今日倒れていたリリーを助けた。
春を告げる妖精と言われているリリーは実際に春の季節しか生きる事の出来ない非常に短命な妖精だ。
暑さ、寒さに非常に弱いリリーの事だ。
昨日暖かかったのが今日寒の戻りで急激に冷えた為に弱っていたのだろう。
神社に連れて帰り布団に寝かせて暖めてあげると少しして意識を取り戻した。
「ここは・・・!?」
「落ち着いて頂戴。貴女が倒れてたから助けてここまで運んだのよ」
私がそう声をかけるとリリーは少しあたりを見回した後寒そうに体を震わせる。
「寒い・・・」
「今日は寒の戻りで冷えたから少し肌寒いわね」
人間にとっても少し肌寒いこの気温ではリリーにとってはまさに極寒の寒さとして感じられているだろう。
「ほら、春を告げるのは後にして今は大人しく寝てなさい」
「はい・・・」
大人しく眠るリリーを私は暫く見つめていた。
「食欲ある?」
私は台所に向かいながら尋ねた。
「あ・・・私は食事は出来ないんです」
リリーはすまなさそうに答える。
「あらそうなの?それは悪い事聞いちゃったわね・・・」
「いえ・・・」
春の間しか生きる事の出来ないリリーは食事が出来ないと言うのを後から知った。
食物を消化する為の消化器官が存在しないらしい。
実際に蜻蛉と言う虫も僅か1週間しか生きる事が出来ない為に消化器官は愚か口すら退化してしまっている。
「妖精って言うのも大変なのね。春を告げるためだけに存在するなんて・・・」
「私はそんな事を疑問に思った事もありませんけどね。それは冬の妖精や夏の妖精、秋の妖精だってそうだと思いますよ」
季節ごとにその到来を告げる妖精がいる。
例えばレティ・ホワイトロックもそうだ。
「さ、今日はもう寝なさい。明日から春を告げるのを再開すればいいわ」
「はい」
そろそろ遅い時間になってきたので私は会話を切り上げるとリリーに眠るように促した。
リリーは目を閉じるとと直ぐに寝息をたて始めた。
私はそれを見るとそっと部屋を出て行った。
翌日。
昨日とは打って変って暖かい春の空気があたりに満ちていた。
「おはようリリー、良く眠れたかしら?」
「はい、ありがとうございました」
昨日の弱々しい雰囲気はどこかへいき、元気一杯のリリーがいた。
「これなら春を告げられそうね」
「はい、それじゃあ行って来ます!」
元気な声と共にリリーは飛んでいった。
「春ですよー!春が来ましたよー!」
リリーは声高々にそう叫びながら弾幕を作り上げる。
スプリングストーム、春の嵐と呼ばれる弾幕。
計算されつくしたスペルカードとは違いただ春のエネルギーを凝縮した弾をばら撒くだけの弾幕。
妖怪、妖精にとって迷惑であり、そして春の到来を告げる弾幕。
「春ですよー!」
それを叫びながらばら撒き続けるリリー。
それが彼女の仕事。
それが彼女の短い人生の全て。
一瞬で過ぎ去ってしまう春を、彼女の命を表すかのような弾幕をばら撒きながらリリーは春を告げる。
「春が来ましたよー!」
決して狭くない幻想郷を弾をばら撒き、叫びながら彼女は春を告げていった。
そして、全ての桜が散り、初夏の陽射しが照り始めた頃、リリーが神社へと帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま戻りました・・・」
その姿は悲惨なものだ。
よれよれになった服にボロボロとなった白い翼。
顔も土気色に染まっている。
「もういつ消えちゃってもおかしくないわね・・・」
「はい・・・でも・・・まだ消えれないんです・・・」
そう言いながらリリーはゆっくりと私に抱きついた。
「ちょ、ちょっと!?」
動揺する私を無視してリリーはゆっくりと私にキスをした。
ただ唇同士が触れ合うキスではなく舌と舌を絡めあうディープキス。
「ん・・・ふぅ・・・」
喘ぐ私を無視してリリーは執拗に舌を絡めてくる。
まるで何かの交尾のようにそれは続けられた
そして突如何かが私の口の中に押し込まれ、そして飲み込まされた。
それが終ると同時にリリーは私の口から舌を抜く。
糸状に伸びる唾液が艶かしい。
「けほっ・・・今のは・・・」
「私の作った種子です・・・来年の私の・・・春の妖精は信頼できる存在を母体に次世代を残すんです・・・」
「え・・・」
「安心してください・・・春が近付けば体から小さな光球となって出てきますから・・・それまで・・・私をお願いします・・・」
それだけ言うとリリーは光となって消えていった。
「馬鹿・・・ファーストキス奪っといて・・・さよならも言わずに消えないでよ・・・」
涙が溢れてくる。
悲しくはある。
けれども体内に感じる小さな鼓動が彼女が死んでしまったわけではないと伝えてくる。
彼女は私の体内で眠っているのだ。
「来年の春に責任取ってもらうからね・・・未婚の母にした責任を・・・」
私はいとおしく腹部を触りながらそう言った。
「おーっす霊夢ー!」
毎度お騒がせの魔理沙が神社へとやってくる。
「早速だが結婚してくれ」
「脈絡が無い上に意味が分からないから却下」
まだ3月にすら入っていないのにこいつの頭は既に春なのだろうか?
