藍「橙・・・。何処いったんだ・・・?」
藍は、あれからずっと、橙を探し続けていた。
藍「ちぇ~ん・・・・・・。」
だが、見つかる気配もなく、藍の体力は限界にきていた。
藍「う・・・・・。」
ばった~ん!
藍は、地に倒れ、
藍「む、無念・・・・・。」
がくっ・・・
力尽きた。
・
・
・
咲夜「やっと、見つけた。」
藍が倒れてしばらくし、咲夜が現われた。
咲夜「勝手に出て行っては困るわ。一応、あなたはうちの関係者なんだから。」
藍を担ぎ、咲夜は紅魔館に飛んで帰った。
・
・
・
紅美鈴は、疲れていた。
一人で警備にあたるのは慣れているはずだ。
では、何故疲れているのか。
それは、
美鈴「眠い・・・・・・。」
寝不足。
咲夜「おはよう。いい朝ね。」
美鈴「そーですね。今朝もいい夢見ましたよ。」
どうやら、寝不足の原因は、夢見の悪さらしい。
美鈴「狐の化け物が、私に凄い顔で迫ってくるんですよ。」
咲夜「やっぱり、この声が原因?」
おろろ~ん・・・・・
おろろ~ん・・・・・
美鈴「そーですね。」
咲夜「あなたにまで倒れられたら、ちょっと大変だわ。何とかしておく。」
美鈴「・・・・・・ちょっと・・・・・。」
咲夜は、声の発生源へと向かった。
・
・
・
藍「おろろ~ん・・・・・・・。」
魔理沙「五月蝿い。いい加減にしろ。」
紅魔館地下牢。
藍は、何時脱走するかわからないので、地下に監禁されていた。
それで迷惑を被るのは、同じく監禁されている魔理沙である。
藍「こっくりさんこっくりさん・・・。橙はどこにいますか・・・・。」
魔理沙「あ~、もう。何とかならんかね。」
咲夜「何とかしましょうか?」
咲夜、現る。
魔理沙「ああ、何とかしてくれ。寝不足になる。」
咲夜「じゃ、連れて行くわね。」
ガチャ
咲夜は、牢を開ける。
藍「!橙~!今行くぞ・・・・・。」
ガッ!
藍「きゅう・・・・・・。」
脱走しようとする藍を気絶させる咲夜。
藍「う~・・・・・・・・。」
咲夜「重症ね。何とかならないかしら?」
二人は、地下から去る。
魔理沙「・・・・・で、私は何時までここにいたらいいんだ?」
・
・
・
咲夜「・・・・・よし。ここなら大丈夫。」
咲夜は藍を、ある場所まで持ってきた。
咲夜「じゃあね。ここなら好きなだけ泣けるわ。」
パチュリー「こら。」
咲夜「あら、パチュリー様。」
パチュリー「騒音公害よ。こんなもん置いていかないで。」
どうやら、図書館へ持ってきたらしい。
咲夜「まあ、いいじゃないですか。」
パチュリー「よくないわ。」
藍の処置は、まだ先送りのようである。
・
・
・
一方、美鈴は、
美鈴「あ~・・・・・。」
眠そうである。
しかし、眠ると・・・。
美鈴「減給三ヶ月・・・。解雇・・・・・。」
なんてことになりかねない。
美鈴「見回りでも、行くか・・・・・。」
眠気覚ましのため、美鈴は館内を見回ることにした。
・
・
・
美鈴「ここは異常なし。こっちは・・・・・。」
おろろ~ん・・・・
美鈴「・・・・・異常あり。されど無視。」
少々の異常は、なかったことにされるのが、紅魔館という所らしい。
美鈴「こっちは・・・・・、むっ!?」
美鈴は、館内の者でない気配を感じた。
美鈴「侵入者・・・・?こっちね・・・・。」
気配のする方へ向かう美鈴。
美鈴「庭・・・・。」
その気配は、庭から感じられた。
と、そのとき、
ザ・・・
美鈴「・・・・?」
音がした。
美鈴は、音のした方向を向く。
するとそこには、
妖夢「~~♪」
鼻歌交じりに、庭の木を刀で伐採している少女、魂魄妖夢がいた。
妖夢「ん?」
妖夢は、美鈴の方を向く。
美鈴「あなた、そこで何をしてるの?」
妖夢「仕事。」
美鈴「仕事って、庭の木を切るのが?」
妖夢「剪定よ。ほら、見栄えがよくなったと思わない?」
美鈴「ん~・・・・・。」
先ほど妖夢が切っていた木を見る。
なるほど、確かに見栄えがよくなったかもしれない、と美鈴は思った。
妖夢「仕事はいいわね。心が研ぎ澄まされる。」
美鈴「そうね・・・・・。で、あなた何者?」
美鈴は、基本的な疑問をぶつける。
妖夢「私?一応ここでバイトをすることになった、魂魄妖夢よ。」
