「あー霊夢舐めたい」
お嬢様が言いました。
「こら無言で私の額に手を当てて難しい顔をしないの咲夜。
熱なんて無いから。むしろ私の体温はいつも低いからね。なんてったって吸血鬼だもの。
でも他の吸血鬼より体温は高めよ。だってそれは永遠の幼女だもの、子供体温ばんじゃーい!
って誰が幼女よ! デーモンクレイドるわよ!」
「お嬢様です。幼女は」
「……あらそこで指摘をするのね。てっきり『いや逆切れですか!?』とか突っ込むと思ったのに」
「真のメイドは常に成長するものです」
「完璧じゃなかったの? 成長しちゃ、完璧じゃないじゃない」
「いいえお嬢様、成長することも含めて完璧なのですよ。世俗は流転するのです。
世俗にあわせたレベルでの完璧さを演出するのが、私、十六夜 咲夜でございます」
そのやりとりを終えて、お嬢様はふう、と溜息をつきます。
数秒虚空を見つめ、数秒首をかしげ、あっとした表情で向き直りました。
「って咲夜のことはどうでもいいの! 私は霊夢を舐めたいのよ!」
「……しくしく」
「ああいや、どうでもいい、ってのは違うわよ? 咲夜のことは大事。ええとても大事だわ。
でもね、今私が論じているのはソレと違うのよ。だから、思わず焦って言葉が乱暴になっちゃったの。ごめんね咲夜。だから泣かないで」
「かしこまりましたお嬢様」
「…………嘘泣きかぃ」
「女の涙は最強の武器でございますお嬢様」
「覚えておくわ。それでね、話が進まないからもう一度言うけど、私は霊夢を舐めたいのよ」
メイドは考えました。
「そうですね……それならばまず霊夢をお嬢様の怪力で投げ飛ばし、空中より霊夢を見下ろしながら
『ハンッ』と鼻で笑いその後『博麗の巫女とはいえ、所詮は人間か。か弱きものよのぅ』
などとおっしゃってみてはいかがでしょう」
「舐めるの意味が違うわ咲夜」
はあ、と呆れてお嬢様は首をすくめます。
そして、そのちみっこい身体を揺らして歩き出しました。
「お嬢様。神社へ行くのですか?」
「そうよ。こうなったら欲望の赴くまま、霊夢を舐めに行くわ」
「お待ちください」
「……あら、咲夜に止める権利があるのかしら?」
「はい。権利ならば十分にあると存じます」
「そう。なら貴女の考えを言ってみなさい」
「お嬢様。お嬢様は舐めるときの作法をご存知ですか?」
「………………作法?」
はてな、とお嬢様は首を傾げました。
舐めるということに対して作法があるのかと必死に考えます。
…………あるわけねぇ。
「お嬢様。無言で私の額に手をあてるのはおやめください。
熱などありません。体調はいつも万全でございます。
さりとてこの咲夜、お嬢様がそのような奇行に走る理由は予測がついておりますので説明させていただきます。ですので、どうか地上に降り立ちください」
「奇行とは失礼ね。手が届かないから飛んだだけでしょうに。それよりも咲夜、私の手を煩わせたんだからそれなりの説得をしてもらうわ。
あああと、私の手が届かないのだと察したら身を屈めなさい。低空飛行は疲れるのよ」
「後半は善処いたします。
それではお嬢様、只今より講釈をはじめたいと思いますのでまずはお座りください」
そういうとメイドは、お嬢様の後ろに椅子を置きました。
そのような調度品はこの部屋には無かったはずなのですが、まあ時間を止めて持ってきたのでしょうとお嬢様は納得しました。
お嬢様が座ったのを確認すると、メイドはこれまたどこから持ってきたのかよく判らない白い板と細い棒を持ち、しゃべり始めます。その顔には、いつの間にか眼鏡がかかっていました。
「さてお嬢様方、舐めることについての作法を論じたいと思います。よろしいでしょうか」
「ええ、はじめて頂戴」
「早くしなさいよ」
お嬢様はん? と首をかしげ、横を見ます。
そこには、いつの間にやら同じようにメイドを見るお嬢様の妹がいました。
妹様は、まるでそこにいるのが当たり前かのように椅子に座ると床に届かない足をぶらぶらさせて遊んでいます。
「フランにも教えるの?」
「ええ、良い機会ですので」
「あー魔理沙舐めたい」
似たもの姉妹です。
「さて、では舐める、ということについての作法ですが……まずお嬢様方、ご質問がございます。
よろしいでしょうか?」
「いいわよ」
「どんなの?」
「舐めたい、と言いますが……どこを舐めたいというのか。
それによって異なります。お嬢様方は、今すぐその行動に走りたいのですね?」
「もちろんよ」
「当たり前よ」
「ですので、今お嬢様方が一番舐めたいと思う相手のパーツを思い浮かべてください。
それに適した作法をお教えいたします」
「一番……」
「それは……」
二人のお嬢様は目を閉じて考えます。
お姉さんは紅白の巫女のことを。
妹様は白黒の魔法使いのことを。
それは瞬間にも満たない刹那でした。しかし、二人にとってはまさに永劫のときであったのです。
とかく、幸せな妄想は色んなものを狂わせるものなのです。
「腋ね」
「くちびるー」
答えは対照的……でもありません。
簡単に言えばノーマルとアブノーマルです。
「お嬢様。知的生命体として腋はどうかと……」
「ちょ、何よ咲夜! そんなこと言わないでよ!
