第119季水無月の半分を過ぎる頃の話、
幻想郷に居座っていた永い冬は過ぎ去り、訪れた春もまた立ち去ろうとしてた時期
大きな湖の上にある紅い館…紅魔館
喧騒や平穏…全ての物事と無縁な巨大な閉鎖空間に存在する一人の従者がいた。
名は十六夜 咲夜。
人でありながら身に宿るチカラを恐れる人や妖多き者。
・・・・・・この話はその従者の身に起きた一つの些細で、大きな物語。
傷魂『ソウルスカルプチュア』
水無月の一九
「・・・・・・今日も雨・・・」
幻想郷に訪れたのは永い冬から解放された春・・・では無く、梅雨の時期。
彼女は軽いため息をつき外を眺めていた。
梅雨入り前に買い込みは全て済ませていたのは幸いだったが、
さすがに何日も同じように雨を見ているのも『飽き』がくるという事なのだろう。
「美鈴は雨の中でもきちんと仕事(門番)をしているのかしら?」
心配半分、仕事上の監視という意味半分を足して壱という事で彼女は足を外へと向けた・・・。
「・・・・・・きちんと頑張っているいたいね」
立っている場所から10メートルくらい先、そこに立っていた者は彼女の声に気付いて振り向く。
「咲夜さん、どうしたのですか?」
「貴女が仕事をサボっていないか見に来たのよ」
「酷いですよ~、こうやってきちんと門番しているじゃないですか~」
門番・・・というのは紅白や黒いのを通す者の事かしら、と言おうと思ったが
この雨の中でも頑張っている彼女に言うのは少し・・・気が引けたのだろうか、頭の中の言葉をすり替える。
「・・・まぁ、風邪だけはひかないようにね」
「咲夜さん、心配してくれるのですか?」
「別に・・・一応門番なのだから風邪ひいて倒れている所に侵入者でも来たら通り放題になっちゃうし」
「大丈夫ですよ、風邪ひくなんてそんな初歩のミスはしませんって」
まぁ、頭の中が春のようなものなら大丈夫だろう、そう思いながら軽く手を振って美鈴に背を向けた。
・・・黒い空から幾度となく降り注ぐ雨の中、彼女は足を止め近くの花壇に目を向けた。
「門番しながら、花壇の手入れもしていたよね、確か」
紅魔館の花の世話は美鈴の役割である、日頃見慣れている花とはいえ
このような雫で潤っている花を見る機会は滅多に無い故か、目を奪われていた。
「・・・・・・綺麗なものよねぇ、特にこの紅い・・・・・・」
・・・・・・・・・トクン・・・
「・・・・・・?」
目の前にある赤い花・・・赤い・・・紅い・・・
「・・・あれ?」
・・・・・・・・・・・・トクン・・・
身体の中に何か・・・別の何かがいるような異様な感覚。
「・・・・・・あ・・・」
目の前の赤い花・・・その色がじわり、じわり・・・と広がり他の色の花を侵食していく。
トクン・・・・・・トクン・・・・・・
「あ・・・あぁ・・・」
どんどん赤く、赤くなっていく。
花も地面も壁も館も空も世界も
「・・・・・・・・・身体が・・・・・・」
視界全てが紅に染まり、思考が正常に働かない・・・
身体はまるで熱で惚けたように熱い、今ここにいる自分が『十六夜 咲夜』で無いような感覚。
・・・・・・・・・ドシャッ
雨が降り注ぐ中、彼女は・・・・・・・・・・・・花に包まれるように倒れた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・うなの、具合いは」
「風邪・・・というには妙なのよね。 熱はあるにはあるけど・・・それよりも・・・・・・」
・・・・・・話声が聞こえる。
「咲夜自身に妙な魔力を感じるのよ」
「妙・・・何よそれ?」
・・・・・・・・・お嬢様、それにパチュリー様の声・・・
「あ、気付いたみたい」
ゆっくりと開いた目には落ち着いた表情で自分を見ている二人の人影が写る。
紅魔館にあるヴアル魔法図書館にいる魔女パチュリー・ノーレッジ、
そしてこの館の主、自分自身が全てを持って護るべき存在・・・レミリア・スカーレット。
「咲夜・・・具合いはどう?」
「お嬢・・・・・・様?」
「中国が『咲夜さんが倒れていた』と大騒ぎして駆けつけてきたから驚いたわよ」
つまり・・・あの雨の中、花に見とれていたら意識を失っていて
その後メイド達が意識を失っている自分の着替えや手当てを行っており、
