初めは、ただ単に衣食住が整っていればそれでよかった。
悲しみの檻が閉じられ、頑丈な鎖で閉じ込められる。
誰にも理解される事無く、私は一人孤独の世界に閉じ込められる。
許されたのは泣く事だけ。
だから、私は泣いた。
声を上げて、涙を流し、私ができる最高の泣き方をした。
――だれか、わたしをみて――
誰からも認められず、誰にも声は届かない。
私は、どこにも居ないのだと、そう決められた。
だから、私は世界から弾きだされる。
色の無い世界で独りで踊る人形は色鮮やかな世界を諦めていた。
そんな私の事なんてお構いなしに時間は流れ。
錆付いたナイフを捧げ持ち、首にむけるのが毎晩の儀式。
寸前で止まる理由は解らなかった。
世界から目を背けられた踊り子は流浪の民となる。
長い長い旅路だったと思う。よく憶えていない。
それでも、はるか遠い旅の果てに辿り着いたのは、世界にあって世界から切り離された楽園。
そしてそこに住む紅い幻想。
彼の人は一人で世界を統べる。故に常に孤独。その点で私と同じ魂の持ち主だった。
まるで路地裏に捨てられた狗でも拾うかのような、だけどそれは引き裂かれた運命の恋人同士の再会のように私たちは出会った。
与えられた証は隷属で、誇り高き称号。
何故なら、私が生きる証だから。
長いような短い時間が過ぎ、短く感じられた時間は驚くほど長く経っていた。
私はその隷属という称号を護りたくて。
気が付いた時にはすでに遅かった。
許されざる禁忌にして、私自身が最大の過ち。
しかしそれは必然とも言えた事。
秘める想いは募り、それでも許されない禁忌。
私が、貴女を愛する事。
従者が主に想いを寄せるなどと、従者失格である。
だけど。
しかし。
だからこそ。
そして。
主は私の想いを受け入れてくれた。
お互いに口に出した事は無い。ましてや行為があった訳でもない。
ただ、ごく自然に受け入れてくれた。
その事に気が付いた日。
私は嬉しさのあまりに声を押し殺して泣いた。
捧げるのは純潔の紅い糸。
受け取るのは隷属の紅い鎖。
遥かな時を経て、私は再び檻と鎖によって閉じ込められる。
右手には鎖すら断ち切り、主すら殺す銀のナイフ。
左手には檻すら無意味と化す、時計の針に銀の手枷を掛ける懐中時計。
違ったのは、自らの意思。そして仕えるべき主。
今や私にとってその檻こそが安息の地であり、旅の終わり。
私という存在が私であると証明されたのだから。
今日という日が訪れるたびに思う。
私は、この愛を守る為であるならば、いかなる罪でも犯し、いかなる禁忌でさえも侵してみせる。
愛してますわ、お嬢様。
1
「出かけるわ、付いてきなさい」
赤より紅い幼き主、レミリア・スカーレットはそれしか言わなかった。
何処へ何をしに行くのか、なんて事は私には一切言わない。
「はい、お供させていただきますわ」
何処へ何をしに行くのか、私には解らないがそれでも構わない。
ふわりと空に浮かび上がると、空には大きな満月。
蒼い夜を切り裂くように凍てついた光を刺し込んでくる。
「こっちよ」
バサリと翼をはためかせ、滑るように空を泳ぐお嬢様の後を追う。
馬鹿な雑魚が寄ってきてもいいように、ナイフは多目に持っていく。
雲は多少あるものの、満月の光を遮る事はできない程度。
空気は澄み渡り、星々が瞬く夜。
ダイヤモンドの如く輝く星の中にあって、なおその輝きを増す満月の下を紅いお嬢様がゆっくりと移動していく。
それは絶対の余裕の表れ。それと同時に、機嫌の良い時の飛び方。
お屋敷は既に遥か彼方。小指の先ほどになっている。
向かっている方角といえば、博麗の神社ではなく、人里ですらない。
もちろん、魔法の森や骨董品屋のある方角でもないし、ましてや冥界の門や竹林でもない。
何もない方角。
ただ、それだけで私は何処に向かっているのか解ってしまった。
「ねぇ、咲夜」
お屋敷が既に見えないぐらい離れた頃にお嬢様が口を開いた。
「はい、なんでしょう」
「今夜は……きれいな夜ね」
真っ直ぐに前を向いたままなのでお嬢様の表情はわからない。
だけど声は柔らかくて、包み込むような暖かさ。
「そうですね」
風も冷たくないし、飛んでいる速度も遅いせいか、ゆるやかな流れの中にいるような気がする。
頬を撫でる風が心地良い。
「貴女は憶えているかしら?」
「今日が私とお嬢様が初めて出会った日、という事ですか?」
私の答えにもお嬢様は振り向く事は無い。
でも、なんとなくその顔が笑っているような気がした。
「いいえ、貴女が一番初めに私に向かっていった言葉よ」
はて、半ば意識が途切れているような状態で拾われたのだ。何を言ったのかなんて憶えているはずも無い。
「……憶えていませんわ」
「そう、物覚えが悪いのね」
「それは酷いですわ」
思わず苦笑いがもれてしまう。憶えていられる程の時間なんてとっくに通り過ぎてしまったのだから。
「……本当に憶えてないの?」
お嬢様が首だけ曲げてこちらを覗き込んでくる。
「憶えてるも何も、私はその前後の記憶どころか意識すら曖昧でしたよ」
「そういえばそうだったわね」
「そっちは忘れてるんですね」
私の抗議は溜息とともに吐き出される。
「それで、私は何と言ったんですか?」
「そうねぇ、後で教えてあげるわ」
お嬢様の口ぶりは悪戯を仕込んだ子どものようで、同時に子どもにサプライズ・プレゼントを贈る前の親のよう。
そう言ってお嬢様は再び視線を前に戻し……
