最初に
この作品は創想話作品集29『ふたりのお茶会』と関連しています。どちらから読んでも、もしくは読まなくても問題はありませんが、両方読むとちょっとした違和感がとれるかもしれません。
「はぁ」
一日の終わり…おっきなベッドに身を預け、私は呟いた。いや、ため息をついたと言った方が正確かしら?何であんなトンデモナイのと友達になってしまったのだろう…という何十回めかの後悔。
私はいつもいつも我が侭だのなんだの言われているけど、絶対あのふたりにはかなわないと思う。
我が侭で天然、これほど恐ろしいふたりがコンビを組めば一体どうなるか…そんなことは分かり切っていたはずなのに、その連中と友達でいて、あげく我が家に住まわせている私は、自分で言うのもなんだけど案外お人好しなのかもしれないわね。
私はらしくない思考をぶんぶんと頭をふってかき消すと、カーテンをしめて布団にもぐり込んだ。
そして、夢の世界へと向かうまでの短い時間、ふかふかとした布団の中で、この出来事のきっかけを思い出していた。
~数日前~
「ねぇレミィ、ちょっといいかしら?」
暇つぶしに廊下を歩いていた私に声をかけてきたのは、私の唯一といってもいい対等の友達、パチェ…パチュリーだった。
彼女が持ち込むのはいつも何か困った事件の原因となる。私のいやな予感センサーが作動し、ただちに適切な回答を選択した。
「よくないわ」
私の拒絶の返事、しかし我が友人は全く表情を変えずに続ける。
「あのね、うちの小悪魔が明後日ここに来て10周年なのよ、それで何かお祝いをしたいと思うのだけど大広間とメイドを借りるわね」
他人の言葉を聞くという神経はこいつにはないのかしら?私の言葉をあっさりすっぱり無視した彼女は、一方的な要求を突きつけてきた。
パチェ、ひとまず他人に物と者を借りる時にはもうちょっと下手に出るものよ?でもこいつにこんなことを言っても、なんだかんだと理屈をつけて誤魔化すということは経験上分かっている。これだから知識人はもう…
私はため息を二つばかりつくと、あきらめて言った。これが東洋に伝わる『諦観』というものだろうか?なんか違う?
「仕方ないわね。まぁいいわ、どうせ暇だし」
「ありがとうレミィ。じゃあ計画はこっちでやるから、あなたは別に寝てていいわ」
そう言うとすたすたと歩き去る引きこもり、あのね…ちょっとくらい感謝してくれてもいいんじゃない?っていうかいくらなんでも『別に寝ててもいいわ』なんて…何考えているのかしら?
知識人の思考はわからない、私は小さくなる友人の後ろ姿を眺めながら呆れていたのだった。
~二日後~
ベッドから身を起こした私は目をこすって身支度を整える。
今日は側に咲夜がいない、若干性格に問題はあるものの、大体のことにおいて完全で瀟洒な彼女は、私の数少ない理解者でありパートナーでもある。そして私の大事な遊び相手でもあるのだが…彼女は私のもう一人の遊び相手、パチェの為に…正確に言うとその従者である小悪魔の為に…現在作業中だった。
そして当然そのパチェもいない、妹のフランとは昨日『遊んだ』ばかりで、いくら私といえども少々回復の時間が欲しかった。
以上の理由から導き出される結論…それは…
「暇ね」
そう、暇だった。過去数百年の時を過ごしてきた私にとって、一人で出来る暇つぶしは全てやってしまっていた。
しかもそんな日に限って、そろそろ太陽が折り返し地点にかかろうかという時に目が覚めてしまうのだ。パーティーが始まる時間まで寝ていたかったのだけど…
見慣れた窓から射し込む午後の日差し、私は、私の行動を制約するにっくきそいつを一睨みすると着替えをはじめた。
少女着替え中…
「さてと、どこに行こうかしら?」
身支度を整えた私は部屋の外に出ると両側をきょろきょろと眺める、いつもは一人や二人ならメイドが歩いているのだけれど、今日は例の準備に気を取られているのか全く姿が見えなかった。
視界内に面白そうなものは…ない。
「…行くとしたらやっぱりパーティー会場ね」
ちょっと悩んだ後私は歩き出した。
屋敷の住人がほとんど廊下を歩いていない…ということは、皆がパーティー会場…大広間で準備にあたっているということだろう。一体どれほどの規模になるのかしら?
「まったく、館の主人をさしおいて…面白そうなことやってくれるじゃない」
私はそう独語すると、長い廊下を大広間へと歩きはじめた。
しばし歩いた私は、前の方に見慣れた後姿を発見した。
「あら、パチェ…」
目の前を歩いているのはパチェ、いつも通りに歩いている私の友人…だけど何かおしりにつけて…
「ぷっ!」
パチェのおしりについていたものを発見した私は、思わず吹き出してしまった。
パチェのおしりについていたもの…それは『年中むきゅーなネグリジェ少女、年中無休でひきこもり中』と書かれた布。
犯人はわかりきっている、あのいたずらものの小悪魔だろう。
でも…それにしても…
「くっくっ…」
おなかが苦しい、私は壁に両手をついて笑いをこらえた…こらえきれるもんじゃないけど。
「どうしたのレミィ?」
ふと気がつくと、周囲に『?』マークを漂わせたパチェがこっちを向いている。何にも気がついていないその表情がますますおかしい。
「あはははっ!もうだめっ!!!」
私はとうとう吹き出した。こんなに笑い転げるのは久しぶり、こんなところを外の妖怪なんかに見られたら、『紅い悪魔』という私のイメージは音をたてて崩れるに違いない。
「???」
一方パチェはますます周囲の『?』マークを増加させてこっちを見ている…私を笑い死にさせる気かしら?
少女爆笑中…しばらくお待ち下さい
「はぁ…はぁ、あのねパチェ…」
どうにか笑いをおさめて、事実を告げたときのパチェの顔は本当にみものだった。たちまち怒りと羞恥と、そして悔しさに顔を真っ赤に染めるパチェ、感情を表に出さないパチェにしては珍しい。
それともあの子の前ではいつもこんななのかしら?そう思うとちょっと悔しかった。
「やられたわ」
しばらくして一応元通り白い顔に戻ったパチェは言った。
悔しそうで…でもどことなく嬉しそうなパチェ、そんな彼女に、私は一言言葉を贈ることにした。
「言い得て妙ね」
「む…」
私の『贈り物』に再び渋面を作ったパチェは…
「まだ勝負はついてないわ。次は私の番よ」
と言うと、くるりと向きを変えてテラスへと向かう。あ、これじゃあ暇つぶしの相手がいなくなってしまうじゃない。
「ちょっと待ちなさいパチェ。テラスで何かやっているの?」
慌ててそう言った私に、パチェは足を止めて振り返る。
「ええ、パーティーの準備をあの子に気付かれないようにするために、テラスでお茶会を開いているのよ」
「へぇ…」
パチェがテラスに出るなんて、明日あたり空からもやしでも降ってくるんじゃないかしら。
でもなかなか楽しそうね、私だって日傘を差していれば十分外に出られるし…
よし、ついていこう。
そう決めた私はパチェに言葉を投げかける。
「ねぇ、私も行って…」
いいかしら…の部分はのみこんだ。すでに視界内にあの引きこもり娘はいなかったのだ。
「…」
私が発した言葉は、虚しく虚空を漂い…消えた。後は沈黙が漂うばかり。
まったく、この私を無視するなんて…私がこんなことを言えば、あの咲夜ならしっぽを振って寄ってくるでしょうに。パチェときたらもう…
私はこの怒りをどこにぶつければいいのか迷ったが、まぁ相手があのパチェなら仕方がない。こんなことは日常茶飯事なのだから…
暇つぶしの相手を失った私は、再びぶらぶらと歩き出した。
長い廊下…だけど誰もいない。静かな…とても静かな紅魔館。
「紅魔館…こんなだったかしら?」
私は呟く、いつもいつも…特に最近はなにかと騒がしかったりするので、静かな紅魔館というのはちょっと新鮮だった。
私は、その長い静かな廊下を、大広間に向かって歩いていった。
大広間前
大広間への扉、中からはがたがたごとごとという音、そしてわんわんぎゃぎゃーと声がする。
「やってるみたいね」
私はそう独語すると扉を開けた…
「それこっち、あ、あれあっちね!!」
「メイド長!テーブルが足りません!!!」
「美鈴の部屋からでもひっぺがしてきなさい!!」
「ちょ…咲夜さ~ん!?」
「あんた何手を休めてるの!中国三千年の力でそこの邪魔な荷物全部あんたの部屋に押し込んでおいて。それで帰りにテーブルを持ってきなさい」
「あの…一体どこから突っ込め…あ、わかりました!わかりましたからナイフはどうかおしまい下さいっ!!」
「E班より、作業中の事故により数名負傷、増援を求めています!」
「メイド長!C班垂れ幕の用意完了しました」
「ドーラ!助かるわ、C班はE班の手伝いにまわって!」
「はい!」
「B班より!作業遅延!至急増援乞う!!」
「くす玉落下!A班に負傷者多数!戦力低下!!」
「D班過労により数名が野戦診療室送りになりました!調理速度が低下しています!!」
「メイド長より各班!増援は期待するなっ!各員全力を尽くしなさい!今日のパーティーにはお嬢様も参加されるのよ!メイドの意地を見せましょう!!」
「「「おー!!」」」
「F班より作業順調、まもなく終了の見込みとのこと!」
「あの班は失敗続きのハルナが班長じゃない、今回はよくやってるわね。成長したみたい」
「咲夜さ~ん、終わりました~」
「何疲れてるのよ美鈴!あなたはあのくす玉をどうにかして天井まで上げなさい!!」
「え…あ、わかりましたわかりましたぁ~!!」
「D班過労により被害甚大!このままではメインディッシュが出来ません!!」
「何ですって!?マルレーンへ伝えなさい。出来ませんでは承認できない、目標を達成なさい!」
「F班東壁部分の飾り付け完了です!」
「ハルナ、よくやったわ!すぐにD班の支援にまわって!!」
「はい!」
「B班が過労により後送者多数!このままでは全滅です!」
「G班も過労により被害甚大!一時休憩の要望が来ています!!」
「持ちこたえさせなさい!メイドの意地にかけてでもこのパーティーは成功させるのよ!!」
「「「おー!!」」」
私は黙って扉を閉じた。
扉の向こうは戦場だった。怒号が飛び交い、疲労で倒れた僚友を支えるメイドの姿がそこかしこで見かけられた。きっと、今日星の数ほどのドラマが生まれたのだろう。
そして、先頭にたって指揮をとる咲夜は、瀟洒じゃなかったけど完全(な指揮官)だった。でも…でもたった一つだけ不満がある。
「あれだけ人がいて一人も私に気がつかないなんて…」
私は少々ショックを受けたけど、そのまま歩き始めた。長く生きていればたぶんこんなこともあるわ。そう自分に言い聞かせて。
しばらく私はぶらぶらしていたが、やがて向こうから歩いてくる見覚えのある紅い頭を発見した。
「こんにちわ小悪魔、さっきパチェから聞いたのだけど、ふたりでティータイムとは羨ましいわね」
「あっレミリアさま、こんにちわ」
そう、この静けさの原因である小悪魔だ。彼女も私に気付くと明るく返事を返してくれた。彼女の様子を見る限り例の計画はまだばれてはいないらしい。
「後で私も混ざりたいのだけどいいかしら?話を聞いて、私も咲夜とお茶会を開こうとしたのだけど、仕事に出ていたのか見つからなかったのよ」
そして、私は彼女に、先程友人愛のカケラも見あたらない引きこもりに言いそこねた事を言った。
別にさっき皆に気がつかれずにいたり、パチェに無視されたりして寂しいとかそういうことでは『絶対』なく、単に『ちょっとした』暇つぶしの為の軽い頼みだけど。
「はい、全然大丈夫ですよ、今日は外でのお茶会だったのでお呼びしなかったのですが、それでもよろしければ…」
そんな私に彼女はそう言った、主人とは違っていい出来だわ。私は彼女に
「日傘を持っていけば別段問題はないわ」
と言って微笑んだ。
と、そこで私は何かに気付く。彼女の主人はおしりに布を張り付けていた…ということはもしかして…?
