Coolier - 新生・東方創想話

魂魄妖夢のメイド物語

2006/08/15 23:29:00
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「♪~♪~♪♪♪♪♪~♪♪♪~」

箒を持つ手は軽やかに。
腕の動きは滑らかに。
無駄なく、無理なく、完璧に。

「みょーん、みょーん、みょんみょんみょんみょん♪」

奇怪な歌を歌いだす。
余裕の表れ、という物か。
いや寧ろ。
彼女はこの行為を―――この汚い部屋の掃除を。
思う存分に楽しんでいるだけなのかもしれない。

「みょんみょんしないでー、ほんめーりん♪」

どうしろというのだその歌は。
そもそも何の歌だ。

「ほんめーりん♪」
「…五月蝿いな、さっきから。」

そこに聞こえるのは、再び少女の声。
華麗なる金色の髪に似合わない爽快な顔つきをする黒い少女。
それはまさに、魔法使いと表現できた。

「最初ドリフかと思ったら別の曲に転じやがって。」
「あ、理解できたんですかあれ。」

紺色の服を着た幼い少女。
短いスカートに白エプロン。そしてさらに言うならば頭についたカチューシャ。
どれをとっても、従者。
けれど。
同じ銀色であっても。
瀟洒ではない、真剣な。

「…とにかく、研究中だから静かに掃除してくれよ。」
「はい。」

素直に、言葉を返す。
銀色の短い髪を翻し、掃除を再開する。
黒い少女はその後姿を見て、言った。



「な、可愛いメイドさん。」







魂魄妖夢のメイド物語







一時間ほど前のお話。

「魂魄妖夢!魂魄妖夢はおるか!」

西行寺の屋敷に響く威厳ある声。
それは非常に力強い、まさにこの場を治めるのに相応しい声。
そして、その声の望むものが現れる。

「どうしました幽々子さま。」
「うむ、良くぞ参った魂魄妖夢!」
「…」

妖夢は大体廊下のほうを歩いてこの方に来た。
そしたら何か一つの部屋に座る姿。
しかもどこかの悪役みたいに、簾によって上半身部分が隠されてシルエットになっている。

「魂魄妖夢よ、主を此処に呼びつけたのは他でも無い!」
「幽々子さまこれ邪魔なんですけど。」
「ああどけちゃ駄目よ妖夢!」

面倒臭くなった妖夢が簾を捲り上げると、あわてて幽々子がそれを下ろす。
そして妖夢を廊下にほっぽり出した。
まだ諦めずに作った威厳ある声を出す。

「主はこの西行寺の邸にて、学ぶべき事の全てを学んだ!」
「…全て、ですかねぇ。」

主人の為に尽くし、
主人の為に料理を作り、
主人の為に弄られ、
主人の為に弄くられ、
主人に弄られる。

あれ。
なんかおかしいぞ。

「よってこれより、魂魄妖夢!」
「はい。」
「…えーと。」

シルエットが動き出す。
近くにあった紙のような物を手に取った。

「主にはこれから課外学習として、他の者に対して尽くすことを学ぶが良い!」
「えぇ!?」

流石に驚きを隠せない妖夢。
当然である。
西行寺に尽くす存在である魂魄。
それが何でそんな事をしなければならないのだろうか。

「で、でも幽々子さま!」
「反論は許さぬ!主にとって主の命令は絶対であり、それを無上の喜びとしなければならぬ!」
「幽々子さま…」
「反論は許さぬ!主にとって主の命令は絶対であり、それを無上の喜びとしなければならぬ!」
「…」

妖夢は訝しげな目で幽々子のシルエットを見た。
なんだかぱさぱさと紙が閉じたり開いたりする音が聞こえる。

「ところで幽々子さま。」
「反論は許さぬ!主にとって主の命令は絶対であり、それを無上の喜びとしなければならぬ!」
「『あるじ』と『ぬし』って漢字同じですから気をつけないとまずいですよ。」
「反論は許さぬ!主にとって主の命令は絶対であり、それを無上の喜びとしなければならぬ!」
「それ以外書いてないんですかそのカンペ。」
「ああだからこの簾をどけちゃ駄目だってば!」

妖夢がだんだん同じ事を言う自分の主人に腹が立ち、簾を再び捲り上げる。
やはりカンペには同じようなことしか書いてなかった。
ふりがな振られてた。
幽々子は思いっきり妖夢を蹴り飛ばして簾を下ろした。

