「暇だわ」
永遠亭の一室に2人の少女が存在していた。
そのうちの片方、黒髪に着物の少女『輝夜』がつぶやいた。
彼女は、ここ永遠亭の姫であり、とどのつまり偉いのである。
「それなら姫妹紅さんと会ってくれば……」
もう片方の、ウサみみの生えているブレザーの少女鈴仙(実質ペット)が提案するが
「だめよ。 この間、やり過ぎて周りに大きな被害が出たから永琳と白沢が凄く怒ってね、何日も桜の木の下に埋められたのよ。 だから、ほとぼりが冷めるまでやめておこうって妹紅と約束したのよ」
「姿が見えないと思ったらそんな事になっていたんですか……」
「ねえ、何か面白い事無い?」
「面白い事と言われても……あっ、そう言えば、この間師匠が変わった細菌を見つけたって言ってましたよ」
「細菌?」
「はい。 何でも、コレに感染したら身体が変な状態になってしまうらしいです」
「変な状態?」
「とても見ていられない状態になるらしいです」
「……よく解らないけど、面白そうじゃない」
輝夜は立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
「姫、どちらに?」
「永琳の所よ。 その細菌をちょっとね」
襖を開け出て行こうとするが、鈴仙に止められる。
「駄目ですよ。 危険です」
「大丈夫よ。 私は不死身なんだから」
そう言い残し、輝夜は走り去っていく。
「ああ、姫、待ってください」
永遠亭の地下にある永琳の研究所、輝夜と鈴仙はそこに侵入していた。
「何所にあるのかしら? 変な物ばかりで区別がつかないわ」
「やっぱりやめましょうよ。 師匠に怒られちゃいますよ」
「何言ってるのよ、此処まで来てやめられますか。 それに私は姫よ、姫が臣下の部屋を漁ったぐらいで怒られる訳ないでしょう」
「……確かこの間、師匠の日記盗み見ようとして怒られてませんでした?」
「ソレはソレ、コレはコレよ」
そう答え、輝夜は手当り次第に探していく。
「? コレは何かしら……うぎゃ、クサッと言うか鼻が痛い、ぐぅぉ~」
「こ、これかしらって、いたたたた、溶けた! 手が溶けた!」
「こ、今度こそ、ていっ……って何よ、何も起こらないわね? あれ? 此処は何処? 私は誰?」
「姫! しっかりして下さい。 それは記憶操作用のって、い、いや、えと、お、お仕置き用の薬ですよ」
「一体どこにあるのよ!? 見つかるのは変な薬?ばっかり、不死身でも身体がもたないわよ」
目当ての物が見つからず、酷い目にばかりあい、いい加減我慢の限界とばかりに怒り出す。
「もう諦めましょうよ。 きっと危険だから始末したんですよ」
鈴仙がそう言い、諦めさせようとする。
「むう~何処に始末したの?」
「それは分かりません。 師匠の事だから、きっと手の届かない所ですよ」
「ゴミ箱に捨てているんじゃないの?」
「ははは、まさか師匠に限ってそんな危険な事……」
入っていないと確信しながら、鈴仙がゴミ箱の蓋を開けると
「……んな、ベタな」
ゴミ箱の中には、青黒い何かが入ったフラスコが捨ててあった。
「何? 見つかったの? よくやったわイナバ」
輝夜は鈴仙に近づき、何やら呆然としている鈴仙の手からフラスコを奪う。
「確かに妙に怪しいわね。 どれ、早速開けてみましょう」
フラスコには蓋がしてありその蓋を取ろうとするが
「ぬぬぬぬっ、かったぁ~何よこれ、蓋が取れないじゃない!」
蓋はロウで封をしてあり抜けない様になっていた。
「ちょっとイナバ! 固くて蓋が取れないわ、どうにかしなさい」
「蓋が取れない様にしてあるという事は、危険な物って事じゃないですか、もうやめましょうよ」
「何言ってるのよ、これが目当ての物かどうかも判らないのにやめられますか! いいわ、イナバが開けてくれないのなら壊してでも開けるまでよ」
言うが早いか、輝夜はフラスコを壁にたたきつけた。
ガッシャーン
フラスコは砕け、中に入っていた青黒い物は飛び散った。
「うわ! ちょっ、きたな! 姫、危ないじゃないですか」
「仕方ないじゃない。 こうしなきゃ、中身調べられないんだから」
