Coolier - 新生・東方創想話

紅魔館就職案内ツアー

2006/10/02 03:16:46
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 紅を基調とした装飾が施された部屋、そのふかふかとした豪勢な椅子に、一人の少女がおそるおそる腰掛けた。
 見たこともない大きな部屋、そこに入ったその少女は、二つ三つ深呼吸をすると、ゆっくりと前を見つめたのだった。



 彼女の手には二枚の紙が握られている、その内の一枚には『簡単で安全な仕事で超高給!良識ある主人と、面倒見のいい上司、そして優しい同僚達に囲まれて仕事をしてみませんか?もちろん三食昼寝つき、有給もたくさんで気が向けばすぐに実家へ帰省できます。経験未経験、妖怪人間問いません。締め切り迫る!連絡は紅魔館まで』と書かれており、もう一枚には『おめでとうございます。貴方は当館の書類選考試験を突破されました、一週間以内のご都合のよろしい日に当館までおいで下さい。ご要望があればご自宅近くまでお迎えをお出しします』と書かれていた。
 
 最近家計が苦しいという親の呟きを聞いたその少女は、ちょうど家に舞い込んだその広告を見て、あまりに都合のいいその内容を怪しみながらも、この試験に申し込んだのだった。

 その翌日、すぐに届けられた一枚の紙、それが合格通知だったのだ。



 あまりの素早さに不安は膨らむが、ここまできてはどうしようもない。少女は覚悟を決めて扉を見据えた。







 さて、しばらくして、部屋に羽根を生やした赤毛の少女が入ってきた。
 手には二つカップを載せたお盆、彼女は、扉を閉めると口を開く。



「ようこそ紅魔館就職案内ツアーへ、あなたは百倍に上る書類選考を突破なされた優秀な人材です。そんなあなたに新しい職場の素晴らしさをお伝えするのがこのツアーの目的なのです、私は担当の小悪魔と申します、よろしくお願いしますね。…え?まだ入ると決めたわけじゃない?いえいえ、このツアーを終えた時には必ず『ぜひ就職させて下さい』っておっしゃる筈ですよ、ええ、間違いありません。ひとまず、紅魔館が誇る紅茶をどうぞ」

 そう言って彼女は微笑み、湯気が漂う紅茶をテーブルへと置いた。紅い部屋の紅い少女が差し出した紅い紅茶は、何やらお茶とは違う香りを漂わせていた。
 少女は訝しげにそれを見つめ、飲むのをやめる。



「あれ…飲まないんですか?この紅魔館の紅茶は、いろいろな方に好評だというのに…じゃあ私がお先し…げふっ!?」

 目の前の少女が紅茶を飲まないのを見て、彼女は紅茶を口に運び…ついで噴き出した、テーブルが紅く染まり『血の匂い』が周囲に漂う。
 




「けほっこほっ…あ、大丈夫です、ありがとうございます、うう…昨日から風邪気味で鼻がお馬鹿になっていたから…レミリアさまのと間違えちゃった…はっ!?」
 小悪魔はしばらくむせた後、背中をさすってくれている少女の方を振り向いた。



「…こほん、紅茶を飲んだ所で早速厨房へと向かいましょう…え?飲んでない、噴き出しただけ?しかもそれ『紅茶』じゃないんじゃないかって?まぁまぁ、紅魔館が誇る大厨房ですよ、運がよければお菓子とかにありつけるかも…役得役得…じゃなくてともかく、ほら行きましょう」
 半分あきれたような顔をしている少女を見て、小悪魔は話を強引にねじまげ、ついでに強引に少女の手を引き扉へと向かう。



「さぁ、紅魔館の素晴らしさを伝えるツアーに出発ですっ!!」
 陽気に言った小悪魔の背後には、延々と続く廊下。果てしなく続くかと思われるその廊下に、二人は足を踏み入れたのだった。










「どうです?見た目より遥かに大きいでしょう、この紅魔館には空間を操る力を持った方がいるので外見より遥かに大きな内部空間があるのですよ。もちろん居住性もばっちりです」
 しばらく進み、どうですかどうですかと少女の周囲をぐるぐるとまわる小悪魔に、少女は適当に相槌をうちつつならばその個室を見せて欲しいと注文する。