「小悪魔、ちょっと後ろを向いてみなさい」
「え…はい」
不思議そうにしながらも私の指示を素直に受ける小悪魔、その背中にはやっぱりというかなんというか…
『私はかわいいいたずらっ小悪魔です♪おしおきは随時受け付け中(はぁと)』
という布が張ってあった。まったく、この二人は…なかなか面白いことしてるじゃない。
「もういいわ小悪魔、それにしてもあなたたち二人は思考回路が本当に似通っているわね。姉妹みたい」
布をはがして私は言った。
「え…」
一方小悪魔は何が何だかわからない様子、まぁそれはそうだろう。私は手に持っていた布を持ち上げ、彼女に見せた。
「あああ~!!!」
次の瞬間布を指さして叫ぶ小悪魔、顔を真っ赤にして腕をぶんぶん振り回している。本当に感情表現が豊かね、パチェとは大違いだわ。
「パチュリーさまにまんまとしてやられました…」
そして直後にうつむくと悔しそうに呟く、本当、見ていて楽しいわ。
「はぁ」
ため息をつく彼女に私は言った。
「あなたたちは本当に仲がいいわね、羨ましいわ」
そう言うと私は振り向いて歩き出す。今の言葉は私の本心からの言葉、パチェは私にここまで心を開いてくれているだろうか?心がちくりと痛んだ。
その後ぶらぶらふらふらと廊下を彷徨っていたのだけど、やっぱり面白いことなど落ちていない、もちろん浮かんでもいない。
結局、私はパチェ達がお茶会を開いているであろうテラスへと向かった。
「昔は素直でかわいい子だったのに、いつのまにかこんなになってしまって…教育が悪かったのかしら?」
「パチュリーさまこそ昔はとっても優しかったのに、今じゃ…あ~あ」
「あ~あ、の後は大体見当がつくわ、失礼ね」
テラスへと出た私の視界に飛び込んできたのは、楽しそうに口喧嘩する二人の姿、いつもいつも飽きないわねと呆れ半分、そしてちょっとの羨ましさを覚えつつ、私はテーブルの上に日傘を差し掛けた。
「…仲がいいわねあなたたち」
「レミィ?」
「レミリアさま」
私はにやにやとからかい気味に笑いながら言った、まぁ仲良し具合をたっぷり見せつけてくれたお返しということで。
私の言葉で、二人はやっと気付いたように私の名を呼ぶ。
「レミィ、あなたがにやけると気持ち悪いわ」
「…あのね」
即座に反撃された、この私の素敵な笑顔のどこが気持ち悪いっていうのかしらこのもやしは?
いくつかの反論が思い浮かぶが、いかんせん初撃の被害が大きすぎてうまく反論できない。
…実際の所私の笑顔って気持ち悪いのかしら?ちょっとだけ不安になったのは内緒だ。
「はぁ、私に向かってそんなこと言えるのはあなたくらいなものよ」
しばらくして椅子に座って私は言った。反論はあきらめた、どうせ無駄だし。
「あらレミィ、あなたは『そんなこと』を言われないで毎日を過ごしているほうがいいのかしら?」
そんな私にパチェは言葉を投げかける。普段は勝手なことばかり言っているパチェだけれど、たまにドキっとすることを言ってくる。
この一言も私が最も恐れていること…死ぬことよりも…を見事に言い当てていた。
永い時を生きていく私…そんな私が最も恐れるのは、私を恐れない他者がいなくなること。もしそんなことになったら、私は…どうするのだろう?
パチェの一言で私は思考の迷路へと迷い込んだ…と、しばらくして何か不愉快な視線を感じて正面を見る。
小悪魔だ、何か私とパチェに憐れみと…そして小馬鹿にしたような目を向けて考え事をしている。多分私のことを『寂しがりや』だとか考えているのだろう。
無言でパチェと目を見交わすと、彼女も似たような印象を受けているらしい。私は口を開いた。
「小悪魔、あなた失礼なこと考えてるわね?」
「そうね、私もその小馬鹿にするような笑顔が気に入らないわ」
後続するパチェ、さすがは長い付き合い、タイミングはぴったりだ。
「はっ!?」
一方小悪魔のほうはやっと自分の置かれている状況に気付いたらしい、ふよふよと目を泳がすと…
「え~っと…レミリアさまの分の紅茶を淹れてきますねっ」
あからさまにわざとらしい用事を作り、とっとと台所へと向かっていった。
「逃げたわね」
「ホント、あなた達はいつも楽しそうね」
怒ったように…でもどことなく楽しそうに独語するパチェに私は言った。
「まぁ…ね」
パチェが答える。何か照れてるような彼女の表情を楽しみつつ、私は本題に入った。
「あの子の歓迎会何時からなの?ここに引きつけておくつもりだったんでしょう?」
そう、ここと、あとヴワル魔法図書館なら大広間とは正反対の位置関係、あの騒ぎもここまでは届かないだろう。
それにしてもさっきの大広間の大騒ぎ具合…今どうなってんのかしら?
私が一瞬大広間の惨状を思いだしているのを感じたのか、パチェはこう言った。
「一時間後だけど…その様子を見ると厳しそうね。少し時間を稼ぐことにしようかしら」
賢明な判断ねパチェ、あの状況下でパーティーに突入したら過労で死人が出るわ。もう出ている可能性も否定できないけど。
いくらなんでも、私は死んでからゆっくり休みなさいと言うほど酷薄な性格じゃないし、外の世界で共通語になったらしい『カローシ』は幻想郷には似合わない。
「いい考えねパチェ、まぁちょっと昔の話でもしていれば時なんて過ぎていくわ」
私はそう言ってパチェに賛意をしめした。ちなみに、ちょっとこの二人をからかってやろうなんて考えていたりする。
二人してあんな楽しそうに…なんかちょっとだけ悔しかったりしたのだ。
「レミィ、何を企んで…」
私の表情で何かを察したのかパチェが言いかける。
でも、ちょうどそのとき廊下からパタパタと音がしてきた。
「何も企んでなんかないわパチェ。ほらほら、あの子が戻ってきたみたいよ」
「む…」
しぶしぶと引き下がるパチェ、その時丁度小悪魔がテラスへと現れた。
「はい、レミリアさま。ミルクたっぷりのアッサム・ロイヤルですよ」
小悪魔が差し出すティーカップからは、紅茶のやわらかな芳香が漂ってくる。私はそれを一口飲むなり言った。
「相変わらず淹れ方うまいわね」
「ありがとうございます」
私の言葉に明るい笑顔で返す小悪魔、こうやって喜びの感情を表に出してもらえると誉めがいがあるのだけど…
「昔に比べれば格段に進歩したものね」
パチェのほうは誉めるにしても皮肉を混ぜないと気が済まないのかしら?
パチェの言葉に、小悪魔のほうもふくれっ面をして言い返す。
「昔に比べて進歩のないパチュリーさまよりはいいじゃないですか」
「失礼ね…私は進歩しているわ。本を読む速度が昔に比べて7.15%位速くなったのよ」
「色々つっこみたい所はあるんですけど、ひとまずソレどうやって測ったんですか?」
「くすっ」
二人の馬鹿げた…そして楽しげな口げんかに私は思わず笑ってしまった。いい漫才コンビになれそうね。
「「あっ」」
二人は私の視線に気づくと、恥ずかしそうな表情をする。…すっかり私の存在を忘れていたわね?
