この物語は上海アリス幻樂団の東方projectの二次創作であり実際の設定とは異なる作者なりの見解を示す部分もあります。ご了承ください。
第110季12月8日 幻想郷の外で災害が起きた。その災害は人々の心に大きな闇を生み出した。突然現れた災厄に対する恐怖、いつ来るかわからないが、すぐ近くに感じ取れる死、つい先日までその手にあった豊かな生活に対する渇望。それらの負の感情とも取れるそれが大きく渦巻いていた。
そしてその日幻想郷で『それ』が生まれた。それは闇。あらゆる物の闇。人を、獣を、妖精も妖怪をも喰らう闇。『それ』はまだ名前がない。しかし『それ』は幻想郷に住む者にとって最大の災厄に他ならなかった。
そして一週間後
「お母さーん。朝だよー。早く起きてよー。」
幻想郷の博麗神社に少女の声が木霊する。年の頃は7~8才、巫女服を着たその少女は境内で母親が来るのを待っていた。
「あらあら、霊夢は本当にスペルを見るのが好きなのね。」
と一人の女性が姿を現す。霊夢と呼ばれた少女は、その女性の下に駆け寄り飛びついた。
「だって私も早くスペルカードを使いたいんだもん。私だってお父さんの封魔陣とかお母さんの夢想妙珠とか使いたいんだもん。」
「はいはい、わかりました。今回はそんな霊夢に特別に普段見せてないスペルを見せてあげましょうか。」
「本当に!」と霊夢が目を輝かせながら尋ねる。
「本当ですよ。」と霊夢の母が言う「ただし。」
「ただし?」と霊夢が鸚鵡返しに尋ねる。
「私に使わせて見せれたらの話だけれどね。」といいながら霊夢の母は飛んで距離を取った。それを聞いた霊夢は何をすればいいのかを理解する。同じく距離を取るように飛んで、
「弾幕ごっこね!」と叫んだ。
「正解。」と霊夢の母が言う。「さあいくわよ霊夢。遠慮せずにかかってらっしゃいな。」
「じゃあいくわ。お母さんの方こそ特別なスペルを見せる前にやられないでよね!」といいながら霊夢は霊夢の母の方へ突っ込んでいった。
「一週間で35人だ。」と上白沢慧音は相対している神主の男に言った。
「歴史によるとこの一週間で35人の人間、12匹の妖精、20体の妖怪、そして427匹もの獣がそれに喰われている。」
「『それ』の居場所は?」と神主の男が訪ねる。
「歴史によるとここから北に離れた山の中腹、倒れた檜の陰にある洞穴にいる。」と慧音がいう。神主の男はそれを聞いて立ち上がった。
「情報提供感謝しよう。」と神主の男が言う。
「本気で『それ』を討伐するつもりか?博麗よ。」と慧音が問う。
「無論だ。」と博麗とよばれた男が答えた。「あのような災厄を討つのも博麗の定めだ。」
「ならばいい。博麗よ『それ』を討ったという歴史が刻まれるのを期待しているぞ。こちら側もこの里の人間を守りたい。」
「そうだな、そうなることを私は望むよ。」と博麗はいいながら『それ』がいる山の方へ飛び立った。
それを見ながら慧音は考える。
「先日、妹紅が襲われたとき、妹紅の炎でも滅ぼしきれなかった『それ』を博麗といえどもまともに相手にできるのだろうか。…」
『それ』は檜の陰にある洞穴に身を隠していた。あの炎を放つ人間はなかなかの手ごたえだった。と回想する。あの炎は厄介だったが右腕を喰らうことができた。味はいまいちだったが力がみなぎる感覚はある。もう少し休めば力も回復するだろう。とそのとき何者かが近づいてくる気配を感じた。ちょうどいい。ついでにそいつも食べてしまえば回復も早まるだろう。と『それ』は考えた。
もうすぐ昼時の博麗神社。そこの境内では霊夢とその母が弾幕ごっこをまだ続けていた。
「昇天蹴!」と霊夢が母をサマーソルトキックではじく。「さあ、これならいいでしょ。早く撃ってよ。」と霊夢が勝ち誇ったようにいう。
