華やかな装飾に彩られた個室
その中央には優雅にティーを楽しむ少女が一人
ここ、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットである
その隣では一人のメイドが、とある用紙をすらすらと読み上げていた
その名は、家計簿
「お嬢様、紅魔館の今月の収支が赤字となりました」
それは突如の宣告
「・・・あ、赤字?」
「はい、赤字です」
メイド長の奇襲攻撃に、夜の王が揺らぐ
「・・・何故?」
「原因をお聞きになられますか?」
「さっさと言いなさい」
「よろしいのですね?」
「もったいぶらずにさっさと!」
力を振り絞って威厳のある声を出す紅い悪魔
しかしその手はガクガクと振るえ、紅茶はすでにカップから全て零れ落ちている
「最近増えた支出、つまり赤字の原因ですが、毎日破壊される門の修繕費用
妹様の最近の活発化による館の修繕費用、そしてそれ以上の割合を占めるのが・・・」
「占めるのが・・・?」
「お嬢様が永遠亭と張り合って行った事業が軒並み赤―」
― 必殺 ハートブレイク ―
「マトリックス避けっ!!」
「何だとっ!?」
「ふっ、うろたえたお嬢様の攻撃をかわすことなど箸で蚊を掴むよりもたやすいこと!」
「・・・というか、古い」
「はうっ!」
こんな日常風景こそ紅魔館クオリティ
それから数時間後、厳密には一時間後
大広間の円卓に、レミリア、フラン、咲夜、パチュリー、小悪魔と
紅魔館の顔とも言える者達が一堂に集っていた
そしてコンコンと響くノックの音
「入りなさい」
「紅美鈴、入ります」
扉が開き、一人の従者が姿を現す
その時ぷるんと揺れた胸に、一体その場にいる何人の者が精神的ダメージを食らった事だろうか
「それで、ご用件とは?」
「ひとまず、これを見なさい」
いつの間にか美鈴の横に移動していた咲夜が一枚の紙を手渡した
「えーと、赤字対策第五案、紅美鈴レンタル事業・・・・・・咲夜さん、れんたるってなんですか?」
「貸し出す事よ」
「ほえー、そうですか・・・・・・ええっ!?」
驚きの表情で咲夜を見る美鈴
しかし咲夜はその時に揺れた胸をじーっと見つめていた
「かかか、貸し出すってどういうことですか!?」
「貸し出すという事よ」
「そうじゃないです! なんで私が貸し出されるんですか!?」
「門の修理費、塀の修理費、館の入り口の修理費、そして紅魔館の赤字・・・」
「うぅ!?」
咲夜の口から発せられた言葉についたじろぐ美鈴
横目で他の者達を確認すれば、皆厳しい目で彼女を睨んでいる
「赤字の原因者は他にもいるけど・・・その中で一番立場が下なのはあなたなのよ、美鈴」
「はううっ!」
逆に咲夜が横目で他の者達を確認すれば、レミリアとフランがどこか遠い所を見つめていた
「つまり、貴女が責任もって赤字を解消する事、いいわね?」
「は・・・はい・・・」
自分に抵抗する術無しと知ったのか、咲夜に促されてすごすごと椅子へ座る美鈴
こうして円卓の全ての席が埋まった
「それで、結局私は何をすればいいんでしょうか?」
「美鈴レンタル業・・・すなわち出張門番、といってもやる事は借主によって変わるでしょうね」
「・・・といっても問題は、借りる人がいるかどうかなのだけれど」
「うちの門番は役に立ちませんからね!」
「うう・・・ぐすん」