「ともかく、主にはこの幻想郷の知らぬ事を学ぶ必要がある!」
「はぁ。」
「だからこそ、我はこのような事を考えたのだ…!」

もう何だか主の意味不明な行動に対して完全に呆れ顔の妖夢。
正直なにしてんのこの人。

「というわけで妖夢!主には今日から…!」
「はい。」
「…」
「…」
「…えーと、きり…きり…」
「…幽々子さま…?」
「…きり…あめ?あま?あめ?…きりあめ……まことわりさ?」

絶対ありえない名前を小さな声で呟くシルエット。
妖夢はため息を吐いた。
すると。



しゃっ。



簾が上がった。

「ねぇ妖夢、これなんて読むのかしら。」
「…もう、これいらないじゃないですか…」

主人の行動に涙を流す妖夢。
別の意味で。
哀れんだ様子で。
とにかくそんな感じのが一時間ほど前の出来事。









そして現在。
霧雨魔法店こと霧雨家。
ご存知霧雨魔理沙の現住居である。

現在の魂魄妖夢。
俗に言うメイド姿。

「ら、ら、ら、ら、そ・う・じ~♪英語で言ったらくりーに~んぐ♪イギリス語でもくりーに~んぐ♪」

そりゃそうだろ。
全く同じだからその二つは。

さて、魂魄妖夢がなぜそもそもメイド服を着ているのか。
それはまあ以前の事件があるわけで。
そんなわけである。
実に簡単。
ひと段落つけて、掃除をする手を休める妖夢。

「ふぅ…」
「お、随分綺麗にしたもんだな。」

部屋の様子を見て魔理沙が笑う。
けれど妖夢は笑う気になれなかった。

「…これのどこが。」
「ん?」
「これのどこが、綺麗なんですかぁ…」

肩を落として言う妖夢。
確かに、最初に比べれば綺麗にはなっただろう。



最初に比べれば。



「何…この…本…」
「魔術書。」
「そんなこと聞いてない…この量について…」

散らかった紙屑やボロボロになって使えない家具などを全て廃棄した。
にも、それにも拘らず。



彼女の目の前に立ちふさがったのは、
山積みになった本、

本、

本本本、

本本本本本、

本本本本本本本本本本本本本本本本本!!!!!

ほーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!



「うわぁ…」

そのうち崩れるのではないかと思えるほど、完成しあがった本の山。
完全に家の天井まで届いている。
天井まではゆうに3mもあるというのに、これ程までに本を散らかし積み上げているのは奇跡に等しい。
というか、家の半分のスペースはこいつらが陣取っている。
霧雨家発端、魔術書師団。みたいな。
もはや変なため息しか出ない。

「何でこんなに溜め込んでるの…?」
「あー、パチュリーのところから持ってきたやつが半分どころか九割以上なんだが、全く返してないもんでな。」
「返しましょうよ…」

成る程この本の量には納得がいく。
以前聞いた所によると、彼女が本を奪いに行っている図書館には
彼女が今までに読んでいる、その約数十倍以上に及ぶ本が保管されているという。
まぁ、だいぶ前の妖霧の異変のときに入った覚えはあるのだが。

「本には興味ないしなぁ…特に魔術書じゃ尚更。」
「うん?なんと勿体無い。」
「魔術書を読んだところで、私には関係ないじゃないですか。」
「なーにを言うかスカタン剣士。」
「誰がソーディアンマスターだ!」
「そこまで言ってねえよ。」

