Coolier - 新生・東方創想話

舞うは刃、踊るは剣戟

2006/05/26 05:42:08
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―…これは、幻想郷の最近の話
「弾幕ごっこ」などではなく、「戦闘」によって勝敗を決めていた時代の、ほんの些細なお話。
半身半霊の剣士二人と、博麗神社の祟り神と、三途の川を見張る死神、そして村を守る半身半獣の話である。
このメンバーで、いわゆるバトルロワイヤルが行われる…。
勝ち抜けられるのは只一人、負けた物は死より苦しい処罰が与えられる…―





―西行寺は、晴天というとても良い季候に覆われていた。
その日― 西行寺の剣士、魂魄妖忌は朝に起きて修行をしていた。
妖忌の修行は平常心を保ち敵を薙ぐ為の修行、それを毎日しているが故に、妖忌は常に平常心を保っていられるのだ。
しかし…その日はその平常心が揺らいでいるのが感じられる。
…妖忌とて、焦りを隠せないのだ。
しかし、私の前ではいつも通りに接している。焦っている、など微塵も感じられない。
おそらく、気を遣っているのだろう。
私は、妖忌に声を掛けた。

「妖忌よ」
「! …はっ、何で御座いましょうか」
「…私の前では心の歪みを咄嗟に隠すのは無理だと、身を持ってわかっているはずだ」
「…はっ。」
「今は主従などの関係はない。悩みがあるなら打ち明けてみよ」
「しかし…」
「構わないと言っている。」
「…はっ」
「堅苦しい返事などいらぬ。…もしや貴様の焦りの原因とは、今日の…」
「それ以上は言わずとも構いませぬ…。儂とて、重々解ってはいるのです…。
 あのような場所に妖夢を出すのは儂とて本意ではありませぬ。
 しかし、既に定められていることは覆せず…。面目ござらぬ」
「…何もお前が謝ることはない。
 妖夢が出るのか…。しかし、それは自然の理でもある。妖夢は既にお前と同等…いや、それ以上の力を秘めている。
 それをあの妖怪が放っておく訳はあるまい…」
「…」
「…しかし、お前も解ってると思うが、妖夢はまだまだ未熟だ。
 力が開眼するその時まで、お前が守ってやらなくてはならない。」
「…心得ました」
「…しかし、勝つのは只一人と聞く。
 …妖忌、お前が勝ちを狙っても構わぬぞ」
「な、何を申されますか
 妖夢は儂の只一人の親族、斬るなど…!」
「…馬鹿だな。
 勝つのは只一人だ。その座を手に入れる為には、例え親族を斬るなども自然の理…」
「幽々鬼様!儂は何の為に妖夢に修行をしていると!」
「そう怒るな。只の冗談だ…。
 …只の冗談で済めばいいと思ってるが、な…」
「…」
「…もうこんな時間だ。…妖夢が腹を空かせて待っているだろう。ご飯を作ってやれ。」
「…はっ」


妖忌が話を終え屋敷に入ると、毎日のように幽々子と妖夢が庭でじゃれ合っている。
「妖忌、おそいわよー。はやくご飯を作って頂戴」
「お師匠様、遅かったですね」
「一寸話をしていてな…。今からご飯を作ってくる。暫し待たれてくだされ」
「急いでねー」

幽々子の間延びする声が屋敷に響く。おそらくかなり腹を空かせていたのだろう。
…妖忌も、その声で少しは明るくなったように見える。

―――

「さぁ、ご飯が出来ましたぞ」
「おーそーいー!」
「出来ましたか。では、いただきます」

…ご飯が出来たらしい。
私も食卓へ向かう。今日の献立はいつもより豪華な物だ。

「あれ、いつもよりおいしーわ」
「気に入って貰えて光栄です、幽々子様」
「お師匠様、何かいつもと違いますね」
「そんなことはないぞ妖夢。」
「さぁ、早く喰わないと飯が冷めてしまうぞ」

