Coolier - 新生・東方創想話

月光のごとく(2)

2004/02/19 01:10:55
最終更新
サイズ
3.08KB
ページ数
1
閲覧数
714
評価数
0/24
POINT
770
Rate
6.36
※続きです


 腰と背中に、それぞれ一振りずつ刀を挿したその格好。
 鋭い目と凛々しいと言える顔立ちは緊張しているのか、少し硬いのが見て取れた。

 だからなのだろうか。
 緊張しているが故に、そして自然体で居るだけなのにこの人は強いと私は感じた。

「―――――」
「あの?」
「っ!ああ、すいません!!」
 いけない、つい呆けてしまった。剣士さんは、いつの間にか私の傍にいた。

 あれ、気付かなかったって……

 何と無く変な感じはしたがお客様の前で考え事するのも失礼なので、とりあえず忘れることにした。
「えーと、こんにちわ。咲夜さんのご友人の方ですか?」
「はい、魂魄 妖夢と言います」
「私は紅 美鈴と申します」
 魂魄 妖夢……変わった名前だ。どこの人なんだろう。
「咲夜さんは、今は自室にいると思いますのでご案内いたします」
 メイドの娘に、妖夢を案内して差し上げるように言う。
 挨拶だけして私は詰め所に戻った。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

咲夜「久しぶりね」

妖夢「そうね、誰かさんが大結界壊しちゃったりするから、気軽にこれなくなったんだもの」

咲夜「あら、それは私じゃないわよ」

妖夢「貴女も、少し壊したでしょ」

咲夜「小は大をかねないわ」

妖夢「鼠の穴からダムが決壊することもあるのよ」

咲夜「まぁ、冗談はおいてといて」

妖夢「冗談じゃないのに」

咲夜「実は、あなたにお願い事があるの」

妖夢「用があるなら、自分で来なさいよ」

咲夜「私が来ると、結界が壊れるんじゃなかったの?」

妖夢「それもそうだったわ」

咲夜「とにかく、頼みたいことがあるのよ」

妖夢「貴女の素敵なお嬢様に『血を差し上げろ』とか、みょんな事じゃないでしょうね」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「…………ふぅ」
 なんとなく溜息が出た。良くないことだと思うが、自然に出てしまう。
 咲夜さんに心配されてしまうほど、態度に出てしまうなんて……
 
 夢に見るぐらいだもの、自分がそんなに気にしているとは思っていなかった。
 あの時負けたことを気にしてるんじゃない。

 咲夜さん、霊夢さん、レミリアお嬢様。
 
 みんな、みんな強い人ばかりだ。
 おそらく、妖夢さんも強いと思う。

 何でこんなことを考えているのか。

 思考はグルグル回って、一つの事に終着する。
 解っている。解っているけど、それを認めるのは怖かった。

 つまり


「美鈴」
「―――はい!!」
 不意に名前を呼ばれて、俯いていた頭を上げるとお出かけ用の格好をしたお嬢様がいた。
 いけない。考え事しすぎて、気付かなかったなんて。
 これでは、さっきと同じではないか。


「お出かけしてくるわ、いつもの所まで」
「あの、お嬢様。私もご一緒いたします」
 いつもの事とはいえ、何と無く心配になった。ただ、それだけだったのだけれど。
「いらないわ」
 にべもなく断られた。
「そうですか……」
 お嬢様が私を見ていたのは、視線を感じたので判ったが目を合わせるのが恐かった。
「それから、美鈴。あなたに暫く暇を出すわ」
「――!!」
 何となく、いつか言われるだろうと思っていた。
 分かっていた事ではあった。

 前回の一件。霊夢さん、魔理沙さんの二人に突破された事。
 あの二人が幾ら強かったとはいえ、門番としては、失格だろう。

 けど、悲しかった。
 それでも、悲しかった。

「……はい、分かりました」
 だけど、これ以上お嬢様に失礼な姿を見せるのは嫌だった。
 多分、声は震えてなかったと思う。
 涙が零れるのを、必死で押し殺した。
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.770簡易評価
0. コメントなし