ちょっと悔しかった私は、いたずらな表情をすると思わせぶりに言う。
「本当に仲がいいわね、羨ましい位に。まぁあんな事件を起こす位だしね」
私の言葉に案の定二人が反応した。
「しつこいわねレミィ」
「そうです」
やっぱりまだ恥ずかしかったのね、まぁあんな事件を起こしちゃね…
私は紅茶を一口飲むと思った。
そう、小悪魔が紅魔館が来てしばらくたったときに起きた事件。
風邪をひいたパチェを診て、医者が『急性上気道炎』で『治せる薬がなく』『万病の元と言われている病』、そして『ニンニクが効くという話を聞いた』なんて事を言ったのをだけど、それを聞いた小悪魔が、これは一大事とばかりに紅魔館を飛び出したのだ。
医者のほうは何一つとして嘘は言っていないのだけど、言った相手が悪かったわね。天然ボケの勘違い娘小悪魔は、てっきりパチェが不治の病にかかったものだと勘違いしてしまったみたい。
さらにまずいことに、無愛想なようで実は従者思いのパチェが、病気高熱なにするものぞとばかりに小悪魔のことを追いかけていったのだからさあ大変。
私が森でそろっておねんねしている二人を、苦手な雨の中助ける羽目になってしまった。
「本当、あの時は苦労したわ。後続のメイド達が来るまで、ずっと雨の中傘をさして待っていたんだから」
私は紅茶を飲みながら二人に続ける、さしもの二人も言い返せないみたいね。私はちょっと得意になった。
私はその先にあった忌まわしい事件にも思いをはせる。
館に帰ってみると、怪しげな情報がさらに怪しげな情報を呼び、最終的にニンニクが山のように積まれているという吸血鬼の館にはあるまじき事態が発生していたのだから、もう私まで一週間寝込む羽目になってしまったわ。
あの地獄の(ような臭い)を思い出した私は思わず身震いをした。本当にこの二人にはどれほど迷惑をかけられたか…でも不思議とそんなに腹は立たないのよね。
『友達に迷惑をかけられる』ということに喜びを感じてしまったのかしら?
私は不愉快な想像を頭を振って打ち消し、言葉を続ける。
「それに帰ってみたら紅魔館内にはニンニク臭が充満しているし、本当にあなた達ふたりには酷い目に遭わされっぱなしよ」
二人は真っ赤になって俯いたままだ、私は、この愛すべきおばかさんたちに若干の羨望の気持ちを込めて言った。
「…小悪魔は急性上気道炎の意味もわからず飛び出して、パチュリーもあの熱で飛び出すし、しかもそのあとはふたり揃ってベッドにばたんきゅー、もうどうしようもないわね」
やっぱり羨ましい、私があんな目に遭ったとしたらパチェは同じ事をしてくれるだろうか…?
一瞬、我ながら訳の分からない無意味で不必要でありえない問いかけが頭の中に思い浮かんだ。
本当に今日の私はどうかしている、私は誰?最強の吸血鬼、他者に恐れられ、敬われるべき存在…紅い悪魔じゃない。
…でも、いえ、もう考えるのはやめよう。このままじゃ本当に寂しがりやのお馬鹿さんになってしまうわ。
私は、勝手に思考を進める頭を振って、いつの間にか空になっていたカップに紅茶を注ぎ込もうとティーポッドに手を伸ばす。
でもつかんだティーポッドには重さが足りなかった、そう、中身分。
「あれ…このティーポッド空ね、あ、こっちのにはあるわ」
私はちょっとした腹立たしさを押さえて、もう一つのティーポットを持ち上げる。
幸いこっちには入っていた。
「砂糖…あら、この砂糖壺可愛いわね。今度部屋にも同じのを入れようかしら?」
紅茶を淹れ終えた私は、続いてなかなかいいデザインの砂糖壺から砂糖を入れる。同じデザインの砂糖壺を、今度咲夜にでも探させようかしら。
私がそのままティーカップを口元に運んだ時だった…
「レミリアさまストップ!」
「レミィ待って!!」
何故か二人の止める声がした…そして同時に口中に激震が走る、例えるなら、口の中にファイナルマスタースパークが炸裂した感じだった…
「っ!?」
私の口から吹き出た紅茶が、綺麗な放物線を描いて床に落下していった。
アッサム・ロイヤル唐辛子ブレンド、お塩たっぷり…
それが私が飲んだ『液体』の名称だった…
「…あっあなたたちふたりは本当に…もう!!」
しばらくして口内の無差別爆撃から復旧した私は、おそらく…いや間違いなくこの液体の製造元である二人に文句をつけたのだけど…
「注意力が足りないわねレミィ」
というパチェの一言で片付けられた。もうここまで来ると突っ込みの言葉も見つからないわ。
この傍若無人な友人に苦情を言うのを諦めた私は、黙ってお茶菓子に手をのばした。
少女×3お茶会中…
先の攻撃により焦土と化した私の味覚は、どうにか口直しの紅茶とお茶菓子で回復した。
頃合いを見計らって私は言う。
「そろそろいいかしらパチェ?」
「多分大丈夫だと思うわ」
その言葉にパチェは答えた。
「小悪魔、行くわよ」
「はっはい?」
そして、ただ一人事情が分からずきょとんとしている小悪魔に、パチェが手を伸ばす。
「さぁ行くわよレミィ、小悪魔」
しれっとした表情でそう言うと、パチェは歩き出す。
ひとまず、歩き出すなら周りに気を配りましょうパチェ、言い終わるやいなや周りも見ずに歩き出す友人に、私は心の中で突っ込みを入れた。
いつもと違い人気のない長い廊下、私たちはてくてくと歩いていく…
しばらく廊下を歩くと、私たちは目指す大広間に到達した。
咲夜?あの戦いには勝てたのかしら?もし準備が完全に終わっていたら誉めてあげるわ。
私はそう思うと、相変わらず周囲に『?』マークを漂わせている小悪魔に、顔を向けた。
同時に、パチェが口を開く。
「小悪魔、この扉を開けて」
「は…はい」
小悪魔は、とまどいながらも歩き出し、重い扉を開いた。
「「「「「小悪魔おめでとー!!!!!」」」」」
そんな彼女を迎えたのは万雷の拍手と大歓声
完璧なまでに飾り付けられた大広間と、その正面に掲げられた『祝10周年』の垂れ幕、そしてずらっとならんだ咲夜をはじめとするメイド達。
瀟洒な笑顔で主賓を迎える咲夜には、さっきまでの疲労のあとなど見受けられない。おそらく時を止めて休んだのだろうけどそのことには突っ込まないであげましょう。
他のメイド達は、何かをやり遂げたという笑顔が浮かんでいた。
まぁあの状況からよくやったわ、あなた達は。後でねぎらってあげるわ。
さて、そしてそんな中で一人だけ困惑しておろおろしている主賓に私は近寄って、言った。
「あなたが紅魔館に来て今日で10年目、パチェに感謝しなさいね。こうやって皆で祝うように計画をたてていたのはパチェなのよ、いっつもいっつもあなたが頑張っているのだから、せめて今日位皆で祝ってあげたいって言ってね」
それを聞いて赤くなった小悪魔と…パチェ。
「し…知らないわ、レミィが一番乗り気だったじゃないの」
パチェはぷいと横を向いて視線を逸らした。
責任転嫁はよくないわねパチェ、それにあなたがが嘘をつくとき、そして照れているときの癖なんてお見通しよ、長い付き合いなんだから。
「ばぢゅりーざまぁ~ありがとうございます…」
そんなパチェに、小悪魔は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら言った。本当にばればれねパチェ、いいかげんあきらめなさいな。
「ちょっと、本当に違うわ。勘違いしな…あ、もう小悪魔鼻水」
それでもパチェはぶるぶると首を振り、誤魔化しながら言う。
「ばぢゅりーざまぁ~」
そんな彼女に小悪魔が抱きついた。
「あ…仕方ないわね」
そして、そんな小悪魔をいつも通りの表情…のようだけど、嬉しさを外にもらしながらパチェが撫でる。
しばらくして、私はそんな二人に尋ねる。
「よかったわねふたりとも、そして今は『幸せ』かしら?」
なんとなく聞いてみたかった質問、答えはもうわかりきっているのだけど。
そんな私に、二人は一瞬顔を見合わせてから答える。
「はい!」
「ええ」
二人の答えは予想通り、次の瞬間大広間に拍手の嵐が訪れた。本当にノリがいいわね、うちの連中は。美鈴なんて泣き出してるわ、どっちかっていうと、感動の原因は苦労が報われたというような所なのでしょうけど。
「皆様、そろそろパーティーにうつりましょうお嬢様。今日は私たちが腕によりをかけて作った料理です、最高の出来ですわ」
拍手が鳴りやむ頃、咲夜が一歩進み出て言う。疲労を全く感じさせないのはさすがね。
私は咲夜の言葉に応えて言った。
「ええ、そうしましょうか。パチェ、小悪魔、行きましょう」
「はい!」
「わかったわ」
私に答えて歩き出す二人、そして咲夜が後続する。
私たちは大広間の中心に歩き出す、咲夜達は普段からなかなか美味しい食事を出してはいるのだけど、今日の食事はそれのさらに上をいきそうだ。
いつもは一人で食べているのだけど、たまにはこんな風に大勢で食べるのも楽しそうね。
私はそんな風に思いながら、歩いていく…
と、まぁここで終わればそれなりにいい話で終わったのでしょうけど。この話には続きがあった。
ええ、もう本当に油断していた。あの感動の場面であんなことをされていたなんて。
人が倒れるような音を聞いた私は振り返る、と、そこに倒れていたのは、あろうことか完全で瀟洒なはずの咲夜だった。
「え?」
過労かしら?でもあの咲夜が?