 途端に小悪魔の動きが止まった。



「あ…えーとっほら、やっぱりよそ様の部屋を覗くというのは…いえいえ見せたくない訳ではないんですよ、むしろお見せしてその素晴らしさを知っていただきたいところなのですが…え、いや誤魔化してなんていないですって!あーもう交渉がうまい方ですね、さすがは一万人に一人の逸材です。仕方ない、お見せしますね」
 羽根をぱたぱた、目をきょろきょろとさせていた小悪魔は、そう言うとくるりと針路を変えて近くの階段から階下へと降りる。



 階段を下りながら、小悪魔は口を開いた。



「あ…えーと、今現在居住区は改装中でして…『その期間だけ』少々手狭になっているのですよ。…そんな疑いの目で見ないでくださいよ、悪魔は人を騙しません!…だからそんな「説得力ゼロ通り越してマイナスですよ?」っていう視線はやめて下さい。ほら、ここですよここ」
 しどろもどろな小悪魔は、やけだとばかりにとある部屋の扉をがらっと開いた。



 その部屋には、整然と並べられたベッドが12台、そしてその奥の部屋には同じく綺麗に片付けられた机が同じく12並んでいた。

「あの…その…これはあくまで『改装中』だからこうなのでして、普段はちゃんと一人一室…え?私の家に比べればとても綺麗で広い?布団が藁じゃない!?あ、ご満足いただけて何よりです。…でもこんなタコ部屋より狭い所なんて…この子一体どんな所に住んで…あいえ、なんでもありません!さぁ心ゆくまでご覧になって…はい?この言葉の意味ですか?」
 


 勢いを取り戻した小悪魔に対し、少女が指差したのはおのおのの机に張られている妙な標語だった。それを見た小悪魔はしばし考えてから口を開く。



「『滅私奉紅』?あ、これは私が滅びるまで紅魔館が私に尽くしてくれるという意味ですよ、『月月火水木金金』っていうのは土日がなくても十分な位毎日が土日気分っていう意味です。『欲しがりません給料は』これはお給料がなくても、毎日のご飯が美味しくてお洋服もたくさん支給されるので十分っていう意味です。…あ、時間なのでそろそろ次に行かないと、ほら行きましょう行きましょう!」
 小悪魔はそう言うと慌てて少女の手を引き部屋から出た。






「あ…ははは、予定がずいぶん遅れてしまいましたね、急いで厨房に向かいましょう」
 そう言って駆けていく小悪魔だったが、前方に一つの人影を見つけると、少女の手を引き慌てて近くの通路に隠れた。



「危ない危ない…パチュリーさまなんて見られた日にはイメージダウンが必至なのに。もう…せっかく図書館を避けていたのに何で歩いてるんだろう。…あ、私が紅茶淹れれなかったからね」
 小悪魔は、思考が口からだだ漏れているのに気づかず、パチュリーをやりすごす。



「…あ、失礼しました。ちょっと物陰に入りたくなったので…ええ、それが悪魔の習性なんですよ、ホント。…え?今通った人は誰かって…気のせいでは?気のせいじゃない?う…さすがは十万人に一人の逸材ですね。え~とその…彼女はこの館に巣くう居候さんなんですよ、『パチョリー』さんです。飲む、読む、寝ると三拍子そろったぐーたら少女でして、ええ、上司でもなんでもありません。あんなのが指示することなんて何もないのでご安心下さい。ちゃんとした上司は別にいまして…はい、あ、ご主人さま…レミリアさまって言うんですが…も素敵な方ですよ、威厳たっぷりでそれで優しく明るい…ってレミリアさま!?」
 


 さて、小悪魔の視線の先にはふらふらと歩んでくる羽根つき少女がいた。そして…



「パチェ…何で紅茶を飲むのに私を誘ってくれないのかしら?小悪魔は仕事のはずなのに…私を嫌いになったのかしら…何を考えてるの私は…でも…ああこの前図書館の予算倍増計画を断ったのがまずかったのかしら…でも先月も上げたばかりだし…3割増じゃ不足だったのかしら…パチェ…」


 
 彼女は、パチュリーをふらふらと追いながら、えらくネガティブな発言を繰り返していたのだった…


 周囲を沈黙が支配する。







「………あ、いえ、あの方はレミリアさま違いでして…その…あ!そうそう、あの方は『レミリア・スカーレット』じゃなくて、レミリアさまの影武者の『レミリア・ストーカー』さんなんですよ、ええ、外見はそっくりなんですけどほんとネガティブで、ええ、あんなのが主人なはずないじゃないですか。やってられませんよ本当、ほら、あんな変なのの事は忘れて次に行きましょう次に」
 しばらくして、慌てたように言う小悪魔は、無言の少女の手を引きながら長い廊下をずんずんと進んでいったのだった…