美鈴「中国言うな!」
妖夢「言ってない。」
美鈴「それはともかく、バイトっていうなら咲夜さんの所に行かなきゃ。」
妖夢「何処にいるの?」
美鈴「案内するわ。」
妖夢を咲夜のところに案内する美鈴。
そのころには、美鈴の眠気は覚めていた。
・
・
・
咲夜「これが、あなたの仕事内容。」
妖夢「ふ~ん。庭の手入れとかは無いのね。」
咲夜「その辺は、自由にやってくれていいわ。ボランティアで。」
咲夜は妖夢に、仕事の内容を説明する。
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・
咲夜「これが、紅魔館の誇る妹型決戦兵器、フランゲリオン。その弐号機よ。」
妖夢「これが・・・・・・。」
妖夢の目の前に、フランゲリオン弐号機が現われる。
咲夜「あなたの前にパイロットがいたんだけど、今は使い物にならないのよ。」
妖夢「それで、私が代行しろと?」
咲夜「まあ、そうね。」
妖夢「わかったわ。」
咲夜「起動実験は明日。今日は休むのがいいわ。」
妖夢「そう。それじゃ。」
妖夢は退出する。
咲夜「あの世から、職のあるやつがわざわざ・・・・。」
咲夜は、妖夢の存在を疑問視する。
咲夜「一体、何を考えているのやら。探ってみるか・・・。」
・
・
・
美鈴「あ。」
妖夢「あら。」
美鈴は、妖夢とばったり出会った。
美鈴「説明は受けてきたの?」
妖夢「ええ。それで、これから何をしようか悩んでいるところよ。」
美鈴「ん~、それじゃあ、ここの案内でもしようか?」
妖夢「それはいい考えね。お願いするわ。」
二人は、館内を歩き始める。
・
・
・
廊下
美鈴「ここが大廊下。咲夜さんの力で、無駄に広く見えるわ。」
妖夢「ほんとに無駄ね~。」
美鈴「慣れないうちは、メイド隊に攻撃されるかもしれないけど、やっつけていいから。」
妖夢「じゃあ、遠慮なくやっつけるわ。」
図書館
美鈴「ここが書斎。」
妖夢「こっちも、みょんに広いわね。」
美鈴「みょん?」
妖夢「みょん。」
美鈴「みょん。」
妖夢「みょん。」
パチュリー「(どこの言葉かしら・・・・。ええと・・・・)。」
厨房
美鈴「厨房よ。」
妖夢「ここは、いたって普通ね。」
美鈴「そっちには人間の血。そっちには各種おやつの材料が・・・・・。」
妖夢「普通ね。」
美鈴「たまにゴキブリとか見かけるけど、それも見つけたらやっつけちゃっていいから。」
魔理沙「へっくしょい!・・・・・・・・風邪か?」
地下
美鈴「で、ここが・・・・。」
フランドール「あら、誰かしら?」
美鈴「あ、妹様。」
フランドール「・・・・・・誰?」
美鈴「美鈴です。」
フランドール「ああ!」
美鈴「忘れてたとか、その辺は突っ込みませんけど・・・・・。」
妖夢「上司?」
美鈴「ええ。ちゃんと対応しないと殺される。」
フランドール「こっちは、どちらさん?」
美鈴「新しい玩具です。」
妖夢「よろしく。」
フランドール「ふ~ん。私の気が向いたら遊んでね。」
お部屋
美鈴「ここが、お嬢様のお部屋よ。」
妖夢「じゃ、挨拶でもしていこうかしら。」
美鈴「今は留守。」
妖夢「え?でも、中から誰かの気配が・・・・・。」
美鈴「・・・・・ほんとね。」
妖夢「中、見てみたら?」
美鈴「・・・・・ええと・・・・、あの辺は、お嬢様の服が入れてある箪笥・・・・。」
妖夢「服泥棒?」
美鈴「わからない・・・・。ん?」
妖夢「どうしたの?」
美鈴「あ、あれは、咲夜さ・・・・、あ、消えた?」
妖夢「・・・・気配も消えた・・・。時間を止めて、逃げたのね。」
美鈴「咲夜さん、一体何を・・・・?」
妖夢「まあ、聞いたって、とぼけるだけでしょうね。」
・
・
・
美鈴と妖夢は、紅魔館を一周してきた。
美鈴「まあ、こんなところね。」
妖夢「わざわざ、ありがとうね。」
美鈴「どういたしまして。」
妖夢「じゃあ、私は部屋に行くことにするわ。」
美鈴「そう。じゃあ、また後で。」
妖夢はその場から去る。
美鈴「・・・・・・久しぶりに、まともなヒトと会話した気が・・・・。」
美鈴は、さらりと問題発言をしてみたりした。
・
・
・
ずし~ん!
