Coolier - 新生・東方創想話

霧雨の居た村

2006/08/30 00:13:04
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「いいかげんしなさいよ!! あんたら!!」

幻想郷の一角にある、妖怪その他の寄合所『博麗神社』
今日も、巫女の叫びが響きわたる。

「いつも!」

拳が、人形使いを沈め。

「いつも!」

脚が、半霊を蹴り飛ばし。

「言ってるでしょうが!」

針が、吸血鬼を貫き。

「暴れるなら!」

お払い棒が、魔法使いを弾き飛ばし。

「外で!」

お札が、鬼を埋めつくし。

「やれって!」

陰陽玉が、スキマをひき潰し。

「この!」

結界が、氷精を封じ込め。

「暴れん坊の暇人どもがー!!」

霊力が、それら全てを吹き飛ばしガレキに埋めこむ。

「……………………………………………………………………………………やりすぎたかしら?」

博麗大結界の守護者『博麗霊夢』ここにあり!!








「たくっ!! また散らかして! 少しは、片付ける私の身になってみなさいよ」

壊れた……もとい、散かった内の八割を担う破壊の権化が愚痴をたれる。
いつものように、博麗神社(宴会場所)に妖怪や魔法使いや鬼が集まり、騒いでいた際に酔っ払い『暴れ出す者』『静観する者』『逃げ出す者』『場を収めようとする者』と分かれ、室内での弾幕七人勝負が始まった。
その結果、柱は砕け襖や障子は破けお茶は消炭と化した。
それを見た霊夢は、端的に言えばキレタ切れて暴れる者達を昏倒さし吹き飛ばした。……………室内で
弾幕七人勝負の時点でもはや廃屋と言って差し支えないほどぼろぼろだったのに、霊夢が暴れたせいで廃屋ですらなくなった。
つまり、暴れん坊どもと一緒に家まで吹き飛ばしてしまったのだ。 残ったのは、ありがたい賽銭箱と神社のなれの果てのガレキぐらいだった。
それが、約三十分ほど前の出来事。

「う~~しばらく野宿かぁ」

ガレキの中から、生活に必要なものを掘り出しながらそう呟く霊夢

「え~と、急須はあったから後は湯飲みね」

茶葉も無いのに茶道具を探し、布団や着替えを後にする人間。
すでに、集まっていた人妖は一部のガレキに埋もれた者以外逃げ帰っている。
とそこに…

「なんだ! 何があった?!」
「あら? めずらしいわね。 慧音じゃない。 もう皆帰ったわよ」

現れたのは『上白沢 慧音』半人半獣のハクタクの少女だ。

「何を暢気な・・・・それより本当に何があったんだ? 全て壊れているではないか」
「賽銭箱は残っているわよ・・・・ただ単に暴れていたやつ等を懲らしめただけよ」
「暴れていたやつ等って…これだけ博麗神社を破壊できるなんて………いったい誰が?」
「……………………………………………………」
「どうした?」
「ま、まぁ誰でもいいじゃない、あれだけ懲らしめたんだからもう同じ事はしないはずよ。 それより珍しいけど何か用だったの?」

まさか、自分がやったなどと言えず誤魔化す霊夢。

「………………考えようによっては都合がいいか」
「何のこと? 話が見えないんだけど?」
「ああ、すまない霊夢。 急で悪いのだが、ある村の護衛をしばらくしてくれないか?」
「護衛? なんで?」

霊夢が、訝しく思うのも仕方が無い。
慧音が、人間の里を守っているのは知っているが、今まで護衛など頼まれた事など無かったのだ

「ある村が、妖怪の襲撃を受けて娘が一人さらわれたんだ。 幸いな事に、死者は出なかったが半数以上が被害にあってな…………このままでは、次の襲撃があった場合村が無くなってしまうかもしれん」
「そうじゃなくて、あんたが守ればいいでしょう? 前みたいに村を隠してしまえばいいじゃない」

その言葉に、慧音は言いづらそうに

「そのな………その村は少々特殊でな」
「特殊?」
「村人の殆どが、魔法を使えるか何かしらの能力を持っているんだ。 そのせいか、私の能力もききづらくてうまく隠せないんだ。 それに……」
「それに?」

少し間を置いて

「その……怒るなよ? ………プライドが高くてな『余所者の、まして妖怪の手なんぞ借りれるか』だそうだ」
「……なによ……それ………わざわざ助けてくれようとしている者に…………そんなやつ等ほっときなさいよ!」
「そんな訳にいかんよ。 次の襲撃があったら、どれだけ被害が出るか分かったものじゃない」
「だからって……………」
「それに、私は好かれようとして守っている訳じゃない。 好きだから守っているんだ」
「………………………………………」

慧音の言葉に、何と言っていいのか分からず押し黙る霊夢。

「そんな訳で、頼めるか?」
「…………………はぁ……私は、人間だけどその村の人間ではないわ。 余所者だからと断られるんじゃないの?」
「それは大丈夫だ。 話は通してある。 『あの、あらゆる意味で有名な博麗の巫女が…』と快く承諾してくれたぞ」
「ちょっとまてぃ」

何故か待ったをかける霊夢

「なんだ? どうした?」
「どうした? じゃないでしょ! なんなのよ、その『あらゆる意味で有名な博麗の巫女』てのは?!」
「有名じゃないか?『大結界の守護者』『幻想郷の管理者』『腋巫女』『百合巫女』『飢餓巫女』とか、他にも…」
「も、もういいもういい!というか黙れ」

現実のあまりに残酷な真実に打ちのめされる霊夢。
と、そこに

「…もういいか?」

と一人の、髭を生やし赤い帽子を被りマントを着けた青年が姿を現した。

「ん? 誰?」
「おお、遅かったな」

と慧音が、青年に声をかける。

「何、知り合い?」
「ああ、この方は先程言った村の…」
「霧雨 真理御だ」
「え……霧雨って?」

その名前を聞き、驚いたように慧音を見る。

「いや、私も最初は驚いたが、魔理沙とは関係ないようだ」
「ふ~ん…」
「……………………」

魔理沙とは、関係ないと聞かされ、驚いて損したと思う霊夢。

「真理御殿は、さっき言ったさらわれた娘の恋人でな、どうもじっとしていられないらしくてここまで付いてきたんだ」

と慧音が、真理御を霊夢に紹介する。

「真理御殿、こちらが『博麗の巫女』博麗 霊夢殿だ」

今度は、霊夢を紹介する。

「あ、よろし…」
「先に、言っておく。 桃を、助け出すのは俺だ! 邪魔するのなら、あんたも敵とみなすからそのつもりでな」
「……………………」
「真っ真理御殿っ!」

いきなり失礼な事をほざく真理御を、いさめようとする慧音に

「………どういうこと……?」
「うっ………………」

霊夢の、問いかけに言葉をつまらせる慧音。

「そ、その……ええと………興奮……そう恋人を、さらわれて興奮しているんだ! だから…」
「そうじゃなくて」
「え?」
「桃を助け出すって? 何のこと?」
「ああ、そのことか。 桃というのは、さらわれた真理御殿の恋人の事だ。本名は、『妃女 桃』殿と言う」

霊夢はその事を聞き、さらに混乱する。

「さらわれた恋人を助けるって……妖怪にさらわれたのなら……もう」

そう……妖怪が人間をさらうとしたら、それは主に食事のためだ。いつさらわれたのか知らないが、五分やそこら前ではないだろう。
となれば、もうすでに殺されて妖怪のお腹の中にいるはずだ。

「そのことなんだが、桃殿はまだ生きているんだ」
「生きてる? なんで?」
「村を襲った妖怪が言ったのだ『八日ゴのひルまたやってくル。 そのとキこの村をホロぼし、この娘でシュく宴を挙げるトシよう。 それまではイかしといてやル。 助けたければ、八カ後にワレらを滅ぼしてみよ』とな、だからまだ生きているはずだ」
「ふ~ん……変わった事をするやつがいたものね。 で、八日後っていつなの?」
「明日だ」
「明日って……なんで、もっと早く言いに来なかったのよ」
「仕方ないだろ。 私だって、知ったのが三日前だ。 それからも『自分たちだけでやる』と言う村人達を説得したり、情報を集めたりしていたんだ。 やっと、お前ならと嫌々ながらも納得してくれたのが、つい先程だ」

と慧音が、疲れたように語る。
どうやら、三日前から説得や情報集めに奔走していて、ろくに休みをとってなさそうだ。

「本当にこんな小娘が、博麗なのか?」
「むっ」

先程からの、失礼な態度にいささかむっとなる霊夢。

「ちょっと! さっきからなんなのよ。文句があるなら、はっきり言いなさいよ」
「吸血鬼や鬼を退治したと聞いていたが……こんな小娘に退治されるなら、そいつらもたいした事の無い奴等だったんだろうな?」
「なっ!?」
「真理御殿!! 口がすぎるぞ!!」

失礼すぎるその言葉に、止めようとする慧音だが

「はんっ。 こんな、小娘に守られろなんてあんたの器もしれてるな? なぁ、半妖?」
「ぬぅ! だかな、こう見えて霊夢殿はな…」
「どう見えようが、小娘に守られるほど我が霧雨家はおちぶれておらんわ! 土下座までして頼むから、どんなやつかと期待したが話にならん」

そう話し終えると……

「帰るぞ。 こんなとこで遊んでる暇は無いんだ。 戦う気があるなら村に来い……弾除けとしてなら使ってやる。 はぁ~はっはっはっ」

と笑い声を上げて、マントを翻し飛び去っていく。

「……………………………」
「……………………………」

それを見送りながら

「………何なのよアレは?」
「……すまない。 彼は、村でも一、二争う大家の跡継ぎでプライドが妙に高いんだ……」
「あんたに謝られてもねぇ」
「すまない……」

(あんなやつを守るのは、こっちも願い下げだわ)

「『あんな事』言っているんだから、ほっといてもいいわね」
「それは困る。いくらなんでも彼等だけでは、勝目は無い」
「でもねぇ…」

どうにか、文句をつけて断ろうとする霊夢に慧音は

「頼む!! 真理御殿の言葉が気に障ったのなら、私が謝るからどうか!! このとおり……!!」

と、地に頭をこすりつけ、土下座をする。

「ちょ、ちょっと! や、やめてよ…あぁ、もう……わかったから、やるわよ! やりゃぁいいんでしょ!!」

霊夢は、土下座する慧音を起こしそう答える

「…………すまん……助かる」
「……………………………………」

しばらくの間、沈黙が続き……
居心地が、悪くなったのか話題を変えるように霊夢が

「とりあえず、村を襲った妖怪の事を詳しく教えてくれる?」
「ん……あぁ」

落ち込んだように暗い慧音

「詳しくと言っても………私が、知っているのはせいぜい妖怪の親玉がいて、その手下達が複数いるという事ぐらいしか分からんぞ」
「へ?それだけ?」
「それだけだ」
「確か、情報収集したんじゃなかったの?」
「………………………………………」
「?」

押し黙った慧音を見て、訝しげに思っていたら

「………私が、半妖のせいか…ほとんど教えてもらえなかったんだ…」
「………………とことん腐ってるわね」
「………すまん」
「いや、いいけど………さっき、あいつ『土下座までして』とか言っていたけど…………」
「……説得するときに、一寸な………」
「あんたも苦労してるわね………」

どんどん空気が重くなり、再度話題を変えようと

「そういや、さっき言っていた『考えようによっては、都合がいいか』とか言っていたけど、あれはどうして?」
「あ~その事なんだが、今日から妖怪を退治するまで……いや退治した後も、しばらくあの村に居てくれないか?」
「な、なによそれ、何で私が……退治するまではともかく、退治した後まであんなやつの村に居なくちゃあなんないのよ?」」

霊夢が、当然の疑問を発するが

「全員が全員、あやつ程楽観してはいないんだ」
「え?」
「村人の内半数がやられたと言ったが、その半数の中には女子供も入っているんだ。 皆怪我をしている、酷い者だと半年は寝たきりの者もいる。 そんな者達が、また妖怪が襲ってくるというのを知っていながら安眠できていると思うか?」
「それは………」
「答えは『否』だ。 安眠できている者などほんの一握りだ。 殆どの者は、恐怖と不安で眠る事もできないんだ」
「……………………………」
「例え、襲撃した妖怪を退治したとしても…その妖怪に、植えつけられた恐怖はすぐには取除けられないだろう」
「そりゃ…ね。 でも、プライドだのなんだの言って、情報も提供しようとしない奴等がそんなに不安がっているとは思えないんだけど…」
「………恐いんだろう。 私も、半分は妖怪みたいなものだからな…」
「あっ……」
「お前は、一応博麗の巫女だ『博麗の巫女がこの村にいる』と思っていれば、不安や恐怖はあるていど取除けられるはずだ」
「一応は余計だけど…まぁ、少しはましでしょうね」
「それに…」
「それに…?」

