「よっ、今日も戴きに来たぜ」
紅魔館の魔法図書館。ここを霧雨魔理沙が訪れるのは、もはや恒例行事となりつつあった。
「鼠がまた来たわ」
それに対して図書館の主、パチュリー・ノーレッジがため息をつくのもやはり同じく恒例行事。
「いい加減人の本を持っていくのはやめて欲しいわ」
「人の本は持っていってないぜ。魔女の本は持っていってるがな」
「ああ言えばこう言う……口から先に生まれたような人間だわ」
「普通人間は頭から生まれるからな。足よりは口の方が先だな」
「……皮肉を言ってるんだって事位気付きなさいよ」
不機嫌そうに魔理沙を睨みつけるパチュリー……最も、パチュリーが不機嫌そうな顔をしているのはいつものことなのだが。笑顔を見せるのは極めて稀である。
「さてと、今日はこのあたりを戴いてくとするかな」
「だから持っていくなって言ってるのに……話くらい聞きなさい」
「聞いてるぜ……聞くだけだがな」
「……結局こうなるわけね」
パチュリーが呪文の詠唱を始める。高まり、輝きだす魔力。だが魔理沙は相変わらず本を漁っている。
やがてパチュリーの手から魔力が解き放たれ、火の玉が魔理沙めがけて飛んでいく。だが魔理沙はそれを見もせずに箒に飛び乗って上へ飛び上がる。
「やっぱりそうくるか。なら、いつもどおり力ずくで貰っていくぜ?」
パチュリーの上空5メートルの位置で、魔理沙は箒にまたがったまま呪文を詠唱する。魔力を純粋に発射する魔法、マジックミサイル。本来なら呪文の詠唱など必要ないこの魔法を、あえて詠唱して発射する。それは弾幕ごっこを始める際のスタートを切る儀式……徒競走の「よーいどん」みたいなものだ。
「ほれ、行くぜ?」
魔理沙がマジックミサイルを解き放つ。一斉に解き放たれた数十の魔力の矢は一気に地上にいるパチュリーの元に向かって襲い掛かる。それをパチュリーは風に乗って軽く避ける。
「今日こそは魔理沙、あなたを叩きのめして追い出すから」
「ああ、やれるもんならやってみなよ……今まで20戦全敗だろ?」
再びマジックミサイル……今度は詠唱なしで発射。それに対してパチュリーは何もしない。ただ、ニコリ、と笑った。それだけ。
「っ!」
魔理沙の背をぞくっとしたものが駆け抜ける。今まで笑うことのなかったパチュリーが笑った……それだけでものすごい威圧感が生まれたのだ。これは何かある、と魔理沙の中の危険信号が物凄い勢いで点滅しだす。考えるより早く上空へ飛ぶ。
一方、パチュリーに向かって飛んだマジックミサイルはすべてパチュリーの周りを掠めるように逸れて図書館の壁に当たって爆発する。風の結界のせいだ、と魔理沙が気がついたその瞬間、さっきまで魔理沙のいた辺りで巨大な爆発。その爆風が魔理沙を箒ごとさらに上空へ吹っ飛ばす。
「な、なっ!」
明らかに呪文の詠唱なしで撃てる魔法ではない。それどころか、ほとんどスペルカードクラスの威力だ。もう少し反応が遅れていれば、間違いなく直撃を食らって黒焦げになっていただろう。どうにか体勢を立て直す魔理沙の背筋に嫌な汗が流れた。
スペルカードに匹敵するクラスの威力の魔法を呪文の詠唱なしで発動させる……普段の貧血やら喘息やらで本気を出せないパチュリーではない。本来のパチュリーの実力を100%発揮できる状態……否、120%出せる状態だ。
「魔理沙、今日の私はすこぶる絶好調なの。血の巡りもいいし、喘息の発作がおきる気配もないわ。これなら、魔理沙にも勝てるわよ?」
「やれやれ……確かに凄いがな。だが今までがあんまりにも弱っちいから、これくらいでないとやってる気がしないってものだぜ?」
「言うわね魔理沙……なら私の真のとっておきを見せてあげるわ。木符『シルフィホルン』!」
スペルカ-ドを発動するパチュリー。辺りの本棚から枝が伸び、そこに葉ができる。その葉は枝から離れ、風に乗ったかのように魔理沙を目掛けて一斉に襲い掛かる。それはすでに葉ではなく刃。岩をも切り裂く木の葉の刃である。
「いつもよりは鋭いキレだ……だけどな、遅いよ?」
前屈姿勢で図書館を駆け抜ける魔理沙。その速さは矢のように飛んでくる木の葉よりもなお速く、まさに一陣の風というのがふさわしい。だが……
「遅い、ですって?」
「!!」
不意に横からかけられた声。あわてて視線を向けると、すぐ横を風に乗って併走するパチュリーの姿が視界に入ってきた。魔理沙の顔に驚愕の色が浮かぶ。
「遅いのは魔理沙、あなたの方」
「うわっ!」