混乱する私、そしてよく見るとうつ伏せに倒れている咲夜の顔のあたりから赤い液体が流れ出ていた…血?
慌てた私は思わず咲夜を抱き起こした。
「ちょっと咲夜!?…って鼻血?」
なぜか幸せそうな笑顔で倒れ伏した咲夜は、鼻血を出しながら気を失っていた。全然瀟洒じゃないわね。
…と、私は周囲の視線に気づいた。何か笑いを必死にこらえているような表情、不思議に思う私に、周囲から押し出されるようにして美鈴が歩み出た。
「あ、あの…レミリア様」
「何よ?」
おそるおそるといった感じで声をかけてくる美鈴に、私は言葉を返した。
「その…ですね、実はええ~っと」
要領を得ない美鈴に、私はいらいらして先を促した。
「何よ、早く言いなさい」
「は、はい、実は…ちょっとお背中を失礼します」
なぜかびくびくしながら私の背後にまわる美鈴を見て、何故か私は既視感を感じた。何故かしら?
「その…これが…」
しばらくして美鈴が相も変わらずびくびくしながら差し出したのは…
『小さな小さないたずら娘、叱ってくれるのまってます♪』『むきゅーってなるまで抱きしめて!実は私寂しがりやなんです(はぁと))』と書かれた二枚の布だった。
「…」
「お嬢様!私は喜んでいつでもぁっ!?」
「あの…レミりゃがはっ!?」
ひとまず、いつの間にか復活して、沈黙する私に飛びついてきた狗を裏拳で沈黙させ、ついでにこの不愉快な知らせを持ってきた中国妖怪の鳩尾に正拳突きを加えて吹っ飛ばしておく。
それにしてもどうしてくれようこの落とし前?
私は目の前で仲睦まじく食事する天然二人組に視線を向けた…
そして…
結局何もしなかった、だっておめでたい日だしね。紅い悪魔には人の心はないけど友人を思いやる心はあるのよパチェ、そして小悪魔。
そう、『今日は』つけにしておいてあげる、後日返してもらうけど。
私はそう思うとまた口げんかをしながら楽しげに会話する二人を見た。
…と
「…レミィ、気持ち悪いからにやけてこっち見ないでくれない?」
「そうですよ、ただでさえ怪しいのにそれじゃあ完全に不審者ですよ?」
こっちを見て二人は言った、二人の目の前には何本もの酒瓶が転がっている。いつの間にそんなに飲んだのかしら?
沈黙する私に二人は続ける。
「そうね、にやけるなら一人でしたほうがいいわ。それなら誰も迷惑しないし」
「ですよね、でもそれじゃあ不審者じゃなくて危ない人になっちゃいますよ」
「…」
あのね…人が黙っていれば調子に乗って…しかも小悪魔、あなた酒が入って本音が出たわね?普段あなたが私のことをどう思っているのかよくわかったわ。パチェは…普段からこうね。正直なのはいいことだけど…だけどね。
「大丈夫よ、だってレミィはどっちも手遅れだから」
「そうですね、さすがパチュリーさま」
「あんたらは…もうちょっと人に気を遣いっ!?」
「お嬢様っ!私はいつでもお嬢様を抱きしめて差し上げますわ!!」
とうとう堪忍寛恕の緒が切れた私が、まさにあの天然どもに天罰(文字通り)を加えようとした瞬間、私は飼い狗にその動きを封じられた。
「ちょっ!?咲夜離しなさい!!」
私は礼儀を知らぬ飼い狗に叱声を加えるが、彼女はそんなことにはおかまいなくますます力を込める。
「お嬢様!そんなに叱ってほしいのですね!!わかりました、不肖この咲夜がいくらでも叱って差し上げますわ!!」
「ちっがうー!!」
とうとう身の危険を感じだした私は速やかに咲夜に攻撃を加えた。一方その勘違い従者はたちまち時を止め攻撃を回避すると、こっちを向いて言った。
「お嬢様、そんなにおいたをなさるなんて…そんなことなどなさらずともいくらでも優しく叱って差し上げますのに…それとも激しいのがお好みですか?どちらの要望にも答えて差し上げますわ」
だめだこれ…目がいっちゃってるもの、実力で正常に戻すしかないわね。
咲夜を見て決断を下した私は、ちらっとこの事件の元凶どもを見る。
「ねぇねぇパチュリーさま、どっちが勝つと思いますか?」
「あんな状況になった咲夜相手にはレミィといえども苦戦は必至ね、だけどレミィの方も身の危険を感じているから必死に抵抗するに違いないわ。勝利はどちらのものになるか断言はできないわね」
「難しいことを駄洒落を混ぜて言っていますけど、とどのつまりわからないんですねパチュリーさま」
「む…あなたも生意気になったわね小悪魔」
「いえいえパチュリーさまのおかげですよ♪」
「後でおぼえておきなさいよ…」
ちゃっかりしっかり強力な防御結界を展開し、友人の危機を酒の肴にしている二人に私は呟き、眼前の狂狗に向き直った。
「来なさい咲夜!」
戦闘を開始する直前、私はふと思った。
ああ、何で私の周りはこんなのばっかりなのかしら?
え?紅に交われば紅くなる?類友?殺すわよ。
私は見知らぬ誰かに呟くと、自分の従者との戦いに身を投じた…
結局私は危機を免れたのか、それはまぁ私が『一応』正常にあの出来事を思いだしていることからわかるとおりだ。精神的にも体力的にもぼろぼろだけど、どうにか勝てた。本当にあの2+1はもう…
私はため息をつきながら手をのばし、カーテンをひく。
カーテンは、朝の日差しを遮り部屋を心地よい薄暗さにしてくれた。
私はゆっくりと目を閉じる。
意識が消えていく直前、なんだかんだいって今日を楽しかったと言える自分がとても可愛く、そしてちょっと可哀想だった…
数日後
私は練りに練った復讐計画を実行に移すべく、大広間へと歩いていく。手には三枚の招待状。
さてと、あの三人は地獄のお茶会への招待、怪しまずに受けるかしら?
私はくすりと笑うと、まず、咲夜がいるであろう大広間へと向かう。
「咲…夜?」
扉を開けかけた私は固まる。
「メイディ!メイディ!!くす玉が…うわー!!!」
「今行く!待ってて!!」
「私はもう駄目みたい、いいから他を…」
「戦友を見捨てられる分けないじゃない!手を貸して!!」
「ジェーン!!そこは危険よ!!五日前からの生ゴミが!!」
「私が行くしかないのよ!止めない…でぎゃ!?」
「ジェーン!!」
「あきらめてペギー!あいつはもう死んだんのよ!!助かるやつが優先よ!!」
「メイド長!E班壊滅!!床掃除戦線が崩壊しました!!」
「至急A班を向かわせるわ!ヘルミ、あなたはE班の残余を率いて持ちこたえなさい」
「了解!!」
「咲夜さ~ん、皿洗いを私だけでやるのは無理がありますよ~」
「気が抜けるようなこと言わないで美鈴、後で標的になってもらうわ。とっとと配置につきなさい」
「そんなぁ~」
「B班、班長が過労により後送、以後ミユキが指揮をとります」
「健闘を祈る!!」
「G班被害甚大、班としての機能を失いました!!」
「A班!移動中に落伍者多数、救援を求めています!!」
「救援部隊が救援を要請なんて洒落にしかならないわ、全力を尽くしなさい!!」
「台所において熱湯噴出!負傷数名!!」
「F班全滅の模様!大広間から倉庫までの間が屍街道と化しています!」
「負けないでみんな!片づけが終わるまでがパーティーよ!!」
「「「おー!!」」」
私は黙って扉を閉じた。何よ、本当は楽しんでいるでしょあなたたち、でもまぁ仕方がないので咲夜の招待状は破り捨てた。考えてみたら咲夜も被害者だしね、加害者でもあるけど。
やっぱり復讐は元凶にしないと…
私はそのまま図書館へと向かう。
扉を開けて二人の前に行くと、私はとびっきりの笑顔で言った。
「ねぇ、パチェ、小悪魔、午後お茶会でも開かない?とっておきのケーキと紅茶があるのよ」
この作品は創想話作品集29『ふたりのお茶会』と関連しています。どちらから読んでも、もしくは読まなくても問題はありませんが、両方読むとちょっとした違和感がとれるかもしれません。
「はぁ」
一日の終わり…おっきなベッドに身を預け、私は呟いた。いや、ため息をついたと言った方が正確かしら?何であんなトンデモナイのと友達になってしまったのだろう…という何十回めかの後悔。
私はいつもいつも我が侭だのなんだの言われているけど、絶対あのふたりにはかなわないと思う。
我が侭で天然、これほど恐ろしいふたりがコンビを組めば一体どうなるか…そんなことは分かり切っていたはずなのに、その連中と友達でいて、あげく我が家に住まわせている私は、自分で言うのもなんだけど案外お人好しなのかもしれないわね。
私はらしくない思考をぶんぶんと頭をふってかき消すと、カーテンをしめて布団にもぐり込んだ。
そして、夢の世界へと向かうまでの短い時間、ふかふかとした布団の中で、この出来事のきっかけを思い出していた。
~数日前~
「ねぇレミィ、ちょっといいかしら?」
暇つぶしに廊下を歩いていた私に声をかけてきたのは、私の唯一といってもいい対等の友達、パチェ…パチュリーだった。
彼女が持ち込むのはいつも何か困った事件の原因となる。私のいやな予感センサーが作動し、ただちに適切な回答を選択した。
「よくないわ」
私の拒絶の返事、しかし我が友人は全く表情を変えずに続ける。
「あのね、うちの小悪魔が明後日ここに来て10周年なのよ、それで何かお祝いをしたいと思うのだけど大広間とメイドを借りるわね」
他人の言葉を聞くという神経はこいつにはないのかしら?私の言葉をあっさりすっぱり無視した彼女は、一方的な要求を突きつけてきた。
パチェ、ひとまず他人に物と者を借りる時にはもうちょっと下手に出るものよ?でもこいつにこんなことを言っても、なんだかんだと理屈をつけて誤魔化すということは経験上分かっている。これだから知識人はもう…
私はため息を二つばかりつくと、あきらめて言った。これが東洋に伝わる『諦観』というものだろうか?なんか違う?
