Coolier - 新生・東方創想話

The boundary of a smile.――後篇

2004/02/04 07:27:51
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 一目で解った。その微笑みは作り物だ。
 奥底に感情を閉じ込めたそれは、自分が浮かべるそれと同一のものだ。
 だって云うのに、その微笑みは綺麗過ぎた。
 だって云うのに、その微笑みは眩し過ぎた。
 とても――作り物とは思えないほどに。



                   5/

 友彦は、呆然と紫を見ていた。その顔は、何を云われたのか解ってないようにも見える。
 ――否。
 解っているのだろう。そう長い付き合いではないが、紫は友彦の事を理解していた。
 この少年は聡明だ。聡明だが、莫迦なだけだ。
「冗談です――よね?」
 友彦は縋(すが)りつくような笑みを浮かべた。いいえ、と紫は首を振ってそれを切り捨てる。
「でも、そんな――妖怪、なんて」
 友彦はしきりに首を振る。
 紫は嗤った。
「見たでしょう? 貴方も。普通の人間が人の記憶を消したり、大木から飛び降りて無事で居られたりするのかしら?」
「でも―――!」
 紫は、一歩友彦に近づく。友彦は後退りしかけ、それでも気丈に立ち止った。
 真っ直ぐに挑むようにこちらを見る友彦に、紫の笑みが深くなる。云わねば解らぬと云うのなら、全て云うだけだ。
「私が本気で貴方との結婚を考えているとでも思った? 莫迦ですね。私にとって、貴方は食料でしかない。それ以上でも、それ以下でもない。食料なんかと――結婚出切ると思うかしら?」
 友彦の顔が、見る見るうちに歪んでいく。
 何故か―――
「私が貴方をすぐに殺して食べなかったのは、ただの戯れよ。冬までの暇つぶしくらいにはなるかと思っての事だけれど――予想以上に貴方は愉しませてくれた」
 ―――心が、ちくりと痛んだ。
 首を振って、紫はその思いを振り落とす。
「でも、もうそれもお終い。ままごと遊びには飽きました」
 そう云って、紫は眼を細める。友彦はびくり、と震えた。
「僕を――食べるんですか」
 躊躇なく、紫は答えた。
「ええ。食べます」
 その言葉に、友彦の顔が絶望に歪み――すぐに消えた。
「それ――でも」
 代わりに出たのは全てを押し込めた微笑み。苦しそうに、哀しそうに、それでも友彦は笑う。
「それでも――僕は、紫さんのことが」
 大好きなんです、と友彦は微笑んだ。
 紫の表情から笑みが消えた。
 す、と友彦の首に手を伸ばす。氷のような紫の手に、友彦は僅か震える。それでも――笑みは絶やさない。
「――怖いんでしょう?」
 いいえ、と友彦は笑いながら、震えながら、首を横に振った。
 紫はぎり、と奥歯を噛み締め、平手で友彦の頬を打った。ぱあん、と乾いた音が響く。
 きょとんとした顔の友彦の両頬を、紫は両手でがしりと掴む。
「笑う以外の感情を表現するのは、そんなに厭?」
「え――?」
「笑っていればどうにかなるとでも思っているの? 答えなさい」
「――めそめそとしたり、陰気臭い顔を撒き散らすよりは、笑っていたほうが――いいでしょう?」
「ふざけないで」
 紫は怒りに燃えた瞳で、友彦を睨みつける。酷く、苛々した。
 殴られても、裏切られても、それでも笑い続けている友彦が。許せなかった。
 何故こんなに激昂しているのか――己でも、解らなかった。ただ激情に任せて、紫は言葉を吐きつける。
「子供が生意気な口を叩かないで。怖いのなら怯えればいい。哀しいのなら泣けばいい。子供が素直に感情を表現できないで――他の誰がそれをするって云うの!」
「僕、は―――」
「貴方は子供です。子供だから先程のような莫迦な事も云える。でも、子供なのに貴方は笑うことしかしない。素直に笑う事も、素直に泣く事も、同じ。それは大人になれば出来ない、とても大切な事。なのにそれを貴方は放棄している。それが――私は許せない」
 云いながら――紫は漸(ようや)く気付いた。
 素直に感情を表現しない。
 どんな感情も微笑みで塗り潰してしまう。
 それは――紫自身だ。
 だが、違う。友彦と紫は、決定的に違う。

