―――此処は何処だろう?
偶にそんな事を思う事がある。
周囲を見渡せば、そこはいつもの見慣れた風景。
此処は間違い無く自分の部屋だ。
外から入る日差しが、もう朝である事を告げている。
「ん……ふぁ…………はぁ~……」
布団から起き上がった少女は、体を伸ばし、大きな欠伸をして頭に酸素を送る。
チラっと折り畳まれた私服の方に目をやり、どうにか布団の誘惑から逃れ様とする。
「ん~……起きなくちゃ……」
少女はゆっくりと布団から抜け出し、寝巻きから私服へと着替えていく。
「そろそろこれも暑いかな……?」
いつも着用しているブレザーを手に取りしばし考える。
しばらく悩んだ後、結局それを着ずにワイシャツ姿で鏡の前に座った。
ネクタイを確認し、その長い髪に櫛を通す。
納得が行ったのか、少女は立ち上がると布団を畳み、まだ眠い目を擦って部屋を後にした。
いつもこの時間に起きている少女は、玄関先の掃除に向かう。
ここを掃除して、初めて一日が始まるのだ。
「おはようございます~、鈴仙さま~」
掃除を開始しようとしていた少女……鈴仙の背後から間の抜けた挨拶が聞えた。
「おはよ、今日も早いね?」
「いえいえ、鈴仙さま程じゃ無いですよ~」
間の抜けた声の少女は此処に住む一般兎。
どうやら彼女の日課もこの掃除らしい。
「あれ?いつもの服はどうしたんですか?」
カクっと小首を傾げ、見慣れた物が無い事に気が付いた。
「ああ、もうあれ着てるのも暑いかなーって」
「衣替えですかー」
「まぁ、寒くなったらまた着るけどね……っと、取り合えず終わらせちゃおうか?」
「はいっ!」
二人は箒を取り出し空を飛んだ。
何て言う事はあり得ない。
取り出した箒で玄関先の掃除を開始した。
◇ ◇ ◇
「今日は何にしようかなぁ~」
日課を終えた鈴仙は、朝食の献立に頭を悩ませつつ、調理場へと向かっていた。
「昨日の夜は中華だったし、その前は……蝗の佃煮だっけ……私だけ」
ちなみにそれはてゐが用意したものだ。
「蝗って何よ蝗って、そんな物何処から取ってきたのよ」
ちなみに、食べたかどうかは想像に任せる。
まだ献立を決めれずに調理場に辿り着いてしまったが、まぁ適当で良いやと思いその扉を開けた―――
「なっ!?」
瞬間固まった。
調理場では、一足先に誰かが料理をしていた。
「ひっ!ひっ!ひっ!」
「火?火はまだ使わないわよ?」
「ひひひひひひ!」
「イナバ、その笑い方は気持ち悪いから辞めなさい」
「ひっ、姫!?」
「さっきから、うるさいわよ。暇ならお皿でも並べて頂戴」
「なっ!?えっ!?」
調理場に居たのは他でもない、輝夜だった。
目を丸くして、口をパクパクと開いて現状を理解しようとする。
「えっ!?ドッキリ?」
鈴仙は首を忙しく左右に向け何かを探す。
「残念だけど、カメラなんて無いわよ」
それを気にする風でもなく手を進めている。
「姫!何やってるんですか!?」
「何って……見て分からない?」
そう言われ、まじまじと輝夜を見てみる。
「照れるわ……そんなに見ないで」
「何言ってるんですか!?」
身をくねらせ、頬を赤く染める輝夜に思わず傍にあった蝗の余りを投げつけそうになる。
まだ、残ってたんだ……。
「どうして姫がこんな朝早くに!?おまけに料理まで!」
「私だって早起き位するわ、料理はついでよ」
「と言うか料理なんて出来たんですか!?」
「失礼ね、外に居た頃は結構やってたわよ」
外、とは幻想郷の外の事だろう。
「でも私、姫が料理してる所なんて初めて見ましたよ!?」
「それはそうでしょ、こっちに来てからはこれが初めてなんだから」
会話しながら進められる手は、中々に慣れた物だった。
「そんな……姫が……料理を…………」
鈴仙は両手を地面に付き、がっくりとうな垂れ、ショックを受けた。
「貴方……私をどういう目で見てたの?」
呆れた様に輝夜は、床と会話している鈴仙に声を掛けた。
その声に急に、ばっ!と顔を上げ、引き締めた表情で心から叫んだ。
「ニート!無駄飯喰らい!ただ食いするな!働け!!チビ!!洗濯板!!!!!」
正直に答えた……正直過ぎた。
「ちょ!?前は良いとしても最後のは聞き捨てならないわ!」
「洗濯板!まな板!」
ビュッ、と言う音と共にまな板が宙を舞う。
「げふぅ!」
「連呼するな!お前を朝食に出すわよ!?」
輝夜が投げたまな板は鈴仙の腹に直撃し地面に転がった。
「ううううぅ……」
先程とは違った意味でがっくりと地面に手を付いた。
そこに輝夜は止めを刺そうと包丁片手に歩み寄る。
「もっ、申し訳ありません!少々取り乱しました!」
「それが遺言ね?」
「いや、待って下さい!お待ちください!」
「待たないわ、イナバ料理なら待ってるけど」
「ひっ!」
「さあ、何処から調理して欲しい?」
「は、話を!話を聞いて下さい!」
「食材と話す事なんて何も無いわ」
「今一度!今一度生きるチャンスを!!」
地面に頭を擦り付けるかの様に申し入れをする鈴仙。
それに呆れた様な顔をして、最後のチャンスを与えた。
「……はぁ、仕方が無いわね。もう一度聞くわ……私をどういう目で見てたの?」
「幾千の時を生きる、永遠の姫君にございます!」
「……して、その心は?」
「まな……我が家の敬愛なる主です」
「…………」
「…………」
「リゾット決定」
「いやぁーーーーーーーー!!」
ある一羽の兎の鳴き声が目覚ましとなり、屋敷に朝を告げる。
◇ ◇ ◇
「およ?れーせんどうしたの?」
「いや、ちょっと……ね」
朝食の場、妙にぼろぼろになった鈴仙を見ててゐが首を傾げた。
「きっと朝から蝗と格闘してたんでしょう」
細めた横目で鈴仙の事を睨みながら輝夜が答えた。
「あー、あの蝗強いもんねー」
それを気にした風もなくけらけらと笑うてゐ。
「まぁ、取り合えず頂きませんか?」
「そうね」
「頂きまーす」
永琳の提案に皆が食べ始める。
今朝のメニューは秋刀魚の塩焼きと、人参を合えたサラダに肉じゃがなどなど。
至って普通の食事である。
「ん?れーせん、これ手抜きでしょ?」
「え?何が?」
いきなり謂れ無き事を聞かれ、鈴仙は疑問で返した。
「これよこれ、いつものれーせんの味じゃ無いじゃん。手抜きよ手抜き」
「て、てゐ……それは……」
言いながら鈴仙はちらっと横目で輝夜を伺う。
その視線の向きに気づいていないのか、てゐの批判は更に続く。
「大体、芋の芽が入ってるって何よ?毒は薬にもなるって言いたい訳?」
「あら、確かにじゃが芋の芽は薬になるのよ?」
「え!?そうなんですか?」
薬、と言う言葉に反応し、すかさず永琳が口を挟んだ。
「ええ、じゃが芋に含まれる成分には抗がん剤になる物があるのよ。貴方にはまだ教えていなかったわね」
「はい、初耳です」
関心しながら話を聞き入る鈴仙にてゐは怒りを露わにした。
「芽は食べたらお腹を壊すの!あんたは集団食中毒を起こす気!?」
「あ~……えっと、その……」
「全く……」
歯切れの悪い返事を返す鈴仙に呆れ、てゐは気を取り直す為、水の入ったコップに口を付けた。
「それ、私が作ったのよ」
「ぶふぅ!」
見事なアーチがてゐの口から噴出された。
