みーんみんみんみーん。
喧しい、とばかりに蝉の鳴き声。
季節はまさに夏!夏!夏!で御座いまして。
救いなのは湿度があまりない、つまりカラっとした日本晴れであるコト。
これで湿度が高ければ、じめっとむわっと不快指数は鰻登り。
「あつい」
まァ、じめむわしていようがカラっとしていようが、ぐでーっとしてしまう程暑いのには変わりなく。
「あーつーいー」
ぱたん、と引っ繰り返るは幻想郷の巫女、博麗の霊夢さん。
流石の無重力巫女も此の暑さにはお手上げと云った状況。
縁側で出涸らしのお茶を啜っていたモノの、暑い時には熱い茶を飲む、日本人はこうでなきゃね。と言っていたのが、今では暑い時に熱いモノ飲んだら事態は悪化するだけじゃない。私の体温も鰻登りよ。責任者出て来い。と云った風にまでなっていまして。
つまり、暑い。
あの博麗さんがこうまでなっている、と云う事態がまさに異常。
然しながら博麗さんの勘には何にも引っ掛かってこない。
結論としては、異常な暑さではあるが、誰が何をしている訳ではない。つまり平常。
博麗さんは右へ左へとゴロゴロしていましたが、暑さに変わりはなく、寧ろ畳との摩擦で余計に暑い。
熱っぽい溜息を一つ吐いて、今の気温は何度かしら、と呆とした頭で考えますがどうでも宜しい。
此れだけ暑いのです。気温計もマトモな数値を叩き出す訳がない。
みーんみんみんみぃん。
喧しい。蝉は暑いのに元気ね。熱に対する抵抗力が高いのかしら。と、取り留めのない思考に埋没。
こうも暑いとチルノ辺りは溶けてそうね、とも。
チルノ。氷精チルノ。
あの蝉並みに喧しい彼女がいたら、此の暑さも少しはマシになるかも。
ぽん、と手を叩いて身体を起こすモノの、両手を広げてぱたん、と引っ繰り返る。
暑くて動く気がしない。しないったらしない。
そうよ、私が動きたくないならチルノが此処に来ればいいじゃない。などとついには考え始める始末。
「チルノー、チルノさまー、チルノだいみょうじんー。願わくば博麗神社に救いをー。其れが貴女に出来る唯一の善行だっつってんだろこんダラズ」
願いなのか呪いなのか良く解らないコトバを吐き出して、縁側から空を仰ぎましてはうおっ、まぶしっ。
太陽はピーカン照りで雲なんて一つもない。
ファッキン太陽ファッキン太陽と口の中で繰り返しては、しかし動く気は起きないと云うだらけっぷり。
「呼んだ?」
そんな博麗さんの視界にひょこと現れる小さな影。否、太陽が隠れて影になっただけで、其れは少女。
何にも考えてなさそうなあどけない顔。透き通るような蒼の髪。背にはこれまた透き通るような蒼の羽。
博麗さんはそんな少女の顔に右手を伸ばして、ぺたんと触れて。
冷たい。
「を?」
次いで左手もぺたん。
冷たい。
「をを?」
ぺたぺたぺたぺたん。
「ちょ、ちょっとれーむ?」
少女は目を丸くして、擽ったそうに身を捩り。
博麗さんは救いの神、此処に降臨す!とばかりに抱きつきましては。
「チルノさまーーーーーーーー!!!!」
「ひゃあああああぁぁぁぁぁぁ!?」
絶叫。
***
「や、ごめん」
「うー」
博麗さんが正気を取り戻すまで、優に四半刻程度は経過しまして時刻は昼と云った具合。
其の間ずっと抱きつかれてはぐりんぐりんやられていたチルノさん。否、チルノ様。チルノ閣下。大明神。
まァ、其のチルノさん、涙目で乱れた着衣の胸元をぎゅうと掴んでは唸っております。
どくん、と博麗さんの心が疼く。疼く。疼く。
なにこのかわいいの。え?ちるの?いいの?これもらっていいの?