「いいえ、まだまだ詰めが甘いわ。」と次の瞬間霊夢の母が一瞬で霊夢の斜め上に現れて「幻想空想穴」霊夢を蹴り飛ばす。
「きゃあ。」と小さく叫んで霊夢は賽銭箱にぶつかった。
「やっぱりまだまだねぇ。これじゃあ見せてあげられないわ。」と霊夢の母が言いながら霊夢の前に立ち霊夢に手を差し出した。
「うーん絶対勝てると思ったんだけどなー。」と霊夢は母の手を取って立ち上がる。「もう一度!もう一度相手をして。」と霊夢が言ったとき「ぐぅぅぅーー」と霊夢の腹の虫が鳴いた。赤面する霊夢を見て霊夢の母は苦笑しながら
「じゃあお昼にしましょうか。お昼の後にもう一度弾幕ごっこをしましょう。さあ霊夢先に中に入ってらっしゃい」と言うと霊夢は笑いながら
「うん!次は絶対に負けないからね。」といって神社の中に入っていった。
それを見送った後彼女は後方を振り返る。そこには闇と博麗の神主である霊夢の父が攻撃しあいながらこちらに向かってきている姿が見て取れた。
霊夢は昼ご飯のおにぎりをほおばっている時に突然悪寒を感じた。その悪寒の正体を確かめようと境内の方へ向かう。そして境内を見てみると壮絶な死闘が繰り広げられていた。
霊夢の父が符を放ち闇を捉える。そこへ霊夢の母がパスウェイジョンニードルを放ち闇を穿つ。しかし闇はその攻撃をものともせずに弾幕を張る。そして弾幕は二人を襲う。
「く、まさかここまでの力を持っているとは。」と霊夢の父が言う。すると霊夢の母が、
「このままでは霊夢にも被害が及んでしまいます。こうなったら私たちのスペルで一気に仕留めましょう。」と叫ぶ。
「わかった。」と叫ぶや否や霊夢の父は闇に向かって突っ込んでいく。闇が弾幕を放った瞬間、「神技『八方鬼縛陣』」とスペルを放つその瞬間、闇と弾幕が八角形の結界に囲まれる。その結界の中では闇は力を奪われ、闇の放った弾幕は結界に弾かれ闇を襲う。闇が弾幕に穿たれたその隙を霊夢の母は逃さなかった。「神霊『夢想封印』」とスペルを放つ。すると霊夢の母が宙に浮きその体から虹色に輝く8つの丸い光が放たれる。そしてその光が闇にぶつかり闇を消し飛ばした。
霊夢は賽銭箱の陰からその様子を見ていた。するとそれに気づいた霊夢の母が霊夢の方へ駆け寄る。
「霊夢、見ていたのね。でも大丈夫、怖いのはお父さんとお母さんがやっつけたからね。」と言って霊夢を抱きしめる。しかし霊夢は震えながら鳥居の方を見ている。それを不審に思った霊夢の父が振り返るとしたとき、『リザレクション』という声が聞こえたような気がした。霊夢の父と母がとっさに振り返るとそこには闇に包まれた金髪の少女がいた。
「まさか、あの一撃で倒せなかったなんて。」と霊夢の父が戦慄する。そんなのもお構いなしに金髪の少女は
「この姿になったら私もスペルカードを使えるよ」と笑顔で言った。
「させない。」と霊夢の父が少女に向かって駆け出す。「滅せよ、闇。」とスペルカードを取り出そうとした瞬間、
「滅罪『正直者の死』」闇の少女がスペルを放つ。少女から放たれる無数の弾幕は霊夢の父の逃げ場を一瞬で奪いそして
「私は闇じゃないよ、ルーミアって名前、最初に食べた妖怪の姿と一緒にもらうから。」といいながら光を放つ。そして霊夢の父は光に飲み込まれ…
「あーあ、強すぎた。これじゃあ食べるところがないじゃないか。」
跡形もなく消えていた。
「霊夢!」
霊夢はビクッとして母のほうを見る。
「陰陽玉をもって行きなさい。今すぐに。」
霊夢は母の言葉の意味を理解した。博麗神社の秘宝であり、強大な力を持つ陰陽玉を必要とするほどの相手が目の前にいるということを。そして自分に逃げろといっていることを。霊夢は駆け出した。ルーミアがそれに気づき光線を放つが霊夢の母が「境符『二重結界』」を展開して光線を弾き飛ばす。