心配して傍から離れようとしない美鈴を引き剥がす方が相当手が掛かった・・・らしい。
「・・・・・・! それじゃ、今は・・・」
「もう夜よ、食事も紅茶の時間も他のメイド達が全て行ってくれたから」
「申し訳ありません・・・」
人に風邪ひくなと言いながら自分自身がこのような失態を見せてしまった事に言葉が重くなる。
「まぁ、日頃多忙だったからね咲夜は」
「そうね・・・咲夜、今日はゆっくりと休みなさい。 明日体調次第で医者に診て貰う事も考えておくから」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「心配しなくていいからさっさと寝なさい、レミィだって咲夜が目を覚まさない間ね・・・」
「ちょ・・・パチェ! そ、それは言わなくていい! とにかく、早く体調を良くする事に努めなさい!!」
そっぽを向いて足早に去る主の後を苦笑しながらパチュリーが部屋を出て扉を閉める。
パタン、という無機質な音と共に部屋は静寂へと還る。
部屋から立ち去る前にパチュリーが言いたかったのは美鈴以上に自分を主が心配していた・・・という事なのだろう。
「・・・ありがとうございます、お嬢様」
無意識に笑みが零れ、目を自分の手の平へと移す。
「それにしても・・・・・・あれは一体・・・?」
体調を崩すという事は一切無い・・・とは言えないが、今までに無い感じ。
突然目の前が赤く染まっていく、何というか・・・何か得体の知れないものがいるような感覚。
意識を失う瞬間・・・・・・・・・
「まぁ、今考えてもわからないわよね」
身体を休ませ、眠りにつくことにしよう。
明日までに体調を戻していつもどおりお嬢様やパチュリー様のお世話をして、それから・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
どれくらい眠っていたのだろうか。
暗い部屋の中に木霊する時計の針の音は正確なリズムで時を刻む。
仰向けにしていた身体を起こし、背伸ばしをした・・・・・・時、自分の様子、周りの様子がおかしい事に気付いた。
「・・・なんで・・・?」
眠るときは軽いものを身にまとって寝ていたはずなのに、いつもの従者としての服装になっていた。
それに部屋の中に響く時計の音以外、不気味なくらいに静かすぎる。
外は雨が降っているはずなのに雨音一つも聞えない、虫の音も蛙の鳴き声も、何もかも遮断されたかのように・・・。
・・・・・・カチャ
手に銀のナイフを忍ばせ、部屋を出る。
やはり何処かおかしい、自分以外の誰もいないような世界が今ここにあるような感覚、
夜中の紅魔館は確かに静かだと思うがいくらなんでもこの静寂さは異常さを感じる。
・・・タッタッタッタ・・・・・・
「・・・・・・・・・?」
今、軽快な足音が聞えた気がした。
そう思い、足は音が聞えた方へと向き身体はそれに従い足早に向かう。
通路を曲がった先をよく見ると薄暗い為はっきりと見えないが確かに誰かがいる気がする。
タッタッタッタッタ・・・・・・・・・
またもや軽快な足音は暗闇の中へと溶け込んでいく。
「待ちなさい!」
足音の主の追いつこうと声を発しながら通路を走る。
しかし、いくら走っても追いつく気配はしない、しかし距離が開くわけでも無く常に同じ間隔でいる状況。
タッタッタッタ・・・・・・・・・バタン
足音が消え、上の方で扉が閉まるような音が通路に響く。
視線は音の方・・・・・・時計台への階段に自然と向いていた。
この先は紅魔館に聳え立つ時計台への扉があるのみ、
「・・・・・・・・・・・・」
扉の前に立ち、そのノブへと手をかける。
・・・・・・トクン・・・
こみ上げてくる不安な気分、理由はわからない。
だからこそこみ上げてくる感覚である・・・そう考える。
・・・・・・・・・・・・ギィ・・・・・・
扉を開き、目にしたものは
ある筈の雨雲無き大きな漆黒の空、
その黒い夜空に浮かぶ大きな満月、
それは世界の全てを紅く染め上げるかのような朱月のよう…
その下に自分自身を待ち構えているかのようにいる・・・・・・
自分自身の姿だった。
「・・・呼びに行こうと思ったけど、手間が省けたわ」
ワタシが私に言い放つ、無言のまま私は目の前のワタシへと近づく。
バタン!!
