Coolier - 新生・東方創想話

絵なし絵本~夜の散歩道~

2006/07/16 21:59:29
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まんまる大きな月の下、私は家を跳び出した



みんなが寝ているその晩に、夜のお散歩楽しもう



知らない所に行ってみよう





まんまる大きな月の下、私はぴょんぴょん跳ねていく…
















まんまる大きなお月様、道案内をお願いね
 
 
 
薄い明かりに照らされた、延々続く竹林を、私はぴょんぴょん跳ねていく
 
 
 
夜のお散歩あてもなく、ぴょんこぴょんこと跳ねていく
 
 
 
月の光をはね返し、かすかに光る竹林は、私の楽しい散歩道
 
 
 
 
 
妖精遊ぶせせらぎと、大ガマ眠る沼越えて、どこに行こうか迷っても、それでもとにかくすすんでく
 
 
 
 
 
夜の竹林その先は、私の知らない散歩道、楽しい楽しい散歩道
 
 
 
 
 
 
 
「こんばんわーあなたはお客さん?ちょっと休んでいきません?今日はお客さんいなくて暇なんだー」
 


「こんばんわー雀さん、お代がただならよってくわー」
 


「仕方ないなー今晩限り、特別出血大サービス、お話し相手にプレゼント!」
 
 
 
 
 
「そうなのその子がなかなかねー臆病なのかな飛び立てないの」
 
 
 
夜道で見つけた小さな屋台、店主の悩みは優しい悩み、巣立てぬ子雀飛ばせてあげたい
 
 
 
なかなか巣立てぬ雀の子、なんとか飛ばせてあげたいな
 
 
 
 
 
「さよなら小さな兎さん、また今度見かけたら寄ってみてー」
 
 
 
「さよなら優しい雀さん、気が向いたら寄ったげるー」
 
 
 
手を振る店主に手を振りかえし、私はどんどん先にゆく
 
 
 
なかなか巣立てぬ雀の子、今度来たとき飛べてるといいね
 
 
 
 
 
 
 
ぴょんこぴょんこと私は進む、まんまるお月様眺めつつ、彼方にたたずむ小さな神社横に見て、ぴょんこぴょんこと進んでく
 
 
 
人影妖影何もなく、たまに跳ぶのは鼬か狐?何にも見えない森の中、私はずんずん進んでく
 
 



そんな私の目の前に、突然飛び出す黒い影

 
 
「あなたは兎?私は黒猫、ちょっと暇なの遊ぼうよ」
 


「あなたは猫なのそれならね、あなたの友達どうしたの?」


 
夜も夜中な真っ暗闇に、黒猫だんだん縮こまる、小さく小さく縮こまる
 
 
 
黒に消えてく黒猫を、私はあわてて呼び止めた
 
 
 
「猫が遊ぶの夜でしょう?他の友達どうしたの?」
 
 
 
「あのね実はこないだね…」
 
 
 
 
 
黒猫ちょっと悩んでた、猫が言うこと聞かないよ
 
 
 
う~んそうなのどうしよう
 


私もうんうん考える
 
 
 
 
 
まんまる大きな月の下、兎と黒猫悩んでた
 
 
 
 
 
「こんな夜中にどうしたの?」
 
 
 
兎と黒猫悩んでた、そんなところにやってきた、黒猫大好き狐さん
 
 
 
実はかくかくしかじかで、猫との関係築きたい
 
 
 
黒猫言った悩みには、狐もう~んと腕を組む
 
 
 
 
 
「なるほどそれならこれはどう?」
 
 
 
ちょっと悩んだ狐さん、しばらくたって手を叩く
 
 
 
「うんうんなるほどさすが藍さま!」
 
 
 
 
 
わーいわーいと跳ね踊る、黒猫見ている狐さん、なんだかとっても幸せそう
 
 
 
いい考えが出たのかな?
 