ずし~ん!
と、豪快な足音を立てて、弐号機が歩いている。
美鈴「すごい・・・。乗って五分足らずなのに・・・・・。」
咲夜「・・・・・・。」
素直に感心する美鈴と、黙り込んでいる咲夜。
咲夜「・・・・・・。」
美鈴「ねえ、凄いと思いませんか?」
咲夜「・・・・・・・。」
美鈴「咲夜さん?」
咲夜「・・・・え?」
美鈴「どーしたんですか?辛気臭い顔して。」
咲夜「ちょっと考え事よ。あなたは、悩みとかないのかしら?」
美鈴「・・・・・・それはもう、目一杯。」
その一つは、あなたです、何て言えるはずもなかった。
と、そのとき、
妖夢『ちょっと~。言われたとおりにやったけど?』
咲夜「あ、忘れてた。」
妖夢から通信が入る。
妖夢『で、どうすればいいの?』
咲夜「ええ。それじゃあ、今日はここまで。戻ってきて。」
妖夢『了解。』
妖夢に帰還を命じる咲夜。
美鈴「彼女、スジがいいですね。」
咲夜「ふうん。よっぽど、あの子がお気に召したみたいね。」
美鈴「そりゃあ、長らく出会ってない、まともな人物ですから・・・・。」
咲夜「ほほう。それじゃああなたは、この咲夜さんやお嬢様が、まともでないと・・・・?」
美鈴「あ、あ~、いや、その、そんなんで言ったんじゃあ・・・・。」
と、美鈴が弁解しようとした瞬間、
咲夜「ふ・・・・・・・。」
美鈴の視界に、大量のナイフが展開され、
咲夜「天誅!」
ドドドドドド!!
一斉に、美鈴に襲い掛かった。
美鈴「・・・・・・・・・・・・・・・・うぐぅ。」
ばた・・・・
美鈴は力尽きた。
咲夜「私、そしてお嬢様への暴言許しがたし。よって誅したもの也。」
咲夜は、その場を去る。
咲夜「・・・・・・・・・。」
そして、引き続き考え事をし始めた
・
・
・
美鈴「・・・・・だから~、私は中国じゃないって、いつも言ってるのよ!」
ドン!!
コップを思いっきり机に叩きつける美鈴。
隣には妖夢がいる。
美鈴「わかる?この苦しみが?」
妖夢「何となくね。私だって、みょんみょん言わされて、苦労してるわよ。」
美鈴「ああ、こんな所に仲間が!」
妖夢「ここにも苦労人が・・・。」
美鈴「あと、最近の咲夜さんは滅茶苦茶で・・・。こっちの苦労も知らないくせに・・・。」
妖夢「あ~、わかるわ、それ。」
美鈴「・・・そう?」
妖夢「うちも幽々子様が、あ、私の主人ね。最近滅茶苦茶言ってるのよ。『みょんの字斬り~』とか。」
美鈴「そのご主人の命なの?うちに来たのは。」
妖夢「そうね。私は行きたくないって言ったんだけど・・・・・。」
美鈴「大変そうね・・・・。」
妖夢「でも、今はこっちに来てよかったと思ってるわ。」
美鈴「何で?」
妖夢「愚痴を言える相手が居るからよ。」
美鈴「・・・・・・・・今夜は、存分に飲みましょ。」
妖夢「そうね。お酒じゃないけど。」
美鈴「いいのよ。酔った気にでもならないと、やっていけないわ。」
二人は、夜遅くまで飲み明かした。
と、その影で、
咲夜「亡霊の姫による命令・・・。あの世が絡んでいるのは、間違いないみたいね・・・・。」
咲夜は、いろいろと探っていた。
咲夜「かっこいいわね。私。」
・
・
・
妖夢が紅魔館にやって来て数日。
妖夢本人は、訓練したり、たまに庭の剪定をやったり、夜には美鈴と愚痴を言い合ったりしていた。
美鈴は、妖夢と愚痴を言い合う毎日。
そのため、ストレスと言えるものは無くなっていた。
美鈴「我、終生の友を得たり。なんちゃって。」
咲夜は、妖夢の動向を警戒していた。
咲夜「・・・・まだ、動きは無い、か。」
最近何の事件も無いので、お嬢様はお出かけ。
パチュリーは、図書館に篭りっきり。
藍は、ついに泣き疲れて眠ってしまった。
