とある午後の昼下がり、黒と白のコントラストが目に悪い魔法使いがやって来た。
「つまりだな、霊夢の夢想封印のバリエーションの可能性を徹底的に究明したい訳だ。勿論協力してくれるよな、れ~~い~~む~~?」
で、来るなり、そんな事を言う。
「……は?」
脈絡も何も無くいきなりつまりと占めの順接で言葉を始められては、そんな反応が関の山だろう。縁側に座る霊夢は、鈍いなと笑う魔理沙をギロリと睨みつけ、湯のみをタンと置く。
「誰が鈍いっての? 来るなり意味の判らない事を言う方がバカなんじゃないのッ!?」
「あー悪かった、謝るからその物騒なものをしまってくれ頼む」
魔理沙が両手を併せたところで、一寸たりとも謝るような素振りには見えない。良く言えば飄々としている、悪く言えば憮然としている。そんなだから大多数の人妖を敵に回すんだよ、と霊夢は半ば呆れ顔に、手に持っていた数本の暗器……いや、針を袖の中へ戻した。
「で? 魔理沙の脳内ではどんな事柄がどんな事象と反応してそんな結果に至ったのかしら、是非とも聞かせて貰いたいわね」
「いや、ちょっとした興味なんだが―
事の始めは、こうだ。
霧雨魔理沙はその簒奪行為を持続すべく、日夜スペルカードの研究に余念が無い。彼女の脅威的な強さは一割を才能・九割を努力で成り立つ。しかも厄介な事に、他人のスペルだろうが通常攻撃だろうが、気に入った弾幕を自身のスペルにしてしまうのだ。マスタースパークなどは、もはや魔理沙の代名詞となってしまった。幽香が不憫である。
だが、さしものマスタースパークでも破れないモノが有るらしい。
人伝に聞いた話では有るが……ヴワル大魔道図書館の最深部がそれだ。
曰く『死者の書』だとか『喋るグリモア』だとか『惑星の力を利用した符術を記した禁書』だとかが眠っているらしい。これ以上蒐集欲を掻き立てる物が有るだろうか、……違う意味で一目見てみたいけれども。パチュリーなら何かを知っているかも、と思い問い質したが「知らない」の一点張りだ。小悪魔は論外。
至った結論は壊して侵入。
けれどマスタースパークでは刃が立たない、其処にはパチュリーすらも舌を巻く精度の対魔法防護壁(アンチマジックシールド)が十重二十重に張られているそうだ。……この際誰が創ったかは問題では無い。紅魔館は元々幻想郷の外からの流入物だ、もしかしたらセラフィムが関わっているかもしれないではないか。考えるだけ無駄である。
強力な壁を破るには、それを越える力をぶつけなくてはならない。
そこで魔理沙が目をつけたのが、博麗霊夢の『夢想封印』。
状況に応じて性質の変化するスペルなんてのは、魔理沙の智る内ではそれしかない。そして、性質が変化する、と言う事は、一定の場所に力を供給するバッテリーのような物の代用品となるのではないか。もしかしたら半永久機関の精製も可能かもしれない。
例えばマスタースパークは、八卦炉と魔力を容器と溶媒として放つ。だがそれは魔理沙の魔力だけを使用するため、使用者の魔力が尽きればそこまでだ。それ故に威力も制限される。
そこで『夢想封印・バッテリー』の出番だ。
前述の通り、八卦炉を容器・魔力を溶媒とする。そしてそこに、夢想封印を溶質として注入するのだ。容器いっぱいに注入出来る力の量は一定だから魔理沙の魔力負担は少なくて済むし、なにしろ幻想郷の秩序とも言える『博麗』を使用した魔化学変化である。何が起こるか予想もつかないが、威力は倍に膨れ上がる筈だ、もしかしたら乗かも知れない。
―と、言う訳で霊夢を訪ねた次第だ、良く判っただろ」
以上の内容をもっと大雑把な口調で語り、魔理沙はゴホンと喉を鳴らす。喋り過ぎたせいか、喉が痛い。丁度霊夢が飲んでいた湯飲みが目に入ったので、断りも無く中身を飲み干した。別段諌める風でもない霊夢は、
「つまるトコロ欲しい物が有る場所に行きたいから夢想封印をよこせって事ね」
「そーゆー事だ、頼むぜ霊夢」
困ったように頭を掻く。
「んー、夢想封印は博麗神社に伝わる秘伝だし、そう簡単に他所と混ぜちゃ駄目なのよ」
そう。
博麗の力は幻想郷の力。