「そろそろ、答えてあげるから」
と言った。
その言葉は私に向けられていないような気がして。それでもこの場には私しかいなくて。
結局私は口を閉ざした。
そのまましばらく時間が経ち、またお嬢様が先ほどと同じ言葉を紡ぎだす。
「ねぇ、咲夜」
「はい、なんでしょう」
頬をそよぐ風が妙にくすぐったい。
「……なんでもないわ」
「そうですか」
あえて多くを語らず、多くを聞かない。
どうせ答える必要のない程度の事なんだろう。
それ以降、私とお嬢様は特にしゃべる事もなかった。
黙ってお嬢様を見上げる。
私の右上を滑るように飛ぶお嬢様は前だけを見つめている。まるで未来を見つめるように。振り返る事すらしない。
お嬢様にとって過去とは、未来とはなんだろう。
運命すらその手中に収めるお嬢様は時間の果てに何を見ているのか。
ふとそう思ったが聞くのは止めておいた。
「そろそろ着きますか」
「そろそろ着くわ」
目的地が見えてきた。
ゆったりとした移動でも既に結構な距離を飛んでいたらしい。
そこは幻想郷の外れ。
神社でも、あの古道具屋でもない、博麗大結界が望める場所。
深い森の果て。
辿り着いた場所。
春には色とりどりの花が咲き誇り、夏には一面の草原となり、秋は黄金の草原、冬は一面の雪に覆われる雪原と化す。
花は夜の蒼さに包まれて本来の色を失いつつあるが、満月の光の中で咲き誇っていた。
そんな幻のような草原に降り立つ。
「懐かしいですね」
思わず口から零れ出る言葉。
「そうね、懐かしいわ」
そう、とても懐かしい場所。
ここは私がお嬢様に一番始めに会った場所なのだから。
2
蒼い草原に紅く咲き誇る花。
今のお嬢様を例えるならそんな感じだろうか。
とにかく目的の場所には辿り着いた。
二人で草原に座り込み、月を眺めながら他愛も無いお喋りをしていたが、あまりに静かな夜なので自然と口数も少なくなる。
やがて語る事もつき、ゆったりとした時間が流れる。
「そろそろ喉が渇いたわね」
お嬢様がポツリと言った。
「そうですね……紅茶でよろしければ小さな水筒を用意しておりますが、飲まれます?」
何のことやら、とすっ呆けて見せる。
「そうじゃなくて、ね?」
お嬢様が視線の光を強くして、私を覗き込んで来る。
「ワインですか? あいにく持ち合わせておりませんが……」
まだまだ。もっとこの時間を楽しみたい。
「ワイン? それなら目の前にあるじゃない。それも極上の美酒が」
すっとこちらに寄って来るお嬢様。
「せっかちは嫌われますよ?」
まだまだ言い返して見せる。
「貴女は嫌い?」
やられた。
この問いかけに他に答える言葉を私は持ち合わせていない。
「……す」
しかし正直に言うのも恥ずかしい。
自然と声が小さくなってしまうのも仕方ないじゃない。
「何だって? よく聞こえないわ」
お嬢様はそう言ってさらに身を乗り出してくる。
既にお互いの吐息がかかるぐらい。少し唇を突き出せば、お嬢様の紅い唇に触れていしまいそうな距離。
私の心臓は早鐘よりも早く打ち鳴らされ、今にも破裂しそう。
うぅ、絶対聞こえたはずなのに……
「だから、好きです。と」
恥ずかしくて顔が紅潮してしまうのが自分でもわかってしまう。
あぁ、穴があったら入りたいとは今の私の事だ。きっとそうに違いない。それ以外なんて認めてたまるもんですか。
「はい、良くできました」
にこりと、目の前で華の咲いたような笑顔を見せられる。
触れるような触れないような、刹那の口付け。
それだけで私の頭は思考を停止させる。
なんて綺麗な、笑顔だろう。
そんな言葉が頭の中を駆け巡る。
次の瞬間には脳内が急加速していくが、体は力が抜けたかのようにピクリとも動かない。急加速しすぎた脳内は次々と言葉を吐き出し、暴走したかのよう。それらが理解の範疇なんかとっくに振り切って既にぼうっとしてきた。
夜に咲いた一輪の薔薇のような唇、月の光を跳ね返す陶磁器のような白い肌、すっと通った鼻筋に真紅の瞳はまるで慈母ような温かさと傲慢な支配者の冷徹なまなざし。
お嬢様が右手でブラウスのボタンを外していくのを靄の掛かったような頭と目で理解する。
細い指先は同時に幾多の妖怪を握り潰す膂力を持ち、それが丁寧にボタンを外していくのを見ながら右頬に添えられた手が私の理性と言うか纏まった思考をどこかへ吹き飛ばしていく。
ブラウスが肌蹴られ、私の胸が夜の外気に晒されても熱は冷めない。それどころか羞恥にさらに熱が上がり、もう何も考えられない。それでも頭は言葉を吐き出し続け、一つ一つの事象を事細かに色をつけていく。
「は……はぁ」
自分の呼吸がうるさい。出かける前にお風呂に入ってきた良かった。下着は何色をつけてたっけ。こうなるのが解っていたからちゃんとお気に入りを着けて来たわよね。
「綺麗な肌ね」
いいえそんな滅相も無い、お嬢様の方がお綺麗ですよ。なんて言えるわけが無くて、そんなに見られたら恥ずかしさで死んじゃいそうです。というかこれが初めてってわけじゃないのに何度見られても恥ずかしい物は恥ずかしいというか慣れないというかもう頭の中がぐちゃぐちゃですよ。
「悪戯したくなるわね」
悪戯ってなんですか、なんて思う間もなく左手が私の頬から下がっていって、顎を撫でてさらに下へと向かってるのは何ですか。えと、なんで下着の肩紐をなぞるんですか。
「ひゃう!」
左手は囮ですか私の左の首筋舐めるなんて聞いてませんよ!?
