Coolier - 新生・東方創想話

半人の修行

2006/07/24 06:16:04
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「……どうしよう……」
「妖夢一体どうしたんだ」
「私って弱いのかな」
「声をかけられたらちゃんと返事する」
「……はあ」

 ドンッ

「あ、すみません。あれ藍さん橙ちゃんどうしてこんなところに?」
「さっきからずっと声をかけているんだが。その様子を見れば何かあったということはわかるが」
 何ヶ所も擦り傷や切り傷を作り、服もずいぶんと汚れている。
 それを見れば誰でも妖夢が何らかのトラブルに巻き込まれたことに気付くだろう。
 ただどちらかといえば肉体面以上に精神面でのダメージを見ることができた。
「ちょっとマヨヒガへ来ないか。傷の手当てぐらいしないと」
「……よろしくお願いします」










「あら、ずいぶんと傷を作ってイメージチェンジかしら」
 マヨヒガで妖夢の傷の手当をしていると悠然と八雲紫が現われた。
 底知れぬ力を持ちながら、隠者としての生活を望む奇人。
 言葉は妖夢をからかう内容ではあったが、すでにその目は知者の色を浮かべていた。
「ご迷惑をおかけします」
「さて、妖夢。何があったのかちゃんと話せる。話たくないというのならそれはそれでかまわないけど」
 その言葉を聞いて妖夢は少し悩んだ。
 さっきあったことを考えているだけどつらい。
 ましてやそれを口にしたのなら、泣き出してしまうかも知れないと思った。
 それでも手厚くもてなしてくれたマヨヒガの面々に黙っていることは、真面目な妖夢にはできないことであった。
「今日の夕食を手に入れに行った帰りに紅魔湖の近くを通りかかりました。そこで氷精と宵闇の妖怪にいたずらされ、少し懲らしめてやろうと弾幕勝負をしかけました。けれどもそれに負けて食材を台無しにしてしまいました」
「ふーん、それは妖夢が悪いわね。たかだかいたずらで冷静さを失ったのだから。二対一だからって勝てない相手ではないでしょ」
 容赦のない言葉だとは思ったが妖夢はそれを否定しなかった。
 否、否定できなかった。
 妖夢は自分の中にこの二人なら負けないだろうという侮りがあったことを認めていた。
 未熟な上に侮りがあったのなら、勝てるものも到底勝てない。
「手当てありがとうございました。もう帰ります」
「そんな顔を幽々子に見せるわけ。もうしばらくここにいなさい」
 立ち上がって出口に向かおうとした妖夢を紫は引き止めた。
 顔には外傷は少しもなかった。
 けれども心の傷は顔にはっきりと表れていた。
「私は幽々子様に仕える身ですから。急いで帰ってそれで食材の件を謝らなければ」
 妖夢は自分では落ち着きを取り戻したつもりだが、明らかに口調には動揺が見られた。
 自責、そして幽々子に失望されるのではないかという不安。
 実際は幽々子は妖夢のその未熟さを受け入れるだけの幅を持っているが、そのようなことも今の妖夢は気付くことができなかった。
「仕方ないわね、藍、お願い」
「すまん、妖夢」

 ドスッ

 スッと近づいてきた藍の予想外の腹への一撃を、妖夢は避けることも耐えることもできなかった。
 その重い一撃により滑り落ちるように妖夢はその場に倒れこんだ。
「乱暴ね、動きを止めるだけでいいのに」
「興奮している相手にはこの方法が一番簡単なので」
「まあ、いいわ。藍は適当に食べ物見繕って幽々子のところに届けて。それでしばらく妖夢を預かると伝えて。橙は布団を敷いて妖夢を寝かせて、それからそうね、お風呂の準備でもしてあげて」
「わかりました。それでは早速準備してきます」
「はーい」
「……さて、私も始めましょうか」
 与えた仕事に向かった二人を見送った後紫もまた台所へ足を向けた。