だから霊夢は横暴にならないし、適当な厄介事には無干渉を徹する。あくまで幻想郷規模の異変でないと、自身からは動かないのだ。紅の霧や皐月の冬、明けない夜に秩序も無く咲き誇る花。そんな超常現象が毎日起こる訳でも無いし、元来サボり癖のある霊夢にとってすれば些細な事には腰を上げたくない。そして、魔理沙の主張は、ほんの些細な事だった。
「結論から言うと、拒否ね。やるからには自分の力で成し遂げなさい、おねーさんは応援しててあげるから」
「なっ、酷いぜ霊夢、親友だろ~~!?」
金をせびるような感じで魔理沙はすがるのだが、生憎こちとら万年金欠の博麗神社だ。
搾り出せるようなモノはとっくに尽きている。
「まあまあ霊夢さん、お茶でも飲んで落ち着いて下さい」
適当に魔理沙をいなす最中、バツグンの角度でスッと差し出されたお茶を受け取り、
「ん、ありがと」
一口啜る。
うん、美味しい。
玉露製法のお茶だろうか、ほのかな甘みがこれまたなんとも。
……。
「ちょっと待て、なんでヴワルの司書がこんなトコロに居るのよ!?」
ズバッと見事なノリツッコミが炸裂。
一方の天然ボケ担当小悪魔は、お盆をその豊満な胸に押し付けて、美味しいですかとでも言いたげな満面の笑顔だ。……それは私へのあてつけか、と二人の人間はほぼ同時に自分の平坦な胸を見下ろす。やはり小悪魔、少し落ち込んできた。
「それは私が来たからに決まってるでしょ。……小悪魔、お茶頂戴」
「あ、はいはい、了解しました」
ヴワルの主が、相変わらずの不健康そうな顔色で、八畳一間の暗がりに居た。
ぱたぱたと台所へかけて行く小悪魔共々、こんな遠方までご苦労様である。
う、と魔理沙が押し黙ったのも、自身が企てる計画が発覚する事を恐れたためだろう。
「……わざわざこんなトコロまで、何しに来たの?」
仕方が無いので、かわりに霊夢が訊く。
「今し方、ヴワル最深部破りを企ててる鼠がいるってレミィに聞いてね、でもそんな不届き者と言ったら魔理沙くらいしかいないじゃないの。で、とりあえず魔理沙の家に行こうと思ったんだけど、私魔理沙の家の場所知らないし……。仕方無いから霊夢さんに訊こうと思ったら、偶然目標を発見出来た」
とまあ、幽霊のようなパチュリー・ノーレッジが言う事は魔理沙の杞憂に図星なワケで、しかもその犯人を捜しているときた。霊夢は巻き添えを恐れて魔理沙から遠ざかる。低級の七曜魔法ならば有る程度避けられるのだが、ロイヤルフレアとかサイレントセレナを唱えられようものなら救いようが無い。だけどパチュリーが口を開くと、
「魔理沙のヴワル最深部破り……私も手伝う、から」
意外にも、肯定的な言葉が紡ぎだされた。
「……は?」
今度は魔理沙が当惑。
脈絡も無い言葉の恐ろしさを身を持って体感する、自分からヴワルを破るだなんて、何を言いだすんだかパチュリー・ノーレッジ。とうとう頭に何かしら湧いたのだろうか、そのZUN帽を無理矢理にでも剥ぎ取りたい。
「どうしたんだよパチュリー!? アリスんとこならともかくヴワル破りに自分から加担するだなんて、それこそ霊夢が掃除をするくらい有り得な、ッ痛たたた!?」
「誰がサボタージュの泰斗だって? 耳、引き千切るわよ」
魔理沙は声にならない悲鳴を上げて、万力の如く耳を締め付ける霊夢の腕から逃れようともがく。のだが、霊夢の握力は反則気味に強い、強過ぎる。リンゴを割れる握力は六十以上だとかなんだとか。流石に可哀想なので、放してやった。
「私だって最深部の書庫に入った事は無いの、嘘偽り無く。……正直なトコロ、ヴワルの起源は途方も無いわ。いつどこでだれがなんのために、なんて全ッ然解明出来ないの、少なくとも表面上の情報だけではね。なんで紅魔館に付属しているのかも判らないし、もしかしたらレミィの祖先が関係有るのかも……。だから、数多の答えを智るために私は最深部に行きたい、そのためには不本意だけど破らなくてはいけない、けれど私だけの力では無理。別に矛盾は無いでしょう?」
「パチュリー様、お茶をお持ちしました」
喋り終わるタイミングを見計らったかのようなタイミングだ……いや、おそらくは物陰で伺っていたのだろう、従者の鏡のような小悪魔の事である。パチュリーは無言で受け取った湯飲みを、とりあえずは持つだけに留める。
「紅魔館の事情も混み入ってるのねぇ……」
同情の目でパチュリーを見る霊夢とは裏腹に、魔理沙は実に嬉しそうだ。
