Coolier - 新生・東方創想話

基本的にはお前が悪いバースデー

2006/07/01 10:09:14
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ここは私の部屋。
家の南側に面しているので、夏場はかなり暑いが、台所や洗濯場にも近いので、家事もやりやすくて、
割と気に入っている。ちょっと狭いが、まあそれも落ち着く理由のひとつかもしれない。

今日は大安。そして、私の誕生日でもある。
しかし、私の主である紫様は私の誕生日を祝ってはくれない。
我が家では、「年齢に関する話題をした者はツララの刑」という紫様の御触れにより、
その手の話はタブーとなっている。
それでも私は、当日になるとそのことをアピールして、毎年ツララを突っ込まれている。
そして紫様は毎年そのことを忘れている。というか無理矢理自分で記憶を消している。
そんな誕生日にはもう慣れっこだったけれど、やっぱり少し寂しいものだ。
気を紛らわすために、本を読んだり、尻尾の手入れをしたり、マラカス振ってテンコーしたり。
結局どれも飽きてしまい、暇を持て余していた。

「藍~」

そこへ、ふすまの外から声が聞こえた。紫様だった。私を式神として操っておられ、非常に
強い妖力を持っている。付け加えると、とても美しい容姿をしておられるが、
家事の一切を私に任せて本人は寝てばっかりいる。
持ち前のだらしなさで、私はこの人を心の中で、昼行灯、と呼んでいる。
今日はどこかへ出かけていたはずだが、今し方帰ってきたようだ。

「借りてた本を返しに来たわ」

ちゃんと返してくれるとは。紫様にしては珍しいことだ。

待てよ? 
立ち上がってふすまに手を伸ばそうとした、その時私の脳裏にある可能性が過った。
まさかあいつ、今日が私の誕生日だと知ってて、ここへ来てくれたのか?

いや、そんなはずは無い。あのごはんをお櫃から直接食べるほどのズボラな紫様が、そんな気の利いた
ことをする筈が無い。
なんでもしゃもじで食いやがって。

「ちょっと藍~? いるのは分かっているのよ~?」
「あ、はいはいすいません」

慌ててふすまを開ける。
紫様はどうやら買い物に行ってきたらしく、大きめの紙袋を持っていた。
貸していたのは、一冊の数学書だった。紫様曰く、式神とは式と名のつく通り方程式そのものなのだと言う。
私もそろそろ自分で式神が打てるくらいにはなったのでは、と思いたち、数学の勉強を始めたりした訳だ。
本人の言が本当ならば紫様は私よりも遥かに数学に長けている筈なのだが、
なぜ私なんぞが何とか理解できる程度の本を読みたがるのだろうか。
この辺りが、ちょっと理解できない所でもある。
その後、短い会話を交わすうちに私は決意を固めていく。
さて、勇気を出して、今年もやるか……。

「いやー実は今日は私の誕生日で、一人でいるのも侘しいものだった……」

と、打ち明けようとした矢先、彼女は。

「ちょっとごめん、すぐもどってくるから」

と、言って携帯電話を持って一旦部屋を出た。
きっと聞かれたくない電話でもしに行ったのだろう。

私は待った。

しかし、彼女はなかなか帰ってこない。

私は待った。

しかし、彼女はまだまだ帰ってこない。

私は待った。

しかし彼女はぜんぜん帰ってこない。

私は待ちくたびれた。

ふと、
ちゃぶ台に置き去りにされた彼女の紙袋が気になった。
まさか……プレゼントかな? 自然と頬が緩む、が、いや、そんな筈は無い。
あのカップ焼きそばのお湯を捨てないで食べるほど大雑把な紫様が、私の誕生日を覚えている訳が無い。
なんだ、ソースラーメンって、別の食べ物になってるじゃないか。
そんなあいつに、そんな小洒落た真似ができるはずが無い。

でも待てよ?
もしかしたら、それらのだらしない行動は、あえて私を今日驚かせる演出のためではないだろうか?
そしてもしそれが本当だとしたら…。
靴下の裏表を二日に分けて履きまわすほど大雑把なのは、フェイク?
本当は、誕生日を覚えてる!?
実は律儀で計算高いお方だったのか!
昼行灯は、昼行灯じゃなかったんだ!!
そんなにも私のためを思っていてくれたなんて。そんな紫様がせっかく用意してくれたプレゼントだ、
敬意を払って、ここは我慢しよう。固く心に誓った。