「割らなくても蓋の部分切り取るだけで十分でしょ? それに、調べるってどうやってですか?」
「……そんなの飲んでみたら分かるでしょ」
「今の間は何ですか!? それに、飲むってアレをですか?」
鈴仙の指差す先には、青黒い物体が床に飛び散りガラス塗れになっている。
「……さっ帰りましょうか、イナバ片付けよろしく」
「ええ~姫も手伝ってくださいよ。 散らかしたの姫なんですから」
「文句言わないの。 それともイナバは、主である私に床に跪いてブルマ姿で雑巾がけをしろというの?」
「そこまでは言いませんけどせめてウサみみを着けて……姫! 後ろ!!」
鈴仙に片付けを押し付け、一人先に帰ろうとした輝夜の後ろから襲いかかる物があった。
「え? きゃあ!?」
輝夜は後ろを振向くが、すでに遅く襲撃物は輝夜に覆い被さった。
「姫!? 姫、大丈夫ですか!!」
「つぅ~冷た~何よコレ、さっきの中身じゃない」
襲いかかった物の正体は、先程のフラスコの中身だった。
「何なのよ、コレは?」
「姫、御身体の方は何ともありませんか?」
「ん~特に変わった事は無いわね。 溶けたり、石になったりして、な……いし……」
「姫? どうかなさいました?」
言葉を途切れさせ、胸を押さえる輝夜。
鈴仙が声を掛けるが反応が無い。
「くっ……うぅ、身体が……か、かわる……?」
苦しげに呻き、輝夜は前のめりに倒れた。
「姫!? ちょっ、大丈夫ですか!? だから、やめようって言ったんですよ! 今、師匠を呼んできますので待っていて下さい!」
その言葉を聞き終える前に、輝夜の意識は途絶えた。
「これは一体どういう事なの!! 説明しなさいウドンゲ!!」
あの後、永琳を呼び輝夜を部屋に運んだのだが、輝夜は目を覚まさずときたま呻き声を上げるだけである。
永琳が診てみても判別できず、輝夜と一緒に居た鈴仙を問い詰めている訳である。
「そ、それが、研究室のゴミ箱にあったフラスコを姫様が割られたら中に入っていた薬が姫様に襲いかかったんです。」
「ゴミ箱に捨ててあったフラスコ……もしかして、中に入っていた薬って青黒かった?」
「はい。 青黒い薬の入ったロウで封をしていたフラスコでした」
「あれか……」
「師匠? 何か知っているんですか?」
「私の研究室にあったのに私が知らないわけ無いでしょ……あれは薬じゃあ無く菌……ウイルスよ」
「ウイルス?」
「あれの名前は『アスキーアートウイルス』略してAA菌よ。 この前みつけた、新しい未知のウイルスよ」
「未知のって……それじゃあ姫は……」
目を見開き、顔を青ざめる鈴仙。
「落ち着きなさい、ウイルスを除去する薬なら有るわ」
「え? だって、さっき未知のって……」
「未知よ、あれが感染したらどうなるか全く解らないわ。 でもウイルスを除去するだけならそんなに難しく無いわ」
「どういう事ですか?」
「簡単よ。 あのウイルスだけを殺す薬を投与すればいいのよ」
「そんなのできるんですか!?」
「私を誰だと思ってるの? 月の生んだ天才『八意 永琳』よ! できない事なんて無いわ」
「す、凄いです師匠!! 一生付いていきます」
「まあ、劇薬だからこんなの投与すれば患者も死ぬでしょうけどね」
「え」
「姫も不死身だし、一度ぐらい死んだって大丈夫よね」
この人に付いて行って大丈夫なのか、と不安に思い固まる鈴仙。
その間も輝夜は気絶したまま眠っている。
「それじゃあ、私は薬を取ってくるから姫をお願いね」
「はい」
「特効薬は有るけど、何が起こるか分からない未知なのは変わらないわ、気をつけてね」
そう言い残し、部屋を出て行こうとする永琳だが
「……ィ」
「あ、姫、気がつかれました?」
輝夜の声が聞こえたので目覚めたと思い、二人が振り返るとそこには
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,;'==-:::::::::.:.ヽ
!==-::::::::::..:i
ヒギィ>|!==-::::::::.:.:i.
|!==-:::::::::.:.:!