「成る程成る程、つまりは私の力が必要だって事だろ」
「……そうゆう事になるわね」
真に必要なのは霊夢の『夢想封印』なのだが……。
「よっしゃ、善は急げだ、ヴワルに一ッ飛びするぜ!!」
そんな事はすっかり忘れ去っている魔理沙は、庭に飛び降り立てかけてあった自分の箒を掴む。威勢良く跨り、地面を力強く蹴ろうとして―。
「―――ッ! ちょっと待った」
「うおッ!?」
いつの間に立ち上がったのか、浮き上がった足を霊夢に掴まれた。
危うく崩しかけたバランスを立て直す。
「ちょ、危ないな、何すんだよ霊―――
驚愕。
幽鬼の如くゆらりと佇む博麗霊夢という巫女の輪郭、そしてその右腕が人差し指と中指で挟むあらたかな御札。次第に御札へと集っていく力の奔流、渦を巻きながら逃げていく空気の流れ。幾度も見た、そして今日の目的でも有る(と思い出した)スペル。
「夢想封印」
言うが速いか、空間が爆発した。
場所は、霊夢が腰掛けていた縁の真上。
ある程度ならば操作も出来る空間爆発を性質とした『夢想封印』である。
「へぎゃッ」
「お」「あ」「え?」
霊夢以外の三人は、微妙な奇声とともに屋根から転がり落ちた不審者……もとい、見覚えの有る七色魔法使いに、三者三様の反応をした。登場した途端にぞんざいな扱いをされるアリス・マーガトロイドは、落ちた時に強打した腰をさすりつつ薄く浮いた涙を拭う。
「……何やってるのよ、アリス」
「ッそれが私を攻撃するなり言う言葉なの!? 結構痛いんだからねッ夢想封印!!」
それこそまさしく振って湧いたアリスを冷ややかに見据え霊夢が言うと、アリスは若干怒り気味に縁側をバンと叩いた。……服が少し焦げている。と、一連の動作(特に霊夢の『夢想封印』発動)に硬直気味だった魔理沙が、ようやく動く。
「あー、新手のストーキングか? だが残念だったな、霊夢の勘の鋭さは幻想郷一だぜ」
「私にそんな趣味は無いわよ! 勝手に決め付けないで頂戴!!」
ムキになるのは図星の証拠だぜ、と思ったりするのだが、揚足は火に油を注ぎかねないので口を閉ざす事にする。実に気の利く小悪魔がアリスにもお茶を差し出してからしばらくすると、ようやく落ち着いたようで、
「私も協力するからね、ヴワル粉砕」
少し誇張を混ぜた言葉で、パチュリーを威嚇する。もっとも本人は、ヴワルから持ち出した一冊の本を読み耽っているので何かしらの反応は無い。代わりとばかりに、小悪魔の羽がビクリと逆立った。
「アリス……ライバルにまで無視されるなんて…………」
「う、何よ霊夢、そんな哀れみの目で見なくても……」
「?」
不思議そうにこちらの会話を聞いていたパチュリーの様子を考慮するかぎり、わざと無視しているわけでは無さそうだ。……それよりも、この一触即発(と理解しているのは霊夢のみ)な人員をこれ以上放置しておくと博麗神社を壊しかねない。
「じゃあ、人数も揃ったところだし、そろそろ本格的に会議をしない?」
危惧から霊夢はガラにも無く、そんな事を言っていた。
お、と皆が耳を傾ける。
「魔理沙とパチュリーはヴワルを破りたい、アリスも……まあ、そーゆー事にしときましょう。結局全員の目的はそこに収束されるわけだから、まずは魔理沙の主張を叶えてあげなくちゃいけないみたいね。ほら、説明」
「ん、おお判ったぜ……(少女説明中)……と、言う訳だ」
説明を一方的に任された魔理沙は多少の内容を端折りながら、霊夢に話した事を早口に語る。
「成程、貴女にしては考えたじゃないの」
「てゆか便利ね、八卦炉も夢想封印も」
気難しいお二方も、どうやら納得してくれたようだ。
と言うよりも、幻想郷を外と仕切る結界『博麗大結界』を苗字として掲げる巫女の符術を利用するのだ。その途方も無い意味に、知識人と人形師は納得せざるをえなかったのである。
自身の思案した策に自慢げな魔理沙は、霊夢の肩をギュッと握って言う。
「さて、んじゃま霊夢、早速頼むぜ『夢想封印』」
「仕方ないわね、今回だけよ?」
袖から取り出した一枚の御札に、力を籠める。
霊夢としても初めての経験……夢想封印を一定の位置に留まる且つ力を供給し得るバッテリーにするというのは……に、違いない。
次第に拡散していく力を眺めつつ魔理沙は……ん?
(拡散、してるのか!?)