「げほっげほっ……ひ、姫が!?」
「ええ」
「え?何?何の冗談?」
「てゐ……信じられないかもしれないけど、本当の事なの」
困惑するてゐに向かい、沈痛な面持ちで鈴仙が答える。
「嘘!?嘘よ!あり得ないわ!」
「てゐ……現実に目を向けて……」
「だって姫よ!?あの姫よ!?」
「でもこの目で確かに……」
「あんたの目は狂ってるのよ!狂い過ぎなのよ!」
「いや、確かに狂わせる事は出来るけど、私自身は狂って無いってば」
頭を抱え、この世の終わりだー、と叫ぶてゐの後ろにはどす黒い空気を発する輝夜が立っていた。
どこぞの仕事人の如く、その手に持った先の鋭く尖ったお箸を、癖ある黒髪に狙いを定め振りかぶり。
ブスッ、という音と共にてゐの体が崩れ落ちる。
鈴仙は硬く目を瞑り、その光景から目を逸らした。
永琳は気にした風も無く食事を続けている。
「芋の芽は兎も角、味でイナバに劣ってるって言うのは聞き捨てならないわね」
「劣ってるとは言って無いような……」
てゐを刺し殺した後、てゐの箸を奪い食事を再開した輝夜がぽつりと零す。
「イナバ」
「は、はい?」
急に名を呼ばれ、また何かされるのかと身を硬くして向き直った。
「貴方はこれ、どう思う?」
「これ……ですか?」
これと指されたのは、てゐが散々な事を言った肉じゃが。
また、下手な事を言えばお仕置きされるかもと思い身を硬くしていたが。その質問を受けその表情が和らいだ。
それはただ本当に思った事を言えば良いだけだったから。
「はい、私は本当に美味しいと思います」
「……そう」
「本当ですよ?信じてください」
「さっきの事があるからどうも……ね」
「あぅ……」
痛い所を突かれ、耳をヘタッとさせてしまう。
そこに今まで沈黙を守っていた永琳が口を出した。
「姫、ウドンゲの言う通り確かに美味しいですよ」
「む……まぁ、永琳が言うなら本当にそうなんでしょうね」
「師匠は信用するのに私の事は信用してくれないんですかー?」
「一度調理させてくれたら信用するわよ?」
「……信用されなくてもいいです」
「あら、残念」
「ウドンゲを一度、美味しく食べてみたいものですね」
「し、師匠!?」
「永琳がそう言うなら、頑張ってみるわ」
「ま、待ってください!師匠も食べてないで何か言って下さいよ!」
「そうね、ウドンゲの踊り食いなんて如何でしょう?」
「永琳も中々通ね」
「ありがとうございます」
「駄目だこの人達!何かが根本的に違う!?」
「ウドンゲ……もう少し静かに食べられないの?」
「いや、さっきから私は殆ど食べれてないんですが」
「私の作った料理は食べれないのね?」
「姫っ!?誰もそんな事は言ってません!」
両方から攻められ、わたわたと忙しなく動く鈴仙には最早逃げ道は無かった。
それを面白く思ったのか、さらに輝夜は攻める。
「ならイナバ、私と永琳とどっちの料理が美味しい?」
「え?いや、それは……」
輝夜の狙い通り口篭ってしまう。
「それは私も聞いてみたいですね」
挙句、永琳までその質問に興味を持ってきた。
「あ~……えっと…………あぅ~……」
両端から見詰められ、顔をきょろきょろとした後、視線に耐えられなかったのか俯いてしまった。
「どうしたのイナバ?正直に言ってみなさい?」
「そうよウドンゲ、どちらを選んでも怒ったりはしないから」
「うぅ……」
怒られはしなくても、何かされるのではと言うのを躊躇ってしまう。
「言えないという事は、私のも永琳のも美味しくないという事ね?」
「あら、そうだったの?」
「ち、違います!どっちも美味しいから悩んでるんです!!」
「そう?私にはウドンゲが別の理由で悩んでる様に見えるけど」
どんどん追い込まれる鈴仙はついに覚悟を決め、答えを出した。
「えっと、怒らないで下さいね?」
「ええ、そんな事しないわ」
「師匠の方が……その……美味しいと思います」
下を向いて小声で答える鈴仙に輝夜は舌打ちをした。
「姫、まぁ怒らないでやってください」
「嬉しそうね?自分が選ばれたから自信を持った?」
「いえ、そういう事ではありません。ウドンゲが私を選ぶのは当然の事かと」
「なっ!?それはつまり私より料理が上手いって事?」
「そうじゃありません」
「なら何だって言うのよ?」
選ばれなかった事に機嫌を悪そうにし、輝夜が永琳を睨み付ける。
鈴仙は身を縮めて困った顔で成り行きを見守っている。
「はい、私の料理はウドンゲ好みの味付けをしてるからです」
「えっ?」
それに疑問の声を出したのは輝夜ではなく、鈴仙の方だった。
「ウドンゲ……貴方気が付いてなかったの?」
「は、はい……全く」
鈴仙の様子に呆れたように溜息を吐いてしまう。
機嫌が悪かったのが嘘の様に、目を丸くした輝夜が意外そうに尋ねた。
「何でまた、そんな事を?」
「味付けの事ですか?」
「そうよ」
「そうですね……強いて言うなら愛情でしょうか」
「愛情って……」
「私には、皆が美味しいと言ってくれるよりもウドンゲが一人でも美味しいと言ってくれた方が良いのです」
「し、師匠……」
「貴方が喜んで私の料理を食べてくれるのが嬉しいのよ」
「ししょー!」
がばっ、と鈴仙が永琳の胸に飛び込み抱きしめ合う。
それを輝夜は、なんだこいつ等といった風な表情で見詰めていた。
「うぅ……師匠がそんな事を思っていてくれたなんて……」
「ウドンゲ……」
「申し訳ありません、私……師匠の愛に気が付いていませんでした」
「いいのよ、気が付いてくれなくても。貴方の笑顔が見れるなら私はそれで」
「でも、私―――」
「何も言わなくてもいいわ、貴方が傍に居てくれるだけで私は幸せだから」
「うっ……私も……私も師匠のお傍に置いて頂いてとても幸せです」
「ウドンゲ」
「師匠……」
「何このラブコメ、朝っぱらからイチャついてんじゃないわよ」
ついていけないと、輝夜は一人食事を再開した。
隣では愛を語り合う微笑ましい師弟の姿。
下には未だ目の覚ます事の無い一羽の兎。
「どうでもいいけど、早く食べないとご飯片付けるわよ?」
◇ ◇ ◇
「うー……まだズキズキする」
「あはは……大丈夫?」
頭を擦りながら歩くてゐとその隣を歩く鈴仙。
此処は屋敷にある大広間。
普段は兎達の食事や宴会などに使われているが、食事が終わったこの時間帯ともなると、しんと静まり返っていた。
何故この二人が此処に居るかというと。
「あー、やっぱり。結構痛んでるねぇ」
床の畳を手で触り、感触を確かめながらてゐが言う。
「痛んでる、と言うか暫く見ない間にぼろぼろじゃない?」
同じく畳を見ながら鈴仙が呆れた様に物を言う。
「まぁ、最近宴会も無かったし。見るのは久々だからね~」
「あれ?てゐも最近こっちでは食べてないの?」
「ん~、最近はずっとあっちの部屋だね」
「そうなんだ?でも何でまたてゐはあっちで食べてるの?」
「ん?悪い?」
「いや、そうじゃないけど。何でかなって思っただけ」
「特に理由は無いんだけどね、まぁこっちで食べるよりあっちで食べた方が楽しいし」
「ふーん、それちょっと意外かも」
「そ?」
「うん、だってこっちなら他の兎からおかず奪ったり出来るでしょ?」
「そんな事しないって」
