*注意・僅かではありますがオリキャラでます。
「えと、それじゃ行ってきます」
何時も着ている服を脱ぎ捨て、寒さが身に染みてきた季節に合わせるように黒い大きめのジャケットに白のロングスカートに大きめの旅行鞄。
これはお嬢様から出発直前に頂いたもので
『私が持ってても意味ないし』
と言いながら取り忘れたであろう値札のついたままの真新しい”お古”を頂いた。
確かにお嬢様が持って居ても意味が無いほどに大きく、もしかしたらお嬢様が入りそうなぐらいだった。
実際には部屋に戻ったときにはフランドール様が飛び出てきて驚いたのだが。
悪戯のつもりだったのだろうと思い、嗜めると
『だって・・・・めーりん、居なくなるんでしょう?』
と寂しそうな声で言ってきたので、勘違いしているのだろうと即座に理解し、真相を話す。
一応は理解してくれたのだがそれでも離れるのが寂しいのか、『一緒に行く』と言ってきてどうしようと困り果てていると、居なくなったフランドール様を探していたであろう咲夜さんが現れて、そのまま文句の言うフランドール様を連れて行った。
大丈夫かなぁと思っていると咲夜さんが帰ってきて
『お嬢様に説得を任せたわ。後は貴女は準備をしなさい』
とまぁ後のことは問題はないと言わんばかりに言ってきたのでそれでは、とせっせと準備を始めた。
一週間と長いようで短い期間ではあるが私自身の荷物は少なく、着替えの服と最低限の下着と予備のものぐらいだった。
あと、万が一に備えて創っておいた十数枚のスペルカード。杞憂に終わるであろうが戦闘は無いと言い切れないのが、ここ幻想郷の七不思議の一つなワケでして。あ、あと私の肩書きもちょっと危険かもしれないってことで。
ほら、一応紅魔館の門番だし。
そんなわけであっさりと終わった準備に暇潰しとして、門番隊に不意打ちの訓練をぶちかましに行ったらぶーぶー文句たれた年長若輩構わず私とタイマンをやらせた。
ある程度ボコると綺麗に肩で並べられた琥珀色の髪を靡かせて鋭い眼光を放つ、私と同じぐらいの背丈がある女性、私が居ない間の臨時門番長である蓮に窘められた。
『明日の仕事に影響でますからスッキリしたのならとっとと寝てくださいな』
彼女もれっきとした妖怪でこれがまた中々可愛い顔をしているのだがたまに毒を吐く。
当人曰くウチは毒が少ないので。とのこと。
まぁ事実良い感じに疲れて気分がスッキリしたのでそろそろ寝ようと思っていたので素直に従う。
『それでは眠り惚けてくださいな』
それはあれか、一番最初に文句言ったのに対応して私が遠慮無しに飛び蹴りかました恨みか。
などと考えつつも一週間、その毒が味わえないことを思うと僅かな寂しさを感じたので今回は良しとしよう。
そして出発の朝になり、門前には朝番の門番隊と非番のメイドたちが送ってくれることとなった。
ちなみに私が先ほどの格好で現れると
うわ、先生だ!先生が居る!
生よ生!
リアルティーチャー!?
生涯で生で先生が見れるなんて・・・っ!
いや、先生って誰よ?
ということはメイド長は”しき”ね!?
外見とか考慮してもバッチリね!?
ヒャー!てことはリアルタイプムーン!!
・・・・・・駄目だ。全然理解できない。
などと思いながら頭を抱えていると蓮が遠慮無しに変なことを言った連中を叩きのめした。
そのお陰で幾分か静かになったのでほっと一息つく。
「色々とまぁ問題は出るでしょうが隊長が居ない間は比較的平穏チックになりそうなので遠慮無しに帰ってこないでくださいね。邪魔ですから」
「ははははは、大丈夫だよ。蓮のことはしっかり信頼して無いから」
まぁ彼女とは何時もこんなんだが彼女を選んだ理由が単に実力だけではなく、周囲の気配りやなんだかんだ言って一番面倒見が良いのが彼女だったりする。私が代理として彼女を決めた時に隊員は、誰も文句を言わずそれなら安心と頷いてくれたのが何よりの証拠だ。
ふと、周囲を見渡す。周りからは色々と声をかけられ、それに対し笑みで大丈夫だと返しながらも目的の人物が居なかったことに少し残念だと思う。
「流石に無理でしょう。見送りは限りなく絶望的なのでローテンションで出発しろ」
「いやいや、絶望的なのは知っていたからノーマルで行くよ」
「それは残念。ま、何はともあれ道中お気をつけて。隊長の身は隊長だけのものじゃあありませんよ。物理的な意味で」
「変に含むなぁ。まぁ事実だけどね」
お互いクスクスと笑う。
これ以上居るつもりはなかったのでそれじゃ、と片手を上げてゆっくりと飛行し私は館を離れた。
「で、良かったんですか?顔出さなくて」
「たかが一週間の旅行に出るだけじゃない。別に今生の別れでもないというに」