失敗か、と一瞬思う。
いや、霊夢に限って失敗は有り得ない。
そもそも瀧に打たれるだとか灼熱の炭の上を歩くだとか、巫女らしい(?)修行は何一つしていない癖をして、霊夢の強さは反則である。本人が否定をしようが、そこに天賦の才能が開花しているが故だ。
そして、魔理沙が気付くよりも迅かった。
「「「捕 マ エ タ …」」」
世界が暗転する。
誰がそう言ったのか、三重に重なった背筋を凍らせる言の葉。
正方形の立体型に縮む夢想封印は、魔理沙の四方四メートル程度を囲う。
「霊夢ッ!?? 早くここから出してくれ、失敗だ!!」
有り得ない有り得ない、と頭の中で反芻しながらもつい言ってしまった失敗の単語。
だけど霊夢は涼しげな表情で、魔理沙を囲む硬質化した夢想封印の、七色をうねうねと蠢かせる表面をこつんと叩く。
「失敗? 成功の間違いでしょ、私の『拷問ヴァージョン夢想封印』」
どちらかといえば牢獄的なモノなのだが……。どちらにせよ、しれっと恐ろしい事を言う霊夢には何を言っても無駄だ、と悟った魔理沙は、
「アリス、助けてくれ冗談抜きで廃人にされる!」
「うふふふふ、魔理沙、魔理沙魔理沙、やっと捕まえたわワタシノマリサ……」
(怖――――――!?)
もはや、
「パチュリー、延滞してる魔本返すから助けてくれ!」
「どの魔法から試そうかしら。体中の体液を気化させる呪文なんて良いかも……」
(ちょ、それマジ勘弁―――!!)
八方塞の四面楚歌、背水の陣も通じない絶体絶命の窮地に陥っていた。
仕方がない、マスタースパークで一気に―。
「あ、そうそう、私の『拷問ヴァージョン夢想封印』は硬度だけしか無いの。攻撃能力移動能力操作能力諸々を併せ持たない代わり、絶対に砕けないレベルの『夢想封印』なのよ。さしものマスタースパークも刃が立たないでしょうね」
鬼か。
「ま、それだけなら拿捕なんだけど、実はね……」
袖から取り出した一本の針を、シャッと投げる。
ガッ。
…………ξ゚∀゚)…………。
間抜けなまでの、静寂。
「おいおいおい、外からなら無差別に通るのかよ!?」
針が刺さった場所は、魔理沙の背後に有る一面。
つまり、この夢想封印は入れるけど出られない。
さながらゴッキーホイホイである。
「さて……あとは好きになさい、報酬分の仕事はしたわよ」
霊夢はゴホンと咳払いをし、神社の奥へと引っ込んでいった。
嫌な予感は急速に高まる。
今日は、家に、帰れないかも―。
「さあ、魔理沙…………」
「覚悟しなさい――――」
迫り来る、二極の悪夢。
「あ、うぅ……あぁあ…………」
キャ―――――――――。
長い長い、断末魔とも判断しきれぬ悲鳴が、博麗神社の鳥居に吸い込まれた。
過ぎた悪戯は我が身を滅ぼす、と言うぞ、魔理沙。
推して、知るべし。
◆
統括するに。
霊夢は、拒否の発言を撤回しなかった。
その事実を失念していた時点で、自分が捕らわれたのは己に落ち度が有る。
「ぅぐぐ……酷い目にあったぜ…………」
暁の空を行く箒に身を任せる魔理沙の体中の関節が、軋んでずれては甲高い悲鳴をあげる。特に酷い部位など、二・三日はマトモに動かせ無さそうだ。結局夢想封印は貰えずじまい、ヴワル最深部など霞の彼方に消え去った。
と、……あれ?
(そもそも、パチュリーが外出した時点で怪しむべきじゃなかったのか!?)
本が色あせるわ神が痛むわ、パチュリーにとってヴワルの外は地獄の煉獄のようなトコロの筈である。そんなリスクを冒してまで外に出る理由……即ちヴワル最深部と言う撒餌を使用した、私、泥棒(自覚してはいない肩書きではあるが)霧雨魔理沙の捕獲。
(―…「報酬分の仕事はしたわよ」…―)
霊夢の言葉が、全てを暗に解き明かした。
どっと疲れが湧く。
そしてもしも、パチュリーが私の捕獲のみを念頭に置いていたのならば、ヴワル最深部破りという言葉は嘘、つまり疑似餌。ヴワル最深部なんて、存在しない。
「ああッ、くそッ!! そうゆー事かよ霊夢、パチュリー!!」
憂さ晴らしとばかりに、箒のスピードをマックスにまで引き上げた。体中の悲鳴なんて聞こえない、とことん根性で無視だ。だって、そうでもしないと、目に溜まった涙が……。
「ッ!! 何を悔しがる事が有る霧雨魔理沙ッ何を泣く事が有る霧雨魔理沙ッッ!!!」
ふとそんな自分が情けなくなり、魔理沙は大声で自分を叱咤していた。
そうとも、とりあえず今日は早く家に帰って寝よう。
次の日になって、我が家で朝を迎えられた幸せを噛締めよう。
顔を洗って歯を磨いて髪を梳いて帽子の手入れをして……いつも通り、幻想郷中の貴重品を蒐集しに幻想郷中を駆け巡ろうではないか。