「嘘、見た事あるもん」
「人聞きの悪い、私が嘘を言うとでも?」
「嘘吐いてる所しか見た事無いんだけど……」
詐欺師、と名乗ってるくらいのてゐに鈴仙は何度も騙されている。
信用しろと言うには少々騙され過ぎていた。
「まぁ、あんた達と食べてる方が話も合うし、楽しいのよ」
「ふーん……」
会話を交えながら痛んでいる畳や、穴の開いてしまっている畳の場所、数などをメモして調べていく。
「……どうやったら畳に穴なんて開くのよ」
「れーせんは見た事無かったっけ?」
「何を?」
「おかず争奪、大乱闘対決」
「はぁ?何それ?」
「おかずの奪い合いであっちこっちで戦いが始まるのよ」
「……壮絶そうね」
その様子を想像し、思わず呆れてしまう。
「それがプロレスだったりボクシングだったりCQCだったり……」
「ぶっ!なにその最後の物騒な争いは!?おかず一つで!?」
「そんな感じで畳みに突き刺さる兎なんて腐るほど居るよ」
「この穴、そんな理由で開いたものなの!?」
良く見ると子供一人分位の穴が確かに開いている。
「ねぇ……それで死者とか負傷者って出ないの?」
「あっはっは、そんな柔な鍛え方してないわよ」
「お前が仕込んだのかよ!?」
「CQCの極意、それはいかに相手に気が付かれずにその命を刈り取る事が出来るか」
「刈り取っちゃだめでしょ!?つーかそんな命がけで奪い合いする程皆飢えてるの!?」
「れーせん……私達は多くの犠牲の上に成り立ってるんだよ……?」
「いやいやいや、皆の分もちゃんと作ってるし!」
「兎の数、完璧に把握してる?」
「うっ……それは……」
自信なさげに口篭ってしまう。
それを見たてゐは、一瞬にやっと口を歪め。またすぐに取って代わったかの様に真面目な顔に戻り話を続けた。
「連日連夜ご飯にあり付け無い者は数知れず、はたまた共食いまでする始末」
「嘘っ!?共食いって……そんな………」
「減る分増えてる兎達、でも悲しみは増えるばかりで減りはしない」
「うっ……ごめんね……私がしっかりしてないばっかりに……」
「泣くな!泣いたって死んだ者達が帰ってくる訳じゃない!」
「うう……じゃあ私はどうしたら……」
「そんな兎達を救う手が無い訳でもない」
「えっ?」
「でも、その覚悟。あんたに有るの?」
「……有る!無くてもこのまま見過ごせないよ!」
「なら今度かられーせんのご飯を飢えた兎に分けるといいよ」
「そんな事で良いの?それなら幾らでも分けてあげる!」
「それじゃ、その兎には私から渡しておくから。それでいい?」
「勿論!」
「おっけー、交渉成立ね」
「うん、お願いね」
泣き腫らして目を赤くした鈴仙は、それでも満面の笑みでてゐの手を握り締める。
「……で、途中から気が付いたんだけど。一体どこから私からご飯を奪う為の嘘なの?」
握り締めた手はメキメキと音を立てていた。
「痛っ!痛い痛い!痛いってば!!」
「どーこーかーらーかーな~?」
「さ、最初から!嘘、全部嘘よ!だから離して!」
「ふーん……言い残す事はそれだけ?」
「痛い痛い!ちょ、砕ける!ほ、骨が!!」
ぎゃー、と喚くてゐに構う事なく容赦のないお仕置きが敢行された。
「ったく、泣いてた自分が情けないわ」
「う~……」
自分の手にふーふーと息を吹き掛け、てゐは涙目で睨んでいる。
「最初からって、詳しくはどこから嘘なの?」
「う~……飢えてるってあたりから?」
「あー……ってCQCうんぬんは本当の事なの!?」
「当たり前でしょ、生き抜く為には非情な技術も必要なのよ」
「生き抜くって……実はここの兎達って物凄く強かったりしない……?」
「さぁ、どうだろね」
はぐらかす様に言い、先程握られた手を閉じたり開いたりしている。
「まぁ……ちゃちゃと終わらせちゃおうか」
と、当初の目的を思い出し鈴仙は会話を打ち切ると、てゐとは反対側に足を進めた。
「むぅ……覚えてろ」
ぼそりと小声で呟き、てゐは復讐を誓う。
二人は二手に分かれ、部屋の状況を調べ始めた。
「っと、こんなもんかな?」
見落としが無いか、てゐは当たりをきょろきょろと確認し、メモ帳を服に仕舞い込んだ。
「てゐー、そっちは終わったー?」
遠くの方から鈴仙が呼びかける。
「大体終わったよー」
「それじゃ、これで終わりかなー?」
「そうだねー、休憩しようかー?」
「賛成ー」
鈴仙が駆け足で近づき、そこで腰を下ろした。
てゐもそれに習う様に腰を下ろす。
「にしてもてゐが真面目にやってる所見るのも不思議な気分ね」
「何よ?急に」
「いや、てゐならすぐ私に押し付けてどっか遊びに行くものだろうと思ってたからさ」
「ああ、普段ならそうするかもね」
「しないの。でも何で今はそうしないの?」
「何でって、兎達の不始末は私の責任でしょ」
「えっ?」
「これでもここの兎達のリーダーやってるんだから、それくらいは面倒見てやらないとさ」
「……」
「何その顔は」
意外そうな顔をする鈴仙に思わずムッとしてしまう。
「……ちょっとてゐの事見直したよ」
ふっ、と微笑みながらその頭を撫でてやる。
「む?何なのよ~」
「あはは、うん。てゐは偉いねー」
「年下に子供扱いされるとムカつくなー」
「精神的に子供なんだからいいじゃない」
「うるさいなー、若いって事は良い事でしょ」
「それは若いとは言わないって」
苦笑しつつも撫でる手は止めない。
てゐも満更じゃない様子で大人しくしている。
「ねぇ?」
「うん?どうしたの?」
「……もう少し、このままでも……良い?」
「……あは、しおらしいてゐってのも珍しいね?」
「む~……」
大きな広間に、ぽつんと小さな影二つ。
片方は微笑みながら。
片方は気持ち良さそうに目を閉じて。
しばらくの間、二人はそうしていた。
◇ ◇ ◇
先程とはまた別の人影。
「……はぁ」
二つの影の片方から溜息が零れた。
「溜息ばかり、如何なさいました?」
「……何でもないわ」
此処は永琳の自室。
そこに居るのは永琳と、お茶をしに来た輝夜だった。
「今朝の事ですか?」
お茶を一口してからゆっくりとした動作で永琳が尋ねる。
「関係無い、イナバに選ばれなかった事なんて気にしてないわ」
「そうですか」
つい冷たい口調を放ってしまう輝夜に、気にする風でもなく永琳はお茶を楽しんでいる。
「…………」
室内に沈黙と、時折永琳がお茶を啜る音だけが流れる。
輝夜が機嫌を悪そうにしているのは、確かに鈴仙の事では無かったが。
それでも無関係でも無い事だった。
(永琳は何であのイナバにべったりなのかしら……)
輝夜の機嫌の悪い理由はこれだった。
鈴仙が此処に住む様になってからというもの、永琳は鈴仙に構いっきりだった。
それは、一日で二人が一緒でない所を見るのを数えた方が早い位に。
―――昔はもっと私に付きっきりだったのにな……。
輝夜は、鈴仙が来る前の事を思い出しその表情を緩ませた。
(あの頃は、こうして一緒にお茶をした時は―――)
「姫」
「え?何?」
自分の世界に浸っていた所に、急に声を掛けられ慌てた様に返事を返す。
何か話し掛けられていたのだろうかと永琳に向き直る。
「聞いていなかったのですか?」
「ええ、ごめんなさい。少しぼぅっとしてた」