周りを見渡しながら

「野宿するよりかは、ましな生活ができるだろう?」
「…………………」

かくして、博麗神社二号店ができたのである。








「「うう…なんで私達が、こんな事を…」」
「うっさい! 手を抜いたら、ただじゃおかないからね」

霊夢は、まだ瓦礫に埋もれていたアリスと萃香に(他の者は誰かが連れて帰った)、神社再建をまかせ村に行く事にした。

「さて、それじゃあ案内してもらおうかしら」
「ああ、行くとするか」

と二人が地を蹴ろうとした時

ガララッ

「う~~、いててて」

霊夢の前にある瓦礫が崩れ、魔理沙が這い出てきた。
そして、霊夢がすぐ近くにいることに気づかずに…

「霊夢め、本気で殴るんだもんなぁ~…今度、腐った牛乳を、ヨーグルトと偽って食わしてやる」
「ほう」

ビクゥ

「そんな事をしていたんだ、そういえばこの前、魔理沙からもらったジュースも酸っぱかったけど…」
「な、何の事だ? 私は、腐って液状化したみかんを、オレンジジュースだと偽った事なんて無いぜ」ガクガクブルブル
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

震える魔理沙に、霊夢は

                           ニッコリ

「ひぃっ……」

ただ……笑いかけただけだった。

「すいませんすいませんごめんなさいごめんなさいゆるしてくださいあやまりますなんでもしますゆるしてくださいごめんなさい」
「魔理沙…」
「ひゃぁぁ~」

ズザァ~~

土下座の姿勢をとり、後退る魔理沙。

「逃げなくてもいいのよ、魔理沙。 何でもするんでしょう? これから言う事を、きいてくれたら許してあげるわ」
「何でもします! なんでもどうぞ!!」
「脱げ」
「へ?」
「脱いで、逆立ちしたまま幻想郷を一回りして来い」
「……………………………………………」

(なん……そんなことできるはず無いじゃないか! でも、逆らえばどうなるか?……恥か破滅か…)

と、魔理沙が半泣きで、そんな事を考えていると

「な~んてね」
「はえ?」
「冗談よ、じ・よ・う・だ・ん、本当は、ちょっと仕事を手伝って欲しいの」
「な、な~んだ冗談かよ? 本気にするところだったぜ。 仕事ぐらいど~んとこいだ」
                                                           「チッ!!」

後ろの方で、舌打ちが聞こえた気がするが、つっこめば恐い事になる気がして、無視する事にする。

「で?」
「で?って?」
「いやいや、仕事の内容だよ、内容、何をするか知らなければ、何をしたらいいのか分からないからな」

との、言葉に霊夢は

「ただの、妖怪退治よ」

と、答えた。

「なんだ、妖怪退治か? それならお安い御用だ! まかせろ」
「ありがと、それじゃあ早速行きましょうか? 魔理沙、慧音」
「おう!」
「…………………まぁ、いいか」

多少問題が増えた気がするが、今度こそ三人は、人村に向けて地を蹴り飛び立ったのである。








「それで、どいつを退治するんだ? 幽々子か? 紫か? それとも香霖か? どいつもこいつも私の魔砲で消炭にしてやるぜ!」

村に向かって飛行中に、ぶっそうな事をキラキラした目をして言い出す魔理沙。

「そこいら辺はまた今度。 今回は、村の護衛よ」
「護衛?」

慧音と霊夢は『村が妖怪に襲われた事』『村娘が捕らわれた事』『明日また襲撃がある事』を魔理沙に説明した。

「ふ~ん、なんか面倒な事になってるな」
「ああ、正直お前も手伝ってくれるのはありがたい」
「はは……ん? そういえば何で今、村に向かっているんだ、襲撃があるのは明日なんだろ? 今から行ってもしょうがないぜ?」
「そういえば、まだ言ってなかったな」
「?」
「霊夢には、今日からしばらくの間、その村で生活をしてもらうんだ」
「それは大変そうだな」
「そうでもないわよ。 魔理沙も一緒だし」
「へぇ~、私も一緒かぁ。 ははは」
「うん、一緒。 あはは」
「はははははは」
「はははははは」
「………………」
「………………」

しばらくの、間を置いて

「聞いて「仕事を手伝ってくれるのよね(ニッコリ)」……はい」

脅迫である。

「………すまんな」
「ううっ……まぁいいぜ、男に二言は無いからな」
「あんた女でしょうが」
「言い直すぜ、漢に二言は無いぜ」
「どう違うのよ」

などとやっていると、前方に村が見えてきた。

「見えてきたぞ。 あの村だ」
「お! やっと到着か、短いようで長いようで短い道程だったぜ」
「言ってる意味分からないわよ」

と視線を村の方に向ければ、魔理沙が

「え……あの村…って…」
「ん、どうかしたか?」
「い、いやなんでも無い…」
「「?」」

歯切れの悪い魔理沙を、訝しく思いながらも村に近づいていく。
村までもう少しと近づいた時、慧音がいきなり立ち止まった。

「ん、どうかしたか?」
「もう、すぐそこでしょう? 早く行きましょうよ」

と二人が、言ってくるが

「すまんが、ここからは二人で行ってくれ」
「はあ?」
「なんで?」
「これ以上近づくと、村の者達が怯えるかもしれんからな」
「あ……」

慧音が、少し沈んだ顔で言い。
霊夢が、しまった!という顔で呻き。

「まぁ…それもそうか。 あそこの連中、プライドが高い割りに臆病だからな」

と魔理沙が、評する。

「「……………………」」
「うん? どうした、二人とも変な顔をして?」
「いや……あそこの村の事、おまえには話してなかったと思うんだが……」
「なに?知り合いでもいるの?」
「……………………………………………………」

黙りこむ魔理沙。

「……どうでもいいじゃないか、そんな事。 それよりさっさと行こうぜ、のんびりやっていると夜になっちまうぞ」
「どうでもいいって、それ…」
「それじゃーな慧音、明日は加勢しに来いよ」

慧音の言葉をさえぎり、村に向かって箒を進める魔理沙。
残された二人は、無理矢理言葉を止められた形になり、少しの間呆然としていた。

「……てっ、待ちなさいよ魔理沙! 一人で先に行くんじゃない!! それじゃーね慧音、また明日」
「あ、ああ、明日の朝の内には行くからな」

と、慧音の言葉が終わらぬうちに魔理沙を追いかけだす霊夢。
その心情は…

(なんだか…魔理沙、変だわ。 ……やっぱり、さっきのあいつと、何か関係があるのかな?)

と考えているうちに、二人は村に到着した。








「……で、これからどうするんだ?」
「……………………………………」
「霊夢?」

霊夢は答えない、なぜなら…

「………聞いてなかった……」
「は?」
「だから! どこに行けばいいのか慧音から聞いてなかったの!!」
「なんだそりゃ? それなら村長の家に、行けばいいじゃないか」
「……それもそうね…ちょっと村の人に、村長の家を聞いてくるわ」

と言い、畑を耕している村人に道を聞こうと話しかけるが…

「あの~すみません、ちょっと道を尋ねたいんですが…」
「…………………………………………」

ザッザッ

「? ちょっと、すみません」
「…………………………………………」

ザッザッ

村人は話しかけても無視をして畑を耕し続けている。

(ムカッ)

ザッザ「ボスゥ」「げふぅ」ドサッ

無視をされて腹が立ったのか、ボディブローで村人を沈める。
起き上がらないのを確認した後、違う村人に声をかけようとするが

「あの~……」
「ひっ……!」
「あ! こら逃げるな!!」

声をかけた瞬間に、逃げられる。

「ちぃ……次会ったら、覚えときなさいよ」

と、巫女とは思えない言葉を呟く。

「……なにやってるんだ霊夢?」
「ムッ! 何って、道を聞こうとしてるんじゃないの」

やっていた事は、村人を殴り倒し、怯えられて、逃げられただけである。

「村長の家なら、私が知ってるぜ?」
「……へ?……な、ならそれを、先に言いなさいよ!!」
「言う前に、行動したのはお前だ!…たくっ…ほら、行くぞ。 あっちの道を、道なりに行けば着くはずだ」
「むぅ~」

納得してなさそうに、呻く霊夢。

「…でも…なんで魔理沙が、村長の家知ってるの?」
「………昔、ちょっとな…」
「ぬぅ…」

答えにくそうに答える、魔理沙。
それを聞き、聞いていいのか迷う霊夢。

「………………………………………」
「………………………………………」

なんとなく、二人とも黙ってしまう。
結局、村長の家に着くまで、なんら言葉を交わす事は無かった。

「……でっかいわね…」
「……ああ…」

村長の家は、三階建てのうえ、横幅、縦幅共に普通の家が、三件は入りそうだ。 奥には、露天風呂も見えている。

「燃やしたくなるわね…この豪邸…」
「こらこら、何しようとしてる。 マッチをしまえ! 変な液体をまくな! 火をつけようとするな!!」

争う事、約五分
なんとか霊夢が落ち着いたので、村長の家に入ろうとする。

「……ぉぉぉぉぉぉぉ……」

落ち着いたので、村長の家に入ろうとする。

「……………………」
「……?…どうしたの? 早く入ってよ」

なかなか入ろうとしない魔理沙。

「…霊夢、お前から入ってくれ」
「へ?なんで?」
「い、いやな、深い意味は無いんだけどな……ほら、一応私は手伝いだし、ここは霊夢から訪ねるのが、礼儀だろ?」
「いや別に、そこまでしなくっても…」
「一応は巫女なんだし、礼儀は大事だろ?」
「一応は余計よ! ……まぁいいけど」

ガララッ

戸を開き、声をかけようとする霊夢だが、戸を開けた先には、すでに何者かが立っていた。

「遅かったな…待ちくたびれたぞ」
「……あんたは」
「………………………」

そこに立っていたのは、先程博麗神社で暴言を吐き、去った男『霧雨真理御』である。

「何であんたが、ここにいるのよ?」
「ここは、桃の家だ。 恋人の俺がいて何が悪い?」

外に出て表札を見てみる。そこには『妃女』と、書いてあった

「…やっぱり燃やしておくべきだったわね。 それはそうと、なんでそこにいるのよ? まだ、呼んでもないのに」
「あれだけ騒いで、分からない訳無いだろ」
「むっ…それもそうか。 それじゃあ、御邪魔させてもらうわよ」

家の中に、上がろうとする霊夢。

「………………………………」
「………………………………」
「…ん? どうかした?」

魔理沙が、動こうとせず真理御を睨みつけている。
対する真理御は、魔理沙を見下すような目で見ている。

「……久しぶり…兄さん…」
「ああ、久しぶりだな魔理沙……何をしに、帰ってきた」
「へ……兄さんって? ……関係ないんじゃなかったの?」

そう慧音が、言っていたのを思い出し疑問を抱く。

「ふんっ。 あんなやつ騙すのなぞ、簡単だったわ。 ちょっとした結界を張っていたら、勝手に勘違いしおったわ」
「結界って……そんな程度で?」
「そんな事より……もう一度聞くぞ。 何をしに、帰ってきた! 魔理沙」

薄汚い物を見る目で見つめながら、詰問するような声で、問いただす真理御。

「おまえは、数年前に村を捨てた身! 何をしに帰ってきた!!」
「ちょっと、詳しい事は知らないけど、そんな言い方無いんじゃないの!?」

見かねた霊夢が、声を荒げるが…

「やかましい! こいつは家を出る時、家にあった家宝や武器を持ち逃げしたんだぞ! あの後、どれほど大変だったか…」
「……………………昔から、魔理沙は魔理沙ね」

なにやら納得している霊夢を、無視して話す事にする二人

「…私は、霊夢の手伝いできただけだ……」
「手伝い? おまえが? ……落ちこぼれのお前が手伝いだと? はんっ、笑わせるわ! お前ごときが何の役に立つ?」
「なっ?! 何よ…」
「いいんだ…霊夢」

