咲夜「お嬢様。」
レミリア「何?」
咲夜「妖怪アンテナ・・・、もとい、レーダーに反応がありました。」
レミリア「敵なの?」
咲夜「映像に出します。・・・・・・・これは!?」
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リリーホワイト「(春ですよ~。春が来ましたよ~。)」
どか~ん!
どか~ん!
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映像には、リリーホワイトが(春を伝えるために)周囲を爆撃する様子が映っていた。
咲夜「いつぞの、春の妖精・・・・・。」
レミリア「季節外れもいいところね。」
咲夜「敵、戦略爆撃機は、あと数十分で紅魔館上空を通過します。」
レミリア「危ないわね・・・・・・。頼めるかしら?咲夜。」
咲夜「お断りします。」
レミリア「あら、どうして?」
咲夜「もうじき、ランチです。その準備を怠るわけにはいきませんわ。」
レミリア「それじゃあ、どうするの?」
咲夜「彼女に出てもらいます。訓練も兼ねて。」
レミリア「それはいい考えね。それじゃ、お願いね。」
咲夜「はい。」
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フランゲリオン初号機の搭乗席。
パイロットの美鈴は、訓練のために座らされていた。
美鈴「はあ~・・・・・・・。」
やる気はあんまり無いらしく、溜息が漏れる。
と、そのときである。
うぃ~ん!うぃ~ん!うぃ~ん!
美鈴「何!?」
突如として、警報音が鳴り響く。
咲夜『美鈴、聞こえる?』
美鈴「は、はい。聞こえます。一体何が?」
咲夜『詳しく話してる暇はないから、そのまま発進!』
美鈴『え・・・・・・?」
ゴオオオオオオオオオ~!!
美鈴「うぎぃああああああああ~・・・・・・。」
フラン初号機は、無理矢理発進させられた・・・・・。
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美鈴「うう・・・・・。非道い・・・・・。」
咲夜『泣き言を言ってる場合じゃないわ。』
泣きそうになってる美鈴に、咲夜は容赦なく指令を下す。
咲夜『いい?紅魔館に、はた迷惑なヤツが近づいてきてるわ。落としてきて。』
美鈴「そんなの、生身でいけますって。」
咲夜『それじゃあ、つまらない・・・・・・。』
美鈴「・・・・・・・・。」
咲夜『いや。これは、あなたの訓練を兼ねてるのよ。出来次第によっては、今日の訓練は終了よ。』
美鈴「悪かったら?」
咲夜『食事抜き。』
美鈴「・・・・頑張ります。」
ブツ!
通信が切れる。
美鈴「腹が減っては戦は出来ないっていうのに・・・・・。」
そう呟いているうちに、敵が近くにやってきた。
リリーホワイト「(立派な洋館にお住まいのみなさ~ん。春をお届けにあがりました~。・・・・・あら?)」
どうやら、初号機の存在に気付いたようである。
リリーホワイト「(まずは、あのおっきい人に、ひと足速く春をお伝え~。)」
美鈴「よ~し。いくぞ。」
接近する敵を迎撃しようと、美鈴は初号機を前に進めようとして、
美鈴「・・・・前方に人影!?」
止めた。
美鈴「誰よ?こんな時に・・・・・・・。」
美鈴は、人影の正体を確認した。
美鈴「・・・・・・げげっ!」
フランドール「・・・・・・・・。」
そこにいたのは、フランドール・スカーレット。
美鈴「ほ、本物の妹様・・・・・。」
フランドール「ふ~ん。私を模して、こんなの作るなんて。」
美鈴「あ、あの~、妹様・・・・?」
フランドール「なかなか、面白いわね。」
フランドールは、初号機に興味津々である。
フランドール「で、そこにいるのは誰かしら?」
美鈴「う・・・・、め、美鈴です・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ!」
ポンと手を打つ妹様。
美鈴「その間は、そしてその手は何だったんですか?」
フランドール「そんなのどうでもいいわ。それより!」
美鈴「は、はい!」
フランドール「乗せて。」
美鈴「・・・・・・はい?」
フランドール「私を、それに乗せてほしいの。」
美鈴「だ、駄目です。」
フランドール「なんで?」
美鈴「この中は危険です!そんなところに妹様を案内するなんて、私には出来ません!」
フランドール「・・・・・・・・・・。」