パチュリーと小悪魔の厳しい指摘に、美鈴ほろり
「というわけで美鈴、あなたにはこれから博麗神社に向かってもらうわ」
「博麗神社・・・にですか?」
美鈴が頭を捻った所で、いよいよレミリアが口を開いた
「まずは有力な妖怪達が集まる博麗神社であなた自身の宣伝をするの
ここで躓いたら誰もあなたを借りなくなるわ、しっかりやることね」
「は、はい!」
「もしこの事業が失敗すれば、紅魔館は終わりよ・・・あなたの肩に全てがかかっている事を覚悟なさい」
「ひぇぇ~・・・」
「さ、いくわよ美鈴」
「ええっ! 今からですか!?」
こうして紅美鈴レンタル事業は始まった
彼女達の前途はまだまだ見えず・・・。
「ところでパチェ、次の紅魔湖競艇事業についてなんだけど」
「どうせなら派手に賞金を倍にしましょう、倍に」
撤回、どうやら前途は多難なようだ
第一話 楽園の素敵な巫女
「というわけでこれから数日程度、美鈴をお願いするわ」
「よ、よろしくお願いします・・・」
「よろしく」
今日も縁側でお茶をすする巫女、なぜか物凄く不機嫌だ
「衣食住はチャイナ服以外借主負担、実験体にするのはなんであれ禁止、又貸し禁止、夜の営み禁止、
おさわりは自由だけど過度なのは禁止、他にはこの書類に色々書いてあるから、目を通しておいて」
「はいはい」
「うう、不安だ・・・」
「もし何かあれば私がカバーする事になっているから、頑張りなさい美鈴」
「ああ、行かないで咲夜さーん・・・」
そして後に残されたのは、美鈴と霊夢ただ二人のみ
「美鈴」
「はは、はいっ!」
「布団敷いて、二つね」
「あ・・・はい!」
ちなみに現在の時刻は十時、勿論夜である
そりゃ巫女が不機嫌なのも最もだ
月が沈み日が昇り、日光が部屋を明るく照らす
部屋のど真ん中では巫女が一人静かに就寝中
それも光によって少しずつ妨げられ、意識が段々と鮮明になる
「・・・眠い」
しかーし、布団という外壁を頭部にも装着する事によって
日光という攻撃をおよそ九割九分遮断! なんと恐るべき防御力か!
「霊夢ー、朝ごはんが出来ましたよー」
「・・・ごふぁんっ!?」
美鈴の声がかかった途端、内部からの一撃によって布団が膨れ上がる
そして布団のふくらみが崩壊し宙へと布団が舞う前に、左手を布団の隙間から出し
枕元にあった巫女服を布団の中へと引きずり込む、そして最大限に布団が膨らみ
十分なスペースが出来たと同時に寝巻きを放棄、瞬間にさらしを巻き変え、下着を履き替え
巫女服をその身に装着、布団の形が崩れて霊夢の姿が露わになった頃にはいつもの巫女がそこにいた
「そ、その技は伝説の・・・!」
「ごふぁーーーん!!」
「へもぁっ!」
美鈴を跳ね飛ばし、どたどたと廊下を駆けていく霊夢
勿論、いつの間にか畳まれていた敷布団の上に
三つ折の形でかけ布団がぽふりと落ちるのは言うまでも無い
「美鈴ー! はやくご飯もってきなさーい!」
「ふぁ、ふぁーい・・・」
涙目の美鈴に萌えながら朝食ターイム
「はい、朝食をお持ちしました」
「・・・な、何よこれ?」
「ほえ?」
ちゃぶ台の上にコトコトと置かれていく二人分の朝食
しかし巫女には見慣れない物だったのか、驚愕の表情が浮かびっぱなしである
「ご飯に味噌汁、鮭の塩焼きに冷奴、それと浅漬けですが・・・お気に召しませんでしたか?」
「・・・うう、こんなに立派な朝食なんて何時ぶりかしら・・・ぐすっ」