〈==-::::::::::.:.:!
<,、_,.__.、;.、〉
「「なんじゃこりゃーー!!!」」
輝夜が寝ていた筈の場所に、謎の生物が立っている。
「し、ししょう、もしかしてあれが姫なんですか? あのウイルスに感染したら、皆ああなるんですか?」
「お、おちつきなさい! あんなのでも姫なのよ!」
2人がワタワタと慌てていると輝夜(?)は
「ヒギィ? ヒギィヒギィ」
謎の鳴き声を上げ、部屋の中をぐるぐる回り始めた。
その姿は、何かを探している様にも見える。
「とりあえず、何か話しかけた方が良いのでは?」
「……ウドンゲ、あなたが話しかけなさい」
「ええ!? なんで私が!!」
「なに!? 姫とは話をするのも嫌だと言うの?」
「そうは言いませんけど……」
「ヒギィ!!」
2人が言い合っている間に、輝夜(?)は何かを見つけたのか一方を見つめたまま動きを止めた。
「姫? どうかな……」
「ヒギィヒギィヒギィヒギギギギヒギィ~~」
「「!!?」」
いきなり妙な叫び声を上げ輝夜(?)が外に飛び出していく。
「ちょ! 駄目ですよ姫、そんな状態で外に出ては」
永琳がタックルを仕掛ける様に飛びつき捕まえようとするが……
「ヒギヒギヒギヒギヒギヒギヒギヒギッ!!」
輝夜(?)の身体から出た、触手みたいな2本の手で乱舞され引き剥がされる。
「グハアァ!!」
「し、ししょ~~」
永琳を引き剥がした輝夜(?)は、外に飛び出し周囲を1度見回した後、ある方向へと飛び去った。
「師匠! 大丈夫ですか?」
「わ、わたしは平気よ。 それよりウドンゲ追いかけるわよ」
「はい。 姫は魔法の森の方角に飛んで行きました。 急ぎましょう」
「待ちなさいウドンゲ、薬を持っていくわ。 薬棚の2段目にある青いラベルのビンを取って来てちょうだい」
「わかりました」
「あと……アレを姫と呼ぶのは嫌だわ。 これからはアレを『ヒギィ』と呼びます。 いいわね」
「同感です。 了解しました」
鈴仙が薬品庫に向かった後、永琳はてゐを呼び出した。
「てゐ、何処にいるの? ちょっと来なさい、てゐ」
「な~に永琳様、今、下っ端兎を鍛えていて忙しいんですけど」
廊下の奥からワンピースを着た黒髪のウサみみ少女『てゐ』が現れた。
「それ所じゃないのよ。 永遠亭の恥部が外に飛び出したのよ」
「恥部?」
「アレの名前は『ヒギィ』頭から足の先まで髪で覆われていてヒギィと鳴く生物よ」
「な、なんでそんなものが……」
「詳しく話している時間は無いの、アレが誰かに知られたら永遠亭は破滅よ。 だから、追いかけて捕まえてちょうだい」
「わかりました」
「ヒギィは、魔法の森に向かったわ。 てゐは遠回りになるけど回りこんでちょうだい、私と鈴仙は真っ直ぐ追いかけるから魔法の森の入り口で挟み撃ちしましょう」
「はい。 それでは先に行きます」
てゐは近くに置いてあった杵を掴み、そのまま飛び出していった。
てゐが出てすぐに、鈴仙が薬瓶を手に帰ってきた。
「師匠、持って来ました。 コレですよね」
鈴仙の手には、青ラベルの貼ってあるビンが握られている。
「ええ、それよ。 さあウドンゲ、私たちも追いかけるわよ」
「はい師匠!」
こうして永琳と鈴仙の2人も飛び出し、追走劇が始まったのである。
「いました! 師匠、前方500、ヒギィらしき影を発見」
「足はあまり速くないみたいね。 よかったわ、魔法の森に着くまでに追いつけて」
永遠亭を飛び出し十数分、竹林と魔法の森の中間地点あたりで2人はヒギィに追いついた。
ヒギィはスピードはあまり出してはいないが、先程と比べて少し形が変わっている気がする。
「まあ、いいわ。 ウドンゲ捕まえるわよ」
「了解です」
そう答え、一発座薬型の弾をヒギィに向けて撃ち放った。
その弾は、ヒギィを掠めただけだが驚いたのかヒギィは動きを止めた。
「大人しくして下さい。 もう逃げられませんよ」