 グツグツグツグツ

「うーん」
「あら、気が付いた」
 妖夢の様子がわかるようにふすまを開けたまま料理をしていると、目を覚ました妖夢の声が届いた。
 少しだけ妖夢の方に顔を向けた後再び料理に向かった紫に、妖夢の側から近づいてきた。
「先ほどは取り乱したりしてすみませんでした」
「こっちも力づくで止めたりしてごめんなさいね。幽々子のところには藍を向かわせたから。もう帰るなんて言わないわよね」
「……わかりました」
「ところで妖夢しばらくここに泊まる気はない。ちょっとあなたに修行付けてあげたいと思うのだけど」
「修行ですか」
 前々から少し気にはなっていたが、今日のことで紫は確信した。
 才能も努力も妖夢は十分だと思う。
 それでもどこかもろさを抱えているのは、幽々子の側にいる安心感に原因があるのではないかと。
 妖夢のさらなる成長には幽々子以外の存在が必要だと紫は思った。
「別にやらなくてもいいし、今すぐでなくてもいいけど。どうするかは妖夢しだいね」
「……幽々子様の警護役でありながらいつまでも幽々子様より弱いままではいられません。よろしくお願いします」
「そう。とりあえず修行は明日からだから今日はゆっくり休んで。もうすぐご飯ができるしお風呂も沸いているから。妖夢の好きなようにして」
「だいぶ汚れていますので先にお風呂をいただきます」
 妖夢は気合のこもった目を取り戻していたが、妖夢の考えている修行と紫の考えている修行はまったく性質の違うものであった。
 いざ修行をしたとしたら妖夢はきっと混乱するであろう。
 そのことを考えると紫は愉快な笑みを抑えられなかった。





「ただいま戻りました」
「ずいぶんと遅かったのね。もう橙も妖夢もとっくに寝てるわよ」
「こちらを書かれるのを待っていましたから」
 藍が懐から取り出した物を見て紫はまずため息次いで苦笑を浮かべた。
「たかだか数日預かるぐらいで礼状なんて……ほんと過保護ね。机にでも置いといて」
「読まれないのですか?」
「またいつか暇つぶしのネタに困ったらそれで何かして遊ぶわ」
「悪趣味だ」
「聞こえてるわよ」
「聞こえるように言ったんです」
 主従二人にらみ合うように見つめあった後、先に表情を緩めたのは紫の方であった。
「まあ、いいわ。藍帰って早々悪いけどちょっと妖夢鍛えてあげようと思うから準備して」
「わかりました。一体何を準備すればよいでしょうか?」
「えーとね――」
 すぐに準備に取り掛かろうと意気込んでいた藍であったが、その内容に唖然としてなかなか行動に移せなかった。
 目的を隠しての奇抜な命令が下るのには慣れていた。
 しかし今回は目的を明かした上で脈絡がないと思うような内容だった。
 奇策において並ぶものなき主君を理解しなければならないことを少し嘆きつつ、藍はようやく行動に移した。










「あの紫様。これは一体何ですか?」
「あら妖夢物を知らないのね。それは釣竿と言うのよ」
 翌日朝食を食べてすぐに妖夢と八雲一家は修行へ向かった。
 ただ付いて来るようにとだけ言い、目的地を明かさない紫に連れられた先は紅魔湖だった。
 どんな修行をするのか緊張していた妖夢に手渡された一本の釣竿。
 その意図がわからず妖夢は質問を始めた。
「釣竿ぐらいは知ってますけど、これで一体何をするのですか?」
「釣竿を使うのは普通魚釣りの時でしょう」
「どうして魚釣りを?」
「今日はお弁当がないからちゃんと釣らないとお昼が食べられないから。ほらほら口はいいから手を動かして。藍がせっかく準備しているのに」
 言われて妖夢は目線を藍の方へ向けるが、見えるのは火をおこしている姿。
 藍が持ってきた荷物もござに七輪に飯ごうと、どう考えても修行に使いそうなものはなかった。

 チャプン

 妖夢が疑問を抱きつつもとりあえず魚を釣ろうと静かに湖に向かっていると、
「妖夢」
 紫に声をかけられた。
「どうしました」
「ただ呼んだだけ」
「はあ」

 そしてまた湖に向かうと、
「昨日負けたのってこのあたりかしら」
 今一番言われたくない言葉を言われた。
 そのショックで竿は大きく揺れ動き、すぐ側まで近づいていた魚は全て逃げていった。
「え、ええ、このあたりですが」
「妖夢、釣りしている時はもっとスマイルスマイル」

