紅魔館、それは吸血鬼の住まう館
今日も今日とて我侭なお嬢様が我侭に立ち振る舞い
メイド長は我侭なお嬢様の我侭な命をかなえ
お嬢様のご友人は我侭に適度に付き合い、門番は門を守っていた
「館内の掃除は終了、メイド達への指示も出したし……一段落ね」
そんな我侭な命に最も振り回されながらももっともその状況を楽しんでいるのが
メイド長である十六夜咲夜、曰く、パーフェクトメイド
「結構疲労も溜まってきたし、そろそろ休み時ね」
彼女がパーフェクトな理由の一つに、彼女が持つ能力がある
時間を操る程度の能力、時を止めたり進めたり、はたまた早送りまで
その便利な能力は、掃除や紅茶を入れる時などに特に効果を発揮する
そして最も能力が生かされるのが、休憩、である
「あー、好きなだけ寝れるって幸せ~」
時を止めた空間、それは彼女だけのプライベートスクウェア
誰も入ってこないのをいい事に、鼻歌交じりでメイド服を脱ぎ捨て
下着だけを身にまとった姿でベッドへと華麗にダイビング
「ふぁ~……ふぃ~……」
普段なら決して誰にも聞かせる事の無い声
そんな声を出しながら、しばらくの間ベッドの上でゴロゴロしていたが
眠気が段々と増してくると、布団に包まり、夢の世界へと飛び降りた
「咲夜、咲夜」
「…………」
ゆさゆさと体が揺れる
「咲夜、起きなさい……咲夜!」
「…………ふぁい?」
耳に響くどこかで聞いた声
重い瞼を少しだけ開け、現実の世界を確認する
「まったく、私をほったらかしてぐーたら寝ているなんて、いい度胸ね」
「………………ふぁい」
「まだ寝ぼけているの?」
「ふぉ?」
ぐしぐしと目を擦る
重い瞼をゆっくりと広げてゆく
視界が徐々に鮮明になり、銀の髪の少女の姿がくっきりと映る
「…………お嬢様?」
「そうよ、私がこの館の主であるレミリア・スカーレットお嬢様」
「…………」
「…………」
見つめあい二人
「おおおお嬢様ぁぁぁぁぁっっ!!!!」
「っ!?」
布団が跳ね飛び、咲夜も跳ね飛ぶ
いきなりの出来事にレミリアも吃驚し、その羽がピーン! と伸びた
「わきゃっ!!」
「あ」
咲夜はレミリアから逃げるように跳ね飛んだ為
其処に待ち受けるは洋の寝具であるベッド独特の段差
手は宙を掴み、可愛らしい声を発しながら見事に背中から地へと叩きつけられた
「(なな、なんでお嬢様が私の空間に!? いやそれよりも早く服を着て紅茶を淹れ淹れっ!)」
心の中で最後に独特な単語を考えながら、すぐさま立ち上がりすぐ横のクローゼットに向き立つ
両手で勢いよく開けた中には、いつも来ているメイド服が何着も
「……あれ?」
無かった
「ああああああ! 後で纏めて洗濯しようとしてたんでしたぁぁぁ!!!」
何故か敬語で叫び声があがる、その様子をまじまじと見ていたレミリアは
普段どおりクールなのだけども体の節々が微かに震えていた
「咲夜、あなた自分の事となると意外とズボラね」
「はぁ……面目御座いません」
まるで塩をかけた青菜のようにしおしおと頭を下げる咲夜
しかしその角度が三十度を越えた時点で、突如ぴたりと動きが止まった
「……お、お嬢様?」
「何? 弁解は聞かないわよ?」
「どうして私の空間でお動きになっていらっしゃるのでござりまするか?」
ギギギギギギギと咲夜の顔が上がる
だがあまりにも唐突な出来事が続いたためか、その表情は微笑みながら引きつっていた
「……何を言っているの、他のメイドも、月も、運命すらも動いているわ」
「えっ!?」
またぴたりと動きが止まる、レミリアもやれやれといった表情で溜息一つ
誰も時は止めなかったが、それから数秒は確実に時は止まっていただろう
「ええ? えええ!?」
咲夜はハッとすると、すぐさまテーブルの上の懐中時計を掴み、念じ始めた
別段、時計に時を止める力があるわけでは無いが、能力と関連する何かを使用することにより
