レミリア「例の物?」
咲夜「はい。明日にでも搬入されるそうです。」
レミリア「流石、早いわね。」
咲夜「・・・気が乗りませんか?」
レミリア「・・・・・・そうかもね。」
咲夜「心中、お察しいたしますわ。」
・
・
・
藍「と、いう感じのお話を。」
美鈴「はい?」
藍が美鈴に話しかける。
藍「いや、ちょっくら聞いてしまって。」
美鈴「それで?」
藍「気にならない?例の物っていうの。」
美鈴「いや、あんまり。」
藍「ノリの悪いやつめ。」
美鈴「私にしてみれば、嫌な予感のほうがするのよねえ・・・。」
藍「駄目だなあ。物事はもっと前向きに考えなきゃ。」
美鈴「私は普通に前向きなの。あなたは変に前向き。」
藍「何気にひどいな。」
話が脱線。
美鈴「で?」
藍「はい?」
美鈴「例の物って、何だと思う。」
藍「何だ。結局気になってるじゃない。」
美鈴「そういう年頃なのよ。」
藍「若いねえ。」
美鈴「そんなに歳喰ってるわけでもないくせに・・・・。」
再び脱線。
藍「・・・・・・例の物、ってだけじゃあ、何も浮かばない。」
美鈴「やっぱり?」
藍「うむ。さっぱりわからん。」
パチュリー「参号機よ。」
パチュリーが現れた。
藍「おや、わりと歳喰ってる人が。」
パチュリー「あなたは何歳なのよ?」
美鈴「パチュリー様。参号機って・・・・?」
藍「三体目か?」
パチュリー「そうよ。フランゲリオンの最新型。」
美鈴「ついに、フォーオブアカインドの成立か・・・・。」
藍「で、誰が動かすの?」
パチュリー「そこまでは、分からないわ。」
美鈴「・・・・・でも。」
藍「ん?」
美鈴「その辺も含めて、今回は特に嫌な予感が・・・・・。」
藍「いかんなあ。人生、もっと前向きに・・・・。」
美鈴「いや、私は前向きであって・・・・。」
パチュリー「ええ~と、簡単に前向きな人生を歩むには・・・・・。」
三度脱線・・・・。
・
・
・
レミリア「届いたのね。」
咲夜「はい。早速起動テストを開始します。」
レミリア「そう。それじゃあ、呼んできて。」
咲夜「もう、操縦席に座っておられます。」
レミリア「早いわね。」
咲夜「届いたと聞くと、それはもう、うれしそうでした。」
レミリア「・・・・・大丈夫かな?」
咲夜「その辺は何とも・・・・。」
レミリア「私達は、子供に銃を与えたのかもしれないわね。」
・
・
・
咲夜『準備のほうは、よろしいですか?』
フランドール「大丈夫よ。」
参号機に乗っていたのは、フランドールだった。
咲夜『うれしそうですね。』
フランドール「うん。このあいだ乗せてもらってから、自分用が欲しくて。」
咲夜『はい。そのための参号機です。操作方法も分かりやすくしています。』
フランドール「これで操縦するの?」
咲夜『はい。』
フランドールは、物珍しそうに、変な形の何かを手に取った。
フランドール「変なの。ええと、右にボタンが四つ。左に、何だろ?この十字のでっぱりは?」
咲夜『説明しますと、左の十字ボタンで動きます。十字の上を押すと前に歩き、下を押すと後退します。』
フランドール「うんうん。」
咲夜『右の四つのボタンで、それぞれ武器を使ったりできます。』
フランドール「ほうほう。」
咲夜『さらに、それらのボタンの上にある、四つのボタン。これらで方向転換や、その他の行動を。』
フランドール「へえ~。」
咲夜『最後に、真ん中のボタンで緊急停止及び再起動です。わかりましたか?』
フランドール「わかった。」
咲夜『それでは、始めますよ。』
咲夜が、出撃の合図を送る。
咲夜「フランゲリオン参号機、出動!」
ゴオオオオオオオオ!
妹を乗せた妹型兵器は、大地に立った。
レミリア「咲夜。」
咲夜「はい。」
レミリア「参号機の操縦システムだけど、何?」
咲夜「さあ?どうやら、『じょいぱっど』と申すものを改良した物らしいですが・・・・。」
レミリア「何、それ?」
咲夜「さあ?冥界の蔵にあったとか、某魔法使いのコレクションだったとか・・・・。」
レミリア「ふ~ん・・・・。」
咲夜「魔界の産物だとか、古道具屋で買ったものだとか、いろんな説が飛び交っておりますが・・・。」
レミリア「つまりは、よくわからない、と?」
咲夜「ええ。私の手元には、参号機の取扱説明書ぐらいしかありません。」
レミリア「・・・どうでもいいんだけど、何かとやばい気がするのよね。」
咲夜「同感です。」
それは、言ってはいけないと、思う。
・
・
・
フランドールは、参号機の操縦桿、『じょいぱっど』をガチャガチャしていた。
フランドール「え~と、これを押したら。」
ブン!