「スー、ハア」
 妖夢は一旦落ち着こうと深呼吸をしてみるが、
「今頃幽々子はどうしているかな」
「ゲホゲホ」
 紫の次なる言葉で大きく息を乱してしまう。

「あらあら全然釣れてないわね。お昼食べるの楽しみなのに」
「(速く、速く魚を釣らないと)」
「あら、あそこにいるの氷精と宵闇の怪じゃないかしら」
「どこですかぁぁっ!?」
 それまで妖夢は紫の口撃に心乱されても決して立ち上がったりはしなかったのだが、その言葉にはとても耐えきれず大声をあげながら紫に詰め寄った。
「ごめんなさい。見間違いだったわ。ところでどうしたの妖夢。釣竿放り投げたりしたら釣れるものも釣れなくなるわよ」
 愉快そうな笑みを浮かべている紫とは対照的に、妖夢は険しい顔に変わっていた。

 バシャーン

「(精神の修行か。それともただ単に妖夢をからかって楽しみたいだけなのか)」
 藍の疑問の答えは両方だが、どちらが主目的かと問われたら紫は後者と答えるだろう。
 妖夢の反応の面白さに紫の口撃はどんどんエスカレートしていった。
 もう既に妖夢は冷静さを完全に欠いていた。
「やったー、十匹目」
 その上紅魔湖の主とばかりに次々釣り上げていく橙の姿も妖夢の苛立ちに拍車をかけた。
 今の妖夢は魚が釣れないことに苛立ち、苛立った動きを感知した魚がどんどん逃げて行くという悪循環に陥っていた。
 この世で最もまぬけな魚であっても、乱れきった妖夢の心をそのまま映した釣竿に引っかかりはしないだろう。





「藍、私は行くところがあるから後お願いね」
「白玉楼に行かれるのですか?」
「違うわ。幽々子のところよ」
 その奇妙な言い回しの意味に藍はすぐには気付かなかった。
 しかしその様子を見た紫がわずかに後ろを振り向いたことでその意味を理解することができた。
「……なるほど。わかりました。けれども後お願いと言われましてもからかうのはちょっと……」
「安心して。藍にそんなことは期待しないから。それにもう妖夢あれ以上は悪くならないだろうから。見守っているだけでいいわ」
 そうして紫は先ほどの視線の正反対紅魔館の方に向かっていった。
 それを藍がしばらく眺めていると入れ替わるようにこちらに向かう影があった。
「何か用かい?」
「それはこっちのセリフです。途中で消えたけど紅魔館に向かってものすごい勢いで一人来ましたし。この場で何をしているのですか?紅魔館に攻撃する意思があるのなら、この場で一戦構えますが」
「修行しているだけだから。そっちに迷惑をかける気はない」
「そうですか。それなら……修行?」
 その言葉を聞いて美鈴は辺りを見回してみたが、とても何かの修行をしているようには見えなかった。
「えっと……今は休憩中ですか?」
「修行中です!気が散るから喋らないで下さい!」
 そんな妖夢の様子を見て美鈴は驚いた。
 それほど接触はないが話で聞いていた限りでは、わりと大人しい子だと思っていたから。
 そんな子の少し荒れた姿を見てアドバイスをしようという気持ちがわいた。
「ダメですよ。そんなんじゃ。魚が逃げてしまいますよ」
「門番さんは魚を釣れるのですか?」
「ええ、まあ。見本見せましょうか。釣るというより捕まえるですが」
 そう言うと美鈴はそれまでの高い位置から水面ギリギリまで降りてきた。
 そうして呼吸を整え、脱力し、気を練りこんだ。
 妖夢たちがその様子を注視して十秒ほどたった後、おもむろに美鈴は水中に向けて拳を放った。
 スッとすり抜けるように水中に向かった拳が出てきた時、その手の中には一匹の魚があった。
「えっ!?」
「ほう、やるもんだね」
「藍様はできないの?」
「つかみ取りぐらいならできるが、ほとんど波紋を作らないでとなるとかなり難しいな」
「へー、すごいんだ」
 三人が驚いているうちに美鈴は満面の笑みを浮かべながら、地面に降り立った。
「えへへ、これには結構自信があるんです」
「先ほどは失礼なことを言ってすみませんでした。聞いていた話から門番さんはそれほど強くないと思っていました」
「ひどいです。これでもこの三十年ほどで侵入許したの、咲夜さん、魔理沙さん、霊夢さんだけなのに」
「ああ、そいつらの名前挙げられるとわれわれもつらいな」
 この場にいる者は全員その妖怪以上の強さを持った人間に敗北した者達だけなので、一様に彼女らの顔を思い浮かべ頭を抱えてしまった。
「よろしければ今の技を教えていただけないでしょうか?」
「えーと教えるのはいいですけど、つかみ取りじゃないと何か困るのですか?」
 言われて妖夢は考えた。
 竿を渡された以上、紫の考えでは竿で釣ることが頭にあるはず。
 それなのにつかみ取りしようとするのはおかしいのではないかと。
「いいえ、たぶん竿で釣らないといけないと思います」
「だったらそっちの方がいいですよ。気を扱うことに慣れている人ならこっちの方が簡単ですが、そうでないなら竿で釣る方がずっと簡単です」
「ですが」
「妖夢少し落ち着け。お前は思わぬ敗戦で今自信を失っている。けどそこで安易に人のマネをしようとすると成長が止まってしまう。負けたときこそ自分をしっかりもつのが大事だと私は思う」
「あの最近魔理沙さんのせいで負けてばっかりだから言い訳っぽく聞こえるけど聞いてください。勝つか負けるかも大事ですが、それよりも勝った時負けた時どうするかが大事なんです」
「他の人に聞くのは自分ができることをやりつくしてからでも遅くない。橙もわかったね」
「う、うーん、これからはもっと自分で考える」





