注意!
1:オリジナル設定、自分的解釈を含みます。ご注意ください。
2:先に拙作「ETERNAL TRIANGLE」を読む事をお勧めします。
今更言うまでもないが、人間だった頃から紫と幽々子は無二の親友だった。
いずれその身が老いても想いは朽ちず、永遠に離れる事はない・・・・・
周りの人間からしてみれば異常とも言える関係の二人だが、紫が神隠しにあう事でその関係が少しだけ変わってきた。
その身は老いず、想いも朽ち果てず。いつまでも共に歩き続ける。
限られた命だからこそ、時が限られているからこそ、その中で生きる姿が美しいという考えもあるだろう。
だが二人にその考えは通用しない。永遠に変わらぬ想いを永遠に分かち合おうとする。
彼女たちはどこまでも貪欲で、しかしどこまでも純粋だった。
『少しだけ形を変えた幸せな日々』は永く、それこそ人の一生よりはるかに永く続き、二人は歩き続けた。
永遠に変わらない事を望み、偶然ではあるがそれが現実のものとなった二人・・・
だが、さらにほんの少しだけでも変化を望む者もいた。
「紫様!」
藍が大声を出すのは珍しい。
紫の式として第二の人(?)生を送っている彼女、睡眠時間の長い紫をむやみに起こすまいとその口数は自然に少なくなっていく。
妖怪として、式として、永く生き続けている事と元々の性格の丸さも手伝い、常に穏やかな心の彼女は
うるさくしたり自分から積極的に話しかけるという事はあまりなかった。
「どうしたの、藍」
「紫様、ついに私、私・・・!」
「式を打てるようになったんです!」
「・・・式を?」
式を打つというのは容易ではない。それなり以上の霊力または妖力がなければ式は安定せず、使役者の命令を聞かず暴走するか短命に終わってしまう。
紫はその事も藍にしっかり教えてきたが、それでも『式を打てるようになった』と言うからには
本当にちゃんとした式を打てるようになった、それだけ藍の妖力が付いてきたと考えるべきなのだろう。
それ以前に、式が式を打つという話は聞いた事がない。九尾の狐としての藍の力が式を打てるまでに至ったという事なのだろう。
紫は何も言わず、藍がどんな式を見せてくれるのか見守る事にした。
式符に妖力をこめ、一匹の黒猫の背中に貼り付ける。既存の生物をベースに式を打つやり方は、白や藍と同じだ。
黒猫は身もだえしながら猫の姿を廃し、二本足で立って人の姿に近づいていく。
「さあ、出でよ橙!」
人の形になった『何か』が眩い光を発する。
目も開けていられないほどの光が荒れ狂った末、その中心には少女がいた。
服は着ておらず、二本の尻尾を持ち、茶色い短めの髪と大きな瞳は活発な印象を与える。
「猫又をベースにした式・・・・妖怪を素体とした点、あなたと似てるわね、藍」
「はい・・・橙・・・・・この子も私と同じく傷ついて倒れていた所を助けたんです」
「・・・・出会いまで私たちと同じなのね」
思えば。紫が初めて藍と出会った時、藍は目の前の橙のような幼い少女だった。
永い時を経て少しずつその体は成長し、いまや『女性』と言っても差し支えない程度にまでなってしまったが。
ともあれ、その藍が自分と同じ境遇の妖怪を拾い、傷を癒し、助けてやった。
紫と藍は時には親子のような関係で時を過ごしてきたが、そんな紫の目に初めて見る『橙』は自分の孫のようにも映っていた。
橙は周りをキョロキョロと見回し、その視界に藍の姿を捉えるや否や・・・
「あっ、藍しゃま~!」
いきなり藍に抱きついた。
「わっ、こら!」
「えへへ、藍しゃまだ~い好き!」
「橙、今日は私のご主人様にも来てもらってるんだぞ!」
「・・・・・ふぇ?藍しゃまのご主人さま?」
「そう。だからちゃんと服を着て、そんなに暴れない」
言われてしぶしぶ服を着る橙を見て、紫は呆れを通り越して笑い出す。
「すいません紫様、橙はまだ本当に幼いので・・・・・」
「いいのよ。なかなか楽しそうな式じゃない」
「今は楽しいだけが取り柄って言うか・・・・はは・・・・・」
「時間はたっぷりあるんだし、これからしっかり育てていけばいいわ」
「はい・・・・」
「藍・・・あの橙に悲しい思いをさせちゃ駄目よ」
「はい・・・・」
「式を悲しませれば、その悲しみは何らかの形で必ず使役者自身に返ってくる。因果応報という奴なのかも知れないけど、
そうなるという事だけは間違いないわ。これを肝に銘じておいて」
「はい・・・・・・」
「・・・さて、出かけましょうか」
「?」
