「ねぇ幽々子。前から気になっていたのだけどどうして貴方の三角巾には渦巻き模様が書いてあるのかしら?」
白玉桜に遊びに来ていた紫が幽々子にこんな質問をした。
「さぁ~?私もよく知らないわ~」
いつもどおりふわふわとした返事を幽々子が返す。
最も幽々子に質問したところで明確な答えが返ってきたことはあまりないのだが・・・。
「そう・・・何か意味があるのかしらね?」
「さあね~」
元々対して気のない紫に幽々子も気のない返事を返した。
こうした取り留めのない会話を何度してきた事だろうかと紫は数えようとして止めた。
よくよく考えれば幽々子が人間の時代から同じような会話を繰り返してきたのだ。
その数は膨大な為に紫自身覚えてはいない。
「紫様、そろそろお帰りになられないと藍さんが心配しますよ」
庭掃除をしていたのであろう。
竹箒を握った妖夢が紫に声をかけた。
「あら、もうそうな時間なのね。それじゃあそろそろ帰るわね」
「またね~」
スキマを開いてマヨヒガに帰ろうとした紫は少し悪戯を思いついた。
そしてその悪戯を実行するとマヨヒガに帰っていく。
そして翌日。
「藍、橙、おはよう」
珍しく午前中(でも11時50分)に起きてきた紫を見て藍と橙の目が見開かれた。
「ちちちちち橙!こここここれが最後の昼食になるかもしれん!ここここ心して味わえ!」
「ららららららら藍様!ここここここれは天変地異の前触れなの!」
気が動転してうまくしゃべる事すら不可能になった式二人を見て紫は少しムッとした。
(失礼ね。私だって200年に一度は早起き(でも11時50分)ぐらいするわよ)
ムッとしたので二匹ともスキマに放り込んでおく。
適当に時間が経ったら自動的に出てこれるようにしておいた。
「さ~て幽々子の所にでも行って来ますか~」
誰もいなくなった居間で一人呟きながら紫はスキマに入っていく。
「やっほ~、幽々子~」
紫は幽々子の部屋にスキマをつないだ。
「あれ?紫さんじゃないですか。何か当家に御用で?」
しかしいつも幽々子のいる場所になぜか妖夢がいた。
しかも昨日まで紫様だったのが今日は紫さんになっている。
「あれ?妖夢、貴方何やってるの?」
当然な疑問を紫は尋ねる。
「はぁ、西行寺家の跡継ぎとして書物を呼んでいたのですが・・・」
「ひえ゛!」
妖夢の口から出た言葉に紫は思わず意味不明な声を出してしまう。
(まてまて落ち着くのよゆかりん!妖夢の苗字は魂魄よ!しかも本来の跡継ぎ幽々子は一体どこに行っちゃったのよ!そうかエイプリルフールねゆかりんのお馬鹿さんってエイプリルフールはとっくに終わってるわよ!)
頭の中で目まぐるしく考えを巡らせたが全く理由が分からなかった。
「え~っと私は幽々子に会いに来たんだけど・・・」
とりあえず本来の目的を果たそうと紫は妖夢に言うと・・・。
「幽々子ですか?今庭掃除をしているはずですね。幽々子~!幽々子~!」
「は~いただ今まいります~!!!」
妖夢の声に慌しく幽々子の返事が返ってきた。
幽霊なので足音は立たないが何かを途中で落としたのか大きな音をさせながら幽々子が障子を開けて飛び込んでくる。
「お待たせしました妖夢様!また何か失敗してしまったのですかお許し下さい!」
いつもの格好だがやたらよれよれになった着物を着た幽々子が入るなり土下座をする。
「いえ、失敗ではありませんよ。紫さんが貴方に用事があるといらしたので呼んだのです」
そう言って妖夢は紫の方を向いた。
「それで、幽々子に一体なんの御用でしょうか?」
「ちょっと二人だけで話したいから外へ行きましょう!さあ早く!」
紫は幽々子を引っ掴むと外へ引きずっていった。
「一体何がどうなっているの!なんで貴方が妖夢の従者やってるの!」
「それは私が聞きたいわよ~!!!」
泣き顔で幽々子が紫に言う。
多少格好はよれているがいつもの格好の幽々子である。
しかし幽々子を良く見ているものならば僅かだが大きな違和感に気がついたであろう。
そう、幽々子の額の三角巾に書いてあった渦巻き模様が無いのだ。
「昨日紫が帰った後突然妖夢が御飯の用意をしろって言ってきて反抗期かと思ったから弾幕でお仕置きしようと思ったらあっさり負けちゃったのよ~」
大粒の涙を流しながら幽々子が紫の服を握り締めて激しく揺さぶった。
紫は首が激しく前後に揺さぶられている。
「わかっ!わかっ!分かったから!やめっ!やめて頂戴!」
何とか幽々子を落ち着かせてふうっと一息紫がついた。
幽々子はまだ涙目だった。
「兎に角、原因が分からないから私はちょっとヴワル魔法図書館にいって調べてみるわ。悪いけどそれまで我慢して」
「なるべく早くしてねぇ~・・・」
幽々子に見送られながら紫はスキマに入っていった。
「幽々子!いつまでサボっているのですか!見送りが済んだのならさっさと働きなさい!」
「はい~!今行きます~!お願いですから白桜剣でお仕置きだけは止めてください~!!!!」
妖夢の叱責に幽々子は慌てて仕事を再開するのだった。
「今日も良い日だ昼寝が気持ち良い!く~・・・」
謎の寝言を言う美鈴。
しかしこの後咲夜のナイフが額に刺さる事が分かっていながらも眠る事の出来る美鈴はある意味大物であろう。
「ちょっとお邪魔するわよ~」
紫がそう言って美鈴の目前に現れた。
本来は美鈴を驚かすつもりだったのだが寝ていたので残念ながら意味が無かった。
「あら?寝てる?」
紫がそう言った時だった。
本来であれば美鈴の額に突き刺さるはずだったナイフが紫の後頭部に突き刺さった。
咲夜は屋敷の中に居るのに湖の方角から飛んできたのは謎である。
「ぎゃおぉぉぉぉぉう!!!!!」
突然の激痛に紫は叫び声を上げた。
人間でなければ即死クラスの致命傷である。
「何奴!って紫様?って紫様の後頭部から赤い噴水が!」
「ばやぐどっで~!!!」
激しい痛みに自分で抜く事すら出来ない紫が情けない声を出した。
「一気に抜きますね!えい!」
「のほぉぉぉぉぉう!!!!」
頭の中から何かを引きずり出される新感覚に紫は奇声を上げる。
とりあえず傷を妖力で治療すると本題に入る。
「悪いけどヴワル魔法図書館に案内してくれないかしら?」
まだ後頭部を気にしながら紫がそう言った。
