ここは、とある山奥。
この山、普段は何の変哲も無い、ふつーの山ある。
そう、普段は・・・・。
びゅおおおおおお!!
藍「さ、寒いぃ~・・・・・・。」
なんせ今は、冬の真っ只中。
山は吹雪に見舞われ、天候は最悪である。
どういうわけか八雲藍は、そんな中を歩いていた。
藍「な、何でこんな寒い時に、こんなとこに来なけりゃならん・・・・。」
魔理沙「は~、ふかふかだぜ・・・・。」
藍「こら、人の尻尾を防寒具にするな。」
魔理沙「あんたずるいよな。こんないい物を標準装備してるなんて。」
藍「自分で使えなきゃ意味が無い。それより。」
藍は、自分の尻尾でふかふかしていた魔理沙に問いかける。
魔理沙「何だ?」
藍「どーしてこんな日に、こんな場所に出向かなきゃいけないのよ?」
魔理沙「知りたいか?」
藍「知りたい。」
魔理沙「そうか。」
理由を語る魔理沙。
魔理沙「冬の伝統的な行事といえば、何だ?」
藍「ええと、クリスマスに正月、あとは節分か?」
魔理沙「そうだ。」
藍「で、それがどうした?」
魔理沙「まだわからないか?」
藍「わからない。」
魔理沙「そうか。」
魔理沙は続ける。
魔理沙「クリスマスも正月も終わった。残るは何がある?」
藍「節分だ。」
魔理沙「その通り。これでわかったと思うが?」
藍「わからん。」
魔理沙「・・・・あんた、いい加減にしろよ。」
藍「いい加減にするのはそっち。早く教えろ。」
魔理沙「仕方の無い狐め。」
仕方なく続ける。
魔理沙「いいか。世間ではもうすぐ節分だ。」
藍「そうだねえ。」
魔理沙「節分といえば、豆を投げて鬼を払い福を呼ぶ。そんな行事だな。」
藍「うむ。まあ、私らは鬼を憑けることもあるが。」
魔理沙「ここで言う鬼ってのは、病気や災難のことだ。」
藍「要は、あんたとか紅白とかメイドとか。」
魔理沙「で、節分を行うにあたり、重要なもの。それは・・・・。」
藍「豆か?」
魔理沙「そうだ。そういうわけで私たちは今!『伝説の豆』を取りに行っている最中なのだ!」
藍「お~。(パチパチパチ・・・・。)」
魔理沙の熱弁に、拍手で返す藍。
藍「帰る。」
魔理沙「待て。伝説の豆だぜ?見たいとは思わないのか?」
藍「こんな寒い思いしてまで、見たいとは思わない。」
藍は、来た道を引き返そうとする。
藍「あとは頑張ってくれ。それじゃ。」
魔理沙「くくく・・・。そんなこと言って、後悔はしないな?」
藍「どういうことよ?」
魔理沙「この天気だぜ?ヘタに動いたら遭難確定だ。」
びゅううううううう~・・・・・
強風プラス雪で、いわゆる吹雪である。
藍「道も無く、視界も悪い。では、このまま凍え死ねというのか!?」
魔理沙「私は馬鹿じゃない。」
藍「馬鹿だ。こんなんじゃ、豆にたどり着く前に凍死する。」
魔理沙「聞け。馬鹿じゃない私は、その豆のある場所に、いわゆる発信機を残してきた。」
藍「行ったことあるんなら、そのときに取っておけばよかったんじゃないか?」
魔理沙「そのときは無かったんだよ。まあ、季節物だしな。」
藍「つまり、引く道は無いが、行く道はあると?」
魔理沙「そういうわけだ。」
藍「ふむ・・・・・。」
藍はしばし考えた。
そして、
藍「帰る。」
帰ることにした。
魔理沙「物覚えの悪いやつだな。帰る道は無いって言ったろ?」
藍「ふん。道が無くても、方法はある。」
魔理沙「ほう、どんな手だ?」
藍「見てろ・・・。トオ!」
掛け声とともに、藍が飛び上がった。
藍「ははははは!地が駄目なら天を行く。適当に飛び回っていれば、山くらいは下りられるさ。」
魔理沙「そう上手くは、いかんもんだぜ?」
藍「ほざいてろ。じゃあな。」
藍は吹雪の中を飛んでいった。
魔理沙「魔符『マジックナパーム』。」
どか~ん!
