講義が終わって日も暮れて、私とメリーは外に出る
薄紫な夕空に、寒い北風足してみて、ついでに木の葉も混ぜたなら、はい秋の夕暮れ出来上がり
「寒くなったね、そろそろ冬も近いわね」
空を見上げてのびをして、私はゆっくり呟いた
そんな私の手の平を、寒風がさらっと撫でていき、私は慌ててまるまった
太陽は光を残してお休みなさい、かわりにお月さまこんばんわ
空はちょっと薄暗く、秋の夜長を始めてた
そしてそんな空の下、メリーは私にこう言った
「蓮子はこたつで丸くなる?私こたつ持ってるよ」
こたつとはずいぶん珍しい、でもあなたはもっと珍しい
のんびり言った友人の、春な頭を見た私、思わずこつんと叩いてしまう
秋な世界でここだけは、なぜかしっかり春みたい
「痛いよ蓮子、痛いよ蓮子」
涙目で言った友人の、顔はちょっと憎らしく、そしてとっても可愛いの
「メリー私は猫かしら?私はそんなに怠け者?」
ぷんと頬を膨らませ、腰に手をあて私は言った
そんな私をちらと見て、メリーはぼそっとこう言った
「だっていつも寝ているよ?蓮子はいつも寝ているよ?だって今日も遅刻だよ?」
言葉を重ねてくる友に、私はうっと黙りこむ
確かに今日『も』遅刻した、講義の時間眠りこけ、そのままずっと眠りこけ、待ち合わせに遅刻した、ほんのちょっぴり遅刻した
メリーの言葉に言い返せない、私は残念黙りこむ
だけどそんな私をじっと見て、勝利の笑みを浮かべてる、彼女に私は叫びたい
「眠っているのが私なら、思うがままにうろついて、いるのは絶対メリーじゃない!」
だけど私は黙ってる、だって私が言ってみて、そしたらメリーはにっこり笑い、いつも絶対こう言うの
「それは蓮子も一緒でしょ、だって私たち仲良しで、秘封倶楽部なんだから」
私の言葉をはぐらかす、わざとじゃなしにはぐらかす、それがメリーの得意技
メリーの方を見てみると、相も変わらずのんびりと、ほわほわ笑う顔がある
かなわないと思った私、黙って先へと走ってく
「待ってよ蓮子!置いてかないで」
私の後から大急ぎ、追いかけてくるそんな声
続けて今度はぱたぱたと、足音がだんだん追いついて、私の隣を並んで進む
「蓮子蓮子怒った蓮子?」
蓮子蓮子と連呼して、私を不安げに覗きこむ、メリーを見ると罪悪感
「違うわメリー、早くしないと次に出る、電車が行ってしまうじゃない」
そんな私の言葉を聞いて、ほっと表情緩ませて、メリーはのんびりこう言った
「あーあ蓮子はせっかちね、電車の一本いいじゃない」
のんびり言うメリーに向かい、私はがつんと言ってやる
「時は金なりタイムイズマネー、たった20分ぽっちでも、私はドラマを見逃すわ」
そんな私をじっと見た、メリーはにっこり笑いこう言った
「時は金なりタイムイズマネー、たった二時間ぽっちでも、私は寒空の下待ちぼうけ」
がつんとくらった口撃に、私の目の前に星が出る、これが今日の一番星ね
「か…缶コーヒーじゃ不足なの?」
すっと過ぎ去る寒風に、罪悪感を覚えつつ、私はメリーを見て言った
「身体はちょっと温まる、だけど心は寒いまま、いつ来るともしれない友人を、待つ心は寒かった」
わざとらしげな手の動き、さめざめと泣き真似している我が友人
だけど私は言い返せない、いくらなんでも言い返せない
「わかったわメリー、何が望み?」
ついに反撃諦めて、私はメリーにそう言った
そんな私を見たメリー、微笑みながらこう返す
「こんなに空も綺麗だし、駅までのんびり歩こうよ」
そう言うメリーの頭上には、月に寄り添う二番星
出てきた月光消えゆく日光混ざりあい、明るく暗い青色の、空に並んで光ってた
はぁと出てきたため息は、見れないドラマへ半分と、見れたきれいな夕空に半分
私はだんだん歩調をゆるめ、メリーと並んで歩いてく
のんびり歩く私たち、仲良し歩く私たち
そしてしばらく歩いていたら、ほのかにただよう焼きいもの匂い
メリーの顔が左右に振られ、一点向いて止まったら、そこにはあった、石焼いもの屋台がね
「まずいわ蓮子、まずいわ蓮子」
私は私に言ってみた
体重増加の対策は、こんなに科学が進んでも、やっぱりたっていなかった
だけど焼きいもは秋の味、ちょっと位はいいわよね?