精神的に補助し、能力の発動をしやすくするという利点があるからだ
「…………! はぁ……お嬢様、今動けますか?」
「この通り」
「!!」
レミリアはいつもの格好でんぱんぱと両手を開いたり閉じたり
すると、ゴトンと懐中時計がテーブルの上に落ち、咲夜の顔に驚愕の表情が浮かぶ
それを見てレミリアも何が起きたのかを察し、また溜息を一つ
「え……あ……」
「咲夜」
「は、はい」
「仕事を忘れた分は不問にしてあげるわ、早く着替えて私の部屋に来なさい」
「あ……はい」
そう言いつつ、レミリアは部屋の外へと出てゆく
部屋に残された咲夜は、ただ呆然と立ち尽くしていた
下着姿で
「クフッ…クフフッ」
「レミィ、あなたがそんな笑い方をするのはよっぽど面白いものを見たときだけね」
「だって咲夜が……クフフフフ」
椅子に腰掛け、テーブルにその両手を置きながらクフクフと笑い続けるレミリア
テーブルの反対側では、今にも倒れそうなほど顔色の悪い少女が一人
「あんなに取り乱した咲夜は初めて見たもの……クフフ」
「あなたが其処まで笑うのならよっぽどだったのね……でも、レミィ」
「?」
「咲夜がいない、咲夜はどこ? って自分の部屋を隅々まで探し回ってたあなたも面白かったわよ」
「うっ」
「寝起きに、それも全裸で」
「ぐっ!」
この主にしてあの従者有り
「……ねぇパチェ、記憶を消す薬って作れないかしら?」
「そうね、あの蓬莱人なら作れるんじゃない?」
「魔道書を手土産にすれば作ってくれそうね」
「あら、吸血鬼の牙とか羽のほうが喜ばれそうよ」
ひやり、と部屋の温度が下がる
一部の装飾品がカタカタと揺れ、窓がひび割れる
部屋の中央ではテーブルを挟んでひたすらに睨み合う少女が二人
これから数分もすれば弾幕まで飛びかねない状況の最中
その世界を消し去るように、コンコンとノックの音が響いた
「十六夜咲夜、入ります」
キィィと扉が開き、現れたのはやはり彼女
だが、その袖は手首まで隠し、そのスカートは足元まで隠している
つまり、彼女は普通のメイド服に身を包んでいた
「運命が……崩壊するわ」
「レミィ?」
「すみません、いつもの服は全て洗濯中でして……」
ぺこりと頭を下げて咲夜はテーブルへと歩み寄る
ふとここで二人は、普通のメイド服だと咲夜だと判りづらい事に気づいた
「成る程、あなたの話を聞いた所では、まだ能力が無くなったわけではなさそうね」
パチュリーが咲夜の頭を鷲づかみにし、目を覗き込んだり
髪の毛を引っ張ったりおさげをぐるぐるしながら語り続ける
咲夜はなされるがままに、嫌な顔一つせずそれを受けていた
「無くなったわけでは無いのですか?」
「そうよ、無くなったのなら、今頃紅魔館は大変な事になっているもの」
「……あ」
ここ、紅魔館は外見も大きいが、中はそれ以上に広大である
その広さたるや、迷い込めば誰にも見つからずに餓死してしまう可能性がある程だ
なぜそれほど広いのかというと、咲夜の空間操作によるものである
「だからあなたの能力が消えていたのなら、今頃私もレミィも瓦礫の山に埋まっているわ」
「ですね……でもそれなら、どうして私の能力は……」
「其処までは解らないわ、だけどあなたの能力は時間と空間に作用する大きな力
何かがいつもと違うだけで作用しなくなるほど繊細な物なのかもしれない」
「デリケート……というやつですね」
「レミィみたいに繊細さも何もかも力で捻じ曲げられるのならいいのだけれど、ね」
ふい、と二人してレミリアの方を見れば、当のレミリアは飄々としながら
何も気にしていないといった感じで紅茶を口へと運んでいた
「お嬢様、カップの中はすでに空ですが」
「っ!!」
「……クスクス」
あれから数時間の後、咲夜は一人箒を片手に、広い廊下を掃いていた
『(今までの生活の中で変えたことがあるのなら、元に戻して見なさい
そうすればもしかしたらあなたの能力が元に戻るかもしれないわ)』