藍「うわ~・・・・・・。」
藍を撃墜する魔理沙。
魔理沙「お~い!大丈夫か~?」
藍「あうう・・・・・・・。」
魔理沙「言わんこっちゃない。この吹雪じゃあ、何が飛んでくるかわからんぜ?」
藍「い、いや、流石に爆発物は飛んでくる気がしないが・・・。」
魔理沙「あ~あ、これじゃあ、空も無理だな。」
藍「しくしく・・・・・。」
藍は帰ることを諦めて、魔理沙の旅の共をすることにした。
・
・
・
びゅうううううう・・・・
藍「うおお・・・・・・・・。」
びゅうううう・・・・・・
藍「あががががが・・・・・・・。」
藍は、寒さに震えていた。
魔理沙「さっきからどーした?変な呻き声が聞こえるぜ?」
藍「さ、寒いぃ~・・・・・・・。」
魔理沙「軟弱だな。しっかりしろ。」
藍「うう・・・・、私の尻尾でぬくぬくしてる奴に、そんなこと言われたくない・・・。」
魔理沙「暖かいぜ。」
藍の尻尾でぬくぬくしている魔理沙。
うらやましい限りである。
藍「ああ・・・、意識が・・・・・。眠い・・・・・。」
魔理沙「しっかりしろ。寝たら・・・・。」
藍「殺すか・・・・?いっそのこと殺してくれ・・・。もう、楽になりたい・・・・。」
ぱた・・・
藍は力尽きた。
魔理沙「おい!寝るな!・・・・・・駄目か・・・・。」
・
・
・
藍「・・・・・・・・は!?」
魔理沙「お、気がついたか。」
八雲藍、復活。
藍「ここは、天国か?」
魔理沙「ここはな。だが、外に出ると・・・・。」
藍「外?」
びゅうううううう・・・・・・
外は猛吹雪。
藍「地獄か。」
魔理沙「地獄だ。」
藍「で、天国なここは何だ?」
魔理沙「いわゆる一つの『かまくら』というやつだ。」
藍「雪で作る小屋か。」
魔理沙「そうだ。意外と暖かいぜ。」
藍「そりゃあ、外に比べればな。」
藍が倒れたあと魔理沙は、かまくらを作って休んでいたらしい。
魔理沙「防寒具がなきゃ、この先やってられん。仕方ないから、あんたをここで介抱してたわけだ。」
藍「私は防寒具扱いかね?」
魔理沙「ああ。」
藍「私に何の罪がある?」
魔理沙「う~ん・・・、正直言って、あんたに罪は無い。あるのは、あんたの主人だ。」
藍「どういうことだ?」
魔理沙「実は、あんたの主人に頼んで、その場所に連れて行ってもらおうと思ったんだ。」
藍「紫様は冬眠中。」
魔理沙「そうだ。あいつのすきまに入って移動できてたら、どれほど楽だったものか・・・・。」
藍「紫様のすきまは、『ど○でもドア』じゃないぞ。」
魔理沙「それでも、寒さくらいは防げるはずだ。」
藍「で?」
魔理沙「せっかく家まで行ったのに成果が無いのでは、納得できん。そういうわけで。」
藍「私を拉致ったと。防寒具代わりに。」
魔理沙「その通り。」
藍「・・・・そこまではっきり言われると、反論する気も失せる・・・・。」
魔理沙「と言うわけで、主人の分は働いてもらうぞ。」
藍「横暴だ・・・・・。」
魔理沙「心配するな。豆は分けてやる。」
藍「報酬もないんじゃ、やってられん・・・・・・。くそ~・・・・。」
二人はしばらく休む。
魔理沙「・・・・・・外は、だいぶマシになってきたな。」
藍「出るのか?」
魔理沙「善は急げだ。」
外の天候がマシになったらしいので、出発を決意する。
藍「で、その場所はここから徒歩にして、あとどれくらいだ?」
魔理沙「約43200秒だ。」
藍「それは、つまり・・・・・。」
少女計算中・・・・・。
藍「半日(12時間)じゃないか~!!」
魔理沙「馬鹿!大声で叫ぶな。」
ゴゴゴゴゴ・・・・・・
藍「な、何の音だ・・・?」
魔理沙「ああ、これはだな。」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・。
魔理沙「いわゆる一つの、雪崩というやつだ。」
藍「げっ!」
魔理沙「音が大きくなってきてるな。このままだと・・・・。」
どか~ん!