「ふふ……」
「う、んぅ」
甘い痺れが右の胸から全身を巡り、私の脳と腰に衝撃のような快感が駆け抜ける。
もう私の頭は戻れない。このまま全ての行為が終わるまでは時間も止まらず、それどころか思考は急加速を続けて世界が遅く感じられる。私は何もしてないのに。
「あっ……ん……」
ぼやけた視線を下ろすと、私の右胸にお嬢様の左手が添えられていて、それはまるで妖しい舞踏を踊っている。
お嬢様の白い指先がステップやターンを描くたびに得も言われぬ衝撃が体を走り抜け、体が痙攣を起したように跳ね上がる。
「可愛い鳴き声ね」
あぁもうお嬢様の声が遠くに感じられる。
「大きくなったわねぇ」
私の口から漏れる吐息は熱く、まるで灼熱を吐き出しているかのよう。それなのにも関わらず熱は冷めずに昇り続けてとどまる事を知らない。
「はあっ! んっ」
いやもう何と言うかそりゃ成長だってしますよこんな甘い御褒美を貰えれば私はお嬢様の為に神だろうと何だろうと殺しますよ。
「はぁ……はぁ……」
私の胸を弄っていた手が動きを止める。既に息を整える事すらもできずに喘ぐだけで精一杯で、自分の淫靡な声もどこか遠くに感じる。
「それじゃ、いただくわね」
左の耳元からお嬢様の声がボンヤリと聞こえる。
「ぐっ!!」
首筋から激痛が走り、頭が跳ね上がる。一瞬だけ黒と赤の色が目の前を塗り潰していくが、痛みの所為か一気に意識が冷やされる。
蒼い夜と大きな満月が私の視界に飛び込んでくるが、即座に紅い激痛にとって変わられて、それもつかの間の事で。
「あ、はぁ、んっく!」
痛みは強烈な快感に摩り替えられ、あぁそうかお嬢様の瞳に魅了されてるんだなんて思う間もなく意識が飲み込まれていく。
首筋からはぴちゃりと軽い水音。流れていく私の命。そしてそれを嚥下する音。
鼓動のたびに流れる血と激痛と快楽を与えられてわたしの意識は散り散りに消えてしまいそう。
「は、はぁ……んっ!」
それでも頭は呼吸の音がうるさいと喚き続けていて、私はこの時間が早く終わって欲しいと思うと同時に永劫に続いて欲しいと思う矛盾にどうにか決着を着けようとするがそれすらも鼓動と激痛と快楽に邪魔をされる。
首筋からはあいも変わらずに軽い水音が響き渡り、その音が妖艶に感じられる。私の命と血を嚥下する音すらも今の私には快感の弦を奏でる音楽にしか感じられない。
一口ずつ、私の命が嚥下されるごとに快楽が私の体を突き抜ける。
「あァっ! ん……っく! ん~~!」
もっと……お嬢様が欲しい。
得体の知れない強烈な衝動が私を支配して、お嬢様の体をギュっと抱きしめる。
もっと、もっと私を……
しかし唐突に快楽はその波を引き上げ、お嬢様の口が私の首から離れていく。
流れ出した赤い血が零れ、私の下着を濡らす。お嬢様の犬歯と紅い糸を引くのを、どこか他人事のように見やる。
「はい、おしまい」
お嬢様の言葉とともに私の首筋が外気に晒される。
風が血と唾液に濡れた肩を冷やしていく。
それと同時に私の意識も冷やされたかのように世界が紅から蒼い夜に戻っていく。
「んっ……今日は、少ないんですね……」
なんとか息を整えながらお嬢様に聞いてみる。
いつもだったら私の意識が無くなるまで吸っているので、多少の物足り無さを感じる。
感じた瞬間に私は何を考えてるんだと即座に思い直すが、それもまた事実であって。
「物足りないのかしら?」
お嬢様の直球の言葉に私は沈黙で返答する事しかできない。
「ふふ、今日は少し掃除をしようかと思ってねぇ」
私は首筋に持参した伴箒膏を張り、ブラウスのボタンを留めていく。
「動けるでしょう、立ちなさい」
「はい」
お嬢様の命令に立ち上がる。
「掃除ですか……? 何を掃除するっていうんです?」
私の疑問ももっともだと思う。何しろこの辺りは一面の草原。何をどう掃除したものやら。
「まぁ、最近はここら辺も若い奴が増えてねぇ」
胸元に添えられた両手はいつもの仕草。可愛らしい少女のそれである。
ざわりと。
お嬢様の翼が広げられ、どこまでも紅い目が妖しい光を放つ。
私達の世界が。
口元は三日月を思わせるように愉悦に歪められていた。
紅くあかくアカク。
禍々しい妖気が全身から放出され、周囲の生物に畏れを抱かせる。
染め上がる――
莫大な妖気が放出され、世界は狂った夜へ変貌していく。
「お嬢様!」
私の口はごく自然に警告の悲鳴を上げる。
「これでは周囲の妖怪が集まります!」
このままでは妖怪どころか霊夢すら招きかねない。そうなってしまったらいくらお嬢様でもあの巫女には勝てないのに!