「とは言われてみたものの、変えたことなんて記憶に無いし……はぁ」
ザッザッと絨毯を履き続けながら、ぼーっとパチュリーに言われたことを反復し続ける
そんな彼女の横には、これまでの数時間ずっと掃き掃除をしていたのか
小山のような埃の塊が等間隔にいくつもいくつも並んでいた
「私服のときでも能力を使えていたからメイド服が原因では無さそうだし……うーん」
「ちょっとちょっと、其処のあなたー!」
「あら?」
ふと上の方から聞こえてくる声、見上げればメイドが一人
彼女はばたばたと慌てながら咲夜の横に降り立った
「こんなところで何をしてるんですか! はやく庭の掃除に行かないと鬼メイド長に怒られますよ!」
「……そう、ところでその鬼メイド長って、こんな顔をしていなかったかしら?」
「へ?」
ゆっくりと自分の顔を指す咲夜、そして咲夜の顔をジーっとみるメイド
続いて顔を下げてメイド服を見る、また顔を上げ、また顔を下げ……
「メ、メ、メ、メイドちょおおおおおお!!」
「気づくのが二十七秒ほど遅いわ」
「申し訳御座いません!! メイド長がこんな所で掃除をしてるなんて思わなかったので!」
「まあ、それもそうでしょうね……早く庭に戻りなさい、これ以上さぼると刺すわよ」
「は、はいっ!」
そのまま咲夜はメイドに背を向けると、またザッザッと絨毯を履きはじめた
メイドも咲夜に背を向けて飛び立とうとしたその時、ふと彼女の動きが止まる
「……そういえば、なぜメイド長がこうして掃き掃除を?」
「ただの気紛れよ」
「普段なら、神出鬼没に現れてメイド達に渇をいれている時間だと思うのですが?」
「いいじゃない、偶にはこうしていても」
「偶には、ですか……でも、もしかしたら今は出来ない、そうじゃないんですか? メイド長」
ピタリ、と咲夜の動きが止まる
「何が言いたいの?」
「その、いつもは時を止めてなんでもすぐに済ましてしまうメイド長が
こうして時間をかけて何かをしているなんて不思議だなぁと思いまして」
「そう、つまり?」
「つまり、今のあなたは時を止めれないのでは、と思いまして……ねっ!!」
殺気を感じ取り、咲夜はすぐさま横へと飛びのく
途端、閃光が走り、先ほどまでいた場所を抉り取った
「おやおや、いつものメイド長なら今頃私は串刺しになっていると思いますよ?」
「別に、必要ないだけよ」
「そうですか、相変わらずあなたのことは気に入りませんよ……人間が!!」
「ちっ!」
紅魔館、其処に勤めるメイド達はその全てが妖怪である
人間は咲夜ただ一人しかいないのだ、無論、人間の下に付くなど
我慢ならない妖怪も数多くいる、しかし咲夜はその全てを力でねじ伏せてきた
「ほらほらどうしたんですか! お得意の弾幕にキレがありませんよ!」
「五月蝿いわね、沈黙は金という言葉を知らないの?」
「お生憎様! 私は妖怪でしてね!」
その咲夜の力をもっとも強力にしていたのは、彼女が自ら持つ能力に他ならない
しかしその能力が使えないとなれば、彼女は少しばかり魔力が使える人間である
彼女のことを気に入らない妖怪が、この隙を狙うのは当然のことであった
「(スペルカードも使えないというのは、ちょっと辛いわね)」
「くっ……ナイフしかまともに使えないのに意外と粘るじゃないですかっ!」
「そうよ、あなたがそうやって焦るのを待っているのだから」
「(飛び込んできたっ!?)」
「攻撃ばかりじゃなくて、守ることも考えなさいな」
だが、咲夜も人間とはいえ並の人間ではない
精巧緻密なナイフ捌きと、類稀な戦闘センスが彼女にはある
「つっ…あ!」
「しかし人間ならこれでお終いなのだけれど、相手が妖怪だとねぇ」
目の前のメイドの胸元に、深々と突き刺さっている二本のナイフ
人間なら確実に致命傷、それどころか即死レベルなのだが
それでもメイドは倒れるどころか、鬼の形相でこちらを睨んでいる