すっ、と魔理沙の正面の回りこんだパチュリーが氷の塊を打ち出す。スピードを出しすぎていたせいもあり、まともに正面衝突、吹っ飛ばされる。その先にはいまだ魔理沙を追いかける木の葉の刃。
「こ、このっ、恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」
吹っ飛ばされながらも空中でスカートのポケットからスペルカードを取り出し、即発動させる魔理沙。魔力の奔流があたりを切り裂き、木の葉の刃を焼き尽くす。
「こ、この……やるじゃないか」
どうにか体勢を立て直した魔理沙は、余裕の表情で漂うパチュリーを睨みつける。
「速いのがあなたの専売特許だなんて思わないで欲しいわ。その気になればあなたの速さくらい十分追いつけるの」
「そうかい。それじゃ火力ならどうだ!」
呪文を詠唱する。マジックミサイルとほぼ同じだが、それを一点集中型にした魔法……マジックナパーム。それをパチュリー目掛けて連射する。あえて呪文を詠唱することで魔力を高め、威力を増した攻撃だ。マジックミサイルとは違い、爆発の効果範囲は広い。風の結界で逸らしても効果はない。
「純粋な魔力は属性がないからイヤなんだけれど……」
そう言いながらも軽く手を上げると、宙で複雑な手印を切る。そこに現れるは魔法陣。マジックナパームはその魔法陣を直撃、爆発する。
爆煙が風によって流された後には……まったく無傷のパチュリーがいた。
「そのくらいならこれで十分防げるわ」
「OK、それならこっちも全力でぶっ飛ばしてやるよ」
どうやら負けず嫌いの何かに触れたらしい。予備動作抜きでマジックミサイルを連射する。
「そのくらいかわすまでもない……えっ!?」
風の結界でマジックミサイルを逸らすパチュリー。だが、逸れて本棚に当たり爆発するマジックミサイルの爆炎の中に、一瞬の光を見てパチュリーはあわてて魔法陣を形成する。だが魔法陣は完成と同時に光に切り裂かれる。とっさにその場を離れるパチュリー。
「イリュージョンレーザー……確かにそれは防ぎにくいわ」
間一髪光をかわしたパチュリーは、長い呪文の詠唱を開始する。同時に風に乗って本棚の裏側、魔理沙の死角へと移動。その後を魔理沙も追う。
風に乗って逃げるパチュリーを追いながら、魔理沙はマジックミサイルとマジックナパームを交互に発射、それにイリュージョンレーザーを織り交ぜる。
「らちがあかないな……一発決めるとすっかね」
スペルカードを取り出し、それを口に銜える。ぎゅっと箒の柄を両手で握り締めると、正面の風に乗って呪文の詠唱を続けるパチュリーを見据え、銜えたカードを首を振って投げる。一瞬前方に飛んだスペルカードに魔力を込め、起動させる。
「行くぜ、魔符『スターダストレヴァリエ』!」
その瞬間、魔力を身にまとった魔理沙は一気に飛び出す。パチュリーに体当たりをしかねない勢いで、だ。
いや、そもそもスターダストレヴァリエは体当たりをすることを前提としたスペルカード。魔力をまとったまま敵に突っ込み、体当たりと魔力で二重のダメージを与えるのが本来の使い方なのだ。
「……速いのね。でも」
風に乗ったパチュリーは微動だにせず魔理沙の方を見る。今まさに魔理沙が突っ込んでくるというのに、まったく余裕の表情。
「ちゃんと前を見ないと危ないわよ」
「!」
パチュリーがそう言った瞬間、魔理沙の前から姿が消えた。
風の結界を消して重力に身を任せ、下へ向かって落下したことに魔理沙が気付いた時には、魔理沙の目の前に壁が迫る。パチュリーに気を取られて、壁の事をすっかり忘れていたのだ。その距離、わずかに3m。
「こっ、このぉ!」
思いっきり空中で体をひねり、迫り来る壁をすんでのところで蹴りつけて何とか衝突を回避する。
「あうっ!」
爪先から頭の先までジーンと衝撃が走り、思わずうめき声と涙がこぼれるが、正直それどころじゃない。下から何かが迫ってくる。
「す、砂だぁ?」
それは確かに砂。砂が渦を巻いて下から迫ってくる。それはまるで龍のようにうねりながら、魔理沙に襲い掛かる。
「ちゃんと調べてあるの。魔理沙の苦手なのは砂。岩でもいいのだけれど」
下の方に風に乗ったパチュリーがちらりと砂の龍の向こうから見える。相変わらず涼しい表情。
「こ、このぉ」
魔理沙はありったけの魔法を砂の龍に打ち込む。だがそのいずれも効果的なダメージは与えられない。そもそも魔理沙の属性は水。土属性である砂の龍には効果がないのは当然である。
「しょうがないな……一気にけりつけるしかないのか」