参号機の腕が握り拳を作り、そして腕は前方へ突き出された。
フランドール「パンチ、と。」
そんな感じで暫く動かしていた。
フランドール「よし、基本操作は完璧。」
咲夜『飲み込みが早いですね。それじゃあ、今日はこれぐらいにしましょうか。』
フランドール「もっと遊びたい。」
咲夜『それはなりません。』
フランドール「え~・・・・・。」
咲夜『第一、敵が居ないのに暴れられては、お嬢様に怒られますよ?』
フランドール「う~ん・・・・・・・。」
少し悩む妹様。
そして、
フランドール「それじゃあ、敵を探して討伐してくる。」
咲夜『何ですと?』
フランドール「いってきま~す。」
グオオオオオオオオオ!
参号機は飛び立っていった。
咲夜『妹様、お戻りください!おやつ抜きにしますよ?』
フランドール「・・・・・・・それは困る。」
フランドールは、仕方なく引き返そうとした。
そのとき、
パキッ
咲夜『ん?』
フランドール「あれ・・・・・?」
何か、音がした。
フランドール「え~と・・・・。」
咲夜『妹様・・・・・。』
フランドール「はい。」
咲夜『何があったか、咲夜に教えていただけますか?』
フランドール「怒らない?」
咲夜『怒りません。』
フランドール「それじゃあ・・・・・。え~とね。」
フランドールは語った。
衝撃の事実を!
フランドール「操縦桿が、壊れた。」
咲夜『・・・・・・・・・・。』
フランドール「・・・・・・・・・・。」
咲夜『何ですと~!?」
フランドール「やっぱり怒った。」
咲夜『怒ってません!怒鳴ってるだけです!』
フランドール「似たようなもんじゃない。」
うい~ん!うい~ん!
突然音が鳴り始めた。
咲夜『妹様!脱出を!』
フランドール「駄目みたい。私の言うこと、な~んにも聞いてくれない。」
咲夜『・・・・・・はい?』
ゴガガガガガガ!
振動。
そして、
ゴオオオオオオオオ・・・・・・!
飛行。
咲夜『妹様!いずこへ?』
フランドール「この子に聞いて。」
咲夜『参号機!いずこへ?』
フランドール「答えてくれないと思うけど。」
咲夜『・・・・・・・・・。』
ブツ
通信が切れた。
咲夜「ああ、通信まで・・・・・・・・。」
レミリア「どうするの?」
咲夜「仕方ありません。残り三体を出して、回収させましょう。」
レミリア「仕方ありませんね。」
・
・
・
うい~ん! うい~ん! うい~ん!
咲夜『フランゲリオンパイロットは、すぐさま集合せよ!これは訓練ではない!繰り替えす!これは・・・。』
けたたましい警報音と、咲夜の放送。
藍「な、何だ何だ!?」
パチュリー「ただ事じゃないみたいね。」
美鈴「行きましょう!」
三人は 急ぎ司令室へ向かう。
・
・
・
咲夜「集まってもらったのは他でもない。」
美鈴「何事ですか?」
藍「また、うちの寝坊助が攻めて来たか?」
咲夜「ちがうわ。早合点しない。」
咲夜は、一呼吸置いて語る。
咲夜「率直に言えば、参号機が暴走した。」
美鈴「は?」
パチュリー「何ですって?」
藍「ほう。」
パチュリー「どういうこと?」
咲夜「それが、起動実験中に操縦桿が壊れたみたいで、それで制御不能に・・・・。」
藍「今回は、それを破壊してこいと?」
咲夜「出来るなら、被害少なめに回収して欲しいんだけど。」
パチュリー「簡単にはいかないでしょうね。」
美鈴「まあ、努力はしますけど・・・。」
咲夜「頼んだわよ。」
・
・
・
で、三人は出撃した。
そして、参号機を補足。
ど~ん!
ど~ん!
参号機は、暴れまわっている。
美鈴「そういえば・・・・。」
藍「どうした?」
美鈴「参号機には、パイロットが乗ってるのよね?」
藍「そうだな。」
美鈴「それじゃあ、攻撃したら中の人も・・・・・。」
藍「相手はコレと同等かそれ以上のものだぞ?手加減して勝てると思うか?」
美鈴「でも・・・。」
パチュリー「しっ・・・・!」
藍が、会話を止める。
参号機「・・・・・・。」
参号機が、こちらを向く。
藍「・・・気付かれたか。」
パチュリー「話は後ね。」
美鈴「来た!」
ギュン!