「そーれにしても遅いな」

再び紙袋に視線を走らせた。そこに無意識のうちに右手を伸ばして。

「イヤ! ここは我慢だ」

左手で押さえつける。
夏場、尻尾の付け根にできる汗疹の痒さを耐えられる私だ。これくらいの我慢どうって事は無い。


「しーかし遅いな」


私の年に一度の誕生日だと言うのに、紫様は一体何をしているんだ? ちょっと腹が立ってきたぞ。

まてよ、もし私が中身を見ても、あいつが帰ってくる前に元通りにすれば…………完全犯罪成立じゃないか!!
何でこんな簡単なことに気がつかなかったんだ、見ちゃおーっと。

「待ったァ!!」

やはりそれだけは彼女に失礼だ。
だが。
にしてもチクショウあいつ随分待たせるな!

見ちゃっても、罪のバランスは取れてるから大丈夫だろう。
あ、でもプレゼントの価値にもよるな。全然大した物じゃなかったら、お釣りがくるな。
そういった場合釣り合いを取るための追加プレゼントを要求してもいいだろう。
もしくはもっと良い物と交換してもらお。
逆に物凄く高価なものだったら……たとえば、一体なんだろ、
あの人は幻想郷の外に自由に出られるから、それこそどんなものでも手に入るだろう。
それなら……。


貴金属バット。


ミンクの……ミット。


高級な……軟球。


いやいや。なんで野球用品限定なんだ。ほかにもあるだろほかにも。

そういえばあの人は詩を詠むんだったな。
……手作りの詩集!? これはかなり最悪だぞぉ。


「ほら、君の顔に、すきだってかいてあるんだから、はやく、伝えてごらん
 あいつの顔にも、すきだよって、かいてあることに、気がつくから(森本レオの真似で)」

「落ち込んで、落ち込んで、きもちが、どん底まで下がったら、
 根を下まで伸ばした分、上に伸びた、大きな木も、君なんだよ(森本レオの真似で)」


あーあ、もう何も言うまい、うん。なあ私、え? 何?
ああそういえば、確かにあの立体感、詩集ってことはなさそうだ、紙関係は消えたな。
よし、逆に紫様らしいものじゃなくて、私のほしい物を彼女が知っていたなら。こう考えてみよう。
計算高いことはすでに証明済みだ。私の欲しいものをそれとなく探っていた可能性はありえるぞ。

「ああ!」


私のほしい物、でピンときた!


まさか。


以前から私が欲しがっていた。


「子猫?」


どうしよう!?、子猫だったらどうしよう!?
スコティッシュフォールドだったらどうしよう!?!?
これはテンションが上がってきたよオ!
ああん、もう。
名前は、オスだったらジャックかバキ。
メスだったら

「こずえかな~~~!」

最早思慮分別を失った私の手は勝手に袋に伸びていき……。

「うわああ!」

触ってみて愕然とした。

死んでる。
息ができなかったのか?

「おい、ジャック! バキー! ああァ、あれ」

あれ?


硬い。




「かたイヌ?」

ノルウェー北部にしか生息しない、ザリガニみたいなイヌ。

「か た イ ヌ?」

いや、そんなものはいない。犬じゃん。
少々気が動転しているようだ。落ち着け、わたし。想像だけで思い悩むな!
こっそり見るだけで解決じゃないか。
紫様は今どういう状況なんだろうか、ちょっと様子を伺ってみよう。

なーんだ、向こうの一本杉のところで電話してるじゃないか。
境界を弄くってあの辺りだけ電波が届くようにしてるらしいのだが。

と、いうことは。
行ける!!
万が一、たった今彼女が電話を終えたとしても、あの位置から歩いてここまで戻ってくるのに
45秒はかかる。
よーし、作戦決行だッ。



パン、と手を叩き
デン、デン、デンデン、デン、デン、デンデン
頭の中では例の5拍子のあの曲が鳴っている。
あれ元々は「スパイ大作戦」で使われてたって知ってた?byゆかりん情報。
イヤそんなことはどうでもいい、それよりイマはこのプレゼントを開けて中を確認してやるのが先だ。
きっと紫様はこいつを神戸のモンテメール辺りで買ってきたんだろなー、あーそのときの店員と
店内で日傘をさしてる紫様の会話が容易に想像できるぜ、