「邪魔をするなら、消しちゃうよ?」とルーミアがつぶやき、そして一枚のスペルカードを取り出す。「夜符『ナイトバード』」スペルを解き放つとルーミアの周囲から漆黒の鳥を模した何かが現れ、霊夢の母に向かって飛んでくる。霊夢の母は二重結界で時間を稼いでいる間に自分の最強のスペルカード「神霊『夢想封印 瞬』」を放とうとする。しかし、漆黒の鳥は二重結界をたやすく貫き霊夢の母を襲った。そして断末魔さえも残さずに霊夢の母は無数の漆黒の鳥に穿たれて死んだ。
「あーあ、結局こっちも食べれなかった。しょーが無いからあの小さいのだけで我慢しよー。」といいながらルーミアは神社の中に入っていった。しかしルーミアは霊夢を見つけることができなかった。
霊夢はただ走っていた。その両手には二つの陰陽玉を持って。しかしいつの間にか川のほとりにまで走っていたことに気づいた霊夢はその場に座り込んだ。すると溜まっていた疲れがどっと噴出してくる。
「どうすればいいのかな。」と一人つぶやいてみる。自分の力ではかないそうにも無い相手にどうやって立ち向かえばいいのか。不思議とこのまま逃げ続けようという考えは起きなかった。と、そのとき
「教えて差し上げましょうか?博麗のお嬢さん。」と声がした。霊夢があわてて周囲を見渡したが誰の姿も見えない。
「あらあら、別にあわてなくてもいいのよ。でも一度だけしか言ってあげないからしっかり聞いてね。」とまた声がする。
「あなたの持つ能力を使えばまずは負けないわ。後はこれを使いなさい…。ふぁあ、やっぱり冬は寝るに限るわね。じゃあおやすみー。」声が上から聞こえることに気付く。霊夢が上を見上げると、空に割れ目がありそこから何かが落ちてくるのが見えた。空の割れ目はすぐに閉じ、何かが霊夢のそばに落ちる。あの空の割れ目の中の風景がついさっき走っている途中に見たような気がしたが、とりあえず足元に落ちたものをみる。それは父と母のスペルカードだった。
数日後の満月の夜、慧音は空の上で西の方角を見ていた。そこには闇が広がっている。星の光すらさえぎる闇が。そしてその中から金髪の少女 ルーミアが現れる。
「とうとうこの里にまでやってきたか。だが満月の夜にやって来たのが運のつきだ!」
叫ぶや否や白沢となった慧音がルーミアに向かって飛ぶ。ルーミアはそのまま動かずにスペルカードを取り出す。
「月符『ムーンライトレイ』」ルーミアの両手から月光の帯が放たれ、そして、
「今夜は満月だから閉じちゃうかもー。」と叫びながら両手を前に曲げ、それにつられて月光の帯が両側から慧音を襲う。慧音が上に跳んでかわしたときにはつい先ほどまで慧音がいた場所は月光に飲み込まれていた。
「まだまだー。」とルーミアが両手を振りまわす。慧音は何とか月光の帯をかわしながら一枚のスペルカードを取り出す。
「始符『エフェメラリティ137』」慧音の周囲から無数の使い魔が現れ、左右に分かれる。そして突然無数の弾幕となりルーミアを襲う。
「え?」とルーミアが反応したときには弾幕はルーミアのすぐ近くまで来ていた。ムーンライトレイで打ち落とそうとするが間に合わず赤と青の弾幕に穿たれる。慧音はそれを見て次のスペルカードを取り出す。『それ』は妹紅の一部を喰らった存在。ゆえにこの程度では倒すことができるはずがない。そう考えていると、『リザレクション』という声とともにルーミアが復活する。その直後に慧音は「野符『義満クライシス』」自分の周囲に使い魔を9個展開、3個が1セットとなりクナイ弾を放つ。ルーミアはある程度かわそうとするが1発命中することで動きが鈍りそのままクナイ弾に穿たれ、またしても体の修復に回る。そしてその間に慧音はまた新しいスペルカードを取り出す。
ルーミアが再生したところを慧音がすかさずスペルで迎撃するというパターンがしばらく続いた後、