「ええっ! 泣くほどの事ですか!?」
「だってだって、いつもはご飯と山菜炒めだったり、ご飯と焼き味噌だったり・・・しくしく」
「・・・そういえば、私もコッペパンとバターだったり、フランスパンだったり・・・しくしく」
この日の神社には、久々に元気ないただきますの声が響いた
「あぐもぐふぐもぐ・・・ふまい・・・」
「ほふほふ・・・日本食もいいですねー」
「ふぉころでふぇいりん」
「なんですか?」
「・・・もぐもぐ・・・ごくり・・・この食材どこから調達してきたの?」
「咲夜さんが宣伝する前に追い出されちゃ敵わないって、ある程度の宣伝費(食料)を支給してくれました」
「さすがね」
さすがです
「なら気兼ねなく食べれるわね・・・もぐもぐ」
「そうですよ・・・ほむほむ」
そのまま何ヶ月ぶりかの美味しい朝食を済まし
縁側で仲良くお茶を飲みながら呆ける二人
そんな時、空の彼方から神社へと何かが高速で近づいてきていた
「霊夢ー! 生きてるかーー!」
「敵襲!?」
「こらこら、ここは紅魔館じゃないわよ」
「あ、そうでした」
いつもの癖で戦闘態勢を取った美鈴をなだめ
霊夢がとてとてと湯飲みを取りに行く
「今日も華麗なライディングといくぜ!」
「魔理沙ー、あんた紅魔館でも同じこと言ってなかったー?」
「おおっ! 美鈴!?」
「こんな早朝からあんたも元気・・・って、え?」
癖とは恐ろしい物である、例えどんなに周りの環境が違っていても
ついいつもと同じ事を行ってしまうのだから・・・
「今日もいくぜぇぇ! マスタァァァ! スッパーーーーーークゥゥゥ!!」
「ちょっと待ってー! ここ博麗神社ー!!」
美鈴の必死の叫びも届かず、無情にも放たれる極大の閃光
「(まずい、まずいわ、もし神社が崩壊する事になったら宣伝どころか逆効果!
そしたらお嬢様も咲夜さんも皆路頭に迷う事になって・・・ナイフ怖いよう!)」
この間、実に0.02秒
「やるしかない!」
迫り来る光の濁流に覚悟を決め、その軸足を地へと撃ち込む
その右腕は七色の光を纏い、全てをはじき返す絶対の盾へと昇華せん
「華! 彩極砲!!」
無理でした
「いやいやせめて少しぐらい食い止めるとか効果音の一つぐらいーーーー!!」
チュドーーーーン・・・・・・
「・・・よし! 好調好調絶好調! さーて、今日は何を貰って・・・・・・あっ」
吹き上がる魔力煙、巻き上がる粉塵
今ようやく彼女は気づく、ここが神社だという事に
「ひいいいまたお仕置きは嫌ですまたお仕置きは・・・あれ?」
「・・・魔ぁー理ぃー沙ぁー・・・」
「れれれ霊夢さん!?」
なぜか吹き飛んでいない自分に気づくと、目の前には強力な結界一つ
そして真後ろには、お仕置きモードの咲夜どころか切れた妹様よりも恐ろしい恐怖の権化がそこにいた
「やべっ! ここはひとまず退散だぜ!!」
「ケヒッ・・・ケヒヒヒヒッ!!」
「ひぃぃぃ! 霊夢様落ち着いてくださいませ!」
霊夢のあまりの化け物っぷりに、ついつい美鈴も様付けで呼ぶ
「美鈴!」
「ひゃいいっ!」
「これを着て境内の掃除をやっておきなさい、私が帰ってくるまでによ、いいわね?」
「イエスマム!!」
「いい返事ね、それじゃ・・・殺してくるわ」
その時の霊夢の顔は、冷酷で無慈悲な魔王のような顔だったと、後に美鈴は語った