背後の扉が勢いよく閉じられる、その刹那、身体がビクンと跳ね上がるような感覚に襲われる。
「別に驚くことは無いわ、誰にも邪魔されたくないだけ」
「・・・・・・貴女は・・・誰?」
右手に忍ばせていたナイフを持ち構えながら言葉を発する。
「誰・・・って、誰も何もワタシは私よ、十六夜 咲夜」
「十六夜 咲夜は私、貴女は違う」
手に持つナイフの本数が2本・・・3本と増える。
「違わないわよ、だって・・・私は生を受けた瞬間から『十六夜 咲夜』だったから」
「・・・・・・そう、だったら・・・」
シャッ・・・と何かを滑らせるような音と同時に私は両手に複数のナイフを持ち、構える。
「貴女の『十六夜 咲夜』である生を終わらせるだけよ!」
「・・・・・・そう、やってみれば?」
目の前のワタシは口元を緩ませ、自分と同じようにナイフを持ち私へと飛び掛ってきた。
・・・・・・・・・・・
紅い満月の下、幾数もの銀の軌跡が夜を裂く。
片方は青い柄のナイフが、片方は赤い柄のナイフが空を裂き、時折空間で留まる。
冷たい夜空に響く金属音と無機質な石畳に散る紅い鮮血が状況を物語っているようでもあった。
(・・・・・・本当に私自身みたい、やる事もほとんど・・・いや全く同じだなんて)
「まだ手は残しているんでしょ? やってみれば・・・」
「・・・そうね、いい加減貴女と踊るのも飽きてきたわ」
瞬時、空間にナイフを舞わせ・・・それは獲物を見つけた獰猛な生き物のようにワタシに襲い掛かる。
「殺人ドールねぇ・・・」
しかし、そのナイフは全て紙一重でワタシ自身は避け、足元に潜り込み私を見上げる。
「! しまっ・・・・・・」
「チェックメイトね、インスクライブレッドソウル!」
無数の蒼い斬撃とその軌跡が一斉に私に向かってくるのに対し、私は成す術も無くその身に受ける。
身に纏っている服が皮膚が裂かれ、冷たい夜空に血が霧のように舞っているように見えた。
・・・・・・ドシャッ
石畳の上に叩きつけられ、眼前にはワタシが血まみれの私自身を見下すように笑みを浮かべていた。
「あんな軽い挑発に乗った挙句、堂々と前振り見せて殺人ドールを放つなんて・・・どうかしているわよ、貴女」
「・・・・・・くっ・・・」
ワタシが持つ右手のナイフがゆっくりと私の胸に降りてくる。
「まぁ、手間が省けたわ。 これで・・・ワタシ自身が表に出られるというものね」
「・・・どういう・・・・・・こと」
・・・・・・ズッ
「・・・・・・!!」
私の言葉が発する前にナイフは私の胸へと突き刺さる。
思わず目を見開き、喉の奥から声が悲鳴が上がりそうになる、想像を絶する痛みが身体を瞬時に支配した。
「まぁ、貴女はそうやって沈んでしまいなさい。 すぐに愛しい主も仲がいいお友達もそこに送ってあげるから」
・・・・・・・・・主・・・レミリア・・・様・・・
自分の守るべき、何があっても守るべき存在。
周りから忌まわしいと拒絶されてきた力と自分自身を受け入れてくれた存在、
そんな自分と素直に接してくれる人達・・・・・・。
その大切な存在に今の私と同じような目に遭わせる・・・と言っているのか・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・ふざけるな・・・!
その時・・・
目の前の全てが紅くなる、
その瞬間、私の中で何かが壊れた。
目の前にいるワタシ・・・・・・十六夜 咲夜であってそうでない存在。
貴女は・・・・・・
絶対・・・許さない・・・・・・!
ドッ!
無意識の内に私は左手にナイフを持ち、勝ち誇っていたワタシの腹に深く突き立てた。
突然の出来事に驚き、呻き声を上げ、ワタシはその場から飛びのいた・・・いや、飛びのこうとした。
「貴女の時間も私のもの・・・逃がさない!」
仰向けに組み倒されていた自分自身を跳ね上がるように起き上がらせ、後ろに飛びのいている自分と密着する。
両手にナイフ、自分の血なのか、目の前の自分の血なのかわからない・・・が、
やる事は一つ、
空に浮かぶ大きな紅い月のように・・・・・・
今、目の前の全て染め上げているようなこの紅い世界のように・・・・・・
「紅く染まって・・・・・・消えろ!!」
もう自分自身でも抑えきれないくらい、暴走している自分自身が目の前のワタシを切り裂いている。
幾数の軌跡は血のように紅く、ワタシが、床が、空が、何もかも赤く染め上げられ・・・・・・
ワタシは無数の斬撃を受け、その場で立ち尽くしていた。
「・・・・・・・・・っ・・・!」
火照ったような感覚が薄れると同時に胸の痛みが閃光のように走る。
純白の服は真っ赤になり、目の前の景色がぼんやりと見える・・・・・・。