どどどどどどど・・・・・・・・
魔理沙「巻き込まれ・・・・・・。」
藍「ぎゃああああ・・・・・・・。」
雪崩はかまくらを破壊し、二人を飲み込む。
そして二人は、雪の中へ消えた。
・
・
・
ぐぐぐ・・・
ぼこ!
魔理沙「ぷは!」
雪の中から、魔理沙が出てきた。
魔理沙「あ~、シャバの空気は美味いぜ。」
監獄から出てきたかのような台詞を吐く。
魔理沙「ほれ、あんたもこの美味い空気を吸いな。」
ずぼ!
藍「ううう・・・・・。」
魔理沙は尻尾をつかんで、藍を発掘した。
藍「もうやだ・・・・・・。」
魔理沙「そう言うな。」
藍はへこたれていた。
魔理沙「そんなあんたに、朗報だぜ。」
藍「なによ~・・・・?」
魔理沙「自然の力は偉大だ。よって、目的地までの距離が大幅に短縮された。」
藍「で・・・・?」
魔理沙「目的地まで、残り徒歩10分だ。」
藍「あ~・・・・、約600秒か・・・・。」
魔理沙「そうだ。そういうわけだから、行くぞ。」
藍「やだ。もう寝る。」
魔理沙「れっつごー、だ。」
藍「やめて~・・・・・。」
ずるずる・・・・
尻尾をつかまれて引きずられて行く藍。
藍「あ~る~晴れた~ひ~る~さがり~・・・・・。」
魔理沙「ああ、売るわけじゃないから安心しろ。」
藍「いちば~へつづ~くみち~・・・・。」
ずるずる・・・・
引きずられること数分。
藍「荷馬車がゆ~れ~る~・・・・・・。」
魔理沙「着いたぜ。」
藍の歌が終わったそのとき、魔理沙が到着を宣言した。
藍「え・・・?着いた・・・・?」
魔理沙「おう。ちょっと待ってろ。」
藍「あ、ああ・・・・。」
そう言って、魔理沙は藍の前から消えた。
藍「で、ここは何処だ?」
藍は周りを見渡した。
すると、目の前に建物があった。
そして、建物の上部に文字。
藍「ええと・・・・・。」
何気に書いてある文字。
『 香 霖 堂 』
がくっ!
藍「・・・・・・。」
香霖堂という文字を確認し、再び力尽きる藍。
魔理沙「お~い、香霖!例のもん取りにきたぞ~!」
建物の中から、魔理沙の声が聞こえた。
藍「(こんな・・・、こんなオチって・・・・・。)」
完璧にへこたれる藍。
しばらくして、建物の中から魔理沙が出てきた。
魔理沙「待たせたな。これが伝説の豆だ。」
藍「あ~・・・?」
もう、見る気力も無い。
魔理沙「ほら、この袋。滅多なことでは空気を通さないから、豆の品質が落ちにくいぜ。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「それに、これだ。紙で出来た鬼の面付き。いや~、伝説は本当だったんだな。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「外の世界では、豆を買うと鬼の面がオマケでついてくるって聞いたんでな。仕入れてもらったんだ。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「これで結構安い値で売ってるらしいが、まあ、あっちの物価は正直わからん。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「ほい。これはあんたの分だ。」
魔理沙は藍に、持っていた節分セットを一つ渡す。
しかし藍は、最早何かをする気力も体力も無かった。
魔理沙「さて、天気もいいから、飛んで帰るか。」
そう言うと魔理沙は宙に浮き、
魔理沙「じゃあな。またそのうち、遊びに行くからな。」
飛んで帰っていった。
藍「(鬼は~外・・・・、福は~内~・・・・。)」
藍が復活したのは、数時間後だったそうな・・・・。
・
・
・
後日。
なんだかんだで節分がすぎたころ、マヨイガにて。
魔理沙「今度はバレンタインだぜ。そういうことで、『幻のカカオ豆』を使ってチョコレートを・・・・・。」
藍「もういい!!聞きたくない!!」
魔理沙「バレンタインってのは、チョコレートを作ってお月見をする、風流な行事で・・・・。」
藍「帰れ~!鬼(災い)は~外~!!鬼は内!!式神『前鬼後鬼の守護』!」
どか~ん!
どか~ん!
