Coolier - 新生・東方創想話

「ある夏の日の紅魔館門前」

2006/08/09 09:45:29
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「ある夏の日の紅魔館門前」
※  このSSは中国がかなり錯乱しています。
    そうゆうものが好めない方、もしくは美鈴ファンな方は読まないほうが吉です。
















































その日、紅魔館門前の門番詰め所は異様な空気に包まれていた。
幾多の雨や風、白黒の強襲と渡り合い幾多の(門番が休みや睡眠を削って)修理した跡が残るボロボロの詰め所。
新しいのを建ててほしいとメイド長に懇願する彼女の苦労は未だ報われない。その詰め所が。
締め切られていた。
サンサンと降り注ぐ太陽。暖められた空気。幻想郷の冬担当の者たちが死に絶えるような夏真っ盛りの中。
締め切られていた。
窓はガラスをきっちりと閉められ黒いカーテンで覆われ、湖から流れてくるさわやかな風の代わりに頭上から照りつける太陽の熱をきっちりと吸収していた。
正面のドアは鎖やセメント(出所は不明)できっちりと密封されており、外界からの干渉をきっちり防いでいた。
「………」
その詰め所を前にして、紅魔館が誇る完全で瀟洒な従者、別名パtt…
「…なにか今、とても不名誉なことを言われた気がする…」
もとい、悪魔の犬の異名を持つメイド、十六夜咲夜は悩んでいた。
おかしい。
あの心身共にタフさだけが取り柄と言われ、まじめに働かなきゃ名前だけではなく存在そのものを消されるという脅迫概念に取り憑かれたかのように門番として働いていた(それはどんな門番だ)あの門番が、自分やレミリアに何の連絡もなく仕事を休み、更に引きこもりだしたのだ。
あの図書館で睡眠と食事と読書と同人活動に精を出すパチュリー・ノーレッジ+1人だってここまで怪しい引きこもり方はしない。
「…はぁ、何やってんのかしらあの子は」
ため息をつくと老けるよ。とこの間己が主に言われたが、こんな訳のわからない事を起こされれば嫌でもため息は漏れてしまう
ともかく怪しすぎる。
こうしていても仕方ない、と意を決し、ノックをする。
「美鈴、入るわよ。開けなさい」
反応はない。
少し強めにノック。
「美鈴、聞こえているの?早く開けなさい」
やはり反応はない。
「…そう来るか。仕方ないわね」
この中の人物は自分を通す気がない。ならばこうしていても時間の無駄。
彼女のとった行動は実に単純なものだった。

傷符「インスクライブレッドソウル」

彼女の目が朱に染まり、目にも留まらぬ刃の乱舞が始まる。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄亜亜ぁぁぁ!!」
朱に染まる瞳は狂気の証、狂ったように放たれる刃の暴風は詰め所の外壁を抉り、ドアを押さえつける鎖を容易に断ち切る。
セメントに固められたドアも、やがてボロ雑巾の様に八つ裂きになった。
詰め所はたちまちボロ小屋に成り代わった。修理は…まぁ美鈴に任せよう。
「ふう…。じゃ改めて入るわよ。美鈴」
一歩足を踏み入れる。太陽によって温められた空気と湿度が彼女に襲い掛かる。
室内は不快度指数MAXをぶっちぎりで飛びぬけ、一種サウナのような状態になっていた。
しかし、その程度の環境に弱音など吐いている様ではこの館のメイド長など務まらない。
むしろ彼女を後退させたのは、その奥にいる門番の姿だった。
「………………」
室内の異常な湿度の原因はそこで微動だにせず、置物のごとく部屋の隅で体育座りしていた。
全身は汗で水浸しになり、今もなお室内で発汗し続けている。
しかも何かか細い声で何かを呟いている。
「……ええい、ここまでくれば…」
後は行くのみ。寄れば寄るほど濃厚になる湿度の中心地に突き進む。
そして聞き耳を立て、その呟きに耳を傾ける。
「…私は優勝者私は優勝者私は優勝者ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ…………」
果てしなく不気味な呟きだった。
「…………こ…のっ!」
その不気味さに、ついに鋼鉄製の堪忍袋とかの尾が切れた。
その瞬間、彼女の中から淑女の嗜みというものがすべて消え去った。
そして、メイド長の脳内最高裁判所は0,0001秒の審議を終え、ここに全会一致で判決を下す。
判決・私刑
「おぉぉ馬鹿がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