「人間ガ……ニンゲンガァァ!!」
「まったく、あなたも紅魔館のメイドならもう少し優雅さを持ったらどう?」
こういった状況にも一切慌てずに淡々と述べる咲夜
逆にメイドは肉が軋む音をさせながら、その体を妖怪と呼べる姿へと変質させていく
「コロス! コロス!」
「あなたみたいなのがいると紅魔館全体の品性が疑われるわ……クビよ、消えなさい」
「ガァァァァァァ!!」
まるで猛獣のような姿に形を変えた妖怪は、その両手の爪で咲夜を切り裂かんと襲い掛かる
対する咲夜は華麗なナイフ捌きで爪を薙ぎながら、相手の隙を伺い続けた
「(にしてもちょっと速い……元紅魔館のメイドは伊達じゃない、か)」
ここに住む以上、有事の際以外はメイド達は完全に人の姿である必要がある
無論、どんな妖怪でもあっさりと人の姿に化けられるわけではない
完全に模するにはやはりそれなりの妖力が必要となるのだ、つまりは強いということ
「まあ、この程度ならどうにでもなるけれど」
「ガッ!?」
刹那、妖怪の目から咲夜の姿が消えたかと思うと、ぼたり、と何かが地に落ちる
「ガァァァァ! ウデガァァァ!!」
「さて、あなたの両腕が無くなったけど、まだやるの?」
「オノレ! オノレェェェェ!!」
両腕が無くなっても尚、その牙で首を食い破らんと飛び掛る妖怪
対する咲夜も一撃で首を跳ね飛ばさんと下がりながらタイミングを伺う
「(しかしもっと腕の立つ相手だったりしたら……そう――)」
――どすっ
その時、背中に何かが当たり、体の動きが止まる
襲い掛かってくる妖怪に対処できるように、横目で当たったソレを確認すれば
綺麗になびく赤い髪が、その視界へと映りこんだ
「(美鈴とか……)」
「破阿ッ!!」
突如視界を覆った青い閃光、その光につい目を閉じた咲夜はすぐにその瞼を広げる
一番最初に映ったのは細くたくましい二の腕、次にその腕の先へと視線を向けると
現在進行形で宙を舞っている妖怪が一匹、そして最後に後ろへと振り向けば……
「大丈夫でしたか、咲夜さん」
「大丈夫よ」
予想通り、美鈴がそこにいた
「ゴブッ……」
「……あらら、おとなしく私に首を跳ねられていれば良かったのに」
「それもそれでどうかと思いますけれど……」
美鈴に殴り飛ばされた妖怪は、地に落ちた後もゴロゴロと転がり続け
終いには遠い遠い廊下の端の壁に叩きつけられ、立ち上がりそうな様子もない
「で、門番の仕事はどうしたの? サボタージュ?」
「ちち、違いますよぉ! お嬢様から咲夜さんが能力を使えなくなったと聞きましたので」
「これはチャンスだと思ってメイド長の座を奪いに来ました、と」
「だから違いますって! そういうのから守りに来たんですよぅ!!」
「冗談よ、ありがとう美鈴」
「えっ、あっ……は、はい!」
急な感謝の言葉に赤い髪以上に顔を赤らめてはにかむ美鈴
その様子を見て咲夜も少し笑顔を見せた
「じゃ、ぱっぱと処理しましょうか」
「そーですね」
処理、それはいらなくなった物を処分するということ
二人はピクリとも動かない妖怪を持ち上げると、近くの窓から豪快に放り投げた
「むぎゅうっ!」
「あ、まだ生きてますよ」
「解雇したメイドまで世話する必要はないわ、放っておきなさい」
「そうですか、みんなー! 食べていいそうですよー!」
「……食べ?」
美鈴の声に応じるように窓の外から響いてくるいくつもの返事
その後、肉を千切ったりする音や、悲鳴やら何やら聞こえてきたが
パタンと窓を閉じるとそれも聞こえなくなった
「美鈴、今、外で返事したのは……」
「あ、私の部下達です」
「そう……掃除の手間が省けて助かるわ」
十六夜咲夜が時を止めれなくなってから早半日
他のメイド達と同じ時間を過ごしたが、咲夜にとってソレはとても新鮮であった
妖怪なのに私を慕う者、妖怪らしく嫌っている者、生きていければそれでいい者