鬼を払う藍。
マヨイガ二度目の節分が始まった。
八雲藍に、福が訪れますように・・・。
この山、普段は何の変哲も無い、ふつーの山ある。
そう、普段は・・・・。
びゅおおおおおお!!
藍「さ、寒いぃ~・・・・・・。」
なんせ今は、冬の真っ只中。
山は吹雪に見舞われ、天候は最悪である。
どういうわけか八雲藍は、そんな中を歩いていた。
藍「な、何でこんな寒い時に、こんなとこに来なけりゃならん・・・・。」
魔理沙「は~、ふかふかだぜ・・・・。」
藍「こら、人の尻尾を防寒具にするな。」
魔理沙「あんたずるいよな。こんないい物を標準装備してるなんて。」
藍「自分で使えなきゃ意味が無い。それより。」
藍は、自分の尻尾でふかふかしていた魔理沙に問いかける。
魔理沙「何だ?」
藍「どーしてこんな日に、こんな場所に出向かなきゃいけないのよ?」
魔理沙「知りたいか?」
藍「知りたい。」
魔理沙「そうか。」
理由を語る魔理沙。
魔理沙「冬の伝統的な行事といえば、何だ?」
藍「ええと、クリスマスに正月、あとは節分か?」
魔理沙「そうだ。」
藍「で、それがどうした?」
魔理沙「まだわからないか?」
藍「わからない。」
魔理沙「そうか。」
魔理沙は続ける。
魔理沙「クリスマスも正月も終わった。残るは何がある?」
藍「節分だ。」
魔理沙「その通り。これでわかったと思うが?」
藍「わからん。」
魔理沙「・・・・あんた、いい加減にしろよ。」
藍「いい加減にするのはそっち。早く教えろ。」
魔理沙「仕方の無い狐め。」
仕方なく続ける。
魔理沙「いいか。世間ではもうすぐ節分だ。」
藍「そうだねえ。」
魔理沙「節分といえば、豆を投げて鬼を払い福を呼ぶ。そんな行事だな。」
藍「うむ。まあ、私らは鬼を憑けることもあるが。」
魔理沙「ここで言う鬼ってのは、病気や災難のことだ。」
藍「要は、あんたとか紅白とかメイドとか。」
魔理沙「で、節分を行うにあたり、重要なもの。それは・・・・。」
藍「豆か?」
魔理沙「そうだ。そういうわけで私たちは今!『伝説の豆』を取りに行っている最中なのだ!」
藍「お~。(パチパチパチ・・・・。)」
魔理沙の熱弁に、拍手で返す藍。
藍「帰る。」
魔理沙「待て。伝説の豆だぜ?見たいとは思わないのか?」
藍「こんな寒い思いしてまで、見たいとは思わない。」
藍は、来た道を引き返そうとする。
藍「あとは頑張ってくれ。それじゃ。」
魔理沙「くくく・・・。そんなこと言って、後悔はしないな?」
藍「どういうことよ?」
魔理沙「この天気だぜ?ヘタに動いたら遭難確定だ。」
びゅううううううう~・・・・・
強風プラス雪で、いわゆる吹雪である。
藍「道も無く、視界も悪い。では、このまま凍え死ねというのか!?」
魔理沙「私は馬鹿じゃない。」
藍「馬鹿だ。こんなんじゃ、豆にたどり着く前に凍死する。」
魔理沙「聞け。馬鹿じゃない私は、その豆のある場所に、いわゆる発信機を残してきた。」
藍「行ったことあるんなら、そのときに取っておけばよかったんじゃないか?」
魔理沙「そのときは無かったんだよ。まあ、季節物だしな。」
藍「つまり、引く道は無いが、行く道はあると?」
魔理沙「そういうわけだ。」
藍「ふむ・・・・・。」
藍はしばし考えた。
そして、
藍「帰る。」
帰ることにした。
魔理沙「物覚えの悪いやつだな。帰る道は無いって言ったろ?」
藍「ふん。道が無くても、方法はある。」
魔理沙「ほう、どんな手だ?」
藍「見てろ・・・。トオ!」
掛け声とともに、藍が飛び上がった。
藍「ははははは!地が駄目なら天を行く。適当に飛び回っていれば、山くらいは下りられるさ。」
魔理沙「そう上手くは、いかんもんだぜ?」
藍「ほざいてろ。じゃあな。」
藍は吹雪の中を飛んでいった。
魔理沙「魔符『マジックナパーム』。」
どか~ん!