『それなら……やっぱりこっちにさせていただくわ』
『有り難う御座います。ギフトで宜しゅう御座いますか?』
『ええ、それでお願い』
『畏まりました。包装は如何致しましょう?』
『ガッチリお願い。だってプレゼントですもの』

「って待ったーーーーーーーーー!!」

そうだ、そうだよ。
忘れてたよ、この可能性を。
すなわち。
袋の中のプレゼントが、がっちりラッピングしてあったらどうする?
一旦開けた包装紙を完全に元に戻すのは、45秒では至難の業だ。
彼女が出て行ってから、既に5分は経過している、こんなことならさっさと見ちゃえば良かった。
どうする、やるか、やめるか。これは賭けだぞ、人生最大の決断だッ。
あー私の心に棲む悪魔が。

『やっちまえよぉ』

と囁いている。
そして私の心に棲む天使

も『やっちまえよぉ』

と囁いている。


うはwwwwwwwちょwwwwwおkwwwwww

デン! デン! デンデン!

私の両の手が紙袋の淵に掛かった正にその時。

「あ待ったァーーーーーーーー!!!!」

私の手を再び止めさせたもの、それは……ひとつの可能性だった。
忘れていた、最悪の可能性。
そう、すなわち。


『もし開けて、プレゼントじゃなかったらどうする?』

ただの私物だったらどうする?

二日履いた靴下だったらどうする!?

すべてが私の思い過ごしだったら……。

何で今まで考えもしなかったのだろう。
私は馬鹿か? まるで白痴じゃないか……この痴女め。
あーやべえ、しゃっくりみたいな笑いがこみ上げてきた。
だって考えても見ろ。
あの缶コーヒーを缶切りであけて飲むほど大雑把なあいつが、わざわざプレゼントを用意してるほうが不自然だ。
プルトップ開けられない究極的に不器用なあいつが、そんな込み入った事してくれるなんて、かえって気持ち悪い。
あぶねーあぶねー。危うくトラップに引っかかる所だったぜ。


……ん?何の音だ?
また誰か迷い込んできたのかな?
だとしたら可哀想なことだ。
貴方は今宵我が主の晩餐に成り果てることだろう。





 ◆◇◆





いやー参った。
留守電が2000件も入っているとは。
それ以前にそれだけ預かってくれる電話会社に驚くべきかしらね。
進歩してるのね、NTTも。
あれ、藍は?トイレかしらね。
しかし随分待たせてしまった、悪いことをした、
まあいい。埋め合わせするだけの価値が、このプレゼントにはあるだろう。
あいつの驚く顔、目に浮かぶなー。

「うわまじっすか!? いいんすか!? こんなもの貰っちゃって。ありがとうございます、ありがとうございます!!
 お礼に、紫様の、誕生日には、ローン組んで、ベンツ買わせて貰いますぅ!!」

なーんて言うんだろうなー、うーん楽しみ!
それにしても遅いわね、トイレ今入ったばかりなのかな。だとしたらそれまで何してたんだろ。

あ。
まさか、見られたかな!?

いや、あいつは私のために借金までしてくれようとしているのだ、人の荷物を勝手に見るような、
私みたいな真似はしないだろう。私もやめなきゃなー。
ついさっきも。

『勝手に在庫の棚開けないでください!』

って、ハンズの店員に怒られちゃったしなー。
でもそれはしょうがなかったんだ! だって、今日こうして、あいつにプレゼントするために探してたんだから。
ほしがってたもんなー、これ。
あいつの喜ぶ顔が、目に浮かぶなー。

「うわはははあぁい!! どうして私が欲しかったものを? ありがとうございます、ありがとうございます!!
 お礼に、紫様の誕生日には、
 連帯保証人にならせてもらいますぅ!!!」

なぁんていうんだろうなー。うーん楽しみ!
まてよ、あいつ持ってたらどうしよう!?
これを、かなり欲しがっていたあいつだ、既に自分で買っている可能性は十分に考えられる。

「じゃーーん、これれーす!」
「……ごめん、これ持ってる…………」
「……」
「……」

こぉれはばつが悪いぞーー。

そうだっ! これをあいつの前に、プレゼントだと言わずに取り出し、リアクションを見て瞬時に決めよう。
もし。

「あ、これは私がほしかった……もしかして、プレゼント?」

だったら、

「そうれーーーす!! おめでとーー!!」
で。
もし
「あ、これ私も持ってますよ、紫様も始めたんですか?」
だったら。
「ふーーん、奇遇だったわね……」

で良しッ。
うーん、我ながら賢い!