その場に膝を着き、身体が倒れないように意識を保たせていた私は・・・・・・
目の前に立っているワタシの姿を見て・・・・・・言葉を失った。
「・・・・・・・・・申し訳ありません・・・お嬢・・・様・・・」
流石にこれ以上力も使えそうに無い、今度こそ本当のチェックメイト・・・と思った。
「・・・何よ、あの紅白の巫女や黒白の魔法使いに負けて丸くなったと思ってたけど・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
その後、ワタシが何か言ったような気がした・・・・・・
ブラックアウトしていく感覚の中、自分の頬に両手が添えられ・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・んんっ!!」
自分自身の唇をワタシ自身の唇が塞ぎ、急に意識が戻り始めたのを感じ目を見開いた。
思わず唇を離し、目の前のワタシを押し退けて背後へと後ずさりする。
「あらあら、驚かせたみたいね・・・大丈夫、怖いことなんて一切していないから」
「・・・・・・・・・」
そして、しばしの静寂・・・打ち破ったのは目の前のワタシの言葉、
「さて・・・眠る時間が来たみたいね」
それを合図に目の前にいるワタシが急に霧のように薄れ、黒い空間に溶け込むように消えていく。
「ちょっと・・・待ちなさい!」
私自身の声は何者にも受け入れられず、ワタシは虚空へと消え去り何事も無かったかのように・・・静寂へと還った。
時計台へと目を向ける、それと同時に時刻は丁度0時を指した。
・・・ゴッ
鈍い音と共に・・・・・・世界が黒く染まった。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
水無月の二十
「・・・・・・・・・さん・・・」
・・・誰かが呼んでいる。
「・・・咲夜さん・・・・・・」
聞き覚えのある女の声・・・
「咲夜さん!」
ゆっくりと目を開いた私は自分の手を握って何度も自分の名前を叫んでいるその存在に気付いた。
「・・・美・・・・・・鈴・・・?」
「良かった・・・咲夜さん、ずっとうなされていたから心配していたんですよ」
「・・・・・・・・・・・・」
えっと・・・私が倒れて、起きたら様子がおかしくて・・・それから・・・・・・・・
・・・・・・・・・あれ?
それから・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・覚えて・・・ない?
「はい、咲夜さん」
悩んでいる私の思考を遮るように美鈴は着替えを差し出してきた。
「寝汗をかいていたらいけないと思って用意してきました」
「あ・・・ありがとう」
たしかに汗をかいていたらしく、身にまとっていた服はじっとりと濡れていた。
美鈴から着替えを受け取り、早速着替えることにした。
汗ばんだ服を脱ぎ、身体を拭き、着替えをすませ、私は一息ついて今一度考え・・・傍にいる美鈴に声をかけた。
「私・・・ずっとここに寝ていたよね?」
「ええ、私が門番の時間を終わって部屋に来た時、咲夜さんは寝てましたよ」
「・・・・・・そう」
「それが、どうかしたのですか?」
「いや・・・・・・多分何か悪い夢でも見ていただけ」
そう・・・何か悪い夢でも見ていたのだろう、そう言い聞かせながらいつものように身だしなみを整え
姿見用の大きな鏡の前で確認をしていた。
「・・・もう大丈夫なのですか?」
「そうね・・・もう大丈夫よ」
昨日の身体の不調っぷりが嘘のように今は充実している。
私達は部屋から出て通路を歩き、やがて美鈴は自分の部屋へと向かう為途中で別れる事となった。
・・・・・・・・・・・・・・・
それからはいつもの日常が戻っていた。
お嬢様の傍に仕え、パチュリー様の本の整理や話相手、美鈴とのやりとり・・・
他に上げるとキリが無いが、どれもこれも紛れも無く・・・・・・幸せを感じる日常。
「幸せを感じる日常・・・か」
・・・そういえば、少し前にこんな話を聞いた。
人は退屈だと思うと更に幸せになろうとする、でも本当の幸せは先にではなく常にそこにあるものである。
・・・・・・確かそんな感じだったような気がする。
そんな幸せに満ちた一日も終わりを向かえ、部屋へと戻って従者の姿から素の姿へと変えていた自分の前に・・・
姿見に映ったもう一人の自分・・・・・・紅い目をした自分が囁いた。
『十六夜 咲夜、貴女自身は今・・・幸せ?』
突発的な出来事に驚きつつ、しかし落ち着いた心境で私は口を開く。
「・・・ええ、とっても・・・・・・」