「「いただきまーす」」



「…妖夢よ」
「はい、お師匠様」
「今日は一つ、お前に伝えることがある。
 驚かずに、平常心で聞くがよい。」
「はい。何でしょうか?」
「…今日、お前にはある場所へ来て貰う。
 そして、…妖怪と、怨霊と、…そして儂と戦って貰う。」
「え!?」
「所謂、決闘という奴だ…。
 その覚悟は、お前にはあるか…?」
「…お師匠様と、戦う…?」
「…そうだ、妖夢。
 手加減などいらぬ。本気で…命を奪う気でかかってこい。」
「し、しかし…!?」
「既に時間は殆ど無い。
 …妖夢よ、躊躇うな」
「…」
「では、修行に戻れ。儂は先に行っている」
「…お師匠様、ちょっとお待ちください。何故に私が…?」
「…お前が、儂以上の力を秘めているからだ」
「そんな…!私はまだまだ未熟者で…」
「謙遜するな!お前はもう一人で戦える!」
「そんな…!」
「甘ったれるな!」
「けど…」
「…儂は、修行に戻る」
「はい…」

そうして、時は過ぎていく。
既に時間は昼を回る頃、そして妖忌達が出発する時間でもある。

「世話になりました、幽々鬼様…
 もし戻ってこなかったら、幽々子様を頼みます」
「ああ、妖忌…」
「…では。」

妖忌は足早と門をくぐる。
それを追って、半泣きの妖夢が出て行った。

「ねーねー、妖忌と妖夢はどこにいくの?」
「…お前はまだ知らなくて良い」
「ふーん」

――――――

私は魅魔。博麗神社の祟り神だ。
ここは博麗神社の物置近く。私の住処だ。
得意なことと言えば…三月戟の扱いくらいかな?
って玄関が騒がしい…何かあったのかい?


「…ここにいたのね魅魔!とっとと成敗されなさい!」
「おや、霊夢じゃないかい。そうはいかないね、今日は大切な用があるからね」
「…は?」

いつもだったら私は即座に弾を撃ち返してるからねぇ。
霊夢はそれが無くて驚いているようだね。

「今日はちょっと用事があるんだよ、悪いが封印はされないね」
「…いつもだったら用事があろうが無かろうが弾打ってくるって言うのに、今日はどうしたのよ?
 熱でもあるの?」
「ははっ、幽霊が病気なんてとんだ笑い話だよ。
 …そろそろ、行かなきゃねぇ」
「な、何よ?何かあるの?」
「いやいや、霊夢には関係ない話だよ。
 私は行くからね。
 …あと、戻らなかったら銅像くらいは飾ってくれよ?」
「さっきから何を言っているのよ?」
「んじゃ、じゃあねぇ~」
「って、あっ!ちょっと待ちなさい!」

霊夢はお約束の言葉を放っている。
やっぱり敵とはいえ、いきなり居なくなると寂しいのかねぇ
まぁ、私にとってはどうでも良いけど。

…あ、そういや魔梨沙の所に行くのを忘れてたよ…
ま、あいつは最近芯がなってきたから大丈夫だろう。
っとと、もうこんな時間だ。行かなきゃね。

――――――

ここは無映塚。
死者の魂が捌きを待つ場所である。
そこで、二つの影が見える。
何やら言い合いをしているようだ。

「…小町、本当に行くのですか?」
「んー、呼ばれたからにはやっぱ行かなきゃならないですよねぇ。
 ま、吉報をお待ちくださいな、映姫様。」
「今なら私の権限を使って無かったことにすることも出来ます。
 さぁ小町、行くのをやめなさい」
「そうはいきませんよ映姫様、やっぱり行かなきゃならないような気がして」
「あなたはあの戦いが全然解っていない!
 あのような場所に行かせるくらいなら、無理にでも引き留めていきます!」
「映姫様!」
「!?」
「私は単に行きたいから行く、ってわけじゃないんですよ
 何か因縁めいた物を感じる…。だから、行くのです。」
「小町…」
「そういうことです、映姫様。
 こればかりは映姫様でも曲げられませんよ」
「…わかりました。
 …いってらっしゃい、小町」
「…はい、いってきます。映姫様」

(…とは言えども、正直あたいも怖いんだよね…
 けどやっぱり、行かないとね…。
 さて、飛ばしていくよっ!)