その言葉に反応して、ヒギィが鈴仙達の方に振向く。
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ヒギィ>|!==-::::::::.:.:i ;'=-:::.:ヽ
|!==-:::::::::.:.:! |!=-::::.::! <ピギィ
〈==-::::::::::.:.:! 〈=-:::::.::i
<,、_,.__.、;.、〉 <,、_.、;.、
「「増えてる!!!?」」
「ヒギィ?」「ピギィ?」
「し、ししょう、どうしましょう」
「あ、あわてないで、2体とも捕まえたらいいのよ。 大きいのは『ヒギィ』小さいのは『ピギィ』よ。 いいわね」
「名前に意味があるのか解りませんが、わかりました」
あまりの事に慌てまくる師匠と弟子。
それでも、何とか気を取り直して2体を捕まえようとするが
「大人しくしてくださいね」
「ヒギィ」「ピギィ」
ビシィビチィ
「あいた!」
捕まえ様とした鈴仙を、2体とも触手の様な手を使い払いのけた。
「何しているのウドンゲ、今のアレは姫じゃないわ『ヒギィ』と『ピギィ』よ、手荒にして構わないわ」
そう言い放ち、十数発の弾を撃ち放つ永琳、だが
「ヒギィィィィ」「ピギィィィィ」
ヒギィ、ピギィの手触手が全ての弾を打ち払う。
「くっ、小癪な事を」
「大人しくして下さい!」
鈴仙が座薬弾を放つが……
「ヒギィ」「ピギィ」
いともた易く避けられる。
「ウドンゲ、同時に仕掛けるわよ」
「はい、師匠」
永琳と鈴仙、2人が同時に弾を放つ。
「ヒギギギギギィ」「ピギギギギギィ」
2人の放った数十発の弾は、あるいは打ち払われ、あるいは避けられ、ヒギィピギィ本体には掠りもしない。
「ん?」
「くっ、師匠駄目です。全ての攻撃が防がれてます」
「いいえ、それは違うわ」
「え?」
「防がれたのは全部私の弾、あなたの放った弾は全て避けられたのよ」
「それって……」
「あの2体は、何故かあなたの弾を恐がっているわ」
ヒギィとピギィを見据え考え込む永琳。
2体は挑発する様に手触手を振り回している。
「何で、私の弾を恐がっているんでしょうね?」
「……そうか!! 判ったわ! ウドンゲ、あなたの弾が座薬に似ているからよ」
「は、はいぃぃ?」
「姫は暫く前に『CAVED!!』されてから少々トラウマを抱えていたわ」
「そ、それが何で私の弾幕を……」
「話しは最後まで聞きなさい。 つまりは、座薬→お尻→CAVEDと座薬→尖っている→角→CAVED、になるのよ!」
「そんな馬鹿な」
「信じられないかもしれないけど、これが真実よ」
永琳は弾を1つヒギィに撃ち放ち、次に鈴仙の弾に似せた弾を作りピギィに向け撃ち放った。
永琳の弾は打ち払われ、鈴仙似の弾は避けられた。
「見なさい、やはり座薬弾だけ触ろうともしない、ヤツ等はCAVEDを恐れているのよ!」
「……納得はできませんが、わかりました。 それなら、私が主に攻撃しますので師匠は援護をお願いします」
鈴仙が構え攻撃を再開しようとするが、永琳は構えようともしない。
「師匠?」
「違うでしょウドンゲ、援護するのはあなたよ」
「え? でも……」
「ヤツ等の弱点は座薬じゃないのよ」
「しかし先程、師匠自ら証明したじゃないですか」
「さっき言ったでしょ、ヤツ等はCAVEDを恐れているの座薬じゃないの、弱点は……お尻よ!」
「!!」
「さあウドンゲ、準備はいいわね、今度こそしとめるわよ」
「はい、師匠」
鈴仙が、座薬弾を放ち始める。
先程の倍以上の弾を放つが
「ヒギィ」「ピギィ」
先程と同じく、あっさりと避けられる。
しかし、避けてはいるものの数が多すぎ先程までの余裕は無くなっている。
自然と、2体の注意が鈴仙に集中し始める。
「ヒギィ」「ピギィ」
「ふっ、私に注意を向けるとは好都合、月兎の能力思い知れ!」