「くくくく、とか何とか言いながら心配だったくせに」
「・・・・・・蓮、貴女について今一度何かと言っておく必要がありそうね」
「おお、怖い怖い。私は隊長ほど頑丈ではありませんのでご勘弁を」
「ったく・・・・・・・ともあれ門番は任せたわよ」
「お任せあれ。咲夜様」
「うわー」
大き目の旅行鞄を片手にひとり飛行する私は館から離れて間もないうちに声を上げる。
改めていかに自分に休みがなかったか思い知る。この空から見た世界の広さを、その自由を。
「広いなぁ」
嬉しく思う。
何故かは分からない。ただ思ってしまう。そして言ってしまう。
「ありがとうございます」
私はワケの分からない感情のまま素直な言葉を言う。
そしてただ当ても無く空を彷徨った。
どれぐらいが経ったのだろうか。それぐらいに長い間飛んでいるとふと視界にあるものが入った。
「あ、やば」
すっかり旅行の目的を忘れていた。
この目的は一週間と言う休みを使いながら合間にお礼参りに行く、というなんとも計画性の無い自由な旅行なのだー。
と言うことで各所に回る予定が私の中に生まれたわけの分からない感動のためにすっかり忘れてしまっており、気付いたら目的地の一つに来てしまった。
「まぁいっか」
と言うことで私は地上におり、改めてそれを見る。
ああ、何時も何時もお世話になってます。と軽く頭を下げて私は『博麗』と書かれた鳥居をくぐり長い石段を上り始めた。
上っている間、僅かに緑が残っている左右の木々から差し込む木漏れ日は気分を落ち着かせる。
ざぁーと風に揺れる木々の音と風は涼しくしぶとく残暑が残っているかなと思わせた。
一歩一歩、踏みしめながら上っていくと途中で彼女がいた。
「・・・・・・あんた門番?」
「そ、門番」
霊夢が竹箒片手に驚いた顔でじっとこちらを見ている。
ふふふ、何時もの服装から変身した私に驚いているなー?すぐにばれちゃったけどー。くそぉ。
「はぁアンタ首なったんだ」
などと抜かしたからフルスィングで旅行鞄を投げた。
ぐお、と思わぬ攻撃に回避できなかった巫女の残機が減った。
「ははははははは、そりゃ霊夢が悪いな」
「だけど何時もと違う服装で旅行鞄片手、って言う格好も誤解されやすいと思うんだけど」
「しかしまぁ随分と雰囲気変わるな」
「全くだ。まるで別人に思える。本当に美鈴か?」
などと神社に居た面子が色々と言ってくれる。
ちなみに上から魔理沙、アリス、妹紅、慧音、と言う順番だ。
後ろの二人は何やら博麗神社で見知らぬ巻物が出てきたらしいので、鑑定して欲しいとのことで来たらしい。妹紅はそのオマケ。
ちなみに慧音や妹紅とは一度、館を一度訪れたことがあるので面識はある。
どう言うわけか妹紅がえらく私を気に入ったようでたびたび侵入者ごっこと称して襲撃もとい遊びに来ている。
で、上の二人は何時も通り神社に遊びに来たというだけ。
今私は慧音が持参した美味しいお茶を頂いている。
「全く、最初から言ってくれれば私は変な被害受けずに済んだのに」
「あのね、誰だって物事を言う前にあんなことを言ったら腹立てるって。一度似たようなシチュエーションができたら言ってみな。下手すりゃいきなりスペルカードぶちかましてくるよ。ルナで」
「いやよ。後にも先にもこれっきりにしたいわ」
「それに関しては私も同意だぜ」
「以下同文」
痛めた首を摩りながら霊夢はため息を吐く。くくくと笑いながら魔理沙が同意し呆れたようにアリスも。
「何度も言うけど別人だよなぁ」
「ああ、何時もの服装だと活発的且つ豪胆な印象を受けるが、こうしてみると物腰の柔らかい静かな印象になるな」
「それはどーも。って言ってもこの服装は仕事上買ってから着ることなんて無かったしね」
などと言うと唐突に魔理沙が
「そんならたまに妹紅や慧音もイメチェンしてみたらどうだ?」
「おーそれもいいかもなー」
「いや、私はこれ以外服は・・・・」
「あら、それなら私が繕ってあげても良いけど?」
「アリス、あんた、ホンとそういうの好きよね」
などと各々好きなことを言いながら笑い合うこの風景を見ると本当に休みを貰ってよかったと思う。そう思いながら私はまた笑う。
楽しいなぁ。
私は素直にそう思った。
冒頭 >何時着ている服を 何時→何時も かな?
>一番最初に文句言っての対応して 文句言っての→文句言ったのに のほうが意味をとりやすいかと。
>改めて自分に休みが無かったか思い知る
『改めていかに自分に休みがなかったか思い知る』または『改めて自分に休みがなかったことを思い知る』としたほうがより読みやすいと思います。
点数は後半のほうに入れますね~