「分かりました。メイドに案内させますのでどうぞ中へ」
美鈴は門を開けると紫を中へと招く。
「ありがとうね」
紫は美鈴に微笑むと中へ入っていく。
紫が居なくなると美鈴はウトウトし始め、そしてまた寝てしまった。
再び飛来したナイフが今度はちゃんと美鈴の額に突き刺さる。
「ひぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
美鈴の叫び声が木霊するのだった。
「あら?今日は珍しいのが来たのね」
「来たのよ」
パチュリーが読んでいた本から視線を外して言う。
紫がそれに微笑みで答えた。
「実は今日は聞きたい事があって来たんだけど・・・」
「貴方が?まあいいわ。それで何を聞きたいのかしら?」
幻想郷野中でも頭の良い方である紫が他人に聞きたい事があると言われ一瞬訝しげに思ったパチュリーだったが直ぐに興味を失った。
「今まで主人と従者だった関係がある日突然反転する事なんてあるかしら?」
「・・・そんな話は聞いたことが無いわね・・・」
紫の問い掛けに少し考えたパチュリーだったがあっさりと答える。
「そう、ここの本に乗ってないかしら?」
「それは分からないわね。私だって全部読んだわけじゃないのだから。リトル、そう言った本がありそうな所へ案内してあげて」
「かしこまりました」
パチュリーは自分の仕事は終わったとばかりにリトルに仕事を言いつけると直ぐに本に視線を戻した。
「こちらでございます~」
紫はリトルの案内で呪術関連の書物がある棚へとやってきた。
「一種の呪術ではないかと思うのでまずはこの辺りから調べてはどうでしょうか?」
「そうね。どうもありが・・・」
ウゥ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
紫がお礼を言おうと思ったその時・・・。
紫の声を遮るほどの大きなサイレンが鳴り響いた。
「なんなのこのサイレンは?」
「黒い悪魔の襲来です!」
リトルはそれだけ言うとすぐに何処かに言ってしまった。
「それってGの事かしら?」
黒い悪魔としか言われなかったので至極妥当な判断をした紫はとりあえずパチュリーの所へ行く事にした。
「ねえパチュリー、さっきのサイレンは一体・・・」
なにやら扉に結界を何重にも施していたパチュリーに紫が尋ねようとした時・・・。
「恋符『マスタースパーク』!!!」
「へ?」
チュドドドドドドドドドォォォォォォォン!!!!!!!!
「みぎゃぉぉぉぉう!!!!」
黒い悪魔こと魔理沙のマスタースパークの本流を食らった紫は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「あちゃ~・・・出力を誤ったぜ。図書館がボロボロだがまあ本は無事だ!貰っていくぜ!」
魔理沙は散らばった本を持ってきた風呂敷に次々と詰め込むとさっさと何処かへ行ってしまう。
「持ってかないで~・・・むきゅ~・・・」
目を回したままのパチュリーの声が虚しく響いた。
「・・・結局分からずじまいね・・・帽子もどこかに行っちゃうし・・・」
ボロボロになった図書館を見て紫が溜息をついた。
この状態では乗っているかも知れない本がどこにあるか分からないだろう。
しかも先ほどのマスタースパークのせいでいつも紫が被っているメイドインZUNの帽子が何処かへ行ってしまった。
「あれスキマで見つけてお気に入りだったのに~・・・」
長い間愛用してきたので愛着があったのだが見つからないのであれば諦めるしかないだろう。
もしかしたらマスタースパークで消し炭と化してしまったかもしれない。
「幽々子には悪いけど今日はもう帰る事にするわ~・・・」
誰に言うでもなく紫はスキマへと消えていった。
「ただいま~・・・」
疲れてヨレヨレになった紫がマヨヒガの家に入ったその時だった。
パッカーン!!
「はぁ~!!!目が~!目がぁぁぁ!」
何かが目にクリーンヒットして思わずムスカになる紫。
「おい紫!一体どこで何をしていたんだ!」
どうやら何かを投げつけたのは藍らしいのだがいつもの藍と口調が全然違っていた。
「ちょっと藍!一体何をするのよ!」
投げつけられたらしい木のお盆を振りたくって紫が怒る。
「紫!お前はいつから主の主にそんな口を利ける様になったんだ!まったく橙の躾がなっとらん!」
藍は頭を抑えながら溜息をつく。
「誰が誰の主の主ですって!もう頭にきたわ!境符『四重結界』!!」
「そんな物が私に通用すると思うのか!超人『飛翔役小角』!!!」
スペルカードを放つ紫に藍も応戦する。
そして決着は一瞬でついた。
藍の圧勝で・・・。
「なぜ・・・なぜなの・・・」
今まで負けるどころかかすり傷一つ受ける事の無かった藍の攻撃に逆に傷一つ与える事すら出来ずに負けた紫はそのまま気絶した。
「紫!夕餉はまだ出来ないのか!」
「はぁ~いもう少しまってぇ~!!!」
「紫~お腹すいたよ~」
割烹着姿になった紫が台所を忙しそうに動き回っている。
橙がぐったりとちゃぶ台にもたれかかりながら催促する。
「なんでどうして何がどうなってるのよぉ~~~~!!!!」
「紫!!!!いい加減にしろ!!!!!」
紫の悲痛な叫びと藍の怒鳴り声がマヨヒガに響き渡るのだった。
翌日・・・。
「何か原因があるはず!霊夢なら何か気付いてるかも!」
紫は最後の望みを掛けて博麗神社へとスキマを繋ぐ。
ちなみに朝夜明け前に叩き起こされて食事の準備と修行と言う名目の虐待(紫視点)を受けた後なので結構ヨレヨレな状態だ。
「あら?・・・あんた紫・・・よね?帽子はどうしたの?」
縁側でお茶を飲んでいた霊夢は一瞬紫と分からなかったようだが直ぐに帽子の所在を尋ねる。
「昨日無くしちゃったのよ・・・。それよりも実は貴方に相談したい事があるのよ~」
「相談したい事?」
紫は霊夢に事の次第を話した。
~~~少女説明中~~~
「・・・と言う訳なのよ」
「あっそう・・・」
紫自身理由が良く分かっていないので推測など色々と交えて説明した為に原稿用紙にすると軽く800枚にはなりそうな説明を「あっそう・・・」の一言で霊夢は片付けた。
ちなみに説明中に霊夢はお茶を7杯おかわりしている。
聞く気が全く無いのが良く分かる態度だ。