「そうですか……」
やや残念そうな顔を見せ、永琳は音も無く立ち上がった。
それを見た輝夜は、怒らせてしまっただろうかと不安になり、永琳を目で追う。
しかし、輝夜の思惑とは裏腹に、永琳は輝夜の隣まで来ると、そこに腰を下ろした。
「永琳?」
従者の意味不明な行動を疑問に思い、名を呼ぶ事で質問をする。
その言葉に返事をする事も無く、スッと輝夜の頭を包み込むように手を添えると、その
まま輝夜の頭を自分の膝の上に置いた。
「え、永琳?」
その行動の意図が分からず、永琳の膝の上で見上げる様にし、更に疑問の声をあげる。
ふっ、と微笑むと、そこで初めて永琳が問いかけに答えを出す。
「姫、少しお休みになられては如何ですか?」
「え?」
「朝早くから起きてた様ですから……」
確かに少し眠い気もするが、それでも今すぐ寝たいと言う訳でもない。
だが、輝夜は膝の上から起き上がろうとはしなかった。
「だとしても、今更膝枕なんていいわよ。布団で寝るわ」
意図を掴めず拒否の声を出すが、永琳の手が目の上に置かれているので動けなかった。
「姫……稀には私に甘えてはくれませんか?」
「えっ?」
思わぬ言葉に、驚きと疑問が綯い交ぜになった声を漏らす。
「ウドンゲが此処に来てからというもの、姫はお変わりになられました」
「…………」
それはどういう事だろうと思ったが、目を塞がれている為、永琳の表情を伺う事は出来ない。
「私が変わった?」
それならばと直接、問いただしてみる事にした。
「はい」
「私がどう変わったと言うの?」
「そうですね……少なくともこの時間、昔なら何時もこうして居た筈です」
「…………」
「ですが今は、私の膝を求めなくなってしまいました」
「それは……」
輝夜はここで初めて思い出した。
昔はこうして居た筈なのに、今は遠慮している理由を……。
でも、それは口にする訳にはいかない。
そう決め、それとは別の言葉を返した。
「恥ずかしいからよ……」
言えない理由なのか、それともそれが別の言葉なのかは分からないが。
消え入りそうな声でそう答えた。
「……そうですか」
「だからもういいわ、寝るなら部屋に戻るから」
「いえ、このままお休みになって頂きます」
「はぁ?」
主である自分の言葉に耳を貸そうともしない従者に呆れた声を零してしまう。
「どうして私がここで寝なくちゃならないのよ」
つい、冷たい口調で言い放ってしまい、それに少しの後悔を覚えた。
それでも気にする風も無く、いつも通りの淡々とした声が頭の上から聞える。
「はい、私がこうしたいからです」
言われて妙な納得と安心感を覚えてしまった輝夜は口を閉ざしてしまった。
「それでも嫌ですか?」
「―――嫌じゃない……」
顔は見えなくても、その表情がふっと和らいだ事を感じ取れた輝夜は、急に眠くなって来た事を自覚した。
どうやら慣れない早起きは、結構負担になっていたらしい。
肉体と精神の両方が緊張を解き、すぐにでも夢の中に落ちていく事が出来そうだった。
「姫」
頭の上から声がする。
「……なに?」
まどろむ意識の中で、この声に答えねばと短い返事を返す。
「お休みなさいませ」
「ん……おやす……」
スースーと小さな寝息をたて、輝夜は眠りに落ちた。
今まで乗せていた手をどけ、そのあどけない表情を見る。
その顔は、久しぶりに見た主の幸せそうな寝顔だった。
黒く肌理細やかな長い髪を愛しそうにその手で梳いていく。
何度か続けていると、輝夜がふにゃ、と笑みを浮かべた。
くすぐったかったのだろうかとも思ったが、その手は止める事はしなかった。
「師匠、お昼の準備が―――」
その時、弟子が昼食を知らせに来たが、その語尾は輝夜を見た事で止められてしまう。
「……出来ましたけど、どうします?」
気を利かせて小声で話し掛けてくる鈴仙に苦笑しながら永琳は答えた。
「呼びに来てくれたのに悪いんだけど……今は動けそうにないわ」
輝夜の寝顔を見ながら、困った様な嬉しい様な表情を浮かべる。
「あはは……今、お休みになった所ですか?」
「ええ、今しがた……ね」
「そうですか」
ふふ、と微笑ましい物を見る様に顔を緩ませる。
「で、どうしますか?」
それでも当初の目的は果たそうと、鈴仙は尋ねてくる。
「そうね……どうしようかしら?」
「それなら食事はこちらに運びましょうか?」
「ああ……それはいいわね、お願いするわ」
動けないのならば此処で食べればいい。
鈴仙の提案に快く承諾し、持って来てくれるよう促す。
「それじゃ、すぐに持ってきますけど……」
と言ってから輝夜の方を見て。
「勿論、姫の分も……ですよね?」
「ええ、その通りよ」
お互い顔を見合わせ、同時に小さく笑い声を零してしまう。
「あ、そうだ」
鈴仙は何かを思い出したかの様に永琳に近づく。
「なにかしら?」
「あの、姫が起きたらこう伝えてもらえないでしょうか?」
永琳の耳にぽそぽそと小さく伝言を頼む。
その言葉にどこか嬉しそうな顔をした永琳は。
「分かったわ、ちゃんと伝えて置くわね」
「はい、お願いします」
どこか気恥ずかしそうな鈴仙は、そのままくるっと後ろを向いて、静かに部屋を後にした。
先程の鈴仙の言葉を何度も頭の中で復唱し、忘れない様にしておく。
きっとこれを伝えたら、姫も喜ぶだろうと思いながら。
◇ ◇ ◇
「あれ?おっかしいなぁ~」
うーん、と顎に手をあてて考え込むてゐ。
昼食が終わった後、てゐは裏庭に足を運んでいた。
「どこいったのかな~……?」
その様子はそこで何かを探している様だった。
「あれ、てゐ?どうしたのこんな所で?」
その後ろから声が掛かった。
「あ、れーせん。ここら辺で兎見なかった?」
「ん?兎?」
「そ、この位の」
と、両手で楕円を作り、探し物の大きさを教えて聞いてみる。
「この位って……それって本当の兎?」
「兎に嘘も本当も無いでしょ」
「いや、そうじゃなくて。妖怪兎じゃない普通の兎でしょ?」
「そうよ、いつもならこの辺に居るんだけどなぁ……」
てゐの探してる物は兎の様だ。
「いつもって、どうしたのそれ?」
「ああ、つい最近見つけた奴でね。取り合えず餌を上げてるんだけど……」
「それが見当たらないと?」
「そそ」
ふーんと声を出しながら、普通の兎まで面倒を見ているてゐに関心した様子の鈴仙。
「この近くに居るの?」
「多分、ここに住み着いてるみたいだから」
「それじゃ、探すの手伝うよ」
「お、そりゃ助かる」
興味を持った鈴仙が手助けを申し出た。
「どんな毛色してるの?」
「真っ白で目が赤い……まぁ、ごく普通の兎だね」
「分かった、じゃああっちの方探してみるから」
「うん、宜しくね」
そこでてゐから離れ、兎を探す事にした。
裏庭、といっても中々広い上に少し奥にでも行くと竹林の中に入ってしまう。
どこからどこまでが裏庭とも断定出来ない為、小さな物音も聞き漏らさない様に耳を立てながら鈴仙は奥へと
進んで行く。
「―――?」
かすかに草木が分けられる音を聞き、そちらの方に足を向けてみた。
そこには真っ赤な目をした小さな兎が一羽、こちらをじっと見つめていた。
(……見つけたは良いけど、どうしよう?)