「ちなみに文々。新聞にあんたがプロポーズしたのはフランとアリスとパチュリーと小悪魔がいるって書いてあるけどどれが本命なのかしら?」
「私は一夫多妻だぜ?」
この場合一妻多妻とでも言うべきなのか?
そもそも女同士で誰が夫で誰が妻なのだろうか?
「そう、でも私は無理よ」
「なぜだ?」
首をかしげる魔理沙に私は悪戯っぽい笑みを浮かべるとこう言った。
「だってここに子供がいるもの」
「・・・霊夢が私より先に大人になっちまったー!!!!!!!」
そっと腹部を撫ぜる私を見て魔理沙が叫びながら飛んでいった。
そんな光景をクスクスと笑いながら私は見つめる。
「もう直ぐ春よ・・・そろそろ出てきて責任とって貰うわよ」
微かに感じる鼓動がビクッっと震えた様な気がして私は再び笑った。
終り
春を告げる妖精と言われているリリーは実際に春の季節しか生きる事の出来ない非常に短命な妖精だ。
暑さ、寒さに非常に弱いリリーの事だ。
昨日暖かかったのが今日寒の戻りで急激に冷えた為に弱っていたのだろう。
神社に連れて帰り布団に寝かせて暖めてあげると少しして意識を取り戻した。
「ここは・・・!?」
「落ち着いて頂戴。貴女が倒れてたから助けてここまで運んだのよ」
私がそう声をかけるとリリーは少しあたりを見回した後寒そうに体を震わせる。
「寒い・・・」
「今日は寒の戻りで冷えたから少し肌寒いわね」
人間にとっても少し肌寒いこの気温ではリリーにとってはまさに極寒の寒さとして感じられているだろう。
「ほら、春を告げるのは後にして今は大人しく寝てなさい」
「はい・・・」
大人しく眠るリリーを私は暫く見つめていた。
「食欲ある?」
私は台所に向かいながら尋ねた。
「あ・・・私は食事は出来ないんです」
リリーはすまなさそうに答える。
「あらそうなの?それは悪い事聞いちゃったわね・・・」
「いえ・・・」
春の間しか生きる事の出来ないリリーは食事が出来ないと言うのを後から知った。
食物を消化する為の消化器官が存在しないらしい。
実際に蜻蛉と言う虫も僅か1週間しか生きる事が出来ない為に消化器官は愚か口すら退化してしまっている。
「妖精って言うのも大変なのね。春を告げるためだけに存在するなんて・・・」
「私はそんな事を疑問に思った事もありませんけどね。それは冬の妖精や夏の妖精、秋の妖精だってそうだと思いますよ」
季節ごとにその到来を告げる妖精がいる。
例えばレティ・ホワイトロックもそうだ。
「さ、今日はもう寝なさい。明日から春を告げるのを再開すればいいわ」
「はい」
そろそろ遅い時間になってきたので私は会話を切り上げるとリリーに眠るように促した。
リリーは目を閉じるとと直ぐに寝息をたて始めた。
私はそれを見るとそっと部屋を出て行った。
翌日。
昨日とは打って変って暖かい春の空気があたりに満ちていた。
「おはようリリー、良く眠れたかしら?」
「はい、ありがとうございました」
昨日の弱々しい雰囲気はどこかへいき、元気一杯のリリーがいた。
「これなら春を告げられそうね」
「はい、それじゃあ行って来ます!」
元気な声と共にリリーは飛んでいった。
「春ですよー!春が来ましたよー!」
リリーは声高々にそう叫びながら弾幕を作り上げる。
スプリングストーム、春の嵐と呼ばれる弾幕。