だけどやっぱり太るのは、乙女的には避けたい所
だけどそんな悩みの時間、あっという間に消え去った、メリーの声で消え去った
「ねぇねぇ蓮子、ねぇ蓮子、ちょっと寄ってみましょうよ」
そう言い手を引くメリーの顔と、体重計がぶつかって、体重計ははかなく消えた
「仕方がないわね仕方ない、友達は大切にしないとね」
半分自分に言い聞かせ、歩を進める私を見てた、メリーは笑ってこう言った
「うんうん蓮子、人付き合いは大事だよ」
そう言うメリーは微笑んで、お空でカラスも笑ってた
ぐんぐん歩く私たち、隣をごうっと電車が通り、風をぶつけていったけど、焼きいもの匂いは強かった
「二本下さい」
「ありがと嬢ちゃん」
私たちが買ったのは、二本の秋の風物詩、日本の心を知るために、二人仲良く頬張った
「ひゃついよ蓮子、ほいひいよ蓮子」
はふはふ言ってる友人は、いつの間にかリスになり、冬に備えてほっぺに栄養貯めていた
そんなリスに私は言った
「メリーメリー焦んなくても大丈夫、おいもは歩いて逃げないわ」
私はそう言いゆっくりと、焼きいもを口に持ってった
口に広がるその味は、秋の味と友達の味、ほんわかおいしい味だった
体と心を暖めた、私とメリーは歩きだす、駅を目指して歩きだす
ちょっとお空を見上げたら、秋の夕空消え去って、いつの間にやら秋の夜空になっていた
「ねぇねぇ蓮子、あしたも一緒に帰ろうね」
降ってきそうなたくさんの、お星さまを見ていたら、降ってきたのは友人の、とっても優しい声だった
優しき友へと私は返す
「もちろん絶対喜んで、だって私たち仲良しで、秘封倶楽部なんだから!」
そんなメリーの向こうから、小さな光がやってきた
がたんごとんと響く音、真っ暗暗い闇の中、お月さまに照らされて、次の電車がやってきた
「メリーメリー!急ぐよメリー!」
いくらなんでも寒空の、下で電車を待つよりは、とっとと走った方がいい
「待ってよ蓮子!待ってよ蓮子!!」
そう言い慌てる友人の、手を引き私は走り出す
闇にだんだん膨らんだ、二両の電車も手をつなぎ、私たちを追ってくる
「メリーしっかりつかまって!」
そう言い私は加速する
仲良しこよしの秘封倶楽部、仲良しこよしな電車にも、絶対絶対負けないわ
「蓮子蓮子早いよ蓮子!」
そんな私に手を引かれ、慌てて叫んだ友人は、だけどなんだか楽しそう
例えこの先何十年、歳を重ねていったとしても、多分絶対私たち、きっとこうして走ってる
毎日毎日感じてる、小さな幸せかみしめて、私とメリーは駆けていく
手に伝わる暖かさ、心をしっかり暖めて、私とメリーは駆けていく
笑って急いで駆けていく
そんな私とメリーを見てる、お月さまも笑ってた
体に感じる寒風と、手から伝わる暖かさ
今日も明日もその先も、その暖かさは変わらない、私とメリーは変わらない
きっと絶対変わらない
『おしまい』
薄紫な夕空に、寒い北風足してみて、ついでに木の葉も混ぜたなら、はい秋の夕暮れ出来上がり
「寒くなったね、そろそろ冬も近いわね」
空を見上げてのびをして、私はゆっくり呟いた
そんな私の手の平を、寒風がさらっと撫でていき、私は慌ててまるまった
太陽は光を残してお休みなさい、かわりにお月さまこんばんわ
空はちょっと薄暗く、秋の夜長を始めてた
そしてそんな空の下、メリーは私にこう言った
「蓮子はこたつで丸くなる?私こたつ持ってるよ」
こたつとはずいぶん珍しい、でもあなたはもっと珍しい
のんびり言った友人の、春な頭を見た私、思わずこつんと叩いてしまう