ていうか口元押さえて「ウッ……」とか呻かないでよ! 私が気の毒な人に見えるでしょ!」
「くすくすくす」
「フランも笑うな!」
「いや、今のは笑いますわお姉さま。だって……ねえ」
「何よ! 霊夢といったら腋でしょう!?」
お嬢様はキーと声をあげて怒ります。
その叫びは普通に考えれば非常識もいいところなのですが、どこかでだれかが、「そうね、全くその通りよ」などとつぶやいていたそうです。誰かは申しませんが、キツネさんが溜息をまた一つ吐いたとだけ記しておきます。
「ああもういいわ! そんなこという二人には腋のよさを判らせてあげる!」
お嬢様が乱心いたしました。
ガシッと隣に座っていらした妹様の手を掴み、万歳のポーズをさせます。
「ちょ、お姉さまっ!?」
「大人しくなさいフラン! 最初は嫌かもしれないけど後々良くなってくるわ!」
「お、お姉さまが壊れたああああああああああ!?」
「ふふふ壊すのは貴女の専売特許じゃないのふふふ」
「さくやー! 助けてさくやー!」
「お嬢様、おいたはソレぐらいにして下さいませ……!」
遊び、ではなく本気の叫びを聞き、メイドが駆けつけようと一歩を踏み出します。
しかしその瞬間、お嬢様はその紅い瞳をメイドに向けました。
その眼光、その威圧に、メイドの足はピクリとも動かなくなってしまいます。
「咲夜」
「はい……」
「止めちゃ、ダメよ」
「かしこまり、ました」
「ええええええええええええええええええええ!?」
「申し訳ございませんフランドール様。私はお嬢様に仕えるメイドでございます。
したがって命令には絶対服従なのです」
「うわーんさくやのばかばかなすびー! おねえさまのどへんたいー!」
「ふふふ変態だと罵ったのを後悔させてあげるわフラン」
しゅるり、と。
妹様のお召し物の、短い袖が捲られていきます。
徐々に露わになる妹様の腋。それを見てお嬢様はますます変な気持ちに昂ぶっていきました。
変態、というのも的を射た表現でしょう。
「さあ……覚悟はいいわね?」
ぺろり、とお嬢様は舌なめずりをします。
てらてらと光る舌と、唾液で潤った唇が、とんでもなく艶やかにきらめきます。
しかし、襲われるものにはそのきらめきは、醜悪なものにしか見えませんでした。
「いやああああああああああああああああああ!!」
慟哭が、屋敷を揺らしました。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ~ 少女腋舐中 ~ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「うぅぅ……ひっく。おねえさまのばかあぁぁ……」
それから少しして。三角座りをして涙する妹様の姿がありました。
てらりてらりと唾液で光る腋を手で覆い、何故だか少し破れた衣服を整えています。
まさしく襲われた少女、と言わんばかりの風体ですが、何故でしょう、頬が少し薄桃色に染まっていました。
「ふふふ、なかなか美味だったわよフラン。 ……さて」
くるり、と。お嬢様は向き直ります。
その視線の先にいるのはメイドです。そう、お嬢様は次なる獲物を見定めたのです。
メイドは、視線を受けぬかのように顔を伏せ、ぶるぶると震えていました。
おびえるなんて、なんて可愛い子なのかしら。と、お嬢様はぺろりと舌なめずりを。
そして、一歩メイドに向かって踏み出します。
「……お嬢様」
「なあに? 命乞いなら聞かないわよ」
腋舐めごときで何を大げさな、という台詞ですが、後ろに居る妹様の鳴き声を聞くとそれも間違いではないような気がするから困り者です。
しかし、お嬢様は次のメイドの言い出した台詞に思わず足を止めてしまったのです。
「そ れ で す !」
「……はあ?」
びっしぃ! と指まで立ててメイドは叫びました。
その不自然さはさしものお嬢様でも予測不可能であり、思考が停止してしまいます。
「えーと。何が?」
「腋の舐め方です」
うわあ。言い切りましたよこのメイドは。
しかし、その変態きわまる言い方に、同じ変態はビビンとアンテナを伸ばし受信いたします。