ついでに魔理沙は、
魔理沙「あ~・・・・・・。このままじゃ腐るぜ。」
腐りかけていた。
そんな、ある日。
美鈴「・・・・・でね、何故か生身で戦わせてくれないのよ。」
妖夢「屈辱ね。戦さ人たるもの、自分の力を出し切ってこそ華だっていうのに。」
美鈴「・・・・あなた、戦さ人?」
妖夢「庭師よ。あなたは?」
美鈴「普通の門番。」
今日も今日とて、二人は飲んだくれていた。
美鈴「ふ~・・・。何か、眠くなってきた。」
妖夢「じゃあ、ちょっと寝たら?しばらく一人で飲んでるから。」
美鈴「あなたは半人・・・・・。ぐ~・・・・・・・。」
美鈴は、眠った。
妖夢「・・・もう少し飲んでいたかったけど・・・・・。」
席を立つ妖夢。
妖夢「縁があれば、また飲みましょ。」
妖夢は、その場を去って行った。
その陰で、
咲夜「・・・・・・動いた・・・・・!」
妖夢を監視していた咲夜。
その後をつける。
咲夜「この方向は・・・・。ふん、なるほどね。」
・
・
・
ここは、フランゲリオン弐号機が格納されている場所。
そこに、妖夢はいた。
妖夢「・・・・・・それじゃ、滅茶苦茶な主人の所へ帰りますか。」
弐号機の方を向く妖夢。
そのとき、
咲夜「そこまでよ。」
後方から、咲夜が現われた。
咲夜「それを持っていくつもりでしょうけど、そうはいかないわ。」
妖夢「後をつけて来たのね。」
咲夜「最初っから、怪しいと思ってたわ。」
妖夢「で、私を泳がせていた、と。」
咲夜「そういうこと。さあ、大人しくお縄につきなさい。」
咲夜は、ナイフを取り出す。
妖夢「ふ・・・・。」
咲夜「何が、可笑しい?」
妖夢「あなたは解っていない。私が、どうやってコレを動かしていたかを。」
咲夜「どうやってたの?」
妖夢「こうよ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!
突如、弐号機が起動した。
しかし妖夢は、その場にいる。
咲夜「・・・・・なるほど。半身を憑依させて動かしているのね。」
妖夢「そういうこと。さあ、どうする?あなたではコレに勝てない。」
咲夜「あら、そうとも言えないわ。」
妖夢「・・・どういうこと?」
咲夜「こういうことよ!」
咲夜がそう叫んだ瞬間、
妖夢「・・・・・・消えた?」
彼女は、姿を消した。
妖夢「時止めて、逃げただけじゃない。」
逃げるが勝ち、である。
・
・
・
一方、美鈴は、
美鈴「で、あの人は本当に鬼みたいで・・・・。」
?「みょん?」
美鈴「同じ次元の生物であるかどうか、疑いたくなるわ。」
?「みょんみょん。」
ドドドドドドドド!!
美鈴「うん?何かしら?」
?「みょん?」
誰かと飲んだくれている美鈴の耳に、何やら音が入ってくる。
?「みょん。」
美鈴「あ~、さっきのは咲夜さんのこと・・・・・・。」
ボカ!!
美鈴「うわ!?」
咲夜「誰が、鬼で悪魔で妖怪で修羅で悪鬼羅刹で人でなしですって?」
美鈴「そこまで言ってない~・・・・。」
咲夜が現われた。
咲夜は、美鈴をぶっ叩く。
咲夜「反乱よ。厳密には、仕組まれたことだけど。」
美鈴「え!?だ、誰が?」
咲夜「半分死んだようなやつ。」
美鈴「・・・・・はい?」
咲夜「わからないの?新入りよ、新入り。」
美鈴「い、いや、だから、彼女はここに・・・・。」
美鈴は、隣の物体を指す。
妖夢福「みょん?」
美鈴「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
咲夜「・・・・・・・・ここに?」
美鈴「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いません。」
ガッ!