「お願いよぉ!なんとかしてぇ」
「嫌よ・・・」
涙を流して懇願する紫に霊夢は無慈悲な言葉を投げ掛ける。
「そんなぁ!一生のお願いよぉ!」
紫は土下座するような勢いで霊夢に懇願する。
しかし霊夢は我関せずとお茶を啜っている。
「紫・・・あんた私が何者か知ってて頼んでるの?」
霊夢は片目だけを開いて紫を見つめる。
その目はとても真剣だ。
「そりゃあんたは博麗の巫女でしょ?それがどうかしたのよ?」
紫は当たり前だとばかりに答える。
「そう・・・私は博麗の巫女・・・。つまり絶対中立。私は人間の味方でも妖怪の味方でもないの。強いて言えば幻想郷の味方。幻想郷のバランスが崩れる危機のみ動くのが私」
霊夢は紫に味方できないと遠まわしに言っているのだ。
「前は幻想郷の危機と言う事もあって貴方と協力したけど味方になったわけじゃない。さらに言えば貴方の状態は幻想郷の危機には繋がっていない。だから今のままでは私は動く必要がない」
つまり何かの条件を満たせば霊夢は動けると遠まわしに言う。
「どうすれば・・・」
「神社に願い事をする時にしなければならないことは一つよ」
それを聞いた紫は賽銭箱に駆け寄るとありったけのお金を入れた。
「これで少なくとも動く事はできるわね。解決は出来ないけど」
解決すれば霊夢が味方した事になってしまう。
あくまで紫が解決へたどり着く道標をする事が霊夢に出来る限界だった。
「さえ、それじゃまずは事の始まりの白玉桜に行きましょうか」
「スキマ繋ぐわね」
紫の開いたスキマを霊夢は潜っていく。
もはやどこでも○アと四次元ポケッ○としてしか使われていないスキマだった。
「幽々子!!!!!!いくら心の広い私でも堪忍袋の緒が切れましたよ!!!!!!!!!」
「お願いです止めて許して妖夢様~~~~~!!!!!」
白玉桜についたとたん妖夢の怒鳴り声と幽々子の悲痛な叫びが聞こえてきた。
良く見れば西行妖に吊るされた幽々子に妖夢が白桜剣で今まさに切られようとしている。
もう服というより襤褸切れと言ってもいいほどにボロボロになった服を着ている幽々子。
どうやらおしおきの影響のようだ。
「妖夢、幽々子が一体どうかしたのかしら?」
霊夢がなぜこんな状況になったのか尋ねる。
「霊夢ですか。実は幽々子が皿を割る事27枚、壺など家具を破壊する事41回、料理を失敗する事84回、摘み食いする事973回とあまりにも酷いのでおしおきをしているのです」
そんな事をすれば誰だって堪忍袋の緒が切れるだろう。
というか良くそこまで叱らずに我慢していたものだ。
「それは・・・」
流石に霊夢も絶句している。
幽々子は話は終ったとばかりに妖夢は幽々子の方を振り向くと白桜剣を構えた。
「ストップ。ちょっと幽々子と話があるからおしおきは後にしてちょうだい」
「しかたがありませんね」
しぶしぶと妖夢が白桜剣を鞘に収めると霊夢は幽々子を下ろした。
「ふ~ん・・・見たところ特別変わったって言う所は服装だけね」
下ろした幽々子をじっくりと霊夢は観察する。
ボロボロになった服以外いつもの幽々子だ。
普通の者が見れば何も分からなかっただろう。
しかし霊夢にはピンとくるものがあった。
「そうね・・・多分あんた達のカリスマが下がったせいね」
「カリスマですって!?」
霊夢の言葉に紫が聞き返した。
霊夢はやれやれと言わんばかりに肩をすくめると説明を始める。
「そ、カリスマ。つまりあんた達はカリスマが下がったから主従が反転したのよ。原因は分かったんだから後は自分達で解決してちょうだい」
それだけ言うと霊夢はさっさと帰ってしまった。
後にはただ頭を悩ませる紫と幽々子が残された。
「カリスマって言われてもねえ・・・」
「どうやったらあがるのよぉ・・・」
原因が分かっても理由が分からないので二人共どうすればいいか分からない。
しかしこのままでは元の地位に返り咲く事が出来ない。
二人は悩み続けた。
しかし時間がそれを許してくれなかった。
「幽々子!!!!話が終ったのですからおしおきを再開しますよ!!!!」
「紫!!!夕食の支度もせずに油を売っているとは何事だ!!!!」
怒鳴り声と共に現在の主人達が二人を引き摺っていった。
「お願い教えてどうしたらカリスマが上がるの~」
翌日紫は紅魔館のレミリアの元を訪ねた。
ちなみに幽々子はおしおきの後遺症で動けない状態である。
レミリアと言えば沢山のメイドと咲夜を従える大カリスマの持ち主だ。
紫はその秘訣を聞きにきたのだ。
「そう言われてもカリスマなんて自覚して上がるものじゃないわよ」
レミリアは紅茶(吸血鬼専用)を飲みながら答える。
言われてみれば当然だ。
「真の主人とは慕わさせるんじゃなくて従者の方から慕われるものよ。つまり貴方には慕われるだけの何かがなかったのね」
レミリアはそれだけ言うと部屋に帰っていく。
元々夜型の生活をしているレミリアだが霊夢にあわせて昼型の生活をしている。
しかし辛いものは辛いので無理はせずに昼に眠る時もある。
「・・・何か秘密があるはずよ!」
紫はスキマからダンボールをとりだすとそれを被りレミリアの部屋へ向かった。
レミリアの部屋の前に紫は到着した。
ドア越しにレミリアと咲夜の会話が聞こえてくる。
紫は小型のスキマを開いて部屋の中を覗いた。
「今日は夕方に神社に行くからそれまでに起こして頂戴」
「かしこまりましたお嬢様。お休みなさいませ」
吸血鬼の寝床と言えば棺桶と思われがちだがレミリアの寝床は普通の天蓋つき巨大ベットだ。
窓もあるが絶妙な加減で日光が直接ベットに当たらず、狭い範囲だけを照らすが十分な灯りが得られるように調整してある。
「それじゃあお休み咲夜」
レミリアはそれだけ言うとすぐに寝てしまった。
本来寝ているはずの昼間なので寝付くのはたやすい事だ。
「お嬢様~、お嬢様~」
咲夜が声を掛けてみるが起きる気配はない。
今度は揺すってみたが多少反応する程度でまったく起きない。
それを確認した咲夜は顔を真っ赤に染めながら布団を剥いだ。
寝間着に着替えたレミリア。
薄い布越しに幼い胸が上下しているのが見て取れる。
「ああ・・・おぜうさま・・・」
なんだか咲夜の雲行きが怪しくなってきた。