「橙はまだ生まれたばかりで何も知らないんでしょう?お勉強を兼ねて、3人でお散歩にでも行きましょう」
「・・・・・はい!お供します」
『少しだけ形を変えた幸せな日々』はさらにもう少しだけ形を変え、紫の前に在る。
こんな幸せな日々がずっと続けばいい。
そう、ずっと。
ずっと。
ずっと。
ずっと・・・・・・・・・・・・
幾千万の光と闇を見つめ。
―――幾億の生命に触れ。
悠久の時を経て。
―――今、ここに至る。
決して平坦な道ではなかった。
―――平坦な道はつまらない。
失ったものは多いけれど。
―――同じくらい多くのものを得た。
これからも多くの出逢いが待っている。
―――世界は、さらに広がっていく。
『永遠に・・・』
「・・・どうしたのよ?いきなりボーっとしちゃって」
「・・・・ちょっと、昔の事を思い出しててね・・・」
「戦いの最中にずいぶん余裕だな」
「それとも、この期に及んで私たちに勝つ秘策なんて物があるのかしら?」
「・・・ある、と言ったら?」
今、紫の目の前には3人の人間がいる。橙を蹴散らし、藍も倒したとか言う。
最初は橙も藍も手抜きしてたんだろうとも思ったが、その力は本物だ。
事実、紫のスペルカードがここまでで10枚破られてきたのだから。
彼女のスペルカードは全11枚、もう後がない。なのに紫は余裕そのものだった。
「橙を倒し、藍を倒し・・・そして私をここまで追い詰めた。その実力は褒めてあげるわ。
でも私とてもう退く事はできない。『生と死の境界』を越えてきたあなた達は今、私という存在そのものに触れようとしている。
私の人生に触れ、それでも飽き足らず私そのものを暴こうというのなら仕方ない、私は私の奥義で自分を守る。
あなた達、死ぬ覚悟か私の全てを受け入れる覚悟をなさい・・・・・・」
「世界よ、開け・・・・・・」
―――世界よ、開け。
「全ての境を、我が手に・・・・・・」
―――全ての境を、我が手に。
「全ての生を、幻想に・・・」
―――全ての生を、幻想に。
「全ての死に、幻想を・・・・・・」
―――全ての死に、幻想を。
「我が全ては・・・結界に・・・・・・・・・」
―――我が全ては、結界に。
「さあ、来なさい・・・・・」
結界『動と静の均衡』
紫奥義『弾幕結界』
(end)
1:オリジナル設定、自分的解釈を含みます。ご注意ください。
2:先に拙作「ETERNAL TRIANGLE」を読む事をお勧めします。
今更言うまでもないが、人間だった頃から紫と幽々子は無二の親友だった。
いずれその身が老いても想いは朽ちず、永遠に離れる事はない・・・・・
周りの人間からしてみれば異常とも言える関係の二人だが、紫が神隠しにあう事でその関係が少しだけ変わってきた。
その身は老いず、想いも朽ち果てず。いつまでも共に歩き続ける。
限られた命だからこそ、時が限られているからこそ、その中で生きる姿が美しいという考えもあるだろう。
だが二人にその考えは通用しない。永遠に変わらぬ想いを永遠に分かち合おうとする。
彼女たちはどこまでも貪欲で、しかしどこまでも純粋だった。
『少しだけ形を変えた幸せな日々』は永く、それこそ人の一生よりはるかに永く続き、二人は歩き続けた。
永遠に変わらない事を望み、偶然ではあるがそれが現実のものとなった二人・・・
だが、さらにほんの少しだけでも変化を望む者もいた。
「紫様!」
藍が大声を出すのは珍しい。
紫の式として第二の人(?)生を送っている彼女、睡眠時間の長い紫をむやみに起こすまいとその口数は自然に少なくなっていく。
妖怪として、式として、永く生き続けている事と元々の性格の丸さも手伝い、常に穏やかな心の彼女は
うるさくしたり自分から積極的に話しかけるという事はあまりなかった。
「どうしたの、藍」
「紫様、ついに私、私・・・!」
「式を打てるようになったんです!」
「・・・式を?」
式を打つというのは容易ではない。それなり以上の霊力または妖力がなければ式は安定せず、使役者の命令を聞かず暴走するか短命に終わってしまう。
紫はその事も藍にしっかり教えてきたが、それでも『式を打てるようになった』と言うからには
本当にちゃんとした式を打てるようになった、それだけ藍の妖力が付いてきたと考えるべきなのだろう。
それ以前に、式が式を打つという話は聞いた事がない。九尾の狐としての藍の力が式を打てるまでに至ったという事なのだろう。
紫は何も言わず、藍がどんな式を見せてくれるのか見守る事にした。
式符に妖力をこめ、一匹の黒猫の背中に貼り付ける。既存の生物をベースに式を打つやり方は、白や藍と同じだ。