つーか、また微妙に古いネタを使うなと魔理沙は思う。
近々リメイク版が出るらしいが。
いやここではそんなことどうでもいい。

「ま、とにかくどうにか片付けといてくれや。」
「無理言うな!」
「私は早く今の研究を終わらせるから。それじゃよろしく。」
「人の話を聞け……はぁ…」

霧雨魔理沙。
妖夢はこの魔女のことをよく知っている。
自分勝手で我侭だ。
それだけ。
もう、反論する意味がない事を確信した妖夢は素直に本の山に向かった。

「しかし…」

多過ぎだろう、これは。
妙齢の少女が読むような量ではない。
妖夢はとりあえず一冊手にとって開いてみた。

「わけわからん。」

地面に投げた。
どさっと言う音がなるとほぼ同時に、妖夢の頭を魔理沙の鉄拳が直撃した。
妖夢は頭を抑えながら、本を漁って行く。

アルファベットはA~Z。
次に五十音であかさたな。
最後は…読み方のいまいちわからない本。
とりあえず整理するなら完璧を目指すのが妖夢のやり方である。

「えー…えー…えーと、えーの次は…」
「Bだ。」
「どうも。」

最初と最後がわかっていても意味がないようである。
とにかく本を探し、それを順序良く並べる。
そんな地味な作業を繰り返した。
非常に地味、かつ実に労力の要る仕事である。
けれど妖夢は嫌な顔ひとつしないでそれを続けていった。
むしろ表情は生き生きしているように見える。

「♪~…」

尽くす為の心ではない。
従う為の心ではない。
彼女の心は、喜ばれる為の心。
彼女の心は、役立つ為の心。
それが、常に彼女を動かす。
だからこそ、これほどの労働にも耐える。

―――否、耐えるという表現は相応しくない。
彼女は他の為に『頑張る』のだから。

「ん?」

そんな中、ふと妖夢は一冊の本が目に付いた。
『霧雨魔理沙・恋色魔法書』と書かれている本。

「…」

後ろを振り向くと、机に向かって研究をしている魔理沙がいる。
どうやらこれを持っている事に気づいてはいない。
もとい、研究以外が目に入っていない。

妖夢は、恐る恐る。
その本を開いた。



『 [マスタースパーク]

 あなたにあってから、ムネのドキ②が止まらないの。。。
 これって恋?(キャー!)
 ホントに、ホントに大好きだよ♪
 ずっと、隣にいてあげるね(はぁと)
 あなたの横顔見つめてるだけで
 わたし、すっごく強くなれちゃうんだから…(イヤン!)
 だ・い・す・き♪

 霧雨 魔理沙』



「…」

開いた口が塞がらない。
というか、口が開かない。
むしろ口がおかしい。
何がと聞かれても困るけど。

(何…これ…)

本音である。
素直に本音である。
正直ドン引きである。
確実に傷心である。

本を閉じる。
見なかったことにしよう。
私は何も見ていない私は何も見ていない私は何も見ていない私は何も見ていない。
OK、問題ない。

「うん、掃除しよう。」

完全に頭のスイッチを切り替える。
さっきまでの私は死んだ。
今は新たな魂魄妖夢だ。
さっきまでの魂魄妖夢はもういない。
魔法書?何それ。

「さて、早く整理しないと…」

完全に先程の本の事を忘却の彼方に追いやる妖夢。
無理もない。
あんな内容、年端も行かない少女には余りにも厳しすぎた。
期待から来る絶望と、憧憬から来る裏切り。
どちらも、彼女には辛い現実なのだから。
憧れては居ないだろうけど。





さて、それから大体四時間が経過。

「ふぃ~…」

AtoZ。
あかさたな。
その他記号諸々。

完璧に、一部の狂いもなく揃えられた本が
キチンと塔のようにいくつも聳え立っていた。

「よし、後は棚に揃えるだけね…」

そういって妖夢は自分の頬を叩く。
気合を入れなおして、AからZまで揃えた本の一部をまず手に取る。
そして。

「あれ?」

気づいた。
本棚は既に完全に埋まっている。
もう一番上から一番下まで。
限りなく。
際限なく。
一ミリの隙間すら、無く。



「何ィィィィーーーーーーーーーーー!!!???」



これは予期していなかった事実である。
これほどの本があるのだから、その分整理する棚もあると思っていた。
だがしかし。

「ねぇ魔理沙!?どういうことですかあれーーーー!?」
「あん?何だよ唐突に…」

魔理沙の所まで行ってわざわざ叫ぶ妖夢。
机の上には『12歳からできるClock Up』と大きく記された紙があった。
魔理沙は面倒臭そうに妖夢に返事をする。

「本!本!」
「本はあそこにあるだろ。」
「棚!棚!」
「棚ぁ?どう見てもあそこに在るだろう。」
「無い!無い!」
「お前、私がわざわざ馬鹿には見えない本棚を持ってると思うのか?」
「もっと!もっと!」
「…すまん、頼むから落ち着いて日本語を喋ってくれ。」
「すきるまいはーと!」
「静かにしろっつーに。」