「仕方ないわね。まぁいいわ、どうせ暇だし」
「ありがとうレミィ。じゃあ計画はこっちでやるから、あなたは別に寝てていいわ」
そう言うとすたすたと歩き去る引きこもり、あのね…ちょっとくらい感謝してくれてもいいんじゃない?っていうかいくらなんでも『別に寝ててもいいわ』なんて…何考えているのかしら?
知識人の思考はわからない、私は小さくなる友人の後ろ姿を眺めながら呆れていたのだった。
~二日後~
ベッドから身を起こした私は目をこすって身支度を整える。
今日は側に咲夜がいない、若干性格に問題はあるものの、大体のことにおいて完全で瀟洒な彼女は、私の数少ない理解者でありパートナーでもある。そして私の大事な遊び相手でもあるのだが…彼女は私のもう一人の遊び相手、パチェの為に…正確に言うとその従者である小悪魔の為に…現在作業中だった。
そして当然そのパチェもいない、妹のフランとは昨日『遊んだ』ばかりで、いくら私といえども少々回復の時間が欲しかった。
以上の理由から導き出される結論…それは…
「暇ね」
そう、暇だった。過去数百年の時を過ごしてきた私にとって、一人で出来る暇つぶしは全てやってしまっていた。
しかもそんな日に限って、そろそろ太陽が折り返し地点にかかろうかという時に目が覚めてしまうのだ。パーティーが始まる時間まで寝ていたかったのだけど…
見慣れた窓から射し込む午後の日差し、私は、私の行動を制約するにっくきそいつを一睨みすると着替えをはじめた。
少女着替え中…
「さてと、どこに行こうかしら?」
身支度を整えた私は部屋の外に出ると両側をきょろきょろと眺める、いつもは一人や二人ならメイドが歩いているのだけれど、今日は例の準備に気を取られているのか全く姿が見えなかった。
視界内に面白そうなものは…ない。
「…行くとしたらやっぱりパーティー会場ね」
ちょっと悩んだ後私は歩き出した。
屋敷の住人がほとんど廊下を歩いていない…ということは、皆がパーティー会場…大広間で準備にあたっているということだろう。一体どれほどの規模になるのかしら?
「まったく、館の主人をさしおいて…面白そうなことやってくれるじゃない」
私はそう独語すると、長い廊下を大広間へと歩きはじめた。
しばし歩いた私は、前の方に見慣れた後姿を発見した。
「あら、パチェ…」
目の前を歩いているのはパチェ、いつも通りに歩いている私の友人…だけど何かおしりにつけて…
「ぷっ!」
パチェのおしりについていたものを発見した私は、思わず吹き出してしまった。
パチェのおしりについていたもの…それは『年中むきゅーなネグリジェ少女、年中無休でひきこもり中』と書かれた布。
犯人はわかりきっている、あのいたずらものの小悪魔だろう。
でも…それにしても…
「くっくっ…」
おなかが苦しい、私は壁に両手をついて笑いをこらえた…こらえきれるもんじゃないけど。
「どうしたのレミィ?」
ふと気がつくと、周囲に『?』マークを漂わせたパチェがこっちを向いている。何にも気がついていないその表情がますますおかしい。
「あはははっ!もうだめっ!!!」
私はとうとう吹き出した。こんなに笑い転げるのは久しぶり、こんなところを外の妖怪なんかに見られたら、『紅い悪魔』という私のイメージは音をたてて崩れるに違いない。
「???」
一方パチェはますます周囲の『?』マークを増加させてこっちを見ている…私を笑い死にさせる気かしら?
少女爆笑中…しばらくお待ち下さい
「はぁ…はぁ、あのねパチェ…」
どうにか笑いをおさめて、事実を告げたときのパチェの顔は本当にみものだった。たちまち怒りと羞恥と、そして悔しさに顔を真っ赤に染めるパチェ、感情を表に出さないパチェにしては珍しい。
それともあの子の前ではいつもこんななのかしら?そう思うとちょっと悔しかった。
「やられたわ」
しばらくして一応元通り白い顔に戻ったパチェは言った。
悔しそうで…でもどことなく嬉しそうなパチェ、そんな彼女に、私は一言言葉を贈ることにした。
「言い得て妙ね」
「む…」
私の『贈り物』に再び渋面を作ったパチェは…
「まだ勝負はついてないわ。次は私の番よ」
と言うと、くるりと向きを変えてテラスへと向かう。あ、これじゃあ暇つぶしの相手がいなくなってしまうじゃない。
「ちょっと待ちなさいパチェ。テラスで何かやっているの?」
慌ててそう言った私に、パチェは足を止めて振り返る。
「ええ、パーティーの準備をあの子に気付かれないようにするために、テラスでお茶会を開いているのよ」
「へぇ…」
パチェがテラスに出るなんて、明日あたり空からもやしでも降ってくるんじゃないかしら。
でもなかなか楽しそうね、私だって日傘を差していれば十分外に出られるし…
よし、ついていこう。
そう決めた私はパチェに言葉を投げかける。
「ねぇ、私も行って…」
いいかしら…の部分はのみこんだ。すでに視界内にあの引きこもり娘はいなかったのだ。
「…」
私が発した言葉は、虚しく虚空を漂い…消えた。後は沈黙が漂うばかり。
まったく、この私を無視するなんて…私がこんなことを言えば、あの咲夜ならしっぽを振って寄ってくるでしょうに。パチェときたらもう…
私はこの怒りをどこにぶつければいいのか迷ったが、まぁ相手があのパチェなら仕方がない。こんなことは日常茶飯事なのだから…
暇つぶしの相手を失った私は、再びぶらぶらと歩き出した。
長い廊下…だけど誰もいない。静かな…とても静かな紅魔館。
「紅魔館…こんなだったかしら?」
私は呟く、いつもいつも…特に最近はなにかと騒がしかったりするので、静かな紅魔館というのはちょっと新鮮だった。
私は、その長い静かな廊下を、大広間に向かって歩いていった。
大広間前
大広間への扉、中からはがたがたごとごとという音、そしてわんわんぎゃぎゃーと声がする。
「やってるみたいね」
私はそう独語すると扉を開けた…
「それこっち、あ、あれあっちね!!」
「メイド長!テーブルが足りません!!!」
「美鈴の部屋からでもひっぺがしてきなさい!!」
「ちょ…咲夜さ~ん!?」
「あんた何手を休めてるの!中国三千年の力でそこの邪魔な荷物全部あんたの部屋に押し込んでおいて。それで帰りにテーブルを持ってきなさい」
「あの…一体どこから突っ込め…あ、わかりました!わかりましたからナイフはどうかおしまい下さいっ!!」
「E班より、作業中の事故により数名負傷、増援を求めています!」
「メイド長!C班垂れ幕の用意完了しました」
「ドーラ!助かるわ、C班はE班の手伝いにまわって!」
「はい!」
「B班より!作業遅延!至急増援乞う!!」
「くす玉落下!A班に負傷者多数!戦力低下!!」
「D班過労により数名が野戦診療室送りになりました!調理速度が低下しています!!」
「メイド長より各班!増援は期待するなっ!各員全力を尽くしなさい!今日のパーティーにはお嬢様も参加されるのよ!メイドの意地を見せましょう!!」
「「「おー!!」」」
「F班より作業順調、まもなく終了の見込みとのこと!」
「あの班は失敗続きのハルナが班長じゃない、今回はよくやってるわね。成長したみたい」
「咲夜さ~ん、終わりました~」
「何疲れてるのよ美鈴!あなたはあのくす玉をどうにかして天井まで上げなさい!!」
「え…あ、わかりましたわかりましたぁ~!!」
「D班過労により被害甚大!このままではメインディッシュが出来ません!!」
「何ですって!?マルレーンへ伝えなさい。出来ませんでは承認できない、目標を達成なさい!」
「F班東壁部分の飾り付け完了です!」
「ハルナ、よくやったわ!すぐにD班の支援にまわって!!」
「はい!」
「B班が過労により後送者多数!このままでは全滅です!」
「G班も過労により被害甚大!一時休憩の要望が来ています!!」
「持ちこたえさせなさい!メイドの意地にかけてでもこのパーティーは成功させるのよ!!」
「「「おー!!」」」
私は黙って扉を閉じた。
扉の向こうは戦場だった。怒号が飛び交い、疲労で倒れた僚友を支えるメイドの姿がそこかしこで見かけられた。きっと、今日星の数ほどのドラマが生まれたのだろう。
そして、先頭にたって指揮をとる咲夜は、瀟洒じゃなかったけど完全(な指揮官)だった。でも…でもたった一つだけ不満がある。
「あれだけ人がいて一人も私に気がつかないなんて…」
私は少々ショックを受けたけど、そのまま歩き始めた。長く生きていればたぶんこんなこともあるわ。そう自分に言い聞かせて。
しばらく私はぶらぶらしていたが、やがて向こうから歩いてくる見覚えのある紅い頭を発見した。
「こんにちわ小悪魔、さっきパチェから聞いたのだけど、ふたりでティータイムとは羨ましいわね」
「あっレミリアさま、こんにちわ」
そう、この静けさの原因である小悪魔だ。彼女も私に気付くと明るく返事を返してくれた。彼女の様子を見る限り例の計画はまだばれてはいないらしい。
「後で私も混ざりたいのだけどいいかしら?話を聞いて、私も咲夜とお茶会を開こうとしたのだけど、仕事に出ていたのか見つからなかったのよ」
そして、私は彼女に、先程友人愛のカケラも見あたらない引きこもりに言いそこねた事を言った。
別にさっき皆に気がつかれずにいたり、パチェに無視されたりして寂しいとかそういうことでは『絶対』なく、単に『ちょっとした』暇つぶしの為の軽い頼みだけど。
「はい、全然大丈夫ですよ、今日は外でのお茶会だったのでお呼びしなかったのですが、それでもよろしければ…」
そんな私に彼女はそう言った、主人とは違っていい出来だわ。私は彼女に
「日傘を持っていけば別段問題はないわ」
と言って微笑んだ。
と、そこで私は何かに気付く。彼女の主人はおしりに布を張り付けていた…ということはもしかして…?