唐突に姿が見えなくなった。
どうやら、能力を使って一気に飛んだようだ。

――――――

ここは人里。何の変哲もない人里だ。
ただ一匹の妖怪を除いて。
「…慧音様、本当に行かれるのですか」
「ああ。胸騒ぎがするんだ。行かなきゃならないような気がして、な。
 安心しろ、傷は付いても死ぬことはない。必ず戻ってくるさ」
「慧音様…」
「えー!?けーねねーちゃん、どっかいっちゃうの?」
「やだよー!ずっとここにいてよー!」
「…大丈夫だ。私は必ず戻ってくる。そしてこの村を守り続ける。
 それが、今は無き村長…。あいつとの、約束だからな」
「…ちゃんとかえってきてよ?」
「いなくなっちゃやだよー!」
「ふふっ、まったく微笑ましい子供達だ…。
 …では、そろそろ向かう事にしよう。」
「慧音様、どうかご無事で…」
「ばいばーい!けーねねーちゃーん!」
「ああ、じゃあな。」



「…慧音、何処に行くの?」
「…妹紅か、残念だが今日は輝夜への復讐は手伝わんぞ」
「いや、そうじゃなくて。何だかお別れムードだったからさ。…どこに、何をしに行くのよ?」
「…正直、私もよくわからん。知らされているのは場所だけだ。
 しかし、それは口外厳禁になっている。残念だが伝えられない」
「慧音さ、もっと正直になろうよ。私が変わりに行ってあげるからさ」
「いや、それは出来ない。私が行かなくちゃ駄目なんだ」
「…いや、止めはしないけどさ。
 無事でね、慧音」
「…ああ。」

―――

ここは、紫が用意した特異空間。
どこからの干渉も受けず、どこへも干渉しない。博麗大結界をそのまま縮小したような感じだ。
…そして、ここで戦いが行われる。

「うふふ…久々に見たいと思ったのよ。
 剣と戟がぶつかり合う、戦争って奴を…」

ここに向かう者は、必ずこの場所に着くまで、気付かないように調整してある。
非常に難しい術式だが、これを軽々とこなすのは紫たる由縁か。

最初に着いたのは小野塚小町。
この空間にも殆ど驚かなかった。さすがは死神、か。

次に着いたのは魅魔。
この空間には驚くどころか、作り方を調べたりしていた。

そして、三番手と四番手は半身半霊の剣士二人。
妖忌はまったく動じなかった。妖夢はかなりたじろいでいたようだが。

最後は半人半獣の妖怪。
非常に思い詰めた顔をしていた。

「みなさんいらっしゃい。ここは私が作り上げた空間よ。
 どこからの干渉も受けず、どこにも干渉しない。まさに異次元だわ。
 これからみんなにはその得物と能力で戦闘をして貰うわ。
 最後の一人になるまで、ね。」

「はっ、接近戦だったら本領だよ!やってやるさね!」
「おやおや…。まぁいいさね、腕が最近鈍ってたから、丁度良いよ」
「紫殿…!」
「そんな…」
「里と、妹紅の為…ここは打ち勝つ!」

各々が声を上げる。


「紫殿…これは、冗談では済まされぬ」

…妖忌は、明らかに怒りの混ざった声で言った。
そして刹那、脇差を4つ投げつける。
油断していた紫は、それに当たり、崩れ落ちると思われたが…それは早計だった。
よく見れば、当たったと思われた箇所には紫色のスキマが開いている。
スキマがに入っているということは、どこかのスキマから出てくるいうこと。
それを妖忌は知っている。主、幽々鬼から聞いたのだ。
そして、妖忌は身構えた。…しばらくした後、脇差は後ろから飛び出てきた。
―妖夢に、向かって。