 紫は他人に恐怖を与えるために微笑み、
 友彦は他人を不快にさせないために微笑む。

 その違いを理解した時――紫の怒りは急速に冷めた。
 友彦から手を離し、紫は友彦に背を向ける。そのまま、云った。
「帰りなさい」
 有無を云わせぬ口調で続ける。
「帰って、もう二度とここには来ないで。次にその顔を見たら――殺して、喰らいます」
 友彦は何かを云おうと口を開き、何も云う事が出来ずに閉じた。ぺこと頭を下げ、踵を返して歩き出す。
 その気配が完全に消えるまで、紫はそのまま立ち尽くしていた。
 これで終わりだ、と思った。
 これで終わりだ、と思いたかった。
 でも。












 解らなかった。感情を押し込め、自分が浮かべる笑みは、必ず何処か歪んでいる。
 それは感情を消しきれないからだ。消しきれなかった感情が、歪みとして現れ出でる。
 なのにその少女の微笑みはそれがない。作り物の筈なのに、歪んでいない。綺麗過ぎる。
 それは――感情を完全に消していると云う事だ。




                     6/

 次の日の夜――紫は先日と同じ大木の枝に腰掛けていた。

 視線は博麗大結界に向けられている。それは人と妖の境。こちら側に棲んでいる者は、妖怪か、妖怪に近い人間だけだ。
 であればこそ。その結界は引かれている。こちら側では、普通の人間は無力だから。
 であればこそ。紫は結界に揺らぎを作る。無力な人間を弄び、その反応を見るのは愉しいから。
 永劫を往く上での一時の娯楽。それだけの筈だった。
 なのに。 
 紫は結界を見ている。その向うにある人の世界を。
 そこから来る者を待っていた。
 来る、と確信していた訳ではなかった。むしろ、来るはずがない、と思っていた。
 来ればあの少年は死ぬ。紫に殺される。
 彼もそれは解っているはずだ。彼は聡明である。だから、来るはずがない。
 それでも紫が待っているのは――やはり理解していたからだ。あの少年は。
 紫はただじっと待っている。心は只管(ひたすら)に空虚だった。
 その背に、声がかかった。
「――紫様」
「来たの?」
 振り向かず、紫は声の主――藍に問う。
 藍は一瞬躊躇し、はい、と頷いた。
 そう、と紫は苦笑した。泣き笑いのようでもあった。
「莫迦な子ね」
「どう――なさるお積りですか。今ならまだ、結界の揺らぎを消せば」
「殺して喰らうわ。それでお終い。貴女たちは、手を出さないで」
「―――御意」
 す、と藍の気配が消える。
 それを確認して、紫は枝からふわりと飛び降りた。
 何事もなく地面に降り立ち、紫は歩き出す。遊びの始末をつけるために。