「小悪魔、ちょっと後ろを向いてみなさい」
「え…はい」
不思議そうにしながらも私の指示を素直に受ける小悪魔、その背中にはやっぱりというかなんというか…
『私はかわいいいたずらっ小悪魔です♪おしおきは随時受け付け中(はぁと)』
という布が張ってあった。まったく、この二人は…なかなか面白いことしてるじゃない。
「もういいわ小悪魔、それにしてもあなたたち二人は思考回路が本当に似通っているわね。姉妹みたい」
布をはがして私は言った。
「え…」
一方小悪魔は何が何だかわからない様子、まぁそれはそうだろう。私は手に持っていた布を持ち上げ、彼女に見せた。
「あああ~!!!」
次の瞬間布を指さして叫ぶ小悪魔、顔を真っ赤にして腕をぶんぶん振り回している。本当に感情表現が豊かね、パチェとは大違いだわ。
「パチュリーさまにまんまとしてやられました…」
そして直後にうつむくと悔しそうに呟く、本当、見ていて楽しいわ。
「はぁ」
ため息をつく彼女に私は言った。
「あなたたちは本当に仲がいいわね、羨ましいわ」
そう言うと私は振り向いて歩き出す。今の言葉は私の本心からの言葉、パチェは私にここまで心を開いてくれているだろうか?心がちくりと痛んだ。
その後ぶらぶらふらふらと廊下を彷徨っていたのだけど、やっぱり面白いことなど落ちていない、もちろん浮かんでもいない。
結局、私はパチェ達がお茶会を開いているであろうテラスへと向かった。
「昔は素直でかわいい子だったのに、いつのまにかこんなになってしまって…教育が悪かったのかしら?」
「パチュリーさまこそ昔はとっても優しかったのに、今じゃ…あ~あ」
「あ~あ、の後は大体見当がつくわ、失礼ね」
テラスへと出た私の視界に飛び込んできたのは、楽しそうに口喧嘩する二人の姿、いつもいつも飽きないわねと呆れ半分、そしてちょっとの羨ましさを覚えつつ、私はテーブルの上に日傘を差し掛けた。
「…仲がいいわねあなたたち」
「レミィ?」
「レミリアさま」
私はにやにやとからかい気味に笑いながら言った、まぁ仲良し具合をたっぷり見せつけてくれたお返しということで。
私の言葉で、二人はやっと気付いたように私の名を呼ぶ。
「レミィ、あなたがにやけると気持ち悪いわ」
「…あのね」
即座に反撃された、この私の素敵な笑顔のどこが気持ち悪いっていうのかしらこのもやしは?
いくつかの反論が思い浮かぶが、いかんせん初撃の被害が大きすぎてうまく反論できない。
…実際の所私の笑顔って気持ち悪いのかしら?ちょっとだけ不安になったのは内緒だ。
「はぁ、私に向かってそんなこと言えるのはあなたくらいなものよ」
しばらくして椅子に座って私は言った。反論はあきらめた、どうせ無駄だし。
「あらレミィ、あなたは『そんなこと』を言われないで毎日を過ごしているほうがいいのかしら?」
そんな私にパチェは言葉を投げかける。普段は勝手なことばかり言っているパチェだけれど、たまにドキっとすることを言ってくる。
この一言も私が最も恐れていること…死ぬことよりも…を見事に言い当てていた。
永い時を生きていく私…そんな私が最も恐れるのは、私を恐れない他者がいなくなること。もしそんなことになったら、私は…どうするのだろう?
パチェの一言で私は思考の迷路へと迷い込んだ…と、しばらくして何か不愉快な視線を感じて正面を見る。
小悪魔だ、何か私とパチェに憐れみと…そして小馬鹿にしたような目を向けて考え事をしている。多分私のことを『寂しがりや』だとか考えているのだろう。
無言でパチェと目を見交わすと、彼女も似たような印象を受けているらしい。私は口を開いた。
「小悪魔、あなた失礼なこと考えてるわね?」
「そうね、私もその小馬鹿にするような笑顔が気に入らないわ」
後続するパチェ、さすがは長い付き合い、タイミングはぴったりだ。
「はっ!?」
一方小悪魔のほうはやっと自分の置かれている状況に気付いたらしい、ふよふよと目を泳がすと…
「え~っと…レミリアさまの分の紅茶を淹れてきますねっ」
あからさまにわざとらしい用事を作り、とっとと台所へと向かっていった。
「逃げたわね」
「ホント、あなた達はいつも楽しそうね」
怒ったように…でもどことなく楽しそうに独語するパチェに私は言った。
「まぁ…ね」
パチェが答える。何か照れてるような彼女の表情を楽しみつつ、私は本題に入った。
「あの子の歓迎会何時からなの?ここに引きつけておくつもりだったんでしょう?」
そう、ここと、あとヴワル魔法図書館なら大広間とは正反対の位置関係、あの騒ぎもここまでは届かないだろう。
それにしてもさっきの大広間の大騒ぎ具合…今どうなってんのかしら?
私が一瞬大広間の惨状を思いだしているのを感じたのか、パチェはこう言った。
「一時間後だけど…その様子を見ると厳しそうね。少し時間を稼ぐことにしようかしら」
賢明な判断ねパチェ、あの状況下でパーティーに突入したら過労で死人が出るわ。もう出ている可能性も否定できないけど。
いくらなんでも、私は死んでからゆっくり休みなさいと言うほど酷薄な性格じゃないし、外の世界で共通語になったらしい『カローシ』は幻想郷には似合わない。
「いい考えねパチェ、まぁちょっと昔の話でもしていれば時なんて過ぎていくわ」
私はそう言ってパチェに賛意をしめした。ちなみに、ちょっとこの二人をからかってやろうなんて考えていたりする。
二人してあんな楽しそうに…なんかちょっとだけ悔しかったりしたのだ。
「レミィ、何を企んで…」
私の表情で何かを察したのかパチェが言いかける。
でも、ちょうどそのとき廊下からパタパタと音がしてきた。
「何も企んでなんかないわパチェ。ほらほら、あの子が戻ってきたみたいよ」
「む…」
しぶしぶと引き下がるパチェ、その時丁度小悪魔がテラスへと現れた。
「はい、レミリアさま。ミルクたっぷりのアッサム・ロイヤルですよ」
小悪魔が差し出すティーカップからは、紅茶のやわらかな芳香が漂ってくる。私はそれを一口飲むなり言った。
「相変わらず淹れ方うまいわね」
「ありがとうございます」
私の言葉に明るい笑顔で返す小悪魔、こうやって喜びの感情を表に出してもらえると誉めがいがあるのだけど…
「昔に比べれば格段に進歩したものね」
パチェのほうは誉めるにしても皮肉を混ぜないと気が済まないのかしら?
パチェの言葉に、小悪魔のほうもふくれっ面をして言い返す。
「昔に比べて進歩のないパチュリーさまよりはいいじゃないですか」
「失礼ね…私は進歩しているわ。本を読む速度が昔に比べて7.15%位速くなったのよ」
「色々つっこみたい所はあるんですけど、ひとまずソレどうやって測ったんですか?」
「くすっ」
二人の馬鹿げた…そして楽しげな口げんかに私は思わず笑ってしまった。いい漫才コンビになれそうね。
「「あっ」」
二人は私の視線に気づくと、恥ずかしそうな表情をする。…すっかり私の存在を忘れていたわね?