藍「うわ~・・・・・・。」
藍を撃墜する魔理沙。
魔理沙「お~い!大丈夫か~?」
藍「あうう・・・・・・・。」
魔理沙「言わんこっちゃない。この吹雪じゃあ、何が飛んでくるかわからんぜ?」
藍「い、いや、流石に爆発物は飛んでくる気がしないが・・・。」
魔理沙「あ~あ、これじゃあ、空も無理だな。」
藍「しくしく・・・・・。」
藍は帰ることを諦めて、魔理沙の旅の共をすることにした。
・
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・
びゅうううううう・・・・
藍「うおお・・・・・・・・。」
びゅうううう・・・・・・
藍「あががががが・・・・・・・。」
藍は、寒さに震えていた。
魔理沙「さっきからどーした?変な呻き声が聞こえるぜ?」
藍「さ、寒いぃ~・・・・・・・。」
魔理沙「軟弱だな。しっかりしろ。」
藍「うう・・・・、私の尻尾でぬくぬくしてる奴に、そんなこと言われたくない・・・。」
魔理沙「暖かいぜ。」
藍の尻尾でぬくぬくしている魔理沙。
うらやましい限りである。
藍「ああ・・・、意識が・・・・・。眠い・・・・・。」
魔理沙「しっかりしろ。寝たら・・・・。」
藍「殺すか・・・・?いっそのこと殺してくれ・・・。もう、楽になりたい・・・・。」
ぱた・・・
藍は力尽きた。
魔理沙「おい!寝るな!・・・・・・駄目か・・・・。」
・
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・
藍「・・・・・・・・は!?」
魔理沙「お、気がついたか。」
八雲藍、復活。
藍「ここは、天国か?」
魔理沙「ここはな。だが、外に出ると・・・・。」
藍「外?」
びゅうううううう・・・・・・
外は猛吹雪。
藍「地獄か。」
魔理沙「地獄だ。」
藍「で、天国なここは何だ?」
魔理沙「いわゆる一つの『かまくら』というやつだ。」
藍「雪で作る小屋か。」
魔理沙「そうだ。意外と暖かいぜ。」
藍「そりゃあ、外に比べればな。」
藍が倒れたあと魔理沙は、かまくらを作って休んでいたらしい。
魔理沙「防寒具がなきゃ、この先やってられん。仕方ないから、あんたをここで介抱してたわけだ。」
藍「私は防寒具扱いかね?」
魔理沙「ああ。」
藍「私に何の罪がある?」
魔理沙「う~ん・・・、正直言って、あんたに罪は無い。あるのは、あんたの主人だ。」
藍「どういうことだ?」
魔理沙「実は、あんたの主人に頼んで、その場所に連れて行ってもらおうと思ったんだ。」
藍「紫様は冬眠中。」
魔理沙「そうだ。あいつのすきまに入って移動できてたら、どれほど楽だったものか・・・・。」
藍「紫様のすきまは、『ど○でもドア』じゃないぞ。」
魔理沙「それでも、寒さくらいは防げるはずだ。」
藍「で?」
魔理沙「せっかく家まで行ったのに成果が無いのでは、納得できん。そういうわけで。」
藍「私を拉致ったと。防寒具代わりに。」
魔理沙「その通り。」
藍「・・・・そこまではっきり言われると、反論する気も失せる・・・・。」
魔理沙「と言うわけで、主人の分は働いてもらうぞ。」
藍「横暴だ・・・・・。」
魔理沙「心配するな。豆は分けてやる。」
藍「報酬もないんじゃ、やってられん・・・・・・。くそ~・・・・。」
二人はしばらく休む。
魔理沙「・・・・・・外は、だいぶマシになってきたな。」
藍「出るのか?」
魔理沙「善は急げだ。」
外の天候がマシになったらしいので、出発を決意する。
藍「で、その場所はここから徒歩にして、あとどれくらいだ?」
魔理沙「約43200秒だ。」
藍「それは、つまり・・・・・。」
少女計算中・・・・・。
藍「半日(12時間)じゃないか~!!」
魔理沙「馬鹿!大声で叫ぶな。」
ゴゴゴゴゴ・・・・・・
藍「な、何の音だ・・・?」
魔理沙「ああ、これはだな。」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・。
魔理沙「いわゆる一つの、雪崩というやつだ。」
藍「げっ!」
魔理沙「音が大きくなってきてるな。このままだと・・・・。」
どか~ん!