『リザレクション』11回目の再生に対して慧音は、「旧史『旧秘境史-オールドヒストリー-』」白沢になった時のみ使えるスペルカードで迎撃しようとする。しかし、「虚人『ウー』」ルーミアがスペルを放つ。それは醜き不死鳥の羽ばたき。まるで棍棒を思わせる弾幕の筋が三本、慧音の脇を通り抜ける。そして弾幕の筋が弾けて慧音を襲った。
「くっ。」慧音は少し落ちた後に体勢を立て直す。そしてそのまま攻撃を仕掛けようとするルーミアに対して「旧史『旧秘境史-オールドヒストリー-』」を放つ。楔の形をした弾丸が小さな弾幕とともにルーミアを襲う。
「12回目!」慧音が叫ぶ。慧音はルーミアのほうを見る。もうすぐ「あれ」を放つはずだ、と慧音は推測していた。そしてルーミアは「それ」を放つ。
「バゼストバイフェニックス」ルーミアの姿は掻き消え、慧音の背後に不死鳥の翼が現れる。しかしその色は妹紅の真紅のそれとは違い漆黒。さらに形も歪んでいる。慧音に向かって周囲から弾幕が現れ、向かってくる。慧音はそれを巧みによけるが黒い翼は慧音から離れない。慧音は知っていた。このスペルは『リザレクション』の連続使用時に発生する致命的な隙を隠すためのものであることを。このスペルが放たれたということはしばらくの間『リザレクション』が使えなくなるということを。ゆえにこのスペルを攻略した後にもう一度倒せばこの戦いは終わる。形も残さず射抜いたあと夜が明けた後に『それ』の歴史を食ってしまえばもはや復活することもないだろう。今存在するものの歴史を食べてもそれはそれの存在を隠すだけである。しかし、今存在しないものの歴史を食ってしまえばそれは元から存在せず、今も存在しないものにすることができる。今存在していないことになれば再生や復活もできない。昔輝夜に対して考えていた戦法。結局永琳に邪魔されて行うことはできなかったが今回役に立つことになるとは。と慧音が考えていると『リザレクション』最後の再生をルーミアが行う。慧音はすかさずスペルを放つ「新史『新幻想史-ネクストヒストリー-』」歴史を造り、未来を造る慧音の必殺のスペル。楕円型の弾丸と高速で動く弾幕がルーミアを襲う。倒せる!と慧音が思ったその時、「捕食『イーティング・ワン』」ルーミアの周囲から闇があふれ、そして、
「そんな…」慧音は戦慄していた。
「すべて喰われてしまうなんて。」そうルーミアは喰った。弾幕を、周囲に存在していた使い魔を、そして、スペルカードの発動効果さえも。
「ふうおいしかった。まだ食べていい?」とルーミアが聞き返す。慧音は思考する。こうなれば今の手持ちで最大の威力を誇るスペルを使うしかない。そう考えた慧音は4枚のスペルカードを取り出す。「神技『三種の神器 極』」慧音の周囲に三体の使い魔が現れる。しかしこのスペルはあくまでもサポート。本来の目的はほかにある。気づけばルーミアがスペルを放っていた。「夜符『ミッドナイトバード』」漆黒の翼がルーミアの周囲から現れて慧音に向かってくる。慧音はあわてずに2枚目のスペルカードを使い魔に重ねて使う。「神器『真経津鏡』」(まふつのかがみ)すると使い魔が鏡へと姿を変える。鏡はミッドナイトバードを写し、「ゆけ!!」と慧音が叫んだ瞬間に鏡から鏡写しの鳥が現れる。鏡写しの鳥がミッドナイトバードにぶつかった瞬間に両方が掻き消える。驚きの表情を見せるルーミアが次の行動をとるよりも早く慧音は3枚目のスペルカードをもう一つの使い魔に重ねて使う。「神具『五百箇御統』」(いおつみすまる)その瞬間に使い魔は勾玉の首飾りとなり慧音の元を離れてルーミアの周囲を回る。そしてそれぞれの勾玉が使い魔となり光線を放ってルーミアを縛る。慧音はそのままルーミアのほうに駆け寄り、最後のスペルカードを最後に残った使い魔に重ね、「神剣『都牟刈大刀』」(つむがりのたち)使い魔を剣へと変化させ、その手に持つ。慧音は剣を振りながらルーミアに近づく。剣を振った時の斬撃が弾丸となりルーミアを切り裂き、そして慧音が剣をルーミアに突き刺す。満月の幻想郷の空に肉を裂く音が響いた。