そぉっと手を伸ばして寝間着のボタンを外していく。
そして幼い未発達の胸が晒される。
「ああ・・・」
咲夜は恍惚とした表情を浮かべながらどんどんとボタンを外していく。
そしてついにレミリアは全てのボタンを外されてドロワーズ姿を見せる。
「ふぉぉぉ・・・」
次の瞬間咲夜は時を止めてドロワーズを脱がした。
そして時は動き出す・・・。
「おぜうさま~~~~~~~~~~!!!!!!」
「ぎゃぁ!スキマから鼻血とか涎とか色んな所から飛び出してきた汁が私の目にぃぃぃぃぃぃ!」
もう部屋の中の状況は分からないがとりあえず危険な状況になっていることは想像するのは容易だ。
結局レミリアもカリスマがあまり高くないようだ。
メイド達の間では文提供のレミリア写真が高額で取引されているのは言うまでも無い。
実はパチュリーは本が沢山あるから、美鈴は御飯がもらえるから、門番隊は美鈴と一緒に居られるからという理由で居るのだ。
別にカリスマなんて欠片も関係の無い話だった。
紅魔館からそそくさと逃げ出した紫は永遠亭を尋ねた。
カリスマと言えば輝夜と永琳の二人も高そうだからだ。
「・・・と言う訳なんだけどどうにかならないかしら?月の頭脳さん」
「カリスマを上げる薬なんて言われたって簡単には作れないわよ」
でも出来るんですね永琳さん・・・。
「じゃあせめてカリスマの上がる方法を教えてちょうだい」
「そう言われてもね~・・・」
永琳は腕を組んで悩んでいる。
カリスマを上げたいと言われてもこうしなさいとは言えないのだ。
「それじゃあ輝夜にでも聞いてくるわ」
「あ、ちょっと!」
永琳の制止を無視して紫は輝夜の部屋に向かった。
「おほほほほ!オレTUEEEEEEEEEE!!!!!」
輝夜の部屋からそんな叫びが聞こえてくる。
何事かと紫はスキマで覗いて見た。
そこにはパソコンに向かって絶叫する輝夜が居た。
「おほほほほ!雑魚め!雑魚め!雑魚め!私の強さにひれ伏すのよ!姫と崇め奉りなさい!」
どうやらネットゲームに夢中のようだった。
その姿にはカリスマの破片もない。
紫はだまってスキマを閉じると永琳の元へ戻っていった。
「・・・見たでしょ?永遠亭の恥部を・・・」
「・・・口外しないことを誓うわ・・・」
その言葉を聞いた永琳はほっと胸を撫で下ろす。
「とりあえずカリスマを上げたいって言われても何も言えないわ。上げる薬も作れない事は無いけどあくまで一時的に誤魔化すだけだもの」
「はぁ・・・どうすればいいのかしら」
紫はトボトボと永琳の部屋を出て行く。
「師匠~、一体紫さんは何のようだったんですか?」
入れ替わりでウドンゲが入ってくる。
「なんでもカリスマを上げたいらしいわ」
「はぁ・・・カリスマですか?」
ウドンゲは首を傾げながら尋ねる。
その仕種が可愛くて永琳が抱きしめたいのを堪えている。
「あの~・・・師匠?」
上目遣いにウドンゲが永琳を見る。
「もうだめ!ウドンゲかわいいよウドンゲ!」
「ひょわ~~~~!」
永琳はウドンゲに抱きつくと頬擦りを始めた。
「し、師匠~~~~!?って変な所触らないでください!」
体のあちこちを触られてウドンゲが悲鳴をあげる。
「大丈夫よウドンゲ!新薬で女同士でも子作りOKよ!」
しかし全く気にしていない永琳。
「それって大丈夫っていうんですか~~~~~!?」
「新薬、変成男子の効力とくとみよ~~~~~!!」
某青猫機械人形のようにポケットから薬を取り出した永琳はそれを飲む。
「いや~~~~!!師匠が男に~~~~~!!」
ウドンゲの叫びが廊下にこだました。
季節は初夏だが春爛漫な永遠亭である。
「永琳様とウドンゲの百合写真!1枚500円だよ!」
それをてゐが商売にしているのは秘密だ。
「結局何も分からずじまい・・・どうすればいいの・・・」
紫はふらふらと博麗神社へやってきた。
相変わらず霊夢はお茶を啜っている。
「その様子じゃ答えは見つかってないようね」
「そのとおりよ・・・」
分かっていたとばかりに霊夢は聞く。
紫は覇気も無く答える。
「まあこれ上げるからがんばりなさい」
そう言って霊夢は紫の頭にポンっと帽子をのせた。
それはいつも紫が被っていたあの帽子だった。
「後幽々子のナルトも無かったからついでに作っといたわ。持っていってあげたら?」
そう言うと霊夢は幽々子の渦巻き模様の三角巾を差し出した。
「そうね~・・・あの子のトレードマークだもんね~・・・」
紫はスキマにポイッと三角巾を放り込む。
「これで自動的に幽々子の頭に乗っかってるはずよ~・・・」
「あっそ、それよりそろそろ帰らないとまた藍にしかられるんじゃない?」
「そうね・・・」
霊夢に言われて紫はスキマをマヨヒガに繋ぐと帰っていった。
「ただいま~・・・」
「おかえりなさいませ紫様」
「へ!?」
紫が顔を上げるとそこには割烹着を着て夕食の準備をしている藍が居た。
「どうかなさいましたか?」
「藍・・・怒らないの?」
恐々と尋ねる紫に不思議そうに藍は首を傾げながら答える。
「はぁ・・・夕食前に帰ってきていただけたので怒る必要は無いのですが・・・」
「神が舞い降りた!!!!!!!」
紫は喜びのあまり謎の言葉を発した。
藍はそんな紫を少し不気味そうに見つめている。
その後やたらハイテンションな紫を藍と橙が気味悪そうに避けていた。
「・・・と言う訳で幽々子も元に戻ったみたいだし万々歳よ!」
「そう、よかったじゃない」
翌日報告に来た紫を霊夢はいつもの様に相手している。
しかし霊夢の脳内ではある言葉を言おうか、言わないでおこうかの霊夢脳内大議会が開催されていた。
「霊夢1議長!私は紫に言うべきだと進言します!彼女のカリスマが実は帽子のおかげだという事を!」
「意義あり!霊夢2議員!それは彼女を傷つける!」
「しかし霊夢3議員!それではいつまた彼女が帽子を失って元の状態に戻るか分からないぞ!」
「霊夢2議員!霊夢3議員!静粛にしなさい!」
「しかし霊夢1議長!」
「このままでは埒が明きませんぞ!」
「判決を言い渡す・・・彼女の為だ。黙っておこう・・・」
「霊夢1議長・・・」
「英断です」
こうして真実は霊夢の心の奥底に封印される事となった。
果たして、幻想郷にカリスマのある人物はいるのだろうか?