黒猫は身もだえしながら猫の姿を廃し、二本足で立って人の姿に近づいていく。
「さあ、出でよ橙!」
人の形になった『何か』が眩い光を発する。
目も開けていられないほどの光が荒れ狂った末、その中心には少女がいた。
服は着ておらず、二本の尻尾を持ち、茶色い短めの髪と大きな瞳は活発な印象を与える。
「猫又をベースにした式・・・・妖怪を素体とした点、あなたと似てるわね、藍」
「はい・・・橙・・・・・この子も私と同じく傷ついて倒れていた所を助けたんです」
「・・・・出会いまで私たちと同じなのね」
思えば。紫が初めて藍と出会った時、藍は目の前の橙のような幼い少女だった。
永い時を経て少しずつその体は成長し、いまや『女性』と言っても差し支えない程度にまでなってしまったが。
ともあれ、その藍が自分と同じ境遇の妖怪を拾い、傷を癒し、助けてやった。
紫と藍は時には親子のような関係で時を過ごしてきたが、そんな紫の目に初めて見る『橙』は自分の孫のようにも映っていた。
橙は周りをキョロキョロと見回し、その視界に藍の姿を捉えるや否や・・・
「あっ、藍しゃま~!」
いきなり藍に抱きついた。
「わっ、こら!」
「えへへ、藍しゃまだ~い好き!」
「橙、今日は私のご主人様にも来てもらってるんだぞ!」
「・・・・・ふぇ?藍しゃまのご主人さま?」
「そう。だからちゃんと服を着て、そんなに暴れない」
言われてしぶしぶ服を着る橙を見て、紫は呆れを通り越して笑い出す。
「すいません紫様、橙はまだ本当に幼いので・・・・・」
「いいのよ。なかなか楽しそうな式じゃない」
「今は楽しいだけが取り柄って言うか・・・・はは・・・・・」
「時間はたっぷりあるんだし、これからしっかり育てていけばいいわ」
「はい・・・・」
「藍・・・あの橙に悲しい思いをさせちゃ駄目よ」
「はい・・・・」
「式を悲しませれば、その悲しみは何らかの形で必ず使役者自身に返ってくる。因果応報という奴なのかも知れないけど、
そうなるという事だけは間違いないわ。これを肝に銘じておいて」
「はい・・・・・・」
「・・・さて、出かけましょうか」
「?」
「橙はまだ生まれたばかりで何も知らないんでしょう?お勉強を兼ねて、3人でお散歩にでも行きましょう」
「・・・・・はい!お供します」
『少しだけ形を変えた幸せな日々』はさらにもう少しだけ形を変え、紫の前に在る。
こんな幸せな日々がずっと続けばいい。
そう、ずっと。
ずっと。
ずっと。
ずっと・・・・・・・・・・・・
幾千万の光と闇を見つめ。
―――幾億の生命に触れ。
悠久の時を経て。
―――今、ここに至る。
決して平坦な道ではなかった。
―――平坦な道はつまらない。
失ったものは多いけれど。
―――同じくらい多くのものを得た。
これからも多くの出逢いが待っている。
―――世界は、さらに広がっていく。
『永遠に・・・』
「・・・どうしたのよ?いきなりボーっとしちゃって」
「・・・・ちょっと、昔の事を思い出しててね・・・」
「戦いの最中にずいぶん余裕だな」
「それとも、この期に及んで私たちに勝つ秘策なんて物があるのかしら?」
「・・・ある、と言ったら?」
今、紫の目の前には3人の人間がいる。橙を蹴散らし、藍も倒したとか言う。
最初は橙も藍も手抜きしてたんだろうとも思ったが、その力は本物だ。
事実、紫のスペルカードがここまでで10枚破られてきたのだから。
彼女のスペルカードは全11枚、もう後がない。なのに紫は余裕そのものだった。
「橙を倒し、藍を倒し・・・そして私をここまで追い詰めた。その実力は褒めてあげるわ。
でも私とてもう退く事はできない。『生と死の境界』を越えてきたあなた達は今、私という存在そのものに触れようとしている。
私の人生に触れ、それでも飽き足らず私そのものを暴こうというのなら仕方ない、私は私の奥義で自分を守る。
あなた達、死ぬ覚悟か私の全てを受け入れる覚悟をなさい・・・・・・」
「世界よ、開け・・・・・・」
―――世界よ、開け。
「全ての境を、我が手に・・・・・・」
―――全ての境を、我が手に。
「全ての生を、幻想に・・・」
―――全ての生を、幻想に。
「全ての死に、幻想を・・・・・・」
―――全ての死に、幻想を。
「我が全ては・・・結界に・・・・・・・・・」
―――我が全ては、結界に。
「さあ、来なさい・・・・・」
結界『動と静の均衡』
紫奥義『弾幕結界』
(end)
このSSを読んで紫様がもっと好きになりました!