反論しようとする霊夢を、魔理沙が止める。

「……詳しい事は、後で話す………私は外にいる、話が終わったら声をかけてくれ」
「ちょっ…魔理沙」

ガララッ…ピシャン

「……ふん」

魔理沙は外に出て行き、真理御は奥に入って行き。
一人取り残される霊夢。

「~もぉ! いったい何なのよ!!」









その後、玄関に立っているままという訳には行かず。 とりあえず、真理御が向かった方に歩き出す。
しばらく行くと、畳敷きの和室があり。
そこには、真理御と一人の老人が座っていた。

「…貴方が『博麗の巫女』か?」
「…そうだけど…あなたが村長さん?」
「いかにも、わしは、この村の村長をしている『妃女 奇乃子』と申す」
「私は『博麗の巫女』の『博麗 霊夢』よ」

老人の正面に、座りながらそう挨拶をする。

「さっそくだけど、襲われたときの事、教えてくれる? 奇乃子さん」
「貴様!! 村長に向かってなんて口の利き方だ!」
「よいよ。 そんな事」

激昂しかける真理御をいさめる村長。

「……今、そんなに怒る様な事、言ったけ?」
「ふぉっふぉっふぉっ。 すみませんね。 皆プライドが高いうえに、例の妖怪のせいでピリピリしとんよ」

答えになっている様で、答えになっていない言葉を吐く村長。

「そんな事よりも、話を進めてもよろしいか?」
「…ええ、いいわよ。 元々話を遮ったのは、そっちなんだから」
「……………………………………………………」

真理御が、何か言い足りないのか、睨み付ける様に霊夢を見る。

「あれは……七日ぐらい前の晩じゃった。 ヤツラは、いきなり襲ってきおったのじゃ。 不意をつかれてな、なんとか反撃できたものの、大勢がやられてしもうた。 死者が出なかったのが、不思議なぐらいじゃ」
「大勢って…何人ぐらい被害がでたの? あと、妖怪の数はどれくらい?」
「そうさのぉ…村人の数がだいたい百五十前後だからその半分…と言った所かの。 妖怪の数は、詳しい事は分からんが、大体…百匹はいなかったはずじゃ」
「百匹って……誰も気がつかなかったの? それだけいたら、かなり目立ったはずでしょう?」
「結構小型なのがいたんでな。 闇夜に紛れこまれると、判りづらかったんだ」
「だからって…」
「それに、この村に攻め入ってくる馬鹿がいるとは思わなかったからな」
「………それって……油断していたら馬鹿に攻め入られた…と言う訳?」
「…………………………………………そうとも言うな」

(……馬鹿だわ…)

少々呆れながらも話を進めようとする

「それで、何匹くらいやっつけたの?」
「…それが……二十匹ぐらいしか……」
「二十匹って…1.5倍も数がいて、倒したのは半分以下? いくら不意をつかれたからって…少なすぎない?」
「仕方ないんじゃ。 あの時は女子供もいたので、避難させるのが精一杯だったんじゃ」
「へ?…なんで避難する必要があったの? 一緒に戦えばいいじゃない、皆何かしらの能力を、持っているんでしょう?」
「いくら能力があろうと、子供に戦わせるわけにはいくまい。 女は女で、回復や守り専門が多いからのぅ、戦闘ができるのは一握りじゃわい」
「ふ~ん…変わってるのね」
「変わっている…?」
「だって、普通男って、座って本を読んでいるか、怪しい物を拾ってくるぐらいしか、しないじゃない」
「そんなわけあるか! 真面目に話しているのに、茶化すのはやめて頂きたい」

霊夢には、別に茶化したつもりは無い。
自分の周りにいる、人妖達を思い出し。
戦える女性と、戦えない男性の割合が、共に100%なのである。

「ま、まぁ、いいわ。 それより残りは大体八十匹なのね? どんな妖怪かは判る? 毛玉とか妖精の類だった?」
「いや、毛玉や妖精ではなかった。 ……栗や亀の類が、変化した物みたいだったな」
「栗や亀…? 初めて聞くわね」
「あとは……ボス亀ぐらいか」
「ボス亀?」
「雑魚の亀は、腰までぐらいの大きさなんだが、ボス亀は雑魚亀の五倍以上大きいな」
「そりゃぁ…また、大きいわね」

自分の倍以上の大きさの亀、と聞いて霊夢は

(もったいない…妖怪でなかったら貴重な食料だったのに……)

「どうしました? 涎、垂れとりますよ?」
「!! ズビッッ! な、なんでもありません」
「? ……あとは何か聞いておきたい事はありますか?」
「そうですねぇ……って、明日の作戦、何も聞いてませんよ!」
「作戦? そんなものありゃあしませんよ」
「へ?」
「明日は、貴方と真理御ともう一人で戦ってもらいます」
「な、なんで? 半分やられたからって、まだ何人かは戦えるでしょう?」
「確かに、戦えるのはまだ何人かいますよ」
「だったら…」
「じゃが! 村には、前の戦いでやられたのが大勢いる。 そちらに戦力を集中させると、どうしても村の守りが手薄になってしまうのじゃ、そこを攻められては、抵抗の仕様もなくなってしまう。 そんな訳で、余りそちらに戦力を割けれんと言う訳じゃ」
「………だからって…」
「心配せんでも、真理御と、もう一人…名は流射寺というんじゃが、この二人だけでも大丈夫じゃろ。 この村でも一二を争う強…」
「村長!! 大変だ!!」

と、その時誰かが飛び込んできた

「なんじゃ! 騒がしい!! 客人の前じゃぞ」
「それどころじゃ無いんです! 流射寺が何者かにやられました!」
「な、なんじゃと!?」
「どう言う事だ? 殺されたのか? 詳しく話せ!」

どうやら、件の流射寺なる人物が、誰かに襲われたらしい。

(まさか、妖怪の仕業? 自分からした約束を破ったの?)

「そ、それが、生きてはいます」
「ほっ」
「しかし、畑を耕していた時に、何者かに腹を殴られたらしく、身体の中に酷くダメージを負ったみたいです。二、三日は起き上がれそうにありません」
「な、なんて事じゃ。 明日は妖怪が攻めてくるんじゃぞ! いったい誰が?」

村人達が、緊迫してきたその横で、霊夢は

タラーッ

冷や汗をかいていた。

「あ、あの~」
「なんじゃ、今忙しいので少し黙って…」
「やったの私かもしんない」
「「「……………………………………………」」」
「……なんじゃと?」
「い、いや、この家までの道を、畑を耕していた人に尋ねようとしたら、無視されたので一発”ボスッ”と…した…おぼえが……」
「「「……………………………………………」」」








「おっ! やっと出てきたか、ずいぶん長かったな?」
「……………………………………………………」
「ん、どうした、変な顔をして? まるでパッドがばれた、咲夜みたいだぜ」

あの後、霊夢は二時間もの間、文句と、愚痴と、嫌味を言われ続けていた。
その結果、霊夢は疲れ果て、今にも倒れそうである。

「……なんでもない………ただ…ちょっと疲れただけよ…」
「そ、そうか……なら、いいんだ…」
「それよりも、移動しましょ。 村外れに、小屋があるから、そこで寝泊りしてくれって」
「お、おう……本当に大丈夫か? なんか、パチュリーと幽々子の間みたいだぞ?」
「? …よく分からない事言ってないで、早く行きましょ……」

少しふらつきながらも、歩き出す霊夢。
魔理沙も霊夢を追いかけて、歩き出す。

「で…結局どうするんだ? 今から、夜襲をかけるのか?」
「そんな事、するはず無いでしょ。 妖怪の居場所も、分からないのに」
「なんだ、わからないのか? なら…明日、正面から戦うのか?」
「夜襲か、正面しか選択肢が無いのか? あんたの頭の中には?…詳しい事は、小屋についてから話すわ」

霊夢が疲れた声で、そう返事をし、そのまま黙り込む。
魔理沙も、気を使ったのか、それ以降は喋らずに歩いた。

「あそこね、思ったよりかはまともじゃないの」

指定された小屋は、普通の一般家屋より、一回り小さい程度の小屋だった。

「……あそこか………」
「? どうしたの? あの小屋がどうかした?」
「…あの小屋は昔、香霖が使っていた物なんだ」
「霖之助さんが?」

香霖…『森近 霖之助』は魔理沙の実家で修行をしていた事があるのだ。 おそらくこの小屋は、当時霖之助が生活していたものであろう。

「ああ、香霖は、昔から変な物を集めるのが趣味だったからな。 気味悪い物も多かったから、村外れのこの小屋に隔離されていたんだ」
「隔離ねぇ……分かる気もするわね」
「まぁな。 実際、実害もあったからな……何か、置いて行ったりしてないだろうな」
「何かって…何?」
「例えば……褌とか?」
「褌って…何でそんな物……」
「知らないのか? 香霖褌説は、かなり有名だぞ……あれば六、七年物だぞ…………茸でも生えていたりしてな」
「…………………………見たくないわね……魔理沙、今度は貴方から入りなさい」
「ええっ! 嫌だぜ! 私だって、そんなの見たくない。 霊夢から入れよ、巫女だろ?」
「巫女関係ない! いいから…入んなさい!!」

ドゲシッドゴッ…

小屋に入るのを嫌がる魔理沙を、霊夢は後ろから蹴り入れた。
魔理沙は、扉ごと小屋の中に転がり込む。

「どわっ?! ………痛つっ…っっ…危ないなぁ、たくっ」
「そんな事より、…どう、なんかある?」
「ちょっと、待て…………見たところ…変わった物は…あっ、キノコ発見」
「褌成敗!! 陰陽鬼神…」
「待て待て待て待って下さい普通のキノコです褌から生えていません!! だからこんな逃げ場の無い所でそんなもんつかうな!!」
「…………………………………ちっ」
「今『ちっ』って言ったかぁ?!」
「気のせいよ♪ そんな事より、作戦を説明するわよ」
「そんなことよりって、おまえなぁ……」
「人の命が賭かってるのよ」
「むっ………」

さすがの魔理沙も、そう言われれば黙るしか無い……いろいろ言いたい事はあるが…

「作戦はこうよ! まず魔理沙が、少し離れたところにある森に、火をつける。 村人が、それに気づいて、騒ぎはじめたらチャンスよ! その隙に、私が畑から作物をごっそり頂くわ!!」
「ふむふむ…って誰が『作物強奪作戦』を説明しろといった!! この作戦のどこに、人の命が懸かってんだよ!!」
「懸かってるわよ! 私の命が、生きる為の原動力(食料)が!!」
「向日葵でも食ってろ!! そんな事より明日の作戦は!?」
「む~~……作戦は、私と魔理沙と慧音と真理御で、正面から突っ込み根性で倒す…そんだけよ」
「だからぁ、もっと真面目にしろよ。 お前の仕事だろ?」
「私は、いつも真面目よ。 あと、この作戦は、本当よ」
「………マジで? だ、だってそんな…」
「魔理沙」
「へ? 何?」
「……一つ聞くけど、いつもと何か違う?」
「いつもって…」

適当に、(怪しい所に)突っ込んで、怪しい奴(をみつけて)と、弾幕る。

「で、でも人質は?」
「だから言ったでしょ? 根性って」
「…………………………………………了解……小さい事は気にしない……」
「大丈夫だって! 聞いた所、面倒なのは一匹だけよ。 魔理沙が雑魚を吹っ飛ばして、私がそいつを倒せば終わりよ。 速攻でやれば、人質を盾に、使われる事も無いでしょ」
「…………その事なんだが…私は、明日……本気出さないからな」
「へ? 何でよ?」
「ちょっと……訳ありでな…」
「…ふ~ん…ま、いいか」
「え? い、いいのか? 訳も聞いてないのに?」