そんな疑問が霊夢の脳裏を過ったがそれが実は自分である事に気がつかない霊夢だった。
~終わり~
白玉桜に遊びに来ていた紫が幽々子にこんな質問をした。
「さぁ~?私もよく知らないわ~」
いつもどおりふわふわとした返事を幽々子が返す。
最も幽々子に質問したところで明確な答えが返ってきたことはあまりないのだが・・・。
「そう・・・何か意味があるのかしらね?」
「さあね~」
元々対して気のない紫に幽々子も気のない返事を返した。
こうした取り留めのない会話を何度してきた事だろうかと紫は数えようとして止めた。
よくよく考えれば幽々子が人間の時代から同じような会話を繰り返してきたのだ。
その数は膨大な為に紫自身覚えてはいない。
「紫様、そろそろお帰りになられないと藍さんが心配しますよ」
庭掃除をしていたのであろう。
竹箒を握った妖夢が紫に声をかけた。
「あら、もうそうな時間なのね。それじゃあそろそろ帰るわね」
「またね~」
スキマを開いてマヨヒガに帰ろうとした紫は少し悪戯を思いついた。
そしてその悪戯を実行するとマヨヒガに帰っていく。
そして翌日。
「藍、橙、おはよう」
珍しく午前中(でも11時50分)に起きてきた紫を見て藍と橙の目が見開かれた。
「ちちちちち橙!こここここれが最後の昼食になるかもしれん!ここここ心して味わえ!」
「ららららららら藍様!ここここここれは天変地異の前触れなの!」
気が動転してうまくしゃべる事すら不可能になった式二人を見て紫は少しムッとした。
(失礼ね。私だって200年に一度は早起き(でも11時50分)ぐらいするわよ)
ムッとしたので二匹ともスキマに放り込んでおく。
適当に時間が経ったら自動的に出てこれるようにしておいた。
「さ~て幽々子の所にでも行って来ますか~」
誰もいなくなった居間で一人呟きながら紫はスキマに入っていく。
「やっほ~、幽々子~」
紫は幽々子の部屋にスキマをつないだ。
「あれ?紫さんじゃないですか。何か当家に御用で?」
しかしいつも幽々子のいる場所になぜか妖夢がいた。
しかも昨日まで紫様だったのが今日は紫さんになっている。
「あれ?妖夢、貴方何やってるの?」
当然な疑問を紫は尋ねる。
「はぁ、西行寺家の跡継ぎとして書物を呼んでいたのですが・・・」
「ひえ゛!」
妖夢の口から出た言葉に紫は思わず意味不明な声を出してしまう。
(まてまて落ち着くのよゆかりん!妖夢の苗字は魂魄よ!しかも本来の跡継ぎ幽々子は一体どこに行っちゃったのよ!そうかエイプリルフールねゆかりんのお馬鹿さんってエイプリルフールはとっくに終わってるわよ!)
頭の中で目まぐるしく考えを巡らせたが全く理由が分からなかった。
「え~っと私は幽々子に会いに来たんだけど・・・」
とりあえず本来の目的を果たそうと紫は妖夢に言うと・・・。
「幽々子ですか?今庭掃除をしているはずですね。幽々子~!幽々子~!」
「は~いただ今まいります~!!!」
妖夢の声に慌しく幽々子の返事が返ってきた。
幽霊なので足音は立たないが何かを途中で落としたのか大きな音をさせながら幽々子が障子を開けて飛び込んでくる。
「お待たせしました妖夢様!また何か失敗してしまったのですかお許し下さい!」
いつもの格好だがやたらよれよれになった着物を着た幽々子が入るなり土下座をする。
「いえ、失敗ではありませんよ。紫さんが貴方に用事があるといらしたので呼んだのです」
そう言って妖夢は紫の方を向いた。
「それで、幽々子に一体なんの御用でしょうか?」
「ちょっと二人だけで話したいから外へ行きましょう!さあ早く!」
紫は幽々子を引っ掴むと外へ引きずっていった。
「一体何がどうなっているの!なんで貴方が妖夢の従者やってるの!」
「それは私が聞きたいわよ~!!!」
泣き顔で幽々子が紫に言う。
多少格好はよれているがいつもの格好の幽々子である。
しかし幽々子を良く見ているものならば僅かだが大きな違和感に気がついたであろう。
そう、幽々子の額の三角巾に書いてあった渦巻き模様が無いのだ。
「昨日紫が帰った後突然妖夢が御飯の用意をしろって言ってきて反抗期かと思ったから弾幕でお仕置きしようと思ったらあっさり負けちゃったのよ~」
大粒の涙を流しながら幽々子が紫の服を握り締めて激しく揺さぶった。
紫は首が激しく前後に揺さぶられている。
「わかっ!わかっ!分かったから!やめっ!やめて頂戴!」
何とか幽々子を落ち着かせてふうっと一息紫がついた。
幽々子はまだ涙目だった。
「兎に角、原因が分からないから私はちょっとヴワル魔法図書館にいって調べてみるわ。悪いけどそれまで我慢して」
「なるべく早くしてねぇ~・・・」
幽々子に見送られながら紫はスキマに入っていった。
「幽々子!いつまでサボっているのですか!見送りが済んだのならさっさと働きなさい!」
「はい~!今行きます~!お願いですから白桜剣でお仕置きだけは止めてください~!!!!」
妖夢の叱責に幽々子は慌てて仕事を再開するのだった。
「今日も良い日だ昼寝が気持ち良い!く~・・・」
謎の寝言を言う美鈴。
しかしこの後咲夜のナイフが額に刺さる事が分かっていながらも眠る事の出来る美鈴はある意味大物であろう。
「ちょっとお邪魔するわよ~」
紫がそう言って美鈴の目前に現れた。
本来は美鈴を驚かすつもりだったのだが寝ていたので残念ながら意味が無かった。
「あら?寝てる?」
紫がそう言った時だった。
本来であれば美鈴の額に突き刺さるはずだったナイフが紫の後頭部に突き刺さった。
咲夜は屋敷の中に居るのに湖の方角から飛んできたのは謎である。
「ぎゃおぉぉぉぉぉう!!!!!」
突然の激痛に紫は叫び声を上げた。
人間でなければ即死クラスの致命傷である。
「何奴!って紫様?って紫様の後頭部から赤い噴水が!」
「ばやぐどっで~!!!」
激しい痛みに自分で抜く事すら出来ない紫が情けない声を出した。
「一気に抜きますね!えい!」
「のほぉぉぉぉぉう!!!!」
頭の中から何かを引きずり出される新感覚に紫は奇声を上げる。
とりあえず傷を妖力で治療すると本題に入る。
「悪いけどヴワル魔法図書館に案内してくれないかしら?」
まだ後頭部を気にしながら紫がそう言った。
「分かりました。メイドに案内させますのでどうぞ中へ」
美鈴は門を開けると紫を中へと招く。
「ありがとうね」
紫は美鈴に微笑むと中へ入っていく。
紫が居なくなると美鈴はウトウトし始め、そしてまた寝てしまった。
再び飛来したナイフが今度はちゃんと美鈴の額に突き刺さる。
「ひぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
美鈴の叫び声が木霊するのだった。
「あら?今日は珍しいのが来たのね」
「来たのよ」
パチュリーが読んでいた本から視線を外して言う。
紫がそれに微笑みで答えた。
「実は今日は聞きたい事があって来たんだけど・・・」
「貴方が?まあいいわ。それで何を聞きたいのかしら?」
幻想郷野中でも頭の良い方である紫が他人に聞きたい事があると言われ一瞬訝しげに思ったパチュリーだったが直ぐに興味を失った。
「今まで主人と従者だった関係がある日突然反転する事なんてあるかしら?」
「・・・そんな話は聞いたことが無いわね・・・」
紫の問い掛けに少し考えたパチュリーだったがあっさりと答える。
「そう、ここの本に乗ってないかしら?」
「それは分からないわね。私だって全部読んだわけじゃないのだから。リトル、そう言った本がありそうな所へ案内してあげて」
「かしこまりました」
パチュリーは自分の仕事は終わったとばかりにリトルに仕事を言いつけると直ぐに本に視線を戻した。
「こちらでございます~」
紫はリトルの案内で呪術関連の書物がある棚へとやってきた。
「一種の呪術ではないかと思うのでまずはこの辺りから調べてはどうでしょうか?」
「そうね。どうもありが・・・」
ウゥ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
紫がお礼を言おうと思ったその時・・・。
紫の声を遮るほどの大きなサイレンが鳴り響いた。
「なんなのこのサイレンは?」
「黒い悪魔の襲来です!」
リトルはそれだけ言うとすぐに何処かに言ってしまった。
「それってGの事かしら?」
黒い悪魔としか言われなかったので至極妥当な判断をした紫はとりあえずパチュリーの所へ行く事にした。
「ねえパチュリー、さっきのサイレンは一体・・・」
なにやら扉に結界を何重にも施していたパチュリーに紫が尋ねようとした時・・・。
「恋符『マスタースパーク』!!!」
「へ?」
チュドドドドドドドドドォォォォォォォン!!!!!!!!
