Coolier - 新生・東方創想話

闇はまた闇へと

2003/12/19 01:23:55
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茜色の空に一番星が見えた。

森の中、木の上で枝に座り、一人の少女がそれを見ている。
燃えるような紅い瞳と金の髪。そこにつけられた瞳と同じ色のリボン。

これから先は、彼女の時間。
眼に届くのは次第に蒼く暗くなっていく空の色。
耳に届くのはひぐらしの鳴く声。

次第に濃くなる闇の向こうに、ぽっと小さな灯りが点いた。
それを契機に同じような小さな灯りがひとつ、またひとつ。

彼女はその灯りの源を知っている。
あれは誰かが居る証。そこに生き物が集まっている証。
あっちの灯りは紅い館。
こっちの灯りは古ぼけた神社。
そっちの灯りは魔法使いの家…

灯りがひとつともるたび、それを包む闇はさらに深く。
増えていく灯りを見ながら、彼女は知らず微笑んだ。
腰掛けている枝が、ぎしりときしむ。

ふと、近くに動くものの気配を感じ、彼女は視線を足元に向ける。
そこに見えるのは、彼女の座っている木の下を灯りも無く走る子供の姿。
唇に指を当て、少しの間考える。
しばらく同じ姿勢を続けた後、彼女はにっこり微笑んだ。

   ☆

息を切らせて少年は走る。
一緒に神社探検に来たはずの皆の姿は既に無い。

「神社に近づくな」としきりに言っていたのは誰だったか。
「明るいうちなら大丈夫」とそれを一蹴したのは自分。

神社に到着し、ふと振り向くと皆の姿は消えていた。
来た道を戻ろうと歩き出し、気付けば深い森の中へ。

当ても無いまま出口を求めて少年は走る。
明るい時にはっきり見えていた山の形も、今は夜に滲んではっきりしない。
さすがに限界なのか少年は息を切らせて立ち止まった。

ここはどこ?
みんなはどこ?

泣きそうになる気持ちをこらえながら少年はうつむく。

   ☆

つい、と指を動かし声をつむぐ。
歌が闇に溶けていく。
闇の中で闇が集まる。

   ☆

ふわり、と、なにかが少年の手をとった。

驚いて手を見ても、その周りにあるのは闇ばかり。
しかし確実に、そして優しく、なにかがその手をひく。

手をひかれるがまま、少年は歩く。
その先には窓をともす灯り。
赤い服を着た巫女が待つ。

   ☆

彼女はいまだ木の枝の上。
少年が神社に入っていくのを見てにっこり微笑む。
そして、良かったね、と小さくつぶやいた。

ひぐらしの声も今はもう消えて、耳に届くのは夜の虫達の声。
その声と重なるようにして、くすくすと笑う。

   ☆

ふと、視線を感じて少年は振り向いた。
だがそこにあるのはただの闇。
少年は首をかしげながら巫女に連れられていく。

あとに残るのは、ただの闇。
そして、少女のくすくすと笑う声。
昨日、夜の闇の中で自転車をすっとばしていたところ、
公園の入り口にある石の車止めのような物体に気付かずに
一回転ほど宙を舞いました。
夜の闇ってコワイですよね。

   ☆

お初にお目にかかります。
ごきげんよう、TYLORと申します。
まずは、この作品をお読みいただきましてありがとうございます。

本作品は、とある歌を聴きながら私が思いついた情景を文章にしたものです。
ですので、要所要所でその影響がにじみ出ています。
私が思いついた情景が、少しでも皆様に伝われば幸いです。
TYLOR
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コメント



0.510簡易評価
1.40すけなり削除
なんか国語の教科書に載ってそうな、そんな印象を受けてしまいました(汗<br>
作品自体はよく出来てると思うのですが、何故にそんな印象を受けたんだろうかと自分自身に小一時間
2.40削除
詩的で気に入りました
3.50勇希望削除
 情景が思い浮かび、非常に自分好みな作品です。(ルーミアだし(ぉ
こんな書き方もあるんだーと思いつつ…。