秋な世界でここだけは、なぜかしっかり春みたい
「痛いよ蓮子、痛いよ蓮子」
涙目で言った友人の、顔はちょっと憎らしく、そしてとっても可愛いの
「メリー私は猫かしら?私はそんなに怠け者?」
ぷんと頬を膨らませ、腰に手をあて私は言った
そんな私をちらと見て、メリーはぼそっとこう言った
「だっていつも寝ているよ?蓮子はいつも寝ているよ?だって今日も遅刻だよ?」
言葉を重ねてくる友に、私はうっと黙りこむ
確かに今日『も』遅刻した、講義の時間眠りこけ、そのままずっと眠りこけ、待ち合わせに遅刻した、ほんのちょっぴり遅刻した
メリーの言葉に言い返せない、私は残念黙りこむ
だけどそんな私をじっと見て、勝利の笑みを浮かべてる、彼女に私は叫びたい
「眠っているのが私なら、思うがままにうろついて、いるのは絶対メリーじゃない!」
だけど私は黙ってる、だって私が言ってみて、そしたらメリーはにっこり笑い、いつも絶対こう言うの
「それは蓮子も一緒でしょ、だって私たち仲良しで、秘封倶楽部なんだから」
私の言葉をはぐらかす、わざとじゃなしにはぐらかす、それがメリーの得意技
メリーの方を見てみると、相も変わらずのんびりと、ほわほわ笑う顔がある
かなわないと思った私、黙って先へと走ってく
「待ってよ蓮子!置いてかないで」
私の後から大急ぎ、追いかけてくるそんな声
続けて今度はぱたぱたと、足音がだんだん追いついて、私の隣を並んで進む
「蓮子蓮子怒った蓮子?」
蓮子蓮子と連呼して、私を不安げに覗きこむ、メリーを見ると罪悪感
「違うわメリー、早くしないと次に出る、電車が行ってしまうじゃない」
そんな私の言葉を聞いて、ほっと表情緩ませて、メリーはのんびりこう言った
「あーあ蓮子はせっかちね、電車の一本いいじゃない」
のんびり言うメリーに向かい、私はがつんと言ってやる
「時は金なりタイムイズマネー、たった20分ぽっちでも、私はドラマを見逃すわ」
そんな私をじっと見た、メリーはにっこり笑いこう言った
「時は金なりタイムイズマネー、たった二時間ぽっちでも、私は寒空の下待ちぼうけ」
がつんとくらった口撃に、私の目の前に星が出る、これが今日の一番星ね
「か…缶コーヒーじゃ不足なの?」
すっと過ぎ去る寒風に、罪悪感を覚えつつ、私はメリーを見て言った
「身体はちょっと温まる、だけど心は寒いまま、いつ来るともしれない友人を、待つ心は寒かった」
わざとらしげな手の動き、さめざめと泣き真似している我が友人
だけど私は言い返せない、いくらなんでも言い返せない
「わかったわメリー、何が望み?」
ついに反撃諦めて、私はメリーにそう言った
そんな私を見たメリー、微笑みながらこう返す
「こんなに空も綺麗だし、駅までのんびり歩こうよ」
そう言うメリーの頭上には、月に寄り添う二番星
出てきた月光消えゆく日光混ざりあい、明るく暗い青色の、空に並んで光ってた
はぁと出てきたため息は、見れないドラマへ半分と、見れたきれいな夕空に半分
私はだんだん歩調をゆるめ、メリーと並んで歩いてく
のんびり歩く私たち、仲良し歩く私たち
そしてしばらく歩いていたら、ほのかにただよう焼きいもの匂い
メリーの顔が左右に振られ、一点向いて止まったら、そこにはあった、石焼いもの屋台がね
「まずいわ蓮子、まずいわ蓮子」
私は私に言ってみた
体重増加の対策は、こんなに科学が進んでも、やっぱりたっていなかった
だけど焼きいもは秋の味、ちょっと位はいいわよね?