執行方法、幻符「殺人ドール」

ちなみに、はるか地獄の裁判官が同時刻、可愛らしいクシャミをしたとかなんとか。



詰め所はついに壊滅した。
幾多の苦難を門番と共にしてきた詰め所は、門番の唯一のアットホーム(?)は、
本日を持ってメイド長の手によって壊滅させられた。
幾多のスキマ風があった。幾多の雨漏りがあった。
マスタースパークに半分以上を灰にされたことさえあった。
しかし、それでも今日まで苦楽を共にしてきた相棒であった。
もう誰も君をボロ小屋と笑ったりしないから。何も怖いものは来ないから。
だから、安心してお休み――――――――。

門番詰め所。ここに眠る。

それはさて置き、肝心の門番は放心状態にあった。
それはそうだろう。何しろ自分の唯一の(少女中略中…)詰め所が壊滅したのだから。
ちなみにさっきまで大量の血がそこら中に出まくっていたが、それがどうなったかは分からない。いや、マジで。
しかし、やがて彼女もアッチの世界から生還し、この現状を認識し、
「あぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!私のお家がぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
絶叫する。
「どうして!?なんで!?答えて咲夜さん!!?」
「五月蝿い」
どすぅぅぅぅ。
「NOOOoooooooooooooooooooooooo!!」
門番の言い分をあっさりと一蹴し、深々と銀のナイフを眉間にぶっさす。※ 弾幕シューターの皆様は絶対に真似しないでください。
即死の重症であるのもかかわらず元気にのた打ち回る門番。
なんというか、地獄絵図が展開されていた。
が、
「うぅぅ…なんでこんな目に…ってなにか生命の危機を感じるんですが…」
ギギギと、錆付いたブリキ人形のように振り替える。するとそこには…。
「美鈴…いや中国。聞きたいことがあるの…」
鬼神がいた。紛れもない鬼神が。
多くの人はそれをメイドと言おう。
しかし、そこに起つのはメイドに合ってメイドに非ず。
それはまさに冥途と呼ぶに相応しい禍々しいオーラを放ち、そこに屹立する。
「あ、あの言い訳を!それがダメならせめて遺言を!!」
「あのね中国。私が聞きたいのはそんな言葉じゃないの♪」
果てしなく狂った笑顔を浮かべながら彼女は言い切った。
「――殺すわ。 刺殺、絞殺、圧殺、完殺、全殺、斬殺、狂殺、どれでも選べ、どれかを選べ 」
「それどこかの復讐…ひぃぃぃぃぃ!!!」
門番は問答無用で叩きのめされた。

「で、言い訳があるならさっさと言いなさい。私にも仕事があるのよ」
すでに廃材と化した元・詰め所の木材に腰掛け、咲夜は言った。
「…すみません。せめてまっとうに動けるようになるまで待ってください」
かく言う彼女も常人ならば全治3ヶ月の重症から早くも蘇生しだしていた。
「却下。さっさと引きこもりの訳を話しなさい」
「はい。実は…」
話は朝まで遡る。