「なっ!?」

妖忌は素頓狂な声を上げる。
自分にが投げた脇差が、弟子の妖夢に切っ先を向ける。
妖夢も当たれば無事では済まないだろう。…最悪、人間側が死ぬかもしれない。
そう思った妖忌は、咄嗟に妖夢を抱きかかえた。
自分が盾になり、妖夢への直撃を防ごうと思ったのだ。
妖夢はその状況を理解していた。
かつて幽々子の母…幽々姫が自分を妖怪の槍からかばってくれたように、妖忌が盾になろうとしているのがわかっていたのだ。

「お師匠様、駄目!」

しかしその声は妖忌には届かず、抱きかかえたままだ。
…そして、脇差は妖忌の背中へと突き刺さると思われた…が、そうではなかった。
ふと顔を上げると、周りには刃先の砕かれた脇差と、緑色の髪をした女性…魅魔が立っている。

「戦う前から倒れてどうするんだい。
 さ、立ち上がるんだよ。勝負はこれからだ」

妖忌は呆気に取られた。もうすぐ敵になろうとしている自分を、何故助けるのか。
理解が出来なかったのだ。

「…お主、何故儂を助ける?…後に敵同士となると言うのに…」
「あんた、何を言ってるんだい。
 自分の…弟子…かい?を助けようとした意気込みを認めただけさ。」

またしても妖忌は呆気に取られた。
なんて甘い考えなんだろう、と。
…ふと周りを見てみると、鎌を抱えてやれやれと言った表情の死神と、剣を構えた状態で微笑んでいる半人半獣の姿が見えた。
…それにつられて、妖忌は軽く微笑んだ。やれやれ、といった感じで。

「…あらあら…
 感動話も良いけど、そろそろ始めて欲しいわね」

その言葉で、妖忌はフッと我に返った。
考えてみれば、ここにいる人物は全て敵。油断は出来ない相手なんだ、と認識した。
それと同時に、妖忌の顔は引き締まり、剣士の顔となる。
それに合わせ、他の人物も顔を引き締める。
妖夢も例外ではない。妖忌に守られているだけではなく、自分で自分を守らなければならない。
先ほどの行動でそれを認識したようだ。キリッと顔を引き締める。
それを見た妖忌は、一瞬安心したような表情を見せ、すぐに顔を引き締める。
緊迫した空気が流れて―

「…うふふ。
 準備は出来ているようね。
 解ってるとは思うけど、負けた人にはちょっと苦しんで貰うわよ?」

全員が、コクリと頷く。
それと同時に、緊張し張りつめた空気が、刺々しい空気となる。
常人なら、まず耐えられないような空気。
それがしばらく続いた後、紫の一声で賽は投げられた。

「では、勝負開始よ」

「ぬん!」
―先ず剣を振ったのは妖忌。目にもとまらぬ速さで抜刀し、真空を生み出す。
それは衝撃波となり、敵に襲いかかる。
…しかし、そう簡単に当たりはしない。ジャンプして回避された。

「甘いねっ!」
次に攻撃を仕掛けたのは魅魔。
三月戟を持ち、妖忌へと飛びかかる。
「えぇいやっ!」
そして一閃、もの凄い質量を伴って振り下ろす。
「ぬぅん!」
しかし妖忌はその程度では動じない。難なく鞘で防御する。
…だが、攻撃はこれで終わりではない。
魅魔は二度、三度、四度…と目にもとまらぬ速さで三月戟を振る。
それに妖忌が苦しみだし、鞘のみでは防ぎきれないほどの一閃が来ようとした刹那―
「たあっ!」
魅魔に向かって鎌の柄が振り下ろされた。
「のわっ!?」
魅魔は咄嗟に防御に回り、戟で防ぐ。
それを攻撃し続ける小町。
「ぐぐっ…!けど、負けちゃ居ないよっ!」
しかし魅魔も隙を掴み、反撃する。
戟と鎌の攻防はほぼ互角。
それは目にもとまらぬ速さで続いている。