「魔理沙・・・・・・こぉの人間がぁぁぁ!!」
「れ、霊夢、あなたも人間・・・ああもう見えないや、ははははは」
少ーし意味深な言葉を叫びながら爆音と共に飛び立った霊夢に、手首だけを返して突っ込みを入れる
恐らくあと数分後には・・・と魔理沙に同情しながら、続けて両手を合わせて南無と一言
「さてと、それじゃ掃除でもしますか・・・ああ、着替えなくちゃいけないんだっけ」
とりあえず自己精神防衛機能発動により深く考えない事にした美鈴は
霊夢から手渡された服とやらを広げてみる
「・・・わぁ! 巫女服だー!」
白い上衣に紅い袴、それは紛れもない巫女服、しかも普通の物だった
それから約一時間後、神社へと向かう一人の紅い女性
別にレミリアでも妹紅でもない、ただの霊夢である、白い部分は皆無だが理由はいうまでもない
「久々に骨を砕く感触を堪能したわ・・・ケヒヒ」
どこかの蓬莱人ですらぞっとしそうな言葉を発しながらの帰り道
その身から吹き出るどす黒いオーラは、確実にルーミアの心を射抜いていた
「こ、これがらぶなのかー!!」
「邪魔よ」
「私は何時までもあなたの事を思っているのかぁぁぁぁぁ・・・・・・」
ルーミア、実らぬ愛の入り口にて効果音も無しに撃沈
「早く美味しいお茶が飲みたいなと・・・あら?」
落ちていくルーミアを一瞥もせずに飛び続ける巫女
それから数分後、ようやく鳥居が見え始めた時、霊夢は神社に異変が起きている事に気づいた
「あれは・・・人!?」
「はいはーい! 皆さん賽銭箱はこっちですよー!」
「俺が一番賽銭を入れるんだー!!」
「黙れ小僧! 儂が先だっ!!」
「押さないで押さないでー、賽銭箱は逃げませんからー!」
霊夢の予想通り、博麗神社では我先にと賽銭を投げ込もうとする人々
その数、およそ三百人以上、というか人里の男全員
「美鈴さん! お賽銭入れますから、こう・・・両手を両膝に当てて前かがみになってくれませんか!?」
「えっ・・・こ、こうですか?」
「だっちゅーの萌えー!!」
『巫女さん萌えーー!!』
いつの間にか幻想のに追いやられたポーズを取る巫女を中心に
何か間違った賑わい方を見せる神社
「何よこれ! 何が起きてるのよ!?」
『紅美鈴! 紅美鈴!』
「あーもー、ちょっとだけですよー?」
『うおおおおおおお!!』
神社の主が舞い降りても誰一人そちらへと気づかない参拝客と
その中心で少しずつヒートアップしていく美鈴、限界突破まであと数分か
「出張香霖堂へようこそ! 美鈴ちゃんの生写真はこちらだよー! 着替え中の丸秘写真もあるよー!!」
「褌!? 一体そこで何をやってるの!」
「ん? それは勿論・・・商売だよ」
「神社でそんなきわどい商売するなっ!」
「ほぐっ!」
巫女ナッコゥ
「・・・まったく、何でこんな事になってるのよ」
「げほっ・・・ふぅ、理由を知りたいかい?」
「知ってるの?」
「勿論さ、この僕を誰だと思っているんだい?」
「変態店主」
「Yes! Iam!」
「肯定するな!」
「へぶっ!!」
巫女アッパァ
「で、結局原因はなんなの?」
「げほっ・・・くっ、ふふふ、ふふふふふ、原因? 原因など一つに決まっているさ」
不敵な笑みを浮かべながら香霖はゆっくりと人差し指を原因に向ける
その先には、賽銭箱の上で裾を捲りあげてきわどいポーズを取る美鈴が