「ん~。いい朝…」
紅美鈴の朝は早い。
曰く「ニワトリ起こし」。
曰く「日曜日の子供」。
曰く「朝日に左右される女」。
と、紅魔館内で異名を取るほど早く起きる。
そこから朝のトレーニング、身支度、朝食を終え、門番としての仕事を始めようとした時だった。
「おっと、やっぱりここに居ましたか」
「へっ。あ、貴方は…」
現れたのは“伝統の幻想ブン屋”の異名を持つ鴉天狗、射命丸文だった。
「ん~貴方が紅魔館に用なんて珍しい。何かの取材?」
「えぇ、今日は貴方に取材したいことがありまして」
「へっ?」
「去年の冬の事ですよ」
さて懸命なる読者はお気づきであろう。
そう、彼女が言っているのは去年の1月に行われた死闘。
“第二回東方最萌えトーナメント”の事であった。
最高に“萌え”る事を至上とするこの大会はある意味では“最強”であること以上に意味のあることである。
そして彼女はその戦いの中で誰もが予測し得なかった“優勝”の栄冠を得ていた。
ちなみになぜこの大会を彼女たちが知りえているのかと言うことは黙秘させていただきたい。
「前回の王者として、なにか一言!」
「いえ、あの勝利は偶然と運が良かっただけで…」
「何言ってるんですか!優勝ですよ!優勝!運や偶然だけでなんとかなる大会じゃありませんよこれは!」
その後も文の口からは「あれは貴方の実力です」や「貴方がNO,1なんです!」等の賛辞を受け続けた。
紅魔館に入ってからというもの理不尽には慣れていた彼女だが、逆にほめ倒されるようなことは皆無であり、結果として彼女の頭の春度は急上昇していった。
だからこそ、そんな彼女に見えない位置から邪な笑みを浮かべる文の目論見を見破ることが出来なかったのだ。
そして破滅の時は来たる。
「では、第3回に向けて何か一言!」
「はーはっはっはっは!!世のため萌えのため、新旧東方キャラの野望を打ち砕く紅美鈴!!この龍の文字を恐れぬなら、かかってこいぃぃ!」
「はい、ではその時が来たら(精々)頑張ってくださいね~」
彼女が嵌められたと気づくのはそれから10分後の事だった。

「…で、悩んでたと?」
「は、はい…」
久々に、咲夜は呆れていた。
あの鴉天狗もそうだが、その程度の事で言いように踊らされるこの門番に、彼女は心底呆れていた。
「はぁ…、もういいわ。とりあえず中国。早く仕事に戻りなさい」
「はい…」
背中を丸め、とぼとぼと歩き出す中国。その背に、
「さっさとしないとメイド秘儀よ」
脅しを吹っかけ、シャキリとさせる。
「…なにも起こらなければいいのだけど…」
皮肉にも、彼女の願いは裏切られるがそれは後の話。
「はぁ…面倒ばかり起こすんだから」
夏の日差しは彼女の悩みなどまったく関係なく輝いていた。



「仕事にもどれ。と言われてもなぁ…」
美鈴にとって、この問題は大きなものだった。
それを考えるなと言われても簡単にはいかないし、一度考え出すと止まらなくなってしまう。
幻想郷には、それこそ素で萌え要素が大量に装備された連中が多い。
この館の主であるレミリア・スカーレッドはもちろん、図書館で引きこもっているパチュリー・ノーレッジもその一人だ。
自分と王座を争った咲夜もかなり手ごわい人物であり、あの時なぜ自分が勝つことが出来たのかは未だに分からない。
身近にここまでの猛者たちが闊歩し、更に前回、異例の男性キャラである森近霖之助の脅威。
止めとばかりに新旧キャラたちが今回もなだれ込んでくるのだ。
勝ち目など、ほんの僅かもないように感じる。
「…!い、いけないいけない!私にだって、まだ通用する萌え要素があるはず…!」
彼女は仕事そっちのけで思考の海に埋没していった。

自分の長所。
・美しい七色の弾幕。
・胸
「…これだけ?」
いや待てこれだけではないはずだ中国否紅美鈴考えろ思考しろ導き出せ自分の中にある萌え要素を!!
・BGM?
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!これじゃ無理ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
見事に絶叫した。
「…だめだ!今のままでは他の連中に食われて、体のいい吹っ飛び役にさせられる!!」
少なくとも後者においては、すでに手遅れな気がするが。
「こうなれば…新たな萌えを開発するしかない!」
彼女の目には、明確な熱意が浮かんでいた。