参号機が、もの凄い速さで三機に迫った。
藍「ふ、喰らえ!式神『憑依・・・・。」
どか~ん!
藍「ぐわ!」
参号機の、電光石火の攻撃を喰らった弐号機は、向こうに吹っ飛ばされる。
美鈴「は、速い!?」
パチュリー「流石、最新型・・・・・。」
美鈴「パチュリー様!そっちに行きました!!」
パチュリー「え・・・・?」
ドガァ!
パチュリー「く!」
美鈴「パチュリー様!?」
続いて零号機も、一撃で倒される。
参号機「・・・・・・・・・。」
美鈴「・・・・・・強い。」
参号機の強さを目の当たりにした美鈴は、素直にそう思った。
美鈴「こいつ・・・・・、隙が無い。」
相手は只者ではない。
少しでも気を抜けば、即座にやられるだろう、と。
初号機は、身構える。
美鈴「・・・・確かに、中に誰が乗っていようと、そんなこと気にしてる余裕は無いわね。」
美鈴「どんな相手にでも全力を尽くす。それが武道家としての、相手に対する最大の礼儀・・・・・・。」
身構えること数分。
美鈴は様々な考えを、脳裏に浮かべた。
しかし美鈴は、動くことが出来なかった。
下手に攻撃すれば、こちらがやられるからである。
これは、武道の心得がある者として、当然の処置であろう。
・
・
・
が、一方では、そんなことおかまいなしに、
レミリア「・・・・・・退屈ね~。」
咲夜「ああやってじっとされていては、見てるほうは暇で仕方が無いわ。」
三流映画の鑑賞をしてるかのごとく、二人はつまらなさそうに戦闘を見ていた。
咲夜「仕方ない。少しぐらい破壊してもいいわ。だから早くやっちゃいなさい。」
美鈴『・・・・・・・・。』
咲夜は指示を出すが、美鈴は答えない。
咲夜「駄目です。すっかり勝負の世界に入っちゃってます。」
レミリア「そういうのって、近くで見るから面白いのよねえ・・・。」
咲夜「外はいい天気ですよ?」
レミリア「解ってるわよ。でも、咲夜?」
咲夜「はい。」
レミリア「あなたのことだから、何か私を楽しませてくれる何かを、用意してるんじゃなくて?」
咲夜「はい・・・・。」
ゴソゴソ・・・
レミリアがそう言うと、咲夜は服のポケットに手を入れ、
咲夜「じゃ~ん!」
何かを取り出した。
レミリア「わ~。」
ぱちぱちぱち・・・
手を叩くお嬢様。
レミリア「で、それは何?」
咲夜「はい。スイッチです。」
レミリア「見ればわかるわ。それで何が起こるの?」
咲夜「見てのお楽しみです。それでは早速、今週の目玉・・・・。」
咲夜は親指をスイッチにやり、
咲夜「ポチっとな。」
ポチ
スイッチを押した。
・
・
・
美鈴「・・・・・・・・・・。」
美鈴は、今だ攻撃の糸口をつかめずにいた。
美鈴「・・・・・何か、きっかけでもあれば・・・・・。」
そう思った瞬間、
グググ・・・・
美鈴「え!?」
ググ・・・
美鈴「ちょっと!?何よ、これ!?」
グ・・・・
美鈴「初号機が・・・、止まる・・・・?」
・・・・・・
初号機は沈黙した。
美鈴「そんな!エネルギーはまだ八割・・・・。」
参号機「・・・・・・・・!」
ギュン!
隙を逃さず、参号機は初号機に遅いかかる。
美鈴「やられる・・・・・・!」
美鈴は覚悟を決めた。
しかし、
ドガァ!!
美鈴「な・・・・・?」
初号機にダメージは無い。
そして、前に映ったのは、
美鈴「参号機・・・・、何故・・・?」
吹っ飛ばされた参号機だった。
理由がわからず、美鈴は困惑する。
グググググ・・・・・・
美鈴「初号機が・・・?」
初号機「・・・・・・・・・・。」
ドドドドドド!!
初号機が、参号機を目掛けて走り始めた。
美鈴「どうなってるのよ!?コントロールが効かない!?」
初号機は、美鈴の意思とは無関係に動いている様子。
ドガァ!
参号機「グ・・・・・・・。」
初号機「・・・・・・・・。」
ドゴッ!
ドガァ!
ドカ!
初号機は参号機に、容赦ない攻撃を加える。
美鈴「あああ・・・・・・・。」
最も間近にいる美鈴は、何もできなかった。
ドゴォ!
ガラガラガラ・・・・
空振りした拳が、山を砕く。
ドン!
ぐわしゃ~ん!