これには、言った魔理沙の方が驚いた。
霊夢は、ただでさえ少ない戦力が、さらに少なくなるのにあっさり了承したのだ。

「別にいいわよ。 まったく手伝わないって訳じゃないんでしょ?」
「あ、ああ」
「なら、大丈夫でしょ」
「てっ、お前なぁ…」

コンッコンッコンッ

魔理沙が、霊夢に何か言おうとしたとき、何者かが小屋の扉をノックした。

「はい! どちらさま?」
「失礼します。 お食事をお持ちしました」

どうやら村の人が、食事を持ってきたようだ。
それを聞いた霊夢は、再度壊しそうな勢いで、扉を開けた。

「あ、ありがと~う!! まさか、食事を出してもらえるなんて思って無かったわ。 それで、『お食事』ってどれ?」

扉を開けた先には、年の頃十歳前後の少女が立っていた。
霊夢の勢いに、少し引きながらも、村の人…少女は食事を差し出した。

「こ、これです。」

と差し出したのは、ざるにのった数個の野菜、それだけである。

「なっ? こ、これだ…」
「御馳走だわ!! 胡瓜に人参! ああ!! ナスビまである!! こんな御馳走…い、いいの?」
「……なぁ、霊夢」
「ああ、安心して魔理沙、ちゃんと二等分するから。 こんな御馳走、独り占めしたら罰が当たるわ」
「……お前、いつも何食ってんだ…?」
「何よ急に? そうね、いつもは雑草とか木の実とかね。 春先とかには、土筆とかも生えてて食卓も豪勢になるのよねぇ~♪」
「………これもどうぞ……」

少女が、どこから出したのか、ざるの上に大根をのせた。

「ええ?! いいの?!」
「いいんだ。 霊夢、私の分まで食ってくれ」
「ええ!?! 魔理沙まで?! ほ、本当にこれ、一人で全部食べていいの?」
「ああ、それぐらいで罰は当たらんよ、なあっ!」
「ええ、神様だって、それぐらい許してくれますよ!」
「わ、わ~~、二人とも愛してる~~~~」

その後しばらく、霊夢の狂喜乱舞している声が、夕暮れの空に響いていた。








「ふう~食べた食べた、こんな御馳走、何時以来かしら?」

へたや皮まで食べつくし、満足げな霊夢。

(これからたまには、夕飯ぐらい食わしてやるか)

そう心の中で、決意する魔理沙だった。

「さて、それじゃあ…」
「! …おう」

(作戦会議の続きか? さすがに、あれで終わりじゃないか)

「寝ますか」
「って! あれで終わりかよ!!」
「へ? 何が?」
「作戦会議だよ! 作戦会議!!」

たまらず、魔理沙が声を荒げる。が

「作戦会議って、…まだ何かある?」
「何かって……あるだろ、いろいろと」
「ふ~ん、例えば?」
「例えば、敵はどんな奴等だ、とか」
「亀と栗」
「は……?」
「敵は亀と栗、以上。 他には?」
「…え?…あ、人質ってどんな奴とか」
「知らない」
「へ? し、知らないって?」
「聞いてないもの。 まあ、妖怪の中に、人間が一人いるんだから分かるでしょ」
「そ、そんなアバウトな…」
「いいじゃない、不都合があるわけじゃなし、まだ何かある?」
「……………………………………………なにもありましぇん……」
「なら、寝ましょ。 ちゃんと明日に備えて、寝ておかなきゃね」

納得いかない顔をしながらも、霊夢と一緒に、寝床を用意する魔理沙。
布団を用意し、二人とも寝間着に着替えた。

「さあ、それじゃあ寝ましょうか、寂しいからって布団の中に入って来ないでね」
「そんなことするか! ………なあ霊夢…お前からは、何か聞きたい事は無いのか?」
「? …聞きたいこと?」
「ああ。 例えば…私と、この村の事とか」
「話したいの?」
「べ、別に話したいわけじゃ…」
「ならいいわ」
「へ?」
「魔理沙が、話したくなるまで聞かないわよ。 無理に吐かせたって、意味のある事でもなし」
「そ、そんなもんか?」
「そんなもんよ。 まぁ、話したくなったら、話しなさい。 別に急ぐものでもないし、いつでもいいわよ」
「………………………………」
「という訳で、もう寝ましょ。 今日は、疲れて眠いのよ」

霊夢は、いそいそと布団に入ろうとしている。
そんな霊夢に、魔理沙は『スカイツイスタープレス』をくりだした。

ドフゥ!!!

「げふっっ!! ……な、なにすんのよ!!」
「ごふっ!! ……聞け、今話す気になった!!」
「だからって、下手したら死ぬような技を出す必要がどこにある!!」
「ここにある!! 座って顔を見ながらじゃ話しにくいんだよ!!」
「照れ隠しで殺す気か?! この『ツンデレ』めっ!!」
「意味分からんわ!? いいから、おとなしく話を聞け!」
「ぬぅ~、分かったわよ。 でも、せめて隣の布団に寝なさいよ」

結局、並べた布団に入り、話をする事になった。

「さて、何から話したもんかな?……霊夢?」
「……スゥ…スゥ…」
「……………ええと、筆と墨は……」
「お、起きてるわよ。 さあ、話しなさい。 しっかり聞いててあげるから」
「……本当かよ…まあいい、今度はちゃんと聞けよ」
「は~い」
「……私と兄さん…真理御は、兄妹なんだ」
「うん、しってる」
「霧雨の家は、代々女性が当代を継いできたんだ。 だから、私は生まれてすぐに、次代の当代だと決まっていたんだ」
「…ふ~ん、けっこうおえらいさんだったのね」
「ところが、だ。 先代…母さんが私が二歳の時に亡くなったんだ」
「……それは、ごしゅうしょうさま…」
「いくらなんでも、二歳児に家を継げる訳も無く。 父さんは、入婿で大した能力も無く、仮とはいえ当代を名乗るのは相応しくない」
「………それはたいへんねぇ……」
「そこで、当時『神童』とまで言われていた兄さんが、仮に継ぐことになったんだ」
「…………それはそれは………」
「その頃から、私に対してあんな風になったらしい」
「……………ふ~ん…………」
「それから二年後、父さんが食中毒で亡くなったんだ。 その時に、兄さんが正式に当代になったみたいなんだ。 なんせ、霧雨家は私と兄さん以外いなかったから……本当は、母さんが亡くなった時にも、当代を継ごうとしたらしいんだが、父さんが反対していて、その時は、仮に留まったんだ」
「………………ん……………」
「それからは、結構辛い日々を過ごしたっけな。 家では兄さんに虐待されて、外では兄さんが命令したのか、子供達に虐められ、大人達には無視された。 唯一、香霖だけが話し相手だったな」
「…………………………………」
「……まあ…虐められたり無視されたお返しは、いつもやっていたっけな……落とし穴掘ったり、香霖の所から持ってきたスライムってのを、服の中に放り込んだり…」
「………………………………………」
「兄さんには、いつも虐められていたけどな……やれ『この落ちこぼれ』など『才能の無い雑魚がこの家に生まれんじゃない』とかな。 実際、当時の私は、同じ年頃の子と、比べても情けなかったからな…なんせ、飛ぶのだって殆ど浮いていただけだし、弾なんか障子紙が破れない程度だったからな」
「………………………………………」
「だけど、そんな日々が嫌になって、色んな物持って家を飛び出したんだ! さすがにそのままじゃ、凍え死ぬか妖怪に食われると思ったんで、香霖の所から何か失敬しようと思ってこの小屋に来たんだ。 そしたら香霖の奴『こんな事もあろうかと』とか言って、このミニ八卦炉を差し出したんだぜ。 なんか、見透けられてる気がして、気に食わなかったけど、背に腹は変えられないからな。 コレと、家から持ち出した物と、香霖の所の食料持って、村から飛び出したんだ」
「………………………………………」
「それからが大変でな、夜は寒いわ、妖怪が襲ってくるわ、このミニ八卦炉が無かったら死んでたな。 コレにばかり、頼っている訳にもいかなかったから、必死で修行したぜ。 なんせ妖怪を退治する時ならともかく、動物や魚を捕まえる時は、コレじゃあ消炭になっちまうからな。 おかげで、今のような、超面白格好良い普通の魔法使いになれたんだけどな」
「………………………………………」
「………どうした霊夢?…さっきから静かだけど…」

上を向いていた視線を、横に向けると、そこには

「……スゥ……スゥ……」

眠った霊夢がいた。

「こ…こいつ何時から……? …まあいいか…話もずれてきた事だし……私も寝るとするか」

話し相手が眠ってしまったため、自分も寝ようと布団に潜り込む。

「こうして少女達は眠りについた、明日の悲劇を知らずに……ってか」

一人呟く魔理沙。
やがて、二人目の少女も眠りについた。
こうして夜は更け、日は変わり、朝がやってくる。








「おっっきろ~♪」

ズッドフゥ!!!!

「ゴッッ!! ゲフッ!! ……な…何だ……ゴフッ…」


眠っていた魔理沙は、腹部の衝撃でむりやり叩き起こされた。
何があったのかと思い、視線を向けてみると、そこには…

「…………何のまねだ……霊夢…」

魔理沙の腹部に、『スカイツイスターニー』をきめ、膝を埋没させた霊夢がいた。

「フッ……やられた事は、やり返しておかなくちゃね」
「だからって……これは…やりすぎだろ……ゲホッ!」
「数倍返しは、当たり前でしょ。 そんな事より、聞きたい事があるのよ」

痙攣し始めた、魔理沙の上から降りながら、そう言った。

「そんな事って……てめぇ…」
「昨日の、話のことなんだけど」
「話って…お前、途中で寝てたじゃねえか」
「失礼ね! ちゃんと、寝ながら聞いてたわよ」
「寝ながらって……そんな無茶な…」
「無茶でも何でもいいでしょ。 そんな事より、昨日の話で大体の事情は分かったわ。 でも、いくつか分からなかった事もあるのよ」
「分からなかった事?」
「まず、なんで真理御は、当代になりたかったの?」
「……いや…なんでって言われてもな……」
「だってそうでしょ? 霧雨家って、もうあんたと真理御しか残ってないのよ。 そんな小さな家継いだって、大した意味無いでしょう」
「ああ、そう言う意味か」

いつもの服に着替えながら、魔理沙は説明をする。
ちなみに、霊夢は、すでにいつもの巫女服?に着替えている。

「兄さんは、プライド高いからな。 ただ男ってだけで、家を継げないってのが嫌だったんだろうな。 だから、女に生まれただけで、次の当代に決まっていた私を、毛嫌いしていたんだな」
「くだらない理由ね」
「それに、本家は、確かに私達しかいないけど、分家は結構いるぞ」
「結構ってどれくらい?」
「う~ん…確か、五十人ぐらいだったかな」

この村の人口が、百五十人前後だった筈だから、三分の一は分家という事になる。

「ふ~ん。 五十人の大将になりたかったって………小物ね」
「………………………言うなよ………」
「まあ、いいわ。 …次の質問よ。 あいつ…真理御って強いの? この村では、一、二を争うって言っていたけど」
「う~~ん………しばらく会っていなかったから、詳しくは解らんが……たぶん、正面から弾幕れば、チルノにも負けるだろうな」
「…なによそれ、弱いじゃないの、どこが『神童』よ」
「神童…大人になれば、普通の人ってな」
「………マジ…そんなオチ?……」
「冗談だぜ……本当は、普通の人に比べてってだけだ」
「普通?」
「そう『普通』…霊夢、お前みたいに、吸血鬼でも、幽霊でも、不老不死でも、果ては鬼にさえ戦って勝てるのは、『特殊』なんだぜ」
「……あんたも勝ってるでしょうが……」
「私は普通だぜ。 …まあ、簡単に言えば、アヒルの中の白鳥でも、ティラノザウルスには比べようも無いって事だ」
「ちょっと待て! ティラノザウルスって私の事か!?」
「いや、お前はティラノと言うより、巨大隕石だな。 鳥も蜥蜴も関係なく、吹っ飛ばすしな」
「……………………………………………………」
「ちょ!! そんなざるで、何する気だ!! や、やめろ、顔にそんなもん…痛い!! 痛い痛い、ご、ごめんなさい許してくださいってギャー」
「ふぅ…さっ、次で最後の質問よ」

用を終えたざるを片しながら、悶絶している魔理沙を無視して、そう言い放つ。

「……………………ざ、ざるなんかに……」
「ほら、シャキッとしなさい! …………今度は筆も使うわよ……」
「!! さ、最後の質問ってなんだよ」
「……チッ……最後は、あなたの事よ。 魔理沙」
「私の事?」