狂符『幻視調律』
「ヒギィ!?」「ピギィ!?」
月兎の瞳は狂気を宿している。 その瞳そ見たものは狂気に陥ると言う。
「ヒギィ」「ピギィ」
2体は、平衡感覚を失いふらついている。
なんとか弾幕は避けているが、時折掠り今にも被弾しそうである。
「師匠!! 今です!!」
「よくやったわウドンゲ。 さあ、これで終わりよ、角は無いけどコレで勘弁しなさい!!」
鈴仙に注意を引きつけている間に、永琳はヒギィ達の背後に回りこみその両手に注射器を持っていた。
片方は、普通の注射器より少し大きい程度だが、もう一方は腕の肘から先と同じぐらいの長さと太さがある。
中身は恐らく例の特効薬だろう。
「CcccAaaaVvvvEeeeDddd!!!」
ヒギィ達の背後から襲いかかり、腕を振り上げこれで終わったと永琳と鈴仙が思ったが……
ガブリ
「ひぎゃーー!!」
「し、ししょーーお!!」
注射器を挿し、これで終わりと思ったその瞬間、ヒギィの後頭部と思われた場所から口が現れ永琳に噛み付いたのである。
「いたいいたい! 放しなさい! いたいって!!」
ガブリガブガブリ
「ひぃぎゃぁ~~!?!」
ヒギィだけでは無くピギィまでもが噛み付き、永琳に歯形を付けていく。
「くそ! 師匠から離れろ!!」
鈴仙が座薬弾を放ち、ソレを避けるためにヒギィ達がようやく永琳を解放する。
「師匠! 大丈夫ですか?」
「うう、もうだめ……」
永琳の怪我は思ったより酷く、もはや満足に動けそうに無い。
「師匠、ここは一時撤退しましょう」
「駄目よ、アレを野放しにする訳にはいかないわ……それに、逃がしてくれそうに無いしね」
「ヒギィ♪」「ピギィ♪」
少しずつジリジリとだが、楽しそうにヒギィとピギィが近づいてくる。
「くっ!! 万事休すか!?」
「あきらめては駄目よ。 必ず何か手はあるわ、今は時が来るまで持ち堪えるのよ」
そうは言うものの、座薬弾は恐がるがヒギィとピギィは無傷。
対して、永琳は先程の噛み付きで死人一歩先と言う有様、鈴仙はダメージ自体はあまり無いが、鈴仙1人では到底勝ち目は無い。
「誰か……誰か助けて……」
鈴仙が、いもし無い誰かに助けを乞うが、当然誰も応えず助けてくれない。
「ヒギギギィ」「ピギギギィ」
ヒギィとピギィが跳躍姿勢をとり、目の前の獲物に襲い掛かろうとする。
しかし、その時
「……て…………」
「ヒギィ?」「ピギィ?」
「? 今の声は……てゐ?」
何所からかてゐの声が聞こえたと思い、鈴仙は周りを見回す。
「あ」
探していたてゐは、鈴仙が見つけた時には既にヒギィとピギィを手に持っていた杵で殴りつけていた。
「てゐ!!」
「ヒギィィ!?」「ピギィィ!?」
その一撃は凄まじく、ヒギィとピギィを地面に叩きつけた。
しかし、それでてゐの攻撃は終わらず倒れている2体を連続で殴り続ける。
「てゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐ光になれとは言わん! 光子も原子も残らず消滅しろ!! げへははははは、てゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐてゐりゃあ!!!」
「ヒギッヒギヒギヒギィギギギギヒギィ~~~」
「ピギッピギピギピギピギィギギピギギピギィ~~~~」
てゐの攻撃は凄まじく、もはや2体の形が残っているかも定かではない。
それを見た鈴仙は慌てて止めに入る。
「てゐ! もういい、ストップストップ!! やり過ぎよ!!」
「え~~まだまだ甘いよ、まだ生きてるじゃない」
「殺してどうするのよ!! 捕まえるのが目的でしょ!!」
「大丈夫大丈夫、生きてないけど死んでもいないって状態にするから」
「そういう問題じゃない!!」
てゐの捕まえる気があるのか判らない言葉にツッコミを入れる鈴仙。
そこに、全身歯形がついた永琳が声を掛ける。