「あ。今晩は、紫さん」
 唐突に現れた紫に驚くこともなく、友彦はそんな間の抜けた挨拶をしてきた。
 紫の住む小屋から数由旬手前。そこは既に、人間界の境を越えた場所。
 挨拶を返すことなく、紫はただ眼を細めた。
「何故、来たの」
 問う声さえ鋭い。敵意が篭っている、と云ってもいい。
 友彦は、困ったように笑った。
「云い忘れてたことがあるんです。僕にも、紫さんに黙ってたことがありますから」
「解ってるのかしら? 貴方は、もう戻れないところまで来てしまったのよ。云ったわよね、次にその顔を見たら――殺して喰らう、と」
 周囲の温度が急速に下がる。紫の身から発散された妖気と――紛うことなき殺気のためであった。
 真正面からそれを叩きつけられ、それでも友彦は紫から目を離さなかった。
「覚悟は、出来ています。でも、せめて話を聞いてからに――して貰えませんか?」
 紫は友彦を睨みつけ、
「――善いわ。遺言くらいは、聞いて差し上げます」
 ふ、と唐突に殺気を掻き消した。
 ありがとうございます、と友彦は頭を下げる。己を落ち着かせるように大きく深呼吸し、そして云った。
「一目惚れって云うのは、実は嘘なんです」
「――え?」
「初めて話した時の、最後の作り物の笑顔も、ポーズです。紫さんなら――きっと気にしてくれると思ったから」
「どう――云うこと?」
 友彦は微笑む。それは矢張り感情を押し殺した、何処か歪(いびつ)な微笑み。
「云いましたよね、紫さん。僕は、笑うことしかしないって。それが紫さんには許せないって。僕も、同じです」
 辛そうに、哀しそうに、友彦は笑う。
「一番最初に紫さんが見せた、あの微笑み。それが、僕には許せなかったんです。感情を消すと云うのは、こんなにも辛い事なのに。それを易々とやってのけた貴女が――いいえ、それを辛い事だとすら解らずに、完璧な作り物の笑顔を見せた貴女が、僕は許せなかった」
 紫は顔を一瞬歪め、そして嗤った。
「莫迦ね。私と貴方の笑顔は同じ作り物の笑顔でも、その質が違う。貴方は他人を不快にさせないように、と笑顔を作るのでしょう? だから辛いのよ。私は、私が愉しむために笑顔を作っている。辛い事なんてない」
「本当に?」
 友彦は真っ直ぐに紫を見た。その名の通りの、紫の瞳を。
 紫は――何故か直視出来ず、顔をあさっての方向に向けてええ、と頷いた。
 友彦はふ、と唇をほころばせる。そこに歪みはない。とても優しげな笑みだった。
「僕は、貴女を心の底から笑わせてみたかった。怒らせてみたかった。そのためなら、どんな事でもするつもりでした」
「ふうん。私は貴方に、踊らされていたと云うことかしら?」
 無理矢理に怒りをかき集め、紫は友彦を睨んだ。この少年がそんな者ではないと云う事は――もうとうに解っていると云うのに。
 友彦はゆっくりと首を振る。
「いえ。紫さんは――思ったよりもいい人でしたから。どちらも僕の意図しないところで、それは達成できました。だから、心残りは後一つだけです」
 友彦はポケットに手を入れ、何かを取り出す。小さな花を括って作った、花の指輪。友彦はそれを持ち上げ、へへ、と照れたように笑った。
「本当は本物のダイヤとかのが欲しかったんですけど、流石に無理でしたから」
 そう云って、友彦は紫に近づいて行く。紫の目の前で立ち止り、姿勢を正した。

 八雲紫さんッ――と友彦は声を張り上げ、

「僕の最後の贈り物です―――僕と、結婚してくれませんか?」

 指輪を、差し出した。

 紫の顔が今度こそ、どうしようもないほどに歪んだ。きつく眼を閉じ、震える声で、云った。
「理由を――聞かせて貰えませんか?」
「愛に理由が必要でしょうか?」
 おどけたように肩を竦め、友彦は微笑む。
「ですが敢えて云うならば、僕は貴方の本当の笑顔を見てしまったからです。貴方と、ずっと一緒に居たいと思ってしまったからです。僕の人生を賭けてもいいと――本当にそう思ってしまいましたから」
「貴方の云っていることは――よく解りません」
 紫は首を振る。この少年は、莫迦だ。掛け値なしの大莫迦者だ。
 だから。
「あはは、そうかもしれませんね。僕はどうも調子に乗ると、デンパが入ってしまうようなので」
「ずっとも何も――ないでしょう。貴方はもう、ここで終わるのに」
 もう何を云っても無駄だろう、と紫は思った。それでも、云わずにはおれなかった。
 少年は微笑む。それは作り物の笑顔。なのに、歪みはもう何処にもなかった。
「それでも、です。―――お返事を、聞かせて貰えませんか?」
 紫は微笑もうとした。上手くいかなかった。いつもは意識せずとも出来るそれが、今は何処か歪に歪んでしまった。
 全く、と思う。この少年の云う通りだ。微笑みを作ることは――こんなにも辛い。
 それでも。