だけどやっぱり太るのは、乙女的には避けたい所
だけどそんな悩みの時間、あっという間に消え去った、メリーの声で消え去った
「ねぇねぇ蓮子、ねぇ蓮子、ちょっと寄ってみましょうよ」
そう言い手を引くメリーの顔と、体重計がぶつかって、体重計ははかなく消えた
「仕方がないわね仕方ない、友達は大切にしないとね」
半分自分に言い聞かせ、歩を進める私を見てた、メリーは笑ってこう言った
「うんうん蓮子、人付き合いは大事だよ」
そう言うメリーは微笑んで、お空でカラスも笑ってた
ぐんぐん歩く私たち、隣をごうっと電車が通り、風をぶつけていったけど、焼きいもの匂いは強かった
「二本下さい」
「ありがと嬢ちゃん」
私たちが買ったのは、二本の秋の風物詩、日本の心を知るために、二人仲良く頬張った
「ひゃついよ蓮子、ほいひいよ蓮子」
はふはふ言ってる友人は、いつの間にかリスになり、冬に備えてほっぺに栄養貯めていた
そんなリスに私は言った
「メリーメリー焦んなくても大丈夫、おいもは歩いて逃げないわ」
私はそう言いゆっくりと、焼きいもを口に持ってった
口に広がるその味は、秋の味と友達の味、ほんわかおいしい味だった
体と心を暖めた、私とメリーは歩きだす、駅を目指して歩きだす
ちょっとお空を見上げたら、秋の夕空消え去って、いつの間にやら秋の夜空になっていた
「ねぇねぇ蓮子、あしたも一緒に帰ろうね」
降ってきそうなたくさんの、お星さまを見ていたら、降ってきたのは友人の、とっても優しい声だった
優しき友へと私は返す
「もちろん絶対喜んで、だって私たち仲良しで、秘封倶楽部なんだから!」
そんなメリーの向こうから、小さな光がやってきた
がたんごとんと響く音、真っ暗暗い闇の中、お月さまに照らされて、次の電車がやってきた
「メリーメリー!急ぐよメリー!」
いくらなんでも寒空の、下で電車を待つよりは、とっとと走った方がいい
「待ってよ蓮子!待ってよ蓮子!!」
そう言い慌てる友人の、手を引き私は走り出す
闇にだんだん膨らんだ、二両の電車も手をつなぎ、私たちを追ってくる
「メリーしっかりつかまって!」
そう言い私は加速する
仲良しこよしの秘封倶楽部、仲良しこよしな電車にも、絶対絶対負けないわ
「蓮子蓮子早いよ蓮子!」
そんな私に手を引かれ、慌てて叫んだ友人は、だけどなんだか楽しそう
例えこの先何十年、歳を重ねていったとしても、多分絶対私たち、きっとこうして走ってる
毎日毎日感じてる、小さな幸せかみしめて、私とメリーは駆けていく
手に伝わる暖かさ、心をしっかり暖めて、私とメリーは駆けていく
笑って急いで駆けていく
そんな私とメリーを見てる、お月さまも笑ってた
体に感じる寒風と、手から伝わる暖かさ
今日も明日もその先も、その暖かさは変わらない、私とメリーは変わらない
きっと絶対変わらない
『おしまい』
ご感想ありがとうございます。絵なし絵本シリーズは『暖かさ』と『優しさ』をテーマにしている私の物語の中でも、特にそれを凝縮しているつもりです。
その気持ちが伝わったようで、本当に嬉しいです。
ご感想ありがとうございました!
ほわっとして頂けたと聞いて、ほわっとしている作者より