それを隙と見た妖忌は、刀に手を掛け―
―防御に回る。
後ろには慧音が剣を構えて待っていた。
「一騎打ちに水を差すとは、あまり好ましくはないぞ?」
その言葉と同時に、慧音が攻撃を始める。
「ぬっ!」
慧音の持っている剣は、妖忌の持っている長刀より遙かに短い。
しかしその短さだからこそ出せる、攻撃の速さ。
長刀は、短剣には相性が悪い。
一瞬の隙も見せないその攻撃は、次第に妖忌を追いつめていった。
肩口に一発傷を与え、妖忌は刀を落とした。そして―
「これで、とどめだっ!」
慧音が剣を振り落とそうとした刹那―
後ろから衝撃波が飛んでくる。
「何ッ!?」
…その衝撃波を飛ばしたのは、妖夢。
右手に持つ長刀から出された真空波が慧音に向かって、当たった。
「ぐっ!」
背中に一発。さほど深くは無いといえ、傷は傷である。
慧音は呻き声を上げ、怯む。
「隙ありッ!」
妖夢が叫ぶ。一瞬で距離を詰め、斬りつける。
長刀は短剣に相性が悪いと言うが、二刀流となればまた別。
軽い傷は何回か受けたものの。妖夢は着々と慧音を追いつめ― 斬った。
「ぐぅっ!」
「…峰打ちだ。」

「一名敗北…。ご愁傷様。」
紫は悪そびれない感じで、言葉を言う。

―その頃、魅魔と小町は互いにほぼ互角の勝負をしていた。
「へっ…その綺麗な肌が見え隠れしてるよ?」
「あんたに言われたくはないねっ!」
魅魔の三月戟は小町にかなりの傷を与え、破れた服から肌を露出させている。
小町も又然り。魅魔にかなりの攻撃を与え、傷を与えている。
しかし、二人の武器は止まることはない。
目にもとまらぬ速さで振られているその得物は、どちらかが倒れた時しか止まらないのだろう。


…そして、その妖夢を見て、妖忌は
「成長したな、妖夢よ。」
と歓喜の声を漏らす。
「いいえ、師匠に比べればまだまだ未熟です。」
「…いいや、お前は今の儂に勝てる程までに成長している。」
「いいえ、そんなことは…」
「謙遜はいらん!儂は、今からお前に勝負を挑む。
 修行などではなく、一人のもののふとして、だ。」
「…」
「受けよ、妖夢。
 …勝負願う!」
「…はい!」

―先に仕掛けたのは、妖忌。
持ち前の居合で、目の前の「相手」を薙ぎ払う。
しかしそれに動じる妖夢でもなく、難なく防御する。
妖忌は素早く刀を戻し、瞬時に妖夢の背後に回った後、上から刀を振り下ろす。
妖夢はそれを刀を交差させて防御し、上に弾く。
そして体を回転させ、次の攻撃の防御に備える。
妖忌は刀を片手で持ち、連続突きを開始する。
妖夢はそれを刀の腹で防御し、少し防御した後に上から地面に挟み付ける。
しかし妖忌は素早く刀を引き、上から振り下ろす。
妖夢は咄嗟に体を捻り回避し、蹴りで足払いをする。
しかし妖忌は地面に差した刀を支点にジャンプしながら回し蹴りを放つ。
それに当たった妖夢は、少しの距離を吹っ飛んだ。
それに対して妖忌は衝撃波を3発放つ。しかし妖夢は回転しながら回避する。
地面を蹴って距離を詰め、そして妖忌に斬りかかる。
妖忌は左手の鞘でそれを受け、体を捻りながら刀を振り上げる。
妖夢はそれを空中で体を捻って回避し、妖忌の足下に潜る。
そして刀を十字になるよう構え、体を捻りつつ攻撃する。
妖忌は咄嗟に刀を下げて防御しようとするが、すでに時は遅く。
妖夢の刀を―
―腹に、受けた。