ほんの少数ではあるが、お嬢様に仕えている事が誇りである者も居た
「ふー、今日も一日ご苦労様でした、か」
「ご苦労様でしたー」
仕事も全て終え、自らの部屋でくつろぐ咲夜
カップに注いだ紅茶の香りが、程よく部屋を包む
「美鈴は自分の部屋に戻らなくていいの?」
「ぶー、またそう言うー、咲夜さんの能力がきちんと戻るまでそばに居ますからね!」
「なら能力が戻るまで何日でも寝ずの番ね」
「ひぇっ」
「冗談よ」
「……むーっ!」
美鈴をいじりながら紅茶を一口
ほのかな苦味と甘みが、すうっと舌を駆け抜けていく
「それにしても、美鈴には嫌われてると思ってたんだけどね」
「ほぇっ!? ど、どうしてですか?」
「……毎日ナイフ刺してるじゃない。嫌われても好かれる理由にはならないわ、なのに……」
「え? あれは咲夜さんなりの愛情表現だと思ってましたけど」
「っ!? なななんでそうなるのよ!」
「だって咲夜さん照れ屋じゃないですかー、みんな知ってますよー?」
「……そう結論付ける妖怪の思考がよく分からないわ」
「咲夜さんは人間ですから」
それは人間がどうという話なのか? と思いながらも咲夜はまた紅茶を一口
「それに咲夜さんは私の妹みたいなものですから!」
「ぶふっ!!」
「ナイフの捌き方とか、魔力の使い方とか、手取り足取り教えてたあの頃が懐かしいなぁ……」
ドスッ
「何で刺すんですかーーー!!」
「もう寝る時間だからよっ!!」
「ううっ、そんなに照れなくても……」
「オーケー、後何本のナイフをご所望かしら?」
「ごめんなさい」
取り出したナイフをホルスターにしまい、ぷいっと顔を背けながらクローゼットへ向かう咲夜
そんなツンツンした様子を見ながら、美鈴はすこし微笑んだ
「(さて、今日の寝巻きはこのパンダの……あ、美鈴が居たのよね、という事は無地)」
取り出したのはどこにでもあるピンク色の寝巻き
それをすぐ横のベッドの上に放り投げると、メイド服を脱ぎはじめた
「やっぱりいつものメイド服じゃないと動きづらいわね」
脱いだ服をたたみ、ナイフの仕舞ってあるホルスターをはずし、籠の中へと入れる
次に寝巻きをその手に取ったところで、ふと強い視線に気づいた
「……美鈴?」
「…………」
「どうしたの、そんな睨んだりして」
「…………」
「め、美鈴?」
椅子から立ち上がり、二歩、三歩と咲夜へ歩み寄る美鈴
その真剣な表情に、咲夜もベッドのある方へと後ずさる
「い、いったい何なの……きゃっ!」
次の瞬間、咲夜の体は押し倒され、その上に美鈴が馬乗りになる格好となった
「美……鈴?」
「動かないでください、咲夜さん……」
美鈴の表情は真剣そのものだった、冗談でも、ふざけているようでもなかった
そして美鈴の両手がゆっくりと咲夜の上へと移動し、ピタリと止まる
「何をする気なの……」
「…………」
咲夜の問いに何も答えない美鈴、一切表情を変えることの無い顔を見て、嫌な考えが頭をよぎる
この時を待っていたのか、ナイフも何も持たない、抵抗する術すらないこの時を狙って
私を殺そうとしていたのか、やっぱり私は美鈴に嫌われていたのか、と
そのままゆっくりと美鈴の両の手は咲夜の体へとかかり
ふにっ
ふにっふにっ
「…………」
「…………」
その胸を揉んだ
「めめめめめめめめめめ美鈴っ!?!?」
「あー、やっぱりですね」
「な、何が! 何がやっぱりなの!?」
「咲夜さん、胸、大きくなってますよ」
「胸!? 胸がおっきくなったって何が……って、胸?」
それから数十分の後、レミリアの部屋に集う紅魔館の顔役達
「で、ブラジャーを合う物に変えたら能力も元通り使えるようになったと」
「……はい」
いつも通りに佇み、いつも通りに淹れたての紅茶を飲み、いつも通りにふんぞり返るお嬢様
その背には、いつも通りに佇むパーフェクトメイドが少しだけ頬を赤らめていた
