巫女がいた
魔法使いがいた
「朝ね」
「朝だな」
博麗神社は今日も朝
「ご飯食べる?」
「食べていくぜ」
ちゃぶ台に向き合って座る二人
ことんと置かれる陰陽玉
「開けるわ」
「見てるぜ」
ぱかりと開く陰陽玉
片側にはご飯が、片側には惣菜が
「ご飯を盛るわ」
「おかずを分けるぜ」
巫女はご飯を盛った
魔法使いはおかずを分けた
「いただきます」
「いただきます」
「ごちそうさま」
「ごちそうさま」
朝は過ぎた
昼になった
「お茶、飲む?」
「ああ、飲むぜ」
縁側に並んで座る二人
ことんと置かれる陰陽玉
小さな黒丸を指先で押す巫女
白丸の前に湯飲みを置く魔法使い
こぽこぽこぽこぽこぽこぽ……
「便利よね」
「便利だな」
「美味しいわね」
「美味いな」
太陽が二人を照らす
「暑いわね」
「暑いな」
汗が流れる
「スイカでも割る?」
「スイカでも割ろうぜ」
二人は空を見上げた
そしてスイカを呼んだ
小鬼がやってきた
「割るわよ」
「割るぜ」
「割られます」
コンコンコンコン……
お払い棒で叩く
パシパシパシパシ……
箒で叩く
「割れません」
と、小鬼は言った
コンコンコンコン……
お払い棒で叩く
パシパシパシパシ……
箒で叩く
「割れそうです」
と、小鬼は言った
コンコンコンコン……
お払い棒で叩く
パシパシパシパシ……
箒で叩く
「割れました」
と、小鬼は言った
「割れたわ」
「割れたぜ」
少し、涼しくなった
「お茶、飲む?」
「お茶、飲むか?」
「お茶、飲む」
小鬼もこぽこぽこぽこぽ……
「便利よね」
「便利だな」
「便利ね」
太陽が少し傾いた
「それじゃ、行くね」
「行ってらっしゃい」
「行ってこい」
鬼は去った
「行ったわね」
「行ったな」
二人は見送った
バサバサバサバサ……
「こんにちは」
「こんにちは」
「こんにちは」
吸血鬼が来た
日傘をさしていた
「血を飲ませて」
と、吸血鬼は言った
「駄目」
「駄目だ」
と、二人は答えた
「どうしても?」
と、吸血鬼は尋ねた
「どうしてもよ」
「どうしてもだ」
と、二人は答えた
「そう」
「そうよ」
「そうだ」
吸血鬼は背を向けて歩き出した
二人はそれを見ていた
「桜の下の死体さん、桜の下の死体さん」
吸血鬼は桜の木の根元に話しかけた
「二人とも私に血を飲ませてくれないわ」
返事は返ってこなかった
「誰も私に暖かくしてくれないのね」
「そうね」
「そうだな」
少し涼しくなった
「お茶、飲む?」
「お茶、飲むか?」
「お茶、飲むわ」
吸血鬼もこぽこぽこぽこぽ……
「暖かいわね」
「暖かいでしょ」
「暖かいだろ」
吸血鬼は暖かくなった
「お嬢様」
「なに?」
メイドが尋ねた
吸血鬼は答えた
「そろそろ、ご夕食の時間です」
「そう」
二人は歩き出した
「帰るわ」
「帰りなさい」
「帰れ帰れ」
吸血鬼は微笑んだ
メイドは何も言わなかった
二人は飛んでいった
二人は見送った
日が徐々に地面へと近づいた
「こんばんわ」
亡霊が出てきた
「まだ昼よ」
「もう夕方だぜ」
二人はじっと見ていた
「二人とも、死んでみない?」
と、亡霊は誘った
「死んでみない」
「死にたくもない」
と、二人は答えた
「どうしても?」
と、亡霊は誘った
「どうしてもよ」
「どうしてもだ」
と、二人は答えた
「残念ね」
「良かったわね」
「良かったな」
亡霊は背を向けてふよふよと動いた
二人はそれを見ていた
「祟り神さん、祟り神さん」
亡霊はは神社の祟り神に話しかけた
「なんだい?」
祟り神は答えた
「二人とも死んでくれないのね」
亡霊は尋ねた
「あいつらは生きているからね」
祟り神は答えた
少し、涼しくなった
「お茶、飲む?」
「お茶、飲むか?」
「お茶、飲むわ」
亡霊もこぽこぽこぽこぽ……
「美味しいわね」
「美味しいでしょ」
「美味しいだろ」
亡霊は満足した
「幽々子様」
「なあに?」
庭師が尋ねた
亡霊は答えた
「お迎えに上がりました」
「そう」
亡霊は庭師の元へと近寄った
「妖夢」
「何ですか?」
亡霊は尋ねた
庭師は顔を捻った
「死んでみない?」
「半分は死んでます」
亡霊は笑った
庭師はさらに顔を捻った
「帰るわ」
「そう」
「じゃあな」
亡霊はふよふよと飛んでいった
庭師は真っ直ぐに後を追った
日が沈んだ
月が昇った
「月が昇ったわね」
「月が昇ったな」
二人は見上げた
「丸いわね」
「丸いな」
月は丸かった
「元気そうね」
姫が降りてきた
「元気よ」
「元気だぜ」
二人は答えた
「時間、あるかしら?」
と、姫は尋ねた
「無いわ」
「無いぜ」
と、二人は答えた
「どうして?」
と、姫は尋ねた
「寝るのよ」
「寝るからな」
と、二人は尋ねた
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「おう、おやすみ」
姫は月へと身体を向けた
「お茶、飲んでいく?」
「お茶、飲んでいくか?」
二人が呼び止めた
「そうね、飲んでいくわ」
姫はもう一度体を回した
姫もこぽこぽこぽこぽ……
「まあまあね」
「まあまあよ」
「まあまあだな」
姫は月を見上げていた
「それじゃ、行くわね」
「行ってらっしゃい」
「行ってこい」
姫は行った
少し、涼しくなった
「寝る?」
と、巫女は尋ねた
「寝るか」
と、魔法使いは答えた
二人は眠った
ぐっすりと眠った
日が昇った
辺りには花が咲いていた
「渡し賃は持ってきたかい?」
と、死神は尋ねた
「持ってきたわ」
「持ってきたぜ」
と、二人は答えた
「それじゃ乗りな」
「乗るわ」
「乗るぜ」
舟が揺れる
ゆらゆらと揺れる
三人を乗せた船が
ゆっくりと川の向こうへ消えていく
ゆらゆらと
ゆらゆらと
( ゚д゚ )ガクガクブルブル
いや、これは上手い。お見事。
なるへそ。
けど、わかったような、わからぬような。
正しいような、正しくないような。まぁ、世の中そんなもん。
きっと二人はこんな風にゆくのだろうと、そう思わせる不思議な空気があります。
いや、お見事の言葉のほかはありません。