思えば自分はあまりに地味なキャラクターに徹し過ぎた。
最初の時は3面BOSSという中途半端な位置に着き、「BGMが良い」「弾幕が綺麗」とうの言葉を受けた。が、それは逆を言えばあまり強くないということの裏返しであった。最近ではあのゴシップ天狗との撮影対決にて「蹴られて死ぬのがマジでむかつく」やメガマリにおいても「マジウゼー」等の言葉がきっちりと送られている。
生きねば。
この萌えのインフレの時代を強く生き抜かねば。
そのためには、
「新たな萌えを…新たな武器を!」

・プランその1 胸を強調する。
今の自分の最大の武器であり、幻想郷でもトップクラスの物を持つそれ。
「これを強調すれば…。咲夜さんだって…」
「私だって…なにかしら」
ゾクゥ!!
背後に感じる猛烈な殺気。この感覚は!!
「さささ咲夜サン…」
「中国…言っておくわ。一度しか言わないから」
無言で首を振る。これ以外の行動を起こそうものなら即座に首が飛ぶ。
「今度この館の敷地内で胸の話をしたら、その胸…抉るわよ」
血の気が引いた。
猛烈な勢いで首を振る。さもなければ自分は死ぬ。間違いなくだ。
「今回は見逃してあげる。でも…次はないわよ」
「わかりました!!」
その後考えるとそういえば自分はあのサラシ疑惑のあるサボタージュ死神に負けていたことを思い出す。
・プランその1 ボツ。

・プランその2 新スペル開発。
「やはりスペルカードを持つものとして、これは避けれないわよね」
しかし、いつ来るか分からない最萌えに対し最初からスペル作っている暇はない。
ならば、今あるスペルカードに更なる改良を加えれば…。
「…う~ん。そうだ!これをこうすれば…」
即席改良された新型スペル。
「これぞ、彩符「彩光龍牙」!!いよし!」
と、まぁ。こういうのが完成すると大抵試したくなるモノだ。
そこに、
「お、門番だ」
犠牲者がふらふらと飛んできた。
「あ、チルノさん」
「よっす。こう暑くちゃ元気でないね…」
流石に氷霊にこの暑さはつらいだろう。
「そうだ、暑さしのぎに弾幕ごっこでもやりませんか?」
「え~、涼しくなるのはアンタだけじゃん。あたいはやんないよ」
しかし、⑨の名を持つチルノを乗せるなど容易いこと。
「つまり私に負けるのが怖いと」
「…なんだって?あたいが?アンタに?」
その表情には明らかな憤怒が。
「いいよ、やってやるさ。その代わり氷付けにしてやるっ」
「…来い!(なんて乗せやすいんだろう…)」
チルノは速攻で蹴りをつけるべく、それを取り出す。
「いっけぇー!凍符「マイナスK」!!」
撃ち出される氷塊が、砕けて細微な弾幕に姿を変える。
「ならばこちらも!彩符「彩光龍牙」!!」
回転しながら弾幕を撃つ彩光乱舞。それに自らに気をまとわせ回転。
弾幕を放ちながら自らも突貫する新スペル。
彼女自身が弾丸となるこのスペルでは砕けた氷塊程度まったく問題にならない。
「えぇ!そんなの聞いてってうわぁ!」
そのままチルノの鳩尾に決まる突貫。
断末魔を挙げる暇もなく、チルノは下の湖に落ちて行った。
・プランその2 とりあえず成功