 
 
 
 
「ばいばいさよなら黒猫さん、うまくいくこと祈っているね」
 
 
 
「ばいばいありがと兎さん、今度はみんなで遊ぼうよ」
 
 
 
 
 
二人はるんるんうきうき歩いてく、なかよしこよし歩いてく、黒猫と狐は手をつなぎ、森の中へと消えていく
 
 
 
 
 
それじゃあ私も先へ行こう、ここはどこかな知らないけれど、大きな大きなお月さま、あなたの案内安心だもん
 
 
 
 
 
 
 
ぴょんこぴょんこと私は進む、彼方に見えるは紅い館、見上げれば空には紅い月
 
 
 
 
 
深くて暗い森の中、暗くて黒い家がある
 
 
 
ここは何かな誰の家?私はちょこっと覗いてみたい
 
 
 
「おいおい触るな怪我するぜ」
 
 
 
近づく私に声をかけ、にやりと笑った魔法使い、暗くて黒い森の中、あなたもとことん黒ずくめ
 
 
 
「私の家に用なのか?入るにゃちょいと危ないぜ」
 
 
 
 
 
目の前に立った黒いのは、ここは自慢の結界で、難攻不落にしてやった、私の自慢の要塞だぜとうそぶいた
 
 
 
「ふーんそうなのそれならね、もっと頑丈にしてみない?」
 
 
 
いい鴨来たかも思った私、耳元にちょこっと囁いた
 
 
 
「そんなのいいぜいらないぜ、欠陥住宅はごめんだからな」
 
 
 
見透かしたようなお返事に、私もしれっと言い返す。
 
 
 
「そうなのそれは残念ね、せっかくの機会だったのに」
 
 
 
そう言いくるっと振り向いた、私はぴょんぴょん跳ねていく
 
 
 
その時ふと後ろから、呼び止める声がかかってきた
 
 
 
「やれやれつれない兎だぜ、こっちは暇で死にそうなんだ、コーヒーくらい飲んでけよ」
 
 
 
ふ~んなるほどそう言うのなら、ちょっと寄り道してみるか
 
 
 
 
 
「なにこれこの家ゴミの家?」
 
 
 
扉を開くと目の前は、床が見えずにゴミがある
 
 
 
まるでゴミのカーペット、あなたはここに『棲んで』るの?
 
 
 
ああそうだぜここに『住んで』る、効率的なお家だぜ
 
 
 
そんなことないありえない、あなたのほかには何が『棲んで』る?
 
 
 
 
 
黒いのが淹れたコーヒーは、真っ黒黒々腹の色
 
 
 


「こんなところに居座れば、私も病気になっちゃうわ」
 
 
 