しかし蒼い夜はお嬢様の妖気に充てられ紅く染まり上げられて、満月すら狂気の支配する赤い光を放つ。
周囲には数多の妖怪の気配が立ち込め、妖精程度の者達は全て逃げ去って行くのがわかる。
「まだ解らない?」
ニィと犬歯を剥き出しにしてお嬢様が嗤う。
その獰猛な笑みを見て、私はある結論に達した。
「まったく、骨が折れますわ」
すでに周囲は妖怪の気配が立ち込め、愚かにも夜と恐怖の支配者であるお嬢様に歯向かおうという馬鹿な集まりが出来ていた。
勝手に住み着いたとはいえ、あの愚者達には今の住処なのだろう。知ったことでは無いが。
「私と、貴女のお気に入りの場所を我が物顔で歩く馬鹿な連中を掃除しないとねぇ?」
楽しくて仕方ない、といった表情のままお嬢様は謳う。
私は両手の指の間に3本ずつ、6本のナイフを用意する。
「不逞の輩にはそれ相応の罰を与えますわ」
さぁ幕が開く。
蒼い夜には慎ましやかで淫靡な純潔を。
紅い夜には激しく狂った流血で虐殺を。
湧き上がる衝動を隠そうともせずに私は笑顔を浮かべた。
迫り来る愚者を殺し尽くすために。
3
闇夜を切り裂く銀が弧を描く。
今ちょうど10匹目の雑魚を掃除した所だ。
目の前の得体の知れない大きな目玉が倒れていく。
私の背中側では紅い閃光が迸り、5つ程の影を貫いてゆくのが見えた。
お嬢様の無事を確認して、それからおもむろにしゃがんでやる。
さっきまで私の頭があった場所を大きな獣のような何かが通り過ぎて行った。
そちらを確認する事も無くナイフを3本投げつけ、悲鳴が途中で止まったのを耳だけで確認する。
「まったく、次から次へと……」
立ち上がりながら半回転し、後ろに向かって袈裟懸けに切り下ろす。それだけで布のように薄く、長い蛇のような妖怪が地に伏せる。
周り中から噴き出した鮮血を時間を止めて回避。ついでに脂で使えなくなったナイフを投げつけながら新しいナイフを取り出す。
すでに蒼い夜は遠くに消え去り鮮血で彩られた草原はもはや見る影も無く血の池と化していた。
前方から百足のような物体が迫ってくる。ただし大きさが私の背丈の倍近くある。表面は夜の光と赤い血を跳ね返すような硬質の甲羅のような物で覆われていた。
おざなりにナイフを投げてみるが、案の定カチンという軽い音と共に弾かれる。
「お嬢様!」
背後に振り返り、お嬢様に向かってナイフを投げつける。
「アハハ! ほらっ!」
お嬢様は踊るように半回転して私のナイフを回避。そのままナイフはお嬢様の前の一つ目の熊の化け物に突き刺さる。こちらを振り向いたお嬢様の手には紅く凶々しい閃光。
その小柄で可憐な容姿に似合わない巨大な槍を全身を使って私に向かって投げつける。
私の横を猛烈なスピードで過ぎ去った死の運命を持つ槍は狙い通りに私を押し潰そうとしていた百足の上半身を吹き飛ばして、それでも勢いを殺さずに何匹かの妖怪を貫き、爆ぜさせて消えていく。
「咲夜、楽しいねぇ!」
全身に返り血を浴びながら楽しそうな顔でお嬢様が嗤う。それは湧き上がる衝動のままに振るう暴君の表情。
「まったく、休む暇もないぐらいですね!」
それを頼もしく、少し恐ろしく思う。何故なら――
私は、この妖怪には絶対に、勝てないから。
それなりに狂った世界を見てきたつもりだが、この幼い主の見てきた世界には及ばないと痛感する。
飛び掛ってきた2体の羽の生えた牛のような獣の腹を切り裂く。それでも飛び掛る勢いのそのままに臓物を撒き散らしながらの体当たりに2本ずつナイフを投げつける。魔力の込められたナイフは弾丸のような物理的衝撃を生み出し、遥か彼方へと吹き飛ばしていく。
500年。まさに長い時間だと思う。破壊する事しか出来ない妹様を幽閉した時間が495年で、パチュリー様を友人として招いて100年。あとの395年、お嬢様は孤独であったと言う事実。それを察するだけでも私にはとても耐えられそうも無い。
下から這い上がるように飛び掛る蛇のような物を蹴り上げる。上へと吹き飛んだ蛇を空中に縫い付けるかのようにナイフを投げつける。
背後から怒声のような音と共に紅い光が吹き上がる。
「咲夜、手加減してるんじゃないの?」
お嬢様の声。振り返ればこちらを見つめる紅い瞳。
「全力を出す相手でもないですから」
「何を言っているの? これは掃除だけれども同時に舞台でもあるのよ。私を一人で踊らせるつもり?」
