頬に冷たいものが触れて目を覚ます。
周囲を包むのはしんしんと降る雪と夜の蒼さ。
闇に照らされ蒼く光る雪はさながら鳥の様。
ぼんやりとそれを見ているうちに、凍りついた記憶が溶けていく。
★★★
今夜は雪が降った。今年初めての雪だ。
ぼんやりとそれを眺めた後、少女は足元の湖に目を向ける。
玩具代わりだった蛙もこの季節では姿が見えない。
再び空へ顔をむけ、少女はほう、とため息をついた。
少女はずっと待っている。
★★★
まだ半分寝ている頭を振り、意識をはっきりとさせる。
眠っている間に声を聞いた気がする。
それは眠りの外から響いていた幽かな想いのかけら。
そのつぶやきが誰のものだったのか、彼女はよく知っている。
★★★
季節外れの蛙を一匹見つけた。
この季節にまだ居るなんて、だいぶ間抜けな蛙だ。
手に冷気を集中させると、蛙は簡単に凍りついた。
そのまま湖に放る。
ぼちゃん、と音がした後、溶けた氷から蛙が泳ぎ出た。
再び掴む。凍る。
そして放る。溶ける。
ぼんやりとしたまま繰り返す。
少女はずっと待っている。
★★★
ふと、彼女は顔を上げた。
透き通った想いが痛いくらいに響いてくる。
瞳を閉じて浮かび上がる景色は、懐かしい知らない場所。
それを感じて微笑むと、彼女は空へと身を躍らせた。
★★★
ひょっとしたら仲間とはぐれてしまったのかもしれない。
ぼちゃん、と音がして、蛙が泳ぎだす。
お前も会いたい人と会えないの?
掴む代わりに声をかける。
蛙はしばらく少女を見つめる。
そしてゲェコと一言啼いて泳ぎ去った。
冷たい風が少女を打ち、少女は身を震わせた。
少女の身を震わせたのは風の冷たさとは別のもの。
身を震わせながら、少女はずっと待っている。
★★★
冷たい空を構わずに飛ぶ。
一際強く風が吹いた。
その向こうには蛙と戯れる少女の姿。
★★★
風にうたれて少女は振り向く。
その瞳に映るのは冬の化身。
時間が止まったように少女は動かない。
冬の化身がにこりと笑う。
呪縛が解けたように少女は駆け出した。
少女はずっと待っていた。
身を切るような冷たい風ももう少女を震わせることはない。
★★★
湖のほとりで二人の少女が出会った。
周囲を包むのはしんしんと降る雪と夜の蒼さ。
闇に照らされ蒼く光る雪はさながら鳥の様。
短い冬がここから始まる。
周囲を包むのはしんしんと降る雪と夜の蒼さ。
闇に照らされ蒼く光る雪はさながら鳥の様。
ぼんやりとそれを見ているうちに、凍りついた記憶が溶けていく。
★★★
今夜は雪が降った。今年初めての雪だ。
ぼんやりとそれを眺めた後、少女は足元の湖に目を向ける。
玩具代わりだった蛙もこの季節では姿が見えない。
再び空へ顔をむけ、少女はほう、とため息をついた。
少女はずっと待っている。
★★★
まだ半分寝ている頭を振り、意識をはっきりとさせる。
眠っている間に声を聞いた気がする。
それは眠りの外から響いていた幽かな想いのかけら。
そのつぶやきが誰のものだったのか、彼女はよく知っている。
★★★
季節外れの蛙を一匹見つけた。
この季節にまだ居るなんて、だいぶ間抜けな蛙だ。
手に冷気を集中させると、蛙は簡単に凍りついた。
そのまま湖に放る。
ぼちゃん、と音がした後、溶けた氷から蛙が泳ぎ出た。
再び掴む。凍る。
そして放る。溶ける。
ぼんやりとしたまま繰り返す。
少女はずっと待っている。
★★★
ふと、彼女は顔を上げた。
透き通った想いが痛いくらいに響いてくる。
瞳を閉じて浮かび上がる景色は、懐かしい知らない場所。
それを感じて微笑むと、彼女は空へと身を躍らせた。
★★★
ひょっとしたら仲間とはぐれてしまったのかもしれない。
ぼちゃん、と音がして、蛙が泳ぎだす。
お前も会いたい人と会えないの?
掴む代わりに声をかける。
蛙はしばらく少女を見つめる。
そしてゲェコと一言啼いて泳ぎ去った。
冷たい風が少女を打ち、少女は身を震わせた。
少女の身を震わせたのは風の冷たさとは別のもの。
身を震わせながら、少女はずっと待っている。
★★★
冷たい空を構わずに飛ぶ。
一際強く風が吹いた。
その向こうには蛙と戯れる少女の姿。
★★★
風にうたれて少女は振り向く。
その瞳に映るのは冬の化身。
時間が止まったように少女は動かない。
冬の化身がにこりと笑う。
呪縛が解けたように少女は駆け出した。
少女はずっと待っていた。
身を切るような冷たい風ももう少女を震わせることはない。
★★★
湖のほとりで二人の少女が出会った。
周囲を包むのはしんしんと降る雪と夜の蒼さ。
闇に照らされ蒼く光る雪はさながら鳥の様。
短い冬がここから始まる。