迫りくる砂の龍の顎に、魔理沙はやれやれといった様子でスペルカードを取り出す。どんな時も魔理沙の期待を裏切ったことのない、魔理沙ご自慢の一枚。
びっ、と指で挟んで砂の龍に突きつける。
「属性だかなんだか知らないがな、何事にもイレギュラーってものは存在するんだよ。それをこれから教えてやるぜ」
カードを起動。急速に魔理沙の周りに魔力が集まる。その魔力は魔理沙の手へと収束、熱を持つ。
一方、砂の龍は一直線に魔理沙に襲い掛かる。もうすでに回避できる距離ではない……いや、魔理沙には回避する気など毛頭ない。
「授業料は高くつくぜ。耳揃えて払いなよ!魔砲『ファイナルマスタースパーク』っ!!」
魔理沙の手に集まった高熱の魔力は、魔理沙の声にあわせて指向性を持ち、一気に開放される。それはすべてを焼き尽くす光の槍として放たれた。光の奔流は今にも魔理沙を噛み砕かんとばかりに覆いかぶさっていた砂の龍を吹き飛ばす……それだけでは飽き足らず、その先のパチュリーに向かって襲い掛かる。
「大丈夫……防げるわ」
そう言いながらも、パチュリーは初めて呪文を詠唱しながら両手で魔法陣を書いた。貼られた巨大な三重の魔法陣をマスタースパークが飲み込む。その後には……無傷のパチュリーが残された。だが魔法陣はすべて破壊されている。
「はぁ、はぁ……どうしたパチュリー、それで終わりか?」
魔力の使いすぎか、肩で息をする魔理沙。
「ま、魔理沙こそもう魔力切れかしら?」
額から汗を流しながら、パチュリーは平静を装って返す。
「いいぜ、パチュリーのとっておきを見せてみなよ。まだ『本気』は出してないんだろ?」
「いいわ。とっておきの切り札を見せてあげる。魔理沙こそ本気でかからないと消し炭も残らないわ」
上空の魔法使いと地上の魔女……お互い睨みあい、最後の戦いのためのスペルカードを取り出し、起動させる。
「光撃『シュート・ザ・ムーン』!」
「月符『サイレントセレナ』!」
同時に放たれるスペルカード。両者から同時に放たれた光の矢が二人の間の空間を埋め尽くし、貫く。お互い動けない状況。だがあえて魔理沙が動きに出る。
「行くぜ、彗星『ブレイジング……」
「リトル、今!」
魔理沙が次のスペルカードを起動させようとしたその瞬間、パチュリーが叫んだ。それとほぼ同時に、魔理沙の髪を何かが掠める。
「なにっ!」
掠めたのは魔力弾。それは本棚に当たって小さく爆発する。あわてて魔力弾の飛んできた方向を見る魔理沙。
「魔理沙さん、お覚悟、です!」
はるか彼方に、図書館の司書の小悪魔の姿が見える。距離にして500mほど。どうやらあの距離からこっち目掛けて魔力弾を打ち込んできたらしい。威力を落として射程距離を伸ばした遠距離狙撃専用魔法のようだ。
「あの小悪魔が切り札か?いささか卑怯臭い気がするぜ?」
「勝てればいいの……そんなことより、しっかり避けないと額に風穴が開くわ」
再び小悪魔から放たれる魔力弾は、魔理沙の帽子に直撃する。
「ああっ、お前なんて事するんだよ!クソ、大きな穴開いたじゃないか!」
「次は帽子じゃなくて額に空けますよ」
「五月蝿いよ……ぶっ飛ばしてやるから覚悟しやがれ!」
そう豪語したものの、正直勝つ手が考え付かない。小悪魔をぶっ飛ばすのは簡単だが、そうするとパチュリーの攻撃に後から打ち落とされるだろう。パチュリーの方に向かったら向かったで、小悪魔の狙撃をかわしながらパチュリーを仕留めるのは不可能に近い。手詰まりといってもいい状況だ。
(何か手はないもんかね……)
スカートのポケットに手をやる。残りのスペルカードは……二枚。一枚はさっき使い損ねた「ブレイジングスター」。そしてもう一枚は……
(よし、いける)
「どう、魔理沙。大人しく降参して打ち落とされるのと、惨めに抵抗して打ち落とされるの、どっちがいいかしら」
「どっちも嫌だぜ。打ち落とされるのはお前らだけで十分だ」
「よくそんな大口が叩けるわね」
「勝算があるからな」
「いいわ、それじゃ魔理沙の切り札、見せて頂戴」
「ああ、覚悟して見なよお前ら。今晩夢に見ても知らないぜ!?」
スペルカードを取り出し、天に掲げる。魔理沙最後の切り札、その名も……
魔空『アステロイドベルト』!!」
その瞬間、星が生まれた。
それは魔力の塊……無数の魔力の塊は、まるで星の誕生のごとく、魔理沙からほとばしり、あたりを埋め尽くす。それはまるで図書館の中に銀河が生まれたかのようだった。
「リトル、魔理沙を!」