「みぎゃぉぉぉぉう!!!!」
黒い悪魔こと魔理沙のマスタースパークの本流を食らった紫は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「あちゃ~・・・出力を誤ったぜ。図書館がボロボロだがまあ本は無事だ!貰っていくぜ!」
魔理沙は散らばった本を持ってきた風呂敷に次々と詰め込むとさっさと何処かへ行ってしまう。
「持ってかないで~・・・むきゅ~・・・」
目を回したままのパチュリーの声が虚しく響いた。
「・・・結局分からずじまいね・・・帽子もどこかに行っちゃうし・・・」
ボロボロになった図書館を見て紫が溜息をついた。
この状態では乗っているかも知れない本がどこにあるか分からないだろう。
しかも先ほどのマスタースパークのせいでいつも紫が被っているメイドインZUNの帽子が何処かへ行ってしまった。
「あれスキマで見つけてお気に入りだったのに~・・・」
長い間愛用してきたので愛着があったのだが見つからないのであれば諦めるしかないだろう。
もしかしたらマスタースパークで消し炭と化してしまったかもしれない。
「幽々子には悪いけど今日はもう帰る事にするわ~・・・」
誰に言うでもなく紫はスキマへと消えていった。
「ただいま~・・・」
疲れてヨレヨレになった紫がマヨヒガの家に入ったその時だった。
パッカーン!!
「はぁ~!!!目が~!目がぁぁぁ!」
何かが目にクリーンヒットして思わずムスカになる紫。
「おい紫!一体どこで何をしていたんだ!」
どうやら何かを投げつけたのは藍らしいのだがいつもの藍と口調が全然違っていた。
「ちょっと藍!一体何をするのよ!」
投げつけられたらしい木のお盆を振りたくって紫が怒る。
「紫!お前はいつから主の主にそんな口を利ける様になったんだ!まったく橙の躾がなっとらん!」
藍は頭を抑えながら溜息をつく。
「誰が誰の主の主ですって!もう頭にきたわ!境符『四重結界』!!」
「そんな物が私に通用すると思うのか!超人『飛翔役小角』!!!」
スペルカードを放つ紫に藍も応戦する。
そして決着は一瞬でついた。
藍の圧勝で・・・。
「なぜ・・・なぜなの・・・」
今まで負けるどころかかすり傷一つ受ける事の無かった藍の攻撃に逆に傷一つ与える事すら出来ずに負けた紫はそのまま気絶した。
「紫!夕餉はまだ出来ないのか!」
「はぁ~いもう少しまってぇ~!!!」
「紫~お腹すいたよ~」
割烹着姿になった紫が台所を忙しそうに動き回っている。
橙がぐったりとちゃぶ台にもたれかかりながら催促する。
「なんでどうして何がどうなってるのよぉ~~~~!!!!」
「紫!!!!いい加減にしろ!!!!!」
紫の悲痛な叫びと藍の怒鳴り声がマヨヒガに響き渡るのだった。
翌日・・・。
「何か原因があるはず!霊夢なら何か気付いてるかも!」
紫は最後の望みを掛けて博麗神社へとスキマを繋ぐ。
ちなみに朝夜明け前に叩き起こされて食事の準備と修行と言う名目の虐待(紫視点)を受けた後なので結構ヨレヨレな状態だ。
「あら?・・・あんた紫・・・よね?帽子はどうしたの?」
縁側でお茶を飲んでいた霊夢は一瞬紫と分からなかったようだが直ぐに帽子の所在を尋ねる。
「昨日無くしちゃったのよ・・・。それよりも実は貴方に相談したい事があるのよ~」
「相談したい事?」
紫は霊夢に事の次第を話した。
~~~少女説明中~~~
「・・・と言う訳なのよ」
「あっそう・・・」
紫自身理由が良く分かっていないので推測など色々と交えて説明した為に原稿用紙にすると軽く800枚にはなりそうな説明を「あっそう・・・」の一言で霊夢は片付けた。
ちなみに説明中に霊夢はお茶を7杯おかわりしている。
聞く気が全く無いのが良く分かる態度だ。
「お願いよぉ!なんとかしてぇ」
「嫌よ・・・」
涙を流して懇願する紫に霊夢は無慈悲な言葉を投げ掛ける。
「そんなぁ!一生のお願いよぉ!」
紫は土下座するような勢いで霊夢に懇願する。
しかし霊夢は我関せずとお茶を啜っている。
「紫・・・あんた私が何者か知ってて頼んでるの?」
霊夢は片目だけを開いて紫を見つめる。
その目はとても真剣だ。
「そりゃあんたは博麗の巫女でしょ?それがどうかしたのよ?」
紫は当たり前だとばかりに答える。
「そう・・・私は博麗の巫女・・・。つまり絶対中立。私は人間の味方でも妖怪の味方でもないの。強いて言えば幻想郷の味方。幻想郷のバランスが崩れる危機のみ動くのが私」
霊夢は紫に味方できないと遠まわしに言っているのだ。
「前は幻想郷の危機と言う事もあって貴方と協力したけど味方になったわけじゃない。さらに言えば貴方の状態は幻想郷の危機には繋がっていない。だから今のままでは私は動く必要がない」
つまり何かの条件を満たせば霊夢は動けると遠まわしに言う。
「どうすれば・・・」
「神社に願い事をする時にしなければならないことは一つよ」
それを聞いた紫は賽銭箱に駆け寄るとありったけのお金を入れた。
「これで少なくとも動く事はできるわね。解決は出来ないけど」
解決すれば霊夢が味方した事になってしまう。
あくまで紫が解決へたどり着く道標をする事が霊夢に出来る限界だった。
「さえ、それじゃまずは事の始まりの白玉桜に行きましょうか」
「スキマ繋ぐわね」
紫の開いたスキマを霊夢は潜っていく。
もはやどこでも○アと四次元ポケッ○としてしか使われていないスキマだった。
「幽々子!!!!!!いくら心の広い私でも堪忍袋の緒が切れましたよ!!!!!!!!!」
「お願いです止めて許して妖夢様~~~~~!!!!!」
白玉桜についたとたん妖夢の怒鳴り声と幽々子の悲痛な叫びが聞こえてきた。
