茜色の空に一番星が見えた。
森の中、木の上で枝に座り、一人の少女がそれを見ている。
燃えるような紅い瞳と金の髪。そこにつけられた瞳と同じ色のリボン。
これから先は、彼女の時間。
眼に届くのは次第に蒼く暗くなっていく空の色。
耳に届くのはひぐらしの鳴く声。
次第に濃くなる闇の向こうに、ぽっと小さな灯りが点いた。
それを契機に同じような小さな灯りがひとつ、またひとつ。
彼女はその灯りの源を知っている。
あれは誰かが居る証。そこに生き物が集まっている証。
あっちの灯りは紅い館。
こっちの灯りは古ぼけた神社。
そっちの灯りは魔法使いの家…
灯りがひとつともるたび、それを包む闇はさらに深く。
増えていく灯りを見ながら、彼女は知らず微笑んだ。
腰掛けている枝が、ぎしりときしむ。
ふと、近くに動くものの気配を感じ、彼女は視線を足元に向ける。
そこに見えるのは、彼女の座っている木の下を灯りも無く走る子供の姿。
唇に指を当て、少しの間考える。
しばらく同じ姿勢を続けた後、彼女はにっこり微笑んだ。
☆
息を切らせて少年は走る。
一緒に神社探検に来たはずの皆の姿は既に無い。
「神社に近づくな」としきりに言っていたのは誰だったか。
「明るいうちなら大丈夫」とそれを一蹴したのは自分。
神社に到着し、ふと振り向くと皆の姿は消えていた。
来た道を戻ろうと歩き出し、気付けば深い森の中へ。
当ても無いまま出口を求めて少年は走る。
明るい時にはっきり見えていた山の形も、今は夜に滲んではっきりしない。
さすがに限界なのか少年は息を切らせて立ち止まった。
ここはどこ?
みんなはどこ?
泣きそうになる気持ちをこらえながら少年はうつむく。
☆
つい、と指を動かし声をつむぐ。
歌が闇に溶けていく。
闇の中で闇が集まる。
☆
ふわり、と、なにかが少年の手をとった。
驚いて手を見ても、その周りにあるのは闇ばかり。
しかし確実に、そして優しく、なにかがその手をひく。
手をひかれるがまま、少年は歩く。
その先には窓をともす灯り。
赤い服を着た巫女が待つ。
☆
彼女はいまだ木の枝の上。
少年が神社に入っていくのを見てにっこり微笑む。
そして、良かったね、と小さくつぶやいた。
ひぐらしの声も今はもう消えて、耳に届くのは夜の虫達の声。
その声と重なるようにして、くすくすと笑う。
☆
ふと、視線を感じて少年は振り向いた。
だがそこにあるのはただの闇。
少年は首をかしげながら巫女に連れられていく。
あとに残るのは、ただの闇。
そして、少女のくすくすと笑う声。
森の中、木の上で枝に座り、一人の少女がそれを見ている。
燃えるような紅い瞳と金の髪。そこにつけられた瞳と同じ色のリボン。
これから先は、彼女の時間。
眼に届くのは次第に蒼く暗くなっていく空の色。
耳に届くのはひぐらしの鳴く声。
次第に濃くなる闇の向こうに、ぽっと小さな灯りが点いた。
それを契機に同じような小さな灯りがひとつ、またひとつ。
彼女はその灯りの源を知っている。
あれは誰かが居る証。そこに生き物が集まっている証。
あっちの灯りは紅い館。
こっちの灯りは古ぼけた神社。
そっちの灯りは魔法使いの家…
灯りがひとつともるたび、それを包む闇はさらに深く。
増えていく灯りを見ながら、彼女は知らず微笑んだ。
腰掛けている枝が、ぎしりときしむ。
ふと、近くに動くものの気配を感じ、彼女は視線を足元に向ける。
そこに見えるのは、彼女の座っている木の下を灯りも無く走る子供の姿。
唇に指を当て、少しの間考える。
しばらく同じ姿勢を続けた後、彼女はにっこり微笑んだ。
☆
息を切らせて少年は走る。
一緒に神社探検に来たはずの皆の姿は既に無い。
「神社に近づくな」としきりに言っていたのは誰だったか。
「明るいうちなら大丈夫」とそれを一蹴したのは自分。
神社に到着し、ふと振り向くと皆の姿は消えていた。
来た道を戻ろうと歩き出し、気付けば深い森の中へ。
当ても無いまま出口を求めて少年は走る。
明るい時にはっきり見えていた山の形も、今は夜に滲んではっきりしない。
さすがに限界なのか少年は息を切らせて立ち止まった。
ここはどこ?
みんなはどこ?
泣きそうになる気持ちをこらえながら少年はうつむく。
☆
つい、と指を動かし声をつむぐ。
歌が闇に溶けていく。
闇の中で闇が集まる。
☆
ふわり、と、なにかが少年の手をとった。
驚いて手を見ても、その周りにあるのは闇ばかり。
しかし確実に、そして優しく、なにかがその手をひく。
手をひかれるがまま、少年は歩く。
その先には窓をともす灯り。
赤い服を着た巫女が待つ。
☆
彼女はいまだ木の枝の上。
少年が神社に入っていくのを見てにっこり微笑む。
そして、良かったね、と小さくつぶやいた。
ひぐらしの声も今はもう消えて、耳に届くのは夜の虫達の声。
その声と重なるようにして、くすくすと笑う。
☆
ふと、視線を感じて少年は振り向いた。
だがそこにあるのはただの闇。
少年は首をかしげながら巫女に連れられていく。
あとに残るのは、ただの闇。
そして、少女のくすくすと笑う声。
作品自体はよく出来てると思うのですが、何故にそんな印象を受けたんだろうかと自分自身に小一時間
こんな書き方もあるんだーと思いつつ…。