・プランその3 ドジッ娘になってみる。
ドジッ娘
萌え用属性の一。「ドジ」を特徴として持つ。
転んだり躓いたりお盆の中身をひっくり返したり食器を割ったりする。
通常は「トロい」「ノロマ」「間が抜けている」などのネガティブな要素を萌えに転化している点で通常の萌えよりも高度であると言えよう。
東方書店「大辞霖」より抜粋。
「なるほど、これなら私でも…」
なにやら怪しい辞書にかぶりついて見つけたそれを実行しようとする彼女。
そんな時、幸か不幸かガラガラと言う音が。
「よいしょ、こらしょ…」
大八車に大量の魔道書を乗せて来たのは、図書館の主パチュリー・ノーレッジの介護士、もとい図書館司書の小悪魔だった。
「小悪魔さんおかえりなさい。…これはまたずいぶん多くの魔道書を…」
「あぁ美鈴さん。えぇ、これは魔理沙さんが博麗神社に置いていった魔道書で、夜光りだしたりするから持ちに来いって言われまして」
なるほどあの魔法使いのやりそうなことだ。
「あ、図書館までお持ちしますよ。疲れたでしょう?」
「え、お願いできますか?」
そりゃもちろん。と、心の中で微笑む美鈴。まさかこんなに早くチャンスが来るとは。
渡された魔道書を一生懸命運ぶ振りをしながら、その時を待つ。
そして、
「きゃ!?」
魔道書をわざと落とし、自分もこけた振りをする。
「あ、大丈夫ですか!?」
ここまでは予測どおり。そして次の瞬間、

「う~、失敗しちゃった。てへ♪」

比喩なしに時が止まる。否、時が凍る。
その(とてつもなく嫌な)沈黙の後…。
「…美鈴さん、後は私がやります」
涙を見せず、微笑む小悪魔。
そして地面に落ちた魔道書を広い集め、館の中に走っていく。
自分の台詞に石化した美鈴には、小悪魔の「美鈴さんが屈折しちゃった~!!」という悲痛な叫びは聞こえなかった。
・プランその3 記憶ごと永久封印。


「はぁ、なにやってんだろうな。私…」
夕暮れ時の紅魔館。世界が紅蓮に包まれる世界。
結局、今日一日かけて得られたのはこの彩符「彩光龍牙」だけっだった。
「私にドジッ娘は無理だったわ…」
奥が深いのだと確認できただけ良しとしよう。
さて、となると考えなければならないのは今夜の寝床である。
「…メイドさんたちの部屋は空き部屋くらいはあるだろうけど…咲夜さん怒ってるしなぁ…」
そういいながら館内に戻ろうとした彼女の歩みが止まる。
「…今日は来るのがずいぶん遅いのね…こんな時間に来るとは思わなかったわ」
「ん、そりゃ降魔が時ってやつか?」
この口調、ほうきに乗ったあの姿。間違いない。
霧雨魔理沙。
「どうやら食事の前に一仕事有りそうね」
「あぁ。ま、今日は図書館じゃなくてお前に用があるんだがね」
思わず目が点になる。
「私?私に何の用なの?」
「これだ」
そこには、
『文々新聞号外 紅美鈴、大胆発言』
「あーーーーーーーー!!」
忘れていた恐怖が蘇る。あの鴉天狗、今度あったら何が何でも焼き鳥にしちゃる。と心の中で決意。
「『世のため萌えのため、新旧東方キャラの野望を打ち砕く紅美鈴!!この龍の文字を恐れぬなら、かかってこいぃぃ!』ねぇ。中々カッコいい事言うじゃないの」
「あ、あは、あはははははははは…」
「少しやり合って見るか?」
「いやそれは言葉のあやというかなんというか…」
「んじゃはじめっぞー」
「人の話聞いてー!!」
直後、紅魔館の門前は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

「…この音は、門の方から?」
いつも聞き慣れた爆音。またあの白黒が来たのか。
いつもならそのくらいで終わるはずの思考は、珍しくその後を考えた。
“美鈴、大丈夫かしら?”
その思考が頭をよぎった時、咲夜は走り出していた。

大量のマジックミサイルをクナイ弾幕でやり過ごしながら美鈴は思考する。
“火力ではあちらが明らかに上。ならばここはスペルカードしかない。が…”
「おいおい、守りの一手じゃ私には勝てないぜ。そっちが本気出してくれなきゃこっちも本気出せないしな」
明らかな挑発。なにかがある。おそらくはスペルカードだろう。
そこまで見抜いた上で美鈴は選択した。