良く見れば西行妖に吊るされた幽々子に妖夢が白桜剣で今まさに切られようとしている。
もう服というより襤褸切れと言ってもいいほどにボロボロになった服を着ている幽々子。
どうやらおしおきの影響のようだ。
「妖夢、幽々子が一体どうかしたのかしら?」
霊夢がなぜこんな状況になったのか尋ねる。
「霊夢ですか。実は幽々子が皿を割る事27枚、壺など家具を破壊する事41回、料理を失敗する事84回、摘み食いする事973回とあまりにも酷いのでおしおきをしているのです」
そんな事をすれば誰だって堪忍袋の緒が切れるだろう。
というか良くそこまで叱らずに我慢していたものだ。
「それは・・・」
流石に霊夢も絶句している。
幽々子は話は終ったとばかりに妖夢は幽々子の方を振り向くと白桜剣を構えた。
「ストップ。ちょっと幽々子と話があるからおしおきは後にしてちょうだい」
「しかたがありませんね」
しぶしぶと妖夢が白桜剣を鞘に収めると霊夢は幽々子を下ろした。
「ふ~ん・・・見たところ特別変わったって言う所は服装だけね」
下ろした幽々子をじっくりと霊夢は観察する。
ボロボロになった服以外いつもの幽々子だ。
普通の者が見れば何も分からなかっただろう。
しかし霊夢にはピンとくるものがあった。
「そうね・・・多分あんた達のカリスマが下がったせいね」
「カリスマですって!?」
霊夢の言葉に紫が聞き返した。
霊夢はやれやれと言わんばかりに肩をすくめると説明を始める。
「そ、カリスマ。つまりあんた達はカリスマが下がったから主従が反転したのよ。原因は分かったんだから後は自分達で解決してちょうだい」
それだけ言うと霊夢はさっさと帰ってしまった。
後にはただ頭を悩ませる紫と幽々子が残された。
「カリスマって言われてもねえ・・・」
「どうやったらあがるのよぉ・・・」
原因が分かっても理由が分からないので二人共どうすればいいか分からない。
しかしこのままでは元の地位に返り咲く事が出来ない。
二人は悩み続けた。
しかし時間がそれを許してくれなかった。
「幽々子!!!!話が終ったのですからおしおきを再開しますよ!!!!」
「紫!!!夕食の支度もせずに油を売っているとは何事だ!!!!」
怒鳴り声と共に現在の主人達が二人を引き摺っていった。
「お願い教えてどうしたらカリスマが上がるの~」
翌日紫は紅魔館のレミリアの元を訪ねた。
ちなみに幽々子はおしおきの後遺症で動けない状態である。
レミリアと言えば沢山のメイドと咲夜を従える大カリスマの持ち主だ。
紫はその秘訣を聞きにきたのだ。
「そう言われてもカリスマなんて自覚して上がるものじゃないわよ」
レミリアは紅茶(吸血鬼専用)を飲みながら答える。
言われてみれば当然だ。
「真の主人とは慕わさせるんじゃなくて従者の方から慕われるものよ。つまり貴方には慕われるだけの何かがなかったのね」
レミリアはそれだけ言うと部屋に帰っていく。
元々夜型の生活をしているレミリアだが霊夢にあわせて昼型の生活をしている。
しかし辛いものは辛いので無理はせずに昼に眠る時もある。
「・・・何か秘密があるはずよ!」
紫はスキマからダンボールをとりだすとそれを被りレミリアの部屋へ向かった。
レミリアの部屋の前に紫は到着した。
ドア越しにレミリアと咲夜の会話が聞こえてくる。
紫は小型のスキマを開いて部屋の中を覗いた。
「今日は夕方に神社に行くからそれまでに起こして頂戴」
「かしこまりましたお嬢様。お休みなさいませ」
吸血鬼の寝床と言えば棺桶と思われがちだがレミリアの寝床は普通の天蓋つき巨大ベットだ。
窓もあるが絶妙な加減で日光が直接ベットに当たらず、狭い範囲だけを照らすが十分な灯りが得られるように調整してある。
「それじゃあお休み咲夜」
レミリアはそれだけ言うとすぐに寝てしまった。
本来寝ているはずの昼間なので寝付くのはたやすい事だ。
「お嬢様~、お嬢様~」
咲夜が声を掛けてみるが起きる気配はない。
今度は揺すってみたが多少反応する程度でまったく起きない。
それを確認した咲夜は顔を真っ赤に染めながら布団を剥いだ。
寝間着に着替えたレミリア。
薄い布越しに幼い胸が上下しているのが見て取れる。
「ああ・・・おぜうさま・・・」
なんだか咲夜の雲行きが怪しくなってきた。
そぉっと手を伸ばして寝間着のボタンを外していく。
そして幼い未発達の胸が晒される。
「ああ・・・」
咲夜は恍惚とした表情を浮かべながらどんどんとボタンを外していく。
そしてついにレミリアは全てのボタンを外されてドロワーズ姿を見せる。
「ふぉぉぉ・・・」
次の瞬間咲夜は時を止めてドロワーズを脱がした。
そして時は動き出す・・・。
「おぜうさま~~~~~~~~~~!!!!!!」
「ぎゃぁ!スキマから鼻血とか涎とか色んな所から飛び出してきた汁が私の目にぃぃぃぃぃぃ!」
もう部屋の中の状況は分からないがとりあえず危険な状況になっていることは想像するのは容易だ。
結局レミリアもカリスマがあまり高くないようだ。
メイド達の間では文提供のレミリア写真が高額で取引されているのは言うまでも無い。
実はパチュリーは本が沢山あるから、美鈴は御飯がもらえるから、門番隊は美鈴と一緒に居られるからという理由で居るのだ。
別にカリスマなんて欠片も関係の無い話だった。
紅魔館からそそくさと逃げ出した紫は永遠亭を尋ねた。
カリスマと言えば輝夜と永琳の二人も高そうだからだ。
「・・・と言う訳なんだけどどうにかならないかしら?月の頭脳さん」
「カリスマを上げる薬なんて言われたって簡単には作れないわよ」
でも出来るんですね永琳さん・・・。
「じゃあせめてカリスマの上がる方法を教えてちょうだい」
「そう言われてもね~・・・」