「無理ですパチュリー様!星が多すぎて魔理沙さんが見えません!」
「くっ。なら……日符『ロイヤルフレア』!」
「そこだ!彗星『ブレイジングスター』!」
パチュリーがスペルカードを起動させたその瞬間、魔理沙は最後のスペルカードを発動させる。
パチュリーの魔力が収束して、図書館の中に超巨大な火球を生み出す。魔理沙が星を生み出したのなら、パチュリーが生み出したのは太陽。すべてを焼き尽くす神の炎。
だが、魔理沙の彗星はその太陽を突っ切る。そもそも魔理沙の属性は水。ロイヤルフレアの属性は火。ほぼ同じだけの魔力を込めたなら、火に対して相性のいい魔理沙が勝つのは当然である。
……そして、天から降りてきた彗星の破壊の波は図書館の床もろとも、無防備なパチュリーを飲み込んだのだった。
「はぁっ、はぁっ……」
破壊の波が去ったあと、パチュリーはかろうじて立っていた。
だがすでに魔力はほとんど底を尽いていた。もう防御のための魔法陣を張るだけの魔力も残っていない。まさに煙も出ないという状態だ。
「また私の勝ち、だな?」
その前に魔理沙が立つ。かなり魔力を消耗して入るが、あと一発マジックミサイルくらいは撃てるだけの魔力は残っている。
「しまったな……思わず床に突っ込んじまったから箒折れちまったぜ。帰る前に直しとかなくちゃな……さて、覚悟はいいか?」
残った魔力を手に込め、パチュリーに向ける。弾幕ごっこのけじめとして、最後の一発を打ち込んでおかなくてはならない。それが弾幕ごっこのル-ルだから。
「魔理沙……」
うつむいたまま、か細い声でパチュリーがつぶやく。
「何だ、最後に言い残すことでもあるのか……え?」
パチュリーのうつむいた顔から落ちる水滴。一滴、また一滴。
「馬鹿……魔理沙の馬鹿ぁ!」
「ちょ、パチュリー?な、何も泣かなくても……」
いつも不機嫌な顔しか見せないパチュリー。笑顔は(まれではあるが)見せたことはあるが、泣き顔などというものは見たことがない……それが目の前でぼろぼろ涙を零して泣いているのである。予想外の展開に戸惑う魔理沙。
「何で、何で……」
「あー、その、パチュリー?」
どう声をかけていいやら困って、とりあえず一歩踏み出したとたん、パチュリーが顔を上げた。
「何で最後で気を抜くのかしら?」
その顔は……笑っていた。勝利の確信を得た笑みを浮かべて。
「なっ!」
魔理沙の頭の中の危険信号が青から一気に赤になる……より速く、足元から地面の感覚が消える。
「こっ、これは……落とし穴かぁぁぁぁぁぁ!」
「その穴は地下室の妹様のところに続いてるわ。どうやら暴れ足りなさそうだし、妹様と遊んできたら?」
「待てそれはマジで死ぬ!何でこんなときに箒折れてるんだよ!クソ、覚えてろよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」
深く暗い穴の底から魔理沙の声が聞こえなくなったと同時に、落とし穴の蓋はバタンと閉じたのだった。
「それにしても大変でしたねパチュリー様」
「まったく……完全に魔力が底を尽いてしまったわ」
パチュリーは小悪魔に抱えられてベッドに向かう。魔力を使い果たしてしまったため、風に乗って飛ぶこともできない。
……ちなみに魔理沙は散々フランドールにおもちゃにされ、ほうほうの体で館から逃げ出したそうだ。あれで生きているあたりしぶとい魔理沙らしいといやらしい。
「しかしパチュリー様、まさかあの穴が役に立つとは思ってもみませんでしたね」
「……そうね。精霊魔法の失敗でうっかり作ってしまった穴だけど、こういう時に役に立つとは思ってもいなかったわ」
「怪我の功名ですね……でも、今回は本当にひやひやしたんですよ?パチュリー様の切り札が破られたときはどうしようかと思いましたから」
「切り札が破られた?いつ?」
怪訝そうな顔をするパチュリー。
「え、ほら、ロイヤルフレアを魔理沙さんが突破したのは……」
「あんなもの切り札でもなんでもないわ……そもそも切り札を宣言して使うのは馬鹿と魔理沙くらいのものよ」
「は、はぁ……それじゃパチュリー様の切り札ってなんだったんですか?」
そっとベッドにパチュリーを下ろしながら小悪魔は疑問をぶつけてみた。
「涙」
「え?」
「涙……涙は女の切り札、だそうよ」
そう言って、パチュリーは静かに目を閉じ、失われた魔力を回復するための眠りにつくのだった。
紅魔館の魔法図書館。ここを霧雨魔理沙が訪れるのは、もはや恒例行事となりつつあった。
「鼠がまた来たわ」