『そう・・・』と言い残し、ワタシは私へと戻る、姿見に映るはいつもの蒼い目をした私自身。
そこにいたのは私であって私でない存在、身近でとっても遠い・・・自分自身。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・思い出した
あの時、私の中にいる私が目を覚ました。
あの時、私の中にいる私が表に出ようとした。
あの時、私が拒絶しようとした自分自身と一つになった。
・・・彼女は私自身、
・・・同じ魂を持つ・・・同一規格の存在、
お互いがお互いを支えあい、時折競い合う・・・死を迎えるまで共にいる存在、
永遠に完成すること無き・・・一つの彫刻のように・・・・・・。
私はそれに名づける事にした・・・・・・
『傷魂、ソウルスカルプチュア』・・・・・・と
END
幻想郷に居座っていた永い冬は過ぎ去り、訪れた春もまた立ち去ろうとしてた時期
大きな湖の上にある紅い館…紅魔館
喧騒や平穏…全ての物事と無縁な巨大な閉鎖空間に存在する一人の従者がいた。
名は十六夜 咲夜。
人でありながら身に宿るチカラを恐れる人や妖多き者。
・・・・・・この話はその従者の身に起きた一つの些細で、大きな物語。
傷魂『ソウルスカルプチュア』
水無月の一九
「・・・・・・今日も雨・・・」
幻想郷に訪れたのは永い冬から解放された春・・・では無く、梅雨の時期。
彼女は軽いため息をつき外を眺めていた。
梅雨入り前に買い込みは全て済ませていたのは幸いだったが、
さすがに何日も同じように雨を見ているのも『飽き』がくるという事なのだろう。
「美鈴は雨の中でもきちんと仕事(門番)をしているのかしら?」
心配半分、仕事上の監視という意味半分を足して壱という事で彼女は足を外へと向けた・・・。
「・・・・・・きちんと頑張っているいたいね」
立っている場所から10メートルくらい先、そこに立っていた者は彼女の声に気付いて振り向く。
「咲夜さん、どうしたのですか?」
「貴女が仕事をサボっていないか見に来たのよ」
「酷いですよ~、こうやってきちんと門番しているじゃないですか~」
門番・・・というのは紅白や黒いのを通す者の事かしら、と言おうと思ったが
この雨の中でも頑張っている彼女に言うのは少し・・・気が引けたのだろうか、頭の中の言葉をすり替える。
「・・・まぁ、風邪だけはひかないようにね」
「咲夜さん、心配してくれるのですか?」
「別に・・・一応門番なのだから風邪ひいて倒れている所に侵入者でも来たら通り放題になっちゃうし」
「大丈夫ですよ、風邪ひくなんてそんな初歩のミスはしませんって」
まぁ、頭の中が春のようなものなら大丈夫だろう、そう思いながら軽く手を振って美鈴に背を向けた。
・・・黒い空から幾度となく降り注ぐ雨の中、彼女は足を止め近くの花壇に目を向けた。
「門番しながら、花壇の手入れもしていたよね、確か」
紅魔館の花の世話は美鈴の役割である、日頃見慣れている花とはいえ
このような雫で潤っている花を見る機会は滅多に無い故か、目を奪われていた。
「・・・・・・綺麗なものよねぇ、特にこの紅い・・・・・・」
・・・・・・・・・トクン・・・
「・・・・・・?」
目の前にある赤い花・・・赤い・・・紅い・・・
「・・・あれ?」
・・・・・・・・・・・・トクン・・・
身体の中に何か・・・別の何かがいるような異様な感覚。
「・・・・・・あ・・・」
目の前の赤い花・・・その色がじわり、じわり・・・と広がり他の色の花を侵食していく。
トクン・・・・・・トクン・・・・・・
「あ・・・あぁ・・・」
どんどん赤く、赤くなっていく。
花も地面も壁も館も空も世界も
「・・・・・・・・・身体が・・・・・・」
視界全てが紅に染まり、思考が正常に働かない・・・
身体はまるで熱で惚けたように熱い、今ここにいる自分が『十六夜 咲夜』で無いような感覚。
・・・・・・・・・ドシャッ
雨が降り注ぐ中、彼女は・・・・・・・・・・・・花に包まれるように倒れた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・うなの、具合いは」
「風邪・・・というには妙なのよね。 熱はあるにはあるけど・・・それよりも・・・・・・」
・・・・・・話声が聞こえる。
「咲夜自身に妙な魔力を感じるのよ」
「妙・・・何よそれ?」
・・・・・・・・・お嬢様、それにパチュリー様の声・・・
「あ、気付いたみたい」
ゆっくりと開いた目には落ち着いた表情で自分を見ている二人の人影が写る。
紅魔館にあるヴアル魔法図書館にいる魔女パチュリー・ノーレッジ、