「成長したな、妖夢よ…」
「お師匠様…」
「これで剣でお前に教えることは無くなった…。
 お前に庭師としての仕事を叩き込んだ後、儂は隠居する…。」
「…」
「妖夢よ、儂が居なくなっても、強く…」
「お師匠様!」
「大丈夫だ…。この程度の傷なら、数ヶ月もすれば回復する…」
「…お師匠様…」
「以上だ…。儂は少し、眠る…」
「はい…」

「一名様、ダウン。
 う~ん、いいもの見せてもらったわよ」

―そして、魅魔と小町の攻防も決着が付こうとしていた。
「あんたもしぶといねっ!」
「そっちもなっ!」
魅魔は戟を渾身の力で右から左に振る。
それと同時に、小町も渾身の力で鎌を上から振り下ろす。
「「ぐあっ!」」
結果は…相打ち。
双方同時ダウンだ。

「あらあらまぁまぁ…。
 じゃあ、勝利者はあの子になるわねぇ。
 まぁ、勝ちは勝ちだわ。
 空間を解放するから帰って良いわよ」
「あの…一つ頼みがあるのですが…」
「あら、何かしら?」
「参加した居た人を、あまり酷い目に遭わせてあげないでください…」
「…あらあら」
「みんな、根は凄くいい人でした。そんな人を苦しい目に遭わせるなんて…!」
「…うふふ」
「何を笑っているのですか!」
「苦しい目、って言っても約一週間の間、私の召使いをやって貰うだけよ。
 身の回りの管理とか、物置の掃除とかね。
 わかったかしら?じゃ、解放するわよ」

妖夢は呆気に取られた。
なんだ、たいして重く無いじゃないか、と。
藍がみんなに包帯を巻いて、紫が能力を使って傷を治癒しているのを見ながら、妖夢は帰っていった。
そうして幻想郷バトルロワイアルは終わったのだった…。






―後日談

妖夢が一週間後にマヨヒガに行ってみた時、そこは凄い有様だった。
妖忌が廊下を雑巾掛けしてるわ、魅魔が物置の荷物に埋もれてるわ、
小町が真面目に働いてるわ、慧音が紫の着替えや荷物持ち、炊飯をやってるわ、と。

色々とわからなくなったので、紫を訊ねてみた。
「あらあら、また来たのね。見て解るとおり、そんな軽いものじゃないでしょ?
 ここ100年くらいやってなかった掃除に整理整頓や、夜枷の相手や身の回りの管理とかね。
 藍も休憩を訴えていたのよ。だから丁度良かったわ」
妖夢は呆気に取られた。
いや確かにかなり苦しいかもしれない。ぶっちゃけ死んだ方が楽かも。
けどこれで死ぬのは情けない。まさに地獄かもしれない。

妖夢は呆れかえって帰路についた。
この人は自分とベクトルの桁が違う、と認識しながら。

                              ~fin~
幻想郷は全てを受け入れる。

初めて書きましたので、至らない部分はあるかもしれません
誤字、批判などがあれば遠慮無く言ってくださって結構です
南無
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コメント



0.210簡易評価
4.70削除
誤字と思われるものを見つけたので書いておきます

魔梨沙→魔理沙 では無いでしょうか?
7.60削除
こういうの結構好きですね。夜枷の相手とはやっぱ妖忌ですかね。だとしたらうらやましい。

誤字といえば「博麗人者」博麗神社でしょうし、「博例大結界」博麗ですかね。

>裕さん

旧作時の話と考えればまだ魔理沙は魔梨沙だとおもいますよ。
ただそうなると霊夢の字がまた違うかも知れませんけど(うろ覚え
8.無評価南無削除
>>裕さん
時代観は旧作に合わせてますので、間違いではありません。
昔は「魔理沙」ではなく「魔梨沙」でした。
ワールドガイド等を見ればわかると思います。

>>里さん
相手は…ご想像にお任せします。
誤字の指摘ありがとう御座います。修正しておきます
9.30あがが削除
それぞれが命を賭す戦いに赴く理由付けを、
もうちょっと肉付けして欲しかった。