それに対して図書館の主、パチュリー・ノーレッジがため息をつくのもやはり同じく恒例行事。
「いい加減人の本を持っていくのはやめて欲しいわ」
「人の本は持っていってないぜ。魔女の本は持っていってるがな」
「ああ言えばこう言う……口から先に生まれたような人間だわ」
「普通人間は頭から生まれるからな。足よりは口の方が先だな」
「……皮肉を言ってるんだって事位気付きなさいよ」
不機嫌そうに魔理沙を睨みつけるパチュリー……最も、パチュリーが不機嫌そうな顔をしているのはいつものことなのだが。笑顔を見せるのは極めて稀である。
「さてと、今日はこのあたりを戴いてくとするかな」
「だから持っていくなって言ってるのに……話くらい聞きなさい」
「聞いてるぜ……聞くだけだがな」
「……結局こうなるわけね」
パチュリーが呪文の詠唱を始める。高まり、輝きだす魔力。だが魔理沙は相変わらず本を漁っている。
やがてパチュリーの手から魔力が解き放たれ、火の玉が魔理沙めがけて飛んでいく。だが魔理沙はそれを見もせずに箒に飛び乗って上へ飛び上がる。
「やっぱりそうくるか。なら、いつもどおり力ずくで貰っていくぜ?」
パチュリーの上空5メートルの位置で、魔理沙は箒にまたがったまま呪文を詠唱する。魔力を純粋に発射する魔法、マジックミサイル。本来なら呪文の詠唱など必要ないこの魔法を、あえて詠唱して発射する。それは弾幕ごっこを始める際のスタートを切る儀式……徒競走の「よーいどん」みたいなものだ。
「ほれ、行くぜ?」
魔理沙がマジックミサイルを解き放つ。一斉に解き放たれた数十の魔力の矢は一気に地上にいるパチュリーの元に向かって襲い掛かる。それをパチュリーは風に乗って軽く避ける。
「今日こそは魔理沙、あなたを叩きのめして追い出すから」
「ああ、やれるもんならやってみなよ……今まで20戦全敗だろ?」
再びマジックミサイル……今度は詠唱なしで発射。それに対してパチュリーは何もしない。ただ、ニコリ、と笑った。それだけ。
「っ!」
魔理沙の背をぞくっとしたものが駆け抜ける。今まで笑うことのなかったパチュリーが笑った……それだけでものすごい威圧感が生まれたのだ。これは何かある、と魔理沙の中の危険信号が物凄い勢いで点滅しだす。考えるより早く上空へ飛ぶ。
一方、パチュリーに向かって飛んだマジックミサイルはすべてパチュリーの周りを掠めるように逸れて図書館の壁に当たって爆発する。風の結界のせいだ、と魔理沙が気がついたその瞬間、さっきまで魔理沙のいた辺りで巨大な爆発。その爆風が魔理沙を箒ごとさらに上空へ吹っ飛ばす。
「な、なっ!」
明らかに呪文の詠唱なしで撃てる魔法ではない。それどころか、ほとんどスペルカードクラスの威力だ。もう少し反応が遅れていれば、間違いなく直撃を食らって黒焦げになっていただろう。どうにか体勢を立て直す魔理沙の背筋に嫌な汗が流れた。
スペルカードに匹敵するクラスの威力の魔法を呪文の詠唱なしで発動させる……普段の貧血やら喘息やらで本気を出せないパチュリーではない。本来のパチュリーの実力を100%発揮できる状態……否、120%出せる状態だ。
「魔理沙、今日の私はすこぶる絶好調なの。血の巡りもいいし、喘息の発作がおきる気配もないわ。これなら、魔理沙にも勝てるわよ?」
「やれやれ……確かに凄いがな。だが今までがあんまりにも弱っちいから、これくらいでないとやってる気がしないってものだぜ?」
「言うわね魔理沙……なら私の真のとっておきを見せてあげるわ。木符『シルフィホルン』!」
スペルカ-ドを発動するパチュリー。辺りの本棚から枝が伸び、そこに葉ができる。その葉は枝から離れ、風に乗ったかのように魔理沙を目掛けて一斉に襲い掛かる。それはすでに葉ではなく刃。岩をも切り裂く木の葉の刃である。
「いつもよりは鋭いキレだ……だけどな、遅いよ?」
前屈姿勢で図書館を駆け抜ける魔理沙。その速さは矢のように飛んでくる木の葉よりもなお速く、まさに一陣の風というのがふさわしい。だが……
「遅い、ですって?」
「!!」
不意に横からかけられた声。あわてて視線を向けると、すぐ横を風に乗って併走するパチュリーの姿が視界に入ってきた。魔理沙の顔に驚愕の色が浮かぶ。
「遅いのは魔理沙、あなたの方」
「うわっ!」
すっ、と魔理沙の正面の回りこんだパチュリーが氷の塊を打ち出す。スピードを出しすぎていたせいもあり、まともに正面衝突、吹っ飛ばされる。その先にはいまだ魔理沙を追いかける木の葉の刃。