「豊満なバスト! 引き締まった腰! そして張りのある尻! そんなナイスバディの彼女が
巫女服を装着したとなれば幻想郷中の男がその本能に従い神社に集まるのは至極当然の事じゃないか!」
「力説するなっ!!」
「甘いっ!」
「なっ! 避けられた!?」
「くくっ・・・これこそが美鈴ちゃんから放たれる巫女パワーの効果だ!」
「もういっぱぁつ!!」
「げふぅ!!」
巫女裏拳
「やれやれ・・・それならいっそ私も普通の巫女服を着れば参拝客も増えるのかしら?」
「く・・・くくく、それは無理だね・・・なぜなら」
「しぶといわね・・・何で私じゃ無理なのよ?」
「寸胴だからさ」
「死ぬがよい」
以後、香霖の姿を見たものはいない
「あんた達もいい加減に帰れーーー!!」
「うわっ! 魔王だ! 魔王が帰ってきたぞ!」
「逃げろー! 目を合わせると魂を抜かれるぞー!」
「ひぃぃ! ナンマンダブナンマンダブ!!」
「人を魔王扱いするなーっ!!」
「ああ! 魔王の呪言で田吾作どんの心臓が!!」
「おのれ魔王め! いつか必ず美鈴ちゃんを救い出してみせるからな!!」
「幻想郷は我らが守るのじゃ!!」
「本当に死にたいケヒかー!!」
霊夢の一喝で散り散りに逃げていく参拝客達
そしてすぐに神社にはいつも通りの光景が戻った
「やりましたよ霊夢さん! 見てくださいよこのお賽銭の山!」
「お前も巫女服脱いでとっとと帰れーー!!」
「えええーっ!?」
後に美鈴が下着を着けていなかったことがわかり
集客効果を倍増していたことが判明したが、それはまた別のお話。
第一.五話 艇王の実力と乳
「失態ね」
「しゅみましぇん・・・」
いつも通り腕を組んでナイフをちらつかせている咲夜の前で、
がっくりとうな垂れながら、しゅーん・・・とか、もきゅー・・・みたいな効果音を出し続ける美鈴
「だ、駄目よ、そんなかわいらしい顔でがっくりしてたって・・・うう・・・」
「本当にしゅみましぇん・・・ぐすっ」
「あーもう・・・分かったわよ、今回はお仕置きは無し! だから元気出しなさい!」
「・・・でも、でも私のせいで紅魔館が・・・お嬢様も咲夜さんも・・・」
「まだ蓄えがあるから大丈夫よ、それよりもそろそろ萌え死にそうだから泣き止んで・・・お願い・・・」
メイド長の現在の心臓の鼓動速度、約常人の三倍
そんな時、湖から謎のモーター音が二人の耳へと入ってきた
「いくわよパチェ! これが必殺のモンキーターンよ!!」
「甘いわレミィ! 真の必殺技とはこういうものよ! Vターン!!」
「なっ・・・! 差し場が無い!!」
「出来たっ! 究極のVターン・・・って、あら・・・」
クルリッ・・・ザッパーーーン!!
「あ、今パチュリー様の乗っていたボートが一回転半したような・・・」
「風邪をひく頃には戻ってくるわ」
勿論だが紅魔湖の水は冷たい、多分泳いで帰れないほどに、さらばパチュリー
「・・・ふ、完成していない必殺技を出すなんて愚の骨頂よパチェ、これで私の勝・・・」
「甘いです! 小悪魔ダーンプ!!」
「うっ・・・な、何っ!? 私の船に自らの船を乗せた!?」
「ふふふ、こんな事は勝負の賭かったレースでは珍しくもなんとも無いのです!」
「くっ、これが・・・これが艇王の実力か!」
「盛り上がってますねぇ」
「そうね」
こうして何時の間にか一日は過ぎていった。
― 三日後
ドカァン!!