永琳は腕を組んで悩んでいる。
カリスマを上げたいと言われてもこうしなさいとは言えないのだ。
「それじゃあ輝夜にでも聞いてくるわ」
「あ、ちょっと!」
永琳の制止を無視して紫は輝夜の部屋に向かった。
「おほほほほ!オレTUEEEEEEEEEE!!!!!」
輝夜の部屋からそんな叫びが聞こえてくる。
何事かと紫はスキマで覗いて見た。
そこにはパソコンに向かって絶叫する輝夜が居た。
「おほほほほ!雑魚め!雑魚め!雑魚め!私の強さにひれ伏すのよ!姫と崇め奉りなさい!」
どうやらネットゲームに夢中のようだった。
その姿にはカリスマの破片もない。
紫はだまってスキマを閉じると永琳の元へ戻っていった。
「・・・見たでしょ?永遠亭の恥部を・・・」
「・・・口外しないことを誓うわ・・・」
その言葉を聞いた永琳はほっと胸を撫で下ろす。
「とりあえずカリスマを上げたいって言われても何も言えないわ。上げる薬も作れない事は無いけどあくまで一時的に誤魔化すだけだもの」
「はぁ・・・どうすればいいのかしら」
紫はトボトボと永琳の部屋を出て行く。
「師匠~、一体紫さんは何のようだったんですか?」
入れ替わりでウドンゲが入ってくる。
「なんでもカリスマを上げたいらしいわ」
「はぁ・・・カリスマですか?」
ウドンゲは首を傾げながら尋ねる。
その仕種が可愛くて永琳が抱きしめたいのを堪えている。
「あの~・・・師匠?」
上目遣いにウドンゲが永琳を見る。
「もうだめ!ウドンゲかわいいよウドンゲ!」
「ひょわ~~~~!」
永琳はウドンゲに抱きつくと頬擦りを始めた。
「し、師匠~~~~!?って変な所触らないでください!」
体のあちこちを触られてウドンゲが悲鳴をあげる。
「大丈夫よウドンゲ!新薬で女同士でも子作りOKよ!」
しかし全く気にしていない永琳。
「それって大丈夫っていうんですか~~~~~!?」
「新薬、変成男子の効力とくとみよ~~~~~!!」
某青猫機械人形のようにポケットから薬を取り出した永琳はそれを飲む。
「いや~~~~!!師匠が男に~~~~~!!」
ウドンゲの叫びが廊下にこだました。
季節は初夏だが春爛漫な永遠亭である。
「永琳様とウドンゲの百合写真!1枚500円だよ!」
それをてゐが商売にしているのは秘密だ。
「結局何も分からずじまい・・・どうすればいいの・・・」
紫はふらふらと博麗神社へやってきた。
相変わらず霊夢はお茶を啜っている。
「その様子じゃ答えは見つかってないようね」
「そのとおりよ・・・」
分かっていたとばかりに霊夢は聞く。
紫は覇気も無く答える。
「まあこれ上げるからがんばりなさい」
そう言って霊夢は紫の頭にポンっと帽子をのせた。
それはいつも紫が被っていたあの帽子だった。
「後幽々子のナルトも無かったからついでに作っといたわ。持っていってあげたら?」
そう言うと霊夢は幽々子の渦巻き模様の三角巾を差し出した。
「そうね~・・・あの子のトレードマークだもんね~・・・」
紫はスキマにポイッと三角巾を放り込む。
「これで自動的に幽々子の頭に乗っかってるはずよ~・・・」
「あっそ、それよりそろそろ帰らないとまた藍にしかられるんじゃない?」
「そうね・・・」
霊夢に言われて紫はスキマをマヨヒガに繋ぐと帰っていった。
「ただいま~・・・」
「おかえりなさいませ紫様」
「へ!?」
紫が顔を上げるとそこには割烹着を着て夕食の準備をしている藍が居た。
「どうかなさいましたか?」
「藍・・・怒らないの?」
恐々と尋ねる紫に不思議そうに藍は首を傾げながら答える。
「はぁ・・・夕食前に帰ってきていただけたので怒る必要は無いのですが・・・」
「神が舞い降りた!!!!!!!」
紫は喜びのあまり謎の言葉を発した。
藍はそんな紫を少し不気味そうに見つめている。
その後やたらハイテンションな紫を藍と橙が気味悪そうに避けていた。
「・・・と言う訳で幽々子も元に戻ったみたいだし万々歳よ!」
「そう、よかったじゃない」
翌日報告に来た紫を霊夢はいつもの様に相手している。
しかし霊夢の脳内ではある言葉を言おうか、言わないでおこうかの霊夢脳内大議会が開催されていた。
「霊夢1議長!私は紫に言うべきだと進言します!彼女のカリスマが実は帽子のおかげだという事を!」
「意義あり!霊夢2議員!それは彼女を傷つける!」
「しかし霊夢3議員!それではいつまた彼女が帽子を失って元の状態に戻るか分からないぞ!」
「霊夢2議員!霊夢3議員!静粛にしなさい!」
「しかし霊夢1議長!」
「このままでは埒が明きませんぞ!」
「判決を言い渡す・・・彼女の為だ。黙っておこう・・・」
「霊夢1議長・・・」
「英断です」
こうして真実は霊夢の心の奥底に封印される事となった。
果たして、幻想郷にカリスマのある人物はいるのだろうか?
そんな疑問が霊夢の脳裏を過ったがそれが実は自分である事に気がつかない霊夢だった。
~終わり~
まあ確かに、無くなったらカリスマ減少しそうですがw
どうでもいいことだけど、今は反省している可能性~%って文章変じゃない?
それを読ませる起承転結の『承』がないと思う。
あと、「マスタースパークの本流」ではなく『奔流』。
「筆者のハジケ振りが見事なものの、それを読ませる~」
でした。連投申し訳ない。
人間→妖怪じゃないかと?
一つ言うことがあるとすれば、もう少し文章を引き締めて欲しいです
あと、誤字脱字が多いようなので、投稿前に一度見直すことをお勧めします
基本ラインは悪くないような気がするので、もっと変換率を上げて欲しい。
というか、物語に『芯』を入れて欲しい。
次に期待してまふ。
次にも期待
ならばアレを手に入れれば俺もwwwww