そんな博麗さんの頭の中では五人の博麗さんが相談と云いますか議論と云いますか、を繰り広げておりまして。
~少女、議論中~
博麗さんA「これは私に貰われにきたのよ、絶対」
博麗さんB「いや、落ち着け。心頭滅却すれば火もまた涼しと云うじゃない」
博麗さんC「其れで涼しくなったら私はこんなに苦しんでないわ」
博麗さんD「確かに」
博麗さんA「アレは誘ってるわ。間違いなく」
博麗さんD「確かに」
博麗さんE「うふぅ、チルノ可愛いよ可愛いよチルノはぁはぁはぁはぁはぁん」
博麗さんB「落ち着けと。無重力たる博麗の巫女が一介の氷精に心奪われたとあれば、其のチカラを失うと云う意味よ」
博麗さんD「確かに」
博麗さんC「正論よね。でも正論ばかりじゃ此の夏を乗り越えられないわ」
博麗さんA「だから私はチルノを心ゆくまで可愛がるのよ」
博麗さんE「勿論性的な意味で」
博麗さんB「だ、駄目よそんなの!大体アレは誘ってるんじゃないでしょう!?」
博麗さんC「何を戯けたコトを。見なさい、あの上気した表情。まるで恋する林檎のように真っ赤に染まった頬と目尻に浮かんだ涙!」
博麗さんA「そして甘いアンマァーイ桃色吐息!此れが誘ってなければ何だと言うの!?血糖値も500OVERよ!?」
博麗さんD「確かに」
博麗さんB「ちょ、D!あんたはどっちの味方よ!だ、大体誘ってようがいまいが博麗の巫女ならば誘惑に負けてはならないでしょう!?」
博麗さんE「アァ、嗚呼、見える!見えるわ!あの小さな肢体を夜毎いいえ何時でもオールウェイズ!弄って嬲って燃え上がれ私の小宇宙ォ!!」
博麗さんB「人の話を聞いてよぉぉぉ!!」
博麗さんA「いいわね!取り敢えず縛ってから燃え上がりましょう!」
博麗さんC「でも燃え上がるのはどうかしら。只でさえ暑いのに」
博麗さんA「勿論性的な意味で」
博麗さんC「ならよし」
博麗さんB「よくないーーーーーーーーー!?」
博麗さんD「確かに」
~少女、グダグダ中~
博麗さんB「だからぁ……ひっく……駄目なのぉ……ぐすっ……」
博麗さんC「あーあ、なーかしたー」
博麗さんA「なーかしたー。せーんせーにいってやろー」
博麗さんE「せんせえ、Bちゃんが泣いちゃいましたー。何それはいかん。お仕置きだ!さあ腋を出しなさい。ゆっくりと、ゆっくりとだ!そう、なら次は下だ。下もまたゆっくりと……あァ!アァ!出る!脳からイイ感じの波が流れ流れて耳から桃色のナニカが出ちゃうぅぅぅぅぅぅ!」
博麗さんD「確かに」
博麗さんB「へ……ひっく……変態どもめぇ……」
博麗さんA「有難う最高の褒めコトバだ」
博麗さんE「感謝の極み」
博麗さんC「何を今更」
博麗さんD「確かに」
博麗さんB「ふぇ……もぉ、もぉやだよぉーーーーーーー!!!!」
~糸冬了~
~再開~
「再開すなDQNが!」
「ひっ!?」
「…………を?」
博麗さんがやっとコチラ側の世界に戻ってきまして。
チルノさんは何故かびくびくと怯えております。
ぐりん、と首だけを動かしてチルノさんを見ます。
チルノさんは完全に縮こまって博麗さんから距離を取りつつも上目遣い。
此れを天然、素でやっているとしたらチルノ……恐ろしい子!
まァ、チルノさんが末恐ろしいのは別のハナシ。
今まさに恐ろしいのは何を隠そう博麗さん。
何せそんなチルノさんを見ては鼻から真っ赤なナニカを垂れ流し、しかしながら表情はまるで菩薩の様。
狂気。煩悩、劣情も極めれば狂気に変貌すると云う貴重なケース。
……然しながら幻想郷では珍しくも何ともない。
みーんみんみんみんみぃーん。
蝉が鳴く。
博麗さんが一歩踏み出す。
チルノさんが巫女の圧力に圧され、ぺたんと尻餅を着きながら後ろに下がる。
踏み出す。下がる。蝉が鳴く。踏み出す。下がる。踏み出す。蝉が鳴く。当たる。
「え?」
チルノさんが振り返れば其処にはどっしりとした柱が存在しておりました。
え?柱?何で?え?逃げられな
「小便は済ませたか?」
「ひっ!?」
前を見れば博麗さんがゆっくりと、一歩一歩を踏み締めながらコチラへと歩み寄って。
其れはまるで亀の様な歩みの遅さ。
「神様にお祈りは?」
「や、やだぁ!」
チルノさんは混乱し、何故自分がこの様な事態に遭遇し、挙句自分が其の当事者でなくてはならないのか理解出来ずに。
あ、あたいは只あの白黒に「今霊夢のトコロに行けば面白いコトになるぜ」って言われたから、来ただけなのに。
何で?何でこんなコトになってるの?