お嬢様の瞳は紅くて、それだけで世界が埋め尽くされていく。
「貴女はこの私の従者なのよ? なら理解しなさい」
強い光を宿した瞳が私の中へと侵入してくる。
アカク塗り潰される世界。お嬢様以外にはもう紅い色しか見えない。何かが酷くうるさく耳にまとわり付く。
「そう、すでに今宵は狂宴、狂った夜に踊るのは私と……」
紅くて妖艶な何かが私の体を突き抜ける。それは性的な興奮にも似た何か。
殺しコロシテころし尽くす狂宴の夜。
「だぁれ?」
砂のような音ともにノイズが走る世界が整えられ、世界はクリアに紅く染まる。やるべき事は一つ。出来る事も一つ。
幻葬に処された身なれど、主の呼びかけとなれば舞台で踊る事に異存はない。私にできる事は泣く事しかできなくて、泣く事は殺す事でしか表現できない私ができるのは目の前のありとあらゆる物を殺す事で泣き声を聞かせる事。だから私は声を上げて、私に出来る最高の方法で泣こう。そして殺そう。
「それでは、僭越ながら」
「良い子ね、上出来だわ」
紅い世界でお嬢様だけが浮かび上がる。慈母のように私を抱きしめてもらう事に無限の安堵感を抱く。
そこは暖かく、あの冷たい地下室でもなければ何も無い部屋とも違う。
「もう泣かなくてもいいのよ、泣かなくていいから……」
まるで子どもをあやすように私を抱きしめられる。赤い満月の下でまるでいつかのように。あぁ、私はこの方の為なら何だってやろう。神でも魔王でも博麗の巫女ですら殺して見せるし、再びあの路地裏に捨てられようと構わない。絡み合う指と想いは深く重なり、今私と彼女の間にあるのは、強く、決して離れる事の無い絆という名の紅い糸。
捧げるのは従順と純潔。
受けるのは安堵と狂気。
だから。
「殺しなさい」
「かしこまりましたわ、お嬢様」
深紅の緞帳は下がる事無く開け放たれている。
観客席からは幾多の妖怪の唸り声と怒号、それらに満足の行く苦悶と断末魔の喝采を上げさせる為の舞台はいよいよクライマックスへの行進曲と言う名の悲鳴が鳴り響く。
夜の女王と幻影殺人鬼、ともに観客に死を振り撒く輪舞曲の踊り手なり。
「虫けらのように」
「死になさい」
歌うように言葉は紡がれる。
「死の甘い鎖をさしあげますわ」
投げるのは幾本かの銀の刃。決して多くを投げつけた訳じゃない。即座に時間を停止。空間と時間を操り望む世界を作り上げる。銀の時計が回り、銀の鎖が伸びていく。過去と現在、未来を結び付け、鎖で編まれたナイフは幾十、幾百となって注ぎ込まれる。
断末魔のオーケストラを聴きながら返り血が降り注ぐ。避けるなんて勿体無い。全て私のために流された命という名の喝采だから。
「お前達の運命は決まっていたのよ、受け入れなさい」
紅い運命という刃物が飛び交い、音速の速さを持って叩きつけられる。物理的な力によってナイフは貫き、蹴散らしていく。紅い運命は逃れる事のできない死への一本道。戻る事も立ち止まる事もできない赤絨毯のヴァージン・ロード。死者達は歌いながら歩く事しかできない。
もはやどれがどうという形すら認識するのは無駄。ここにいるのは踊り娘と死体と紅い夜。
もはや死者と死者予定しかいない観客達も数える事が無駄。悲鳴と苦悶の中で私とお嬢様は踊り続ける。
「あぁ、良い夜だ……」
「えぇ、良い夜ですわ」
満月を仰いだ私とお嬢様の恍惚とした声が響く。
見もしないで放たれたナイフと妖弾の先ではとても言い表せないような悲鳴や肉の千切れる音や、重たい物が血の池に沈みこむ水音。
逃げ出そうとしたケダモノの前に回りこみ、その喉笛を掻っ切る。
跪き許しを請う化け物の頭を掴み、握り潰す。
一方的な虐殺の宴は続き、生き残る物は一匹たりとて許さない。
やがて断末魔の名を借りた喝采の数も少なくなり、この世という観客席から御退場願った動かぬ欠片たちが草原を埋め尽くしていく。
「ま、雑魚は所詮雑魚ね、その程度でこの地を住処にしようなんて片腹痛いわ」
「雑魚なのだから仕方ないですわ」
返事をする私の声は軽い。この殺戮の夜を楽しまなくてどうしろというのだ。
「残りも少なくなってきたし、そろそろお開きにしようか?」
「少し物足りないですわ」
まだもっと殺したいのに、という本音は包み隠す必要を感じない。
「あらあら、せっかちさんは嫌われてよ?」
