よく晴れた日の午後。
我が家である神社へと続く石段の前。
あたりに人気はなく、虫の声が聞こえるのみ。
遥か上空では、どこかで見た妖精が春を伝えている。
「…平和ねぇ…」
珍しく石段の下まで掃除をする気になったのも、この陽気の所為かもしれない。
「あらかた綺麗になったし、そろそろお茶にでもしようかな…」
誰にともなくつぶやき、背後を振り返る。
遥か遠く、空の高みまで続いていそうな石段。
いつもは不精してひとっ飛びなのだけれども。
「…たまには」
歩いて登るのもいいかもしれない。
段も半ばに差し掛かり、流石にちょっと疲れてきた。
木陰に入って小休止。
手ごろな石に腰を下ろして、里の方を見やる。
絶景。
そうとしか表現できない景観が広がっている。
もっと高いところから、もっと遠くを見渡したこともあるけども。
「地に足つけて見るのは、また別物って事かな…」
どこかでひばりが鳴いている。
その声に惹かれるままに。
しばらくの間、疲れも忘れて景色に見入っていた。
残す過程も後数段というところになって。
上から見慣れた顔が降りて来た。
「おや霊夢、ずいぶん遅かったねぇ」
「また出てきたのか悪霊。
あんたも霊なら霊らしくしてなさいよね」
「いやまぁ、出てきたというか、出てこざるをえなかったというか…」
「へ?」
疑問に思いつつも、二人(?)並んで段を登りきると。
「我が楼観剣に絶てぬ物無し!……少ししか!」
「無駄無駄無駄よ…ザ・ワールド!」
とか
「ほんとに解けるとは思ってなかったぜ…」
「本に書いてる通りやっただけだしね」
「私の人形に妖怪用の封印は関係ないわ」
とか
「私との弾幕ごっこはコンテニュー不可!」
「そーなのかー」
とか
「聞いてくださいよチルノちゃんったら…」
「そんな事言ったらパチュリー様だって…」
とか
「あら、その傘なかなかお洒落ね(少しおばさんくさいけど)」
「あなたの日傘も綺麗じゃない?(ちょっと少女趣味だけど)」
とか
「てんこぉ~っ!」
「藍様ぁ~っ」
とか
「名前で呼んでくださ~い!」
とか
その他まとめて全部以下略阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈していたわけで。
「……………」
「……………」
「天下泰平、なべて世はこともなし…か」
「…霊夢。
時々、あんたの頭の中を見てみたいと思う事がある」
「……………」
「……………」
ふと、視線を空に向ける。
隣の悪霊も釣られて空を見る。
遥か上空では、どこかで見た妖精が春を伝えている。
「…平和ねぇ…」
「…平和か…?」
「影閃! ストゥームブリンガー!」
「禁忌! レーヴァテイン!」
「「あ、落ちた」」
そんな平和な一日。