「美鈴! 新しい仕事よ! そのでかい胸をとっととしまいなさい!」
「ほえ?」
早朝に突如入り口の扉を蹴破って突入してきたメイド長
中にいたのは寝巻きからよそよそと着替え中の美鈴
「咲夜さんいっつも着替え中に入ってきますねー、ぷー!」
「当たり前よ! 狙ってるんだから!」
「狙ってたんですか!?」
誰だって狙う、誰だってそうする
「それよりも急ぎなさい、あなたが着替え始めるのが遅いからお客様を二十分も待たせているのよ!」
「それ、咲夜さんが待たなければよかっ「ドスッ」ごめんなさいごめんなさい」
何だかんだで着替えも済み、咲夜が新しいお客を部屋へと招く
すでに扉の無い入り口からこそりと覗き込んでいたのはなんと魔理沙だった
「おーっす、邪魔するぜー、相変わらず乳でかいな」
「いります?」
「・・・いただくぜ」
「あいだだだだだだ!! 冗談ですって冗談ですってばー!!」
「くそっ! 何が巨乳だ何が爆乳だー!」
「そうよ! 胸が無くて何が悪いのよ!!」
「いだいいだいいだいいだいいだいいだい! 咲夜さんまでーー!!」
しかしそこは幻想郷トップ3に位置する巨乳の持ち主
ほんの少し大胸筋に力を入れるだけでその乳は張りと艶をいかんなく発揮し
全握力が注ぎ込まれていたはずの魔理沙と咲夜の両手を弾き飛ばした
「ぐはっ!」
「ぐふっ!」
「うう・・・また大きくなったらどうしてくれるんですか!」
『もぎとる』
「ひぃぃっ!?」
第二話 蛇? 蛇! 蛇ーーー!!
木々生い茂る森の中を、二つの豪風が駆け抜ける
方や箒に跨った魔法使い、かたや大木に乗った門番
魔法使いは華麗なランディングを見せ、門番は大木ごと地面にめり込んでから無傷で起き上がった
「というわけで、私の家に到着だぜ」
「あのー、今更だけど一ついい?」
「ん? どうした?」
「魔理沙って、たしか霊夢に・・・」
「・・・ありがとう、ちゆり・・・お前のことはあと三日は忘れない」
「ちゆりって誰!?」
ちゆりと魔理沙の簡単な見分け方
ちゆり=動くと撃つ 魔理沙=撃つと動く
「それじゃ今回のミッションを言い渡すぜ」
「はいっ!」
「下着ドロを捕まえてくれ」
「・・・はい?」
任務の内容を簡潔に説明するとこうだ
最近毎日毎日タンスにしまってある下着の数が減っている
しかも私が居ない時を狙って進入して盗んでいく
対策もいくつか講じたが全て効果は無かった
よって美鈴に見張りを依頼しに来た
成功報酬は知り合いへの宣伝、つまりまたもタダ働き
「というわけで、後は任せたぜ」
「はい! お任せください!」
ぶわぁっと風を巻き上げながら空へと飛び立つ魔理沙
それを見送ると、美鈴はいつものように扉の前で仁王立ちを始めた
鬱蒼と生い茂る森の中でただ一人、喋る事も無く動く事も無くその場に立ち続ける
その姿はまさに超一流の門番の姿だった、超一流の定義はよく分からないが
「・・・・・・グ~・・・スピー・・・・・」
一部、文を訂正しよう、二流だ
そんなこんなで時間が過ぎ、魔理沙が神社で昼食を厄介になっていた頃の事だった
カサッ・・・
「(・・・物音!)」
昼飯代わりに適当にそこら辺を歩いていた野良狼にかぶりついていた時、
霧雨邸の中から聞こえてきた音、それは物音に敏感な因幡でないと聞き取れないような極小の響きだった
カサッ・・・カサカサッ・・・
「何者かっ!?」
ドアを豪快に開け、一喝を放つ
しかしそこに人影の姿は無く、あるのは物品が散乱したいつも通りの霧雨邸
「(たしか泥棒の狙いは・・・)・・・寝室か!」
急いで階段を駆け上がり、寝室の扉を開けて中を覗く
開いた窓、散乱した衣類、散らかっている魔道書に倒れたイスやダンボール