 十分ほど歩いた後、小悪魔は一つの扉の前で停止し、少女の方に顔を向けた。
「はい、ここが我が紅魔館が誇る大厨房です。和気あいあいと皆さんが仕事なさっておりますので、さぁその様子をご覧下さい!じゃじゃーん!」
 効果声つきで巨大な扉が開かれる。


 その扉の先にあったのは…





「タンドリーチキンはまだっ!きのこスパはっ!!!」
「両方とも調理完了せず!応援を求めています!!」
「支援は期待するなと伝えなさい!から揚げ担当のC班がすでに油火災で手ひどい損害を受けているのよ!予備人員なんてどこをさがしたっていないわ!!」
「パンプキンパイが焦げましたっ!!」
「何ですってっ!担当者は懲罰室送りよ!!」
「助けてっ許して下さいっ!!」
「連れて行きなさい」
「いやー!!」
「メイド長!今懲罰室に人員を送る余裕は…」
「規律を守るのが紅魔館メイドの紅魔館メイドたる所以よ、それはどんな時にも変わらない」
「は…はい」
「生ごみ処理方面隊が崩落事故に遭遇、被害状況は不明ですが相当数に上る模様!!」
「詳しい状況を知らせよ!」
「クレープ担当のF班が支援を求めています」
「くっ!ポテトサラダのH班が終了間近なはずでしょう!急かしなさい!!」
「H班より緊急連絡、ポテトが不足している、至急補充されたい。このままでは我が班は調理不能に陥ると…」
「何ですって!じゃがいもは厨房だけで100キロあったはずでしょう!!」
「それが…昨日の晩突如侵入してきたチャイナ服を着た少女に生のまま半分食べられたとかで…」
「美鈴ね…ただじゃおかないわ。あと警備担当者も懲罰室送りよ、わかったわね」
「了解!!」
「G班作業終了、今後の指示を求めています」
「G班に伝えなさい!速やかに倉庫からじゃがいもを輸送しH班へ渡し、しかる後にタンドリーチキン担当のA班を支援せよと」
「了解!!」
「E班班長代行より、生ごみ処理方面隊はB班D班が生ごみに埋もれ全滅、E班も悪臭により被害甚大の模様。尚、班長が救出作戦中、二度目の崩落を受けあえない最期を遂げたため、現在アサヒが指揮を執っています」
「了解!みんな頑張るわよ!!一人倒れれば二人目が立ち、二人倒れれば三人目が立ちなさい!調理急げ!!」
「「「「「おー!!!」」」」」




 苛烈な戦場だった。小悪魔はゆっくりと扉を閉じる。



「咲夜さん…あれほど「今日はおとなしくしておいて」って言ってたのに何でこんな…っていうかパーティーの予定なんてあったっけ?」




 しばし考え込んだ小悪魔は…全て口から出ているが…しばらく考えた後、気づいたように慌てて言った。
「あ…とですね、これはその…え~と…劇の練習なんです劇の練習!ほら、料理なんかでこんな戦場ができるなんてあり得ない話じゃないですか、ね。だからそんな疑惑の目でこっちを見ないでくださいよー」





 ほんとですよーを連呼しながら、小悪魔は廊下を歩き出す。





「えっとですね、来週『紅魔館文化祭』があって、その練習をするって聞いていたのを忘れていました。練習の邪魔しちゃ悪いですし次の所に向かいましょう」
 そんなことを言いながらあたふたと厨房から離れる小悪魔は、しっかりと少女の手を握り廊下を進む。







 しばらくして…







「え?何処に向かっているのかって?…何処でしょう?ああああ違います、あてもなくただただ厨房から離れようとしているだけで、決してしっかり目的地を決めている訳ではないのですよ。あれ?あ…あのーなんでそんな悲しそうな目をして私の頭をなでて下さるのですか?」






 二人の少女はさらに廊下を進む、と、しばらくして小悪魔は落ち着いたのか再び胸を張って話し出した。

「えーっとほら、実は見ていただきたかったのはこの廊下なんですよ。首…もとい塵一つ落ちていないこの美しさ、衛生的でとても安全、これがこの紅魔館の…え、私の後ろに何が…」
 誇らしげに語る小悪魔、だが、小悪魔の言葉はそれ以上は続かなかった。震えながら小悪魔の背後を指差す少女、そこにいたのは…