どどどどどどど・・・・・・・・
魔理沙「巻き込まれ・・・・・・。」
藍「ぎゃああああ・・・・・・・。」
雪崩はかまくらを破壊し、二人を飲み込む。
そして二人は、雪の中へ消えた。
・
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ぐぐぐ・・・
ぼこ!
魔理沙「ぷは!」
雪の中から、魔理沙が出てきた。
魔理沙「あ~、シャバの空気は美味いぜ。」
監獄から出てきたかのような台詞を吐く。
魔理沙「ほれ、あんたもこの美味い空気を吸いな。」
ずぼ!
藍「ううう・・・・・。」
魔理沙は尻尾をつかんで、藍を発掘した。
藍「もうやだ・・・・・・。」
魔理沙「そう言うな。」
藍はへこたれていた。
魔理沙「そんなあんたに、朗報だぜ。」
藍「なによ~・・・・?」
魔理沙「自然の力は偉大だ。よって、目的地までの距離が大幅に短縮された。」
藍「で・・・・?」
魔理沙「目的地まで、残り徒歩10分だ。」
藍「あ~・・・・、約600秒か・・・・。」
魔理沙「そうだ。そういうわけだから、行くぞ。」
藍「やだ。もう寝る。」
魔理沙「れっつごー、だ。」
藍「やめて~・・・・・。」
ずるずる・・・・
尻尾をつかまれて引きずられて行く藍。
藍「あ~る~晴れた~ひ~る~さがり~・・・・・。」
魔理沙「ああ、売るわけじゃないから安心しろ。」
藍「いちば~へつづ~くみち~・・・・。」
ずるずる・・・・
引きずられること数分。
藍「荷馬車がゆ~れ~る~・・・・・・。」
魔理沙「着いたぜ。」
藍の歌が終わったそのとき、魔理沙が到着を宣言した。
藍「え・・・?着いた・・・・?」
魔理沙「おう。ちょっと待ってろ。」
藍「あ、ああ・・・・。」
そう言って、魔理沙は藍の前から消えた。
藍「で、ここは何処だ?」
藍は周りを見渡した。
すると、目の前に建物があった。
そして、建物の上部に文字。
藍「ええと・・・・・。」
何気に書いてある文字。
『 香 霖 堂 』
がくっ!
藍「・・・・・・。」
香霖堂という文字を確認し、再び力尽きる藍。
魔理沙「お~い、香霖!例のもん取りにきたぞ~!」
建物の中から、魔理沙の声が聞こえた。
藍「(こんな・・・、こんなオチって・・・・・。)」
完璧にへこたれる藍。
しばらくして、建物の中から魔理沙が出てきた。
魔理沙「待たせたな。これが伝説の豆だ。」
藍「あ~・・・?」
もう、見る気力も無い。
魔理沙「ほら、この袋。滅多なことでは空気を通さないから、豆の品質が落ちにくいぜ。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「それに、これだ。紙で出来た鬼の面付き。いや~、伝説は本当だったんだな。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「外の世界では、豆を買うと鬼の面がオマケでついてくるって聞いたんでな。仕入れてもらったんだ。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「これで結構安い値で売ってるらしいが、まあ、あっちの物価は正直わからん。」
藍「・・・・・・。」
魔理沙「ほい。これはあんたの分だ。」
魔理沙は藍に、持っていた節分セットを一つ渡す。
しかし藍は、最早何かをする気力も体力も無かった。
魔理沙「さて、天気もいいから、飛んで帰るか。」
そう言うと魔理沙は宙に浮き、
魔理沙「じゃあな。またそのうち、遊びに行くからな。」
飛んで帰っていった。
藍「(鬼は~外・・・・、福は~内~・・・・。)」
藍が復活したのは、数時間後だったそうな・・・・。
・
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後日。
なんだかんだで節分がすぎたころ、マヨイガにて。
魔理沙「今度はバレンタインだぜ。そういうことで、『幻のカカオ豆』を使ってチョコレートを・・・・・。」
藍「もういい!!聞きたくない!!」
魔理沙「バレンタインってのは、チョコレートを作ってお月見をする、風流な行事で・・・・。」
藍「帰れ~!鬼(災い)は~外~!!鬼は内!!式神『前鬼後鬼の守護』!」
どか~ん!
どか~ん!
鬼を払う藍。
マヨイガ二度目の節分が始まった。
八雲藍に、福が訪れますように・・・。