このまま近づけば逃げてしまうのではないか、そう思いその場に立ち尽くしてしまう。
てゐに知らせるとしても大声を出せば驚いて逃げてしまうかもしれない。
でも餌を与えてるとの事だから、人には慣れているのかもしれない。
そう思った鈴仙は兎に呼び掛けてみる事にした。
そっと膝を付き、手を差し出し、怖がらないように優しく声を掛けてみる。
「おいで」
その言葉にぴくん、と兎は耳を尖らせ、鈴仙に向かって駆け出した。
「わっ……と」
飛び込んできた兎をその胸に抱きしめ、抱えるように手で支える。
「良い子だね」
兎は鈴仙の胸に顔をこすり付ける様にして、それが甘えてる様にも見える。
てゐの言っていた通りの真っ白で綺麗な毛並みは、ふわふわとしていて手で撫でるとその感触も良かった。
撫でられている兎は目を細め、手に頭を擦り付けて来る。
「あはっ、かわいい~」
つい正直な感想を口にしてしまう。
「う~ん、てゐも兎だった時はこんな風に可愛かったのかなぁ?」
自分の相方とも呼べる人物を思い浮かべ、あまりのギャップに思わす苦笑してしまう。
あいつはきっと兎の時も可愛くなかったに違いないと。
気が付くと腕の中で兎がこちらを見上げていた。
その赤く澄んだ目は、自分のそれに似ているかもしれない。
そんな事を考えながら鈴仙は、先程てゐと合った場所へと戻っていった。
そこには先にてゐが待っていた。
その様子は心配していたかの様で、鈴仙を見つけるとぱっと明るい表情を見せた。
「見つかった!?」
「うん、この子でしょ?」
「そいつそいつ、全く~心配かけてー」
今朝の事といい、てゐは兎達には優しいのかもしれない。
鈴仙はそう思わずにはいられなかった。
自分も兎なのにと少し思いながら。
「ありがと、れーせん」
「えっ?」
兎と戯れていたてゐが急にそう言い出した。
「何よ」
「てゐが私にお礼言うなんて……初めてじゃない?」
「えー?そうだったっけ?」
「言われた記憶無いけど、まぁどういたしまして」
永琳とはまた違った意味で親しいこの友人を見直しながら、鈴仙も兎の頭を撫でる。
「この子も妖怪になるのかな?」
撫でながらふと疑問に思った事を口にした。
「さぁ?長生きすれば妖怪にもなれるんじゃない?」
そういう事らしい。
「そっかぁ……じゃあ分からないんだね」
「そりゃね」
この兎とここで一緒に暮らせる様になれればいいなと思いながら、声を掛ける。
「もし妖怪になれたら、一緒に遊ぼうね?」
その言葉を理解しているかの様に兎は、鈴仙の胸に飛び込んで来た。
「気に入られたみたいだね」
「あはは、やっぱ可愛いなぁ」
ふわふわとした感触を確かめながら、またここに顔を出してみようと思った。
小さな白兎は、何時かきっと妖怪になるだろう。
だってここは幻想郷だから。
◇ ◇ ◇
赤い夕日が地平線に沈もうとしている。
赤に照らされた竹林は、涼しそうな音を立てながらゆらゆら揺れている。
「ん……ぅん?」
その声と共に薄っすらと開いた目には、ぼやけた景色と優しく自分を見つめる女性が目に入った。
「おはようございます」
凛とした声は心地よく頭の中に入り、寝ぼけた頭を覚醒させてくれるかの様だ。
「ん……おはよう」
むくりと起き上がりった輝夜は外が赤いのを見て、結構長い間寝ていた事に気が付いた。
振り返ってみると、寝る前とほとんど変わらずにそこに座っている従者の姿。
「ずっとそうしていたの?」
「動くに動けませんでしたから」
優しげな笑みと共にそんな言葉が返ってくる。
「もうすぐ夕飯になると思いますが、これ……どうしますか?」
永琳がこれと目線を向けたものは、昼に鈴仙が持って来た食事の事だ。
「わざわざ持って来させたの?」
「ウドンゲの提案です」
「……そう」
良く見るとそこには空になったお椀と、まだ中が入っているであろうお椀が置かれていた。
わざわざ気を使う事もなかったのにと思ったが、その心遣いが嬉しくも思う。
空になっている、という事は永琳はもう済ませたのだろう。
「……頂くわ」
無理に食べる必要も無いが、無下にするのも気が引けた。
「中々美味しく出来ていますよ」
口にして納得する。
少し冷えていたが、確かに味は良かった。
それにこの味は……。
「イナバのね?」
「はい」
鈴仙が作った物だった。
今朝のやりとりを思い出して改めて思う。
それは確かに自分に勝るとも劣らない味の良さだった。
「如何ですか?」
聞かなくても答えは分かっているだろうに、わざわざ永琳が聞いて来る。
それに正直に答えるのも癪に思った輝夜は、そうねと言って。
「まぁまぁね」
と短く答えた。
隣ではくすくすと笑っている永琳。
きっと今の心境を手に取るように分かっているのだろう。
「ご馳走様でした」
箸を置き、行儀良くお辞儀した輝夜の顔は随分に満足そうだった。
「ふぅ……私は部屋に戻ってるわ。夕食が出来たら呼びに来て頂戴」
食べ終えた輝夜は静かに立ち上がった。
「畏まりました、夕飯までには今食べた物は消化させておいて下さいね」
無茶な申し出をして来る永琳には構わずそのまま部屋を出ようとした。
「そうそう」
背中から聞えた声に足を止めてしまう。
「ウドンゲから伝言です」
振り返らずに耳を傾ける。
だが次の言葉は幾ら待っても聞えて来なかった。
「何かしら?」
仕方が無く、顔半分だけを永琳に向け聞き返す。
それに満足がいったのか、やや微笑むとこう続けた。
『今度一緒にお料理をして頂けませんか?』
―――あぁ、何だそんな事か。
聞き終えた輝夜は顔を前に戻し。
「それじゃ、私からも伝言を頼めるかしら?」
「ええ、勿論です」
そして輝夜は部屋へと戻っていった。
◇ ◇ ◇
「うわっ!?」
驚きの声と共に試験管から煙が吹き出る。
夕食前に暇を持て余した鈴仙は、永琳の研究室で薬品の実験をしていた。
「……あちゃー、失敗かぁ」
しまったと額に手のひらをあて座っていた椅子にもたれ掛かる。
普段は着ない白衣を身に纏い、それらしい格好は中々様になっていた。
「うーん……何がいけなのかなぁ?」
頭を捻って考え込む、試験管からは未だ煙が出ている。
周囲に微かな異臭が立ち込め、それに気が付いた鈴仙は慌てて窓を開けに走った。
「げほっげほっ……は~……」
煙を少し吸ってしまったらしく、苦しそうに咳き込んでから外の新鮮な空気を肺に取り入れる。
そのままぼんやりと外を眺めていると、背後から声が掛かった。
「何か見えた?」
振り返ってみると永琳が部屋の中に入って来る所だった。
「いえ、ちょっと実験に失敗して……換気してた所です」
「そうみたいね、でも元をどうにかしないと変わらないわよ?」
「あっ」
もこもこと僅かな煙を出す試験管を見て、今更気が付いた様に顔を顰めた。