あ、でも後者の場合だったらあいつへのプレゼントが無くなっちゃう。
どうしよう、何か無いかな。あ。

「お誕生日おめでとう、はい、五千円」

…………私は親戚のオヤジか。
えーと、えーと他には。あ。

「アタイは16のとき、手のつけられない不良だった。酒、タバコ、万引き。悪いことなら全部やった。
 そんなある日、お袋が風邪を引いて寝込んだ。アタイは慣れない手つきでお粥を作った。
 お袋は。『お前の作ったものなんて、どうせおいしくないに決まってるよ』なーんて言ってたけど。
 お粥を覚ますお袋の背中は、小さく震えていた。お袋のやつ強がって。『ああおいしくないおいしくない。
 涙の塩気が丁度良いや』なーんていってたけど。小さな声で。
 『こんなにおいしいもの、世界中どこいったってあるもんか』なんて言ってたっけ。
 アタイは普段料理なんかしねーから、鍋が何処にあるのかも分からなかった。
 台所中探し回ったおかげで、腕中埃だらけになったよ。
 そ の と き の、埃……」









「いぃ意胃異伊らァ亜亞阿ああねエ江ゑヱ恵ェ!!!」

話もウソだし……。


うーーん物にこだわる必要も無いか。



「お誕生日おめでとう、私の華麗なダンスをご覧ください」
 (両腕を引き、片足を上げる)

「き!・ほ!・ん!・て!・き!・に!・は!」
 (『き』で腕を前に押し出し、上げていた足を下げ、
 次に『ほ』で逆の足を上げ腕を引き戻す。
 この動作を二回繰り返す)

「おまえがわ!・る!・い!」
(両腕を振り回す。そして最後の『い』で右腕を斜め上に揚げ、左腕は斜め下へ)

「か!・ら!・ん!・で!・か!・ら!・ん!・で!」
(両手を体の前でぐるぐる回し『で』で両腕を斜めに伸ばす×2)

「みそっそかす!!」
(肘から先を一回転させて『す』で横に向ける、指を伸ばし、顔も向く。
 ちなみにすべての動きにおいて首を必要以上にガクガクさせることが重要)




何じゃこれ…………。
私は気恥ずかしさを紛らわすためにコーヒーを飲もうとした。だが。
「んしょ……うんっ……開かない」
缶切りを探しに、口にBOSSを咥えて台所に向かった。










 ◆◇◆


物干し竿が勝手に折れるなんて。不吉だ。
紫様は……まだか、あれ? 向こうにもいないぞ。
どこに行ったのかな。あ。

「あー! 紫様、もう帰ってたんですか」



◆◇◆





「あら藍、長いウ○コだったわねー」
「は? あー!! 紫様、勝手にご飯食べちゃ駄目ですよ、夕餉はまだなのに」
「ごめん、全部コーヒーかけて食べちゃった」
「もー」
「じゃあ、どこか食べに行く?」
「え? そんな、珍しいですね、紫様がおごってくれるなんて」
「だって今日はあなたの誕生b……あっ」
「知ってたのー!? (開けなくて良かったー)」

◆◇◆


二人は部屋に戻ってきた。
照れ笑いを隠しきれていない藍、そして紫はちゃぶ台の上の紙袋に手を添えてジャーーン! とやってた。
藍が紙袋を開けようとすると、紫は、ちょっと待って、何が入ってるか当ててみて、と藍を引き止めた。
紙袋を持ってあれやこれや考えているうちに藍は頭の横で振ってみることにした。

シャカシャカシャカ

あ……これって…。
藍の表情が凍りついた。
そんな藍をみて、紫は上目遣いで、どーよー、いいでしょそれーー。とでも言いたげな顔をしていた。
どうやら勘違いをしているようだった。
藍は一旦袋を紫に預けると、自分の箪笥に向かった。頭の上に疑問符を浮かべる紫をよそに、
上から三段目の引き出しを開け、中から「それ」を取り出した、
手に持っていたのは、一対のマラカス。

