えーりんえーりん、ちょっといいかしら?
なんですか姫?お小遣いなら昨日うどんげのへそくり巻き上げたばかりじゃないですか。
そんなのネットカジノで全部摩ってしまったわ…えーりん、その箱は一体何なの?
姫は大きいのと小さいの、どちらがお好みですか?
ふふん、御伽草子のヒロインたるこの私に対して“大きな葛篭と小さな葛篭”の二択とは…笑止!答えは当然小さな箱よ!
…あら?…えーりん、この棒は一体何なのかしら?
姫には全く縁が無い代物ですので、ご存知無いのも当然かと。これは鉛筆という筆記用具でございます。
ふんふん…で、これをどうしろと?
この棒を指の間に…そうそう、その様に指の根元で挟んで下さい。
ほうほう、それで?
ご無礼を…お手を拝借…
えーりんえーりん、そんなに指を掴んだりしたら痛いじゃない…!ちょ!待っt!!
べき ひぎぃ
『へぁ』
酷いわ、私は何もしていないのに。
ええ、姫は何も悪くございません。悪いのは姫の両手でございます。
ははは、こやつめ!…で、話は戻るのだけれど…
なんでしょう?
私、聞いてしまったの。
何をでしょう?
因幡達がこんな事を話していたのだけれど…
『ねぇねぇ、剃刀貸して?』
『あぁ…アレの手入れね…はい、散らかさないでよ。』
『はいはい、それにしてもアレの手入れってのも面倒なものよね。もっと手軽にできないものかしら?』
『とは言ってもね~、永淋様にアレの手入れ用の薬でも作ってもらえば?』
『それも考えないでも無かったんだけど…永琳様や姫様達って、この手の話には縁が無さそうでしょ?話しづらいのよ。』
『てゐや鈴仙様に頼んでもらえば?てゐもあれで結構濃いから大変だっていっつもぼやいてるし。』
『鈴仙様は薄めだけど形が良いから、やっぱりアレを維持するのは結構大変みたいよ。』
…ってな事を話していたのよ…えーりんえーりん、どうしたの?難しい顔をして?
いえ…姫はともかく私までその範疇にカウントされている事を喜ぶべきか否かについて少々。
で、アレってなによ?
おそらく姫様には今後永遠に無縁なものかと。
なーにーよーその言い方―、えーりんだって私の仲間なんでしょー、知ってるんなら教えなさいよー。
いえ、わたしは……こほん。ともかく直接的に説明するには少々憚りがございますので…この様な策はいかがでしょう?
ふむふむ、策とな?申してみよ。
はい、今夜適当な理由をつけて邸内全ての剃刀を回収いたします。その上で浴槽にとある薬品を混入するのです。
ほうほう。
さすれば翌朝には姫に足りないアレとやらを確認する事ができるかと。
ふふふ八意屋、そちも悪よのぅ。
いいえ、姫様程ではありません。断じて。
~よくあさ~
畜生…どこだ!俺を撃ちやがった糞野郎は何処に行きやがった!
姫、また徹夜ですか?そろそろ朝御飯のお時間ですよ、顔でも洗ってきて下さい。
ふっ、ふはははははは!そこか!そこに居やがったか今度こそ神の力を!
ばき へぐぅ
ほら、折角のお美しい顔にこんなにくっきりとクマが…
えーりんえーりん、これはクマじゃなくて青タンと言うのだと思うのだけれど?
おかまいなく、姫専用の美容洗顔液を用意しておきました。ささ、こちらへ。
専用とな!…ガラスの洗面器とはお洒落ね。
はい、姫の為に特注致しました。
特注とな!でも何も入っていないようだけど?
ご心配なく、こちらに用意いたしました二つの薬液をブレンドいたします。
ブレンドとな!…なんか黄色くなってきたわよ。
Cl2の色かと。
Cl2!なんだかお肌によさそうな響きね。
もちろんでございますとも。HNO3 + 3HCl ⇒ NOCl + Cl2 + 2H2Oとなりますので
NOCl と Cl2がどんな頑固な汚れでもたちどころに溶解して、お肌もつるつるのぴかぴかです。
へーそーなのかー。流石はえーりんね…あら?ハエが…
ぽちゃ じゅ
……えーりん?
ぐわし
えーりんえーりん!?なんで私の頭を掴むのかしら!!??
姫はご自分一人では顔を洗うこともできないじゃないですか。僭越ながらこの八意永淋がお手伝いいたします。
いや違うから!絶対これは洗顔とは違うから!!
貴婦人たる御方は、日常生活における諸事を自分の手で行う必要は御座いません。
我ら下々の者が貴人の手となり足となる。それが淑女の“すてぃたす”
…姫の日常を拝見する限り、その旨十二分に自覚なさっておいでかと心得ておりましたが?
いやマジすんません!寝る前に自分で歯磨きします!着替えもがんばります!ネトゲも控えます!!だからユールーシーテー!!!
…時に姫、昨晩私の部屋からクレジットカードが無くなったのですが。
ぎく
なにかご存知では?
ぐぃぐぃ
あーえー…あれね…あれはネトゲで良いマイホームの競売があったからつい……てへ♪
じゅ~~~~~~しゅわしゅわ~~~~~
りざれくしょん!