「こ、このっ、恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」
吹っ飛ばされながらも空中でスカートのポケットからスペルカードを取り出し、即発動させる魔理沙。魔力の奔流があたりを切り裂き、木の葉の刃を焼き尽くす。
「こ、この……やるじゃないか」
どうにか体勢を立て直した魔理沙は、余裕の表情で漂うパチュリーを睨みつける。
「速いのがあなたの専売特許だなんて思わないで欲しいわ。その気になればあなたの速さくらい十分追いつけるの」
「そうかい。それじゃ火力ならどうだ!」
呪文を詠唱する。マジックミサイルとほぼ同じだが、それを一点集中型にした魔法……マジックナパーム。それをパチュリー目掛けて連射する。あえて呪文を詠唱することで魔力を高め、威力を増した攻撃だ。マジックミサイルとは違い、爆発の効果範囲は広い。風の結界で逸らしても効果はない。
「純粋な魔力は属性がないからイヤなんだけれど……」
そう言いながらも軽く手を上げると、宙で複雑な手印を切る。そこに現れるは魔法陣。マジックナパームはその魔法陣を直撃、爆発する。
爆煙が風によって流された後には……まったく無傷のパチュリーがいた。
「そのくらいならこれで十分防げるわ」
「OK、それならこっちも全力でぶっ飛ばしてやるよ」
どうやら負けず嫌いの何かに触れたらしい。予備動作抜きでマジックミサイルを連射する。
「そのくらいかわすまでもない……えっ!?」
風の結界でマジックミサイルを逸らすパチュリー。だが、逸れて本棚に当たり爆発するマジックミサイルの爆炎の中に、一瞬の光を見てパチュリーはあわてて魔法陣を形成する。だが魔法陣は完成と同時に光に切り裂かれる。とっさにその場を離れるパチュリー。
「イリュージョンレーザー……確かにそれは防ぎにくいわ」
間一髪光をかわしたパチュリーは、長い呪文の詠唱を開始する。同時に風に乗って本棚の裏側、魔理沙の死角へと移動。その後を魔理沙も追う。
風に乗って逃げるパチュリーを追いながら、魔理沙はマジックミサイルとマジックナパームを交互に発射、それにイリュージョンレーザーを織り交ぜる。
「らちがあかないな……一発決めるとすっかね」
スペルカードを取り出し、それを口に銜える。ぎゅっと箒の柄を両手で握り締めると、正面の風に乗って呪文の詠唱を続けるパチュリーを見据え、銜えたカードを首を振って投げる。一瞬前方に飛んだスペルカードに魔力を込め、起動させる。
「行くぜ、魔符『スターダストレヴァリエ』!」
その瞬間、魔力を身にまとった魔理沙は一気に飛び出す。パチュリーに体当たりをしかねない勢いで、だ。
いや、そもそもスターダストレヴァリエは体当たりをすることを前提としたスペルカード。魔力をまとったまま敵に突っ込み、体当たりと魔力で二重のダメージを与えるのが本来の使い方なのだ。
「……速いのね。でも」
風に乗ったパチュリーは微動だにせず魔理沙の方を見る。今まさに魔理沙が突っ込んでくるというのに、まったく余裕の表情。
「ちゃんと前を見ないと危ないわよ」
「!」
パチュリーがそう言った瞬間、魔理沙の前から姿が消えた。
風の結界を消して重力に身を任せ、下へ向かって落下したことに魔理沙が気付いた時には、魔理沙の目の前に壁が迫る。パチュリーに気を取られて、壁の事をすっかり忘れていたのだ。その距離、わずかに3m。
「こっ、このぉ!」
思いっきり空中で体をひねり、迫り来る壁をすんでのところで蹴りつけて何とか衝突を回避する。
「あうっ!」
爪先から頭の先までジーンと衝撃が走り、思わずうめき声と涙がこぼれるが、正直それどころじゃない。下から何かが迫ってくる。
「す、砂だぁ?」
それは確かに砂。砂が渦を巻いて下から迫ってくる。それはまるで龍のようにうねりながら、魔理沙に襲い掛かる。
「ちゃんと調べてあるの。魔理沙の苦手なのは砂。岩でもいいのだけれど」
下の方に風に乗ったパチュリーがちらりと砂の龍の向こうから見える。相変わらず涼しい表情。
「こ、このぉ」
魔理沙はありったけの魔法を砂の龍に打ち込む。だがそのいずれも効果的なダメージは与えられない。そもそも魔理沙の属性は水。土属性である砂の龍には効果がないのは当然である。
「しょうがないな……一気にけりつけるしかないのか」
迫りくる砂の龍の顎に、魔理沙はやれやれといった様子でスペルカードを取り出す。どんな時も魔理沙の期待を裏切ったことのない、魔理沙ご自慢の一枚。