「ふぅ、やっぱり貴方はどこか抜けてる所があるわね」
「あはは……」
やれやれといった表情の永琳に思わず苦笑してしまう。
「一体何を作っていたの?」
「いえ、対した物ではないんですが―――」
しばらく永琳に物を教わりながら、色々な薬品を手に取りそれを混ぜていく。
外はすっかり日が暮れて、開けっ放しの窓からはやや冷たい風が入ってくる。
「うーん……やっぱりまだ早かったかなぁ?」
温度の下がった室内で鈴仙が独り言の様に言葉を漏らす。
「そういえば、貴方が白衣を着るなんて珍しいわね?」
「あぁ、はい。今日はいつものブレザーを着ていないので。ワイシャツに薬品がついて染みになると困りますから」
「なるほど。それにしても……」
「……?」
じっと見つめてくる永琳を不思議に思い、自分の姿を確認する。
ワイシャツにスカート、その上から羽織った白衣は今はボタンをはずしていて、ただ袖を通しているだけだった。
ごく普通の自分の姿を見て、それでもまだ見つめてくる永琳に小首を傾げた。
「何か変ですか?」
「…………」
返事は返って来ない。
ますます不審に思い、永琳の顔を覗き込む。
「師匠?」
「……いいわね」
「へ?」
何が?と聞く暇も無く、急に永琳が動き出す。
「幼い顔立ちと知性を現すその白衣、堪らないわ」
「なっ?ちょ!?」
運悪く接近していた事がここでの過ち。
いきなり永琳に抱きとめられ驚きの声を上げる。
「し、師匠!?どうしたんですか!?」
「大人しくしなさい、悪い様にはしないから」
「何を言ってるんですか!急にどうしたんですか!?」
逃れようにもがっちりと抱えられ離れるに離れられない。
「し、師匠!離してください!」
「大丈夫よ、安心しなさい」
「何がですか!?」
息の掛かる程の距離で、真面目な顔の永琳に思わず見惚れてしまいそうになる。
今の状況じゃ無かったらの話だが。
「痛くしないから」
その言葉に血の気が引いた。
「ちょ、待ってください!」
「待たないわ、ウドンゲ料理なら待ってるけど」
今朝も同じ様なやり取りをした様なデジャブを覚え、身の危険を感じた。
「訳分からないですよ!踊り食いですか!?」
「そうね、貴方が望むならそれでも構わないわ」
「望みません!望みませんから離してください!!」
「それは無理よ」
目を細め、引き締まった顔でこう告げる。
「ウドンゲは今が時期なのよ」
私は旬か何かか。
一瞬そう思ったが、今の現状から脱しない事には日の目が見れなくなりそうだった。
「師匠!いつもの師匠に戻ってください!」
「あら、戻ってもいいの?」
「むしろそうしてください!」
「そう……」
と言って硬く締められた両の腕が……。
「なら、遠慮無く」
さらに締められた。
「痛っ!し、師匠!?」
「なにかしら?」
「師匠のいつもはそれなんですか!?」
「知らなかったの?貴方の前では自分を偽っているのよ」
明らかに出まかせだった。
「んな訳無いじゃないですか!とにかく離してください!」
「……何が不満なの?」
「いや、不満だらけですよ!そもそも何でこんな事になるんですか!?」
「あぁ……それはね」
そっと目を伏せ、何か重大な事を告白するかの様に一呼吸溜めて。
「面白いからよ」
「っこの、腐れ薬師!!」
重大でも何でも無かった。
永琳はやれやれと溜息を一つ吐いて腕の力を緩める。
「仕方が無い娘ね」
「何がですか!仕方が無いのは師匠の方じゃないですか!?」
「この距離でそんな大声出さないの、耳が痛いわ」
「なら離れてくださいよ!」
不満げな顔を見せながら、それでも渋々と鈴仙から離れる。
「でも、ウドンゲ……一つだけ言わせて頂戴」
「……何ですか?」
懐から何かを取り出し、それを鈴仙に見せようとする。
これ以上何を言われるのだろうと警戒しながらその様子を見守る。
「白衣に眼鏡は付き物よ?」
「知るかっ!!」
べしっ、と突き出された物を叩き落し肩で大きく息をする。
突っ込みと怒声の連発で息が切れていた。
叩き落された眼鏡ケースを見つめながら悲しそうな顔をして永琳が呟く。
「この眼鏡じゃ貴方の耳には掛けられないわね……」
沈痛な面持ちとは裏腹、その口から出たのは割とどうでも良い事だった。
騒ぎもひと段落つき、そろそろ夕食の時間かもしれない。
鈴仙は少し寒さに震えながら、開けっ放しだった窓を閉め、永琳と向きあった。
「師匠」
「ん?なにかしら?」
「夕飯の後はどうするんですか?」
「そうねぇ……」
ん~、と頬に手を当て考え込む。
「配達用の薬の在庫は?」
「あぁ、それなら十分揃っていますよ」
「そう」
そしてまたしばし考え込む。
「まぁ、いつも通り薬学の講義ってあたりかしらね」
「はい、分かりました」
そこまで話終えた時、丁度部屋のドアが軽く叩かれる音がした。
少し開かれたドアから申し訳程度に顔を覗かせ、兎の少女が中を伺っている。
「あの~、夕食の時間ですよ~?」
どうやらこの少女は夕飯を知らせに来てくれた様だ。
「師匠、行きましょうか」
「ええ、そうね」
その言葉に二人は揃って部屋を後にした。
誰も居なくなった室内からは一切の音は無く。
部屋の片隅から僅かな異臭と未だ煙が立ち上っていた。
◇ ◇ ◇
夕食が終わり、もうすぐ一日が終わりを迎え様としている。
空には鋭利に尖った三日月が。
地にはそれを映し出す溜め池が。
それを何をするでもなく、ぼんやりと眺めていたその人は一言呟いた。
「……暇ね」
ぽつりと言ってまた静寂が訪れる。
縁側に座り込み、ゆらゆらと風で揺れる池を見ながら横に置いてあるお茶を啜る。
体に当たる夜の冷えた風と、体の中から温まるお茶の熱さが心地よい。
「暇ね……」
先程と同じ事をもう一度繰り返す。
黒い艶やかな髪を風に靡かせ、擽ったそうに目を細める。
縁側に座ってお茶を楽しんでいる声の主は輝夜だった。
夕食が終わったこの時間、永琳と鈴仙は研究室に籠もり何かをやっている。
てゐと兎達は遊んでいるか寝ているかだろう。
輝夜もそれと同じなのだが、昼間あれだけ寝ていた事もあってまだ寝るには目が冴え過ぎている。
暇つぶしに何か書き物でもしようかとも思ったが、中々気が進まない。
どうしたもんかと考え、手にした湯飲みに視線を落とす。
そこにはうっすらと、何も考えていない様な顔が映し出されていた。
「失礼ね」
自分の思考に突っ込みつつ、お茶を口にする。
「遊びに行こうかしら」
どこぞの鳳凰ならこんな夜更けに尋ねても、きっと迎え入れてくれるだろう。
「まぁ、今日は殺し合いする気分でも無いけど」
それ無しにアイツをからかってやるのも、それはそれで楽しいだろうと思いながら最後の一口を飲み干した。
「さて、誰か居ないかしら」
辺りをきょろきょろと見て誰かを探す。