彩符「彩光龍牙」

「なんだ?新しいスペルカードか!?」
「これが私の全力だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
七色に包まれた美鈴の特攻!しかし、
「まさか考えてたことが同じとはな!!」

魔符「スターダストレヴァリエ」

「!?」
「コピースペルで私に勝てると思うなよ!!」
こちらも回転しながらの特攻をかける!
二つの輝きが紅魔館の上空で激突する。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「く…はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
魔理沙の力の一手に、力の拮抗は崩れ去る。
「くっ…まだまだ…!」
吹き飛ばされながらも着地した美鈴。
体制を整えられていない彼女の、その目には敵の手に構えられたミニ八卦炉が映っていた。
「今回はいつもよか歯応えなかったな。ま、んじゃな」

恋符「マスタースパーク」

今の美鈴に、その魔法を防ぐ手立ては、ない。
光が、世界を焼き尽くした。



「…やりすぎたかな」
瓦礫と化した紅魔館門前を前に、魔理沙はつぶやいた。
このごろ出力調整が上手くいかず、今のも少々コントロールが効かなかったようだ。
「生きてるだろうな?あいつ…」
やがて煙が晴れる。そこには、
「…!な、咲夜!?」
「咲…夜…さん?」
美鈴をかばうように立ち、マスタースパークの直撃に耐えた、黒焦げの咲夜とその体を支える美鈴の姿があった。
「美鈴…無事…ね?」
「咲夜さん!?しっかりしてください咲夜さん!!」
息はある。だがかなりのダメージを負っている今の咲夜にとっては、喋る事さえも苦痛であろう。
「ふふ…完全で瀟洒な従者も、これじゃザマないわね…」
「取り合えず医務室に・・・!」
その手を、ぎゅっと掴む咲夜。
「美鈴…」
「はい…?」
「貴方は、何者かしら?」
「へっ?」
思いもよらぬ言葉。それは続く。
「いい、貴方は最萌えの優勝者でも、うざい敵代表でもない。貴方は…」
「貴方はこの紅魔館の門番よ。美鈴…」
その言葉で、全てが覚めた。
深い後悔と少しだけ前に進めた実感。ならば、やるべきことは。
「行きます。紅魔館門番、紅美鈴として!?」
「えぇ…。ぶちかましなさい!」
「はい!!」
そして再び突っ込む。
“チャンスは一瞬!ただ、そこだけに賭ける!”
「へっ、やっとらしい顔になったな!なら遠慮はなしだぜ!!」

魔砲「ファイナルスパーク」

先ほどの輝きを上回る輝き。
すべてを押し切る力が迫る。
「なら…ッ!こうだ!!」
残された最後の気を腕に集め、前面にのみ守りを固め、グレイズする。
「な…!」
驚く魔理沙の真上にその姿はある。
「これが…!」
残された気の全てが拳に集約する。
「私の…!」
このチャンスを生かすことの出来るスペルカードが、発動する。

華符「破山砲」

「全てだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
絶叫が、夕暮れ時の紅魔館に響いた。


朝焼けの日が昇る。
それと共に美鈴の意識も浮上した。
「起きた。美鈴」
「…咲夜さん、無事で良かった…」
それきり、無言となる。
黙する二人。しかし、その沈黙は、決して不快な物ではなかった。
「ねぇ美鈴?」
「はい?」
「最後の時、貴方とてもカッコよかったわ」

はじめまして。春風野郎です。
最初は中国メインのギャグシナリオを書こうと思いましたが、完成したらこんな感じになっちゃいました。
いや、やはり物書きは難しいです。

また幻想郷の事が書きたくなった時、ここになにかを投稿するかも知れません。
その時は、暇つぶしがてらでも良いので読んでやってください。
以上、春風野郎でした。
春風野郎
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