混乱、混乱、混乱、混乱に次ぐ混乱。
あまりの恐怖にぽろぽろと涙を零し、いやいやと首を振る行為其のモノが余計に博麗さんの嗜虐心を煽るコトも知らずに。
「部屋の隅でガタガタ震えてもっとぉ!もっとシてぇ!と懇願する心の準備はOK?」
解らない。意味が解らない。
何故博麗さんはごっつ笑顔なのか。そして何故秒間ℓ単位で鼻血を噴出しているのか。
普通の人間ならとっくに死んでいる量の血液。既に辺り一面朱一色。
其れでも笑顔を一片も崩さずに、ゆるりゆるりと歩みを進める博麗の巫女。
唐突に、否、まるで予定調和の様に歩みを止め、右手を差し出す博麗さん。
チルノさんは部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする準備ならOKの様で。
「さァ、イキましょう?快楽と快楽と快楽が支配する桃源郷「おーーっす霊夢ー、調子はどうだー……あ?」」
今度こそ唐突に、博麗さんにとってはタイミング悪く、チルノさんにとってはタイミング良く。
「しっ、白黒っ!」
普通の魔法使い、魔理沙さんが登場しまして。
「おいおい、コレはどーしたコトだ?そこいら中、血の海だぜ」
「白黒っ、助けてっ!助けてぇ!」
「あぁん?」
魔理沙さんは何時もと変わらず、箒を片手に博麗さんとチルノさんを見やり。
ふむ、と腕組みをして小首を傾げ。
「良く解らん。霊夢、説明してくれるか?」
と、博麗さんに声を掛け。
当の博麗さん、鼻血は止まり俯いているので表情が読めない。
雰囲気からして笑顔ではないのは確か。
「おい、霊夢?」
魔理沙さんが訝しげに再度博麗さんに声をやり、博麗さんが顔を上げ。
能面の様な、無表情。
一転、華の咲いた様な笑顔。
魔理沙さんの第六感が警鐘を鳴らし、緊急事態。
瞬き一つ、間に合わない。気付けば目の前に博麗の巫女。
「ヂャッ!」
風。遅れて激痛。浮遊感。空中?次いでコココン!と正中線に針の投擲。
「霊符『夢想封印』」
「あべし!?」
墜落。
気付けば蝉すら鳴いていない。
巫女の殺気でナリを潜めたか。
「ひ、酷い……ぜ」
ぱたり、と魔理沙さん。コインいっこいれる?
チルノさんは何が起こったのか理解出来ず。
此の窮地に一筋の光明、魔理沙さんが現れたと思ったら博麗さんが鬼神の如き動きで魔理沙さんに「博麗キック」。更に流れるように正確に針を投擲。駄目押しとばかりに「夢想封印」。
何の悪夢だ。親友に向かって此の所業。まさに外道!
まァ、元はと云えば魔理沙さんがチルノさんを唆したのが原因なので、責任は取るべきで。
まさかこんな乱痴気騒ぎになるとは想像もしていなかったと思うのだが。想定の範囲外って奴ですか。
博麗さんが振り返ります。顕現する菩薩の表情。
薄皮一枚剥げば羅刹。此の二面性が堪らない。
「さ、チルノ?奥へ行くわよ。誰にも邪魔されない様に、結界を張るから心配しないで」
チルノさんは呆然。
あまりの事態に脳がハングアップ。
博麗さんはにこやかに、そんなチルノさんの腕を取ると奥へと――――
は、行かず振り返る。
「何の用?あんたらに構ってる暇はないんだけど」
其処には錚々たる面々。
「魔理沙に博麗神社が面白そうだぜって聞いてやってきてみれば……何で魔理沙がぼろ雑巾みたいになってるのかしら?」
―――七色の人形遣い、アリス・マーガトロイド。
「お嬢様に暑いから何とかしろと言われてね、其処の氷精を戴きに来たのよ。白黒に博麗神社に居るって聞いたから」
―――完全で瀟洒な従者、十六夜 咲夜。
「幽々子様が素麺には新鮮な氷じゃなきゃ駄目、氷精の氷とかは最適ね、と仰られたので参上した。私も其処で転がってるぼろ雑巾に聞いたけど」
―――半人半霊、魂魄 妖夢。
「私も其処のメイドと同じ理由。姫が五月蝿いのよねぇ。ニートの癖に要求だけは達者なんだから」
―――月の頭脳、八意 永琳。
「輝夜だけ涼むのが不愉快だから邪魔しにきた。新スペル、試させて貰うよ」
―――蓬莱の人の形、藤原 妹紅。
「ふむ、どうやら普通の魔法使いとやらは暇潰しとばかりに各所を回ったらしいな。ああ、私も其の氷精目当てだ。ご主人様の命令でね」
―――すきま妖怪の式、八雲 藍。
流石の博麗さんでも此れだけのメンツ相手だ。
肝を冷やすかと思えば、く、と口を三日月のカタチに変える。
「私とチルノの仲を引き裂けると思ってるの?こんなに夏が暑いから、本気で嬲るわよ?チルノを」
当のチルノさんは未だ呆然としておりまして。
何やら「蛙を四つ並べたら消える法則」とかぶつぶつ呟いておりまして。
「魔理沙の仇、取らせて貰うわ」
アリスさんが幾つもの人形を展開。
「早速だけど戴きますわ。時間を掛けていられないの」
咲夜さんが銀光を煌かせ。
「巫女・即・斬。我が白楼剣に斬れぬものなど、情念、劣情以外に殆ど無い!」
妖夢さんが刀を構え、高速移動。
「面白いコトになったわね。改良した鈴蘭の毒を散布してサンプルを増やしてみましょうか」
永琳さんがごそごそと何処からともなく薬瓶を取り出し。
「サ・ク・ラ・ジ・マ!」
妹紅さんが新スペルを繰り出そうと宣言。
「妙なコトになったモノだな。取り敢えず、やるか」
藍さんが苦笑しつつ、牽制程度にレーザーを発射。
そんな一斉攻撃を見ても、博麗さんは三日月の口を崩さずに。
愉快そうに、愉快そうに六人を受け入れた。
「来い」
狂乱が、乱痴気騒ぎが始まる。
やたらに豪華な面子による弾幕戦、もとい狂乱の飛び交う続きを激しく期待してます。
追伸:霊夢までは行きませぬがちょっとチルノに萌えた。
チルノかあいーよかあいーよチルノ!