我が必殺の、マスタースパークを引っ提げて。
「つまりだな、霊夢の夢想封印のバリエーションの可能性を徹底的に究明したい訳だ。勿論協力してくれるよな、れ~~い~~む~~?」
で、来るなり、そんな事を言う。
「……は?」
脈絡も何も無くいきなりつまりと占めの順接で言葉を始められては、そんな反応が関の山だろう。縁側に座る霊夢は、鈍いなと笑う魔理沙をギロリと睨みつけ、湯のみをタンと置く。
「誰が鈍いっての? 来るなり意味の判らない事を言う方がバカなんじゃないのッ!?」
「あー悪かった、謝るからその物騒なものをしまってくれ頼む」
魔理沙が両手を併せたところで、一寸たりとも謝るような素振りには見えない。良く言えば飄々としている、悪く言えば憮然としている。そんなだから大多数の人妖を敵に回すんだよ、と霊夢は半ば呆れ顔に、手に持っていた数本の暗器……いや、針を袖の中へ戻した。
「で? 魔理沙の脳内ではどんな事柄がどんな事象と反応してそんな結果に至ったのかしら、是非とも聞かせて貰いたいわね」
「いや、ちょっとした興味なんだが―
事の始めは、こうだ。
霧雨魔理沙はその簒奪行為を持続すべく、日夜スペルカードの研究に余念が無い。彼女の脅威的な強さは一割を才能・九割を努力で成り立つ。しかも厄介な事に、他人のスペルだろうが通常攻撃だろうが、気に入った弾幕を自身のスペルにしてしまうのだ。マスタースパークなどは、もはや魔理沙の代名詞となってしまった。幽香が不憫である。
だが、さしものマスタースパークでも破れないモノが有るらしい。
人伝に聞いた話では有るが……ヴワル大魔道図書館の最深部がそれだ。
曰く『死者の書』だとか『喋るグリモア』だとか『惑星の力を利用した符術を記した禁書』だとかが眠っているらしい。これ以上蒐集欲を掻き立てる物が有るだろうか、……違う意味で一目見てみたいけれども。パチュリーなら何かを知っているかも、と思い問い質したが「知らない」の一点張りだ。小悪魔は論外。
至った結論は壊して侵入。
けれどマスタースパークでは刃が立たない、其処にはパチュリーすらも舌を巻く精度の対魔法防護壁(アンチマジックシールド)が十重二十重に張られているそうだ。……この際誰が創ったかは問題では無い。紅魔館は元々幻想郷の外からの流入物だ、もしかしたらセラフィムが関わっているかもしれないではないか。考えるだけ無駄である。
強力な壁を破るには、それを越える力をぶつけなくてはならない。
そこで魔理沙が目をつけたのが、博麗霊夢の『夢想封印』。
状況に応じて性質の変化するスペルなんてのは、魔理沙の智る内ではそれしかない。そして、性質が変化する、と言う事は、一定の場所に力を供給するバッテリーのような物の代用品となるのではないか。もしかしたら半永久機関の精製も可能かもしれない。
例えばマスタースパークは、八卦炉と魔力を容器と溶媒として放つ。だがそれは魔理沙の魔力だけを使用するため、使用者の魔力が尽きればそこまでだ。それ故に威力も制限される。
そこで『夢想封印・バッテリー』の出番だ。
前述の通り、八卦炉を容器・魔力を溶媒とする。そしてそこに、夢想封印を溶質として注入するのだ。容器いっぱいに注入出来る力の量は一定だから魔理沙の魔力負担は少なくて済むし、なにしろ幻想郷の秩序とも言える『博麗』を使用した魔化学変化である。何が起こるか予想もつかないが、威力は倍に膨れ上がる筈だ、もしかしたら乗かも知れない。
―と、言う訳で霊夢を訪ねた次第だ、良く判っただろ」
以上の内容をもっと大雑把な口調で語り、魔理沙はゴホンと喉を鳴らす。喋り過ぎたせいか、喉が痛い。丁度霊夢が飲んでいた湯飲みが目に入ったので、断りも無く中身を飲み干した。別段諌める風でもない霊夢は、
「つまるトコロ欲しい物が有る場所に行きたいから夢想封印をよこせって事ね」
「そーゆー事だ、頼むぜ霊夢」
困ったように頭を掻く。
「んー、夢想封印は博麗神社に伝わる秘伝だし、そう簡単に他所と混ぜちゃ駄目なのよ」
そう。
博麗の力は幻想郷の力。
だから霊夢は横暴にならないし、適当な厄介事には無干渉を徹する。あくまで幻想郷規模の異変でないと、自身からは動かないのだ。紅の霧や皐月の冬、明けない夜に秩序も無く咲き誇る花。そんな超常現象が毎日起こる訳でも無いし、元来サボり癖のある霊夢にとってすれば些細な事には腰を上げたくない。そして、魔理沙の主張は、ほんの些細な事だった。
「結論から言うと、拒否ね。やるからには自分の力で成し遂げなさい、おねーさんは応援しててあげるから」
「なっ、酷いぜ霊夢、親友だろ~~!?」
金をせびるような感じで魔理沙はすがるのだが、生憎こちとら万年金欠の博麗神社だ。