魔理沙が静止するように肩を掴むと、妖夢はぜーぜーと息を切らして叫ぶのを中断する。

「はい深呼吸。」
「すぅー」

素直に息を吸い込む妖夢。
限界ぎりぎりまで空気を取り入れる。

「はいてー。」
「ハァァァァァァ!!!」
「アクセントおかしいから。」

息を吐いてない。
気合しか出してない。

「もっかいもっかい。」
「すはー。」
「浅い。」

妖夢の頭を軽くどつく魔理沙。
軽くの割にぶつかった壁が軽くへこんだが。

「はーい、大きく息を吸え。」
「すぅーー。」
「吐いてー。」
「はぁーー。」
「よし、とってこーい!」
「わんわんって違うわボケぇぇぇぇぇ!!!!」

魔理沙が近くにおいてあったペンを投げると、思わず追いかけそうになる妖夢。
無論反撃はした。殴った。
魔理沙はとりあえず鼻血を抑えることにした。
いろんな意味で。

「ちょっと良かった…」
「何がだ!」
「いやそれはどうでもいい。とにかく落ち着いて話してくれ。」

妖夢はとりあえず取り乱すことはなくなっていたので、話を始めた。

「本棚あれしかないんですか?」
「うん。」
「何で。」
「いや、あそこまで本が溜まるとは思ってなかったから。」

魔理沙の収集癖を今回ばかりは呪った。
何で本棚は収集してくれないんだろう。

「ほれほれ、戻った戻った。」
「うう…」

戻っても、これからどうしろと言うのか。
この整理されて積み上げられまくった本の集団を相手にはどうしようもない。

「斬る訳にも行かないしなぁ…」

当たり前だ。
何を考えてるんだお前は。
斬ってどうにかなる物かこれが。

「待てよ…?」

妖夢は適当に積み上げられた本の中から一冊を取り出す。
『霧雨魔理沙・恋色魔法書』と書かれていた。



「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
「な、なんだどうした妖夢!?」

もはやトラウマ。
恐怖○聞みたいな顔になってる妖夢。
叫び声を聞きつけた魔理沙が走ってくる。
妖夢はその本をとりあえずスカートの中に隠した。

「ナ、ナンデモナイナンデモナイ。」
「大丈夫かお前…特撮物に出てくるエセ外国人みたいな口調になってるぜ…」
「シンパイナイデス。ホントデス。」
「ほんとかよ…まぁいいや。」

魔理沙は訝しく思いながらも、とりあえず研究に戻った。
妖夢は多量の汗を流しながらも一人の少女のプライバシーを守ることに成功した。
大丈夫魔理沙。
私は何も知らない。

「そう…魂魄妖夢は死んだ。」

今日二回目になる魂魄妖夢の死を小声で呟く。
何度死ぬ気だお前は。
村雨○二か。

「さて…」

もう死んだ記憶は存在しないので、
改めてではなく、適当に一冊の本を取り出す。
本の表紙は英語なので何が書かれているかわからなかった。
けれど、予想していたとおり後ろに何かが書かれている。



『Patchouli Knowledge』



「ぱっちょうり…このーれっどげ」

読み方全然違うし。
無理しすぎた。

「確か…あの図書館だよね…」

妖夢は荷物をまとめた。
この家の半分を占めていた荷物を。
丁寧に、しっかりと。











それから約二時間が経過して。
日も沈んできたころ。
余りこの魔法の森には関係のない話だが。

「くぅっ~~~~~~~~~っああ!!終わったぁぁ!」

魔理沙は全てから解放されたかのように。
いや実際解放されたんだが。
椅子の背もたれに思いっきり自分の体重を乗せた。
そして散らかっていたはずの部屋の中を見た。

「おおー。」

部屋はものの見事に片付いていた。
何もない、というのが相応しいのも凄いことだが。
しかし普段の霧雨家(通称ゴミ屋敷)を知っている者にとっては、確実に大きな変化である。

「凄いなー、妖夢ー?」



返事はない。

「妖夢ー?」

へんじがない。

「ただのしかばねのようだ。」

違う。
霧雨家に、妖夢の姿は無かった。
魔理沙がその事に気づいて、腕を組む。

「どこ行ったんだ、あいつ…」
「ただいま戻りましたー。」

と、ドアが開いて声が響く。
魔理沙が入り口のほうを見ると、そこにはメイド服を着た妖夢が立っていた。

「どこ行ってたんだよ。」
「本の整理ですよ。」
「あー、なるほど。」

部屋が綺麗なのはそういうことか。
本棚も増えてないし、散らかっても居ない。
積みあがった本の山がなくなっているなんて素晴らしいことだ!