自分が急に居なくなったら大騒ぎになってしまうだろうから、一応は誰かに言って置かないといけない。
「言わなくても永琳あたりならすぐ分かりそうなもんだけど……」
別にこのままでもいいかな、と目的の竹林に飛び立とうとした時。
「あれ?姫、どっか行くの?」
横から声が掛かった。
そちらに視線をやると、そこにはピンク色のワンピースを着た兎がこちらを見つめていた。
「丁度いいわイナバ」
「丁度良いの?」
声を掛けられたてゐは何々?と小走りで輝夜に近づく。
「これから少し出かけてくるわ、いつ帰るかは知らないけど」
「あ~、いつもの?」
「ええ」
「成る程、姫も飽きないねぇ」
やれやれといった感じにてゐが呟く。
「残念ながら、今日は弾幕は無しの予定よ」
それを見て細く笑みを浮かべ答える。
「あれ、そうなの?」
意外な言葉に思わず輝夜を見てしまう。
「そんな気分じゃないし、本当に只の暇つぶしね」
「ふーん」
「まぁ、積もる話もある事だし……ね」
千を超える付き合いは、それこそ山の様に積もっている。
「んじゃ、朝食は用意しなくてもいいの?」
「そうね、出来たらあっちでご馳走になってくるわ」
「火の鳥でも食わされそうだね」
「鳥の丸焼きなんて豪勢でいいじゃない」
あはは、と二人して笑い合う。
今頃噂の主はくしゃみでもしているかもしれない。
「それじゃ、行って来るわ」
「ん、行ってらっしゃ~い」
今度こそ遠くの竹林に向け地を蹴った。
飛び立った輝夜を、何を言う事も無くしばらく眺めていたてゐは、そのままふっと笑って踵を返した。
◇ ◇ ◇
「―――遅いわね」
腕を組み、たんたんと片足でリズム良く地面を叩きながら廊下の奥を見つめる。
その様子は誰かを待っているかの様だ。
夜も更け、もうすぐ皆が床に就くこの時間。
薄暗い廊下で待ちぼうけを食らっている永琳が小さく呟く。
研究室で講義を終えた後、これから一緒にお風呂に行こうと言う事になったのだが。
用意してくると自室へと戻った鈴仙は中々戻っては来なかった。
かれこれ数十分もここで立たされてるというのに、その表情は何時もと変わらず、怒っている様子はまるで無い。
暫くそうして待っていると、向こうの方から全速力で走ってくる人影が目に付いた。
言うまでも無く、鈴仙である。
鈴仙は、永琳の傍で急ブレーキを掛け、膝に手を付き息も絶え絶えといった様子だ。
「遅いわよ、一体何をしていたの?」
「はぁ……はぁ……も、申し訳ございません」
息を切らしながら謝罪の言葉を口にする。
「それは別に構わないけど、乙女は仕度に時間が掛かると言っても少し掛かり過ぎよ?」
「仕度自体はすぐに済んだのですが……」
「他に何かあったの?」
ようやく息を整えた鈴仙は、今度は気まずそうに答えた。
「此処に来る途中に畳を……あ、大広間の修理に使うヤツ何ですけど。それを運んでる子を見掛けて……」
「思わず手伝ったと?」
「はい……」
思わず溜息が出てしまう。
鈴仙は重そうに畳を運ぶ兎を見て手伝わずにはいられなかったのだろう。
「申し訳ありません」
何も言わない永琳が怒っているものだとでも思ったのか、もう一度謝罪した。
「さっきも言ったでしょ、別に構わないって」
「それはそうなんですが……」
手助け、という良い事をした筈の鈴仙が落ち込んでいるのを見るに見かねて永琳がそっとその頭に手を置いた。
「そんな顔しないの、悪い事をした訳じゃないでしょう?」
「でも、師匠を待たせてしまいました」
「それはそれ、これはこれ。別に貴方を待つくらい、苦でも何でもないわ」
「師匠……」
「ほら、行くわよ?」
ぱっ、と手を除けてそのまますたすたと歩いて行ってしまう。
「あ、待ってください師匠」
それを追いかける様に小走りで駆けて行く。
「はぁ~……良い湯ですねぇ~」
湯に浸かりながらうっとりとそんな事を零す。
「その緩みきった顔、何とかならないのかしら?」
「そんな事言ったって~……気持ち良いじゃないですか~」
「まぁ、貴方の顔は年中緩みきっているのだけれどね」
「うわっ、酷い!」
事実でしょ?と澄ました顔で言ってくる永琳に、う~と悔しそうに睨みを利かせる鈴仙。
大きな浴場に師弟の会話に華が咲く。
「貴方の真面目な顔、一度は見てみたいものね」
「いや、講義の時とか真面目に聞いてるじゃないですか」
「あら、あれで真面目な顔だったの?それは悪い事言ったわね」
「更に酷い!」
くすくすと弟子を弄る事を楽しみながら、今日一日の体の疲れを癒す。
「そう言えば師匠?」
「ん?」
「この間師匠の部屋に入った時に見かけたんですが……」
「勝手に人の部屋に入るのは感心しないわね」
「師匠を探していたんですよ」
「そう、それで?」
勝手に部屋に入られたのを気にする事もなく先を促す。
「師匠の部屋に私の着替え一式が置いてあったのですが、あれどうする気だったんですか?」
「えっ……?」
いつもは見せない本当に驚いた表情で。
それを見て、鈴仙が更に目を細める。
「いいですね、師匠のその表情。何を言ってくれるのかワクワクしますね」
にやにやと師をあざ笑いながら返答を待つ。
「答える前に聞いておくわ……あれ、どうしたの?」
恐る恐る鈴仙の方を見て、あれの無事を確かめようとする。
「あぁ、勿論没収しておきました」
「なっ!」
いつもは見せない意地悪な表情の鈴仙に、永琳は視界が真っ白になった様な気がした。
「……あぁ、何て事を」
首をがっくりを下げ今にも泣きそうな表情を見せる永琳は小刻みに震えていた。
「本当に一体何に使おうとしていたんですか……」
「ウドンゲ……」
「……はい?」
地の底から沸いて来る様な響きに思わず身を縮めながら永琳の様子を伺う。
「貴方は……やってはいけない事をやってしまった」
「え……?私の服の事ですか……?」
「そう、あれは最後の安全装置」
「はい?」
自分の服にそんな大層な装置が付いていただろうか。
疑問に思うがそんな事は有り得る筈もなかった。
「あれが無くなると私は……」
「私は……?」
ゴゴゴゴゴと、まるでそんな音が聞えて来そうな雰囲気を漂わせながら永琳がゆっくりと顔を上げる。
「ウドンゲっ!!」
「なっ!うわっ!?」
呼び声と共に永琳が鈴仙に襲い掛かった。
「ま、またですか!?またなんですか師匠!?」
「貴方が悪いのよ!」
「意味が分かりません!ってどこ触ってるんですか!?」
「あぁ……お風呂は心地良いわね」
「ちょ、お風呂関係ないじゃないですか!?やっ、だからどこ触ってるんですか!?」
「何?教えて欲しいの?」
「いいです!言わなくても良いですから手をどけてください!」
「もう、折角良い所なのに」
「良くないです!何でいつもこうなるんですか!?」