ちょっと悔しかった私は、いたずらな表情をすると思わせぶりに言う。
「本当に仲がいいわね、羨ましい位に。まぁあんな事件を起こす位だしね」
私の言葉に案の定二人が反応した。
「しつこいわねレミィ」
「そうです」
やっぱりまだ恥ずかしかったのね、まぁあんな事件を起こしちゃね…
私は紅茶を一口飲むと思った。
そう、小悪魔が紅魔館が来てしばらくたったときに起きた事件。
風邪をひいたパチェを診て、医者が『急性上気道炎』で『治せる薬がなく』『万病の元と言われている病』、そして『ニンニクが効くという話を聞いた』なんて事を言ったのをだけど、それを聞いた小悪魔が、これは一大事とばかりに紅魔館を飛び出したのだ。
医者のほうは何一つとして嘘は言っていないのだけど、言った相手が悪かったわね。天然ボケの勘違い娘小悪魔は、てっきりパチェが不治の病にかかったものだと勘違いしてしまったみたい。
さらにまずいことに、無愛想なようで実は従者思いのパチェが、病気高熱なにするものぞとばかりに小悪魔のことを追いかけていったのだからさあ大変。
私が森でそろっておねんねしている二人を、苦手な雨の中助ける羽目になってしまった。
「本当、あの時は苦労したわ。後続のメイド達が来るまで、ずっと雨の中傘をさして待っていたんだから」
私は紅茶を飲みながら二人に続ける、さしもの二人も言い返せないみたいね。私はちょっと得意になった。
私はその先にあった忌まわしい事件にも思いをはせる。
館に帰ってみると、怪しげな情報がさらに怪しげな情報を呼び、最終的にニンニクが山のように積まれているという吸血鬼の館にはあるまじき事態が発生していたのだから、もう私まで一週間寝込む羽目になってしまったわ。
あの地獄の(ような臭い)を思い出した私は思わず身震いをした。本当にこの二人にはどれほど迷惑をかけられたか…でも不思議とそんなに腹は立たないのよね。
『友達に迷惑をかけられる』ということに喜びを感じてしまったのかしら?
私は不愉快な想像を頭を振って打ち消し、言葉を続ける。
「それに帰ってみたら紅魔館内にはニンニク臭が充満しているし、本当にあなた達ふたりには酷い目に遭わされっぱなしよ」
二人は真っ赤になって俯いたままだ、私は、この愛すべきおばかさんたちに若干の羨望の気持ちを込めて言った。
「…小悪魔は急性上気道炎の意味もわからず飛び出して、パチュリーもあの熱で飛び出すし、しかもそのあとはふたり揃ってベッドにばたんきゅー、もうどうしようもないわね」
やっぱり羨ましい、私があんな目に遭ったとしたらパチェは同じ事をしてくれるだろうか…?
一瞬、我ながら訳の分からない無意味で不必要でありえない問いかけが頭の中に思い浮かんだ。
本当に今日の私はどうかしている、私は誰?最強の吸血鬼、他者に恐れられ、敬われるべき存在…紅い悪魔じゃない。
…でも、いえ、もう考えるのはやめよう。このままじゃ本当に寂しがりやのお馬鹿さんになってしまうわ。
私は、勝手に思考を進める頭を振って、いつの間にか空になっていたカップに紅茶を注ぎ込もうとティーポッドに手を伸ばす。
でもつかんだティーポッドには重さが足りなかった、そう、中身分。
「あれ…このティーポッド空ね、あ、こっちのにはあるわ」
私はちょっとした腹立たしさを押さえて、もう一つのティーポットを持ち上げる。
幸いこっちには入っていた。
「砂糖…あら、この砂糖壺可愛いわね。今度部屋にも同じのを入れようかしら?」
紅茶を淹れ終えた私は、続いてなかなかいいデザインの砂糖壺から砂糖を入れる。同じデザインの砂糖壺を、今度咲夜にでも探させようかしら。
私がそのままティーカップを口元に運んだ時だった…
「レミリアさまストップ!」
「レミィ待って!!」
何故か二人の止める声がした…そして同時に口中に激震が走る、例えるなら、口の中にファイナルマスタースパークが炸裂した感じだった…
「っ!?」
私の口から吹き出た紅茶が、綺麗な放物線を描いて床に落下していった。
アッサム・ロイヤル唐辛子ブレンド、お塩たっぷり…
それが私が飲んだ『液体』の名称だった…
「…あっあなたたちふたりは本当に…もう!!」
しばらくして口内の無差別爆撃から復旧した私は、おそらく…いや間違いなくこの液体の製造元である二人に文句をつけたのだけど…
「注意力が足りないわねレミィ」
というパチェの一言で片付けられた。もうここまで来ると突っ込みの言葉も見つからないわ。
この傍若無人な友人に苦情を言うのを諦めた私は、黙ってお茶菓子に手をのばした。
少女×3お茶会中…
先の攻撃により焦土と化した私の味覚は、どうにか口直しの紅茶とお茶菓子で回復した。
頃合いを見計らって私は言う。
「そろそろいいかしらパチェ?」
「多分大丈夫だと思うわ」
その言葉にパチェは答えた。
「小悪魔、行くわよ」
「はっはい?」
そして、ただ一人事情が分からずきょとんとしている小悪魔に、パチェが手を伸ばす。
「さぁ行くわよレミィ、小悪魔」
しれっとした表情でそう言うと、パチェは歩き出す。
ひとまず、歩き出すなら周りに気を配りましょうパチェ、言い終わるやいなや周りも見ずに歩き出す友人に、私は心の中で突っ込みを入れた。
いつもと違い人気のない長い廊下、私たちはてくてくと歩いていく…
しばらく廊下を歩くと、私たちは目指す大広間に到達した。
咲夜?あの戦いには勝てたのかしら?もし準備が完全に終わっていたら誉めてあげるわ。
私はそう思うと、相変わらず周囲に『?』マークを漂わせている小悪魔に、顔を向けた。
同時に、パチェが口を開く。
「小悪魔、この扉を開けて」
「は…はい」
小悪魔は、とまどいながらも歩き出し、重い扉を開いた。
「「「「「小悪魔おめでとー!!!!!」」」」」
そんな彼女を迎えたのは万雷の拍手と大歓声
完璧なまでに飾り付けられた大広間と、その正面に掲げられた『祝10周年』の垂れ幕、そしてずらっとならんだ咲夜をはじめとするメイド達。
瀟洒な笑顔で主賓を迎える咲夜には、さっきまでの疲労のあとなど見受けられない。おそらく時を止めて休んだのだろうけどそのことには突っ込まないであげましょう。
他のメイド達は、何かをやり遂げたという笑顔が浮かんでいた。
まぁあの状況からよくやったわ、あなた達は。後でねぎらってあげるわ。
さて、そしてそんな中で一人だけ困惑しておろおろしている主賓に私は近寄って、言った。
「あなたが紅魔館に来て今日で10年目、パチェに感謝しなさいね。こうやって皆で祝うように計画をたてていたのはパチェなのよ、いっつもいっつもあなたが頑張っているのだから、せめて今日位皆で祝ってあげたいって言ってね」
それを聞いて赤くなった小悪魔と…パチェ。
「し…知らないわ、レミィが一番乗り気だったじゃないの」
パチェはぷいと横を向いて視線を逸らした。
責任転嫁はよくないわねパチェ、それにあなたがが嘘をつくとき、そして照れているときの癖なんてお見通しよ、長い付き合いなんだから。
「ばぢゅりーざまぁ~ありがとうございます…」
そんなパチェに、小悪魔は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら言った。本当にばればれねパチェ、いいかげんあきらめなさいな。
「ちょっと、本当に違うわ。勘違いしな…あ、もう小悪魔鼻水」
それでもパチェはぶるぶると首を振り、誤魔化しながら言う。
「ばぢゅりーざまぁ~」
そんな彼女に小悪魔が抱きついた。
「あ…仕方ないわね」
そして、そんな小悪魔をいつも通りの表情…のようだけど、嬉しさを外にもらしながらパチェが撫でる。
しばらくして、私はそんな二人に尋ねる。
「よかったわねふたりとも、そして今は『幸せ』かしら?」
なんとなく聞いてみたかった質問、答えはもうわかりきっているのだけど。
そんな私に、二人は一瞬顔を見合わせてから答える。
「はい!」
「ええ」
二人の答えは予想通り、次の瞬間大広間に拍手の嵐が訪れた。本当にノリがいいわね、うちの連中は。美鈴なんて泣き出してるわ、どっちかっていうと、感動の原因は苦労が報われたというような所なのでしょうけど。
「皆様、そろそろパーティーにうつりましょうお嬢様。今日は私たちが腕によりをかけて作った料理です、最高の出来ですわ」
拍手が鳴りやむ頃、咲夜が一歩進み出て言う。疲労を全く感じさせないのはさすがね。
私は咲夜の言葉に応えて言った。
「ええ、そうしましょうか。パチェ、小悪魔、行きましょう」
「はい!」
「わかったわ」
私に答えて歩き出す二人、そして咲夜が後続する。
私たちは大広間の中心に歩き出す、咲夜達は普段からなかなか美味しい食事を出してはいるのだけど、今日の食事はそれのさらに上をいきそうだ。
いつもは一人で食べているのだけど、たまにはこんな風に大勢で食べるのも楽しそうね。
私はそんな風に思いながら、歩いていく…
と、まぁここで終わればそれなりにいい話で終わったのでしょうけど。この話には続きがあった。
ええ、もう本当に油断していた。あの感動の場面であんなことをされていたなんて。
人が倒れるような音を聞いた私は振り返る、と、そこに倒れていたのは、あろうことか完全で瀟洒なはずの咲夜だった。
「え?」
過労かしら?でもあの咲夜が?
混乱する私、そしてよく見るとうつ伏せに倒れている咲夜の顔のあたりから赤い液体が流れ出ていた…血?
慌てた私は思わず咲夜を抱き起こした。
「ちょっと咲夜!?…って鼻血?」
なぜか幸せそうな笑顔で倒れ伏した咲夜は、鼻血を出しながら気を失っていた。全然瀟洒じゃないわね。
…と、私は周囲の視線に気づいた。何か笑いを必死にこらえているような表情、不思議に思う私に、周囲から押し出されるようにして美鈴が歩み出た。
「あ、あの…レミリア様」
「何よ?」
おそるおそるといった感じで声をかけてくる美鈴に、私は言葉を返した。
「その…ですね、実はええ~っと」
要領を得ない美鈴に、私はいらいらして先を促した。
「何よ、早く言いなさい」
「は、はい、実は…ちょっとお背中を失礼します」
なぜかびくびくしながら私の背後にまわる美鈴を見て、何故か私は既視感を感じた。何故かしら?