搾り出せるようなモノはとっくに尽きている。
「まあまあ霊夢さん、お茶でも飲んで落ち着いて下さい」
適当に魔理沙をいなす最中、バツグンの角度でスッと差し出されたお茶を受け取り、
「ん、ありがと」
一口啜る。
うん、美味しい。
玉露製法のお茶だろうか、ほのかな甘みがこれまたなんとも。
……。
「ちょっと待て、なんでヴワルの司書がこんなトコロに居るのよ!?」
ズバッと見事なノリツッコミが炸裂。
一方の天然ボケ担当小悪魔は、お盆をその豊満な胸に押し付けて、美味しいですかとでも言いたげな満面の笑顔だ。……それは私へのあてつけか、と二人の人間はほぼ同時に自分の平坦な胸を見下ろす。やはり小悪魔、少し落ち込んできた。
「それは私が来たからに決まってるでしょ。……小悪魔、お茶頂戴」
「あ、はいはい、了解しました」
ヴワルの主が、相変わらずの不健康そうな顔色で、八畳一間の暗がりに居た。
ぱたぱたと台所へかけて行く小悪魔共々、こんな遠方までご苦労様である。
う、と魔理沙が押し黙ったのも、自身が企てる計画が発覚する事を恐れたためだろう。
「……わざわざこんなトコロまで、何しに来たの?」
仕方が無いので、かわりに霊夢が訊く。
「今し方、ヴワル最深部破りを企ててる鼠がいるってレミィに聞いてね、でもそんな不届き者と言ったら魔理沙くらいしかいないじゃないの。で、とりあえず魔理沙の家に行こうと思ったんだけど、私魔理沙の家の場所知らないし……。仕方無いから霊夢さんに訊こうと思ったら、偶然目標を発見出来た」
とまあ、幽霊のようなパチュリー・ノーレッジが言う事は魔理沙の杞憂に図星なワケで、しかもその犯人を捜しているときた。霊夢は巻き添えを恐れて魔理沙から遠ざかる。低級の七曜魔法ならば有る程度避けられるのだが、ロイヤルフレアとかサイレントセレナを唱えられようものなら救いようが無い。だけどパチュリーが口を開くと、
「魔理沙のヴワル最深部破り……私も手伝う、から」
意外にも、肯定的な言葉が紡ぎだされた。
「……は?」
今度は魔理沙が当惑。
脈絡も無い言葉の恐ろしさを身を持って体感する、自分からヴワルを破るだなんて、何を言いだすんだかパチュリー・ノーレッジ。とうとう頭に何かしら湧いたのだろうか、そのZUN帽を無理矢理にでも剥ぎ取りたい。
「どうしたんだよパチュリー!? アリスんとこならともかくヴワル破りに自分から加担するだなんて、それこそ霊夢が掃除をするくらい有り得な、ッ痛たたた!?」
「誰がサボタージュの泰斗だって? 耳、引き千切るわよ」
魔理沙は声にならない悲鳴を上げて、万力の如く耳を締め付ける霊夢の腕から逃れようともがく。のだが、霊夢の握力は反則気味に強い、強過ぎる。リンゴを割れる握力は六十以上だとかなんだとか。流石に可哀想なので、放してやった。
「私だって最深部の書庫に入った事は無いの、嘘偽り無く。……正直なトコロ、ヴワルの起源は途方も無いわ。いつどこでだれがなんのために、なんて全ッ然解明出来ないの、少なくとも表面上の情報だけではね。なんで紅魔館に付属しているのかも判らないし、もしかしたらレミィの祖先が関係有るのかも……。だから、数多の答えを智るために私は最深部に行きたい、そのためには不本意だけど破らなくてはいけない、けれど私だけの力では無理。別に矛盾は無いでしょう?」
「パチュリー様、お茶をお持ちしました」
喋り終わるタイミングを見計らったかのようなタイミングだ……いや、おそらくは物陰で伺っていたのだろう、従者の鏡のような小悪魔の事である。パチュリーは無言で受け取った湯飲みを、とりあえずは持つだけに留める。
「紅魔館の事情も混み入ってるのねぇ……」
同情の目でパチュリーを見る霊夢とは裏腹に、魔理沙は実に嬉しそうだ。
「成る程成る程、つまりは私の力が必要だって事だろ」
「……そうゆう事になるわね」
真に必要なのは霊夢の『夢想封印』なのだが……。
「よっしゃ、善は急げだ、ヴワルに一ッ飛びするぜ!!」
そんな事はすっかり忘れ去っている魔理沙は、庭に飛び降り立てかけてあった自分の箒を掴む。威勢良く跨り、地面を力強く蹴ろうとして―。
「―――ッ! ちょっと待った」
「うおッ!?」
いつの間に立ち上がったのか、浮き上がった足を霊夢に掴まれた。
危うく崩しかけたバランスを立て直す。
「ちょ、危ないな、何すんだよ霊―――
驚愕。
幽鬼の如くゆらりと佇む博麗霊夢という巫女の輪郭、そしてその右腕が人差し指と中指で挟むあらたかな御札。次第に御札へと集っていく力の奔流、渦を巻きながら逃げていく空気の流れ。幾度も見た、そして今日の目的でも有る(と思い出した)スペル。