「……これで、いいの?」
「はい。さしもの私も驚天動地でございます。
さすがお嬢様、私が講釈するまでも無く習得ずみとは。
この咲夜、改めてお嬢様は偉大だとこの心に刻み付けた次第でございます」
「あらそう? ならもっと褒め称えなさい大いに」
お嬢様はぺったんこの胸をそらしていばります。
そんな姿に対し、メイドはぱちぱちと拍手をしていました。
その後ろでは、妹様がひっくひっくと泣いています。
わけのわからない風景がそこに広がっていました。
「……さて咲夜。それで私が許すとでも思った?」
しかし、お嬢様はしばらくすると先ほどの変態フェイスに戻り、メイドをにらみつけました。
その視線を受け、メイドはにこりと笑います。さすがです、余裕の受け方です。
……かと思いきや、メイドの頬にはつーっと一筋、汗が流れていきました。実はかなり焦っていたようです。
「……」
「さあ、咲夜。ダメなメイド、略してダメイドにおしおきの時間よ。覚悟なさい?」
「ひっ……!」
ついに、メイドの仮面が剥がれます。
主人の狼藉に戸惑い、怯えるソレは完璧な従者ではなく、一人の少女そのものでした。
久しく感じなかった恐怖を再び感じ、メイドは瞳が潤み始めるのを自覚しました。
さよなら、綺麗だった頃の私。そう口の中で呟きます。
「じゃあ……い た だ き ま す」
ガシッと人間をはるかに超えた膂力で掴まれたメイドは、もはや一生出すまいと思っていた声を。
「い、いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして。
腋に目覚めたお嬢様は、幻想郷少女腋舐め横断を開始するのですが、それはまた別のお話です。
ああ・・・俺も咲夜とフランの脇を舐めt(サクッ
……いやまったく暑いねー。
でもふらんちゃんのわきならちょっとなめてみたいかも!
もちょちょちょちょちょ、もちょー
暑いっすねー、全てが。
続いたら絶対読むと私は断言する!!
そこに痺れる憧れるぅぅぅぅぅぅっ!
取りあえずギャグモノでは珍しいレミィ攻め、続きも見たいです(w
しかしこれはひどいwwwwwwwwwwwwwwwwwもっとや(ry
コーリンの腋を舐める許可を与えよう!!
>フランドールと咲夜に萌えたw
確かにそこら辺でしか萌えポイントはないですよねー。レミ様に萌えたら色々と問題ですが。
>レミ攻めの時代が~(以下略
へたレミも嫌いじゃないけど、普段から私はレミ様は攻めだと信じています。いやマジで。
>妖怪わきなめ、爆・誕
あ、タイトルそういう意味だったのか!(マテ
いや、実際そういう意図はなかったのですがそう見えてきました。言われて気付くことって本当多いのですねえ。
>お嬢様は知的生命体として失格w
>お嬢様は立派な痴的生命体だ!
……いやその、えらい息のあったやりとりですね!?というか、痴的生命体って普通に上手いと思いましたが!
>なんてねちょいんだ
>ねちょーい!ねちょすぎるよ作者さん!
>一歩間違えればネチョのさじ加減・・・
あっるぇー? これ、ねちょいものですか? うーん、ぴんときませんね。私としては全然ねちょくないですよ? 友人に話したら、「いやそれはねちょいから。シチュとかな」と言われましたが。そうか……世間では腋を舐めるのはねちょいのか……。
>続編に超期待。
>頼む、続編を。言葉はそれだけだ・・・!
>続いたら絶対読むと私は断言する!!
>まだ導入部(だと思う)でこの破壊力……!
>取りあえずギャグモノでは珍しいレミィ攻め、続きも見たいです(w
ぇー!? 続きですか!? 確かに話の締めはあんな感じでしたが、続きなんてないですよ!? 一話で終わりですよ!
…と言いつつ、まあネタはなくもないんですが(ぉ
でも書き上げられるかどうかは別ですねぇ…また私の頭が熱暴走することを祈っていてください。いや、そーでもしないと変なところにコネクトしないのですよ。
そんなわけで、ご読了ありがとうございました。
再見。
暴れちゃうかも・・・
ワッフルワッフル