ほら、私の言った通りつやつやのピカピカになりました。
えーりんえーりん、そりゃ再生したて、生まれたてのお肌だもの…その前にのっぺらぼうにされたけど。
ささ、皆もう席についております。姫もお早くお席に…
はいはい、みんなおはよ~
がらっ
「「「「「「「「おはようございます、姫様、永琳様。」」」」」」」」
ぴしゃ
…えーりんえーりん、私やっぱり徹夜ネトゲをすこし控えた方が良いみたいね…なんだかすごいモノが見えてしまったわ…
…ええ、私も最近少々根を詰め過ぎていたかもしれません…少々幻覚が…
「あれ~姫に永琳様まで、こんな所で何してるんですか?」
あぁ…てゐ、私達少し疲れてしまったみたいなの。何か目に良い健康法を・・・
(・×・)
……「「ミッ○ィー!!??」」
「いやだなぁ、私はてゐですってば…朝起きたら急に無駄毛が伸びてて…剃刀も無くなってたんで処理ができなかったんですよ。すいません、見苦しくて。」
いや、これはこれで中々…無駄毛?
「はい、手入れしておかないとすぐこうなっちゃうんですよね~。」
目の錯覚かしら、骨格の形も変わっているように見えるのだけれど?
「ま、そーいうもんなんで。」
そーいうものなの?
「はい、そーいうものです。」
へー、そーなのかー
そーなのかー
………
ところでうどんげの姿が見えない様だけど?
そうね、あのへにょりイナバは何処に行ったのかしら?
「鈴仙様なら、朝からずっと部屋におこもりです。なんでも人前には絶対に出たく無いそうで…」
姫!
ええ!行きましょうえーりん!!
「あ、姫様お肌つるつるですねー。なにか良い洗顔料でも使ってるんですか?」
今度ゆっくり教えてあげる!じゃ!
「うっわ~、すっごく良い笑顔。死んだかな~?」
ぱたぱたぱたぱた……
……たぱたぱたぱたぱ
すぱーん!
うどんげ!起きなさい!!
イナバ!私より長く布団の中にいるなんて許されないわよ!!…えーりんえーりん、鼻血鼻血。
『師匠!?姫まで!?』
さあうどんげ、何時まで寝ているつもり?皆もう集まっているのよ!
イナバ、貴方何様のつもり?私でさえ起きているのよ!
『すいませんすいません!でも今日だけは勘弁して下さい!!』
御免ですんだら山田は要らないわ!さぁえーりん!!
ふっふっふ、体隠して耳隠さず…布団からはみ出たへにょり耳が汝の不覚よ!
ふぅ~~
『ひあっ!!』
今です!姫!!
応!!
がばっ!!
……
……
「あぅ~酷いですししょ~。」
…なによ…普通じゃない。
…そうですね…
「は、はい!そうです!普通です!何も変な所なんか無いんですよ~!」
…どーもひっかかるわねぇ。
…はい。うどんげ?貴方いつからジャージを着て寝る様になったの?
「えっ!…あ~…それは軍にいる頃からの習慣でして…」
この暑い盛りに?
「は、はい!」
冬用の長袖長ズボンを?
「はい!」
その上布団にひっくるまって?
「ハイ!」
……
……
「……」
…えーりん。
…はい、姫。
「ひ!?」
やっちゃえ!剥いちゃえ!
うどんげ!おとなしく観念なさい!!
「ひえええっ!!これだけは!これだけは勘弁してくださいー!!」
ええい!往生際の悪い!えーりん!
はい、姫。
ぷしゅ~
「げほ!ご、ごれば鈴蘭の!…が、体がじびれる~」
ふふん、やっと覚悟が決まったようね
「決まっでなんがいばせんっでば~~」
そーれ、御開帳~♪
ずるっ
………
………
「ううっ、酷いですじじょう~」
……ば
「ば?」
バニースーツ!!???
「しくしくしく」
あ~え~因幡、それも無駄毛なのかしら?首のカラーやカフスなんかも?
「くすんくすん…はい。」
ストッキングも?
「えぐえぐっ、そうですよ無駄毛ですよ。兎以外には…えぐ…見せたこと…ぐすん…無いのに…」
うどんげ、落ち着いて…御免なさいね。貴方がそんなに嫌がるとは思わなかったから…
「ぐすん…ししょ~」
でもね、うどんげ。バニースーツの上から下着をつけるのはどうかと思うの
「…ししょう?」
うん、やっぱりこの下着は要らないわね。でもそうするとすっぱなの?テンコー?でもでもバニースーツなのよね天然毛皮イヤッハーうんでもそれだと脱がす楽しみがいやいや…
「ししょー?」
うんうんわかってる全部脱がすなんて邪道もいいところよネ!ストッキングをすこし破るぐらいがベターかしら?でもでもそうするとこの場合毛を抜く事になるのかしら?剃毛プレイ?いやいやなんでもそれはすこし早すぎるかしらでもでもうどんげがその気なら私はいつでもデフコン1!OKOKいつでもきやがれモンキー野郎!人間一度は死ぬもんだでも私は死なないからやっぱりこれは誘ってるって事で良いのかしらぁ!!!
ぷち
「“月眼『月兎催眠術』”!!!!」
ぴちゅーん×2
…えーりんえーりん…
…はい、姫。
世の中にはまだまだ私の知らない事、知らなくても良い事がいっぱいあるのね…
…はい、姫。
それと…私も少しネトゲを控えるわ。だからあなたもイナバ弄りは程ほどになさい…
……はい…ひめ…
「てゐ~、この着ぐるみまだ外しちゃ駄目なの~?」
「あついよ~、重いよ~。」
「私だって暑いし重いし苦しいわよ、でももうちょっと我慢してて。…まったく、このてゐ様を罠にかけようなんて1000年は早いってのよ♪」
おわれ
天才をも罠に嵌め返す詐欺師兎、恐るべし。