何で、私が出てくるのか、解らない? という顔をしている魔理沙に霊夢は。

「今日! 何故!! 本気を出さないのか!! 昨日の話じゃあ解らないわ!! 説明してもらうわよ魔理沙!!」

ビシィッ! と指を突きつける。

「…なんでそんなにテンション上がってんだよ? あと、この指は何だ?」
「ノリよ!!」
「ノリか?! ……つーか、気づいてなかったのか?」
「気づくって、何をよ」
「…………………………………」
「?」
「……兄さんの……面子を守るためだよ……」
「え?」
「兄さんは、自分の方が能力が上だと思ったから、女しかなれない当代に男の身でなりたかったし、なったんだ。 なのに、村を捨てて外に出た、私の方が強いってなったら、ショックだろうからな。…それに、下手すれば私を当代にしよう、なんて輩が出るかもしれんからな」
「あんたを?」
「べつに、私が当代になるのはおかしい事じゃあない。 と、言うより男の兄さんが、継いでる今の方が変だからな。 能力も上で、こんな美少女が現れたらそっちに乗り換えなきゃ変だろ?」
「美少女かどうかはともかく、まあ、女性が継いできたのなら、『あんたみたいな』のでも継ぐのが自然よね」
「いろいろひどいぜ」
「まあ、理由はわかったわ。 ……それにしても…」
「?」
「『兄さんの面子を守るためだ!』だなんて、可愛いとこもあるじゃないの」

霊夢は、微笑みながら魔理沙の頭を撫でる。

「や、やめろ! 頭を撫でるな!!」
「良いじゃないの。 こんな可愛い魔理沙、初めてだわ。 ふふふ」
「お、お前、やっぱり気づいてただろ! 本気出さない理由!!」
「良いじゃないの。 こんな可愛い魔理沙、初めてだわ。 ふふふ」

真っ赤になって嫌がる魔理沙を無視して、霊夢は撫で続ける。
そのとき

コンコンコン

扉を叩く音が聞こえた。

「お食「待っていたわよ!!」…はい」

いつの間にか霊夢は、扉を開け食事を持ってきた少女の前に、目を輝かし仁王像の様に立っている。
端の方で、魔理沙が打ち捨てられている。

「ど、どうぞ、朝食です」

と言って、少女が新聞紙で包まれた物を二つ手渡す。
新聞には『紅い悪魔がコスプレ!?』と書かれている。

「ん?何これ?」
「おにぎりと、おかずですよ。……村長に頼んで、まともな物にしてもらったんです

その説明に、霊夢は目を見開き、魔理沙は少女の顔をマジマジと見た。

「お、おま「こ、これが、御握り!! あの、米を塩で味付けし、三角に形を整え、海苔で巻いた!! あの、御握り様!!」
「え、えと、具は梅干が入ってます」
「う、うめ、梅ぼしぃー!! そ、そんな貴重な物を…神棚、神棚はどこかしら?!」
「い、いえ、貴方が食べて良いんです! しっかり食べてください」
「あ、ありがとぉ~」

霊夢が、涙を流しながらお礼を言い。
少女は、涙を流しながらそれを受ける。
魔理沙は、セリフを邪魔されてへたれている。

「あっ、今日はちゃんと二人分ありますよ。 はい、これが貴方の分です」

と言って、魔理沙にも同じ物を手渡してくる。

「お、ありがとう。 …でも、いいのか? 村長に逆らってこんな事して、お前の立場が悪くなるんじゃないか?」
「良いんですよ。 昨日の巫女様を見ていたら、誰だってこうしますよ。 …それに、別に村長に逆らった訳じゃあないですから」
「え、だって、村長に頼んだって…」
「はい、頼みましたよ。 でも、もともと昨日のような食事を用意させたのって、村長じゃないんですよ」
「村長じゃないって…それじゃあ、いったい誰が…」
「村長の娘の、婚約者さんですよ」
「!! ……なんで、そんな事を…」
「嫌がらせ、でしょうね」
「嫌がらせ?」
「ええ、村長の娘って二人いるんですけど……今回、指示したのは姉の桃さんの婚約者さんです。 名前は、霧雨だったかな?」
「…………………………」
「まあ、今回のは次期村長争いの余波ですね。 妹の婚約者さんの流射寺さんが、昨日何故か倒れまして、しばらく動けそうに無いんですよ。 だから、今回妖怪が攻めてきた時、霧雨さんが活躍して桃さんを助ければ、次の村長は、霧雨さんになるかもしれないんですよ」
「……それで…なんで、嫌がらせを…」
「巫女様に活躍されたら自分が活躍できないからじゃないですか?」
「…………………………」

魔理沙が黙り込み、話が途切れ、空気が重くなった感じがする。
少女は、それに耐えられなくなったのか

「そ、それじゃあ、私は行きますね。 今日は頑張ってくださいね」

と言って、去っていった。

「…………………………霊夢…すま」
「きゃあぁぁぁ!! こ、これ、お肉よ! しかも、味噌つけて焼いてあるわ!」
「…………………………」

魔理沙は、何かを言いかけて、霊夢を見て言うのをやめた。

「…………昨日も、喜んでたし…いいか」

魔理沙も、朝食のおにぎりを食べた始める。
梅干が、酸っぱかった。










そして、昼を迎えた。
霊夢と魔理沙は、村の入り口付近で慧音が来るのを待っていた。

「遅いわね。 何してるのかしら?」
「あいつだって遅れる時ぐらいあるさ、それに、もうそろそろ来ると思うぜ」

魔理沙が、何の根拠も無い言葉を吐いたが…

「あ、きたみたいね」
「お、本当にきやがった」

慧音が、飛んでくるのが見えた。

「おそいわよ~、早くきなさい」
「ん? なんかあいつふらついてないか?」

魔理沙の言うとおり、慧音は飛んではいるが、フラフラしていて今にも墜落しそうである。
しばらくして、慧音が到着した。

「……待たせたな…」
「待ったわよ…やけにボロボロね」
「待ったぜ…顔もやつれているな」

二人の言うとおり、慧音は所々焦げて破れた服を着て、顔もやつれ今にも倒れそうである。

「何かあったの?」
「あー、少しな…」
「少しって何だよ? はっきり言え」
「……昨日の晩からさっきまで、輝夜と妹紅が暴れていたんだ……」
「そんなの、いつもの事じゃない。 なんで、そこまでボロボロになっているのよ」
「………争っている最中に飛び火してな…永遠亭が火事になったんだ…」
「火事ねぇ…それで、そこまでボロボロになったってわけか…」
「いや、火事自体は一時間ほどで鎮火できたよ。 …ただ、その間消火を手伝いもしないで暴れ続けていた二人に、永淋殿が激怒してな…」
「まぁ、そりゃあ怒りもするわね。 それで、永淋が見境無く暴れて、それに巻き込まれたと?」
「…………………………」
「? どうした? 黙り込んで?」
「…そのな…つい……永淋殿に便乗して、私も暴れてしまってな……」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「で、妹紅と輝夜はどうしたの…」
「桜の木のし…」
「もういい! わかったから」

元来、まともな人が、一旦キレると手がつけられないモノである。

「に、しても……やけに消耗してるみたいだが、これから一戦……できるか?」
「…………………………………」
「駄目か………」
「……すまない…」
「まあ、いいわ。 慧音は、村の守りを頼むわ。 私達が戦っている間、よろしくね」
「そうだな、何だかんだ言っても怪我人もいるしな。 誰か一人ぐらい、残ってるべきだな」
「……………………わかった、例えこの命が潰えようとも、この村には、指一本触れさせん!!」
「………ほどほどにね…」

三人で、作戦?を考えていると、そこに…

「ちっ! 獣臭ぇ…」
「あん?」
「獣臭いって言ったんだよ! そんな妖怪なんか、村に入れんじゃねえ!」

真理御である。
彼も戦闘準備ができ、村の入り口に、やって来たようだ。

「そん…」
「喧しい」

何か、悪態を吐こうとした真理御を、霊夢が遮る。

「これ以上、被害が出ないと言えるの? 数は、随分向こうの方が上よ。 村の中には怪我人もいるし、子供もいるのよ。 ここで慧音を追払ったら、そんな村の人達が死ぬかもしれないのよ。 貴方が、その責任を取るの? いくら責任を取った所で、死者は生返たりしないのに? 慧音がいたら守れるかもしれないのに? そんなに誰か死んで欲しいの?」

真理御を見据え、淡々と語る霊夢。

「なっ!…そ、そいつがいたって、守れないかも知れないじゃないか!」
「守れるかも知れないのよ。 打てる手が有るなら、打っておくべきよ」
「グッ……!」

真理御は、しばらく霊夢を睨み付けていたが、何も言わず立ち去った。

「フン…根性無しね」
「…すまんな」

慧音が、霊夢に謝るが…

「気にしないでいいわよ。 あんたの為に、した事じゃあないから」
「え?」
「……すまんな」
「気にしなさい。 あんたの為に、した事よ」

謝る魔理沙に、霊夢はふんぞり返る。

「……てい」
「ふぎゃっ!!」

霊夢は、足払いをされ、尻餅をつく。

「何すんのよ!」
「私じゃないぜ、てゐがやったんだよ。 さっきの掛け声が、証拠だ」
「どこにウサギがいる! それに、思いっきりあんたの声だったでしょうが!!」
「………平和だな…」

逃げる魔理沙
追いかける霊夢
それを眺める慧音
確かに、平和だった。

「ほらほら、そろそろ来る頃だろ? 私は、村の中に行ってるからな」
「もうそんな時間か、霊夢がいると時間が経つのが早いな」
「あんたのせいでしょう!!」

視線を村の外に向けてみると、遠くの方に黒い影が、ちらほら見え始めている。

「……しかたないわね…いくわよ、魔理沙」
「了~解」

二人は飛んで、村と黒い影の中間地点に降り立つ。
しばらくして、真理御も駆けつけたが、ふて腐れているのか、目も合わそうとしない。
こうして、静かに戦いは始まった。








「…………八十匹には、見えないんだけど……」
「…………私には、二百匹はいる様に見えるんだが……」
「…………繁殖したのか? 桃栗三年柿八年ってのは嘘だったのか?」
「…亀なんか万年よ」
「…それは寿命だ」

妖怪達は、残り八十匹と言う情報を余所に、ざっと見ただけでも、三倍近くいる様に見える。

「何で、こんなに増えているんだ!?」
「知るわけ、無いでしょ!」

真理御が、霊夢に叫び、霊夢も叫び返す。
すると…

「……霊夢、あいつ等、なんか変じゃないか?」
「ん?変って?」

真理御の襟首を、掴んで揺すっていた霊夢に、魔理沙が呼びかける。

「なんか……動きが、単調というか……一定、と言うか…」
「……言われてみれば…」

確かに、妖怪達の動きは、目に見えて変だ。
まるで何も考えないで歩いているだけの様だ。

「……そういう事ね…」
「な、なにが…そういう事なんだ…?」

一人、納得している霊夢に、頭をフラフラさせながらも真理御が、問いかける。

「こいつ等、妖怪じゃないわ」
「なに? ……ああ! そういう事か」
「……わからん……お前等、説明しろ」
「………見たら解るでしょ……」
「解らんから聞いているんだ!! さっさと言え!」
「たくっ、これくらい解りなさいよ。 とどのつまり、こいつ等は、使い魔みたいなもんよ」
「使い魔!? こいつ等がか?」

使い魔…要するに、魔法で作った家来である。 自分で作り出す以外にも、召喚して使役する場合もある。

「驚く事、無いわよ。 見た感じ、質より量で作ったみたいね。一匹の力は、大した事ないわ」
「だからって……この量は…それに、使い魔ならいくら倒しても、また増えるんじゃないのか」
「まあ、確かに、この数は面倒だし、さらに増やされるのは勘弁してほしいわね」
「なら、戦法は決まったな」
「そうね」
「なに? お前等、どうする気だ?」
「「強行突破してボスを倒す」」