「ひっ!?」
 小悪魔が少女に抱きつく、そう乙女の敵にして不衛生の象徴、『奴』だ。しかもその大きさたるや、虫というよりも牛、いや蟲だった。
 巨大な『奴』は、二人のやや後方に悠然と停止していた。





「パチュリーさまっ!またっ!?…逃げましょう!!」 
 震えながらこくこくと頷く少女を背に乗せて小悪魔は猛進する、途中で花瓶をいくつか叩き落したが、小悪魔にも少女にもそれを気にする余裕などはなかった。



「わーんっ!追っかけてくるー!!」
 小悪魔は叫びながら全力飛行する。しかし、『奴』は、なぜか彼女を追跡し、しかも地を這いつつも徐々にその差を詰めてくる。





「助けてっ!パチュリーさまー!!」
 小悪魔がそう叫んだとき、少女が何かに気がついた。




「え…ちょ…どこ触って…やめてくだ…」
 少女は、小悪魔の服をごそごそと漁り、何かを『奴』へと放り投げた。





「あっ!?私のクッキー!!」
 次の瞬間『奴』は急停止し、クッキーを食べだした。その隙に、小悪魔は全速を出して『奴』を振り切る。











数分後

「うう…私のクッキーが…でも、あの場合仕方が…あっ!!」
 辛うじて『奴』を振り切った小悪魔と少女は、最初の部屋へと逃げ込むと、しっかりと扉を閉めて一息ついた。
 
 そして、小悪魔が自分たちの身代わりとなって散っていったクッキーに追慕の念を見せてから数分、彼女は気づいたように少女を振り向く。




 

 そして満面の笑みを浮かべてこう言ったのだ。

「あ…え~とですね、おめでとうございますっ!あなたは見事この紅魔館メイド採用試験に合格なさいました!!実はさっきの『奴』は、文化祭用に作られた人形だったのですよ。本物そっくりだったでしょう?なんてったって紅魔館裁縫部門の傑作ですから。決してパチュリーさまの魔法で巨大化したのではないのですよ。…え?そのわりにあなたは慌ててたって?いえいえまだまだ甘いですね。あれは演技ですよ『え・ん・ぎ』。騙されちゃったでしょう。だってほら、あんな巨大な『奴』なんて生物学的にあり得ないじゃないですか、ね。あの状況でいかにあなたが適切な措置をとるかの試験だったんです。まさかあんなに機転が利くなんて予想以上です。さすがは百万人に一人の逸材ですね」

 言い終わると小悪魔は『契約書』と書かれた紙を差し出してこう言った。

「なので早速この紙にサインを…ほらさささっと…いや、ずざざざじゃなくて…って待ってください!何一目散に逃げ去っているんですか!!待って!!待って下さい!!!…こちら強制徴募隊の小悪魔です、ターゲットに逃げられます、速やかに緊急配備をしてください。あ、ちょっと大丈夫ですから待って下さい!ほらちょっと紅茶でも飲みながらお話を。…ターゲットは門に向け逃走中です、速やかに門番隊に伝えて下さい。ちょっと誤解があるみたいですから話し合いましょうよっ!!ねぇっ!!!」









 一目散に少女は逃げる、この場で捕まったら生きてここを出るのは不可能な気がしたのだ。だが、必死で逃げる彼女の前面に、門番隊の整然とした横列が立ち塞がった。



「おとなしく私たちの仲間になりなさい!今欠員が多くて大変なのよ!!J班でもらうわ!!」
「何言ってんの!!あんたの所は欠員5名じゃない!うちなんてこないだのどぶさらいで一気に7名の欠員が出てるのよ!!」
「こっちなんて花火大会で戦力半減よ!うちでもらうわ!!」



 少女の脳裏に、親、兄弟、友人、そして勉強を教えてくれた先生の顔が浮かんでは消えた。だが、皆に会えることはもうないだろう。おそらく目の前の集団に連れ去られて、二度と故郷の土を踏むことはできるまい。