計算されつくしたスペルカードとは違いただ春のエネルギーを凝縮した弾をばら撒くだけの弾幕。
妖怪、妖精にとって迷惑であり、そして春の到来を告げる弾幕。
「春ですよー!」
それを叫びながらばら撒き続けるリリー。
それが彼女の仕事。
それが彼女の短い人生の全て。
一瞬で過ぎ去ってしまう春を、彼女の命を表すかのような弾幕をばら撒きながらリリーは春を告げる。
「春が来ましたよー!」
決して狭くない幻想郷を弾をばら撒き、叫びながら彼女は春を告げていった。
そして、全ての桜が散り、初夏の陽射しが照り始めた頃、リリーが神社へと帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま戻りました・・・」
その姿は悲惨なものだ。
よれよれになった服にボロボロとなった白い翼。
顔も土気色に染まっている。
「もういつ消えちゃってもおかしくないわね・・・」
「はい・・・でも・・・まだ消えれないんです・・・」
そう言いながらリリーはゆっくりと私に抱きついた。
「ちょ、ちょっと!?」
動揺する私を無視してリリーはゆっくりと私にキスをした。
ただ唇同士が触れ合うキスではなく舌と舌を絡めあうディープキス。
「ん・・・ふぅ・・・」
喘ぐ私を無視してリリーは執拗に舌を絡めてくる。
まるで何かの交尾のようにそれは続けられた
そして突如何かが私の口の中に押し込まれ、そして飲み込まされた。
それが終ると同時にリリーは私の口から舌を抜く。
糸状に伸びる唾液が艶かしい。
「けほっ・・・今のは・・・」
「私の作った種子です・・・来年の私の・・・春の妖精は信頼できる存在を母体に次世代を残すんです・・・」
「え・・・」
「安心してください・・・春が近付けば体から小さな光球となって出てきますから・・・それまで・・・私をお願いします・・・」
それだけ言うとリリーは光となって消えていった。
「馬鹿・・・ファーストキス奪っといて・・・さよならも言わずに消えないでよ・・・」
涙が溢れてくる。
悲しくはある。
けれども体内に感じる小さな鼓動が彼女が死んでしまったわけではないと伝えてくる。
彼女は私の体内で眠っているのだ。
「来年の春に責任取ってもらうからね・・・未婚の母にした責任を・・・」
私はいとおしく腹部を触りながらそう言った。
「おーっす霊夢ー!」
毎度お騒がせの魔理沙が神社へとやってくる。
「早速だが結婚してくれ」
「脈絡が無い上に意味が分からないから却下」
まだ3月にすら入っていないのにこいつの頭は既に春なのだろうか?
「ちなみに文々。新聞にあんたがプロポーズしたのはフランとアリスとパチュリーと小悪魔がいるって書いてあるけどどれが本命なのかしら?」
「私は一夫多妻だぜ?」
この場合一妻多妻とでも言うべきなのか?
そもそも女同士で誰が夫で誰が妻なのだろうか?
「そう、でも私は無理よ」
「なぜだ?」
首をかしげる魔理沙に私は悪戯っぽい笑みを浮かべるとこう言った。
「だってここに子供がいるもの」
「・・・霊夢が私より先に大人になっちまったー!!!!!!!」
そっと腹部を撫ぜる私を見て魔理沙が叫びながら飛んでいった。
そんな光景をクスクスと笑いながら私は見つめる。
「もう直ぐ春よ・・・そろそろ出てきて責任とって貰うわよ」
微かに感じる鼓動がビクッっと震えた様な気がして私は再び笑った。
終り