美鈴「いたい~!」
咲夜「早く初号機で出なさい!取り押さえるのよ!」
美鈴「は、はい~!」
美鈴は、急いで初号機の所へ向かった。
咲夜「まったく、こんな変わり身に騙されるなんて・・・。」
妖夢福「みょんみょん。」
咲夜「・・・・・・・・。」
妖夢福「みょん?」
咲夜「・・・・・・・・。」
ナデナデ・・・・
妖夢福「みょんみょん!」
咲夜「・・・・・・・・お手。」
妖夢福「みょん。」
咲夜「・・・・・・・・おかわり。」
妖夢福「みょん。」
咲夜「・・・・・・・・三回まわってみょん。」
くるくるくる
妖夢福「みょん!」
咲夜「・・・・・・・・・・かわいい。」
咲夜は、しばらく妖夢福と戯れていた。
・
・
・
妖夢「邪魔者はいなくなったし、行くか。」
妖夢は弐号機を伴い、紅魔館を去ろうとした。
そのときである。
美鈴「待ちなさい!」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・
初号機に乗った、美鈴が現われた。
美鈴「何処へ、行くの?」
妖夢「帰るのよ。コレを持って。」
美鈴「そのために、ここへ来たのね。それが、あなたの主人からの指令?」
妖夢「ええ。」
美鈴「でも、あなた散々愚痴ってたはずじゃ・・・・。」
妖夢「問答無用!」
グオオオオオオ!
弐号機が、初号機に襲い掛かる。
ガッ!!
そして、力比べが始まった。
美鈴「(こ、これは・・・・・!)」
妖夢「愚痴ってたのは本音。だけど、幽々子様を裏切ることは無いわ。あなたも、そうでしょう?」
美鈴「それは、そうね。」
妖夢「そんなわけで、手加減は出来ないわ!」
美鈴「てい!」
ズド~ン!
弐号機が、豪快にひっくり返った。
妖夢「・・・・・・あら?」
美鈴「その割には、弱かったわよ?」
妖夢「おかしいわね。私の半身を憑けて動かしてただけなのに。」
美鈴「半分、だからじゃない?」
妖夢「・・・・・・あ~。」
弐号機はどうやら、半分程度の力しか出せていなかったようである。
妖夢「こうなったら、本気でいくわ!」
妖夢は、自分の半身を呼び戻す。
美鈴「さっき、手加減しないって言った。」
妖夢「気のせいよ。さあ、そこから降りて。決闘よ!!」
美鈴「え!?」
妖夢から決闘を申し込まれる美鈴。
妖夢「さあ、これを。」
ヒュ!
妖夢は、何かを投げる。
パシ!
それを、無意識に受け取る美鈴。
妖夢「それは、人間の迷いを断ち切る白楼剣。私だけ武器を使うのも不公平だしね。」
美鈴「決闘・・・・・・。決闘・・・・・・・。」
妖夢「あなたに迷われても、面白くないしね。私と戦えないっていうなら、それで迷いを・・・。」
美鈴「けっとう・・・・。けっとう・・・・。けっとう・・・・・・。」
妖夢「・・・・・どうしたの?」
剣を受け取っても、美鈴はうつむき、呟くばかりである。
妖夢「おかしいわね・・・。妖怪の迷いは断ち切れないのかしら?」
美鈴「うふ、ふふふふふ。うふふふふふふ・・・・・・・・。」
妖夢「(びくっ!)。」
美鈴は、突然笑い出した。
妖夢「な、何よ。びっくりするじゃ・・・・・。」
美鈴「このお話が始まって、苦節11回・・・・。」
妖夢「え?ちょ、ちょっと・・・・・・。」
美鈴「一度も生身で戦わせてもらえず、一度もいい思いをしたことが無かった・・・・。」
妖夢「もしも~し。」
美鈴「だが、しかし!ついに私は!光を浴びることを許された!」
妖夢「何言ってるの・・・・・?」
美鈴「うう・・・・。あ、涙が・・・・。嬉しいはずなのに・・・・。」
妖夢「何か、こう、可哀相になってきた・・・・・。」
美鈴「さあ、決闘よ!逃げるとは言わせない!」
妖夢「いや、決闘挑んだのは私・・・・。」
美鈴「問答無用!」
自分で仕掛けておいて問答無用なんてあったもんじゃないが、とにかく美鈴は、妖夢に斬りかかった。
妖夢「速い!?」
キン!