「その…これが…」
しばらくして美鈴が相も変わらずびくびくしながら差し出したのは…
『小さな小さないたずら娘、叱ってくれるのまってます♪』『むきゅーってなるまで抱きしめて!実は私寂しがりやなんです(はぁと))』と書かれた二枚の布だった。
「…」
「お嬢様!私は喜んでいつでもぁっ!?」
「あの…レミりゃがはっ!?」
ひとまず、いつの間にか復活して、沈黙する私に飛びついてきた狗を裏拳で沈黙させ、ついでにこの不愉快な知らせを持ってきた中国妖怪の鳩尾に正拳突きを加えて吹っ飛ばしておく。
それにしてもどうしてくれようこの落とし前?
私は目の前で仲睦まじく食事する天然二人組に視線を向けた…
そして…
結局何もしなかった、だっておめでたい日だしね。紅い悪魔には人の心はないけど友人を思いやる心はあるのよパチェ、そして小悪魔。
そう、『今日は』つけにしておいてあげる、後日返してもらうけど。
私はそう思うとまた口げんかをしながら楽しげに会話する二人を見た。
…と
「…レミィ、気持ち悪いからにやけてこっち見ないでくれない?」
「そうですよ、ただでさえ怪しいのにそれじゃあ完全に不審者ですよ?」
こっちを見て二人は言った、二人の目の前には何本もの酒瓶が転がっている。いつの間にそんなに飲んだのかしら?
沈黙する私に二人は続ける。
「そうね、にやけるなら一人でしたほうがいいわ。それなら誰も迷惑しないし」
「ですよね、でもそれじゃあ不審者じゃなくて危ない人になっちゃいますよ」
「…」
あのね…人が黙っていれば調子に乗って…しかも小悪魔、あなた酒が入って本音が出たわね?普段あなたが私のことをどう思っているのかよくわかったわ。パチェは…普段からこうね。正直なのはいいことだけど…だけどね。
「大丈夫よ、だってレミィはどっちも手遅れだから」
「そうですね、さすがパチュリーさま」
「あんたらは…もうちょっと人に気を遣いっ!?」
「お嬢様っ!私はいつでもお嬢様を抱きしめて差し上げますわ!!」
とうとう堪忍寛恕の緒が切れた私が、まさにあの天然どもに天罰(文字通り)を加えようとした瞬間、私は飼い狗にその動きを封じられた。
「ちょっ!?咲夜離しなさい!!」
私は礼儀を知らぬ飼い狗に叱声を加えるが、彼女はそんなことにはおかまいなくますます力を込める。
「お嬢様!そんなに叱ってほしいのですね!!わかりました、不肖この咲夜がいくらでも叱って差し上げますわ!!」
「ちっがうー!!」
とうとう身の危険を感じだした私は速やかに咲夜に攻撃を加えた。一方その勘違い従者はたちまち時を止め攻撃を回避すると、こっちを向いて言った。
「お嬢様、そんなにおいたをなさるなんて…そんなことなどなさらずともいくらでも優しく叱って差し上げますのに…それとも激しいのがお好みですか?どちらの要望にも答えて差し上げますわ」
だめだこれ…目がいっちゃってるもの、実力で正常に戻すしかないわね。
咲夜を見て決断を下した私は、ちらっとこの事件の元凶どもを見る。
「ねぇねぇパチュリーさま、どっちが勝つと思いますか?」
「あんな状況になった咲夜相手にはレミィといえども苦戦は必至ね、だけどレミィの方も身の危険を感じているから必死に抵抗するに違いないわ。勝利はどちらのものになるか断言はできないわね」
「難しいことを駄洒落を混ぜて言っていますけど、とどのつまりわからないんですねパチュリーさま」
「む…あなたも生意気になったわね小悪魔」
「いえいえパチュリーさまのおかげですよ♪」
「後でおぼえておきなさいよ…」
ちゃっかりしっかり強力な防御結界を展開し、友人の危機を酒の肴にしている二人に私は呟き、眼前の狂狗に向き直った。
「来なさい咲夜!」
戦闘を開始する直前、私はふと思った。
ああ、何で私の周りはこんなのばっかりなのかしら?
え?紅に交われば紅くなる?類友?殺すわよ。
私は見知らぬ誰かに呟くと、自分の従者との戦いに身を投じた…
結局私は危機を免れたのか、それはまぁ私が『一応』正常にあの出来事を思いだしていることからわかるとおりだ。精神的にも体力的にもぼろぼろだけど、どうにか勝てた。本当にあの2+1はもう…
私はため息をつきながら手をのばし、カーテンをひく。
カーテンは、朝の日差しを遮り部屋を心地よい薄暗さにしてくれた。
私はゆっくりと目を閉じる。
意識が消えていく直前、なんだかんだいって今日を楽しかったと言える自分がとても可愛く、そしてちょっと可哀想だった…
数日後
私は練りに練った復讐計画を実行に移すべく、大広間へと歩いていく。手には三枚の招待状。
さてと、あの三人は地獄のお茶会への招待、怪しまずに受けるかしら?
私はくすりと笑うと、まず、咲夜がいるであろう大広間へと向かう。
「咲…夜?」
扉を開けかけた私は固まる。
「メイディ!メイディ!!くす玉が…うわー!!!」
「今行く!待ってて!!」
「私はもう駄目みたい、いいから他を…」
「戦友を見捨てられる分けないじゃない!手を貸して!!」
「ジェーン!!そこは危険よ!!五日前からの生ゴミが!!」
「私が行くしかないのよ!止めない…でぎゃ!?」
「ジェーン!!」
「あきらめてペギー!あいつはもう死んだんのよ!!助かるやつが優先よ!!」
「メイド長!E班壊滅!!床掃除戦線が崩壊しました!!」
「至急A班を向かわせるわ!ヘルミ、あなたはE班の残余を率いて持ちこたえなさい」
「了解!!」
「咲夜さ~ん、皿洗いを私だけでやるのは無理がありますよ~」
「気が抜けるようなこと言わないで美鈴、後で標的になってもらうわ。とっとと配置につきなさい」
「そんなぁ~」
「B班、班長が過労により後送、以後ミユキが指揮をとります」
「健闘を祈る!!」
「G班被害甚大、班としての機能を失いました!!」
「A班!移動中に落伍者多数、救援を求めています!!」
「救援部隊が救援を要請なんて洒落にしかならないわ、全力を尽くしなさい!!」
「台所において熱湯噴出!負傷数名!!」
「F班全滅の模様!大広間から倉庫までの間が屍街道と化しています!」
「負けないでみんな!片づけが終わるまでがパーティーよ!!」
「「「おー!!」」」
私は黙って扉を閉じた。何よ、本当は楽しんでいるでしょあなたたち、でもまぁ仕方がないので咲夜の招待状は破り捨てた。考えてみたら咲夜も被害者だしね、加害者でもあるけど。
やっぱり復讐は元凶にしないと…
私はそのまま図書館へと向かう。
扉を開けて二人の前に行くと、私はとびっきりの笑顔で言った。
「ねぇ、パチェ、小悪魔、午後お茶会でも開かない?とっておきのケーキと紅茶があるのよ」
いいですねぇこのレミリア。
図書館コンビに振り回されつつもどこか優しい吸血鬼。
咲夜は相変わらず……
微笑ましくも温かな紅魔館モノ、堪能させて頂きました(礼
>一人目の名前が無い程度の能力様
>図書館コンビに振り回されつつもどこか優しい吸血鬼
はい、まさに書きたかったのはそれなんです。そう言って頂けて何よりです。
>コイクチ様
喜んでいただけたようで(?)幸いです。ありがとうございます!
>SETH様
ちょっとずれてしまっていたかと不安だったのでよかったです。調子に乗っているうちに話がどんどん膨らんでこんなことに…前回のご指摘、ありがとうございました。
>変身D様
>やはりレミリアさまは最終的には図書館コンビには敵わないのですな
私のイメージとしてはそんな感じがあります。だけどレミリアもその状況を楽しんでいる…みたいな。
>二人目の名前が無い程度の能力様
こっこれは意外な所を…ちなみに、私はSSを書く時に登場人物に対するイメージを統一しています、脇役(オリキャラ)設定も。ですので、もしかしたらハルナの登場機会もあるかもしれません、脇役ですがorz
なんてすてきなヴワル図書館ズ&やられみりゃさま(何)!
>>『小さな小さないたずら娘、叱ってくれるのまってます♪』『むきゅーってなるまで抱きしめて!実は私寂しがりやなんです(はぁと))』と書かれた二枚の布だった。
ここでもう思わず珈琲噴きましたww
いい仕事してます。むきゅー
ご感想ありがとうございました!楽しんで頂けたのなら幸いです。特に、あのセリフには結構自信(過信?)があったのでとても嬉しいです。そしてやられみりゃ様とは何と素晴らしいカウンター、爆笑しました。
追記、携帯よりの投稿なので変な具合になっているかもしれません、何卒ご容赦を。
「メイドの意地を見せましょう!!」「「「「おー!!」」」
優雅なだけがメイドさんではない、戦地の兵士風味なメイドさんもまた
とてもとても良いものでした。
自分の趣味がつい出てしまいました…そう言っていただけると本当に嬉しいです。ありがとうございました。
しかし・・・・・・・
美鈴・・・・門番長がメイドの仕事を・・・・・・
逆らえないのですね・・・・あの人の前では・・・・(シクシク
お返事遅れましたorz
そしてご感想ありがとうございますww
こちらは少しはっちゃけてみましたらこんなことに…orz