「くわぁ」

変な悲鳴を上げて、紫はちゃぶ台の向こう側へ沈んだ。
紫の計画は破綻し、藍は、手に持ったマラカスにただ目を落としていたが、
やがてそれを鳴らし始めた。

シャカ―――――――シャカ―――――――シャカ―――シャカ―――
シャカ―シャカ―シャカシャカシャカシャカ

紫も慌てて起き上がり藍のプレゼントにする筈だったマラカスを振り始めた、
そして。

「き!・ほ!・ん!・て!・き!・に!・は!・・おまえがわ!・る!・い!」

先ほどの華麗なダンスを踊り始めた。

「か!・ら!・ん!・で!・か!・ら!・ん!・で!・み!・そっか!・す!」

そして2番では。

「き!・ほ!・ん!・て!・き!・に!・は!・・おまえがわ!・る!・い!」

藍も踊り出す。紫よりも若いためか、体のキレが良い。

「う!・ら!・ん!・で!・う!・ら!・ん!・で!・劣!・等!・感!」
「ハァイ!!」

藍が掛け声をかけるのと同時に、ふたりのボルテージも急上昇した。
続いて3番へ。

「「きッ!ほッ!んッ!てッ!きッ!にッ!はッ!おまえがわッ!るッ!いッ!」」

3番では、藍も歌詞を歌い始めた。
ふたりが向き合って唄いながら……

「「もッ!だッ!えッ!てッ!もッ!だッ!えッ!てッ!」」

ふたりが向き合って踊る。

「「ドッキング!!」」

ふたりが向き合って唾を飛ばし合いながら、今、このふたりの心は、
かつて無いほどに強く、つながった。


そして。




「おめでとう」
「イヤ四つは多いわ」
















「あなたにじゃないわ」
「え?」

よく見ると紫は、藍の少し右下にマラカスを差し出していた。
そちらに目を向けると、紫からマラカスを受け取ろうとする一人の少女がいた。

「……!……いつの間に……」
「さっきから居たじゃない、気がつかなかった?」

目を白黒させながら、藍は少女を見つめた。
ちょっと良く見れば、明らかに人間ではないと分かった。
頭に生えた大きな耳、腰元に二本の尾。纏っている妖気。

「猫又……か、紫様、この子は」
「拾ってきたのよ、聞いてみたらね、名前は橙だっていうのよ、紫で藍で橙。なにか縁を感じると思わない?」
「(名前だけで?)」
「そうよ、私がどこぞの腹違いの兄弟みたいな名前の猫を拾ってくると思う?」
「え」

藍が顔を上げる。同じくマラカスを持った橙も顔を上げた。

「式神でありながら自らも式を打てる。藍、まずはこの子を自在に操れるようになりなさい」
「紫様……」
「さながら今日は誕生記念日ね、私と、貴方と」

それから、と紫は猫又の大きな目を覗き込みながら。

「あなたの、ね」


少女は薄く笑った。












ちなみにこのあと藍は『年齢に関する話題をした罪』により紫にツララをぶちこまれた。
 元ネタはラーメンズの某コントですが、やっぱり無理がありますね。
 元ネタ見たことのある方は彼らの演技を紫と藍に置き換えて読むと良いかもしれません。
 現在この文章へのご感想。ご指摘。突っ込み。批判。絶賛募集中です。
 ここまで読んでいただいた方、大変有難うございました。

 ところで紫が藍にどのようにツララをぶちこんだのかと申しますと、
 まずツララを水で濡らして滑りやすくした後に、適当な形に整形し
 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
黴人間
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コメント



0.1480簡易評価
7.70名前が無い程度の能力削除
ラーメンズのDVD持ってるんで、全編に渡って脳内映像つきで読めましたよ。
紫様のぐうたらっぷりと、藍様の突っ込み気質は結構嵌ってますねw
紫様と藍様の口調がもうちょっとそれっぽかったら良かったかなぁと思いました。
8.70言乃葉削除
何故だッ!何故ここがッ!押せないッ!!!!
10.100SETH削除
押せんぞ!店主!!
18.70奏空猫削除
先日YouTubeで観たばかりなので爆笑しました。
脳内でアフロな紫が踊り狂っております。

http://www.youtube.com/watch?v=aLaQ1UmOx70
24.70名前が無い程度の能力削除
そういえば、次に出るラーメンズDVDのタイトルは「アリス」…