「それもそうですわね」
私は返事とともにナイフをバラ撒く。
「まずは露払いですわ、踊りなさい」
放たれたナイフは直線軌道。しかしナイフと私の間には確かな繰り紐が結ばれている。その紐をくいと操作するだけで全てのナイフは踊りだす。
踊るナイフを避けようとする烏合の衆は人形。ナイフという糸を操るのは私という殺人人形。人形に操られし愚かな人形にはすべからく死を。
お嬢様に近しい物から次々と血の池に沈んでいく愚者達。お嬢様は泰然として一枚のカードを取り出す。
本来、カードなんか無くたってできる事。でもこれはお遊びだからわざわざ宣言してやるのだろう。私も僅かに遅れながら胸ポケットからカードを取り出す。
「紅魔」
「傷魂」
時間を少しだけ止めてタイミングを調節する。
残った死亡予定の群れは自棄に捕らわれたのか、わけのわからない雄叫びを上げながら一斉に私たちに飛び掛ってくる。
が、遅い。
「スカーレット・デビル!」
「ソウルスカルプチュア!」
凶々しい紅い十字架が夜空を染め上げ、飛び掛ってきた大半の妖怪を消し飛ばす。断末魔の悲鳴は吹き上がる妖気の轟音にかき消されて、その悲鳴を轟かせる事は無い。
残った妖怪は何て事のない、ただ単に紅い死の運命に巻き込まれるのが遅かっただけ。しかし私のナイフから生み出された幾重もの紅い閃光は彼らの生存を許さず断末魔を切り裂いていく。
かくして虐殺の夜はここに完遂され、愚者達の生き絶えた草原は見事な紅い狂気の満月の下、地獄絵図を描きながらも静寂に包まれた。
4
静寂な紅い世界の下、お嬢様は丹念に妖怪の死骸を粉々に打ち砕いていく。
未だ狂気の覚めやらぬその顔は愉悦そのものに浸りきっていた。
「お嬢様……もうそろそろよろしいのでは……」
さすがに私の世界は正常な色を取り戻し、紅い草原と蒼い夜、狂気の満月を映し出していた。
「まだ生き残った奴は居ないのかしらねぇ!」
私の言葉に耳を貸さずに足元の首だけになった元狼のような妖怪の頭を踏み潰す。
目玉が弾け飛び、脳髄が飛び散るがお嬢様は気にした風でもない。その様に体の奥底から殺戮による歓喜の呼び声が聞こえるが今は無視をする。
「お嬢様……」
流石に止めようと思って歩き出した、その時。
「咲夜!」
お嬢様の鋭い声に一瞬立ち止まるがもう遅い。
私の左足から白い光が飛び出し、虚空へと突き抜ける。
「え」
私はそんな事して無いというのに……
次の瞬間には足に力が入らず、その場に崩れ落ちてしまう。
他人事のように左足に視線を向けると、紅い点が私の太腿のあたりに穿たれていた。
何が起こったのか理解しようとする頭には激痛が最大音量で喚き散らされ理解が遅れる。
目の前のお嬢様が流線型にしか映らない速度で私の後ろへと飛んで行く。
お嬢様が私の後ろに消えた瞬間に世界が傾き、後ろを振り返りながらやっと私の口から痛みを緩和する為の捌け口のとして悲鳴が漏れる。
「あああああっああっ!」
痛みをカットしなければならないという理性が働くが、何しろ貫通しているのだ。神経もやられてしまっているのに違いない。激痛が視界を真っ赤にし、私の口からは苦鳴が漏れる。理性の出る幕なんぞ何処にあるのか。
痛いイタイいたい痛いイタイいたいうるさい煩いうるさい煩い!! 痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい黙れ激痛、この足の激痛は嘘だから黙ってお願い! 痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイいたいこれはただの部品が壊れただけだから黙りなさい本能なんかいらない! 痛いイタイいたい痛いイタイ煩わしい! いたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイ起きなさい殺人人形! 寝てる場合じゃないでしょう! いたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい部品の一つや二つが壊れたぐらいでぐだぐだ騒ぎ立てないで! 痛いイタイいたい私が誰なのかもう一度思い出しなさいこの使えない本能! 痛いイタイいたい痛いイタイいたい私は殺人人形で痛いイタイいたいお嬢様に仕える痛い完全で瀟洒な従者でしょう!!