「夢想封印」
言うが速いか、空間が爆発した。
場所は、霊夢が腰掛けていた縁の真上。
ある程度ならば操作も出来る空間爆発を性質とした『夢想封印』である。
「へぎゃッ」
「お」「あ」「え?」
霊夢以外の三人は、微妙な奇声とともに屋根から転がり落ちた不審者……もとい、見覚えの有る七色魔法使いに、三者三様の反応をした。登場した途端にぞんざいな扱いをされるアリス・マーガトロイドは、落ちた時に強打した腰をさすりつつ薄く浮いた涙を拭う。
「……何やってるのよ、アリス」
「ッそれが私を攻撃するなり言う言葉なの!? 結構痛いんだからねッ夢想封印!!」
それこそまさしく振って湧いたアリスを冷ややかに見据え霊夢が言うと、アリスは若干怒り気味に縁側をバンと叩いた。……服が少し焦げている。と、一連の動作(特に霊夢の『夢想封印』発動)に硬直気味だった魔理沙が、ようやく動く。
「あー、新手のストーキングか? だが残念だったな、霊夢の勘の鋭さは幻想郷一だぜ」
「私にそんな趣味は無いわよ! 勝手に決め付けないで頂戴!!」
ムキになるのは図星の証拠だぜ、と思ったりするのだが、揚足は火に油を注ぎかねないので口を閉ざす事にする。実に気の利く小悪魔がアリスにもお茶を差し出してからしばらくすると、ようやく落ち着いたようで、
「私も協力するからね、ヴワル粉砕」
少し誇張を混ぜた言葉で、パチュリーを威嚇する。もっとも本人は、ヴワルから持ち出した一冊の本を読み耽っているので何かしらの反応は無い。代わりとばかりに、小悪魔の羽がビクリと逆立った。
「アリス……ライバルにまで無視されるなんて…………」
「う、何よ霊夢、そんな哀れみの目で見なくても……」
「?」
不思議そうにこちらの会話を聞いていたパチュリーの様子を考慮するかぎり、わざと無視しているわけでは無さそうだ。……それよりも、この一触即発(と理解しているのは霊夢のみ)な人員をこれ以上放置しておくと博麗神社を壊しかねない。
「じゃあ、人数も揃ったところだし、そろそろ本格的に会議をしない?」
危惧から霊夢はガラにも無く、そんな事を言っていた。
お、と皆が耳を傾ける。
「魔理沙とパチュリーはヴワルを破りたい、アリスも……まあ、そーゆー事にしときましょう。結局全員の目的はそこに収束されるわけだから、まずは魔理沙の主張を叶えてあげなくちゃいけないみたいね。ほら、説明」
「ん、おお判ったぜ……(少女説明中)……と、言う訳だ」
説明を一方的に任された魔理沙は多少の内容を端折りながら、霊夢に話した事を早口に語る。
「成程、貴女にしては考えたじゃないの」
「てゆか便利ね、八卦炉も夢想封印も」
気難しいお二方も、どうやら納得してくれたようだ。
と言うよりも、幻想郷を外と仕切る結界『博麗大結界』を苗字として掲げる巫女の符術を利用するのだ。その途方も無い意味に、知識人と人形師は納得せざるをえなかったのである。
自身の思案した策に自慢げな魔理沙は、霊夢の肩をギュッと握って言う。
「さて、んじゃま霊夢、早速頼むぜ『夢想封印』」
「仕方ないわね、今回だけよ?」
袖から取り出した一枚の御札に、力を籠める。
霊夢としても初めての経験……夢想封印を一定の位置に留まる且つ力を供給し得るバッテリーにするというのは……に、違いない。
次第に拡散していく力を眺めつつ魔理沙は……ん?
(拡散、してるのか!?)
失敗か、と一瞬思う。
いや、霊夢に限って失敗は有り得ない。
そもそも瀧に打たれるだとか灼熱の炭の上を歩くだとか、巫女らしい(?)修行は何一つしていない癖をして、霊夢の強さは反則である。本人が否定をしようが、そこに天賦の才能が開花しているが故だ。
そして、魔理沙が気付くよりも迅かった。
「「「捕 マ エ タ …」」」
世界が暗転する。
誰がそう言ったのか、三重に重なった背筋を凍らせる言の葉。
正方形の立体型に縮む夢想封印は、魔理沙の四方四メートル程度を囲う。
「霊夢ッ!?? 早くここから出してくれ、失敗だ!!」
有り得ない有り得ない、と頭の中で反芻しながらもつい言ってしまった失敗の単語。
だけど霊夢は涼しげな表情で、魔理沙を囲む硬質化した夢想封印の、七色をうねうねと蠢かせる表面をこつんと叩く。
「失敗? 成功の間違いでしょ、私の『拷問ヴァージョン夢想封印』」
どちらかといえば牢獄的なモノなのだが……。どちらにせよ、しれっと恐ろしい事を言う霊夢には何を言っても無駄だ、と悟った魔理沙は、
「アリス、助けてくれ冗談抜きで廃人にされる!」
「うふふふふ、魔理沙、魔理沙魔理沙、やっと捕まえたわワタシノマリサ……」
(怖――――――!?)