本来別の種類のスペルを同時に発動することはできない。しかし慧音の「神技『三種の神器 極』」は使い魔を媒介にすることにより3種類のスペルを疑似的にだが同時に発動させることができる。だがあくまでも疑似的であるため威力などは単体での使用時に劣る。故に…
慧音は地面に伏していた。上空を見上げるとルーミアが漆黒の大剣を右手に持っている。「影閃『ストームブリンガー』」慧音が剣を突き刺す時、ルーミアが発動させたスペル。慧音の草薙剣と同じ風の大剣。通常発動していたなら威力は互角だっただろう。しかし慧音は疑似発動させていた。故に押されてしまったのである。慧音は何とか動こうとするが動くことができない。ルーミアはそのままこちらに降りてくる。もうだめか。と慧音は目を閉じる。妹紅のことが気がかりだがもう動けないのなら仕方がない。そして慧音はルーミアに喰われ…喰われなかった。何故だと慧音ははっとする。そして上空を見上げるとルーミアが何かと戦っている。何かとは何だ。慧音は目を凝らして観察する。それは両脇に陰陽玉を携えた巫女の少女だった。
「まさか…博麗なのか…?」と慧音はつぶやいた。しかしタイミングがよすぎる。一体彼女はいつからここにいたのだろう。
霊夢が駆けつけた時は慧音がルーミアを8回倒したあたりだった。霊夢は上空でそれを高みの見物をしていたのである。もし慧音が勝ったならそれでいいし慧音が負けそうになったら自分が戦えばいい。そう考えていた。そうしていると慧音がやられるのが見えた。故に霊夢はホーミングアミュレットをルーミアに向けて放った。
「痛―い。」ホーミングアミュレットを受けたルーミアは振り返る。
「誰―。」とルーミアは言う。
「あなたを退治しに来た巫女よ。」
「あーあの時のー。今度こそ食べてやるー。」
「私に勝てたらね。」
「殺し合いで?」とルーミアが大剣をかざす。
「いいえ。」と霊夢が陰陽玉をかざし
「弾幕ごっこよ!」と叫んで陰陽玉からパスウェイジョンニードルを放った。ルーミアは大剣を振るい風の弾丸を放つ。しかし霊夢はあわてずに「幻想空想穴」で一気にルーミアの近くまで接近し、「宝具『陰陽鬼神玉』」ルーミアを飲み込むほどの大きさの陰陽玉を生み出しルーミアにぶつける。ルーミアはそのまま落ちて行き地面にぶつかった。しかし、『リザレクション』で再生する。慧音は戦慄する。もうリザレクションを使用できるようになったことに、しかし霊夢は気にも留めずに博麗アミュレットを放った。ルーミアは起き上がりスペル「闇符『ダークサイドオブザムーン』を放つ。ルーミアが弾幕に包まれながら接近する。霊夢は博麗アミュレットがあたらないことに気づくと距離をとり陰陽玉をばら撒く。ルーミアは気にせずに突っ込み陰陽玉は通り抜ける。それを見た霊夢は「境界『二重弾幕結界』」を放ちルーミアを捕らえる。二重の結界に捕らわれたルーミアは動けなくなり姿を現す。そこに霊夢は手持ちの札を叩き込む。札は結界の中を不可思議な方向に飛び交い、ルーミアを襲う。穿たれたルーミアは『リザレクション』が使えなくなってきていることに気づき、「バゼストバイフェニックス」を放つ。漆黒の歪んだ不死鳥の翼が霊夢に取り付き、周囲から弾幕が現れる。が
「それは見せてもらったわ。パターンがわかったらかわすのは簡単なのよ。」といって軽々とかわす。しばらくした後にルーミアが『リザレクション』で再生する。