美鈴「それに、この場も危険ですから、早くお部屋に戻って・・・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・・・。」
美鈴「い、妹様・・・・?」
フランドール「・・・・・・・・・・・。」
突如無口になるフランドール。
美鈴「ま、まさか、怒って発狂!?」
美鈴は、最悪のケースを頭に浮かべた。
しかし、
フランドール「・・・・・・・グス。」
美鈴「へ・・・?」
フランドール「・・・うっ・・・ひっく・・・・。」
美鈴「あ、あの・・・・・・。」
フランドール「・・・・ひっく・・・・・、ひっく・・・・。」
涙目になって、今にも泣きそうである。
美鈴「(や、やばい!このままでは、私が泣かしたってことで、お嬢様に叱られる・・・・・・。)」
フランドール「・・・・・・・うっ・・・・、うっ・・・・・。」
美鈴「(さらにその後、妹様本人から制裁を・・・・・・。)」
フランドール「う~・・・・・・・・。」
美鈴「(咲夜さんは、乗せても乗せなくても怒るだろうし・・・・・。仕方ない・・・。)」
美鈴は、意を決した。
フランドール「う、うえ~・・・・・・・・!」
美鈴「い、妹様!どうぞ、乗ってください!」
フランドール「うっ・・・・、グス・・・・。いいの・・・・・?」
美鈴「いいですとも、いいですとも!でも、咲夜さんには内緒ですよ。後が怖いから・・・。」
フランドール「わ~い!ありがと~!」
美鈴「(・・・・・・・お子様は現金ね・・・・・・。)」
やむを得ず、美鈴はフランドールをコックピットに同乗させることにした。
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咲夜「ん?コックピットに異物確認?一体何事?」
レミリア「咲夜。」
咲夜「ああ、もう、何やってるのかしら?あの子。・・・はい。」
レミリア「今日のランチも、なかなかだわ。」
咲夜「はい。ありがとうございます。」
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フランドール「ふ~ん。これで、敵をやっつけるのね。」
美鈴「そうですよ。今から、雑魚を落としに・・・・・。」
咲夜『ちょっと!』
咲夜から通信が入る。
美鈴「げげっ!」
咲夜『コックピットに異常が確認されたわ。一体何があったの?』
美鈴「そ、それが、妹様が・・・・。」
咲夜『妹様?』
フランドール「わ~、すご~い。咲夜の声が聞こえる。」
美鈴「・・・・そういうわけです。」
咲夜『事情はわかったわ。とりあえず、退きなさい。』
美鈴「はい。」
咲夜の命令で、初号機を退かせようとした美鈴。
フランドール「美鈴。」
美鈴「はい?」
フランドール「命令。そのまま敵に突撃。」
美鈴「はい。・・・・・・って、ええ!!?」
フランドールの命令に、びっくりする美鈴。
美鈴「あ、あの・・・・。さっきの通信で、撤退しろって・・・・。」
フランドール「突撃。」
美鈴「いや、だから・・・・・・。」
フランドール「神風。」
美鈴「それじゃ、死んじゃいますって。」
咲夜『何してるの?早く撤退しなさい。』
そこへ、再び咲夜から通信が入る。
美鈴「いや、それが、妹様が・・・・。」
フランドール「桜花。」
美鈴「その辺にして下さい。そろそろヤバイです。」
咲夜『無視して、撤退しなさい。今は妹様の安全が第一、機体の安全が第二よ。』
美鈴「ちなみに、私は?」
咲夜『第九ぐらい。』
美鈴「(その間に、一体何が入るの・・・・?)」
咲夜『とにかく撤退。』
美鈴「は、はい・・・・・。」
フランドール「突撃。」
美鈴「うっ!」
咲夜『早く!』
美鈴「し、しかし・・・・。」
フランドール「ご~ご~。」
美鈴「ああ・・・・・・。」
咲夜『早く退きなさい!』
フランドール「潔く散るべし!」
美鈴「うああ・・・・・・・・・。」
板ばさみにされ、苦悩する美鈴。
と、そこへ悪魔の一言。
フランドール「それとも、今ここで散る?」
・・・・・・・・・・・・・・。
美鈴「う、うおおおおおおおおおおお~~~!!!」
初号機は、敵に向かって突撃を開始した。
咲夜『ちょっと!何してるの!?』
美鈴「うわあああああああ~~!!!!」
フランドール「いけ~!」
美鈴「ああああああああああああ~!!!!」
咲夜『こら~!聞いてるの!?中国!!!』
美鈴「・・・・・・・おおおおおおおおおおお~~!!!!!!」
美鈴、もうヤケクソである。
リリーホワイト「(あら、おっきい人がこっちに。よし、春を・・・・・。)」
春を伝える弾幕を張ろうとした妖精。
しかし、
ガシッ!