「てゐ、助かったわ、ありがとう。 でも、少し遅かったじゃない」
「ソレはこっちのセリフですよ。 魔法の森の入り口付近で待ち構えていても誰も来ないから様子を見に来たら、二人が食べられかけてるじゃないですか、ビックリしたんですよ」
「食べられッて……ピンチだったのは事実だけど、さすがに食べられはしないわよ」
「え? でも、その歯形……」
「うっ、こ、これは何でもないの……そう言えば予定の場所は魔法の森だったわね、思ったよりアレの速度が遅くてだいぶ手前で追いついちゃったのよ。 報せるの忘れていたわ、ごめんなさい」
「ありがとうてゐ、助かったわ、後で人参あげるね」
命が助かり和みかける三人。
その時、倒れてもはや動けないと思われたヒギィがピギィを引っ掴み弾ける様に飛び退った。
「な!? まだ動けるの?」
「なんていう生命力」
ヒギィはピギィを自分の後ろに降ろし、手触手を振り魔法の森の方へ押しやろうとしている。
「ヒギィ! ヒギィヒギィ!!」
「ピギィ!? ピギィピギピギピギィ!!」
「ヒギ! ヒギヒギィヒギィ」
「ピギィー!!」
どんな会話がなされているか分からないが、どうやらヒギィがピギィを逃がそうとしてピギィがそれを拒んでいるようだ。
「何か、こちらが悪役みたいですね」
「何言ってるの、悪役も何も無いわ」
「と、言いますと?」
「これは愛、あの2体の愛よ。 まさか、ウイルスで変化したとは言え姫のあんな姿を見ることができるなんて……」
「ああ、泣かないで下さい師匠……あれが、姫の真の姿かもしれませんね」
永琳がむせび泣き、鈴仙がそれを受け止める。
自分も大怪我を負っているのにピギィを逃がそうとするヒギィの姿に感動した結果である。
それで、三人の内もう1人てゐはどうしているかと言うと……
「やかましいわ、お前等!!」
ドグォ
「ヒギィ!!」「ピギィ!!」
「さっきから聞いていたらヒギピギヒギピギ煩いんじゃあ!! そんなに相方が心配なら2体ともここで一緒に潰してやるわ!!」
ドゴォドガドゴオオン
何やら言い合いをしていた2体を、杵で叩き伏せた後更に叩き潰していく。
「ウラウラウラウラ、たかが毛玉の突然変異が迷惑掛けてんじゃない!! 死ねや!! オラァーー!!」
「てゐ!! ストップ!! 姫! 姫だよソレ!!」
鈴仙のその言葉に、更に杵を叩きつけようとしていたてゐの腕がピタッと止まった。
「……姫? これが?」
「そうだよ! だから、もう殴っちゃ駄目! いいね!!」
「いや、まあ、もう殴らないけど……」
てゐが叩き潰していた場所、てゐが叩きすぎたせいかソコはへこみ過ぎて、もはや穴と言ってもいいぐらいになっている。
その穴の中をのぞいてみると……
「……生きてるかしら……これ」
ヒギィとピギィは完全に気を失い、もはや毛玉か血玉か判らない状態になっていた。
~~数日後~~
「おほほほほ、どうしたの妹紅? 久しぶりだと言うのにその程度なの?」
「やかましい! それを言うならお前もだろうが、暫く殺ってなかったから腕が鈍ついたか!?」
竹林の一角、そこで妹紅と輝夜二人の少女が戦っている。
「そんなにお望みなら見せてあげるわ。 私の新しい力」
神宝『ブリリアントドラゴンバレッタ』
輝夜がスペルカードを使い強大な弾幕を張る。 だが
「はん! 何処が新しいんだ? こんなの見飽きたぜ、今日は私の勝ちだ! 喰らえ」
滅罪『正直者の死』
輝夜の弾幕の隙を突き妹紅がスペルカードを放とうとする。 しかし
「今よ!!」
「何!?」
しんぽう『ぷりりあんととらごんぱれっちゃ』
今、正に妹紅がスペルカードを放とうとした瞬間、いきなり輝夜の背後から小柄な人影が飛び出しスペルカードを放ったのだ。
輝夜の放った弾幕の隙間を縫い、攻撃を仕掛けようとした妹紅にはもはや逃げ場は無く避ける事も迎撃する事もできず被弾した。