初号機が参号機が吹っ飛ばす。
その拍子に、周りの建物が崩れる。
?「わ~!一体何が~!?」
建物の持ち主と思われる誰かの悲鳴。
参号機「・・・・・・ギ・・・、ギ・・・・・。」
初号機「・・・・・・・。」
参号機は、もうボロボロだった。
美鈴「もう、いいでしょ?・・・・・ね?」
初号機「・・・・・・・。」
美鈴「ほら、周りもえらいことになってるわ。だから・・・・・?」
目を覆い、耳を塞ぎたくなる惨状を、美鈴はやめさせようとした。
しかし、
ドドドドドド!!
初号機は、再び走り出した。
無論、目標は参号機であろう。
美鈴「お願い!言うことを聞いて!」
美鈴は叫ぶが、初号機は応えない。
美鈴「あああ・・・、怒られる・・・。絶対怒られる・・・・。」
代わりに返ってきたのは、
ドカ!
ドカ!
参号機を殴る音。
初号機「・・・・・・・・。」
初号機は、構えをとり、
ダダダダダダダダダダダダダ!!
目にもとまらぬ攻撃を仕掛ける。
そして、
美鈴「あ、ああ・・・・・。」
ドカ~ン!!
参号機は、爆発した。
美鈴「・・・・・・・・やっちゃった・・・・・・・。」
あまりのことに美鈴は、放心状態となった。
・
・
・
咲夜「いかがでしょうか?」
レミリア「これは何?」
咲夜「ええ。試験的に取り付けた、自動操縦システムです。」
レミリア「ふ~ん。」
咲夜「しかしながら、いささか・・・・・。」
レミリア「やりすぎた、みたいね。」
モニターには、破壊された参号機、砕かれた山、倒壊した建物などが映っていた。
咲夜「申し訳ありません・・・。」
レミリア「まあ、いいわ。それより。」
咲夜「はい。」
咲夜は、通信を入れる。
咲夜「弐号機と零号機は、それぞれ初号機と参号機破片を回収。出来るだけ、人目につかないようにね。」
藍『無茶言うな・・・・・。いたた・・・・・・。』
・
・
・
美鈴「・・・・・・・・。」
紅魔館に帰ってきた美鈴。
しかし、安心は出来なかった。
美鈴「大切な参号機を破壊し、周辺に被害を及ぼした・・・。絶対、ただじゃ済まない・・・・。」
美鈴の心は、そんな気持ちで一杯だった。
橙「参号機のパイロットさん、見つけたよ。」
咲夜「今行く。」
外から、声が聞こえた。
美鈴「そうだ・・・。参号機には人が乗ってたんだ。」
死んでたらどうしよう、と思った。
橙「あ、ちゃんと生きてる。」
咲夜「当たり前よ。運ぶの手伝って。」
橙「了解。」
再び、外からの声。
美鈴「生きてる?よかった・・・・・・。」
気持ちが少し楽になった美鈴は、外に出る。
そして、運ばれて行く参号機のパイロットを確認する。
美鈴「あれは・・・・・・。ええ!?」
美鈴の目に写った者。
それは、
咲夜「妹様、大丈夫ですか?」
フランドール「あ~、スリル満点だったわ。」
咲夜「大丈夫のようですね。」
フランドール「でも、ちょっと痛かった。」
咲夜「それじゃあ、ちょっと医務室にでも行きましょうか。」
悪魔の妹、フランドール・スカーレット。
美鈴「そ、そんな・・・・。それじゃ私、妹様を・・・・・。」
やっつけちゃった。
フランドール「・・・・・・・・。」
美鈴「あ・・・・・。」
目が合った。
とにかく不安になる美鈴だが、
ピ!
美鈴「え・・・・・・?」
フランドールが美鈴に向かって、親指を立てた。
美鈴「よくやった、ってこと?妹様・・・・・・。」
感動を覚える美鈴。
し か し、
フランドール「・・・・・・・(ニッコリ)」
美鈴「え・・・・・?」
す~・・・・・
フランドールは、笑顔を作る。
そして、立てていた指を横へ向けた。
美鈴「ええと・・・、こっちへ来い?」
美鈴はその意味を理解した。
だがフランドール、横に向けていた親指を、
下 に 向 け た 。
美鈴「・・・・・・・・・あ、あ・・・ああ・・・・。」
その意味を理解した美鈴は、
美鈴「うわあああああああああ~~~・・・・・・・・・・!!!」
叫ぶしかなかった。
※意味 シメる。
「よくやった。だからこっちに来い。シメるから。」
・
・
・
一方、
霊夢「あ、あは、あははは・・・・・・・。」
今回の戦場跡。
倒壊した建物。
それは
霊夢「あははははははは・・・・・・・・。」
博麗神社。
第八話 完
展開も別に壊してないのに。
なんでこんなにも笑えるンだーッ!?(←笑いすぎで悶絶中