あと妹紅さん、スペル名は結局それになったのかww
大妖精さんの参戦はあるのか!?
期待しています
しかし。蛙4つ並べると消える法則か…。つまり蛙には緑のほかに青だの黄だのあるわけですな。7連鎖でばよe(ナカッタコトニ
とりあえずチルノテラモエス
シエルは要らない子じゃないよ!
>>やたらに豪華な面子による弾幕戦、もとい狂乱の飛び交う続きを激しく期待してます。
つ、つづき?ええと、オチを付けてしまいましたのでどうなるコトでしょう?w
>>全体的に素晴らしく特に脳内会議が秀逸でした。
有難う御座います。脳内会議は博麗さんBを出したいだけに書きましてー。
>>良いぞ!みんなもっと壊れろ!夏だから許す!
此れ以上壊れたら収集がつかなく!w
>>あと妹紅さん、スペル名は結局それになったのかww
>>やっぱりサクラジマヴォルケイノで決定なのかww
オソレヤマは慧音さんの様子から断念したみたいですよ?w
>>期待しています
……てへっ♪
>>チルノがとても可愛らしくてそれ以上でもそれ以下でもなかった。
チルノが可愛ければそれで!
>>瞬殺www
ごめんね魔理沙さん魔理沙さんごめんね
>>……すまん、チルノにこれだけ届けてやって。
確かに受け取らせて戴きましたw
>>しかし。蛙4つ並べると消える法則か…。つまり蛙には緑のほかに青だの黄だのあるわけですな。7連鎖でばよe(ナカッタコトニ
チルノさんは2連鎖までが限界みたいです。
>>とりあえず一言・・・・落ち着け!
無理
>>チルノが チルノがぁ
そんなチルノが可愛くて
>>霊夢Eの春度の高さ、西行妖も開花しそうじゃないですか……最高だ!
まだまだジャブ程度なので平気かも
>>その騒ぎの後に大妖精がお迎えに来るのですね
大妖精さんが迎えにきたトコロ、「巫女怖い巫女怖い」と繰り返していたそうな
>>ヂャッ!って言うかけ声にカレー先輩の姿を見た。
元ネタは刃牙の方でしたw
>>チルノかわいいよ!
全世界共通の真理ですよね!
此処で再度感想にお礼申し上げます。
続きは……どうしましょうw
もしかしたら書くかも知れませんけれど、期待はなさらない方が宜しいかとw
皆様も日射病には気を付けてくださいましね。
それでは、失礼をば。
チルノよりもこの子が欲しいです(熱暴走中)
なんだかあたい今・・・霊夢の事ちょっとだけ・・・好きになれそうな気がしたんじゃい・・・(ウフフフフ)
sexmachinegunsの桜島のシャウトが聞こえたy
取りあえず夏は一家に一妖、チルノが必須ですな。
>>なんだかあたい今・・・霊夢の事ちょっとだけ・・・好きになれそうな気がしたんじゃい・・・(ウフフフフ)
>>博麗さんBとチルノがやたらかぁぃぃ件n(ry
博麗さんB大人気!?w
>>sexmachinegunsの桜島のシャウトが聞こえたy
どかんどかんどかんどかんどかんどかーん
>>取りあえず夏は一家に一妖、チルノが必須ですな。
いいえ、ほら、もう既にチルノさんならいるじゃないですか。
皆様の心の中n(パーヘクトフリーズ
むしろそれが斬れないとこの巫女は止まらないような気が。
素敵に壊れすぎてる巫女に大爆笑させていただきました。