そしてこの館の主、自分自身が全てを持って護るべき存在・・・レミリア・スカーレット。
「咲夜・・・具合いはどう?」
「お嬢・・・・・・様?」
「中国が『咲夜さんが倒れていた』と大騒ぎして駆けつけてきたから驚いたわよ」
つまり・・・あの雨の中、花に見とれていたら意識を失っていて
その後メイド達が意識を失っている自分の着替えや手当てを行っており、
心配して傍から離れようとしない美鈴を引き剥がす方が相当手が掛かった・・・らしい。
「・・・・・・! それじゃ、今は・・・」
「もう夜よ、食事も紅茶の時間も他のメイド達が全て行ってくれたから」
「申し訳ありません・・・」
人に風邪ひくなと言いながら自分自身がこのような失態を見せてしまった事に言葉が重くなる。
「まぁ、日頃多忙だったからね咲夜は」
「そうね・・・咲夜、今日はゆっくりと休みなさい。 明日体調次第で医者に診て貰う事も考えておくから」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「心配しなくていいからさっさと寝なさい、レミィだって咲夜が目を覚まさない間ね・・・」
「ちょ・・・パチェ! そ、それは言わなくていい! とにかく、早く体調を良くする事に努めなさい!!」
そっぽを向いて足早に去る主の後を苦笑しながらパチュリーが部屋を出て扉を閉める。
パタン、という無機質な音と共に部屋は静寂へと還る。
部屋から立ち去る前にパチュリーが言いたかったのは美鈴以上に自分を主が心配していた・・・という事なのだろう。
「・・・ありがとうございます、お嬢様」
無意識に笑みが零れ、目を自分の手の平へと移す。
「それにしても・・・・・・あれは一体・・・?」
体調を崩すという事は一切無い・・・とは言えないが、今までに無い感じ。
突然目の前が赤く染まっていく、何というか・・・何か得体の知れないものがいるような感覚。
意識を失う瞬間・・・・・・・・・
「まぁ、今考えてもわからないわよね」
身体を休ませ、眠りにつくことにしよう。
明日までに体調を戻していつもどおりお嬢様やパチュリー様のお世話をして、それから・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
どれくらい眠っていたのだろうか。
暗い部屋の中に木霊する時計の針の音は正確なリズムで時を刻む。
仰向けにしていた身体を起こし、背伸ばしをした・・・・・・時、自分の様子、周りの様子がおかしい事に気付いた。
「・・・なんで・・・?」
眠るときは軽いものを身にまとって寝ていたはずなのに、いつもの従者としての服装になっていた。
それに部屋の中に響く時計の音以外、不気味なくらいに静かすぎる。
外は雨が降っているはずなのに雨音一つも聞えない、虫の音も蛙の鳴き声も、何もかも遮断されたかのように・・・。
・・・・・・カチャ
手に銀のナイフを忍ばせ、部屋を出る。
やはり何処かおかしい、自分以外の誰もいないような世界が今ここにあるような感覚、
夜中の紅魔館は確かに静かだと思うがいくらなんでもこの静寂さは異常さを感じる。
・・・タッタッタッタ・・・・・・
「・・・・・・・・・?」
今、軽快な足音が聞えた気がした。
そう思い、足は音が聞えた方へと向き身体はそれに従い足早に向かう。
通路を曲がった先をよく見ると薄暗い為はっきりと見えないが確かに誰かがいる気がする。
タッタッタッタッタ・・・・・・・・・
またもや軽快な足音は暗闇の中へと溶け込んでいく。
「待ちなさい!」
足音の主の追いつこうと声を発しながら通路を走る。
しかし、いくら走っても追いつく気配はしない、しかし距離が開くわけでも無く常に同じ間隔でいる状況。
タッタッタッタ・・・・・・・・・バタン
足音が消え、上の方で扉が閉まるような音が通路に響く。
視線は音の方・・・・・・時計台への階段に自然と向いていた。
この先は紅魔館に聳え立つ時計台への扉があるのみ、
「・・・・・・・・・・・・」
扉の前に立ち、そのノブへと手をかける。
・・・・・・トクン・・・
こみ上げてくる不安な気分、理由はわからない。
だからこそこみ上げてくる感覚である・・・そう考える。
・・・・・・・・・・・・ギィ・・・・・・
扉を開き、目にしたものは
ある筈の雨雲無き大きな漆黒の空、
その黒い夜空に浮かぶ大きな満月、
それは世界の全てを紅く染め上げるかのような朱月のよう…
その下に自分自身を待ち構えているかのようにいる・・・・・・
自分自身の姿だった。
「・・・呼びに行こうと思ったけど、手間が省けたわ」
ワタシが私に言い放つ、無言のまま私は目の前のワタシへと近づく。
バタン!!