「こーなったら最終手段、いっくよー。」とルーミアが1枚のスペルカードを取り出す。「黙示『アポカリプス』」その瞬間にルーミアの周囲が闇に覆われ漆黒の球体となる。そして、まずは上空から赤色の弾幕の雨が降ってくる。霊夢はそれをかわすが今度は下から炎の弾丸が飛んでくる。さらには上空からは緑色の巨大な弾丸が襲いそして視界が奪われる。慧音は視界が失われた中、使い魔の気配を感じた。おそらくは無数の使い魔が霊夢に向かって特攻しているのだろう。そして視界が開けたとき、霊夢の周囲には4人のルーミアが大剣を振りかぶろうとしていた。霊夢はかろうじて避け懐からスペルカードを取り出す。しかし霊夢の上でルーミアが闇を纏った大剣を振りかざし、
「これで終わりだー。」と叫びながら振り落とした。霊夢は「**『**********』」何か、名前のないスペルを放って闇に飲まれた。
慧音は闇が晴れるのを見た。上空にはルーミアそして闇の中には…
「なんでー?何で生きてるのー?」とルーミアの声その視線の先には…
霊夢がいた。まるで磔の聖人のように両手を横に伸ばし、周囲を無数の陰陽玉が回っている。
「そっかー、私に食べられるために無事でいてくれたのかー。」といいながらルーミアは飛び掛る体勢をとり、
「じゃあ、いただきマース!!」と叫びながら飛び掛ってくる。しかし霊夢に届く前に失速し霊夢には届かない。ルーミアが弾幕を放っても」ほとんどが霊夢に届く前に力を失い消滅する。
「なんでー?なんでなのー?なんでとどかないのー?」とルーミアがいう。
「もしかしてインチキ?」とルーミアが口走った時、霊夢がルーミアの方に向いた。いやルーミアの方を見下ろした。そしてルーミアにむかって札を放つ。ルーミアはすぐに札の射線上からそれた。本来ならこれで札を避けれるはずだった。しかし側面からルーミアに札が命中する。ルーミアが驚いて振り向くと避けたはずの札がルーミアに向かって飛んできていた。ルーミアは速度を上げて無作為に飛び回り振り払おうとする。しかし霊夢の放った札は執拗にルーミアを襲う。その不可思議な状況を見ていた慧音は気がついた。これは霊夢の能力によるものであると。
『主に空を飛ぶ程度の能力』それが霊夢の能力である。しかしそれは言い換えれば『ありとあらゆるものの上にいる』ということである。すなわち今の状態の霊夢は『上』であり、ルーミアを見下ろした時、霊夢にとってルーミアが『下』となったのだろう。そうなれば『下』から『上』に攻撃をするのは困難であるし、霊夢の攻撃は、『上』から『下』への攻撃である。それは『上』から『下』へ落ちてくると同義であり、いくらルーミアが回避行動をとっても、霊夢より高いところに逃げても霊夢の攻撃は『下』であるルーミアに落ちてゆく。だがこれだけの現象を能力だけで行うことは難しい。おそらくは先ほど使用した名前のないスペル。あれが霊夢の能力を引き出しているのだろう。ゆえに慧音は思いつく。このような現象を起こすスペルの名を。それは…
「無題『空を飛ぶ不思議な巫女』」
霊夢は『下』にいるルーミアに向かってありったけの弾幕を放つ。ホーミングアミュレット、パスウェイジョンニードル、博麗アミュレット、エクスターミネーション、マインドアミュレット、陰陽玉、そのすべてが『下』であるルーミアに向かって落ちてくる。対するルーミアも弾幕で迎撃しようとするが『上』にいる霊夢にはほとんど届かない。そうしたうちにルーミアの体力が尽き、ルーミアが地面に向かって落ちてゆく。霊夢はルーミアに向かって一枚の札を取り出し、
「私の勝ちね、名も無き闇さん。」
札を投げつけた。その札はルーミアに近づくとルーミアの髪に絡まりそして、『それ』を『ルーミア』の中に封印した。
「ふう、疲れた。早く帰ってお茶でも飲みましょう。」と霊夢はルーミアが落ちたのを見て呟きながら博麗神社のほうへ去っていった。