しかしここにも人影の姿は無かった
「私に気取られずに進入するなんて・・・くう」
美鈴はまがりにもあの紅魔館で門番を勤めるほどの妖怪である
こんなにやすやすと進入を許してしまってはそのプライドが傷つかないわけが無い
「うう、どう謝ろう・・・」
侵入者を止められないどころか、捕まえる事すら出来なければ門番の名折れでもある
もう一度犯人がやってくる事を祈りながら、また扉の前へと立ち続ける美鈴
普通は誰かが見張ってるとなれば二度も来るものではないのだが・・・
ガサッ・・・
「敵襲ーーー!!」
さっきよりもはっきりと聞こえた物音、その発生源は間違いなく薄い扉をはさんだすぐそこ
美鈴は今度こそ犯人を捕まえんと扉を全力で蹴っ飛ばし、そのまま飛び蹴りの態勢のまま室内へと突入
傍目から見ればライダーキックの水平飛行だ
「敵はどこ敵はどこ!」
すぐさまテーブルの上に着地しブンブンブンと高速で首を振り回して全方位を確認する
食器棚、本棚、散乱した本、ダンボール、ゴミ、ガラクタ・・・やはり人影は無い
「そんなぁ・・・」
テーブルの上でがっくりと両膝を突きうな垂れる美鈴
一度ならず二度までも犯人を捕り逃してしまえばもはや三流以下の門番だ
「うう、まだよ! まだ二階に居るかも!」
キッ! と表情を締め直してどたどたと階段を駆け上がっていく美鈴
しかし犯人は実は一回に潜んでいた、それも美鈴のすぐ側に・・・
カサッ・・・
「外かーーーーー!!」
それはもはや最後の意地、わずかに耳に届いた音を信じて二階の窓を突き破る美鈴
どこかのアクションスター張りの飛び出しを見せたせいか、霧雨邸の二階は爆発炎上し
なぜか不死身な事で有名な美鈴も着地した時にはかなりの重傷を負っていた
「犯人ーーー!!」
左腕が折れ、その額から血を流しながらも最後の体力を振り絞り立ち上がる美鈴
炎上する霧雨邸、飛び散った瓦礫、ダンボール、空を舞う紙、紙、紙・・・
「そんな・・・犯人は一体どこに・・・・・・って三度も騙されますかー!!」
「ああっ!?」
がばっ! とダンボールを持ち上げてみれば、そこには一人の弾幕娘が
「・・・アリス・・・さん?」
「・・・こ、これは違うのよ! 私も魔理沙に見張りを頼まれてて・・・」
アリスは相手に背を向け尚且つ屈んでいるという致命的な状況を冷静に判断し、必死に言い訳を始める
だが、さすがに頭にパンティーを被り首にブラジャーを巻きつけていたら説得力は0を通り越してマイナスだ
「・・・・・・」
「そ、その・・・」
「えいっ」
「あっ・・・」
ガポッといい音が鳴り、ダンボールが再度アリスへと被せられる
「破ッ!!」
続けてズドンッ! という景気のいい音も魔法の森に鳴り響いた
こうして美鈴の二回目の仕事は大成功に終わった
霧雨邸の扉が壊れてたのも、二階が爆発して無くなったのも
全てはアリスがやったこととなり、美鈴に何らお咎めは無かった
だがしかし、紅魔館はいまだに赤字のままである
頑張れ美鈴、負けるな美鈴、紅魔館の営業が黒字になる日はきっと近い・・・。
『お知らせします
紅魔湖記念の本日の全レースに付きましては、全艇被弾・・・失礼しました
全艇転覆の為、全額払い戻し、全額払い戻しと――』
やっぱり遠い
続いて欲しいですから得点は入れますがちょっと減点させていただきます
1:今後も期待しているよ、美鈴
なぜよりにもよって競艇、競輪みたいなもうからない博打を
選ぶんだパチェ…パチスロが一番儲か…(エターナルミーク
>そ、その技は伝説の・・・!
ル○ン脱ぎ逆バージョン?
あらゆる意味でぶっ壊れた紅魔館も楽しいですねぇw