びっ、と指で挟んで砂の龍に突きつける。
「属性だかなんだか知らないがな、何事にもイレギュラーってものは存在するんだよ。それをこれから教えてやるぜ」
カードを起動。急速に魔理沙の周りに魔力が集まる。その魔力は魔理沙の手へと収束、熱を持つ。
一方、砂の龍は一直線に魔理沙に襲い掛かる。もうすでに回避できる距離ではない……いや、魔理沙には回避する気など毛頭ない。
「授業料は高くつくぜ。耳揃えて払いなよ!魔砲『ファイナルマスタースパーク』っ!!」
魔理沙の手に集まった高熱の魔力は、魔理沙の声にあわせて指向性を持ち、一気に開放される。それはすべてを焼き尽くす光の槍として放たれた。光の奔流は今にも魔理沙を噛み砕かんとばかりに覆いかぶさっていた砂の龍を吹き飛ばす……それだけでは飽き足らず、その先のパチュリーに向かって襲い掛かる。
「大丈夫……防げるわ」
そう言いながらも、パチュリーは初めて呪文を詠唱しながら両手で魔法陣を書いた。貼られた巨大な三重の魔法陣をマスタースパークが飲み込む。その後には……無傷のパチュリーが残された。だが魔法陣はすべて破壊されている。
「はぁ、はぁ……どうしたパチュリー、それで終わりか?」
魔力の使いすぎか、肩で息をする魔理沙。
「ま、魔理沙こそもう魔力切れかしら?」
額から汗を流しながら、パチュリーは平静を装って返す。
「いいぜ、パチュリーのとっておきを見せてみなよ。まだ『本気』は出してないんだろ?」
「いいわ。とっておきの切り札を見せてあげる。魔理沙こそ本気でかからないと消し炭も残らないわ」
上空の魔法使いと地上の魔女……お互い睨みあい、最後の戦いのためのスペルカードを取り出し、起動させる。
「光撃『シュート・ザ・ムーン』!」
「月符『サイレントセレナ』!」
同時に放たれるスペルカード。両者から同時に放たれた光の矢が二人の間の空間を埋め尽くし、貫く。お互い動けない状況。だがあえて魔理沙が動きに出る。
「行くぜ、彗星『ブレイジング……」
「リトル、今!」
魔理沙が次のスペルカードを起動させようとしたその瞬間、パチュリーが叫んだ。それとほぼ同時に、魔理沙の髪を何かが掠める。
「なにっ!」
掠めたのは魔力弾。それは本棚に当たって小さく爆発する。あわてて魔力弾の飛んできた方向を見る魔理沙。
「魔理沙さん、お覚悟、です!」
はるか彼方に、図書館の司書の小悪魔の姿が見える。距離にして500mほど。どうやらあの距離からこっち目掛けて魔力弾を打ち込んできたらしい。威力を落として射程距離を伸ばした遠距離狙撃専用魔法のようだ。
「あの小悪魔が切り札か?いささか卑怯臭い気がするぜ?」
「勝てればいいの……そんなことより、しっかり避けないと額に風穴が開くわ」
再び小悪魔から放たれる魔力弾は、魔理沙の帽子に直撃する。
「ああっ、お前なんて事するんだよ!クソ、大きな穴開いたじゃないか!」
「次は帽子じゃなくて額に空けますよ」
「五月蝿いよ……ぶっ飛ばしてやるから覚悟しやがれ!」
そう豪語したものの、正直勝つ手が考え付かない。小悪魔をぶっ飛ばすのは簡単だが、そうするとパチュリーの攻撃に後から打ち落とされるだろう。パチュリーの方に向かったら向かったで、小悪魔の狙撃をかわしながらパチュリーを仕留めるのは不可能に近い。手詰まりといってもいい状況だ。
(何か手はないもんかね……)
スカートのポケットに手をやる。残りのスペルカードは……二枚。一枚はさっき使い損ねた「ブレイジングスター」。そしてもう一枚は……
(よし、いける)
「どう、魔理沙。大人しく降参して打ち落とされるのと、惨めに抵抗して打ち落とされるの、どっちがいいかしら」
「どっちも嫌だぜ。打ち落とされるのはお前らだけで十分だ」
「よくそんな大口が叩けるわね」
「勝算があるからな」
「いいわ、それじゃ魔理沙の切り札、見せて頂戴」
「ああ、覚悟して見なよお前ら。今晩夢に見ても知らないぜ!?」
スペルカードを取り出し、天に掲げる。魔理沙最後の切り札、その名も……
魔空『アステロイドベルト』!!」
その瞬間、星が生まれた。
それは魔力の塊……無数の魔力の塊は、まるで星の誕生のごとく、魔理沙からほとばしり、あたりを埋め尽くす。それはまるで図書館の中に銀河が生まれたかのようだった。
「リトル、魔理沙を!」
「無理ですパチュリー様!星が多すぎて魔理沙さんが見えません!」
「くっ。なら……日符『ロイヤルフレア』!」
「そこだ!彗星『ブレイジングスター』!」