ルーミアは目を覚ました。ついさっきまで闇を張ってあたりを飛んでいたはずなのにいつの間にかあたりは闇を張る必要が無いくらい暗くなっていた。しかも髪の毛に何かが引っかかっている。取ろうとしても触れないのでまあいいかー、とルーミアは思った。どうせあっても無くてもたいして変わらないだろうから。そのときルーミアの腹の虫が鳴いた。お腹が空いたのでお肉を捜すために飛び始める。ふと両手を真横に伸ばしている自分に気がつく。いままではこんな風な格好で空を飛んではいなかったはずだった。しかしルーミアはすぐに考えるのをやめる。この格好に問題があるわけでもないし、なんだか強そうな感じがしたから。
第120季の夏、博麗神社にて霊夢は茶を飲みながら目の前にいる珍しい相手を見た。
「あなたがこんなところに用があるなんて。厄介ごとはいらないわよ。」
そういってくる霊夢をみて慧音は苦笑する。
「まあいいわ、せっかくの客人だもの。お茶ぐらいなら出してあげる。あとついでなんだから賽銭でも入れていきなさい。」
慧音は賽銭箱に賽銭をいれる。すると賽銭が賽銭箱の底に当たった音がする。
「相変わらず繁盛していないな。」と慧音が苦笑すると、
「まったくね、魔理沙もほかの妖怪も誰も賽銭を入れたりはしない。そのくせしてここでどんちゃん騒ぎをするだけして去ってゆく。結局後片付けは私がしなきゃならないもの。まあ食事にありつけるのはいいけれど。」と霊夢が愚痴る。
「なら賽銭など必要ないだろう。妖怪たちが食べ物を持ってきて来るのなら。」
「ところがそうでもないの。香霖堂で物を取ってくるとき香霖がお金を支払ってくれっていうのよ。鉄くずや紙切れを渡したときには文句をいうくせにお金だったら文句を言わないなんて変だと思わない?」
やはり霊夢にとってお金は鉄くずや紙切れと同価値であるらしい。おそらくそれも彼女の能力のせいだろう。彼女の能力はありとあらゆる物の上にいるようにする『主に空を飛ぶ程度の能力』である。それは物の価値も同一視することにもなる。すべて『下』の物だから。つまりそれは霊夢の思考が昔と今で変化したということになる。さらにそれだけでもない。
「ああそうだ、慧音ちょうどいいからあなたの里の人間たちを参拝させに来さしてよ。当然賽銭を入れるようなのをよ。まったくなんで参拝者が誰も来ないのよ。」
そうこれも彼女の能力の影響。常に高い場所にいるがゆえに大抵のものは自分から博麗霊夢にかかわることはできない。かかわるためにはまず『上』にいる霊夢のほうから近づかなければならない。そうすれば霊夢との縁がつながり自分から霊夢と関わることができるようになる。慧音自身も永夜事件の時、霊夢と戦っていなければ今もここに来ることは無く、来ようとも思わなかっただろう。しかし霊夢がかかわってきたのはほとんどが妖怪の類、そんなのでは霊夢の元に普通の人間がくるはずも無い。だから霊夢は自分から里に下りて人々と付き合わなければならないのである。まあこんな妖怪が集まってくる神社に参拝しようとする物好きなどほとんどいないだろうが。そう考えていると突然霊夢が立ち上がり空を見上げる。慧音も釣られて見上げるとそこには黒い球体=ルーミアが飛んでいた。
「退治するのか?」と慧音がたずねる。
「いいえ。」霊夢は笑いながら答えた。
「弾幕ごっこよ。」
東方異聞録 終
それでなければ最後まで読めたと思います。
なので点数は付けません。
ザッと見た限りでは、文章自体に荒れは少ないように思います。まずは記入形式が問題かと。
読みやすさを前提とした記入形式に改良して見てください。
最後の台詞を参考にすると、「弾幕ごっこよ。」ではなく「弾幕ごっこよ」となるわけです。
話自体はとても良かったからなw
次は楽しみにしてるぜww