リリーホワイト「(あれ?)」
捕まえられた。
美鈴「はあ~・・・・!はあ~・・・・・!」
フランドール「すごいすご~い!」
咲夜『言うこと聞きなさい!中国!!』
美鈴「・・・・・・・・う、うわあああああああ!!!!」
フラン初号機は、敵を捕らえた手を思いっきり振りかぶった。
そして
美鈴「中国言うなあああああ~~~~~~~!!!!!!」
ブン!
リリーホワイト「(あ~・・・・・・・・・・。)」
ひゅうううううう~・・・・
きら~ん
春の妖精は、星となった。
咲夜「まったく。あの子ったら・・・・・。」
レミリア「はふや~(さくや~)。」
咲夜「お嬢様、口の中にものを入れて喋るのは、はしたないですよ。早く飲み込んでくださいな。」
レミリア「(ごっくん。)」
咲夜「よろしい。で、何ですか?お嬢様。」
レミリア「おかわり。」
咲夜「かしこまりました。今日は大食ですね。けっこうなことですわ。」
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戦闘後、美鈴は咲夜に呼び出された。
美鈴「・・・・・・・・・・。」
咲夜「どうして、私の命令に従わなかったの?」
美鈴「そ、それは・・・・・。」
咲夜は、美鈴に説教をしている。
咲夜「今回は敵を撃退でき、妹様も無事だったからよかった。」
美鈴「うう・・・・・・。」
咲夜「でも、もし何かあった時、あなたは責任が取れるの?」
美鈴「し、しかし・・・・。」
咲夜「何?言い訳でもあるの?」
美鈴「妹様に、脅されました・・・・。」
咲夜「妹様に殺されるのと、私に殺されるの。どっちがよかったかしら?」
美鈴「どっちも嫌だけど・・・・。それに・・・・・。」
咲夜「それに?」
美鈴「い、妹様が、泣きそうになって、それで、仕方なく乗せました・・・・。」
咲夜「・・・・・ふ~。あなたは、鬼の目の涙に負けたってわけね。」
美鈴「でも、考えてもみて下さい。」
咲夜「?」
美鈴「仮に、咲夜さんが私と同じ立場で、立ちはだかったのがお嬢様だった時、咲夜さん断れますか?」
咲夜「・・・・・・・・・。」
咲夜さん、妄想中。
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レミリア「・・うっ・・うっ・・、さくや~・・・・、ひっく・・・・、乗っちゃ、ダメ?」
咲夜「お、お嬢様・・・・・。」
レミリア「ぐすん・・・・・・。」
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咲夜「・・・・・・・・・・・・(つー・・・・)。」
美鈴「咲夜さん、鼻血、鼻血。」
咲夜「・・・・・ハッ!」
ゴシゴシ
妄想終了。
現実に戻り、鼻血を拭く咲夜さん。
咲夜「美鈴!!」
ガシ!
美鈴の両肩を掴む咲夜。
美鈴「は、はい!」
咲夜「いい夢を見せてくれてありがとう。この件は不問とするわ。」
美鈴「は、はあ・・・・。」
咲夜「お昼は用意してあるから。ちゃんと食べておきなさい。」
美鈴「はい・・・・・。」
咲夜「それじゃ、ゆっくり休んでね。うふふふふ・・・・・・・。」
そう言うと、咲夜は去って行った。
美鈴「・・・・・・・一体、どんな夢を・・・・・・。」
それは、咲夜さん本人以外、知る術は無い。
第弐話 完