 だが、少女が諦めて目をつぶった時、門の上空に二つの影が見えた。





「大丈夫かっ!!」
 少女の上空に達した影が叫び、少女を庇うようにして舞い降りた。少女が「慧音先生!」と言って抱きついた。





「…最近里に妙な宣伝文がまかれていると思ったら、こうして子どもたちをかどわかそうとしていたんだな!許さないぞ!!」

 いきなり現れた慧音に、今度は小悪魔達が慌てだした。

「あ…いえ、これは誤解なんです。私たちは人手不足の紅魔館に、優秀な人材を集めようとしていただけで、決して無理やり連れ去ろうなんて考えては…」
 なんとか事を穏便にすまそうとする小悪魔だが、早とちりと思い込みの激しさががとりえ(?)な慧音は聞く耳を持たなかった。

「嘘をつくな嘘を、人間を…子どもをかどわかそうなんて許せない。妹紅、頼む」
「はいはい、慧音は熱いねー今から私がもっとここを熱くするけど。凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-!!」
 慧音が少女を連れて離脱すると同時に、上空のもう一人…妹紅が強力な弾幕を放つ、たちまち紅魔館門前は大混乱に陥った。



「熱いっストップ!美鈴さんはっ!!」
「さっきメイド長に呼び出されて真っ青になりながら館内に向かいました!」
「パチュリーさまはっ!?」
「いつも通りむきゅーになっています!レミリア様はなぜか満足げな表情でその付き添いに!!」
「咲夜さんはっ?」
「懲罰に忙しいとかで現在通信不能です!!」
「わーん!!!」
 小悪魔と、門番隊は炎から必死に逃げ惑う。火勢はますます強く、門はたちまちその炎に呑み込まれた。





「西棟消火不能、総員退館命令が出ました」
「東棟危険な状況、美鈴様の小屋は大破炎上中!」
「正門崩壊!!」
「この区域はもう駄目だ!総員退去!!」







 この日、紅魔館の正門区画はその92パーセントを焼失し、多数の負傷者を出した。
 そして、その復旧と、負傷者の影響で紅魔館がますます人手不足に陥ったのは言うまでもない。





『おしまい』
















































おまけ

 事件の夜、一人瀟洒な笑みを浮かべている少女がいた。

「ふふ、急いでパーティーを立案してメイド達に無茶をさせて…ワーハクタクにこの事を知らせて…色々手間をかけた甲斐があったわ。これでしばらくメイドに志願してくる輩もいないでしょう。なんとか欠員を増やして、お嬢様のお世話係を独占しないと…未熟な他のメイド達にお嬢様のお世話なんてさせられないわ」

 彼女はそう言って再び微笑む。

「もう、パチュリー様にしろ小悪魔にしろ、人が足りないから補充しようだなんて…迷惑ね。まぁこれで計画は成功、もうちょっと欠員が出たらお嬢様のお世話係は…え?」





 その時、彼女の部屋の扉がゆっくりと開き、何かが侵入してきた。



 侵入してきたのは巨大な『奴』、だが、彼女は一瞬の驚きのあとすぐに落ち着きを取り戻し、言った。



「あら?…裁縫部門ね、とっさの機転はさすがだったわ。本物そっくりのその『奴』で驚かそうなんて表彰ものよ。ありがとう…何黙っているのよ?わかったわ、来期の予算は二倍増よ、今伝えるわね。…裁縫部門?私よ、ええ、今日の巨大ゴ○ブリはよかったわ、来期の予算は…え?知らない?試作型は気持ち悪いので全て焼却処分して以後作っていない…え…じゃあ私の目の前にいるのは…え?」

 『奴』がゆっくりと動き出す、そして羽根を拡げ…







「きゃー!!!!!!」
 甲高い悲鳴と、恐ろしい羽音の後、その部屋に静寂が戻ったのだった。





今度こそ『おしまい』 
 ここまで読んで頂きまして本当にありがとうございます!そしてごめんなさい、ちょっと調子に乗りすぎましたorz
 この物語は、久しぶりに『ギャグ』として仕上げたつもりです、なので、登場人物がびみょーに腹黒かったりします。いつものようなほんわかストーリーをご希望の方には申し訳ありませんでした。
 
 あと、この物語のセリフがない主人公、実は私のいくつか前の作品×2に出ていた少女です。もちろん、前作を読んでいなくても大丈夫ですが。
 この物語は、悪巧みは人を不幸にするという教訓と、一見しっかりしている少女でも『就職』の時には焦るあまり怖い体験をしてしまう…みたいな感じで書きました。彼女が誰か気づいた方はにんまりして下さい、気がつかなかった方は是非とも私の過去作をお読み…ごめんなさい、嘘ですごめんなさい。
 