パチュリーがスペルカードを起動させたその瞬間、魔理沙は最後のスペルカードを発動させる。
パチュリーの魔力が収束して、図書館の中に超巨大な火球を生み出す。魔理沙が星を生み出したのなら、パチュリーが生み出したのは太陽。すべてを焼き尽くす神の炎。
だが、魔理沙の彗星はその太陽を突っ切る。そもそも魔理沙の属性は水。ロイヤルフレアの属性は火。ほぼ同じだけの魔力を込めたなら、火に対して相性のいい魔理沙が勝つのは当然である。
……そして、天から降りてきた彗星の破壊の波は図書館の床もろとも、無防備なパチュリーを飲み込んだのだった。
「はぁっ、はぁっ……」
破壊の波が去ったあと、パチュリーはかろうじて立っていた。
だがすでに魔力はほとんど底を尽いていた。もう防御のための魔法陣を張るだけの魔力も残っていない。まさに煙も出ないという状態だ。
「また私の勝ち、だな?」
その前に魔理沙が立つ。かなり魔力を消耗して入るが、あと一発マジックミサイルくらいは撃てるだけの魔力は残っている。
「しまったな……思わず床に突っ込んじまったから箒折れちまったぜ。帰る前に直しとかなくちゃな……さて、覚悟はいいか?」
残った魔力を手に込め、パチュリーに向ける。弾幕ごっこのけじめとして、最後の一発を打ち込んでおかなくてはならない。それが弾幕ごっこのル-ルだから。
「魔理沙……」
うつむいたまま、か細い声でパチュリーがつぶやく。
「何だ、最後に言い残すことでもあるのか……え?」
パチュリーのうつむいた顔から落ちる水滴。一滴、また一滴。
「馬鹿……魔理沙の馬鹿ぁ!」
「ちょ、パチュリー?な、何も泣かなくても……」
いつも不機嫌な顔しか見せないパチュリー。笑顔は(まれではあるが)見せたことはあるが、泣き顔などというものは見たことがない……それが目の前でぼろぼろ涙を零して泣いているのである。予想外の展開に戸惑う魔理沙。
「何で、何で……」
「あー、その、パチュリー?」
どう声をかけていいやら困って、とりあえず一歩踏み出したとたん、パチュリーが顔を上げた。
「何で最後で気を抜くのかしら?」
その顔は……笑っていた。勝利の確信を得た笑みを浮かべて。
「なっ!」
魔理沙の頭の中の危険信号が青から一気に赤になる……より速く、足元から地面の感覚が消える。
「こっ、これは……落とし穴かぁぁぁぁぁぁ!」
「その穴は地下室の妹様のところに続いてるわ。どうやら暴れ足りなさそうだし、妹様と遊んできたら?」
「待てそれはマジで死ぬ!何でこんなときに箒折れてるんだよ!クソ、覚えてろよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」
深く暗い穴の底から魔理沙の声が聞こえなくなったと同時に、落とし穴の蓋はバタンと閉じたのだった。
「それにしても大変でしたねパチュリー様」
「まったく……完全に魔力が底を尽いてしまったわ」
パチュリーは小悪魔に抱えられてベッドに向かう。魔力を使い果たしてしまったため、風に乗って飛ぶこともできない。
……ちなみに魔理沙は散々フランドールにおもちゃにされ、ほうほうの体で館から逃げ出したそうだ。あれで生きているあたりしぶとい魔理沙らしいといやらしい。
「しかしパチュリー様、まさかあの穴が役に立つとは思ってもみませんでしたね」
「……そうね。精霊魔法の失敗でうっかり作ってしまった穴だけど、こういう時に役に立つとは思ってもいなかったわ」
「怪我の功名ですね……でも、今回は本当にひやひやしたんですよ?パチュリー様の切り札が破られたときはどうしようかと思いましたから」
「切り札が破られた?いつ?」
怪訝そうな顔をするパチュリー。
「え、ほら、ロイヤルフレアを魔理沙さんが突破したのは……」
「あんなもの切り札でもなんでもないわ……そもそも切り札を宣言して使うのは馬鹿と魔理沙くらいのものよ」
「は、はぁ……それじゃパチュリー様の切り札ってなんだったんですか?」
そっとベッドにパチュリーを下ろしながら小悪魔は疑問をぶつけてみた。
「涙」
「え?」
「涙……涙は女の切り札、だそうよ」
そう言って、パチュリーは静かに目を閉じ、失われた魔力を回復するための眠りにつくのだった。
叶いませんね、確かにw
パチェの涙かぁ…(萌
二対一より風の結界のほうが卑怯くさくないか?
追伸
東方香霖堂によると霊夢は木行だそうです。
今萃夢想で確認してきました。わさびが苦手とか言ってるんで木行で間違いないですね。
……博麗弾幕結界でボコられてくる。