「色々な意味で失礼な、まぁ帰るのなら止めないぜ」





ちょっとおしゃべりした後に、私は外へと跳びだした



後ろで聞こえるがらがらと、何かが崩れるそんな音





次に来る時その時までに、ちゃんと整理していてね







ぴょんこぴょんこと私は進む、横目に見るは人形館、暗くて黒い森の中、白いお家が寂しそう





どんどんどんどん私は進む、ここはどこかな遠くかな



さっきの森とは違う森、ちょっとは明るいその森で、小さな子どもが立っていた、心細げに立っていた





「こんばんわ誰かさん、あなたはだぁれ?」



「こんばんわ兎さん、私は稲穂、あなたのお名前教えてくれる?」



「私の名前はてゐっていうの、こんな夜中にどうしたの?」



う~んと悩んだ女の子、しばらくしてこう言った



「私のお家はお金がないの、だから私は飛び出して、みんなが困らぬそのために、どこかへ行こうと思ったの」



見れば服はつぎはぎだらけ、夏は涼しく冬寒い、そんな格好していたの



「みんなが困る出来事は、あなたがいなくなることね、あなたが出来る善行は、今すぐお家に戻ること」



どこかで会った閻魔さん、その人の口癖真似てみた



「そうなのそうかな本当かな?私が戻ってもいいのかな?」



「うんうんそうだよ大丈夫、私がちゃんと送ってあげる」





にっこり笑った女の子、夜のお散歩中止して、私はその子を送ってく





「そうなのお米が足りないの、天井粥を食べてるの」



「うーんそうなの大変ね、でもね多分ねあなたはね、とっても幸せそう思う」



首を傾げる女の子、私は彼女にこう言った



「ほらねあなたを探してる、家族や友達いるじゃない」



あっと叫んだ女の子、彼女が駆け出すその先に、松明持って叫んでる、たくさんの人が見えていた





「ごめんねごめんね飛び出して、もうしないからこんなこと」



「いいのよいいの、無事ならいいの」



ぎゅーとしている女の子、お母さんも泣いていた





私もちょっと泣いていた、そろそろお家に帰ろうか





私はぴょんぴょんかけていく、速度を上げてかけていく





その時かすかに後ろから、元気な声が追ってきた





「さよならまたね兎さん、送ってくれてありがとね!!」



元気いっぱいその声に、私は黙って微笑んで、ぐんぐん先へと進んでく



お家へ帰ろう進んでく







なぜだか寒い湖横に、不思議な雑貨屋かすめつつ、私は駆ける永遠亭に…



まんまる大きなお月様、私の家までどれくらい?





答えてくれないお月様、なんだか悲しくなってきた



早くお家に帰りたい





私はどんどん駆けていく、速度を上げて駆けていく…





だけど何かに躓いて、私はくるっと一回転、地面にごろごろ転がった





「あいたたあいた、参ったなぁ、足を痛めていないかな」



あちこちずきずき傷だらけ、触れば足もくじいてた





「うーんどうしよ困ったな」





だけど私が悩んでた、そんな時にやってきた、すごい速度でやってきた、私は彼女の名を呼んだ





「れーせん!?」





「ばかっ!」



鈴仙そう言い駆け寄ると、私をぽこっと叩いて抱きしめた



「心配したのよてゐったら、突然どこかに消えるんだもの」



ぐすっとしている鈴仙に、私もぐすっと謝った



「ごめんね鈴仙ごめんね鈴仙、心配かけてごめんなさい」







まんまる大きな月の下、鈴仙どんどん駆けていく、私をおぶって駆けていく



「本当にもうてゐったら、みんなも心配したんだからね」



そう言う鈴仙泣き笑い、負けずに私も泣き笑い





そんな私の視線の先は、とっても明るい永遠亭



まんまる大きなお月様、あなたにだって負けないわ



煌々と輝く篝火で、明るくきれいな永遠亭





竹林にたたずむ永遠亭、その建物のまん前に、姫様と永琳様が立っていた





今は真っ暗そのはずの、幻想郷でもここだけは、とっても明るい何もかも





鈴仙止まったその時に、私は心からこう言った





「ごめんねごめんねごめんなさい、心配かけてごめんなさい…」





そんな私に二人は笑う、笑って笑ってこう言った



「あなたが無事ならそれでいいわ」



「ええ、今日はゆっくり休みなさい」





二人の笑顔に泣き出した、私の顔は涙でぐっしょり



だけど私は幸せだ、今日はぐっすり眠れそう





夜のお散歩楽しいけれど、もっと楽しい私のお家





布団を敷いてさぁ眠ろう、幸せな気持ちが消えない内に…







『おしまい』





































その晩幻想郷で起こった出来事…

今まで飛び立てなかった雀の子が、勇気を出して舞い上がった



なかなか猫と仲良くなれなかった黒猫が、猫のみんなとわいわいはしゃいでた



黒い魔法使いの家で、崩れた本の間から、貴重な魔導書が見つかった









里のとある家に、なぜか宝箱が置いてあった…




今度こそ『おしまい』


 いつもとは全く違った書き方のこの物語、お楽しみ頂けたでしょうか?