「申し訳――ないけれど――」
 紫は微笑み続ける。それは、紫の意地であったから。
「お断り――させて、頂けるかしら」

 友彦は困ったように目を閉じ、眉宇を寄せて、それでも笑った。
 今ならば解る。それが、この少年の精一杯の哀しみの表現なのだろう。
「やっぱり、そうですか。――うん。紫さんならそう云うと思ってました」
 あーあ、と友彦は大きく伸びをする。その仕草は何故か、満足げだった。
「あ。でも、これは差し上げますね。短い間でしたけど、僕は本当に愉しかったですから。こんなに愉しかったのは、多分生まれて初めてでした。だから、そのお礼です」
 そう云って、友彦は紫に指輪を握らせた。
「これで、僕の話は終わりです。聞いてくれて、本当に嬉しかったですよ」
 ありがとうございます、と友彦はお辞宜し、満足そうに――本当に満足そうに、笑った。

 紫は――もうどうすればいいか解らなくなっていた。
 この少年を、殺す。殺して、喰らう。それは酷く容易い。
 でも、そうする事に何の意味がある? そうする事に何の価値がある?
「――そんな顔を、しないでください。僕は貴女の忠告を聞かなかった。それで、理由は十分でしょう?」
 そうだ。この少年の云う通りだ。己の忠告を、友彦は聞かなかった。

 ――だから?

 目の前の人間は、食料だ。殺して食べるのは、当然の事だ。最初から――そのつもりで傍に置いていたのだ。

 ――だから、食べるの?

 紫は、吠えた。
 怒りも、哀しみも、戸惑いも――全ての感情を打ち捨て、空虚な心のまま友彦の首に掴みかかる。後はこの手に少し力を込めれば――。

 頬に、暖かな手が触れた。優しげな瞳が、正気を失った紫の瞳と合った。

 気にせずに紫は手に力を込めかけ、
 ―――駄目、だ。
 ぎりぎりで、踏みとどまった。
 この少年を殺すのは、私だ。八雲紫と云う個だ。それを、妥協するつもりなどなかった。
 紫は、ゆっくりと口を開いた。
「――怖いんでしょう?」
 はい、と微笑んだまま友彦は頷く。
「怖い、です。でも――いいんです。考えようによっては、これも貴女とずっと居られると云う事ですから」
「――泣かないのですか? これが、最後の機会ですよ」
「最後だからこそ、です。これは、僕の意地ですから」
「莫迦ですね、貴方は」
「そう――ですか?」
「ええ。大莫迦よ」
「――はは、そうかもしれませんね。ああ、後、藍さんと橙さんに、宜しく云っておいてくれますか?」
「――ええ、解りました」
「ありがとう」
「目を――閉じていて。すぐに、終わるから」
 友彦は、素直に目を閉じた。
 その時を、待った。
 唇に――何か柔らかなものが、触れた。

「――あ」
「さようなら、友彦。ええ――私も、愉しかったです」

 ごきり、と鈍い音が頭蓋の後ろの方で聞こえて、
 友彦の意識は、闇に落ちた。












 解らなかった。理解出来なかった。
 感情を消すと云う事は――それは本当に、辛いことなのに。
 少女は微笑んでいる。自分には出来ない、完璧な、作り物の笑顔。
 それが辛い事だとすら解ってないような、とても綺麗な笑顔。
 だから、決めた。
 この少女を心の底から笑わせてやる。
 気付けば、言葉が口から滑り出ていた。