「ブラジャーとの接合度によって魔力の重要な通行点である胸、あるいは心臓に何らかの影響が……」
「分析しないでください」
そしてやはりテーブルを挟んだ向かい側にはいつも通りに無駄知識を貯め続ける知識人
なにやら本気でブラジャーに関して考えているようだが、結局は無駄になるのだろう
「で、結局どうなったの?」
「どうなった……とは?」
「サイズよ、サイズ」
レミリアが両手を胸元に添え、手首をひねって山をかたどる様に動かす
すると咲夜はなにやら顔を背け、片手で口元を隠しながらさらに顔を赤く染めた
「い、一応……Bから、その、Cへと……」
「そう」
Cとはどれほどの大きさなのか、それがレミリアの好奇心を刺激したらしく
なんとなく自分の胸元をぺたぺたと触っては、手を丸めていろいろと思案したり
「ブラジャー……ね、私も着けてみようかしら」
「あのね、レミィ」
「何よ?」
「そもそもあなたに包む物なんて無いじゃない」
部屋の温度、五度低下
「べ、別に無くったっていいじゃない……着ける必要があるのに着けていないのだっているのよ?」
「例えば?」
「そこの美鈴とか、ねぇ?」
「あ、わ、私ですか!?」
急に指名されて驚く美鈴
まさか自分に話が振られるなんて思いもしなかっただろう
「あ、あのぅ、私の場合はですね、よく戦闘等でブラが使い物にならなくなる上に
私の胸に合うブラジャーが滅多に入荷しないので……最近は着けない事にしたんです……」
「…………」
美鈴、肝心なところで気を回せない門番
「そういえば美鈴、あなたのブラのサイズはいくつなの?」
「サイズですか? Hですよ」
『Hっ!?』
「…………」
うまく咲夜がフォローを入れたつもりだったが、逆効果でさらに室温十度低下
「……お嬢様、今夜はもうお休みになられた方が」
「そうね、これでお開きにしましょう」
しかしどうやら臨界点は突破しなかったようではある
そして何とか今日一日も無事に終わりそうで
「みんなみんな! 見て見てーー!!」
やっぱり終わらなかった
「あら? どうしたのフラン」
「あのね! あのね!」
突如扉を豪快にこじ開けて登場したのは、全てを破壊する妹、フランドール
彼女はキラキラと目を輝かせながら自らの服に手をかけると、捲りあげながらこう言った
「咲夜のいらなくなったブラジャー私にぴったりー!!」
「な、なんだぁー! この揺れはーっ!!」
「レミリア様とフランドール様が館内で姉妹喧嘩をなさってますー!!」
「外でやれ幼女ども!!」
悔しいっ! でも点入れちゃうっ!
面白かったです。
そんなあなたにUSBメモリマジオススメ(・ω・)b
しかし、紅魔館と乳は切っても切れない関係なんですね……。
それはそうとサイズがBなフランちゃんなんてフランちゃんじゃないやi(殺
レミリアさまは貧どころか空虚なのか?
でもフランにBは大きすぎまいか
紅魔館はガ○マ団だったのかー!!w
それはそれとしていい美×咲でした(ナニ
~要点~
1.ドジっ子さっちゃん
2.さくめー!さくめー!
3.あとがきの最後に胸キュン
隙あらば共食いセメントな紅魔館に乾杯!
ストーリーも良かったんですが、最後のオチにやられました。
そうか、フランちゃんはBにn(ry
…ていうか、門番隊の皆様怖いッス…妖怪も食べるんだなぁ…。
いや、あの身長でBは反則だぜ旦那!!
ともあれめーりん、ノーブラ!ノーブラ!
まさかここにきてフランちゃんロリきょにう説だとッ!?
門番隊怖いよ
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
あれですか、あれですね?! カニバリズム上等なんですね!?
生きたまま食される光景を、リアルに想像したのは自分だけでいい
・・・・・レミリア様・・・
勝手に口が緩んでしまいました
怖ろしきは深読みの境地
いや~いいSSでしたw