言うなり、霊夢と魔理沙は、敵に突撃していく。

「ちっ! 考え無しが!」

文句を言い、それを追いかける真理御。

「そうれ!」
「おりゃあ!」

霊夢が針を、魔理沙が魔弾をそれぞれ放つ。
それに当たった、栗型と、亀型の使い魔達は、一撃で消滅した。

「思ったとおり、大した事無いわね」
「ああ、だが少々多すぎるぜ」

一撃で消滅するとはいえ、数に差がありすぎる。

「ふん、思ったよりかは、できるみたいだな。 だが、この程度じゃあマダマダだな、この俺の技を見てみろ!」

そう言い放ち、真理御が、数個の火の玉を放つ。
火の玉に、当たった使い魔達は、爆発四散し消滅した。

「どうだ!!」
「……派手ね…やっぱり魔理沙の兄妹ね」
「…地味よりかは、いいじゃないか……」

使い魔達が、今までの攻撃で敵とみなしたのか、攻撃をし始めた。
栗の使い魔が、走り突撃をし
亀の使い魔が、羽を生やし、空から突撃をする。

「突撃ばかりか」
「魔理沙みたいね」
「…ひどいぜ」








霊夢たちの向かう先には、おそらくボスと思われる、大亀がいる。
その視線は、霊夢を見続けている。

「あれは……博麗…博麗霊夢……ふ…ふはは…ははははは! …そうか、わしを退治しにきおったか」

笑ってはいるが、その目には憎悪と恐怖がこめられている。

「ただではやられんぞ!! 腕の一本は貰っていくぞ!! はあぁぁぁぁ!!」








「ふう…だいぶ減ってきたわね」
「って、ほとんど、何もしてないじゃないか」

最初の方こそ、霊夢も戦っていたが、途中から面倒になったのか、殆ど見ていただけである。

「そう言うあんたも、あんまり役に立ってないじゃないの」
「私はいいんだよ」

魔理沙は魔理沙で、真理御を気にしているのか、わざと敵から弾を外したり、一発で倒せる敵を弾の威力を弱め、数回に分けて倒したりしていた。

「なら、私もいいのよ」
「いい訳あるか! 弱い奴はともかく、あんたは少しは手伝え!!」

一人で、六割近く倒した真理御が、霊夢に詰め寄る。

「いいじゃない。 元々は、あんた等だけでやる筈だったんだから」
「だからって…」
「お? 敵の増援か?」

霊夢と真理御のやりとりを眺めていた魔理沙だが、ふと、妙な気配を感じて、顔を向けてみれば…
遠くの方に、新たな敵の影が、見え始めた

「ちっ! まだいるのか! おい! 博麗、今度はあんたも、ちゃんと戦えよ……」
「しょうがないわね。 増援ってどんだけ……」

言いかけた姿で、二人の動きが止まる。 なぜなら…

「なんじゃこりゃぁあぁぁぁ!?」

敵の増援の数、約八百
亀や栗だけでは無く、植物みたいな奴や、弾に顔がついた様な奴、はては爆弾みたいな奴までいる。

「ちょっと! いくらなんでも、多すぎよ!!」
「くっ、やるしか無いのか?」
「………………………」

霊夢と真理御は騒ぎ、魔理沙は何かを考え込み始める。
それを見た霊夢は、魔理沙に耳打ちをした

「ちょっと魔理沙、こういうのは、あんたの得意分野でしょ。 一気にやっちゃってよ」
「私も、それを考えていたんだが……霊夢のスペルでどうにかならないか?」
「無理よ。 私のスペルじゃあ、あんだけの数は対処できないわ」

霊夢のスペルカードは、基本的に一対一、または一対多数であるが、さすがに八百は範囲外である。
対して
魔理沙のスペルカードは、一対無数、はっきり言って一対一や、一対多数に使うには、かなり無理がある代物である。 だが、今回の様に敵の数が、異常な程の数ならば、これほど効果的なものは無い筈である。

「………仕方ないな……少し時間を稼いでくれ」
「え? 何を…」
「おい! おまえら、何やってる!! さっさと、手伝え!!」

ひそひそしてるのが、気になったのか
火の玉を撃ちながら、叫びを上げる真理御。

「少し時間を稼いでくれ!! さっき、霊夢が仕掛けたヤツを発動してくる!!」

そう叫び返し、魔理沙が、戦線から離脱しようとする。

「何? ちょっと待て、おい!」
「ちょ? 魔理沙!!」

二人が止めようとするが、すでに距離が開いていて声が届かない。

「ちっ! おい、仕掛けたモノってなんだ? 役に立つのか?」
「……………………」

(……私が、仕掛けたモノのせい、って事にするつもり? そんな事で、騙されるとは思えないけど…)

「おい! どうなんだ!? 答えろ!!」
「……ちょっとした、大量破壊兵器みたいなモノよ。 ちょっと時間を稼いだら、一旦逃げるわよ」

そう言い、針を投げ放つ。








「……ここからなら、判らないだろ」

魔理沙は、霊夢達から離れた丘に、一人立っている。

(これだけ離れていたら、何をしているか分からないだろ。 兄さんは、私を格下だと思っている筈だし、なんとかばれないだろ)

そんな事を考え、魔理沙はミニ八卦炉を構える。

「ちょっと、ストレス溜まってるから思いっきりいくぜ」

八卦炉に、魔力が集中され、唸りを上げ始める。
段々と、唸りが大きくなり、八卦炉が蒼く輝きだした。

「いくぜ!! 私の魔砲は、うまく避けないと、死体も残らねぇぞ」

そう叫び魔理沙は、使い魔の群れに狙いを定め、盛大に魔砲を解き放つ。

『ファイナルマスタースパーク』








「くっ、まだか!?」
「もう少しよ。 がんばりなさい」

霊夢と真理御は、時間稼ぎとして戦っていた。
霊夢の方は、まだ余裕があるが、真理御の方は、疲れが見え始めていた。

「いつまで時間稼ぎを、すればいいんだ!」
「私の勘では、そろそろよ」
「勘か!?」

真理御が、文句の声を上げるが

「!! 今よ! 全速離脱!!」
「なっ!! くそっ」

霊夢が離脱した為、真理御も急いで霊夢を追いかけた。
その刹那、大きな…山をも飲み込んでしまいそうな光の奔流が、使い魔達に襲いかかった。

「うお?!」

あまりの光景に、驚愕の声を上げる真理御。
光の奔流が去ったあとには、使い魔達はその数を激減させていた。
残っていた使い魔は約八百、それが今では百も残ってはいまい。
実に七百以上の使い魔達が、先程の一撃で消し飛んだのである。

「………こ…これが……博麗の能力……か…」

(いや、あんたの妹の能力なんだけどね)

真理御が、畏怖の篭った目で霊夢を見るが、当の霊夢は、そんな事を心の中で突っ込んでいた。
と、そこに魔理沙が帰ってきた。

「おお~い! ちゃんと避けたか?」

そんな事を言ってくる魔理沙に、霊夢は…

ズッッパン

お札を、纏めて作ったハリセンで、ぶっ叩いた。

「いってぇ~~!! 何すんだよ! 霊夢!!」
「『何すんだよ!』じゃ、ないわよ!! 撃つなら撃つで、合図ぐらい出しなさいよ!! もう少しで、巻き込まれる所だったわよ!!」
「うっ…」

そう、文句を言ってくる霊夢に魔理沙は…

「ま、まあいいじゃないか。 結局、巻き込まれなかったんだから」

ズッッパン

再度、殴られた。

「反省しなさい」
「くぅ~~」

殴られた頭を押さえて、うずくまる魔理沙。

「……ところで…さっき吹っ飛ばした中に、桃はいなかったろうな…?」
「「あっ」」
「『あっ』って何だ!? お前等、人質の事忘れていやがったな!!」
「忘れていたわ」
「忘れていたぜ」
「き、きさまら~」
「だ、大丈夫よ。 たぶん人質は、ボスの所にいる筈だから……たぶん…」
「そ、そうだぜ。 たぶんボスが落ちたら、残りの使い魔達は消える筈だから、ボスの所まで届いてない筈だ……たぶん…」
「『たぶん』って何だ!?」

顔を青くして、叫ぶ真理御。
と、そこに…

「貴様等! よくも、我が使い魔達を消してくれたな!!」

地面が弾け、中から大亀が出て来た。

「お? 地面から亀が出て来たぞ。 冬眠明けか?」
「大きいわね。 食いでがありそうだわ」
「何言ってる! あれが、敵のボスだ!!」

地面から現れたのは、体長だけでも魔理沙や霊夢の、倍以上はあるボス亀だった。

「貴様等!! 何をふざけている!! 人質の事無視して、あんな凶悪なもの使うとは、お前等本当に人間か?!」
「無視したのは、こいつ等だけだ!! 桃は、人質は、無事なのか?!」
「無視したんじゃなくて、忘れていただけよ」
「私もだぜ」
「「お前等!! ちょっと、黙ってろ!!」」

緊張感の無い二人に、真理御とボス亀が怒鳴った。

「先に教えろ! 人質はどこだ!! 無事なんだろうな?!」
「……ふん。 まあ、いいだろ。 教えてやるわ! 人質はさっきまで、そこに居たんだがな…」

そう言い、真下の地面を指差す。
そこは、先程の光撃の痕だった。

「ま、まさか、さっきの攻撃で…」

真っ青な顔をして、そう問い返す真理御。

「そうだ!! …と、言いたい所だが…光が当たる前に、地面に潜らせ、今はそこの地面の下に埋まっておる」
「…………お前が助けたのか?……」
「ああ、そうだよ!! 妖怪が、人間の攻撃から、人間を守るなんておかしいだろ!!」

妖怪としてのプライドが、傷ついたのか叱り付けてくる。

「大体、お前等…」
「うるさい!! 桃が無事なら、それで良い。 お前等、妖怪やこいつ等の事なんか、どうっだていい!!」
「む」
「博麗! 魔理沙! 手を出すな!! 俺一人でやる」

そう言い、真理御は、いつでも火の玉を撃てる様に構えをとる。

「大丈夫なの?」
「ふん。 博麗だけに、活躍されるのは嫌なんでね。 黙って、そこで見ていろ!!」
「小童が!! そんなに死にたいのなら、さっさとかかって来い!!」

ボス亀も構えをとり、両者とも臨戦態勢に入る。
そんな二人から、距離を取りつつ、霊夢と魔理沙は…

「勝てると思う?」
「さあな……亀の方も、あまり強く無さそうだし、作戦次第で勝てるんじゃないか」
「そうね…賭ける?」
「………巫女が賭博すな。 それに賭ける物、何も無いだろ」
「失礼ね。 まだ服や、賽銭箱があるわよ」
「……………………賽銭箱まで、賭けるなよ……」

そんな二人を無視しつつ、真理御とボス亀の戦いが始まった。

「貴様ごとき、雑魚。 俺一人で、片付けてくれる」
「ふん。 本命前の、前哨戦だな。 かかってこい」
「けっ! 偉そうに! そんなに言うなら、コレでも喰らえ!!」

そう言い放ち、真理御が振りかぶった。

「喰らえ!! 三連火の玉!!」

真理御から放たれた、三つの火の玉が、ボス亀に当たり爆発する。

「どうだ!!」

爆発の煙が、晴れたそこには、無傷で浮かんでいるボス亀がいた。

「ば、ばかな!? 直撃した筈だ!!」
「直撃して、この程度か……思ったより雑魚だな」
「くっ! ま、まだだ!! もう一度、喰らえ! 三連火の玉!!」

真理御から再度、三つの火の玉がボス亀に飛ぶが…

「しゃらくさいわ!! ブッハァァー」

ボス亀が口から吐いた火が、火の玉諸共、真理御を飲み込む。

「ぐわぁぁぁ!!」
「兄さん!!」

真理御が墜落しかけるが、途中で魔理沙が助け出す。

「兄さん!! 大丈夫か?!」
「グッ…ゥゥウ」
「兄さん……」

気を失ったのか、真理御は苦しげに呻くのみ。
魔理沙は、安全だと思われる場所に、真理御を寝かせ、傷を診る。

「……やってくれたわね…」
「次はお前か? 博麗 霊夢!!」
「あんたに恨みは無いけど、これも生活の為、倒させてもらうわ」

今度は、霊夢がボス亀と、戦いを始め様としている。
しかし…

「待て! 霊夢」
「魔理沙……真理御は大丈夫なの?」
「ああ、怪我は大した事無い。 せいぜい火傷ぐらいだ。 しばらくしたら、気がつくだろ」
「そう」
「そんな事より…次は、私がやらせてもらうぜ」

そう言い、構えをとる魔理沙。
それも聞き、霊夢は…

「あんたが戦うのは、構わないけど……大丈夫なの?」
「何がだ?」
「なにがって……真理御が…って、そう言えば気絶してたわね」
「気絶はしてるが…何時起きるか分からんから、全力は出さないぞ」
「って、それで勝てるの?」
「まあ、大丈夫だろ。 いいから見てろ」