 妖夢は考えていた。
 美鈴が自分の能力を生かした方法で魚を捕まえたように、自分にしかできない方法釣れないかと。
 そもそも自分とは何なのかと。
「(幽々子様の従者……今は幽々子様の側にいない。白玉楼の庭師であることも今は関係ない。剣士……いきなり魚を切るわけにはいかない。半人半霊……霊体では釣竿を持ったりは……)」
 自らの種族について考えて、ふと妖夢の中にひらめくものがあった。
「あれ、妖夢あっち行っちゃった」
「霊体の方に気を集中させて何してるんでしょう」
「気付いたようだな」
 半人半霊と言いながら、実質肉体が主で霊体が従の関係であった。
 そうすることで考えたことが即行動に移すことができた。
 そのことに妖夢は今まで疑問を感じることはなかった。
 けれども今そのことが持つ弱点に気付いた。
 すなわち精神に不調が生じた時、その影響がより強く現れるのが肉体の方だった。
 そのため意識を霊体の方に集中させ、肉体をただ竿を支えているだけの道具とした。
 そうして心の乱れが生み出した体の乱れが消えた。
 しかし、
「(ダメだ。集中力が。落ち着け、迷えば余計乱れてしまう)」
「段々体の方に気が流れていってますね」
「日頃慣れてないからな。一分もつか」
「でもお魚来てるから大丈夫だよ」
「妖夢魚の動きはわれわれが見ているから、お前は状態の維持に集中していろ」
 藍がそういうと三人の目は魚の方に移った。
 橙が言うように魚は様子を伺うように竿の周りに近づいてきている。
 しかし、妖夢の時間が切れるまでにかかるかは微妙なところであった。
 三十秒ほど経ち竿にまだ揺れはないものの、妖夢の額に汗が浮かび疲れが見えていた。
 だが妖夢だけでなくみている3人にも不安が浮かんできたところで、一匹が竿に近づき、そしてエサを口にした。
「今だ」
「今です」
「今だよ」
「ハアッ!」
 三人が掛け声を書けた瞬間、妖夢は肉体の方に意識を戻し、気合の声とともに竿を引っ張りあげた。
 その竿には輝くように1匹の魚がかかっていた。
「やった!やりました!」
「わあ、釣れた釣れた」
「おめでとうございます」
「妖夢は覚えていないようだが、妖忌殿もああやって自分の肉体と霊体のバランスが取れるよう修行されていた」
「そうだったのですか。幽々子様は私が自分で気付くまで待っていたのでしょうか」
「のん気なように見えていろいろと考えられている方だし、多分そうだろう」
「みなさん本当にありがとうございました。どうやってお礼したらいいのか」
「気にするな。私たちは紫様の命令に従っただけだ。お礼をしたければそちらの門番だけにすればいい」
「門番さん、えっと美鈴さん何か私にできることはないでしょうか?」
「ああ、それじゃ。チルノちゃんとルーミアちゃん近くに住んでて、よく遊びに来るので昨日何があったか大体知ってます。二人にはよく言って聞かせますのでどうか怒らないでくれますか」
「……釣れた喜びでそんなことすっかり忘れていました。もちろん大丈夫です」
「ああ、よかったぁ」
「よかったら一緒に食べないか?」
「お昼は紅魔館で食べ……あああっ!仕事途中だった!咲夜さんに怒られてしまいます。それじゃあ」
 あわただしく戻っていく美鈴を妖夢は大きく手を振って見送っていた。
 その顔は今日ここへ来たときとはまったく違う、自信溢れる笑顔だった。