「のぅわ~~こ、このひきょうもん~~」
負け犬の遠吠えを残し、妹紅は被弾したせいで色々と取れかけながら落ちていった。
「良くやったわ、こぐや」
妹紅を墜とした影を輝夜が褒める。
その影は、髪型や服装まで輝夜とそっくりで違う所と言えば身体の大きさぐらいである。
小輝夜、こぐやは輝夜の頭より少し大きい程度で、人形遣いの人形とあまり大きさは変わらない。
「これぐらい、たいしたことないでしゅわ、おーほほほほ」
「ふふ、私に似て生意気ね。 でも、ソコが可愛いわ。 スリスリ」
「わっ、やめるでしゅかぐや、くすぐったいでしゅ」
2人は仲睦まじく、まるで親子や姉妹の様である。
そんな2人を、離れた場所から見つめる姿があった。
「師匠、これで良かったんでしょうか? 私には、問題が増えた様な気がするんですが?」
「しかたないでしょ。 ヒギィとピギィ2体共に薬をうったら2体とも姫になっちゃったんだから」
数日前の事件の後、気絶しているヒギィとピギィに薬をうつと輝夜が2人に増えてしまったのだ。
その時に、大きい方をそのまま輝夜として小さい方をこぐやと名付けた。
そして今は、増殖したのか分かれたのか判らないが、1人の人間が2人になった影響が無いかと思い輝夜達を監視している訳である。
しばらく2人を見続けていたが、やがて永琳が
「それじゃあ、私は研究が残っているから後はお願いね」
「はい、わかりました師匠」
鈴仙に輝夜達を任せ研究室に戻る永琳。
永琳は研究室に戻ると1人呟いた。
「ふう、今回はまいったわね。 まさか、ゴミ箱に隠していたのが見つかるなんて」
永琳は、調合中の薬液をフラスコに入れながら更に呟く。
「コレは、まだ外に出すには早すぎるわ」
フラスコの中に別の薬液を入れる、するとフラスコの中身が青黒く変化した。
「コレをもっと大量に作らなければ、それこそ幻想郷を覆いつくせる程に……」
永琳は、足元、継ぎ目の無い床の一部、模様としか思えなかった場所に指を引っ掛け隠し扉を開く。
その中には、青黒い薬品の入ったフラスコが大量に保管されている。
「コレが出来上がれば、幻想郷は私の物……」
永琳の姿がぼやけ、新たな影を作り出す。
その姿はまるで……
「そう、このヤゴコロの物!」
,.へ
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'r.'´ノリλノリ〉-'
〉从!゚ ヮ゚ノ>、|
'y ` `〈_iノ
く,O,_;_i_」
!,ン'!,ン´
! 〈╋ !
ゝ-─-イ
|(・)。(・)| ( )
|ヾ三ヲ└'ノ
| l´
しかしまぁ…君はやりすぎたな
割と本気で。
しかしこれ等はアリ友スレの超混沌世界だからこそ許されるものだと思うんだ。
だからこう言う場所に飛び火してはいけないと思う。あくまで個人的感情だが。
後これも個人的な意見。
AAはあまり使って欲しくない。理由として、『挿絵のような物が無いと文章が成り立たない』みたいな感じに見える。
無くても成り立つ文章があって……ならまだ許容できるのだけれど。
まぁ酷評みたいになってしまったけれど、文章は気になるほどでも無いので。
次に期待すると言った意味合いで20点
AA使って面白くなるならOKだろうし、文章力なくても面白ければ良んじゃないかな。
ここ、小説家養成サイトじゃないんだから。
得点は簡易で入れたのでフリーレスで。
ってのはあまりにも不特定多数を相手にするには不親切かと思われます。
後AAがズレてる時点で見直しとかしてないのがバレバレで残念です。
私も個人的意見になりますが、
こういうのは自サイトとかでの公開が適切ではないかと思います。
少し厳しいかもしれませんが、次回への活として頂きたくこの点数にしました。
自分はそれなりに楽しめはしたが・・・
やはりこれは、アリ友スレの中でのみ存在しうる混沌なんだなぁと思いました。