美鈴の一撃を受ける妖夢。
妖夢「くっ!何て重い一撃・・・・・。」
美鈴「もらった~!!」
妖夢「しまっ・・・・・・。」
・
・
・
咲夜「・・・・・・・すっかり、遅くなってしまったわ。」
妖夢福と遊んでいた咲夜は、遅れながら現場へと向かう。
途中、
パチュリー「下が五月蝿い。何とかしてきて。」
咲夜「今に、何とかなりますよ。」
などとパチュリーに言われてみたりもしたが、とにかく現場に着いた。
そして、咲夜が目にしたものは、
咲夜「・・・・・・・・・これは・・・・・・。」
妖夢「あら、遅かったわね。」
五体満足、ピンピンしている妖夢と、
美鈴「あ~・・・・、う~・・・・・。」
何やら様子のおかしい美鈴。
咲夜「美鈴は、敗れたようね。」
妖夢「そんなことないわ。実を言えば、私が負けていた。」
咲夜「じゃあ、何でピンピンしてるのかしら?」
妖夢「彼女に、聞いてみたら?」
咲夜「そうね。」
咲夜は、美鈴に話しかける。
咲夜「美鈴。」
美鈴「え?あ、咲夜、さん・・・?」
咲夜「そうよ。何があったの?」
美鈴「あ~、いや、でも、ニセモノだったらどうしよう・・・・・。」
咲夜「美鈴?」
美鈴「ニセモノだったら、うっかり機密とか喋ってしまって、それであとでホンモノに怒られて・・・。」
咲夜「ちょっと・・・・・。」
美鈴「あ~、でも、ホンモノだったら今すぐ怒られるかも・・・。どうしよう・・・・。」
美鈴は、咲夜に話しかけようかどうか迷っている様子。
妖夢「さっきから、この通りよ。」
咲夜「やっぱり、あなたから聞く必要があるわね。」
妖夢「実は、かくかくしかじかの理由で白楼剣を貸したんだけど。」
咲夜「決闘なんて、また粋なことするじゃないの。」
妖夢「妖怪に対しては、副作用かな?私が斬られそうになった瞬間、刀を止めて・・・。」
咲夜「『あ~、斬ってもいいのかな~・・・。でも、斬らなきゃ怒られるかも・・・・。』とか?」
妖夢「そんなところね。」
どうやら美鈴、白楼剣の副作用で、優柔不断妖怪になってしまったようである。
咲夜「ほら、しっかりしなさい。」
美鈴「あ~、しっかりしようかなあ・・・・。どうしよう、どうしよう・・・・・。」
咲夜「これは、重症ね・・・・。」
美鈴の症状に、やや困惑する咲夜。
妖夢「今だ!」
咲夜「!?」
その隙に、妖夢が叫んだ。
そして、
妖夢「さようなら。この場はいったん退くことにするわ。」
咲夜「よくも、余計な仕事を増やしてくれたわね!」
妖夢「そっちの心配をするの?」
妖夢は逃げていった。
咲夜「逃がした、か。しかし・・・・・・。」
美鈴「う~ん・・・・。う~ん・・・・・。」
美鈴は、相変わらず迷っていた。
咲夜「この場にいても仕方ない。いくわよ、中国!」
美鈴「中国じゃない!」
咲夜「そこは、ちゃんと主張するのね。」
美鈴「あ~、でも、本当に名前が中国だったらどうしよう・・・・。さっきの発言は・・・・。」
咲夜「・・・・・・何てこと・・・・・。」
美鈴「私の名前、美鈴じゃなかったら、どうしよう・・・。う~ん・・・・。」
これにより、紅魔館の戦力は、そのほとんどが失われたと言っていいだろう。
そしてそれは、終わりへの始まりに過ぎなかった・・・・。
咲夜「今回の私、かっこ良かった?」
妖夢福「みょん!」
第拾壱話 完
あと、話の途中から放ってかれてる藍と、ゴキブリと聞いてくしゃみする魔理沙がなんとも(マテ
この続きがどうなるのか、気になりますw
ラストスパート頑張ってくだされ。
妖夢福は多分絵版の65でしょう。
去年の9月頃のカン氏の作品「幽々子と妖夢福」を思い出しますた(ナニ