『僕と―――』

 だから、それは偽りない本心。
 作り物の笑顔でさえ惚れてしまったと云うのに、彼女の本当の笑顔を見たら、それこそ結婚でもして貰う他なくなるだろうから―――。

『―――結婚してくれませんか?』


   
                        7/

 不味い、肉だった。初めて見た時に、思ったとおり。
 紫は箸を置き、口を拭いた。
「藍――もう、いいわ。下げて頂戴」
「は――申し訳御座いません。お口に合わなかったでしょうか?」
「そう云う訳でもないけれど。今は、あんまり食欲がないの」
 そうですか、と藍は申し訳なさそうに頷き、元は木国友彦の父親であったその肉を下げた。
 ふう、と溜め息を吐き、紫は部屋の中を見回した。
 この部屋はこんなに広かっただろうか、と思う。
 友彦から貰った贈り物は、一部を除いて全て処分した。がらんどうの部屋は、昔に戻ったと云うだけのことなのに。

 友彦の事は、藍は何も云わなかった。橙でさえ、何も云わなかった。
 気をつかってくれているのだろう。それは、今の紫には有り難かった。
 結局、紫は友彦を食った。骨は小屋の裏手に埋めた。
 それで正しかったのか、紫には解らない。
 何が正しかったのか。何処で間違えたのか。紫には解らない。解らない、が。
 紫は友彦を食べる事を選んだ。
 それが、八雲紫と云う妖怪だから。

 ふと、窓の外を見る。小雪がちらほらと舞っていた。
 冬が、来ていた。
「――藍。橙」
「はい」
「はーい」
 二人の式神を眺める。何が正しいのか。この二人にならば、解るのだろうか。
 紫は苦笑して小さく首を振る。
 解る訳がない。誰にも正しい答えなんて、解る訳がない。
「そろそろ――眠ることにするわ。後の事は、宜しくお願いね」 
「御意。お休みなさいませ、紫様」
「はい! まっかせてください。お休みなさいです、紫様」
「ええ、お休み。二人とも」
 二人に微笑み、紫は寝床へ向かう。
 既に用意されていた布団に潜り込むと、すぐに眠気が襲ってきた。
 眼を閉じる前に、枕元に置いておいたオルゴオルの箱を開けた。
 静かな旋律が流れ出す。死と幻想を奏でた、それは紫の曲。
 懐から花の指輪を取り出し、紫はそれを抱いて眼を閉じた。

 睡魔に引きずり込まれながら、紫は考える。
 微笑みの境界。それは普通、余人には窺い知れぬものだろう。
 それを、あの少年は知ってしまった。そしてその境界を取り払おうとした。
 でも、そんな事は不可能だ。あらゆる境界を操る紫とて、そんなものを取り払えはしない。
 だから、あの少年は無駄死にだ。
 そう思っていた。
 だが、違うのかもしれない。
 少年は――友彦は、紫に微笑む事の辛さを教えた。
 それは、結果として紫の微笑みの境界を揺らがせた。
 全く、大したものだと思う。紫にも不可能な事を、ただの人間の、しかも子供がやってのけたのだ。
 これだから――人間は恐ろしい。そして、面白い。

 これからも、紫は結界に揺らぎを作り続けるだろう。人間は、愉しいから。
 友彦との日々は、愉しかった。そして哀しかった。でも。
 悲哀より愉悦を。
 そうでなければ、永劫など生きていられない。
 これからも、紫は人間を喰らい続けるだろう。
 いつか紫が打ち倒され、喰らわれる時まで。
 その時は、きっと微笑んでいよう。

 そんな事を考えながら、
 八雲紫は眠りに落ちた。

 静寂の中、オルゴオルの曲だけが何時までも哀しげに鳴り響き続けていた。


                  
                   了
完結で御座いましてよ、お姉さま。
…………。
ごめんなさいごめんなさいちょっと調子に乗ってみたかっただけなんです。
ともあれ今晩は。
寝。と申しまして御座います。

最早云うことは前篇と中篇のコメントで云ってしまったので、
ここではただ万感の思いを込めてお礼を。
ここまで読んで下さった方、本当に本当に有り難う御座いました。
寝。
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コメント