結局、魔理沙が戦い、霊夢は見学に決まったらしい。
霊夢は、真理御が寝ている傍に、降り立つ。

「どっちからか、決まったか?」
「私からだぜ…もっとも、私で終わりだがな」
「フンッ! 威勢が良いのは、昔と変わっとらんな」
「? 何処かで会ったっか? 亀?……って、まさか!」
「やっと思い出したか。 久しぶりじゃな」
「久しぶり…って、何で、こんな所に? それに、前はもう少し小さくなかったか?」
「……ワシは昔、神社から逃げ出した時から、ここらで暮らしておる」
「逃げ出したって? 旅に出たんじゃなかったのか?」
「……やはり…聞いておらんか? 」
「? …何を?」

魔理沙の質問に、ボス亀は沈痛な表情で答えた。

「あの年……博麗神社から逃げ出した年じゃが、あの年の冬は、この間程では無いが、かなり長く続いとった」
「それがどうかしたか?」
「あまりに長いので、神社の備蓄が尽きてな」
「…………………………………………」
「何とか春が来るまで、生き残ろうと、畳や茶葉で食い繋いでいたんじゃ」
「茶葉はともかく畳まで食うなよ………って、まさか…」
「その、まさかじゃよ。 そこの鬼畜巫女は、畳や茶葉を食い尽くすと、長年連れ添った相棒とも言えるワシを、鍋にして食らおうとしたのじゃ!!」

ズビシィとボス亀は、霊夢を指差した。
興奮しすぎたのか、ボス亀の口からは煙が出ており、今にも火を吹き出しそうである。

「ん? なんか言った?」

聞いてなかった様だ。

「き、聞いてなかったのか?」
「何を?」
「あいつの話だ! あいつの」

と魔理沙は、ボス亀を指差す。
ボス亀は、顔を真っ赤にして、今にも襲いかかりそうな目で、霊夢を睨みつけている。

「敵の話なんか、聞いてられないわよ。 こっちは、こいつの手当てで忙しいのよ」

そう言い、気絶している真理御に、緑色の軟膏らしき物を塗っている。
どうやら、断続的に呻き声を上げる真理御をみかねて、手当てをしていた様だ。

「お、お前なぁ……今は敵でも、昔からの知り合いなんだから、話ぐらい聞いてやれよ…
「え? あの亀、魔理沙の知り合いだったの? まさか、何かの実験で妖怪化した……なんて言うんじゃ、ないでしょうね。
「そんな訳あるか!! ………違うよな?」

思い当たる事があるのか、自信無さげに、ボス亀に聞く。

「…あの時の恨みや怒りが、ワシをこんな姿にしたんじゃろ……もっとも、元々仙亀だったワシじゃから、これ程の能力が身についたんじゃろうな」
「あー……そこまで霊夢を恨んでいたのか…」
「当たり前じゃろ! 信じてた相手に裏切られ、鍋にされて食われかけたんじゃぞ!!」
「……………………………………」

(……話を聞くと、全ての原因は霊夢なんじゃないか?)

「どうしたんじゃ? 黙り込んだりして」
「い、いや、なんでもない! ……それはそうと、そろそろ始めないか?」
「む……ワシとしては、あやつを殺りたいんじゃが……お主とは、あまりやり合いたくないしの」
「そっちが弾幕りたくなくても、こっちはそうはいかねぇ! 一応とは言え、故郷を襲われ、兄さんを殺られたんだからな」
「いや、まだ死んでないわよ」
「兄さんの仇討ち!! つきあってもらうぜ!!」
「だから、まだ死んでないって」

霊夢の突っ込みを無視して、一人と一匹の戦いが始まった。

「仇なら仕方ない……だが! 昔のワシと同じと思うなよ! 見よ、ワシの新しい能力!! 三色甲羅弾!!」

ボス亀の手から、三色…赤青黄の三個の甲羅が打ち出された。

「避けれるものなら、避けてみよ!!」
「何だこの程度……って!!」

魔理沙が、軽口を叩こうとしたその時、三つの甲羅がそれぞれ変化した。
赤の甲羅は、複数の火の玉となり、ばら撒かれた。
青の甲羅は、羽根を生やし、円を書きながら、迫ってくる。
黄の甲羅は、光り輝き、その場で回転をし始めた。

「くっ! この程度で…」

魔理沙は、迫り来る火の玉を全てかわし

「のっ、まだまだ!!」

青の甲羅を避け

「うお! あぶね」

回転をしたまま突っ込んできた、黄の甲羅を踏み越え
全てをやり過ごしたと思った、その瞬間

「うおっ!? あっちぃ!!」

ボス亀の吐いた火に、突っ込んだ。

「ふっはははは、だから言っただろ? 昔と違って、火を吹けるんだからな」

ボス亀が、愉快そうに笑う。 だが…

「そうだな。 危なく兄さんと、同じやられ方をする所だったぜ」
「なっ!?」

火を突き抜け、蒼い光りを纏い魔理沙が出てくる。

「おかげで、せっかくのスペルカードが台無しだ」

その手にする、スペルカードは『彗星 ブレイジングスター』
どうやら、三つ目の甲羅を避けきった時に使い始めて、魔力を身に纏い始めた瞬間に、火に突入たおかげで、途中まで開放していたスペルカードは使い物にならなくなったが、魔理沙は無傷で脱出できたみたいだ。

「ちっ、速攻で決めてやろうと思ったのに」
「くっ…運の良い奴め」
「今度は、こちらからいくぜ?」

魔理沙は、魔弾を放ちつつ攻撃宣言をした。
魔弾は、外れる事無くボス亀に突き進んでいく。
が…

「ふんっ!!」

確かに魔弾が、命中したにも関わらず、ボス亀にダメージは無い。

「この程度の攻撃では、ワシの甲羅に傷一つ付けるできんわ!!」
「ちっ! 頑丈な甲羅だぜ」
「さあ、今度も避けて見せろ!! 三色甲羅…」
「甘い!! まだこっちの攻撃は終わってないぜ!」
「何!?」

魔理沙は、再度放たれようとしていた三色の甲羅に向かって、魔弾を放つ
甲羅と魔弾は、ボス亀の至近距離で爆発した。

「くっ! 小癪なマネを……おのれ! どこ行った!?」

爆発に気を取られた瞬間、ボス亀の視界から魔理沙の姿が消えた。

「ちぃ! どこにいる!? 姿を現せ!!」
「ここだぜ」

ボス亀の後ろ、甲羅から声が聞こえた。

「ぬっ! 貴様離れろ!!」
「嫌だぜ……確かにお前の甲羅は頑丈だが、その甲羅の中に撃ち込まれたら、どうなるかな?」
「なっ!? は、離れろ!!」
「嫌だといったぜ? 喰らえ! これが私の魔法だ!!」

魔理沙は、ボス亀の右腕と甲羅の隙間から、魔弾を撃ち込む。

「がっ!? ぐわぁぁぁ!!」

ボス亀の甲羅の中で、魔弾が炸裂した。
その結果、ボス亀は倒れ血を吐き、甲羅も割れ穴の開いたところから、出血もしている。

「ぐっ……がぁ…ワシの負けじゃ……止めを刺せ…」

倒れた姿のまま、そんな事をボス亀が言うが…

「だとさ…どうする? 霊夢」
「う~ん、これで懲りたんなら、別に止めはいらないんじゃない?」
「なっ!?」
「あっ、ちゃんと人質も返してよ」
「村を襲ったワシを逃がすと言うのか…?」
「だって、私が受けた依頼は、村の護衛だもの。 村を襲った妖怪の、殲滅は対象外だわ」
「あんまり、役に立って無い気がするけどな」
「うるさい!」

(……変わっとらんな……敵をわざわざ逃がすとは……まだまだ甘い……)

「ほら! さっさと、帰りなさい! あんたも一応は妖怪なんだから、もう動けるでしょ?」
「……帰れと言われてもな……ワシには、帰りたい場所など無いわ。 一度でも逃げ出した奴には、帰れる場所など必要ないわ!」
「…………………………」

(帰りたい場所……私は……魔法の森…違うな……あそこは住み着いているだけだ、この村……故郷か? 一度、嫌で逃げ出したのに?)

ボス亀が自己嫌悪に陥り、魔理沙が思い悩んでいる。
それを霊夢は…

「そんなの知るか!! さっさと帰りなさい!!」

無視した。

「帰りたい場所が無いっ!? 帰れる場所など必要ないっ!? 甘たっれるなっ!! こっちなんか、帰れる家が瓦礫になってんのよ!! もうゴミとして見た方が早いぐらいよ!! それでも私は、そこに早く帰りたいのよ!! だから、あんたもさっさと帰りなさい!!」
「いや、意味わからんぞ霊夢」

我侭?を言い、暴れる霊夢
それを呆れた顔ながら、突っ込みを入れる魔理沙

(懐かしいのう……この空気……ワシはここに帰りたいんじゃろうな……じゃが…)

「ならば帰れ!! ワシも何処へなりと去ろう。 もう、この村は襲わん! これで護衛する必要もなかろう」
「ちょっ!?…お前それで良いのか?」
「良いも何も無いじゃろ? 人間の村を襲った妖怪が、退治され追払われるだけじゃ」

(これでいいんじゃ……人間を襲った妖怪が、この者達に関わろうなぞ、あってはならん! まして、ワシは一度逃げ出した身、今更あの頃に戻る事はできまい)

「あっそう。 それじゃあ、私も帰ろうかな?」
「ちょっ! 霊夢まで…」
「何よ? 何か問題ある?」

慌てる魔理沙に、何を慌てているのか分からない霊夢
そして、その場を飛び去ろうとするボス亀

「それではのう、これで失礼する」
「あっ…」

ボス亀が飛び立とうとした、その時

「グアッ!!」

先程、魔理沙が開けた、甲羅の穴に火の玉が直撃した。
ボス亀は、再度血を吐きその場に倒れた。

「なっ!! 誰だ!? 何しやがる!!」
「何をするとは、こちらのセリフだ!! 何故、そいつを逃がす? 魔理沙! 博麗!」
「あんた……」

火の玉が、飛んできた方向を振り向くと、何時から気づいていたのか、気絶していた筈の真理御が起き上がっていた。

「そいつは村を襲い、村人を傷つけ、桃を攫ったんだぞ! なんで、殺さん!?」
「もうこいつは、人を襲うことは無いわ。 だから退治しないし、させないわ、これ以上やるなら、私があんたを退治するわよ」
「くっ…何でそこまで、こいつを信用できる!! すぐに人を襲うかも、しれんのだぞ!!」

どこか怯えた感じで、真理御は詰問する。
その詰問に、霊夢は…

「私の勘よ。 私の勘は、よく当たるんだから」

と答えた。

「勘だと?……話にならんな、今回だけは見逃してやる! ただし、今後一再! 村に近づくな!! 魔理沙に博麗、貴様等もだ!!」
「どっちが、話にならないのよ。 あんた、ねえ…」
「いいんじゃよ、霊夢殿」

霊夢と真理御の言い争いに、倒れていた筈のボス亀が口を挿んだ。

「ワシは確かに、この村を襲い暴れたんじゃから…殺されても文句は言えん。 見逃してくれると言うのなら、儲け物じゃて」
「……あんたが良いなら、それで良いけど……でも、魔理沙、あなたはそれで良いの?」
「………いいぜ…どうせ一度捨てた故郷だ、何も問題ないぜ…」
「………………………………」

そっぽを向きながら、答える魔理沙

「ならば、さっさと立ち去れい! 村の連中には、俺から言っておく!!」

その言葉を受け、ボス亀が飛び立とうとするが

「あっ! ちょっと待ちなさい!!」
「? …まだ何か?」

霊夢が、声を掛け呼び止める。

「私は、大抵神社にいるから、たまにはお茶を飲みに来なさい」
「えっ!? し、しかし、ワシは人を襲った妖怪ですぞ…そんなのを…」
「何言ってんのよ、こんな程度で。 ウチには、幻想郷を赤い霧で覆った吸血鬼や、春を奪った亡霊嬢、果てには月を隠した月人や鬼まで来るのよ。 今更、亀一匹増えても何も変わらないわ。 こんちくしょう!」
「し、しかし、ワシは…」
「それにね」
「え?」
「一度逃げ出したからって、そこにもう戻ってはいけない! なんて法律、幻想郷には無いわ」
「!! ……なっ!?」
「だから、偶には遊びにでも来なさい。 ねっ玄爺」
「…はい………はいっ!……」

今度は、立ち止まる事無く飛び去って行く、ボス亀…玄爺
それを見送りながら、魔理沙が

「何時から、気づいてたんだ…?」
「そんなの、最初からに決まってるでしょ」
「最初からって…」
「あんな変な亀、幻想郷にも、そういないわよ」

(そんな理由か!?)