「毎度同じ台詞を言うのも飽きてきたわ」
「面白いから、ですか!」
「分かってるじゃない」
やれやれと鈴仙から離れ大人しくなる。
「うぅ~……」
「私の弱みを握ろうだなんて二、三ヶ月早いわよ」
「いや、もうすぐじゃないですか!?」
師弟の立場が逆転する事は有り得ないだろう。
この師弟に限っては特に。
「あれは私の洗濯物と混ざって一緒に部屋に置かれていたのよ」
「えっ?そうなんですか?」
「ええ、何だと思ってたの?」
「いや、てっきり私は師匠が持って行ったものだと……」
「そんな事、私がする筈無いでしょう?」
「しそうだからそう思ったんですよ」
「心外ね」
「そうでもないと思いますが……」
「私ならそんな回りくどい事はしないで、直接貴方を奪いに行くわ」
「来ないでください、本当に勘弁してください……」
「あら、残念」
全然残念では無さそうな顔をして、鈴仙を見てくすりと笑う。
「多分誰か……まぁてゐの仕業でしょうけど。もしくは只間違っただけでしょうね」
「はぁ……そうだったんですか」
「ところでウドンゲ?」
「はい、何ですか?」
「師を疑ったこの罰はどうして貰いたいの?」
「えっ!?」
「まさかこのままお咎め無しだとでも思った?」
「うぇ~……そんなぁ~」
「ふふ、冗談よ」
「あぅ……」
疲れた癒しに来た永琳と。
疲れを増しに来た鈴仙。
そんな二人を、空から丸く欠けた月が静かに見守っていた。
「―――そうそう」
「まだ何かあるんですか……?」
ぽん、と手を叩いて何か思い出した様子の永琳に、疲れ切った様子で答える。
「姫から伝言よ」
「あ、伝えてくれたんですか」
「ええ、それで姫からも伝言を預かっているわ」
「はい」
「主を働かせ様とするイナバはお仕置きが必要ね、だそうよ」
「……そうですか、分かりました」
残念そうに俯いて、それでもやや曇った顔で笑顔を作りながら顔を上げる。
恐らく、半分予想していた通りの答えだったのだろう。
それでも期待も捨て切れなかった為に、そのショックは大きかったのかもしれない。
「後、こうも言っていたわ」
「えっ?」
そんな様子の鈴仙に優しく微笑み掛けるとこう続けた。
『今度の当番の日を教えなさい、扱き使ってやるから覚悟していた方が良いわよ』
「あ……」
「良かったわね」
「はいっ!」
長湯で赤くなった顔の二人は、それでもお互い微笑んだ。
片方の目には涙の様に光るものが見えるのは気のせいだろうか。
赤くなっているのもお湯の所為だけでは無いかもしれない。
空を見上げると、綺麗な月もどこか微笑んでいるような気がした。
◇ ◇ ◇
月が竹林を淡く照らす。
太陽の光とは違い、薄く優しく。
屋敷にも部屋の明かりはまばらに消え、その一日に終わりを告げていた。
ある者はまだ騒がしく、ある者は明日に備え静かに床へ。
そしてまたある者は、一日が終わるのを惜しむかの様に酌をする。
あれだけ騒がしかったのが嘘のように静まり返った大きな屋敷。
そこに住まう者を雨風から守り、そして安らかな眠りを守る。
ひょっこりと小さな白兎が、草むらから顔を出した。
耳をぴくぴく震わせると、空を見上げる。
見上げた空は広く、どこまでも闇が続いてるかの様だった。
視線を落とすと大きな屋敷が目に入る。
暗い裏庭の中でもその赤い瞳は鮮やかで。
じっと大きな屋敷を見詰めている。
しばらくそうして見続けた後、ぴょこっと一跳ねすると。
その兎も自分の寝床へと帰っていった。
大きな屋敷は優しく住人達を包み込む。
何気ない一日一日をしっかりと守る様に。
幾千と続くその大切な思い出も一緒に守るかの様に。
ここは永遠の民と数多くの兎達の住まう屋敷。
そこに親しみと感謝の気持ちを込めてそう呼ばれる。
―――そう、此処は永遠亭。
「時間帯」の間違いかと、とても残念
ただ、それだけに誤字が気になってしまいました。僭越ながら気付いた点を指摘させていただきます。
>そこに輝夜は止めを刺そうと包丁片手に滲み寄る。
「滲み寄る」……造語でしょうか?
「にじり寄る」でも意味としては状況的に不適当ですが。
>ぎゃー、と喚くてゐに構う事なく容赦のないお仕置きが慣行された。
慣行 → 敢行 では?
「慣行」……古くからある例に倣って行われる事。
「敢行」……(無理な状況などを)おしきって行うこと。
>「当たり前でしょ、生き抜く為には非情は技術も必要なのよ」
非情は → 非情な
>ぼやけた景気と優しく自分を見つめる女性が目に入った。
景気 → 景色
>ひょっこりと小さな白兎が、草わらから顔を出した。
草わら → 草むら(草叢 or 叢)
というか笑いました。
かなりの確認不足&無知な自分ですね。
まだ誤字、脱字あるかもしれませんが指摘された所は直してみました。
確認できない部分はまだあると思いますが。
指摘、批評お待ちしております
んで、僭越ながら指摘を・・・
「火の鳥を食わせらせそうだね」
→食らわせられそう、ではないかと。
間違っていたら平にご容赦を。
まぁ、つまりは激しく同意って事なのですが。
あと、少し気になった点を僭越ながら指摘させていただきます。自分が間違っている可能性がありますが。その時はご了承ください。ウドンゲいじめて結構ですから。
>自分の手に、ふーふーと息を吹き掛け。てゐは涙目で睨んでいる。
>輝夜は、鈴仙が来る前の事を思い出し。その表情を緩ませた。
>スッと輝夜の頭を包み込むように手を添えると。
そのまま、輝夜の頭を自分の膝の上に置いた。
何か句点の位置がおかしいような気がします。読点にするか、文を終わらせたほうが良いと思います。ここら辺は自信ありませんが…
>そのままふっと笑ってきびきを返した。
きびきではなく踵(きびす)ですね。
>夜も更け、もうすぐ皆が床に付くこの時間。
「付く」ではなく「就く」です。
>鈴仙は、永琳の傍で急ブレーキを欠け、
「欠け」→「掛け」です。
>それを追いかける様に小走りで掛けて行く。
ちょいと自信ありませんが、たぶん小走りで「駆けて」だと思います
>「勝手に人の部屋に入るのは関心しないわね」
「関心」→「感心」ですね。
とまあ、こんなとこです。ttp://www.geocities.jp/tomomi965/index2.html
慣用句に関しては、こちらのサイトを見ると良いかと思います。
では長文失礼しました。
何か此処まで来ると恥ずかしい通り越して呆れますね…。
句点と読点間違ってるわ字を勝手に作ってるわ…。
この場を汚してる様で…申し訳ないです。
次回も期待してます。
料理出来る輝夜はさほど違和感無いと思います私は、ええw
誤字は推敲で無くせるよ! 作品の精度もあがるから是非に!
次にも期待しちゃいますし!
殺意が湧いた、代わってくれ。