0.7300簡易評価
4.907-C削除
終わり方が良かったです。それでこそ妖怪、それでこそ八雲紫と思えるような。
キャラもよくつかめていると思います。
11.80名無し削除
私はもう少しバッドな終わり方の方が好きですが、かなり楽しませていただきました。
18.70名前が無い程度の能力削除
内容には文句ないですが、三編を一度に載せると面倒くさがって読まない人が出るかも知れません。少し間を置いたほうが良かったのでは?
19.90水城削除
とても愉しく読めました。最終的に食べたのも「らしく」。
内容的にも80、猫眼の橙がかっこ良かったので+10ということで(ぇー
良いものを有難う御座いました。
22.80削除
最後まで愉しく読ませて頂きました。
八雲紫と云う存在、人と妖怪について色々考えてしまいました。
こういった展開も自分としてはとても好きです。
26.80絵利華削除
紫様のSS、特に恋愛(?)系は稀ですから新鮮さを感じます。
こういう展開も紫様らしいといえばらしいですね。あとは藍がカッコよかったかな。
次回作にも期待です。
37.80珠笠削除
あら、まじで折ったんですか。 …と思ったのは私以外にもいるに違いない。
しかし、紫様と人間の関係か…新たな紫様像が生まれた気がします。
良いモノでした。
42.無評価(´・ω・`)削除
愉しく読ませていただきました。紫様の性格がよく出てると思います。
ただ私的にはもうちょっとハッピーエンドでも良かったかなと思ったりw
43.80(´・ω・`)削除
点数入れるの忘れてた_| ̄|○
44.80flanker削除
友達に薦められて読んだのですが、良かったです。夢想的なフレームの中に、残酷でかつ耽美的な現実を織り込もうとした姿勢が気に入りました(ちょっと難しいけど^^;)エンドもこれでよかったと思う。人の意識が接する現実は、どちらかといえばエグくて無常だけど、その中でも、意識の動かし方さえ工夫すれば、人は限りない愉悦を求められる。
47.100ななり削除
文章の形式が面白い。こういうのは非常に好きです。
それに、人間の意地と妖怪の意地の表現が素敵です。しっかり食べたところが好感触。
あと、後書きのハッチャケっぷりもステキです。
60.80Ricotte削除
い"や"あ"ぁぁぁぁぁ、ゆ"か"り"~~~ン!!
61.90名前が無い程度の能力削除
ゆかりんにここまで意外な角度で切り込んだ事、驚きました。
95.100名前が無い程度の能力削除
まさに紫さまでした。
後に残る暗さが、八雲紫というキャラの厚みを増してて
ホントよかったです。
106.80名前が無い程度の能力削除
”もし”、”仮に”、そういった考えが浅慮なのはわかっています。
それでも……

一匹の個としての妖怪の在り方を見せてもらった気がします。
有難うございますと、心からそう申し上げたいです。
117.90名前が無い程度の能力削除
おおおー
122.70翔菜削除
作品自体もですが、前半の橙が彼女にしたいくらい色々とステキ
129.90名前が無い程度の能力削除
いやいや、紫様の違った一面を見せてもらいました。
まさかこんな角度から切り込むとは……
143.無評価名前が無い程度の能力削除
本当に良い文でございました.ただ,人間が作ったもので人間が読むものである以上,妖怪の意識もやはり人間っぽくなってしまうわけで,少年にここまで感情が揺らいでしまう妖怪なら,たぶん食べれないんじゃないかなとも思ったり.
144.無評価名前が無い程度の能力削除
妖怪らしく紫らしい紫が良かった。
あと、他の方も書かれていますが、さりげなく橙が激萌えw
最高クラスの作品だったと思いますよ。
145.100名前が無い程度の能力削除
点数付け忘れた。
146.100名前が無い程度の能力削除
巡り巡って旧作巡り。
そこにもあるよ、埋もれた名作。

ただただ面白かった。
ここまで創想話が進んだのに、最高峰に面白かった。
その思いを万感の点数に。
148.100Docter DD削除
素晴らしい作品だと思いました。
紫様の微笑みの境界が変化するほどに。
149.80名前が無い程度の能力削除
結構昔の作品ですが楽しめました
152.90名前が無い程度の能力削除
なんともいえない気持ちになりました
これこそ紫だとはもちろん思いますが、しかし同時にもう少し違う結末もあったのではないかと・・・
難しいもんですな
いい作品でした。ありがとう