「さあ、私達も帰りましょう」
「え? 帰るって、どこに?」
「何? 今日は寄ってかないの?」

飛び立ちながら、そんな事を、霊夢が聞いてくる。

「………………くっ…」

(帰る…か……帰りたいな、あの神社に…なんだ、私にも帰りたい場所、あるじゃないか)

浮いている霊夢を見、先程の霊夢の言葉を思い出す。

『一度逃げ出したからって、そこにもう戻ってはいけない! なんて法律、幻想郷には無いわ』

(確かにそうだな……でも、そこに戻るより、もっと帰りたい場所が、出来ちまったな…)

「?…魔理沙、どうかしたの? 急に考え込んだりして」
「……霊夢」
「何よ?」

(お前に、こんな意図があったか知らないが、こいつは言っておきたいぜ)

 夢でも、二度と言わないぞ
 霊夢、聞き逃すなよ
 うっかり言おう物なら、からかわれるだろうが
 と・く・べ・つ・だ!!
 が、いつかお前にも
 り・し(ハ~ト)を付けて返してもらうぞ

「ありがとう霊夢」








数日後、博麗神社

「…と、言う訳で、真理御が次代の村長に決まったらしい」
「そんな事だと思った…」

すっかり、建て直した神社の縁側で、霊夢と慧音が話している。
その後ろの方ではいつものごとく騒いでいる者たちがいる。

「どうりで、すぐに返した訳だわ」
「まあ、そう言うな。 実際ヤツが、一人で妖怪を退治したと、英雄視されたおかげで、村の者達から恐怖や不安が薄れたんだからな。 本当に村を救った英雄かも知れんぞ」
「ふ~ん、にしても『霧雨 真理御』村長か……」
「いや、それは違うぞ」
「?違うって…何が?」
「あいつは、婿養子になるから『妃女 真理御』村長だな。 これにより、あの村の霧雨家は妃女家に吸収され、分家の連中も妃女家配下になったんだ、これであの村もより一丸になる事だろう」
「ふ~ん、どうでも良いわね。 それより、今度からは、こんな事なしにしてよ」
「ああ、すまなかったな。 それならば、大丈夫だと思う。 もう、あそこの村が、妖怪に襲われることも無いだろ」
「え? なんで?」
「実はあの後、あの村も隠せる様になったんだ」
「へぇ~それは、おめでとう。 でも、この短期間でどうやって、そこまで能力上がったの?」
「それがな、実は、あの村を隠せなかったのは、村の連中の能力のせいでは無かったんだ」
「へ?」
「どうやら、私の疲れとあの妖怪亀…玄爺と言ったか、あいつが暴れた後に残っていた、妖気のせいだったんだ」

そう言い、庭でチビッ子達(氷精や黒猫に宵闇の妖怪)に遊ばれている、玄爺を見やる。

「妖気って……そんなに残っていたっけ?」
「いや、この間、戦いの朝に行った時には、すでに消えていたよ」
「って、一週間程度で消える妖気で…」
「…まあ、それ程疲れていたという事だ…」
「何で、そこまで疲れてんのよ?」
「………しばらくの間、妹紅と輝夜が、毎日の様に弾幕りあってな……毎日毎日、竹林や永遠亭などの、被害のあった場所の消火や修理で疲れ果てていたんだ…」
「………お疲れ様…」

(だからこの前、あんな事に…)

「……さて、そろそろ私は、お暇させていただくよ」
「え? もう? もう少しゆっくりして行きなさいよ」
「ありがとう、でも、そろそろあいつ等も、掘り返してやらなければ、いけないからな」
「……まだ埋めてたの…」

そうして慧音は、飛び去って行った。

「さて、私も…」
「霊夢~」

立ち上がりかけた霊夢に、子鬼が突撃する。

「何よ?」
「一緒に、お酒…」
「れいむ~」

今度は、スキマから身体を出した妖怪が、霊夢にしな垂れかかる。

「今度は、何よ?」
「一緒に、お酒飲みましょ」
「ちょっと、紫!!」
「あら萃香、いたの?」
「いたの!! 先に霊夢を誘ったのは私よ!! 邪魔しないで」
「邪魔だなんて…私は霊夢で、お酒を飲みたいだけよ?」
「『で』ってなんだ『で』って!?」
「そんな事は、どうでもいい!! 私だって、霊夢でお酒を飲みたいんだ!!」
「お前もか!?」
「それなら一緒に飲めば、万事オッケーね」
「なるほど! 紫は頭良いな。 それでは、さっそく…」
「良い訳有るか!!」

針やお札を、霊夢が放とうした時

「れ、霊夢どの~」
「でぇーい、今度は誰よ!!」
「た、助けてくだされ!! このままでは食われてしまいます!!」

いつの間にか、首以外を氷で固められ、身動きができなくなっている玄爺。
その隣には、風呂釜より大きな鍋が、グツグツと煮えている。

「ふんふふん♪ 妖夢~綺麗にさばいてね~」
「さばいてね~」
「お任せください。 亀をさばくのは初めてですけど、この楼観剣と白楼剣にて見事さばいて見せましょう」
「やめてくだされ~」

妖夢が、二本の刀で素振りをしている横で、幽々子とルーミアが、茶碗を箸で叩いている。

「こぉーらー!! 人の家の非常食を勝手に食べるな!!」
「非常食!?」

何やらショックを受けている、玄爺をよそに家の中では…

「魔理沙から離れなさいよ!! 紫もやし!!」
「うるさいわね!! 人形使いなら○×△でも作ってなさい!! 高く買ってあげるから」
「ねぇ魔理沙、○×△って何?」
「………いい子は知らなくて良い事だ……もう言っちゃぁ駄目だぞ…チルノ」
「うん! 魔理沙がそう言うなら、もう○×△なんて言わない」
「……だから言うなって……」
「この○●○●○がぁ~」
「うるさい!! この△▽▼▲が~」

女の戦いを始めた、パチュリーとアリスが、伏字を使いながら弾幕を放ちだした。

「「れいむ~」」
「「亀鍋♪亀鍋♪」」
「た、たすけて~」
「パチュリー!!」
「アリスー!!」
「うわ!! やめろお前等!! 家が壊れる!! こうなったら……喰らえ!! マスタースパ…」
「いいかげんしなさいよ!! あんたら!!」

幻想郷の一角にある、妖怪その他の寄合所『博麗神社』
今日も巫女の叫びが、響きわたる。

































作者のメッセージは

魔理沙が好きです!!

だけです。




これ書くだけで、二週間以上かかった…
長かった~…
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コメント



0.1320簡易評価
1.無評価名無し毛玉削除
ええととりあえず一言だけ。
適度な改行か、投稿する時に「左寄り」の処のチェックボックスを押すか、のどちらかをやった方がいいですよ。このままだと非常に読みづらくてしょうがないので。
というか正直下のスクロールバーの長さを見て読むのを挫折しました。
2.20名前が無い程度の能力削除
内容はそこそこ良かったのですがオチが薄いかなーと

兎に角改行して欲しいです
読みづらくて仕方が無い
読む為に右に移動させるのが億劫でした
6.40名前が無い程度の能力削除
長い割にインパクトうっすいなあと。
いや、オリキャラ達の名前には吹きましたけどw
某配管工の親父とかwww
8.10名前が無い程度の能力削除
インパクトの薄さが目立ちますが
魔理沙がキノコを食って大きくなる訳が分かりました
13.50Fimeria削除
人に何かを言える立場ではないくせに少しだけ指摘を。
1.句読点の位置
ちょっと変なところでつけてることが多いかもしれません。
例で言うと……“少しは片付ける私の身に、なってみなさいよ”
“かった内の八割を担う破壊の権化が、愚痴をたれる”
この二例は声に出してみると途切れ途切れで変な感じがすると思うのですよ。
正しいところは“その結果、柱は砕け襖や障子は破けお茶は消炭と化した”
この文は朗読しても違和感はないはずですね。多分。

2.…(三点リーダ)の使い方。
作風といえばアレですが一般的な文庫などでも三点リーダは2つセットで使います。
これを徹底してない文を嫌う人も多いので注意ですね。ひたすら…が並んでると読み辛いというのもあります。
もう一つアドバイスとしてセリフで「……」と沈黙を表す場合は地の分で表現するとスッキリして良いと思います。
例として本文より抜き出しますと↓
「それに、私は好かれようとして守っている訳じゃない。 好きだから守っているんだ」
「………………………………………」

慧音の言葉に、何と言っていいのか分からず押し黙る霊夢。

これは押し黙るという表現が控えている為「……」の表現は削れるようにも思います。これも作風というのであればまぁ気にしないでくださいな。

補足として―(ダッシュ)も基本は2セットです。――という風に使うと良いでしょう。


長くなってしまいましたが本文の感想として。
楽しめました。
私も筆が遅いものでこの長さで2週間以上……〓■●
今後期待しています、ということで50点です。
20.20名前が無い程度の能力削除
Firefox+1280×1024+サイドバーONの状態はなんとか読めますね
まあインパクトが薄いってだけが感想です…
21.70名前が無い程度の能力削除
若干読みにくいですが、僕は楽しめました。

げんじぃーーーーー!!
23.40名前が無い程度の能力削除
某ドラまたを思い出した
26.60名前が無い程度の能力削除
>某ドラまたを思い出した
そうとしか見えなくなってきた……

内容は面白かったです
元々の原因は霊夢にあるようで
結果的に将来の悩み解決に役立ったのは
さすが運のいい彼女ならでは(それはどうだろう

オリキャラは名前のせいか割とすんなりと:D
29.50名前が無い程度の能力削除
句読点が激しく読みづらかったです。お陰で脳内発音の流れがいちいち途切れていらいらしました。でもそれがなければ話はわりと面白かったです。台詞回しもまぁ良かったし。

あと某ドラまたについては、私も「似てるなー雰囲気とか」って思いながら読んでました。
32.40名前が無い程度の能力削除
読みづらかったり何なりはともかく、お話としては純粋に面白かったです。
33.50名前が無い程度の能力削除
文字サイズを小さくするという荒技を使いました。
34.70SETH削除
なんでこんなに餓えてんの霊夢w
46.100八咫猫削除
事の発端が霊夢の所為かぃ!!

「村長!! 大変だ!!」

と、その時誰かが飛び込んできた

「なんじゃ! 騒がしい!! 客人の前じゃぞ」
「それどころじゃ無いんです! 流射寺が何者かにやられました!」
「な、なんじゃと!?」
「どう言う事だ? 殺されたのか? 詳しく話せ!」

どうやら、件の流射寺なる人物が、誰かに襲われたらしい。

(まさか、妖怪の仕業? 自分からした約束を破ったの?)

「そ、それが、生きてはいます」
「ほっ」
「しかし、畑を耕していた時に、何者かに腹を殴られたらしく、身体の中に酷くダメージを負ったみたいです。二、三日は起き上がれそうにありません」
「な、なんて事じゃ。 明日は妖怪が攻めてくるんじゃぞ! いったい誰が?」

村人達が、緊迫してきたその横で、霊夢は

タラーッ

冷や汗をかいていた。

「あ、あの~」
「なんじゃ、今忙しいので少し黙って…」
「やったの私かもしんない」
「「「……………………………………………」」」
「……なんじゃと?」
「い、いや、この家までの道を、畑を耕していた人に尋ねようとしたら、無視されたので一発”ボスッ”と…した…おぼえが……」
「「「……………………………………………」」」

「おっ! やっと出てきたか、ずいぶん長かったな?」
「……………………………………………………」
「ん、どうした、変な顔をして? まるでパッドがばれた、咲夜みたいだぜ」

あの後、霊夢は二時間もの間、文句と、愚痴と、嫌味を言われ続けていた。
その結果、霊夢は疲れ果て、今にも倒れそうである。

このやり取りで吹いたwwww
壮大に笑わせてもらいました、面白かったです。ww
まさかボス亀が玄爺だったとはw

霊夢の餓え設定は何度見ても笑える!
パッド自重しろwww
50.80ミスターX削除
あ、流射寺で「るいーじ」と読むのか
ところで、二足歩行する植物がいるから3仕様かと思ったら、三色甲羅が出てきたからWorld仕様かと思うと、
>「この程度の攻撃では、ワシの甲羅に傷一つ付けるできんわ!!」
まさかのRPG仕様