これぐらい耐えなさい十六夜咲夜!!!!
「私の花に触れるな下衆がぁ!!」
お嬢様の声が聞こえる。握り潰された大きな目玉すでに光を失っていた。
なんとか激痛は理性で無視できる程度に慣れてきた。しかし痛みが引いたわけでもなく、依然として傷口からは私の血が流れ落ち、他の妖怪どもの血と混ざり合って鮮血は左の太腿から噴き出し左足の感覚がまるで無い事に気がついて慌てて確認してみるとまだ足はあって、ホッとするけども同時に神経を貫いている事を理解して、これから先再び歩けないんじゃないかという悪寒が全身を震え上がらせるけれどもまだ痛みは引かなくて、うるさい黙れ!
「咲夜……」
気がつけば私はお嬢様の膝枕の上で涙を流しながら抱きかかえられていた。
取り戻した理性は残酷に歩けない事実を捉え、何よりも恐ろしいのはこれから先お嬢様に完全で瀟洒に仕える事ができないという事実。
不甲斐無さと痛みと悔しさと悲しみで目の前のお嬢様の顔すらぼやけてしまう。
「申し訳ありませんお嬢様……本当にっ……」
「咲夜、落ち着いて聞きなさい。死に至る傷ではないとはいえ、このまま完治を待ったのでは貴女の足は戻らない。良くて左足は動かないまま、悪くて壊死による切断。今の最悪の状況では傷と出血による貴女のショック死もあるわ、だから――初めて貴女と会った時の質問に答えてあげる」
「何を……ですか……?」
お嬢様の顔が近づいてくる。
「貴女が私に一番始めに言った言葉はね、『私を殺して下さい』だったのよ……だから、それに対する私の返答をさせてもらうわ」
未だ鳴り止まぬ激痛の中で、お嬢様の言葉だけがハッキリと聞こえる。
「お断りするわ。貴女は私が395年も咲くのを待った花ですもの。貴女のその身が例え人であろうと無かろうと、私は貴女を永遠に咲かせる為に、こうするのよ」
お嬢様の手には銀のナイフ。それがゆっくりと首筋に当てられ――
引かれた。
お嬢様の首からは鮮血が迸り私に降り注ぐ。
「私の眷属……になれるかどうかは微妙なラインね。眷属になってしまえば面白味は減ってしまう。それでも貴女は死なないわ。それに、私の操作を受け付けない貴女ですもの。気高く、誇り高い花よ。願わくば私の血を吸い生き長らえて、なおいっそう咲き誇りなさい」
お嬢様の声が耳元で聞こえたと思った。次の瞬間には私の口はお嬢様の首筋、ナイフによる切り傷を押し付けられる。
「んっ」
お嬢様の声が震える。
口の中にはお嬢様の血が溢れ、零れたぶんは私の頬を伝い落ちていく。
何を意識するまでもなく、母親から赤子が母乳を貰うように。
私は、お嬢様の血を、飲んだ。
生臭い血の味は一口目で慣れ、二口目から後は何故かとても甘く、まろやかな気がして。
飲み込むたびに私の奥底で何かが震える感じを受ける。
禁忌を犯す味を、私は、とても美味しいと感じた。
抱きかかえられた体は暖かくて、心はお嬢様の血がゆっくりと暖めて行くのが解る。
「ふっ……あぁ……」
私の喉が鳴るたびにお嬢様の体が震える。
いけない事だと解ってもそれが嬉しくて、もっとお嬢様の血が、お嬢様を侵したいという気持ちが抑えられずに私の喉がぜん動を繰り返していく。
「んぅ、さ、くや……なん……と、っく! 言われようと、貴女は、離さないわ」
その言葉が嬉しくて、私はポロポロと涙を零した。
5
「どう? 落ち着いたかしら?」
私はまだお嬢様の膝枕の上にいる。
お嬢様の血を飲んだせいか痛みは既に無くなった。左足が凄くむず痒い。おそらく治ってしまうのだろう。
お嬢様の手は私の頭を優しく撫でてくれている。幾分気恥ずかしさを覚えるが、悪い気分でもない。
「……治りそうね」
「……ありがとうございます」
まだ私の足は動かない。でも痛みの引いた今なら空を飛んで帰る事もできるだろう。でもなんだか言い出しづらい気がしたので、まだ黙っている事にする。
ふ、とお嬢様が笑いかけてくる。
「……まだいいわよ?」
うぅ、バレてる……。まぁここは素直に甘えてしまおう。
「足……動くのでしょうか?」
未だ力の入らない左足を見て、少し怖くなる。傷自体は治っても動かないのが怖い。
「まだ力は入らないの?」
「えぇ……」
私の返事はどこか弱々しい。
「ふむ………………動くよ」
しばらく黙った後、お嬢様はそう言った。
運命操作――
「私はお嬢様の操作を受け付けないのではなかったのですか? 確かそんなような事を仰っていたような……」
うん、私の記憶は確かだ。