「さて帰りましょう……あら、驚いたわ」
「驚いたって言葉はそんな落ち着いた表情で言う言葉ではないわよ」
 もう妖夢は大丈夫だと思い帰ろうして振り向いた幽々子の先に、紫の悠然とした笑みがあった。
「ひどいわね。親友がすぐ側に来ているというのに全然気付かないんだもの」
「紫、紅魔館の方に行ったのじゃないの」
「さすがにまっすぐこっちへ向かったら気付かれるからわざわざ大回りしてきたわけ。それよりも何やってるの。白玉楼ほったらかしにしてわざわざこんな所まで」
「だって妖夢が心配だし」
「そうやって幽々子が過保護にしてるから妖夢はいつまでも半人前なのよ。それともそれがあなたの望み?妖夢が成長したら妖忌のようにいなく……」
 そこまでで紫の言葉は止まった。
 幽々子の顔は能面のように変わり、生者のいるところゆえ抑えていた死がもれ近くの草木や鳥、虫が死へ向かっていった。
 これ以上この話を続けるのであれば森ごと死滅してしまうであろう。
 ゆえに幽々子の気を抜かせるためにまず紫から気を抜いた。
「まあ、いいわ。それよりももうしばらく妖夢預かるから」
「あら、どうして?もう修行終わったのじゃないないの」
「今日のことでちょっとわかったの。妖夢の修行よりも幽々子の子離れの方がもっと大事なことがね」
「もう、紫ちゃんのいけず」
 言葉ではそう言っても先ほどまでのように死を纏うことはなかった。
 幽々子が軽く頭を下げることで妖夢を預けることの話し合いはなかった。
「それじゃあ妖夢のことはお願いね。私はもう行くから」
「どこへ行くのかしら?」
「もちろん白玉楼に帰るのだけれど」
「あら、そう。てっきり氷精と宵闇の怪の所へ殴り込みをかけるのかと思ったわ」
「ひどいわね。紫ったら私が子供のけんかに出るような人だと思ってたの」
「……思ってた」
 けれども紫はこれからは二人はそのような関係にならないだろうと思った。
 これからしばらくこの主従は離れ離れになる。
 しかしそのことが余計に二人の絆を強くすると。
 妖夢が次に幽々子に顔を見せる時、今の幽々子に守られている関係から今よりもよい形となっているだろう。
 責任を背負い込む形となったが、紫は妖夢を預かることに大きな喜びを感じていた。
東方SS初挑戦。
書くに当たってゲームや文花帖(本)を見ると各キャラの自分のイメージの中の喋り方と、原作の喋り方にずれがあるな。
少しでも早くずれがなくなるようこれからがんばりたいと思います。

誤字指摘ありがとうございます。
おりびい
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コメント



0.990簡易評価
4.40名前が無い程度の能力削除
単に妖夢が修行をしたというだけでもなく、単なる精神の修行でもなく、「半人の修行」をしてるからこのタイトルなのですね。

↓これらは、誤字だと思います。
・汚れていますで
・魚を連れる