もはや、
「パチュリー、延滞してる魔本返すから助けてくれ!」
「どの魔法から試そうかしら。体中の体液を気化させる呪文なんて良いかも……」
(ちょ、それマジ勘弁―――!!)
八方塞の四面楚歌、背水の陣も通じない絶体絶命の窮地に陥っていた。
仕方がない、マスタースパークで一気に―。
「あ、そうそう、私の『拷問ヴァージョン夢想封印』は硬度だけしか無いの。攻撃能力移動能力操作能力諸々を併せ持たない代わり、絶対に砕けないレベルの『夢想封印』なのよ。さしものマスタースパークも刃が立たないでしょうね」
鬼か。
「ま、それだけなら拿捕なんだけど、実はね……」
袖から取り出した一本の針を、シャッと投げる。
ガッ。
…………ξ゚∀゚)…………。
間抜けなまでの、静寂。
「おいおいおい、外からなら無差別に通るのかよ!?」
針が刺さった場所は、魔理沙の背後に有る一面。
つまり、この夢想封印は入れるけど出られない。
さながらゴッキーホイホイである。
「さて……あとは好きになさい、報酬分の仕事はしたわよ」
霊夢はゴホンと咳払いをし、神社の奥へと引っ込んでいった。
嫌な予感は急速に高まる。
今日は、家に、帰れないかも―。
「さあ、魔理沙…………」
「覚悟しなさい――――」
迫り来る、二極の悪夢。
「あ、うぅ……あぁあ…………」
キャ―――――――――。
長い長い、断末魔とも判断しきれぬ悲鳴が、博麗神社の鳥居に吸い込まれた。
過ぎた悪戯は我が身を滅ぼす、と言うぞ、魔理沙。
推して、知るべし。
◆
統括するに。
霊夢は、拒否の発言を撤回しなかった。
その事実を失念していた時点で、自分が捕らわれたのは己に落ち度が有る。
「ぅぐぐ……酷い目にあったぜ…………」
暁の空を行く箒に身を任せる魔理沙の体中の関節が、軋んでずれては甲高い悲鳴をあげる。特に酷い部位など、二・三日はマトモに動かせ無さそうだ。結局夢想封印は貰えずじまい、ヴワル最深部など霞の彼方に消え去った。
と、……あれ?
(そもそも、パチュリーが外出した時点で怪しむべきじゃなかったのか!?)
本が色あせるわ神が痛むわ、パチュリーにとってヴワルの外は地獄の煉獄のようなトコロの筈である。そんなリスクを冒してまで外に出る理由……即ちヴワル最深部と言う撒餌を使用した、私、泥棒(自覚してはいない肩書きではあるが)霧雨魔理沙の捕獲。
(―…「報酬分の仕事はしたわよ」…―)
霊夢の言葉が、全てを暗に解き明かした。
どっと疲れが湧く。
そしてもしも、パチュリーが私の捕獲のみを念頭に置いていたのならば、ヴワル最深部破りという言葉は嘘、つまり疑似餌。ヴワル最深部なんて、存在しない。
「ああッ、くそッ!! そうゆー事かよ霊夢、パチュリー!!」
憂さ晴らしとばかりに、箒のスピードをマックスにまで引き上げた。体中の悲鳴なんて聞こえない、とことん根性で無視だ。だって、そうでもしないと、目に溜まった涙が……。
「ッ!! 何を悔しがる事が有る霧雨魔理沙ッ何を泣く事が有る霧雨魔理沙ッッ!!!」
ふとそんな自分が情けなくなり、魔理沙は大声で自分を叱咤していた。
そうとも、とりあえず今日は早く家に帰って寝よう。
次の日になって、我が家で朝を迎えられた幸せを噛締めよう。
顔を洗って歯を磨いて髪を梳いて帽子の手入れをして……いつも通り、幻想郷中の貴重品を蒐集しに幻想郷中を駆け巡ろうではないか。
我が必殺の、マスタースパークを引っ提げて。
占めの順接→締めの順接 or 〆の順接
最深部が存在した場合の最深部攻略話も読みたいなぁとか思いました。
最後に、居ても居なくてもあまり差がないアリス萌え。
八卦炉と夢想封印の解釈の部分、あこういう考え方も面白いな~と素直に感心しました。