あれ?









「…なぁ、妖夢。」
「なんですか?」
「本の整理をするのに…なんで外に行ってきたんだ…?」
「え、簡単じゃないですか。」

魔理沙は、何かに感づいていた。
あれほどあった本が、こんな簡単に。
『整理』できるものか。

ある方法を実行しない限り。





「借りてたらしい本、全部返してきました。」
「待ててめぇぇぇぇぇぇぇぇあぁぁぁぁえぇぇうぁぁぁぁ!!!????」

そう。
実に単純な話である。
よく見たら本棚も若干スカスカになっている。

成る程綺麗なわけだ。
成る程。
なーる。



おいこら。

「お前何しとるんじゃぁぁぁぁぁぁ!!???」
「借りたものはちゃんと返しましょう。ってけーねがいってた。」
「嘘つけ!いやあいつなら言いそうだけど!」

うん言いそうだ。
実に言いそうだ。
でも一番駄目なのは、妖夢が他人を呼び捨てにすることじゃないかな。

「あれまだ使うんだぞおい!?」
「その都度借りてくればいいじゃないですか。」
「めんどい!」

言い切った。
あっさり言い切った。
凄まじい自分主義。
まさに魔理沙。
そしてそのことを知り、肩を落とす魔理沙。

「あぁ…畜生…」
「あ、それと今回本を返したことについてなんですが。」
「なに…?」

覇気がなくなっても、とりあえず返事をする魔理沙。
それに対しても妖夢は普通に言った。

「図書館の館長が、いらっしゃってます。」
「パチュリーが?」

覇気がないのは相変わらずに、あのむらさきもやしが此処にきていることに真剣に驚いた様子を見せる魔理沙。
まさかわざわざ図書館から出てくるとは。

「何でまた…」
「いえ、一応お礼だとかなんだとか…」
「んー…とりあえず通してくれ。」
「かしこまりました。」

ぺこり、と一礼をして入り口を開ける妖夢。
若干その姿に魔理沙は心を打たれ、近くにあったティッシュを取り出す。

「それじゃ、いいですよ。」
「では…」

妖夢がパチュリーを呼ぶであろう声。
そして。

のそっ。

「ん?」

手がでかい。
というか、天井に手が届いている。
まるで、その入り口の高さを確かめるかのように。





「久しぶりだな…魔理沙…」
「はぁ!?」

入り口から入ってくる、巨漢。
それは、確かに何時もの服装であり、何時もの髪であり、何時もの彼女のように見える。
しかし。
どう見ても2メートルを超えている身長やら濃い顔やら。
むらさきもやしの面影はどこにもなかった。
思わず魔理沙も変な声が出た。

「どうした魔理沙…折角の戦友との再会だ…もう少し、喜んでくれてもいいのではないか…?」
「いや、お前誰だぁぁぁぁぁぁ!!!???」
「フッ、釣れない返事だな…」
「嘘つけお前パチュリーじゃねえだろ若本○夫みたいな声だしやがってぇぇぇぇ!!??」

それはパチュリーだったのかもしれない。
でもまぁ声が若本さんだったりするのでどうなんだろう。
普通に男塾に居そうなキャラクターになっている。
その姿を見て完全に取り乱す魔理沙。

「さぁ…俺の胸に飛び込んで来い…魔理沙…」
「絶対嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!何で一人称が『俺』なんだぁぁぁ!!!」
「フッ、照れ屋さんだな…いくぞ…」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



そして、魔理沙は―『ザ・ワールド!!!』












時の止まった世界にて。

「くっ…時空間が明らかに捻じ曲げられている…歴史が…!!」
「まずい…此処まで来ると、流石の私にも手に負えん…!!」

「咲夜さんとハクタクが…紅魔館メイド部隊、激励の陣ッ!!」←美鈴
『イエッサァーッ!!』
「フレェェーーーーーッ!!フレェェーーーーーッ!!さァーーくゥーーやぁッ!はいッ!!」
『フレッ、フレッ、咲夜!フレッ、フレッ、咲夜ァ!』
「ファイトォォーーーッ!!イッパァァーーーツッ!!はぁーーくぅーーたくッ!はいッ!!」
『ガンバレガンバレ、HAKUTAKU!ガンバレガンバレ、HAKUTAKUゥッ!!』
(以下何回かループ)