 以前、帰省した時に、実家に遊びに来ていた子どもに読んであげた何冊かの絵本。深く考えずにす~と心にしみて来るような、そんな絵本の文章に惹かれて書いてみました。
 読み終わった時に、ちょっとでもほんわか幸せな気持ちになっていただけたなら幸いです。

 そして、願わくばご意見ご感想をくださいませ。楽しみに、そしてちょっとびくびくしながらお待ちしています。

 あと、次回からは元に戻ると思います。まぁ気が向いたらこんな文章もたまに書くかも知れませんが。


 
 それでは、お付き合いいただきましてありがとうございました、ではまた次回作で。



七月二十二日、改題及び本文微修正
 これからもたまにこんなお話を書きたいなと思いまして…題名をシリーズ化前提のものに変えました。ちなみに、次回のお話は…まだ決まっていません(ごめんなさい)
アッザム・de・ロイヤル
[email protected]
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コメント



0.1880簡易評価
8.60名前が無い程度の能力削除
じょにーずさんで慣れているから、特に違和感ないですよ
テンポがよくて読みやすい、いい作品だと思います
12.90名前が無い程度の能力削除
ああ、そうだ。
てゐは幸福の兎だったっけ。

なんてことを思い出した。
21.70名無し人妖削除
癒されました…^^
22.80油揚げ削除
癒されますね、幸せの兎。
ほんわかしたものを感じました。
27.80思想の狼削除
じょにーずさんに引けをとらない文章の作りが良かったです。癒されました。
私の中では兎詐欺(うさぎ)のイメージが強いてゐですが、彼女が人間を幸せにする程度の能力の持ち主だという事を改めて認識させられました。
29.100SETH削除
新たなるアッサムさんを見た思いです
いい!
32.80煌庫削除
これは善い兎のお話ですな
36.70名前が無い程度の能力削除
思わず挿絵を描きたくなるようなお話ですね
37.90名前ガの兎削除
内容、文章そして結末と、絵本のようなお話。
39.70変身D削除
テンポよく進むストーリーに心温まる結末。
とても癒されるお話でした(礼
41.80名前が無い程度の能力削除
詐欺ウサギに萌えさせられた…信じられない(w
42.無評価アッザム・de・ロイヤル削除
ご感想ありがとうございます!

>一人目の名前が無い程度の能力様
 そう言っていただいてほっとしました。正直どう評価されるのかが不安だったので…

>二人目の名前が無い程度の能力様
 幸運の兎が小さな幸運を配って…そして自分も幸せになる、そんなお話をイメージして書きました。

>名無し人妖様
 その言葉が聞けてとても嬉しいです、今回は感動とかそういうものではなく、ちょっとなごめる癒される、ほんわかした話を目指しておりましたので。

>油揚げ様
 貴方にも幸せの兎からの癒しが届いたようで嬉しいです。

>思想の狼様
 >私の中では兎詐欺(うさぎ)のイメージが強いてゐですが、彼女が人間を幸せにする程度の能力の持ち主だという事を改めて認識させられました。
 実は、私もそんな感じで書いていました。悪人になりきれない兎詐欺師といった感じで…ですが、そんなてゐの別な側面をふと考えた時、こんな彼女になりました。この作品を書いた結果、私自身がてゐに対する認識を大きく変えた気がします。

>SETH様
 そう言っていただき、ほっとしました。本当に不安だったので…

>煌庫様
 はい、兎詐欺師ではない…幸運の兎のお話です。

>三人目の名前が無い程度の能力様
 >思わず挿絵を描きたくなるようなお話ですね
 是非お願いしますwww

>名前ガの兎様
 どんでんがえしも、深読みさせる場面も、そして大笑いするような場面も作っていません。ひたすら優しくなごめるお話、これはそんなお話です。
 ご満足いただけたようで本当に嬉しいです。

>変身D様
 >テンポよく進むストーリーに心温まる結末。
 目指したものが伝わって、本当に嬉しいです。

>四人目の名前が無い程度の能力様
 >詐欺ウサギに萌えさせられた…信じられない(w
 ええ~!?(笑)
50.80ドライブ削除
ほんわかと幸せになれました。文章のテンポがいいです。内容もわかりやすいです。
51.無評価アッザム・de・ロイヤル削除
>ドライブ様
ご感想ありがとうございます♪
テンポ・ほんわか…このあたりを重視しておりましたので、そう言っていただけますと♪