああああああ!!!!」
その日ミスティアが最後に放った悲鳴は、紅魔湖の周辺全域に響き渡ったという。
教訓…ひこうタイプにはでんきタイプの攻撃で(そこか
寮の部屋に帰ってから、ミスティアはポケットに何か入っていることに気づいた。
ごそごそとその中を探り、中身を取り出してみる。
そこには、合計で1万円分の食券(塾生食堂で使うもの)、そして…。
『金庫の中身のことは誰にも言わないでください』
と書かれた手紙だった。
******
その年、人里の農家では苺が不作であった。
例年に比べ遥かに高騰した苺の価格に、人々は大騒ぎ。
後にこのときの騒動は「苺恐慌(ストロベリー・パニック)」と呼ばれ、里の歴史の1ページとなった。
山田閻魔帳文庫刊 上白沢慧音著 「幻想郷温暖化現象」より
そしてライア、斬鬼・・・このお二人が天国で良い余生(?)を過している事を祈ってます。
次があることを期待しつつ……
寝ますZzzzzz
あーと、……最後の最後に『1万!』ってのは半月かな?
それと、輝夜はね……輝夜は料理上手いよきっと。
春ということは夏以降も期待していいのでしょうか・・・・・。
小町×輝夜に何か来た。そして……魔界の皆さん……すげーとばっちり。
そして苺ほとんど関係無ぇーと思ったけれど些細な事なのであった
この先きっと乙女塾名物とかいって無理難題出されるんですね
これは続いてほしい、まじで!
内容も面白かったです。
そして私も続編希望で。
相変わらずだめ過ぎですね。龍騎とはまた懐かしい。
次はぜひ銀色のカブトムシで時を越える咲夜さんをお願いします。
内容はカオスでイイ!!
パロネタの多さ・面白さは勿論ですが、旧キャラを含め沢山の登場人物を無理なく活き活きと動かしたり、タイトルに仕込んだネタを最後の最後で突然出してきたりと、そうした話全体の作り方がすごい、巧いなぁ、と思いました。
他にも色々言いたいことがありますが、とりあえず一つ。
あ あ … マ ウ ン テ ン ・ テ ィ ム …
>ただ一人、アリスだけが「実家からの仕送りが今月はいつまでたっても
>送られてこない」と首を傾げていたが。
…神綺様(´;ω;`)
うどみょんはほのぼので良いですねぇ…。
あと、綺麗な輝夜が何故だかとても新鮮でした(笑
いじめ(笑)
似てね?