「みんなの激励を力に変えているというのに……!!」
「なんと強い歴史改変の力だ…ぐあっ!!」
「ハクタク!」
「霧雨家を…霧雨の魔法使いを…頼んだぞ…ガハッ!!」

「ああっ!ハクタクがぁっ!!」
「まずいですよ美鈴隊長!このままじゃぁ…」
「うろたえないで…きっと…きっと方法があるはずよ!!!」

「さくやー。さくやー。なにしてるのー?」
「あ…お、お嬢様ちょうど良いところに!」
「ちゅうごくー、なにー?」
「この際私の名前云々は気にしません!お嬢様、これを!」
「なにこれー?」
「この紙に書かれていることを…大声で、読んで下さい。それだけで…ぐふっ…」
「美鈴隊長ー!」

「まずいわね…全く…どうしようも…ないわ…」
『咲夜さん…』
「…これは…美鈴なの!?」
『全神経を耳に…全神経を耳に集中させて…お嬢様の声を…』
「お嬢様の…声…?」



さくや、だいすき。



「…」

「いけない!」←メイドA
「傘の用意よっ!!」←メイドB

ブシュゥワァァァァァァァァァァァ!!!!



「オッケェェェェーーーーーーーーッ!!!お嬢様ぁぁぁぁァーーーーーーッッ!!!???」



「これで…これでいい…咲夜さん、後は…任せました…」
「美鈴隊長!」←メイドA
「…ていうか、何であんた死ぬん…?」←メイドB

「ふははははははっ…お嬢様の愛があれば、この十六夜咲夜、不滅不滅ぅぅ~~~~ッッ!!!」
(咲夜さん…今のあなたはキン○ギドラより強いです…!)←小悪魔



※こんな感じで先程の若本…げふげふ、パチュリーを時空間を操ったりして物の見事に無かった事にしております。
 暫く鼻血を垂れ流して時空を操作する瀟洒なメイド長の活躍をご覧ください。
 そして、応援してあげてください。











無かった事に。
そして時は動き出す。





「図書館の館長が、いらっしゃってます。」
「パチュリーが?」

覇気がないのは相変わらずに、あのむらさきもやしが此処にきていることに真剣に驚いた様子を見せる魔理沙。
まさかわざわざ図書館から出てくるとは。

「何でまた…」
「いえ、一応お礼だとかなんだとか…」
「んー…とりあえず通してくれ。」
「かしこまりました。」

ぺこり、と一礼をして入り口を開ける妖夢。
若干その姿に魔理沙は心を打たれ、近くにあったティッシュを取り出す。

「それじゃ、いいですよ。」

妖夢がパチュリーを呼ぶであろう声。
そして、少女が姿を現した。
自分よりも遥かに年上だとは思えないぐらいに、少女で。
自分と同じぐらいの容姿とは思えないぐらいに、静かに。

「久しぶり…魔理沙…」
「…ん。」

小さな掠れるほどの声を出す少女に、笑顔で簡単な返事を返す魔理沙。
魔女、パチュリー=ノーレッジ。

「本…ありがと。」
「いや…借りてたのは寧ろこっちの方だしな。」

感謝される事は、何もしていない。
こちらが感謝するのが普通なぐらいだ。
あえて、そう言った感謝の言葉は口にしないけど。

「それで…他に、何の用なんだ?」
「え?」

魔理沙の言葉に、今まで若干俯いていた顔を上げるパチュリー。
魔理沙は言葉を続けた。

「まさか本返したことに関して感謝するためだけに来たわけじゃないだろ?」
「…魔理沙…」
「まぁ、その辺の事を聞きたいんだが…っておいパチュリー。」

魔理沙がパチュリーの様子が変わったことに気づく。
再び俯いて、肩を震わせていた。

「ばか…」
「え?」
「魔理沙の、ばか!」
「ええ!?」

顔を真っ赤にして、パチュリーは叫ぶ。
目には、今にも零れ落ちてしまいそうなぐらいに涙が溜まっていた。
魔理沙はもう何が起きているか理解できなかった。

「ひどいよ…わたし、魔理沙に…魔理沙に会いたかったのに…魔理沙に会いたかっただけなのに…!」
「いやちょっとまてなんだそれはおかしいはなしがてんかいされてないかな。」
「わたしね…覚えてるんだよ?魔理沙が、わたしのこと誘いに図書館まで来てくれたこと…!」
「いやいやちょっと待ちたまえ諸君。」