「貴女の存在自体は確かに私の操作を受け付けないわ。それが何でだかは私にもパチュリーにも解らない。例えば私が貴女を眷属にしようとしても、その結果は解らない。でも、廊下の角で貴女がぶつかるはずだったメイドは回避できるし、貴女の怪我の行く末を操作したりする事はできる。でなければ貴女は私の元に来る事も無くあの路地裏で生涯を終えていたわ」
少し難しいが……私という存在を書き換える事はできないけど、私の都合の良いようにする程度はできるって事かしら。
「ま、貴女の考えてる通りかしらね」
「顔に出てましたか」
「ばっちりと」
「……恥ずかしいですわ」
お嬢様にはかなわないなぁ。
凄く穏やかな気分。周りには数多の妖怪の死骸が転がっているというのに、さっきまではあれ程紅かった月と夜も本来の蒼さを取り戻していた。
「何を見ていたの?」
「月を……見てました」
「そう、私も見ていたわ」
「「貴女という月を」」
「ふふっ」
「ふふふ」
綺麗だけども、少し可笑しくて、噴き出してしまった。
紅い血の草原から蒼い夜を越えて月を見る私達。
私にふさわしい満月は目の前に居て、手が届かないあの月ではない。
だから……あぁ、初めて言葉にしよう。一度は決して口にしないと決めたはずの言葉を。
「愛してますわ、お嬢様」
私の告白にお嬢様は一瞬驚いて、それから艶然と微笑んだ。
「私もよ、咲夜」
その言葉は私の体の隅々まで行き届いて、嬉しさのあまり不覚にもまた泣き出しそうになってしまう。
「あらあら、今日は泣き虫さんねぇ」
嬉しそうに微笑むお嬢様の顔が涙でぼやける。
お嬢様はそれからしばらく私が泣き止むまで私を抱いて、頭を撫でてくれていた。
「そろそろ夜が明けるわ」
「はい……」
「帰りましょうか」
「ええ、帰りましょう」
「「私達の還るべき場所に」」
悲しみの檻は開かれ頑丈な鎖は引きちぎられた。
理解してくれる人は常に満月に一人。
泣いていた私を抱き、あやしてくれる。
舞台は既に二人。いつまでも二人。
錆付いたナイフは銀の短剣に。
長い旅路の果てに辿り着いた場所は紅い世界。
生まれて初めて必要とされた私。
誇り高き狗はその遠吠えに胸を張る。
主が健在な限り、私は高く遠く鳴き続ける。
主の想いが私に、私の想いが主に。
これ以上の幸せが存在するはずは無い。
今私は誇り高き完全で瀟洒な狗。
主の為ならなんでもしよう。
それが私の生きる意味なのだから。
「愛してますわレミリアお嬢様」
「愛しているわ私の十六夜咲夜」
――――了――――
本当にこのコンビが好きなんだなぁと伝わりました。イメージが耽美過ぎて、俺の中の世界観とは微妙に一致しないけど、そんなのは瑣末。そのまま突っ走って下さいませw
へ? 俺の中のイメージと一致しないとこは何処だって?
そりゃ勿論咲夜はぺたry(細切れに刻まれました
レミリア様も咲夜さんも、(文章ながら)凄く美しかったです。
私のイメージする幻想郷とも多少誤差がありましたが、これはこれで
素晴らしい世界でした。GJです。
咲夜さんはたゆんなんだよ!(何故か運命を操られ不幸が訪れました。アルゥェ?
読んでいる私までが魅せられてしまいそうな紅の主従でした、良かったです(礼)
そしてエロイ。
私の花に触れるなとか、言霊素敵過ぎます。
本物は違うなぁ。GJでした!
それでは恒例となって参りましたコメント返しをさせていただきますね。
>床間たろひさん
咲夜への愛は込めまくってますw
紅魔郷の5~6面のイメージは凄まじい物があると思いますがどうでしょう。
あと、たゆんです。これ絶対。
>一人目の名前が無い程度の能力さん
今ではほのぼの一辺倒な東方のイメージですが、この主従だけはこういう空気でもいいんじゃないかと思ってます。
凄く重くて辛い過去があっても、今という場所を手に入れた咲夜はきっと幸せですよね。
>二人目の名前が無い程度の能力さん
咲夜はたゆんです。これが今まで明言しなかった自分のこだわりの点です。
某所ではすでに言われてましたがw
>変身Dさん
食欲と性欲は結び付きますよね!(ぉ
自分の中で目一杯そういう方向に振ったので、お褒めの言葉をありがたくいただきます。
>駄文を書き連ねる程度の能力さん
優しいのはレミリアなのか咲夜なのか、きっと両方です。
エロいのはただ単にたゆんだと主張したかっただけでs(刺された
レミリアにそう言わせるだけ、咲夜は彼女にとって大切なのでしょう。
実は5月で創想話投稿暦1周年でしたので、思いっきり好きな事を書こうと思って筆をとりました。
1年続いたのもひとえに読者様のおかげです。どうぞこれからもよろしくお願いします。
されど濃すぎる
しかしエロ優しい
むはーッ
いや~愛がいっぱいだ
ほんとこの二人はえろかわいいなあ
河瀬さんの書かれるレミ咲大好きです