 
 それでは今回はこの辺で、そしていつも通りご意見ご感想をお待ちしています。どうかよろしくお願いします。なんかお返事が二週間後とかになりそうですが…orz
アッザム・de・ロイヤル
[email protected]
http://blogs.yahoo.co.jp/s310hantou
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コメント



0.3450簡易評価
8.100名前が無い程度の能力削除
キタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━━!!!
10.100名前が存在しない程度の能力削除
  _, ,_
キタ━━━━( ゚∀゚)━━━━━!!!
24.80名前が無い程度の能力削除
何でドブさらいで7人もリタイヤすんのw
紅魔館は地獄やで…
29.90名前が無い程度の能力削除
巨大G再びか?w

>こちら強制徴募隊の小悪魔です
こぁ~!w
36.100SETH削除
レミリアさまって超乙女じゃん!
静かに妹紅かっこいいなあw
37.80思想の狼削除
オイシイ話には裏がある…。正にその通りだと思いマス…。ガクガクブルブル
38.80とらねこ削除
 美鈴、よっぽどおなか空いてたんでしょうね。正直、「紅魔館過酷な勤務もの」
はちょっと苦手・・・・・・かな。
46.80Tnk.Ds削除
紅魔館の面々のこのぶっ壊れっぷりが凄いですね。
ラストの巨大Gを目撃した咲夜に合掌・・・
58.70名前が無い程度の能力削除
いんが おうほう とは このことか
67.無評価アッザム・de・ロイヤル削除
たくさんのご感想、本当にありがとうございました!

>名前が無い程度の能力様
>名前が存在しない程度の能力様
 そう言って頂けるとありがたいです。久しぶりの紅魔館ギャグです、前回とちったのでちょっと心配だったのですが、今回の結果を見てほっと胸をなでおろしております。

>二人目の名前が無い程度の能力様
 >何でドブさらいで7人もリタイヤすんのw
 >紅魔館は地獄やで…
 そう、それは『どぶさらい』という名の戦場なのです、その実態は(検閲削除)という恐ろしいもので、被害総数は(検閲削除)にのぼったとのことです。

>三人目の名前が無い程度の能力様
 >巨大G再びか?w
 はい、やっちゃいましたww
 なんてったって第一次乙女戦争でも苦い敗…いえ、なんでもありません。

>SETH様
 そりゃあレミリア様は乙女ですからーww
 そして、妹紅って結構強いと思うのですよ。

>思想の狼様
 >オイシイ話には裏がある…。
 それが今回の裏…いや表かな…テーマです。人間焦るとだめですねーはぁ。

>とらねこ様
 >美鈴、よっぽどおなか空いてたんでしょうね
 多分、度重なる防衛失敗で支給食料が減らされて…
 >正直、「紅魔館過酷な勤務もの」はちょっと苦手・・・・・・かな
 うーん、やはり調子に乗りすぎましたか…気を悪くされたのなら申し訳ありませんでした。でも多分私の頭の中でこんなイメージになってしまっているのでこれからもこんな感じになってしまうかと…orz

>Tnk.Ds様
 >紅魔館の面々のこのぶっ壊れっぷりが凄いですね
 回を重ねるごとにどんどんぶっ壊れていっている気がします。まもなく登場予定な妹様(一回も出してない…)は果たしてどうなることか…
 実は作者も書き出さないとわからなかったりするのです。こらこら…

>四人目の名前が無い程度の能力様
 >いんが おうほう とは このことか
 はい、まったくもってその通りですね。やっぱり古典的ながら、勧善懲悪のほうがしっくりくるかと思ってこうなりました。
 
74.80削除
ポッケに手を突っ込んだ妹紅が、「よくもうちの後輩に手ェ出したね」と言ってる頼もしいアネゴに見える…
79.100時空や空間を翔る程度の能力削除
自爆してます紅魔館の面々・・・・・
良いんです・・・えぇ~・・良いんですよ。
紅魔館らしい姿でから。
81.無評価アッザム・de・ロイヤル削除
うわわ、見落としてたorz申し訳ないのです…
遅れましたが、ご感想ありがとうございました。
>翼様
うわ…なんかかっこいいww
でも、妹紅ってそんなイメージがありますね。求聞史紀読んでからなおさら…

>時空や空間を翔る程度の能力様
自爆ww
確かに…言えてるかもww