諸君って誰だ。
一人しかいない。

「あの時の…あの時の、魔理沙の暖かさは嘘だったの…?わたしは遊びだったの…?」
「あの時っていつ!?」
「乗ったじゃない!魔理沙の箒に、二人で…!」
「何だこの話は、『ラクト・ガール』準拠か!?」

魂魄妖夢のメイド物語はCool&Createを心から応援しております。

「作中でそんなこと宣言してどうすんだお前は!?」
「話を逸らさないで!本当にわたしを愛してるの!?」
「いやだからさぁ!?」

もはや作戦ではない泣き落としに完全に困惑する魔理沙。
と、そこに入り込む第三の声。

「あのーすいません。」
「あーなにだれようむ!?」

入り口の向こうから聞こえてくる妖夢の声だった。
若干頬を赤らめながら家の中を除いている様である。

「とりあえず掃除終わったし…私お邪魔みたいなんで帰りますね。」
「ちょっと待て!?とにかくこの状況を何とか…!」
「やっぱり…あの子と浮気なんかして!魔理沙のばか!」
「ちげーよ!」

もはや三角関係愛憎劇で話は固定されたらしい。

「あー妖夢!帰るな!まだ帰るな!最後に頼みが!」
「わたしなんかより…あの子が大事なのね…!」
「魔理沙…女の子を泣かせたら駄目ですよ…?」
「私も女だ!て言うかパチュリー頼むから少し静かにしててください話が拗れます!」

物陰から出てくる妖夢。
その姿に。
一応家を完璧なまでに綺麗にしたメイドに。
最後のお願い。













「最後に綺麗にオチつけてくれないかな。」
「無理です。」







終われ。
魂魄妖夢のメイドシリーズ第二弾。此処に参上。
よくわからないまま最終的にパチュ魔理いえーい。

アホか俺は。

第一弾はどこかって聞かれましても創想話に投下してませんとしか言いようが無い。
とりあえず私のホームページ内の小説ページにあります。宣伝みたいで嫌だなぁ。
当時まだ創想話に投稿して無かったので、良かったらそちらもどうぞ。
話の繋がりはアートネイチャーに行く前の人の髪の毛よりも薄いが。
もっとシリアス分を増やそうかと思ったけどギャグ部分が薄くなりそうだったので却下に。

今後は『ハルヒ』シリーズみたいに、『物語』の部分が段々変わっていろいろ展開するかもしれません。
しないかもしれません。
次回作は『魂魄妖夢のメイド対戦』になります。妖夢VS咲夜のメイドの戦いです。
という嘘予告をしてみます。
気が向いたら書きます。
例の如く、シリーズごとの繋がりは限りなくゼロに等しくなりますが。

ではまたいずれ。


(2006・08・27)誤字訂正しました。
遼魔
[email protected]
http://freedia-a.hp.infoseek.co.jp/
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コメント



0.1500簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
いやもう凄く面白かったです色々と。
完全に真剣な従者かわいいよ!!みょんみょん歌ってるのもかわいいよ!
霧雨魔理沙・恋色魔法書の正体きになるよ!!

>『あるじ』と『ぬし』って漢字同じですから気をつけないとまずいですよ。
あとこれ妖夢がツッコんでくれてすっげぇスッキリしましたw

>破棄がない (二箇所)
覇気がない

>『ラクト・ガール』準拠か!?
「『drizzly rain』準拠か!?」の方が良いかと。(『ラクトガール~少女密室』は原曲名)
8.90名前が無い程度の能力削除
まさか南国少年ネタまで入ってくるとはwww
15.100名前が無い程度の能力削除
JAM Projectネタで調子に乗って熱唱するみょんを想像し
一人で大爆笑

>>『ラクト・ガール』準拠か!?
>「『drizzly rain』準拠か!?」の方が良いかと。(『ラクトガール~少女  密室』は原曲名)

『ラクト・ガール』つーかパチュメイカーは存在しますよ。
drizzly trainに収録されています。
18.無評価名前が無い程度の能力削除
Dr.高○ぅぅぅぅwww
鼻血の海ですな。
34.100真十郎削除
パッチュ分補給!