背後の扉が勢いよく閉じられる、その刹那、身体がビクンと跳ね上がるような感覚に襲われる。
「別に驚くことは無いわ、誰にも邪魔されたくないだけ」
「・・・・・・貴女は・・・誰?」
右手に忍ばせていたナイフを持ち構えながら言葉を発する。
「誰・・・って、誰も何もワタシは私よ、十六夜 咲夜」
「十六夜 咲夜は私、貴女は違う」
手に持つナイフの本数が2本・・・3本と増える。
「違わないわよ、だって・・・私は生を受けた瞬間から『十六夜 咲夜』だったから」
「・・・・・・そう、だったら・・・」
シャッ・・・と何かを滑らせるような音と同時に私は両手に複数のナイフを持ち、構える。
「貴女の『十六夜 咲夜』である生を終わらせるだけよ!」
「・・・・・・そう、やってみれば?」
目の前のワタシは口元を緩ませ、自分と同じようにナイフを持ち私へと飛び掛ってきた。
・・・・・・・・・・・
紅い満月の下、幾数もの銀の軌跡が夜を裂く。
片方は青い柄のナイフが、片方は赤い柄のナイフが空を裂き、時折空間で留まる。
冷たい夜空に響く金属音と無機質な石畳に散る紅い鮮血が状況を物語っているようでもあった。
(・・・・・・本当に私自身みたい、やる事もほとんど・・・いや全く同じだなんて)
「まだ手は残しているんでしょ? やってみれば・・・」
「・・・そうね、いい加減貴女と踊るのも飽きてきたわ」
瞬時、空間にナイフを舞わせ・・・それは獲物を見つけた獰猛な生き物のようにワタシに襲い掛かる。
「殺人ドールねぇ・・・」
しかし、そのナイフは全て紙一重でワタシ自身は避け、足元に潜り込み私を見上げる。
「! しまっ・・・・・・」
「チェックメイトね、インスクライブレッドソウル!」
無数の蒼い斬撃とその軌跡が一斉に私に向かってくるのに対し、私は成す術も無くその身に受ける。
身に纏っている服が皮膚が裂かれ、冷たい夜空に血が霧のように舞っているように見えた。
・・・・・・ドシャッ
石畳の上に叩きつけられ、眼前にはワタシが血まみれの私自身を見下すように笑みを浮かべていた。
「あんな軽い挑発に乗った挙句、堂々と前振り見せて殺人ドールを放つなんて・・・どうかしているわよ、貴女」
「・・・・・・くっ・・・」
ワタシが持つ右手のナイフがゆっくりと私の胸に降りてくる。
「まぁ、手間が省けたわ。 これで・・・ワタシ自身が表に出られるというものね」
「・・・どういう・・・・・・こと」
・・・・・・ズッ
「・・・・・・!!」
私の言葉が発する前にナイフは私の胸へと突き刺さる。
思わず目を見開き、喉の奥から声が悲鳴が上がりそうになる、想像を絶する痛みが身体を瞬時に支配した。
「まぁ、貴女はそうやって沈んでしまいなさい。 すぐに愛しい主も仲がいいお友達もそこに送ってあげるから」
・・・・・・・・・主・・・レミリア・・・様・・・
自分の守るべき、何があっても守るべき存在。
周りから忌まわしいと拒絶されてきた力と自分自身を受け入れてくれた存在、
そんな自分と素直に接してくれる人達・・・・・・。
その大切な存在に今の私と同じような目に遭わせる・・・と言っているのか・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・ふざけるな・・・!
その時・・・
目の前の全てが紅くなる、
その瞬間、私の中で何かが壊れた。
目の前にいるワタシ・・・・・・十六夜 咲夜であってそうでない存在。
貴女は・・・・・・
絶対・・・許さない・・・・・・!
ドッ!
無意識の内に私は左手にナイフを持ち、勝ち誇っていたワタシの腹に深く突き立てた。
突然の出来事に驚き、呻き声を上げ、ワタシはその場から飛びのいた・・・いや、飛びのこうとした。
「貴女の時間も私のもの・・・逃がさない!」
仰向けに組み倒されていた自分自身を跳ね上がるように起き上がらせ、後ろに飛びのいている自分と密着する。
両手にナイフ、自分の血なのか、目の前の自分の血なのかわからない・・・が、
やる事は一つ、
空に浮かぶ大きな紅い月のように・・・・・・
今、目の前の全て染め上げているようなこの紅い世界のように・・・・・・
「紅く染まって・・・・・・消えろ!!」
もう自分自身でも抑えきれないくらい、暴走している自分自身が目の前のワタシを切り裂いている。
幾数の軌跡は血のように紅く、ワタシが、床が、空が、何もかも赤く染め上げられ・・・・・・
ワタシは無数の斬撃を受け、その場で立ち尽くしていた。
「・・・・・・・・・っ・・・!」
火照ったような感覚が薄れると同時に胸の痛みが閃光のように走る。
純白の服は真っ赤になり、目の前の景色がぼんやりと見える・・・・・・。
その場に膝を着き、身体が倒れないように意識を保たせていた私は・・・・・・
目の前に立っているワタシの姿を見て・・・・・・言葉を失った。
「・・・・・・・・・申し訳ありません・・・お嬢・・・様・・・」
流石にこれ以上力も使えそうに無い、今度こそ本当のチェックメイト・・・と思った。
「・・・何よ、あの紅白の巫女や黒白の魔法使いに負けて丸くなったと思ってたけど・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
その後、ワタシが何か言ったような気がした・・・・・・
ブラックアウトしていく感覚の中、自分の頬に両手が添えられ・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・んんっ!!」
自分自身の唇をワタシ自身の唇が塞ぎ、急に意識が戻り始めたのを感じ目を見開いた。
思わず唇を離し、目の前のワタシを押し退けて背後へと後ずさりする。
「あらあら、驚かせたみたいね・・・大丈夫、怖いことなんて一切していないから」
「・・・・・・・・・」
そして、しばしの静寂・・・打ち破ったのは目の前のワタシの言葉、
「さて・・・眠る時間が来たみたいね」
それを合図に目の前にいるワタシが急に霧のように薄れ、黒い空間に溶け込むように消えていく。
「ちょっと・・・待ちなさい!」
私自身の声は何者にも受け入れられず、ワタシは虚空へと消え去り何事も無かったかのように・・・静寂へと還った。
時計台へと目を向ける、それと同時に時刻は丁度0時を指した。
・・・ゴッ
鈍い音と共に・・・・・・世界が黒く染まった。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
水無月の二十
「・・・・・・・・・さん・・・」
・・・誰かが呼んでいる。
「・・・咲夜さん・・・・・・」
聞き覚えのある女の声・・・
「咲夜さん!」
ゆっくりと目を開いた私は自分の手を握って何度も自分の名前を叫んでいるその存在に気付いた。
「・・・美・・・・・・鈴・・・?」
「良かった・・・咲夜さん、ずっとうなされていたから心配していたんですよ」
「・・・・・・・・・・・・」
えっと・・・私が倒れて、起きたら様子がおかしくて・・・それから・・・・・・・・
・・・・・・・・・あれ?
それから・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・覚えて・・・ない?
「はい、咲夜さん」
悩んでいる私の思考を遮るように美鈴は着替えを差し出してきた。
「寝汗をかいていたらいけないと思って用意してきました」
「あ・・・ありがとう」
たしかに汗をかいていたらしく、身にまとっていた服はじっとりと濡れていた。
美鈴から着替えを受け取り、早速着替えることにした。
汗ばんだ服を脱ぎ、身体を拭き、着替えをすませ、私は一息ついて今一度考え・・・傍にいる美鈴に声をかけた。
「私・・・ずっとここに寝ていたよね?」
「ええ、私が門番の時間を終わって部屋に来た時、咲夜さんは寝てましたよ」
「・・・・・・そう」
「それが、どうかしたのですか?」
「いや・・・・・・多分何か悪い夢でも見ていただけ」
そう・・・何か悪い夢でも見ていたのだろう、そう言い聞かせながらいつものように身だしなみを整え
姿見用の大きな鏡の前で確認をしていた。
「・・・もう大丈夫なのですか?」
「そうね・・・もう大丈夫よ」
昨日の身体の不調っぷりが嘘のように今は充実している。
私達は部屋から出て通路を歩き、やがて美鈴は自分の部屋へと向かう為途中で別れる事となった。
・・・・・・・・・・・・・・・
それからはいつもの日常が戻っていた。
お嬢様の傍に仕え、パチュリー様の本の整理や話相手、美鈴とのやりとり・・・
他に上げるとキリが無いが、どれもこれも紛れも無く・・・・・・幸せを感じる日常。
「幸せを感じる日常・・・か」
・・・そういえば、少し前にこんな話を聞いた。
人は退屈だと思うと更に幸せになろうとする、でも本当の幸せは先にではなく常にそこにあるものである。
・・・・・・確かそんな感じだったような気がする。
そんな幸せに満ちた一日も終わりを向かえ、部屋へと戻って従者の姿から素の姿へと変えていた自分の前に・・・
姿見に映ったもう一人の自分・・・・・・紅い目をした自分が囁いた。
『十六夜 咲夜、貴女自身は今・・・幸せ?』
突発的な出来事に驚きつつ、しかし落ち着いた心境で私は口を開く。
「・・・ええ、とっても・・・・・・」
『そう・・・』と言い残し、ワタシは私へと戻る、姿見に映るはいつもの蒼い目をした私自身。
そこにいたのは私であって私でない存在、身近でとっても遠い・・・自分自身。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・思い出した
あの時、私の中にいる私が目を覚ました。
あの時、私の中にいる私が表に出ようとした。
あの時、私が拒絶しようとした自分自身と一つになった。
・・・彼女は私自身、
・・・同じ魂を持つ・・・同一規格の存在、
お互いがお互いを支えあい、時折競い合う・・・死を迎えるまで共にいる存在、
永遠に完成すること無き・・・一つの彫刻のように・・・・・・。
私はそれに名づける事にした・・・・・・
『傷魂、ソウルスカルプチュア』・・・・・・と
END
ただ、なぜもう一人の咲夜が現れたのかという部分に疑問が残り、読者に想像の余地を残すにしてももう少しつっこんだ説明が欲しかったですね。
後、一人称視点なのか三人称視点なのか分からない場所があったので、どちらかに統一するか、明確な区分をひいてくれるとかなり分かりやすく、そして読みやすくなると思います。
これからも執筆がんばってくださいね。
ネタに目新しさが無ければ、文章の方はどうか、と言うと……どこか某月のイメージが……。
次回以降に期待します。